説明

ゲノムDNAの大きな断片の捕捉および修飾、ならびに合成葉緑体を有する生物を構築するための系

遺伝子の機能的分析は、大きなゲノム領域の操作をしばしば必要とする。相同組換えによってDNAの大きな領域をクローニングするために使用されることができる、酵母−細菌シャトルベクターが記載さる。葉緑体ゲノムを含む全ゲノム、またはその大きな部分を単離するための方法、およびそれを操作するための方法もまた記載される。最小ゲノム、最小経路要件、および最小オルガネラゲノムを決定するための方法もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本出願は、米国仮出願番号第60/978124号(2007年10月5日出願)の優先権および利益を主張し、この仮出願は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
多くの遺伝子の機能的分析のために、研究者は、大きなDNAフラグメントを単離および操作する必要がある。ゲノミクスの出現およびDNAのゲノム領域の研究は、大きなDNA領域を担持することができるベクターの必要性を生み出している。
【0003】
一般的に、2つのタイプの酵母ベクター系が、現在利用可能である。第1のタイプのベクターは、酵母と細菌との間で小さな挿入DNAを移動させることができるベクターである。第2のタイプのベクターは、酵母人工染色体(YAC)において中間部欠失または末端部欠失をもたらす分断ベクターである。小さな挿入シャトルベクターは、相同配列を組換えおよび回復することができる。それらは、動原体ベースであり、酵母において安定してかつ自律的に複製し、さらに細菌プラスミドとして維持するための高コピーの複製起点を含有する。しかしながら、これらのベクターは、それらの小さな挿入容量によって限定される。(分断ベクターとしても知られる)第2のタイプのベクターは、組換え誘導配列を有するが、DNAの大きな調製物のために回復された挿入DNAを細菌に移動させることはできない。
【0004】
研究者らは、YACにおける目的の領域を絞るためにフラグメント化技術を使用する。しかしながら、マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションのためにアガロースゲルからYAC DNAの十分な量を単離することは、依然としてやっかいである。精製は、YACが内因性染色体と共に移動する(comigrate)ときに依然として問題である。さらに、YACはキメラであり得、すなわち特定の機能研究に必要とされないさらなるDNA領域を含有し得る。
【0005】
細菌において大きなフラグメントをクローニングするのに利用可能なベクターのタイプは、コスミド、P1、および細菌性人工染色体(BAC)である。これらのベクターは細菌に限定され、相同組換えによる修飾のために酵母に往復されることができない。細菌ベクターはまた、植物および藻類を形質転換するための使用に限定される。例えば、葉緑体は、真核宿主への光合成細菌の内部共生に由来すると考えられるが、葉緑体の翻訳はより複雑である。植物および藻類を遺伝的に操作する複雑性に加わるのは、葉緑体ゲノムの複数コピーを有する複数の葉緑体の存在である。したがって、植物および藻類の葉緑体においてDNAの大きなフラグメントからタンパク質を発現するための方法を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、細菌および葉緑体の全ゲノムを含む、大きなDNAを単離、特徴付け、および/または修飾する組成物および方法に関する。組成物は、標的DNAがその中に挿入され得るシャトルベクターを含む。方法は、一部を除去すること、加えること、または再配列すること、および修飾されたDNAを宿主に導入することによって標的DNAを修飾または操作することを含む。
【0007】
本発明の1つの態様は、酵母要素、細菌性複製起点、および少なくとも20kbのゲノムDNAを含む単離されたベクターを提供する。いつくかのベクターにおいて、酵母要素は、酵母動原体、酵母自己複製配列、酵母栄養要求性マーカー、またはそれらの組み合わせである。DNAは、非維管束光合成生物、例えば、大型藻(macroalgae)、微細藻(microalgae)、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisに由来し得る。いくつかの実施形態において、ゲノムDNAは、例えば、非相同または相同ポリヌクレオチドの挿入によって、1個以上の核酸塩基の欠失によって、1個以上の核酸塩基の突然変異によって、1個以上のポリヌクレオチドの再配列によって、またはそれらの組み合わせによって修飾される。場合によっては、修飾は合成修飾である。本発明のベクターは、宿主細胞に形質転換される場合に、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成をもたらし得る。そのような生成物のいくつかの例は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドを含む。いくつかの宿主細胞において、ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物、例えば、バイオマス分解酵素、テルペン、またはテルペノイドの生成の増加をもたらす。本発明のベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、酵母マーカー、酵母抗生物質耐性マーカー、酵母栄養素要求性マーカー、細菌マーカー、細菌抗生物質耐性マーカー、細菌栄養素要求性マーカー、藻類マーカー、藻類抗生物質耐性マーカー、藻類栄養素要求性マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。本発明のベクターは、1)1〜200個の遺伝子;2)全ての本質的な葉緑体遺伝子;および/または3)30〜400kbを含む葉緑体ゲノムDNAもまた含有し得る。
【0008】
また、本明細書中に記載されるのは、本明細書中に記載されるベクターを含む宿主細胞である。例示的な宿主細胞は、本来は非光合成細胞であっても光合成細胞であっても良く、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisを含む。
【0009】
本発明の別の態様において、ベクターを製造するための方法が提供され、その方法は、標的DNAを、酵母動原体、酵母自己複製配列、および細菌性複製起点を含むベクター中に挿入すること、生物をそのベクターで形質転換すること、および葉緑体ゲノムの一部を捕捉することを含み、したがって、葉緑体ゲノムの一部を有するベクターを製造する。場合によっては、標的DNAは、葉緑体ゲノムDNAである。この方法は、長さ10〜400kbの、ゲノムの一部を捕捉するために使用され得る。場合によっては、捕捉工程は、組換えによって起こる。葉緑体ゲノムの捕捉された部分は、ベクターを有する生物中に同時形質転換され得、したがって、組換え工程がインビボで起こり得る。本明細書中に開示される方法を実施するために使用される生物は、真核生物および/または光合成生物であり得る。場合によっては、生物は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisである。本明細書中に開示される方法を実施するために使用される生物はまた、非光合成生物、例えば酵母であり得る。場合によっては、非光合成生物は、外因性の葉緑体DNAを含有し得る。いくつかの実施形態において、葉緑体ゲノムの一部を修飾するさらなる工程が利用される。修飾は、相同組換えによって達成され得る。そのような組換えは、生物、例えば、真核生物および/または光合成生物において起こり得る。場合によっては、生物は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisである。他の例において、生物は、非光合成生物、例えば、酵母であり得る。修飾工程を有する実施形態において、その工程は、ポリヌクレオチドの付加、1個以上の核酸塩基の欠失、1個以上の核酸塩基の突然変異、ポリヌクレオチドの再配列、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0010】
本明細書中にさらに開示されるのは、本質的な葉緑体遺伝子、選択可能マーカー、およびベクター中の1個以上の核酸の操作を含む、単離されたベクターである。場合によっては、本質的な葉緑体遺伝子は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisのような非維管束光合成生物からクローニングされる。本明細書中に記載されるベクターにおける使用のための本質的な葉緑体遺伝子は、合成遺伝子であり得る。本明細書中に記載されるベクターは、発現カセットをさらに含み得、それは、標的DNA、例えば、オルガネラDNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。本明細書中に記載されるベクターはまた、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせを含有し得る。場合によっては、本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1種以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である。本質的な葉緑体遺伝子は、200個までの遺伝子を含み、および/または400kbまでからなり得る。本明細書中に記載されるベクターのうちのいくつかにおいて、1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列である。場合によっては、宿主細胞におけるベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来は生成されない生成物を生成する。他の例において、本発明のベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらす。そのような生成物の例は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドである。
【0011】
本明細書中に記載されるように、本発明の1つの態様は、本発明のベクターを含む単離された葉緑体である。別の態様において、本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。本発明において有用な宿主細胞は、本来は非光合成細胞であっても良いし、本来光合成細胞であっても良い。本発明のために有用な生物の例は、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisを含む。
【0012】
本発明の別の態様において、細胞または生物を形質転換するための方法が提供され、その方法は、前記細胞または生物中に、全ての本質的な葉緑体遺伝子、および任意選択的に前記細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子を含むベクターを挿入することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、前記細胞または生物において実質的に全ての葉緑体ゲノムを除去する工程をさらに含む。この方法のために有用な細胞または生物は、光合成細胞または生物、非光合成細胞または生物、および/または真核細胞または生物であり得る。この方法のために有用な細胞または生物は非維管束細胞または生物であり得る。場合によっては、この方法における使用のためのベクターはまた、発現カセットを含み得、その発現カセットは、非核DNA中に組み込まれることができ得る。1つの実施形態において、その細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における遺伝子である。別の実施形態において、本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1つ以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である。
【0013】
本明細書中にさらに提供されるのは、生物を、葉緑体機能を行うのに十分な1個以上のポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換する工程を含む、生物を修飾するための方法である。場合によっては、この方法のために有用なベクターは、前記生物から化合物を生成または分泌するための配列をさらに含む。場合によっては、化合物はイソプレノイドである。他の例において、ベクターは、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含む。さらに他の例において、本質的な葉緑体遺伝子は、再配列または突然変異される。いくつかの実施形態のために有用な生物は、形質転換の前に本質的に葉緑体ゲノムを含まない。
【0014】
本明細書中で提供されるさらに別の方法は、生物から生成物を作製するための方法であって、少なくとも20kbのゲノムDNA、および、(i)前記生物において本来は存在しない遺伝子;(ii)前記生物において本来存在する遺伝子の欠失;(iii)前記生物において本来存在する遺伝子の再配列;および(iv)前記生物において本来存在する遺伝子における突然変異のうちの1つ以上を含むベクターで生物を形質転換する工程を含む方法である。場合によっては、生物は、本来光合成生物である。他の例において、さらなる遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における酵素をコードする。さらに別の実施形態において、本開示は、葉緑体および、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを細胞または生物中に挿入することを含む、細胞または生物を形質転換するための方法を提供する。
【0015】
本開示はまた、(a)1個以上の本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;(b)前記ベクターにDNAフラグメントを付加する工程;(c)工程(b)によって生成されたベクターで細胞または生物を形質転換する工程;および(d)前記付加されたDNAフラグメントと共に葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法を提供する。場合によっては、付加されたDNAフラグメントは、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における酵素のための1個以上のコード領域を含む。
【0016】
本開示はまた、葉緑体ゲノムを含むシャトルベクターを提供する。ゲノムは、修飾され得る。また、本明細書中で提供されるのは、単離された機能的葉緑体ゲノムを含むベクターである。そのようなベクターにおいて有用な葉緑体ゲノムは、修飾され得る。
【0017】
本明細書中でさらに提供されるのは、(a)全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;および(b)葉緑体ゲノムからDNAを、除去、付加、突然変異、または再配列する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法である。そのような方法は、(c)編集されたゲノムを宿主生物に形質転換する工程;および(d)宿主生物における葉緑体機能を決定する工程をさらに含み得る。場合によっては、工程(b)、(c)、および(d)は繰り返され得る。さらに他の例において、葉緑体ゲノムは、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからなる群から選択される生物に由来する。他の例において、宿主生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからなる群から選択される。いくつかの実施形態について、その方法は、葉緑体ゲノムから重複DNAを除去する工程をさらに含み得る。他の実施形態において、ベクターは、全てまたは実質的に全ての葉緑体ゲノムを含む。本発明において有用な葉緑体ゲノムは、光合成生物からクローニングされ得るか、または合成葉緑体ゲノムであり得る。場合によっては、ベクターは、宿主細胞において本来は存在しない遺伝子、例えば、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路由来の遺伝子をさらに含む。
【0018】
本明細書中で提供されるさらに別の方法は、(a)全葉緑体ゲノムを含むベクターを提供する工程;(b)前記全葉緑体ゲノムの一部を欠失させる工程;および(c)前記欠失された部分無しで葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法である。本発明の別の態様において、単離された機能的葉緑体ゲノムを含む組成物が提供される。場合によっては、組成物は、前記葉緑体ゲノムへの修飾を含む。
【0019】
本明細書中でさらに提供されるのは、葉緑体ゲノムの少なくとも約10%を含む核酸、およびベクターにおける1個以上の核酸の操作を含むエキソビボベクターである。場合によっては、核酸は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからクローニングされる。場合によっては、核酸は、合成核酸である。本発明のベクターは、発現カセットをさらに含み得、発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。場合によっては、標的DNAは、オルガネラDNAである。本発明において有用なベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターにおける1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列であり得る。ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成、および/または宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらし得る。本発明のいくつかの生成物の例は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素を含む。
【0020】
また、本明細書中で提供されるのは、葉緑体ゲノムの少なくとも約20キロベースを含む核酸、および前記ベクターにおける1個以上の核酸の操作を含むエキソビボベクターである。場合によっては、核酸は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからクローニングされる。場合によっては、核酸は、合成核酸である。本発明のベクターは、発現カセットをさらに含み得、発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。場合によっては、標的DNAは、オルガネラDNAである。本発明において有用なベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターにおける1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列であり得る。ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成、および/または宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらし得る。本発明のいくつかの生成物の例は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素を含む。
【0021】
本明細書中でさらに提供されるのは、再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する方法であって、ゲノムのフラグメントを含む2つ以上のベクターを宿主細胞に導入すること、そのベクターをゲノムの少なくとも約90%を含む単一のベクター中に組み換えることを含み、それによって再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する方法である。場合によっては、宿主細胞は、真核細胞、例えば、S.cerevisiaeである。他の例において、ゲノムは、オルガネラゲノムである。オルガネラは、葉緑体、例えば、藻類、特にCh.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisのような微細藻からの葉緑体であり得る。場合によっては、2つ以上のベクターは、選択可能マーカーを含む。他の例において、前記フラグメントの少なくとも1つは、合成フラグメントである。さらに他の例において、ゲノムの一部を修飾することを含むさらなる工程が、この方法において有用である。そのような修飾は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含み得る。他の実施形態において、修飾は、外因性の核酸の付加であり、それは、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素の生成または増加された生成をもたらす。
【0022】
参照による援用
本明細書において言及される全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が、参照によって援用されるべきであることが具体的かつ個別に示されたのと同じ程度まで、参照によって本明細書中に援用される。
【0023】
本発明の新規な特徴は、添付の請求項において詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解が、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および付随する図面を参照することによって得られるだろう。
【0024】
図において、以下の略語が使用される:HIS3:酵母HIS3遺伝子;TRP1:酵母TRP1遺伝子;URA3:酵母URA3遺伝子;ADE2:酵母ADE2遺伝子;LYS2:酵母LYS2遺伝子;TEL:酵母テロメア;CEN:酵母動原体;ARS:自己複製配列,酵母複製起点;5FOA:5−フルオロオロチン酸;Kan:カナマイシン耐性遺伝子;P1プラスミドrep:P1プラスミドレプリコン;p1細胞溶解rep:p1細胞溶解レプリコン。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明のハイブリッドベクターの概要を提供する。本図はベクター概略図を示す。
【図1B】本発明のハイブリッドベクターの概要を提供する。本図は、生物間を往復するDNAを示す。
【図2】ハイブリッドベクターの構築を示す概略図である。
【図3】葉緑体ゲノムDNAにおける組込みの部位を示す概略図である。丸数字は、修飾のための標的部位を示す。囲みは、ハイブリッドギャップ充填ベクターによって標的化される部位を示す。
【図4A】修飾および/または安定化のための選択可能マーカーの概略図である。
【図4B】修飾および/または安定化のための選択可能マーカーの概略図である。
【図4C】修飾および/または安定化のための選択可能マーカーの概略図である。
【図5】葉緑体ゲノムDNA中へのハイブリッドベクターの導入についての概略図である。
【図6】藻類におけるハイブリッドベクター(および安定化ベクター)の組込みを示すPCRデータである。
【図7A】捕捉されたDNAの分析を示す。この図は、葉緑体を含有する単離されたベクターのEcoRIでの制限消化(L、ラダー;C、親ハイブリッドベクター;1、クローン1;2、クローン2)を示す。
【図7B】捕捉されたDNAの分析を示す。この図は、酵母を通って通過されたクローン1のEcoRIでの制限消化(L、ラダー;C;1、クローン1;およびA−M;酵母分離株)を示す。
【図7C】捕捉されたDNAの分析を示す。この図は、EcoRIで消化されて、C.reinhardtiiからの、放射性のHindIIIで消化された全DNAで調べられたクローン1および2のサザン分析を示す。
【図8A】葉緑体ゲノムDNAを含有する単離されたエキソビボベクターの構造を示す概略図である。
【図8B】葉緑体ゲノムDNAを含有する単離されたエキソビボベクターの構造を示す概略図である。
【図9】種々の選択条件下での親藻細胞および形質転換された藻細胞の増殖を示す。
【図10A】操作ベクターについての制限分析の概略図である。この図はベクター構造の概略図を示す。
【図10B】操作ベクターについての制限分析の概略図である。この図は、EcoRIでの制限分析によって修飾されたベクターの分析を示す。
【図10C】明細書に記載なし。
【図11A】バイオマス分解酵素を生成するための葉緑体ゲノムの修飾を示す。この図は、単離された形質転換体のPCRスクリーンを示す。
【図11B】バイオマス分解酵素を生成するための葉緑体ゲノムの修飾を示す。この図は、単離された形質転換体からのエンドキシラナーゼ活性を示す。
【図12A】部位3に標的化されたFPPシンターゼ発現カセットを用いてイソプレノイドを生成するために修飾された、単離された形質転換体のPCRスクリーンを示す。
【図12B】部位4に標的化されたFPPシンターゼ発現カセットを用いてイソプレノイドを生成するために修飾された、単離された形質転換体のPCRスクリーンを示す。
【図13】酵母における組換えを使用する部分的な葉緑体ゲノムの捕捉を示す概略図である。
【図14】酵母における組換えを使用する全葉緑体ゲノムの捕捉を示す概略図である。
【図15】酵母における組換えを使用する全葉緑体ゲノムの再組立てを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に示され、かつ説明されているが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者に明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多くの変更、変化、および置換は、当業者に明らかであろう。本明細書中に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替案が、本発明の実施において利用され得ることは理解されるべきである。添付の請求項が本発明の範囲を定義すること、およびこれらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの均等物が本発明によってカバーされることが意図される。
【0027】
本明細書中で使用される技術用語および科学用語は、そうでないことが定義されていない限り、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者に公知の種々の材料および方法論に対する参照が本明細書中でなされる。組換えDNA技術の一般的な原理を記載する標準的な参考文献としては、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.,1989;Kaufmanら編、「Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine」、CRC Press,Boca Raton,1995;およびMcPherson編、「Directed Mutagenesis:A Practical Approach」、IRL Press,Oxford,1991が挙げられる。本発明の選択された態様について有用な、酵母遺伝学の一般的な方法論および原理を教示する標準的な参照文献としては、Shermanら、「Laboratory Course Manual Methods in Yeast Genetics」、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986およびGuthrieら、「Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology」,Academic,New York,1991が挙げられる。
【0028】
当業者に公知の任意の好適な材料および/または方法が、本発明を実行することにおいて利用されることができる。本発明を実施するための材料および/方法が記載される。以下の説明および実施例において参照される材料、試薬などは、そうでない断りがない限り、商業的供給源から入手可能である。本発明は、DNAの大きな断片を捕捉および修飾するための方法を教示し、そのためのツールを記載する。それは、生物またはオルガネラの全ゲノム、またはその一部を含む、ゲノムDNAを修飾するために特に有用である。本発明の新規な予言的使用もまた記載される。本発明は、大きな核酸の操作および送達に関する。本発明は、組換えクローニングベクターおよび組換えクローニング系、ならびにその使用方法にさらに関する。
【0029】
ゲノム(例えば、葉緑体ゲノム)を遺伝的に操作する現代の方法は、時間がかかり(>1カ月)、かつ同時に限られた数の操作しか可能にしない。もし標的ゲノムに対する複数の修飾が所望されるなら、プロセスは反復されねばならず、これは所望の株を生成するために必要とされる時間をさらに増大する。代謝工学および/または合成生物学は、ゲノムに対する多くの修飾を必要とするので、これらの技術は、ゲノムへの修飾の急速な導入に従わない。したがって、短い期間で葉緑体ゲノムの複数の修飾を可能にする新しい技術が、葉緑体ゲノムへの代謝工学および/または合成生物学の適用を可能にするだろう。本明細書中の開示は、そのような技術を記載する。
【0030】
本発明は、標的細胞およびオルガネラ(例えば、葉緑体)からの大きな核酸の、捕捉、クローニング、および操作のための用途の広い組換えアプローチを提供する。本発明の1つの態様は、組換えクローニング系を提供する。より具体的には、本発明は、いくつかの実施形態において大きな核酸セグメントの単離および操作を調節するために相同組換え技術に依存するベクターを提供する。本発明の別の態様は、大きな核酸をクローニングするために、操作するために、および標的細胞および/または葉緑体のようなオルガネラに送達するために、そのような組換えクローニングベクターを使用するための方法を提供する。
【0031】
1つの好ましい実施形態において、相同組換えはインビトロで実施される。本発明の特に好ましい実施形態において、相同組換えはインビボで実施される。より好ましい実施形態において、相同組換えは藻細胞において発生する。別のより好ましい実施形態において、相同組換えは酵母細胞において発生する。1つの好ましい実施形態において、相同組換えSaccharomyces cerevisiaeまたはSaccharomyces pombeにおいて発生する。酵母において、有効な組換えプロセスと多くの選択可能マーカーの利用可能性との組み合わせは、標的DNA配列の急速かつ複雑な操作を提供する。いったん、修飾の全てが葉緑体ゲノムDNAを含有するエキソビボベクターに対してなされると、全ベクターが単一の形質転換工程において葉緑体中に導入されることができる。したがって、酵母技術を利用することは、葉緑体ゲノムへの代謝工学および/または合成生物学の適用を可能にするだろう。本発明の1つの態様は、酵母要素、細菌性複製起点、および少なくとも20kbのゲノムDNAを含む単離されたベクターを提供する。いつくかのベクターにおいて、酵母要素は、酵母動原体、酵母自己複製配列、またはそれらの組み合わせである。DNAは、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisに由来し得る。いくつかの実施形態において、ゲノムDNAは、例えば、非相同または相同ポリヌクレオチドの挿入によって、1個以上の核酸塩基の欠失によって、1個以上の核酸塩基の突然変異によって、1個以上のポリヌクレオチドの再配列によって、またはそれらの組み合わせによって修飾される。場合によっては、修飾は合成修飾である。本発明のベクターは、宿主細胞に形質転換される場合に、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成をもたらし得る。そのような生成物のいくつかの例は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドを含む。いくつかの宿主細胞において、ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物、例えば、バイオマス分解酵素、テルペン、またはテルペノイドの増加された生成をもたらす。本発明のベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、酵母マーカー、酵母抗生物質耐性マーカー、細菌マーカー、細菌抗生物質耐性マーカー、藻類マーカー、藻類抗生物質耐性マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。本発明のベクターは、1)1〜200個の遺伝子;2)全ての本質的な葉緑体遺伝子;および/または3)30〜400kbを含む葉緑体ゲノムDNAもまた含有する。
【0032】
また、本明細書中に記載されるのは、本明細書中に記載されるベクターを含む宿主細胞である。例示的な宿主細胞は、本来は非光合成細胞であっても光合成細胞であっても良く、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisを含む。
【0033】
本発明の別の態様において、ベクターを製造するための方法が提供され、その方法は、標的DNAを、酵母動原体、酵母自己複製配列、および細菌性複製起点を含むベクターに挿入すること、生物をそのベクターで形質転換すること、および、葉緑体ゲノムの一部を捕捉することを含み、したがって、葉緑体ゲノムの一部を有するベクターを製造する。場合によっては、標的DNAは、葉緑体ゲノムDNAである。この方法は、長さ10〜400kbの、ゲノムの一部を捕捉するために使用され得る。場合によっては、捕捉工程は、組換えによって起こる。葉緑体ゲノムの捕捉された部分は、ベクターを有する生物中に同時形質転換され得、したがって、組換え工程がインビボで起こり得る。本明細書中に開示される方法を実施するために使用される生物は、真核生物および/または光合成生物であり得る。場合によっては、生物は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisである。本明細書中に開示される方法を実施するために使用される生物はまた、非光合成生物、例えば酵母であり得る。場合によっては、非光合成生物は、外因性の葉緑体DNAを含有し得る。いくつかの実施形態において、葉緑体ゲノムの一部を修飾するさらなる工程が利用される。修飾は、相同組換えによって達成され得る。そのような組換えは、生物、例えば、真核生物および/または光合成生物において起こり得る。場合によっては、生物は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisである。他の例において、生物は、非光合成生物、例えば、酵母である。修飾工程を有する実施形態において、その工程は、ポリヌクレオチドの付加、1個以上の核酸塩基の欠失、1個以上の核酸塩基の突然変異、ポリヌクレオチドの再配列、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0034】
本明細書中にさらに開示されるのは、本質的な葉緑体遺伝子、選択可能マーカー、およびベクター中の1個以上の核酸の操作を含む、単離されたベクターである。場合によっては、本質的な葉緑体遺伝子は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisのような非維管束光合成生物からクローニングされる。本明細書中に記載されるベクターにおける使用のための本質的な葉緑体遺伝子は、合成遺伝子であり得る。本明細書中に記載されるベクターは、発現カセットをさらに含み得、それは、標的DNA、例えば、オルガネラDNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。本明細書において記載されるベクターはまた、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせを含有し得る。場合によっては、本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1種以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である。本質的な葉緑体遺伝子は、200個までの遺伝子を含み、および/または400kbまでからなり得る。本明細書中に記載されるベクターのうちのいくつかにおいて、1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、変異、または再配列である。場合によっては、宿主細胞におけるベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来は生成されない生成物を生成する。他の例において、本発明のベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらす。そのような生成物の例は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドである。
【0035】
本明細書中に記載されるように、本発明の1つの態様は、本発明のベクターを含む単離された葉緑体である。別の態様において、本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。本発明において有用な宿主細胞は、本来は非光合成細胞であっても良いし、本来は光合成細胞であっても良い。本発明のために有用な生物の例は、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisを含む。
【0036】
本発明の別の態様において、細胞または生物を形質転換するための方法が提供され、その方法は、前記細胞または生物中に、全ての本質的な葉緑体遺伝子、および任意選択的に前記細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子を含むベクターを挿入することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、前記細胞または生物において実質的に全ての葉緑体ゲノムを除去する工程をさらに含む。この方法のために有用な細胞または生物は、光合成細胞または生物、非光合成細胞または生物、および/または真核細胞または生物であり得る。この方法のために有用な細胞または生物は非維管束細胞または生物であり得る。場合によっては、この方法における使用のためのベクターはまた、発現カセットを含み得、その発現カセットは、非核DNA中に組み込まれることができ得る。1つの実施形態において、その細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における遺伝子である。別の実施形態において、本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1つ以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である。
【0037】
本明細書中にさらに提供されるのは、生物を、葉緑体機能を行うのに十分な1個以上のポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換する工程を含む、生物を修飾するための方法である。場合によっては、この方法のために有用なベクターは、前記生物から化合物を生成または分泌するための配列をさらに含む。場合によっては、化合物はイソプレノイドである。他の例において、ベクターは、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含む。さらに他の例において、本質的な葉緑体遺伝子は、再配列または突然変異される。いくつかの実施形態のために有用な生物は、形質転換の前に本質的に葉緑体ゲノムを含まない。
【0038】
本明細書中で提供されるさらに別の方法は、生物から生成物を作製するための方法であって、少なくとも20kbのゲノムDNA、および、(i)前記生物において本来は存在しない遺伝子;(ii)前記生物において本来存在する遺伝子の欠失;(iii)前記生物において本来存在する遺伝子の再配列;および(iv)前記生物において本来存在する遺伝子における突然変異のうちの1つ以上を含むベクターで生物を形質転換する工程を含む方法である。場合によっては、生物は、本来は光合成生物である。他の例において、さらなる遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における酵素をコードする。さらに別の実施形態において、本開示は、葉緑体および、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを細胞または生物中に挿入することを含む、細胞または生物を形質転換するための方法を提供する。
【0039】
本開示はまた、(a)1個以上の本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;(b)前記ベクターにDNAフラグメントを付加する工程;(c)工程(b)によって生成されたベクターで細胞または生物を形質転換する工程;および(d)前記付加されたDNAフラグメントと共に葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法を提供する。場合によっては、付加されたDNAフラグメントは、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における酵素のための1個以上のコード領域を含む。
【0040】
本開示はまた、葉緑体ゲノムを含むシャトルベクターを提供する。ゲノムは、修飾され得る。また、本明細書中で提供されるのは、単離された機能的葉緑体ゲノムを含むベクターである。そのようなベクターにおいて有用な葉緑体ゲノムは、修飾され得る。
【0041】
本明細書中でさらに提供されるのは、(a)全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;および(b)葉緑体ゲノムからDNAを、除去、付加、突然変異、または再配列する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法である。そのような方法は、(c)編集されたゲノムを宿主生物に形質転換する工程;および(d)宿主生物における葉緑体機能を決定する工程をさらに含み得る。場合によっては、工程(b)、(c)、および(d)は繰り返され得る。さらに他の例において、葉緑体ゲノムは、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからなる群から選択される生物に由来する。他の例において、宿主生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからなる群から選択される。いくつかの実施形態について、その方法は、葉緑体ゲノムから重複DNAを除去する工程をさらに含み得る。他の実施形態において、ベクターは、全てまたは実質的に全ての葉緑体ゲノムを含む。本発明において有用な葉緑体ゲノムは、光合成生物からクローニングされ得るか、または合成葉緑体ゲノムであり得る。場合によっては、ベクターは、宿主細胞において本来は存在しない遺伝子、例えば、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路由来の遺伝子をさらに含む。
【0042】
本明細書中で提供されるさらに別の方法は、(a)全葉緑体ゲノムを含むベクターを提供する工程;(b)前記全葉緑体ゲノムの一部を欠失させる工程;および(c)前記欠失された部分無しで葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法である。本発明の別の態様において、単離された機能的葉緑体ゲノムを含む組成物が提供される。場合によっては、組成物は、前記葉緑体ゲノムへの修飾を含む。
【0043】
本明細書中でさらに提供されるのは、葉緑体ゲノムの少なくとも約10%を含む核酸、およびベクターにおける1個以上の核酸の操作を含む生体外ベクターである。場合によっては、核酸は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからクローニングされる。場合によっては、核酸は、合成核酸である。本発明のベクターは、発現カセットをさらに含み得、発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。場合によっては、標的DNAは、オルガネラDNAである。本発明において有用なベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターにおける1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列であり得る。ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成、および/または宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらし得る。本発明のいくつかの生成物の例は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素を含む。
【0044】
また、本明細書中で提供されるのは、葉緑体ゲノムの少なくとも約20キロベースを含む核酸、および前記ベクターにおける1個以上の核酸の操作を含む生体外ベクターである。場合によっては、核酸は、非維管束光合成生物、例えば、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisからクローニングされる。場合によっては、核酸は、合成核酸である。本発明のベクターは、発現カセットをさらに含み得、発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含み得る。場合によっては、標的DNAは、オルガネラDNAである。本発明において有用なベクターは、1種以上の選択マーカー、例えば、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターにおける1個以上の核酸の操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列であり得る。ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成、および/または宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらし得る。本発明のいくつかの生成物の例は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素を含む。
【0045】
本明細書中でさらに提供されるのは、再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する方法であって、ゲノムのフラグメントを含む2つ以上のベクターを宿主細胞に導入すること、そのベクターをゲノムの少なくとも約90%を含む単一のベクター中に組み換えることを含み、それによって再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する方法である。場合によっては、宿主細胞は、真核細胞、例えば、S.cerevisiaeである。他の例において、ゲノムは、オルガネラゲノムである。オルガネラは、葉緑体、例えば、藻類、特にCh.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricauda、またはH.pluvalisのような微細藻からの葉緑体であり得る。場合によっては、2つ以上のベクターは、選択可能マーカーを含む。他の例において、前記フラグメントの少なくとも1つは、合成フラグメントである。さらに他の例において、ゲノムの一部を修飾することを含むさらなる工程が、この方法において有用である。そのような修飾は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含み得る。他の実施形態において、修飾は、外因性の核酸の付加であり、それは、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素の生成または増加された生成をもたらす。
【0046】
大きなDNAのクローニングおよび内容物
【0047】
本発明の利点は、本発明が、最大で全ての葉緑体遺伝子(または配列)からなる葉緑体ゲノムDNAを含有するベクターのクローニング、操作、および送達を提供することである。ベクター中に含有される葉緑体ゲノムDNAは、DNAの1つの隣接フラグメントでのハイブリッドクローニングベクターの組換えによって、または、DNAの2つ以上の隣接フラグメントの組換えによって得られることができる。
【0048】
本発明の方法および組成物は、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片を含み得、ミトコンドリアDNAまたは色素体DNA(例えば、葉緑体DNA)のようなオルガネラからのDNAを含み得る。捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片はまた、オルガネラのゲノム、例えば、葉緑体ゲノムの全体を含み得る。他の実施形態において、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片は、葉緑体ゲノムの一部を含む。葉緑体ゲノムは、藻類、苔植物類(例えば、コケ、シダ)、裸子植物類(例えば、針葉樹)、および被子植物類(例えば、顕花植物、樹木、草、草本、低木)を含む、任意の維管束植物または非維管束植物に由来し得る。葉緑体ゲノム、またはその本質的な部分は、合成DNA、再配列されたDNA、欠失、付加、および/または突然変異を含み得る。葉緑体ゲノム、またはその一部は、1個以上の欠失、付加、突然変異、および/または再配列を含み得る。欠失、付加、突然変異、および/または再配列は、生物において自然に見出される、例えば自然に起こる突然変異であっても良いし、本来は自然に見出されないものであっても良い。多くの生物の葉緑体ゲノムまたは色素体ゲノムは、例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/static/euk_o.htmlで利用可能なNCBIのOrganelle Genomesセクションからの公開データベースにおいて広く利用可能である。
【0049】
本明細書中に記載される標的DNA配列は、コントロール配列(天然に存在する配列)と比べて、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個の欠失、付加、突然変異、および/または再配列を含み得る。いくつかの実施形態において、突然変異は、機能的または非機能的であり得る。例えば、機能的突然変異は、突然変異のないコントロール細胞と比べて、突然変異が宿主細胞中に存在するときに、細胞の機能に対して影響を有し得る。非機能的突然変異は、機能において影響しない場合があり、例えば、突然変異を有する細胞と比べて、突然変異のない宿主細胞の表現型において識別可能な差異は存在しない。
【0050】
捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片(例えば、標的DNA)は、最小の葉緑体ゲノムまたは最小化された葉緑体ゲノム(例えば、葉緑体の機能性に必要とされる、最小の数の遺伝子および/またはDNAフラグメント)を含み得る。捕捉および/または修飾されたDNAは、本質的な葉緑体遺伝子を含み得、それは、一部または全て、または実質的に全ての本質的な葉緑体遺伝子を含み得る。本質的な遺伝子は、1つ以上の代謝プロセスまたは生化学的経路に不可欠な遺伝子であり得る。本質的な遺伝子は、光合成、炭素固定、または炭化水素生成のような葉緑体機能に必要とされる遺伝子であり得る。本質的な遺伝子はまた、転写、翻訳、または遺伝子発現に影響する他のプロセスのような遺伝子発現に不可欠な遺伝子であり得る。本質的な遺伝子は、突然変異または再配列を含み得る。本質的な遺伝子はまた、機能を実施するための遺伝子の最小限の機能的セットを含み得る。例えば、特定の機能(例えば、光合成)は、遺伝子/遺伝子産物のセットによって非効率的に実施されるかもしれないが、しかしながら、機能がそれでも実施されているので、このセットは、本質的な遺伝子をそれでも含むだろう。
【0051】
修飾されたDNAは、少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、または50個の本質的な遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、DNAは、長さ150kbまでの本質的な葉緑体ゲノム配列を含み得る。DNAは、本質的な葉緑体遺伝子、ならびに非本質的な葉緑体遺伝子配列を含み得る。DNAは、一本鎖または二本鎖、線状または環状、弛緩または超らせんであり得る。DNAはまた、発現カセットの形態であり得る。例えば、発現カセットは、宿主細胞において発現されるべき本質的な遺伝子を含み得る。発現カセットは、1個以上の本質的な遺伝子、ならびに本質的な遺伝子の発現を促進するDNA配列を含み得る。発現カセットはまた、宿主の標的DNAへの組み込みのための領域を含み得る。発現カセットはまた、1個以上の本質的な遺伝子、および発現カセットを含む宿主細胞において本来は存在しない1個以上の遺伝子を含み得る。当業者は、発現カセットの上述の態様の種々の組み合わせを容易に確認するだろう。
【0052】
他の例において、捕捉および/または修飾されたDNAの断片は、色素体またはオルガネラの全ゲノムを含み得る。例えば、色素体ゲノムの約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上。1つの実施形態において、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片は、色素体または細胞の全ゲノムの10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、または90〜100%を含み得る。
【0053】
さらに他の例において、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片は、約10kb、約11kb、約12kb、約13kb、約14kb、約15kb、約16kb、約17kb、約18kb、約19kb、約20kb、約21kb、約22kb、約23kb、約24kb、約25kb、約26kb、約27kb、約28kb、約29kb、約30kb、約31kb、約32kb、約33kb、約34kb、約35kb、約36kb、約37kb、約38kb、約39kb、約40kb、約41kb、約42kb、約43kb、約44kb、約45kb、約46kb、約47kb、約48kb、約49kb、約50kb、約51kb、約52kb、約53kb、約54kb、約55kb、約56kb、約57kb、約58kb、約59kb、約60kb、約61kb、約62kb、約63kb、約64kb、約65kb、約66kb、約67kb、約68kb、約69kb、約70kb、約71kb、約72kb、約73kb、約74kb、約75kb、約76kb、約77kb、約78kb、約79kb、約80kb、約81kb、約82kb、約83kb、約84kb、約85kb、約86kb、約87kb、約88kb、約89kb、約90kb、約91kb、約92kb、約93kb、約94kb、約95kb、約96kb、約97kb、約98kb、約99kb、約100kb、約101kb、約102kb、約103kb、約104kb、約105kb、約106kb、約107kb、約108kb、約109kb、約110kb、約111kb、約112kb、約113kb、約114kb、約115kb、約116kb、約117kb、約118kb、約119kb、約120kb、約121kb、約122kb、約123kb、約124kb、約125kb、約126kb、約127kb、約128kb、約129kb、約130kb、約131kb、約132kb、約133kb、約134kb、約135kb、約136kb、約137kb、約138kb、約139kb、約140kb、約141kb、約142kb、約143kb、約144kb、約145kb、約146kb、約147kb、約148kb、約149kb、約150kb、約151kb、約152kb、約153kb、約154kb、約155kb、約156kb、約157kb、約158kb、約159kb、約160kb、約161kb、約162kb、約163kb、約164kb、約165kb、約166kb、約167kb、約168kb、約169kb、約170kb、約171kb、約172kb、約173kb、約174kb、約175kb、約176kb、約177kb、約178kb、約179kb、約180kb、約181kb、約182kb、約183kb、約184kb、約185kb、約186kb、約187kb、約188kb、約189kb、約190kb、約191kb、約192kb、約193kb、約194kb、約195kb、約196kb、約197kb、約198kb、約199kb、約200kb、約201kb、約202kb、約203kb、約204kb、約205kb、約206kb、約207kb、約208kb、約209kb、約210kb、約211kb、約212kb、約213kb、約214kb、約215kb、約216kb、約217kb、約218kb、約219kb、約220kb、約221kb、約222kb、約223kb、約224kb、約225kb、約226kb、約227kb、約228kb、約229kb、約230kb、約231kb、約232kb、約233kb、約234kb、約235kb、約236kb、約237kb、約238kb、約239kb、約240kb、約241kb、約242kb、約243kb、約244kb、約245kb、約246kb、約247kb、約248kb、約249kb、約250kb、約251kb、約252kb、約253kb、約254kb、約255kb、約256kb、約257kb、約258kb、約259kb、約260kb、約261kb、約262kb、約263kb、約264kb、約265kb、約266kb、約267kb、約268kb、約269kb、約270kb、約271kb、約272kb、約273kb、約274kb、約275kb、約276kb、約277kb、約278kb、約279kb、約280kb、約281kb、約282kb、約283kb、約284kb、約285kb、約286kb、約287kb、約288kb、約289kb、約290kb、約291kb、約292kb、約293kb、約294kb、約295kb、約296kb、約297kb、約298kb、約299kb、約300kb、約301kb、約302kb、約303kb、約304kb、約305kb、約306kb、約307kb、約308kb、約309kb、約310kb、約311kb、約312kb、約313kb、約314kb、約315kb、約316kb、約317kb、約318kb、約319kb、約320kb、約321kb、約322kb、約323kb、約324kb、約325kb、約326kb、約327kb、約328kb、約329kb、約330kb、約331kb、約332kb、約333kb、約334kb、約335kb、約336kb、約337kb、約338kb、約339kb、約340kb、約341kb、約342kb、約343kb、約344kb、約345kb、約346kb、約347kb、約348kb、約349kb、約350kb、約351kb、約352kb、約353kb、約354kb、約355kb、約356kb、約357kb、約358kb、約359kb、約360kb、約361kb、約362kb、約363kb、約364kb、約365kb、約366kb、約367kb、約368kb、約369kb、約370kb、約371kb、約372kb、約373kb、約374kb、約375kb、約376kb、約377kb、約378kb、約379kb、約380kb、約381kb、約382kb、約383kb、約384kb、約385kb、約386kb、約387kb、約388kb、約389kb、約390kb、約391kb、約392kb、約393kb、約394kb、約395kb、約396kb、約397kb、約398kb、約399kb、約400kb、またはそれ以上のゲノム(例えば、核またはオルガネラの)DNAを含み得る。いくつかの実施形態において、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片は、約10〜400kb、約50〜350kb、約100〜300kb、約100〜200kb、約200〜300kb、約150〜200kb、約200〜250kbのゲノムDNAを含み得る。
【0054】
さらに他の例において、捕捉および/または修飾されたDNAの大きな断片は、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、約20個、約21個、約22個、約23個、約24個、約25個、約26個、約27個、約28個、約29個、約30個、約31個、約32個、約33個、約34個、約35個、約36個、約37個、約38個、約39個、約40個、約41個、約42個、約43個、約44個、約45個、約46個、約47個、約48個、約49個、約50個、約51個、約52個、約53個、約54個、約55個、約56個、約57個、約58個、約59個、約60個、約61個、約62個、約63個、約64個、約65個、約66個、約67個、約68個、約69個、約70個、約71個、約72個、約73個、約74個、約75個、約76個、約77個、約78個、約79個、約80個、約81個、約82個、約83個、約84個、約85個、約86個、約87個、約88個、約89個、約90個、約91個、約92個、約93個、約94個、約95個、約96個、約97個、約98個、約99個、約100個、約101個、約102個、約103個、約104個、約105個、約106個、約107個、約108個、約109個、約110個、約111個、約112個、約113個、約114個、約115個、約116個、約117個、約118個、約119個、約120個、約121,122個、約123個、約124個、約125個、約126個、約127個、約128個、約129個、約130個、約131個、約132個、約133個、約134個、約135個、約136個、約137個、約138個、約139個、約140個、約141個、約142個、約143個、約144個、約145個、約146個、約147個、約148個、約149個、約150個、約151個、約152個、約153個、約154個、約155個、約156個、約157個、約158個、約159個、約160個、約161個、約162個、約163個、約164個、約165個、約166個、約167個、約168個、約169個、約170個、約171個、約172個、約173個、約174個、約175個、約176個、約177個、約178個、約179個、約180個、約181個、約182,約183個、約184個、約185個、約186個、約187個、約188個、約189個、約190個、約191個、約192個、約193個、約194個、約195個、約196個、約197個、約198個、約199個、約200個、約201個、約202個、約203個、約204個、約205個、約206個、約207個、約208個、約209個、約210個、約211個、約212個、約213個、約214個、約215個、約216個、約217個、約218個、約219個、約220個、約221個、約222個、約223個、約224個、約225個、約226個、約227個、約228個、約229個、約230個、約231個、約232個、約233個、約234個、約235個、約236個、約237個、約238個、約239個、約240個、約241個、約242個、約243個、約244個、約245個、約246個、約247個、約248個、約249個、約250個、約251個、約252個、約253個、約254個、約255個、約256個、約257個、約258個、約259個、約260個、約261個、約262個、約263個、約264個、約265個、約266個、約267個、約268個、約269個、約270個、約271個、約272個、約273個、約274個、約275個、約276個、約277個、約278個、約279個、約280個、約281個、約282個、約283個、約284個、約285個、約286個、約287個、約288個、約289個、約290個、約291個、約292個、約293個、約294個、約295個、約296個、約297個、約298個、約299個、約300個、またはそれ以上のオープンリーディングフレーム、部分的オープンリーディングフレーム、偽遺伝子、および/または繰り返し配列を含み得る。
【0055】
本発明はまた、カセットにすることができる葉緑体ゲノムまたはその一部(例えば、葉緑体ゲノムまたはその機能的部分を含む除去可能なDNAフラグメント)を含むベクターを提供する。本発明のベクターは、機能的葉緑体ユニット(例えば、代謝プロセス、光合成、遺伝子発現、光化学系I、光化学系IIに不可欠なユニット)を含み得る。本発明のベクターは、移植可能な葉緑体ゲノムまたはその一部を含み得る。さらに、本発明のベクターは、転移可能な葉緑体ゲノムまたはその一部を含み得る。他の実施形態において、ベクターは、1)1個以上の修飾されたDNAの大きな断片;2)光合成を実行するのに必要な全ての遺伝子;3)葉緑体の生存および/または機能に必要な全ての遺伝子;4)本質的な葉緑体遺伝子;および/または5)光合成のような1つ以上の葉緑体機能を実施するのに十分な、本来存在するかまたは修飾された葉緑体遺伝子を含む。ベクターは、一部、実質的に全て、または全ての本質的な葉緑体遺伝子を含み得る。ベクターは、少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、またはそれ以上の本質的な遺伝子を含み得る。
【0056】
ベクターは、長さ10kb、20kb、30kb、40kb、50kb、60kb、70kb、80kb、90kb、100kb、110kb、120kb、130kb、140kb、150kb、160kb、170kb、180kb、190kb、200kb、210kb、220kb、230kb、240kb、250kb、またはそれ以上の葉緑体DNAを含み得る。ベクターは、本質的な葉緑体遺伝子、ならびに非本質的な葉緑体遺伝子配列を含み得る。ベクターは、1個以上、または全ての本質的な葉緑体遺伝子、および/または1個以上の、ベクターを含む宿主細胞において本来は存在しない遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、葉緑体遺伝子、および葉緑体には本来存在しない遺伝子を含み得る。ベクターは、1個以上の本質的な葉緑体遺伝子、および/または葉緑体機能、光合成、炭素固定、および/または炭化水素生成に関わる1個以上のDNA配列または遺伝子を含み得る。例えば、ベクターは、光合成に必要な配列、ならびにテルペンシンターゼ、またはテルペンまたはイソプレノイドのような炭化水素を生成する他のポリペプチドをコードするDNA配列のような、イソプレノイド生成、MVAおよび/またはMEP経路に関わる配列を含み得る。本発明はさらに、大きな標的核酸をクローニング、操作、および細胞、あるいは、例えば酵母または細菌のような粒子に送達するための方法をさらに提供する。この方法の特定の実施形態は、ハイブリッド酵素−細菌クローニング系を利用する(例えば、米国特許第5866404号および同第7083971号、ならびにHokansonら、(2003)Human Gene Ther.:14:329−339を参照のこと)。本明細書中(例えば、クローニング系)のベクターは、酵母および細菌の両方における機能および複製のための要素を含有するシャトルベクターからなり、それがいずれの生物においても安定して機能および複製することを可能にする。この、機能的かつ複製的要素の組成は、両方の遺伝子工学系の利益を享受するハイブリッド系を産出する。酵母(例えば、S.cerevisiae)の遺伝学はよく理解されており、分子生物学ツールの強力な取り合わせが酵母における遺伝子工学のために存在する。
【0057】
本発明の別の態様は、2つのアームおよび標的核酸の間の相同組換えによってギャップ充填ベクターを製造する。さらに別の実施形態において、少なくとも1つのアームは、複製起点をさらに含む。本発明の別の実施形態において、各アームは、希少制限エンドヌクレアーゼ認識部位をさらに含む。相同組換えは、インビトロまたはインビボで、例えば、真菌細胞(例えば、S.cerevisiae、Sz.pombe、またはU.maydis)において実施され得る。本発明はまた、本発明による組換えクローニング系またはベクターを、例えば、真菌細胞(例えば、S.cerevisiae、Sz.pombe、またはU.maydis)において含む真核宿主細胞を提供する。
【0058】
ギャップ充填線状ベクターは、(例えば、T4リガーゼを使用して)インビトロで、またはインビボで、例えば細菌において、環状ベクターに変換され得る。目的の環状ベクターは、増幅、精製、切断、および使用されて、直接的に細胞中に、またはその後の標的細胞への送達のための好適な送達系中にのいずれかで導入されるべき十分な量のDNAを回収することができる。その方法は、いかなる大きな細菌性ゲノムまたは非細菌性ゲノムもクローニングおよび修飾し、そして組換えベクターとしてのその使用を容易に促進するための大きな多用途性を提供する。細胞中へのギャップ充填ベクターの直接送達は、当該分野において周知の方法、例えば、リン酸カルシウム形質転換法またはエレクトロポレーション(例えば、Sambrookら(前出)を参照のこと)によって実施され得る。
【0059】
したがって、本発明は、(a)標的配列を含有するギャップ充填ベクターを製造する工程;(b)任意選択的に、本発明のギャップ充填ベクターセグメントを環状にする工程;(c)そのベクターを増殖させる工程;および(d)そのギャップ充填ベクターを送達ユニット中に導入する工程を含む、組換え送達ユニットを製造するための方法を提供する。
【0060】
細菌系は、DNAを増殖および精製するため、ならびに遺伝的修飾および経路でのその効果を機能的に試験するために有用である。本発明の1つの実施形態は、任意の大きなゲノムのクローニングおよび修飾を助け、そして経路のクローニングおよび導入を容易に促進するクローニング系を提供する。全経路を送達する能力により、本発明の特定の実施形態は、問題解決のための生物学的アプローチを系に可能にさせる。
【0061】
一般的に、標的DNA(例えば、ゲノムDNA)は、ベクターにおいて相同組換えを可能にする部位を作成することによって捕捉され得る。例えば、そのような部位は、限定されないが、ギャップがベクターにおいて、酵母への形質転換の前の制限酵素消化によって通常は作成されるギャップ修復クローニングによって作成され得る。標的DNAがベクターと混合される場合、標的DNAはベクター中に組換えられる。この操作は「ギャップ充填」と呼ばれる。この組換えは、細菌、酵母、元の宿主生物、別の生物、またはインビトロで起こることができる。いくつかの実施形態において、相同組換えの高い確率のために、組換えは酵母で実施される。いったん捕捉されると、標的DNAは、DNA配列を付加、変更、または除去することを含む多くの方法で修飾されることができる。いくつかの実施形態において、標的DNAはゲノムDNAである。他の実施形態において、標的DNAはオルガネラ(例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体)DNAである。
【0062】
いくつかの実施形態において、標的DNAは、遺伝子、コード配列、部分コード配列、調節要素、陽性および/または陰性選択マーカー、組換え部位、制限部位、および/またはコドンバイアス部位を、付加、変更、または除去することによって修飾される。例えば、標的DNA配列は、形質転換される生物における発現のためにコドンに偏りがあり得る。当業者は、所定のアミノ酸を特定するためのヌクレオチドコドンを使用する特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を十分理解している。理論に束縛されないが、宿主細胞の好むコドンを使用することによって、翻訳の確率が高くなり得る。したがって、宿主細胞における改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用の頻度に近くなるように遺伝子を設計することが望ましい場合がある。本発明のコドンは、A/Tリッチ、例えば、コドンの第3ヌクレオチド位置においてA/Tリッチであり得る。典型的には、A/Tリッチコドンバイアスは、藻類に対して使用される。いくつかの実施形態において、コドンの第3ヌクレオチド位置の少なくとも50%がAまたはTである。他の実施形態において、コドンの第3ヌクレオチド位置の少なくとも60%、70%、80%、90%、または99%がAまたはTである(米国出願公開第2004/0014174号も参照のこと)。
【0063】
そのような操作は当該分野においてよく知られており、多くの方法で実施されることができる。いくつかの実施形態において、修飾は、クローニングされた配列を使用して実施され得る。他の実施形態において、修飾は、合成DNAを使用して実施され得る。
【0064】
遺伝子操作は、標的DNAの大きな断片(例えば、染色体、ゲノム)をクローニングすること、ならびに/または遺伝子間の機能的関係、例えば、代謝経路またはオペロンに基づいて標的DNAを分割および再編成することを含む。遺伝子操作はまた、代謝経路を導入および除去すること、DNAを機能的ユニット(例えば、代謝経路、合成オペロン)に組み換えること、および/またはDNAの大きな断片における不安定な部位(例えば、天然または非天然の宿主がDNAの配列を欠失または組換えする傾向にある部位)を決定することを含む。
【0065】
標的DNAは、原核生物からのDNAであり得る。標的DNAはまた、真核生物からのゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、または葉緑体DNAであり得る。そこからのゲノムDNAおよび/またはオルガネラDNAが標的DNAとなり得るそのような生物の例は、限定されないが、Z.mobilis、藻類(例えば、Chlamydomonas reinhardtiiのような微細藻または大型藻)、紅藻、緑藻、珪藻、黄緑藻、灰色藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ類、ハプト藻、クリプトモナド、渦鞭毛藻、または植物プランクトンを含む。当業者は、これらの生物が単に例として列挙されること、および本明細書中に開示される方法が細菌、植物、真菌、原生生物、および動物を含むいかなる生物からの大きなDNAにも適用可能であることを認識するだろう。本発明の遺伝子操作は、形質転換された細胞に、DNAの特定の配列を保存させ、そしてその配列をその子孫に安定的に維持させる配列を除去または挿入することによって、DNAの大きな断片を安定化させることを含み得る。遺伝子操作または、標的DNA、ベクターDNA、および/または合成DNAのコドンを変更して、宿主生物の任意のコドンバイアスを反映することを含み得る。さらに、本発明の遺伝子操作は、生物が生存するために必要な遺伝子の最小限のセットを決定することを含み得る。別の実施形態において、本発明の遺伝子操作は、特定の代謝経路が作成されて維持されるのに必要な遺伝子の最小限のセットを決定することを含む。
【0066】
本発明の遺伝子操作は、ゲノム内および2つのゲノム間の両方の重複遺伝子(例えば、核ゲノムと葉緑体ゲノムとの間の重複)を決定することを含み得る。さらに、本発明の遺伝子操作は、人工的に合成されることができるDNAの機能的配列(例えば、特定の代謝経路における遺伝子、機能的ゲノムの遺伝子)を決定することを含み得る。別の実施形態において、本発明の遺伝子操作は、カセット(例えば、遺伝子が容易に挿入または除去されることができるベクター内の部位)中にパッケージ化されたDNAおよびゲノムを作成することを含む。本発明の遺伝子操作はまた、複数の種で生存可能な核ゲノムまたはオルガネラゲノム(例えば、移植可能な葉緑体ゲノム)を作成することを含み得る。さらに、本発明の遺伝子操作は、これらの操作または作成のいずれかの実現性を試験するための方法(例えば、シャトルベクターを宿主系に戻して、生存についてアッセイすること)を含み得る。
【0067】
ベクター、マーカー、および形質転換
【0068】
ベクターまたは他の組換え核酸分子は、選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列を含み得る。用語「選択可能マーカー」または「選択マーカー」は、検出可能な表現型を付与するポリヌクレオチド(またはコードされたポリペプチド)を意味する。選択可能マーカーは、一般的に、検出可能なポリペプチド、例えば、適当な因子(それぞれ、特定の波長の光またはルシフェリン)と接触した場合に目によって、または適当な器具を使用することによって検出されることができるシグナルを生成する、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼのような酵素をコードする(Giacomin,Plant Sci.116:59−72,1996;Scikantha,J.Bacteriol.178:121,1996;Gerdes,FEBS Lett.389:44−47,1996;また、Jefferson,EMBO J.6:3901−3907,1997,fl−glucuronidaseも参照のこと)。選択可能マーカーは、一般的に、細胞において存在または発現される場合に選択的な利益(または不利益)、例えば、その他の場合その細胞を殺しかねない因子の存在下で増殖する能力を、マーカーを含有する細胞に提供する分子である。
【0069】
選択可能なマーカーは、マーカーを発現する原核細胞または植物細胞あるいはその両方を得る手段を提供することができ、したがって、本発明のベクターの構成要素として有用であることができる(例えば、Bock(前出)2001を参照のこと)。選択マーカーの例は、限定されないが、代謝拮抗剤耐性を付与するもの、例えば、メトトキサレートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss,Plant Physiol.(Life Sci.Adv.)13:143−149,1994);アミノグリコシドであるネオマイシン、カナマイシン、およびパロマイシンに対する耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Herrera−Estrella,EMBO J.2:987−995,1983)、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するハイグロ(Marsh,Gene 32:481−485,1984)、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用すること可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用すること可能にするhisD(Hartman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:8047,1988);細胞がマンノースを利用することを可能にするマンノース−6−リン酸イソメラーゼ(WO94/20627);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤に対する耐性を付与するオルニチンデカルボキシラーゼ、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン(DFMO;McConlogue,1987,Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編);およびブラストサイジン Sに対する耐性を付与する、Aspergillus terreus由来のデアミナーゼ(Tamura,Biosci.Biotechnol.Biochem.59:2336−2338,1995)を含む。さらなる選択可能マーカーは、除草剤耐性を付与するもの、例えば、ホスフィノトリシンに対する耐性を付与するホスフィノシリンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(Whiteら、Nucl.Acids Res.18:1062,1990;Spencerら、Theor.Appl.Genet.79:625−631,1990)、グリホセート耐性を付与する変異EPSPVシンターゼ(Hincheeら、BioTechnology 91:915−922,1998)、イミダゾリノンまたはスルホニルウレア耐性を付与する変異アセト乳酸シンターゼ(Leeら、EMBO J.7:1241−1248,1988)、アトラジンに対する耐性を付与する変異psbA(Smedaら、Plant Physiol.103:911−917,1993)、または変異プロトポルフィノゲンオキシダーゼ(米国特許第5767373号を参照のこと)、またはグルホシネートのような除草剤に対する耐性を付与する他のマーカーを含む。選択可能マーカーは、真核細胞に対してジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはネオマイシン耐性を付与し、E.coliのような原核生物に対してテトラサイクリン;アンピシリン耐性を付与し;そして植物において、ブレオマイシン、ゲンタマイシン、グリホセート、ハイグロマイシン、カナマイシン、メトトキサレート、フレオマイシン、ホスフィノトリシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、およびスルホニルウレア耐性を付与するポリヌクレオチドを含む(例えば、Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995,39頁を参照のこと)。
【0070】
核および色素体の形質転換のための方法はありふれたものであり、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するためによく知られている(米国特許第5451513号、同第5545817号、および同第5545818号;WO95/16783;McBrideら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 91:7301−7305,1994を参照のこと)。いくつかの実施形態において、葉緑体形質転換は、所望のヌクレオチド配列に隣接する葉緑体DNAの領域を導入することを含み、標的葉緑体ゲノム中への外因性DNAの相同組換えを可能にさせる。場合によっては、葉緑体ゲノムDNAの1〜1.5kbの隣接ヌクレオチド配列が使用され得る。この方法を使用して、スペクチノマイシンおよびストレプトマイシンに対する耐性を付与する、葉緑体16S rRNAおよびrps12遺伝子における点変異が、形質転換についての選択可能マーカーとして利用されることができ(Svabら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 87:8526−8530,1990)、そして、100回の照射につきおよそ1回の目標レベルの頻度で、安定した同質細胞質性形質転換をもたらすことができる。
【0071】
マイクロプロジェクタイル媒介形質転換もまた、ポリヌクレオチドを植物細胞葉緑体中に導入するために使用されることができる(Kleinら、Nature 327:70−73,1987)。この方法は、金またはタングステンのようなマイクロプロジェクタイルを使用し、それは、塩化カルシウム、スペルミジン、またはポリエチレングリコールでの沈降によって所望のポリヌクレオチドでコーティングされる。マイクロプロジェクタイル粒子は、BIOLISTIC PD−1000粒子銃(BioRad;Hercules Calif.)のような装置を使用して、植物組織中に高速で加速される。微粒子銃法を使用する形質転換のための方法は、当該分野においてよく知られている(例えば、Christou,Trends in Plant Science 1:423−431,1996を参照のこと)。マイクロプロジェクタイル媒介形質転換は、例えば、綿、タバコ、トウモロコシ、ハイブリッドポプラ、およびパパイヤを含む種々の植物種を産生するために使用されている。コムギ、オートムギ、オオムギ、モロコシ、およびコメのような重要な穀物もまた、マイクロプロジェクタイル媒介送達を使用して形質転換されている(Duanら、Nature Biotech.14:494−498,1996;Shimamoto,Curr.Opin.Biotech.5:158−162,1994)。大半の双子葉植物の形質転換は、上記に記載される方法により可能である。単子葉植物の形質転換もまた、例えば、上記に記載されるような微粒子銃法、プロトプラスト形質転換、部分的に透過化された細胞のエレクトロポレーション、ガラス繊維を使用するDNAの導入、ガラスビーズ撹拌法などを使用して形質転換されることができる。
【0072】
形質転換頻度は、劣性のrRNAまたはタンパク質抗生物質耐性遺伝子を、限定されないが、細菌性aadA遺伝子を含む優性の選択可能マーカーで置換することによって増大され得る(SvabおよびMaliga,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 90:913−917,1993)。ホモプラスティジック(homoplastidic)状態に達するために、形質転換後におよそ15〜20回の細胞分裂サイクルが一般的に必要とされる。葉緑体がそのゲノムの複数のコピーを含有し得、したがって、用語「同質細胞質」または「ホモプラスミー」は、目的の特定の遺伝子座の全てのコピーが実質的に同一であることは当業者に理解される。各植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千コピーの全ての中に遺伝子が相同組換えによって挿入される色素体発現は、核発現される遺伝子に勝る膨大なコピー数の利点を利用して、全ての可溶性植物タンパク質の10%を容易に超えることができる発現レベルを可能にする。
【0073】
本発明のベクター上の標的DNA、ベクターDNA、または合成DNAのヌクレオチド配列のいずれかは、形質転換された生物におけるヌクレオチド配列の発現のために偏ったコドンをさらに含むことができる。場合によっては、ヌクレオチド配列におけるコドンは、コドンの第3ヌクレオチド位置がA/Tリッチである。例えば、コドンの第3ヌクレオチド位置の少なくとも50%はAまたはTである。他の例において、コドンはG/Cリッチであり、例えば、コドンの第3ヌクレオチド位置の少なくとも50%はGまたはCである。
【0074】
本発明のシャトルベクターのヌクレオチド配列は、葉緑体発現に適応されることができる。例えば、本明細書中のヌクレオチド配列は、葉緑体特異的プロモーターまたは葉緑体特異的調節制御領域を含むことができる。ヌクレオチド配列はまた、核発現のために適応されることもできる。例えば、ヌクレオチド配列は、核特異的プロモーターまたは核特異的調節制御領域を含むことができる。核配列は、葉緑体標的タンパク質(例えば、葉緑体輸送ペプチド)をコードする標的配列を有するタンパク質、または小胞体または原形質膜における堆積のための細胞内膜系にタンパク質を向けるシグナルペプチドをコードすることができる。
【0075】
ベクターが燃料生成可能な遺伝子をコードする実施形態において、燃料生成物は、細胞の酵素含有量を変更することによって生成されて、特定の燃料分子の生合成を増大する。例えば、生合成酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、外因性の供給源から単離されたORF)は、光合成生物の葉緑体中に導入されることができる。燃料生合成酵素をコードするヌクレオチド配列はまた、光合成生物の核ゲノム中に導入されることができる。核ゲノム中に導入されたヌクレオチド配列は、細胞の細胞質における生合成酵素の蓄積を支配することができ、または光合成生物の葉緑体における生合成酵素の蓄積を支配し得る。
【0076】
本明細書中のヌクレオチド配列のいずれかは、調節制御配列をさらに含み得る。調節制御配列は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:プロモーター、イントロン、エクソン、プロセシング要素、3’非翻訳領域、5’非翻訳領域、RNA安定要素、または翻訳エンハンサー。プロモーターは、生物における発現に適応されたプロモーター、藻類プロモーター、葉緑体プロモーター、および核プロモーターのうちの1つ以上であり得、それらのいずれかは天然または合成のプロモーターであり得る。調節制御配列は、誘導可能または自己調節可能であることができる。調節制御配列は、自己配列および/または異種配列を含むことができる。いくつかの場合において、制御配列は、第1の相同配列および第2の相同配列によって隣接されることができる。第1および第2の相同配列は、それぞれ少なくとも長さ500ヌクレオチドであることができる。相同配列は、遺伝子発現を促進するために、相同組換え、または異種配列を隔離するように作用することができることのいずれかを可能にすることができる。
【0077】
ベクターはまた、限定されないが、抗体(その機能的部分を含む)、インターロイキン、および他の免疫調節剤、および抗生物質のような生物医薬品として有用な生成物の生成に関わる配列を含む。例えば、Mayfieldら、(2003)Proc.Nat’l Acad.Sci.:100(438−42)および米国出願公開第2004/0014174号を参照のこと。
【0078】
本発明のベクターは、カセット化可能な細菌性ゲノムまたはその一部(例えば、細菌性ゲノムまたはその機能的部分を含む除去可能なDNAフラグメント)を含み得る。さらに、本発明のベクターは、機能的ゲノムユニットを含み得る(例えば、代謝プロセス、生化学的経路、遺伝子発現のために不可欠なユニット)。本発明のベクターは、移植可能な細菌性ゲノムまたはその一部を含み得る。本発明のベクターは、転移可能な細菌性ゲノムまたはその一部を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、標的DNAの大きな断片は修飾される。修飾されたDNAは、エタノール生成を実行するのに必要な全ての遺伝子、Entner−Duodorff経路、グルコース耐性経路、エタノール耐性経路、カルボン酸副生成物耐性経路、酢酸耐性経路、糖輸送経路、糖発酵経路、および/またはセルロースおよびヘミセルロース消化経路に必要とされる全ての遺伝子を含み得る。
【0080】
本発明のハイブリッドクローニング系および方法は、所定の核酸の捕捉および操作のための系としての酵母の高い多用途性と、そのような核酸の増幅のための細菌系の高い有効性とを組み合わせる。大きな核酸フラグメントの単離、操作、および送達を媒介するために相同組換えに頼る組換えベクターが構築された。本明細書中で記載される発明はまた、大きな核酸を、クローニング、操作、および送達するためにそのような組換えクローニングベクターを使用するための方法も提供する。最後に、本発明は、生化学経路分析、オルガネラ分析、および合成葉緑体構築の増強剤としてそのような組換えクローニング系を使用するための方法を提供する。
【0081】
本発明のベクターは、酵母中に導入され得る。酵母は、Saccharomyces cerevisiaeの好適な株であり得るが、他の酵母モデルも利用され得る。酵母中へのベクターの導入は、ベクターの遺伝子操作を可能にし得る。酵母ベクターは、文献において広く記載され、その操作方法もまた、以下で議論されるようによく知られている(例えば、Ketnerら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)91:6186 6190を参照のこと)。
【0082】
遺伝子操作の後、クローニング系は、大量の核酸の調製に好適な細菌環境への移行を可能にし得る。細菌型ベクターの代表的な例は、限定されないが、P1人工染色体、細菌性人工染色体(BAC)、および単コピープラスミドF因子を含む(Shizuyaら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.89:8794 8797)。同様に、細菌ベクターは当該分野において周知である(例えば、Ioannouら(1994)Nature 6:84 89)。本発明はまた、酵母選択可能マーカー、細菌性選択可能マーカー、テロメア、動原体、酵母複製起点、および/または細菌性複製起点を含むシャトルベクターを提供する。
【0083】
本発明のシャトルベクターは、酵母における相同組換えを可能にして、目的のベクターにおける目的の標的核酸を捕捉および組み込み得る。シャトルベクターは、ベクターが導入されることができる宿主のいずれかにおいて標的DNAの操作を可能にし得る。いくつかの実施形態において、所望の操作の後、シャトルベクター構成要素は除去され、修飾された標的DNAのみが残り得る。そのようなベクター配列の抽出は、標準的な方法を使用して実施されることができ、そして任意の宿主細胞において生じ得る。目的の標的核酸は、大きな核酸であることができ、そして例えば、ウイルスベクターのような、その中に含有される目的の外来遺伝子を含むベクターを含むことができる。標的核酸はまた、細菌(古細菌および真正細菌を含む)ゲノム、ウイルスゲノム、真菌ゲノム、原生生物ゲノム、植物または動物のゲノム、あるいはそれらの一部であることができる。例えば、本発明の1つの実施形態の標的核酸は、全原核生物ゲノムを含む。さらなる例として、本発明の標的核酸は、真核生物の葉緑体ゲノムを含み得る。
【0084】
本発明によるシャトルベクターは、酵母におけるテロメアおよび動原体として機能する適当に配向されたDNAを含み得る。任意の好適なテロメアが使用され得る。好適なテロメアは、限定されないが、多くの生物由来のテロメア反復を含み、それは酵母においてテロメア機能を提供することができる。ヒトにおける末端反復配列(TTAGGG)Nは、トリパノソーマにおける末端反復配列と同一であり、そして、酵母((TG)1-3Nおよびテトラヒメナ(TTGGG)Nの末端反復配列と類似である(Szostak & Blackburn(1982)Cell 29:245 255;Brown(1988)EMBO J.7:2377 2385;およびMoyzisら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:6622 6626)。
【0085】
用語「動原体」は、減数分裂時および有糸分裂時に本発明のベクターの安定な複製および正確な分割を媒介し、それによって娘細胞への適切な分離を確実にする核酸を特定するために本明細書中で使用される。好適な動原体は、限定されないが、大きな線状プラスミドに対して有糸分裂および減数分裂の安定性を付与する酵母動原体CEN4を含む(Murray & Szostak(1983)Nature 305:189 193;Carbon(1984)Cell 37:351 353;およびClarkら(1990)Nature 287:504 509)。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明による環状ベクターの2つのセグメントのうちの少なくとも1つは、最適な宿主細胞/粒子において機能的な少なくとも1つの複製系を含む。以下で明らかになるように、当業者は、最適な標的核酸の操作、増幅、および/または送達が1つより多い宿主細胞/粒子の使用を必要とし得ることを理解するだろう。したがって、各々の最適な宿主細胞/粒子において機能的な1つより多い複製系が含まれ得る。
【0087】
宿主細胞が原核生物、特にE.coliである場合、複製系は、例えば、P1プラスミドレプリコン、ori、P1細胞溶解レプリコン、ColE1、BAC、単コピープラスミドF因子などのような原核生物において機能的なものを含む。片方または両方のセグメント、および/または環状ベクターのいずれかは、大きな核酸の複製を支援することが可能な酵母複製起点をさらに含み得る。本発明による複製領域の非限定的な例は、自己複製配列または「ARS要素」を含む。ARS要素は、高頻度の形質転換が付与された酵母配列として同定された。テトラヒメナDNA末端は、ARS1およびARS4と共に酵母においてARS要素として使用されてきた(Kissら(1981)Mol.Cell Biol.1:535 543;Stinchcombら(1979)Nature 282:39;およびBarton & Smith(1986)Mol.Cell Biol.6:2354)。各セグメント(例えば、ギャップ充填シャトルベクターの酵母要素および細菌要素に対応するセグメント)について、2つ以上の複製起点が存在し得る。
【0088】
本発明の態様による第1および/または第2のセグメントは、環状化ベクター形態(例えば、プラスミド形態)に結合され得る。環状化は、目的のセグメントを使用してインビボまたはインビトロで生じることができる。あるいは、目的の環状ベクターが使用されることができる。本明細書で使用される用語「ベクター」は、その中にDNAまたは他の核酸がクローニングされ得るプラスミドまたはファージDNAを示す。ベクターは、宿主細胞において自律的に複製し得、そして、1個または少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位によってさらに特徴付けられ得、そこで、そのような核酸が特定可能な様式で切断されて、その中に核酸フラグメントが挿入され得る。ベクターは、ベクターで形質転換された細胞の特定に適した選択可能マーカーをさらに含み得る。
【0089】
本発明の標的核酸は、複雑性においてかなり異なり得る。標的核酸は、ウイルスDNA、原核生物DNA、または真核生物DNA、cDNA、エクソン(コード)配列、および/またはイントロン(非コード)配列を含み得る。したがって、本発明の標的核酸は、1個以上の遺伝子を含み得る。標的核酸は、染色体、ゲノム、またはオペロン、および/または染色体、ゲノム、またはオペロンの一部であり得る。標的核酸は、経路における全ての遺伝子に対するコード配列、オルガネラの生存に必要な遺伝子の最小限の相補体、および/または生物の生存に必要な遺伝子の最小限の相補体含み得る。標的核酸は、限定されないが、ゲノムDNAおよび/またはcDNAを含む、Zymomonas mobilisのDNA配列を含み得る。標的核酸は、限定されないが、葉緑体ゲノムDNAおよび/またはcDNAを含む、真核生物葉緑体DNA配列を含み得る。標的核酸は、限定されないが、ゲノムDNAおよび/またはcDNAを含む、シアノバクテリアDNAを含み得る。標的核酸はまた、いかなる起源および/または性質のものでもあり得る。
【0090】
効果的に転写を促進するために、コード配列に作動可能に連結されたプロモーターもまた含むことは遺伝子にとって望ましい場合がある。エンハンサー、リプレッサー、および他の調節配列もまた、当該分野においてよく知られているように、遺伝子の活性を調節するために含まれ得る。本明細書中に提供される遺伝子は、個々の宿主細胞のゲノムにおいて見出される(すなわち、内因性の)遺伝子、または個々の宿主細胞のゲノムにおいて見出されない(すなわち、外因性の、または「外来遺伝子」)遺伝子を意味することができる。外来遺伝子は、宿主と同じ種または異なる種に由来し得る。細胞において発現される目的の遺伝子を含有するDNAを使用する細胞のトランスフェクションのために、DNAは、発現のために必要とされる配向で遺伝子の発現のために必要な任意の制御配列を含有し得る。本明細書で使用される用語「イントロン」は、タンパク質に翻訳されず、かつ一般的にエクソンの間に見出される、所定の遺伝子に存在するDNA配列を意味する。
【0091】
遺伝要素、あるいはポリペプチドをコードする領域、または転写または翻訳、または宿主細胞におけるポリペプチドの発現に重要な他のプロセスを調節する領域を含むポリヌクレオチド、あるいはポリペプチドをコードする領域および発現を制御するそれに作動可能に連結された領域の両方を含むポリヌクレオチド。遺伝要素は、ベクター内に含まれ得、それは、エピソーム要素として、すなわち宿主細胞ゲノムから物理的に独立した分子として複製する。それらは、真核細胞におけるメトトキサレート選択によってトランスフェクトされたDNAの増幅時に生じるもののような、ミニ染色体内に含まれ得る。遺伝要素はまた、宿主細胞ゲノム内に、それらの自然な状態ではなく、むしろ単離、クローニング、および精製されたDNAの形態での、または特にベクターにおける宿主細胞への導入などのような操作の後で含まれ得る。
【0092】
本発明のベクターは、十分に線状の、作製されたかまたは遺伝子、転写制御要素、または遺伝子内DNAのような標的核酸の一部にハイブリダイズする能力を有する同一性または類似性(相同性)を含有し得る。理論に束縛されないが、そのようなハイブリダイゼーションは、通常、相補的な鎖間の、好ましくはワトソン・クリック塩基対を形成する塩基特異的な水素結合の結果である。実際問題として、そのような相同性は、相同組換え事象の観察から推論されることができる。いくつかの実施形態において、そのような相同性は、線状核酸の約8個〜約1000個の塩基である。他の実施形態において、そのような相同性は、約12個〜約500個の塩基である。当業者は、相同性は、核酸の広がりにより長く拡大し得ることを理解するだろう。
【0093】
相同組換えは、遺伝子組み換えの1つのタイプであり、DNAの二本鎖の間で起こる物理的再配列のプロセスである。相同組換えは、類似配列の配置、配置されたDNA鎖の交差、およびDNAの破壊および修復に関連して、鎖間の物質の交換を生じる。相同組換えのプロセスは、生物において自然に発生し、そしてまた、生物に遺伝的変化を導入するための分子生物学技術としても利用される。
【0094】
本発明のベクターは、標的配列以外の機能的構成要素をさらに含むように修飾され得、それは構築物の調製、増幅、宿主細胞の形質転換またはトランスフェクション、そして該当する場合、宿主細胞への組み込みにおける使用を見出し得る。例えば、ベクターは、宿主DNA中への組み込みのための領域を含み得る。組込みは、宿主細胞の核DNA中へのものであり得る。いくつかの実施形態において、組込みは、葉緑体DNAのような非核DNA中へのものであり得る。ベクターの他の機能的構成要素は、限定されないが、マーカー、リンカー、および制限部位を含み得る。
【0095】
標的核酸は、調節核酸を含み得る。調節核酸は、複製、転写および/または、それによって制御される核酸の発現を(直接的または間接的に、そして上方または下方のいずれかに)調節する任意の配列または核酸を意味する。そのような調節核酸による制御は、核酸を構造的または誘導的に、転写および/または翻訳させ得る。本明細書中のヌクレオチド配列のいずれかは、調節制御配列をさらに含み得る。調節制御配列の例は、限定されないが、以下のうちの1つ以上を含むことができる:プロモーター、イントロン、エクソン、プロセシング要素、3’非翻訳領域、5’非翻訳領域、RNA安定要素、または翻訳エンハンサー。プロモーターは、生物(例えば、細菌、真菌、ウイルス、植物、哺乳動物、または原生生物)における発現に適応されたプロモーター、藻類プロモーター、葉緑体(または他の色素体)プロモーター、ミトコンドリアプロモーター、および核プロモーターのうちの1つ以上であり得、それらのいずれかは天然または合成のプロモーターであり得る。調節制御配列は、誘導可能または自己調節可能であることができる。調節制御配列は、自己配列および/または異種配列を含むことができる。いくつかの場合において、制御配列は、第1の相同配列および第2の相同配列によって隣接されることができる。第1および第2の相同配列は、それぞれ少なくとも長さ500ヌクレオチドであることができる。相同配列は、遺伝子発現を促進するために、相同組換え、または異種配列を隔離するように作用することができることのいずれかを可能にすることができる。
【0096】
場合によっては、本発明のシャトルベクターに存在する標的DNA、ベクターDNA、または他のDNAは、ポリペプチド産物の生成をもたらさず、むしろ細胞からの産物の分泌を可能にする。これらの場合において、ヌクレオチド配列は、生物から外部環境への生成物の分泌を高め、または開始し、または速度を速めるタンパク質をコードし得る。したがって、本発明のベクターのセグメントおよび/またはベクターは、例えば、転写開始領域のような転写調節領域を含み得る。当業者は、多くの転写開始配列が単離されて利用可能であり、チミジンキナーゼプロモーター、βアクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、およびSV40プロモーターを含むことを理解するだろう。
【0097】
本発明の1つの実施形態は、ギャップ充填ベクターを製造する方法を提供する。ギャップ充填ベクターは、標的核酸の5’領域および3’領域に相同な配列間の領域(ギャップ)を充填することによって、本発明による標的核酸の相同組換えおよび挿入を経験し得る。したがって、いくつかの実施形態において、本クローニング系は、相同組換え可能な条件下で標的核酸と接触され得る。
【0098】
別の方法は、(i)標的核酸の5’末端に相同な第1の核酸を含む第1のセグメント、第1の選択可能マーカー、および第1の環化要素;(ii)標的核酸;および(iii)標的核酸の3’末端に相同な第2の核酸を含む第2のセグメント、第2の選択可能マーカー、および第2の環化要素を、相同組換え可能な条件下で組み合わせる。本発明の1つの実施形態は、2つのアームおよび標的核酸の間の相同組換えによってギャップ充填ベクターを製造する。アームおよび標的核酸において見出される相同領域間の交換は、相同核酸の間の任意の点における相同組換えによって行われる。本発明の環状ベクターに関して、「ギャップ充填」は、本質的には、ベクター中への標的核酸の挿入(すなわち、サブクローニング)である。
【0099】
相同組換えは、当該分野において周知の方法に従ってインビトロで行われ得る。例えば、本発明の方法は、酵母溶解物の調製物を使用して実施されることができる。相同組換えは、インビボで行われ得る。したがって、本発明の方法は、相同組換え事象を支持することが可能な任意の宿主、例えば、細菌、酵母、および哺乳動物細胞を使用して実施され得る。当業者は、好適な宿主の選択が方法のクローニング系において使用される選択可能マーカーの特定の組み合わせに依存することを理解するだろう。
【0100】
目的の宿主細胞中にベクターを導入するために使用され得る技術は、カルシウムリン酸/DNA共沈、エレクトロポレーション、細菌原形質融合、核へのDNAのマイクロインジェクションなどを含む。当業者は、多くのプロトコルが、例えば、Keownら(Meth.Enzymol.185:527 537,1990)に記載されるように、例えば哺乳動物細胞をトランスフェクトするために、事実上交換可能に使用され得ることを理解するだろう。
【0101】
形質転換は、Agrobacterium tumefaciensのような土壌菌を使用することによって達成され得る。Agrobacterium tumefaciensは、遺伝子操作されたプラスミドベクター、または選択された余分な遺伝子のキャリアを担持し得る。葉のような植物組織は、小片、例えば10×10mmに切断され、懸濁されたアグロバクテリウムを含有する液体中に10分間浸される。切断された一部の細胞は、細胞中にそのDNAを挿入する細菌によって形質転換される。選択可能な発根および発芽培地上に置かれると、植物は再生するだろう。一部の植物種は、花をアグロバクテリウムの懸濁液中に浸漬し、次いで、種を選択的培地に播種することによるだけで形質転換されることができる。
【0102】
別の方法は、「遺伝子銃」アプローチの使用である。遺伝子銃は、微粒子銃法(また、生物弾道法としても知られる)と呼ばれる方法の一部であり、特定の条件下で、DNA(またはRNA)が「ねばねば」になり、金属原子(通常、タングステンまたは金)のような生物学的に不活性な粒子に接着する。このDNA−粒子複合体を不完全真空化で加速し、標的組織を加速経路内に置くことによって、DNAが効果的に導入される。コーティングされていない金属粒子はまた、細胞を囲むDNAを含有する溶液を介して照射され、したがって、遺伝物質を取り出して、生細胞に進入することができ得る。有孔プレートはシェルカートリッジを止めるが、反対側の生細胞に金属の薄片を通過させて進入させる。所望のDNAを入手する細胞は、マーカー遺伝子の使用によって特定され(植物におけるGUSの使用が最も一般的)、次いで、遺伝子を複製するために培養され、場合によりクローニングされる。微粒子銃法は、遺伝子を殺虫剤耐性または除草剤耐性のような植物細胞中に挿入するために最も有用である。粒子を加速するために、様々な方法が使用されてきた:これらの方法は、空気圧装置;機械的インパルスまたはマクロプロジェクタイル(macroprojectile)を利用する機器;求心力、磁力、または静電気力;スプレーガンまたはワクチン接種銃;および放電のような衝撃派による加速に基づく装置を含む(例えば、ChristouおよびMcCabe,1992,Agracetus,Inc.Particle Transformation of Crop Plants Using Electric Discharge (ACCELL(商標) Technology)を参照のこと)。
【0103】
形質転換は、例えば、宿主が細菌(E.coli、Bacillus subtilisなど)である場合、Cohenらの方法 (Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972))、プロトプラスト法(Mol.Gen.Genet.,168:111(1979))、またはコンピテント法(J.Mol.Biol.,56:209(1971))、宿主がS.cerevisiaeである場合、Hinnenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:1927(1978))、またはリチウム法(J.Bacteriol.,153:163(1983))、宿主が動物細胞である場合、Grahamの方法(Virology,52:456(1973))、および宿主細胞が昆虫細胞である場合、Summersらの方法(Mol.Cell.Biol.,3:2156−2165(1983))に従って実施されることができる。典型的には、形質転換事象の後に、潜在的な形質転換体は、選択および/または培養のために栄養培地に培養される。
【0104】
栄養培地は、好ましくは、宿主細胞(形質転換体)の増殖に必要な炭素供給源、無機窒素供給源、または有機窒素供給源を含む。炭素供給源の例は、グルコース、デキストラン、可溶性デンプン、およびスクロースであり、そして、無機窒素または有機窒素の供給源は、アンモニウム塩、硝酸塩、アミノ酸、トウモロコシ浸出液、ペプトン、カゼイン、肉抽出物、ダイズケーキ、およびジャガイモ抽出物である。所望される場合、培地は、他の栄養素(例えば、無機塩(例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、および塩化マグネシウム)、ビタミン、抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシンなど))を含み得る。光合成独立栄養生物であり得、したがって、彼ら自身の炭素供給源を生成することができる生物のような、いくつかの光合成生物のための培地は、炭素供給源を必要としない場合がある。
【0105】
培養および/または選択は、当該分野において公知の方法によって実施される。温度、培地のpH、および培養時間のような培養および選択の条件は、ベクター、宿主細胞、および本発明の方法にふさわしく選択される。当業者は、宿主細胞(形質転換体)のタイプおよびベクターの性質(例えば、選択可能マーカーが存在する)に依存して、多くの特異的培地および培養/選択条件が使用されることができることを認識するだろう。本明細書における培地は、単に例示のために記載されており、限定されない。
【0106】
宿主が細菌、放線菌、酵母、または糸状の真菌である場合、上記で言及される栄養供給源を含む培地が適当である。宿主がE.coliである場合、好ましい培地の例はLB培地、M9培地(Millerら Exp.Mol.Genet.,Cold Spring Harbor Laboratory,p.431(1972))などである。宿主が酵母である場合、培地の例はBurkhoter最少培地(Bostian,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4505(1980))である。
【0107】
酵母におけるベクターの選択は、酵母選択可能マーカーの使用によって達成され得る。例は、限定されないが、HIS3、TRP1、URA3、LEU2およびADEマーカーを含む。本発明のいくつかの実施形態において、ベクターまたはそのセグメントは、2つ以上の選択可能マーカーを含み得る。したがって、1つの実施形態において、本発明のベクターのセグメントは、標的核酸との相同組換えの際に失われるADEマーカーおよびHIS3マーカーを含み得る。他方のセグメントは、TRP1マーカーを含み得る。選択は、形質転換された細胞を好適なドロップアウト培地上で増殖させることによって達成される(例えば、Watsonら(1992)Recombinant DNA,2.sup.nd ed.,Freeman and Co.,New York,N.Y.を参照のこと)。例えば、HIS3は、第1のセグメントを含有する細胞の選択を可能にする。TRP1は、第2のセグメントを含有する細胞の選択を可能にする。ADEは、総合組換えが起こったクローンのスクリーニングおよび選択を可能にする。ADEは、色の選択(赤)を可能にする。
【0108】
組換え酵母細胞は、当該分野において公知の方法に従って、本明細書中に記載される選択可能マーカーを使用して選択され得る。したがって、当業者は、本発明のギャップ充填ベクターを含む組換え酵母細胞が、その中に含まれる選択可能マーカーに基づいて選択され得ることを理解するだろう。例えば、HIS3およびTRP1を担持する組換えベクターは、ヒスチジンおよびトリプトファンを欠くドロップアウト選択培地の存在下で形質転換された酵母細胞を増殖することによって選択され得る。単離された陽性クローンは、さらに精製され、例えば、制限分析、電気泳動法、サザンブロット分析、ポリメラーゼ鎖反応などによって、本発明の組換えベクターの存在および構造を確認するために分析され得る。本発明は、本発明の方法によって遺伝子操作されたギャップ充填ベクターをさらに提供する。そのようなベクターは、本発明のセグメントまたはベクターと、最適な標的核酸との間の相同組換えの産物である。本発明はまた、本発明によるクローニング系またはベクターを含む原核細胞および/または真核宿主細胞を提供する。生物は、単細胞性または多細胞性であることができる。生物は、本来は光合成生物であっても良いし、本来は非光合成生物であっても良い。形質転換されることができる生物の他の例は、維管束生物および非維管束生物を含む。植物細胞、酵母細胞、動物細胞、藻細胞、または昆虫細胞のような宿主が使用される場合、本発明のベクターは、少なくともプロモーター、開始コドン、タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および終止コドンを含有し得る。本発明のベクターはまた、必要とされる場合、通常使用される遺伝子増幅のためのポリヌクレオチド(マーカー)を含有し得る。
【0109】
生成物
【0110】
本発明のベクターは、ベクター含む生物において本来生成される、または本来は生成されない生成物の生成をもたらす配列を含み得る。場合によっては、ベクター上の1つ以上の配列によってコードされる生成物は、例えば、酵素である。本発明の実施において利用され得る酵素は、細菌、植物、真菌、および動物を含む任意の生物に由来するヌクレオチド配列によってコードされ得る。ベクターはまた、生物からの生成物の生成または分泌に影響するヌクレオチド配列を含み得る。場合によっては、そのようなヌクレオチド配列は、イソプレノイド生合成経路において機能する1種以上の酵素をコードする。イソプレノイド生合成経路におけるポリペプチドの例は、C5、C10、C15、C20、C30、およびC40シンターゼのようなシンターゼを含む。場合によっては、酵素は、イソプレノイド生成酵素である。場合によっては、イソプレノイド生成酵素は、2つのリン酸基を有するイソプレノイドを生成する(例えば、GPPシンターゼ、FPPシンターゼ、DMAPPシンターゼ)。他の例において、イソプレノイド生成酵素は、0個、1個、3個またはそれ以上のリン酸を有するイソプレノイドを生成するか、あるいは、他の官能基を有するイソプレノイドを生成し得る。本発明において有用な酵素および他のタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、クローニング、サブクローニング、およびPCRを含む当該分野において公知の任意の手段によって単離および/または合成され得る。
【0111】
本発明における使用のためのイソプレノイド生成酵素はまた、ボトリオコッセンシンターゼ、β−カリオフィレンシンターゼ、ゲルマクレンAシンターゼ、8−エピセドロールシンターゼ、バレンセンシンターゼ、(+)−δ−カジネンシンターゼ、ゲルマクレンCシンターゼ、(E)−β−ファルネセンシンターゼ、カスベンシンターゼ、ベチスピラジエンシンターゼ、5−epi−アリストロケンシンターゼ、アリストロケンシンターゼ、α−フムレン、(E,E)−α−ファルネセンシンターゼ、(−)−β−ピネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リモネンシクラーゼ、リナロールシンターゼ、(+)−ボルニルジホスフェートシンターゼ、レボピマラジエンシンターゼ、イソピマラジエンシンターゼ、(E)−γ−ビサボレンシンターゼ、コパリルピロホスフェートシンターゼ、カウレンシンターゼ、ロンギホレンシンターゼ、γ−フムレンシンターゼ、δ−セリネンシンターゼ、β−フェランドレンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、(+)−3−カレネシンターゼ、syn−コパリルジホスフェートシンターゼ、α−テルピネオールシンターゼ、syn−ピマラ−7,15−ジエンシンターゼ、エント−サンダアラコピマラジエンシンターゼ、ステルネル(sterner)−13−エンシンターゼ、E−β−オシメン、S−リナロールシンターゼ、ゲラニオールシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、リナロールシンターゼ、E−β−オシメンシンターゼ、epi−セドロールシンターゼ、α−ジンギベレンシンターゼ、グアイアジエンシンターゼ、カスカリラジエンシンターゼ、cis−ムウロラジエンシンターゼ、アフィジコラン−16b−オールシンターゼ、エリザベサトリエン(elizabethatriene)シンターゼ、サンダロール(sandalol)シンターゼ、パチュロールシンターゼ、ジンザノールシンターゼ、セドロールシンターゼ、スカレオールシンターゼ、コパロールシンターゼ、またはマノオールシンターゼであり得る。
【0112】
本発明のベクターによって生成され得る他の酵素は、バイオマス分解酵素を含む。バイオマス分解酵素の非限定的な例は、セルロース分解酵素、ヘミセルロース分解酵素、ペクチン分解酵素、キシラナーゼ、リグニン分解酵素、セルラーゼ、セロビアーゼ、軟化酵素(例えば、エンドポリガラクトロナーゼ)、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、RNA分解酵素、DNA分解酵素、イヌリナーゼ、溶解酵素、ホスホリパーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、グルコースイソメラーゼ、エンドキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、α−グルクロニダーゼ(glucoronidase)、α−ガラクトシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、およびフェルロイルエステラーゼを含む。そのような酵素をコードする遺伝子の例は、限定されないが、アミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ(例えば、β−グルコシダーゼ、エンドセルラーゼ、エキソセルラーゼ)、エキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、およびキシラナーゼ(エンドキシラナーゼおよびエキソキシラナーゼ)を含む。リグニン分解酵素の例は、限定されないが、Phanerochaete chryososporium由来のリグニンペロキシダーゼおよびマンガネーゼペロキシダーゼを含む。当業者は、これらの酵素が本発明において使用されることのできる酵素の部分的な列挙にすぎないことを理解するだろう。
【0113】
本発明は、宿主細胞(例えば、C.reinhardtii、D.salina、H.pluvalisのような藻細胞、およびシアノバクテリア細胞)および/または1種以上の異なる酵素をコードする核酸を有する宿主細胞を含む生物による脂肪酸、脂質、または油の生成に寄与する酵素を作製することを意図する。いくつかの実施形態において、脂肪酸、脂質、または油の生成に寄与する酵素は、同化酵素である。脂肪酸の生成に寄与する同化酵素のいくつかの例は、限定されないが、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、ケトレダクターゼ、チオエステラーゼ、マロニルトランスフェラーゼ、デヒドラターゼ、アシル−CoAリガーゼ、ケトアシルシンターゼ、エノイルレダクターゼ、およびデサチュラーゼを含む。いくつかの実施形態において、酵素は、異化酵素または生分解酵素である。いくつかの実施形態において、単一の酵素が生成される。
【0114】
いくつかの宿主は、1種以上の酵素をコードする複数の遺伝子で形質転換され得る。例えば、単一の形質転換された細胞は、全脂肪酸合成経路を作り出す酵素をコードする外因性核酸を含有し得る。経路の1つの例は、アセチルCoAカルボキシラーゼ、マロニルトランスフェラーゼ、ケトアシルシンターゼ、およびチオエステラーゼをコードする遺伝子を含み得る。全経路および/またはそれらから抽出される酵素で形質転換された細胞は、完全な脂肪酸または脂肪酸の中間体の合成経路を合成することができる。いくつかの実施形態において、構築物は、同じ遺伝子の複数コピー、および/または異なる生物由来の同じ酵素をコードする複数の遺伝子、および/またはコード配列の1つ以上の部分に変異を有する複数の遺伝子を含有し得る。
【0115】
場合によっては、生成物(例えば、燃料、香料、殺虫剤)は、炭化水素の豊富な分子、例えば、テルペンである。(イソプレノイドユニットの数によって分類される)テルペンは、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、またはテトラテルペンであることができる。特定の実施形態において、テルペンはステロイドまたはカロテノイドのようなテルペノイド(別名イソプレノイド)である。カロテノイドのサブクラスは、カロテンおよびキサントフィルを含む。特定の実施形態において、燃料生成物は、リモネン、1,8−シネオール、α−ピネン、カンフェン、(+)−サビネン、ミルセン、タキサジエン、ファルネシルピロホスフェート、アモルファジエン、(E)−α−ビサボレン、βカロテン、αカロテン、リコピン、またはジアポフィトエンである。これらのテルペンの一部は、純粋な炭化水素(例えば、リモネン)であり、他のものは炭化水素誘導体(例えば、シネオール)である。
【0116】
燃料生成物の例は、石油化学製品およびそれらの前駆物質、ならびに石油化学産業において有用であり得る他の全ての物質を含む。燃料生成物は、例えば、石油生成物および石油の前駆物質、ならびにその石油化学製品およびその前駆物質を含む。燃料生成物は、石油生成物および石油化学製品を含む、石油化学産業において有用な物質または材料を生産するために使用され得る。燃料または燃料生成物は、ボイラー、窯、乾燥機、火炉のような燃焼器において使用され得る。燃焼器の他の例は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ジェットエンジンなどを含む、自動車エンジンまたは発電機のような内燃機関である。燃料生成物はまた、プラスチック、樹脂、繊維、エラストマー、潤滑剤、およびゲルを製造するためにも使用され得る。
【0117】
本明細書中で意図される生成物の例は、炭化水素生成物および炭化水素誘導体生成物を含む。炭化水素生成物は、水素分子および炭素分子からなる生成物である。炭化水素誘導体生成物は、1個以上のヘテロ原子を有する炭化水素生成物であって、ここで、ヘテロ原子は水素または炭素ではない任意の原子である。限定されないが、ヘテロ原子の例は、窒素、酸素、硫黄、およびリンを含む。一部の生成物は、炭化水素が豊富であり、生成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、または95重量%は炭素および水素から作られる。
【0118】
炭素水素のような燃料生成物は、液化石油ガス、ナフサ(リグロイン)、ガソリン、ケロセン、ディーゼル、潤滑油、重質気体、コークス、アスファルト、タール、およびワックスのような、従来は原油または石油に由来する前駆物質または生成物であり得る。例えば、燃料生成物は、メタン、エタン、プロパン、またはブタンのような小さいアルカン(例えば、1個〜およそ4個の炭素)を含み得、それはプラスチックを(例えば、調理において)加熱または製造するために使用され得る。燃料生成物はまた、ナフサまたはリグロイン、またはその前駆物質のような、およそ5個〜およそ9個の炭素原子の炭素骨格を有する分子も含み得る。他の燃料生成物は、ガソリンまたはモーター燃料として使用される、約5個〜約12個の炭素原子またはシクロアルカンであり得る。ケロセンまたはその前駆物質のような、およそ10個〜およそ18個の炭素の分子および芳香族化合物もまた、燃料生成物であり得る。燃料生成物はまた、潤滑油のために使用されるような、12個以上の炭素を有する分子またはその前駆物質も含み得る。他の燃料生成物は、典型的には、およそ20個〜およそ70個の炭素のアルカン、シクロアルカン、および芳香族化合物を含有する、重質気体または燃料油、またはそれらの前駆物質を含む。燃料生成物はまた、一般的には、約70個以上の炭素を有する複数の環およびそれらの前駆物質を含有するコークス、アスファルト、タール、およびワックスのような原油からの他の残留物も含む。
【0119】
宿主細胞および宿主生物
【0120】
本明細書中のベクターおよび方法を使用して形質転換されることができる生物の例は、維管束生物および非維管束生物を含む。生物は、原核生物または真核生物であることができる。生物は、単細胞生物または多細胞生物であることができる。
【0121】
真菌細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombeまたはUstilago maydis)のような真核細胞は、本発明の方法および組成物を使用して形質転換され得る。真菌細胞/酵母細胞中に核酸を導入するための方法は、当該分野において周知である。したがって、そのような工程は、従来の形質転換方法によって達成され得る。好適な方法の非限定的な例は、エレクトロポレーション、アルカリカチオンプロトコル、およびスフェロプラスト形質転換を含む。
【0122】
非維管束光合成生物の例は、ゼニゴケ類またはツノゴケ類のような苔植物類を含む。場合によっては、生物はシアノバクテリアである。場合によっては、生物は藻類(例えば、大型藻または微細藻)である。藻類は、単細胞藻類または多細胞藻類であることができる。場合によっては、生物は、紅藻、緑藻、珪藻、黄緑藻、灰色藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ類、ハプト藻、クリプトモナド、渦鞭毛藻、または植物プランクトンである。
【0123】
本発明の方法は、微細藻のC.reinhardtiiを使用して例示される。本発明の方法によるポリペプチドまたはタンパク質複合体を発現するための微細藻の使用は、市販(Cyanotech Corp.;Kailua−Kona HI)を含む、微細藻の大きな個体群が増殖することができる利益を提供し、したがって、大量の所望の生成物の生成、および所望される場合、単離を可能にする。しかしながら、例えば、タンパク質複合体を含む機能的ポリペプチドを任意の植物の葉緑体において発現する能力、および/または葉緑体または任意の植物を修飾する能力は、そのような植物の作物の生産を可能にし、したがって、大量のポリペプチドを都合よく生成する能力を可能にする。したがって、本発明の方法は、例えば、大型藻(例えば、海草および海藻)、ならびに、土壌で成長する植物、例えば、トウモロコシ(Zea mays)、アブラナ種(例えば、B.napus、B.rapa、B.juncea)、特に種油のもととして有用なこれらのアブラナ種、アルファルファ(Medicago sativa)、コメ(Oryza sativa)、ライムギ(Secale cereale)、モロコシ(Sorghum bicolor、Sorghum vulgare)、キビ(例えば、トウジンビエ(Pennisetum glaucum)、キビ(Panicum miliaceum)、アワ(Setaria italica)、シコクビエ(Eleusine coracana))、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、コムギ(Triticum aestivum)、ダイズ(Glycine max)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ピーナッツ(Arachis hypogaea)、綿(Gossypium barbadense、Gossypium hirsutum)、サツマイモ(Ipomoea batatus)、カッサバ(Manihot esculenta)、コーヒー(Cofea spp.)、ココナッツ(Cocos nucifera)、パイナップル(Ananas comosus)、柑橘類(Citrus spp.)、カカオ(Theobroma cacao)、茶(Camellia sinensis)、バナナ(Musa spp.)、アボガド(Persea ultilane)、イチジク(Ficus casica)、グアバ(Psidium guajava)、マンゴー(Mangifera indica)、オリーブ(Olea europaea)、パパイヤ(Carica papaya)カシュー(Anacardium occidentale)、マカダミア(Macadamia integrifolia)、アーモンド(Prunus amygdalus)、サトウダイコン(Beta vulgaris)、サトウキビ(Saccharum spp.)、オートムギ、ウキクサ(Lemna)、オオムギ、トマト(Lycopersicon esculentum)、レタス(例えば、Lactuca sativa)、サヤマメ(Phaseolus vulgaris)、ライマメ(Phaseolus limensis)、エンドウ(Lathyrus spp.)、ならびにキュウリ(C.sativus)、カンタロープ(C.cantalupensis)、およびマスクメロン(C.melo)のようなキュウリ属のメンバーを含む、葉緑体を有する任意の植物を使用して実施されることができる。ツツジ(Rhododendron spp.)、アジサイ(Macrophylla hydrangea)、ハイビスカス(Hibiscus rosasanensis)、バラ(Rosa spp.)、チューリップ(Tulipa spp.)、ラッパスイセン(Narcissus spp.)、ペチュニア(Petunia hybrida)、カーネーション(Dianthus caryophyllus)、ポインセチア(Euphorbia pulcherrima)、およびキクのような観葉植物もまた含まれる。本発明の方法を実施するために有用なさらなる観葉植物は、ツリフネソウ属、ベゴニア、テンジクアオイ、スミレ、シクラメン、バーベナ、ツルニチソウ、マンジュギク、サクラソウ、セントポーリア、アゲラタム、ヒユ属、アンティリヌム、オダマキ、フウキギク、クローバー、コスモス、ササゲ、ダリア、ダチュラ、ヒエンソウ、ガーベラ、グラジオラス、グロキシニア、アマリリス、マツバギク、サルメンバナ、およびヒャクニチソウを含む。本発明を実施する際に使用され得る針葉樹は、例えば、テーダマツ(Pinus taeda)、スラッシュパイン(Pinus elliotii)、ポンデローサマツ(Pinus ponderosa)、ロッジポールパイン(Pinus contorta)およびモンテレーマツ(Pinus radiata)、ベイマツ(Pseudotsuga menziesii)のようなマツ;アメリカツガ(Tsuga ultilane);ベイトウヒ(Picea glauca);アメリカスギ(Sequoia sempervirens);シルバーファー(Abies amabilis)およびバルサムファー(Abies balsamea)のようなトゥルーファー;ならびにウエスタンレッドシーダー(Thuja plicata)およびアラスカイエローシーダー(Chamaecyparis nootkatensis)のようなシーダーを含む。
【0124】
本発明の方法を実施するために有用なマメ科の植物は、マメ類およびエンドウ類を含む。マメ類は、グアー、イナゴマメ、コロハ、ダイズ、インゲンマメ、ササゲ、ヤエナリ、ライマメ、ソラマメ、レンズマメ、ヒヨコマメなどを含む。マメ科は、限定されないが、ラッカセイ属(例えば、ピーナッツ)、ソラマメ属(例えば、タマザキクサフジ、ヘアリーベッチ、アズキ、ヤエナリ、およびヒヨコマメ)、ルピナス属(例えば、ルピナス、シャジクソウ、)、インゲンマメ属(例えば、インゲンマメおよびライマメ)、エンドウ属(例えば、フィールドマメ)、シナガワハギ属(例えば、クローバー)、ウマゴヤシ属(例えば、アルファルファ)、ハス属(例えば、シャジクソウ)、レンズマメ属(例えば、レンズマメ)、およびクロバナエンジュを含む。本発明の方法における使用のための好ましい飼料および芝草は、アルファルファ、カモガヤ、ヒロハノウシノケグサ、ペレニアルライグラス、ハイコヌカグサ、およびコヌカグサを含む。本発明において有用な他の植物は、アカシア、アネット、チョウセンアザミ、ルッコラ、ブラックベリー、キャノーラ、コリアンダー、クレメンタイン、キクヂシャ、ユーカリ、フェンネル、グレープフルーツ、ハニーデュー、クズイモ、キウィフルーツ、レモン、ライム、マッシュルーム、ナッツ、オクラ、オレンジ、パセリ、カキ、オオバコ、ザクロ、ポプラ、ラジアータ、マツ、赤チコリ、サザンパイン、モミジバフウ、タンジェリン、ライコムギ、ツル、ヤムイモ、リンゴ、セイヨウナシ、マルメロ、サクランボ、アプリコット、メロン、アサ、ソバ、ブドウ、ラズベリー、アガサ、ブルーベリー、ネクタリン、モモ、プラム、イチゴ、スイカ、ナス、コショウ、カリフラワー、アブラナ属(例えば、ブロッコリー、キャベツ、ウルチランスプラウト(ultilan sprout)、タマネギ、ニンジン、リーキ、ビート、ソラマメ、セロリ、ラディッシュ、カボチャ(pumpkin)、エンダイブ、ゴード、ニンニク、サヤマメ、ホウレンソウ、、カボチャ(squash)、カブ、ウルチラン(ultilane)、チコリ、アピオス、およびズッキーニ)を含む。したがって、本明細書中で意図される組成物は、上記の核酸のいずれかを含む宿主生物を含む。宿主生物は、任意の葉緑体含有生物であることができる。
【0125】
用語「植物」は、本明細書において広く使用されて、色素体、特に葉緑体を含有する真核生物であり、かつ、成長の任意の段階の任意のそのような生物を含む真核生物、または、植物の挿し木、植物細胞、植物細胞培養物、植物器官、植物の種子、および胚を含む、植物の一部を意味する。植物細胞は、プロトプラストおよび細胞壁を含む、植物の構造的単位および生理学的単位である。植物細胞は、単離された単一細胞または培養された細胞の形態であることができ、またはより高度に組織化された単位、例えば、植物組織、植物器官、または植物の一部であることができる。したがって、植物細胞は、プロトプラスト、配偶子産生細胞、または完全な植物に再生することができる細胞または細胞の集合であることができる。そのようなものとして、複数の植物細胞を含みかつ完全な植物に再生することができる種子は、本開示の目的のための植物細胞と判断される。植物組織または植物器官は、種子、プロトプラスト、カルス、または構造的単位または機能的単位へと組織化される任意の他の植物細胞の群であることができる。植物の特に有用な部分は、採取可能な部分および子孫植物の増殖のために有用な部分を含む。植物の採取可能な部分は、植物の任意の有用な部分、例えば、花、花粉、苗、塊茎、葉、茎、果実、種子、根などであることができる。増殖のために有用な植物の部分は、例えば、種子、果実、挿し木、苗、塊茎、根茎などを含む。
【0126】
真核宿主細胞は、真菌細胞(例えば、S.cerevisiae、Sz.pombe、またはU.maydis)であり得る。原核宿主細胞の例は、E.coliおよびB.subtilis、シアノバクテリアおよび光合成細菌(例えば、シネコシスティス属またはシネココッカス属またはアースロスピラ属の種)を含む。宿主生物(または標的DNAの供給源)であり得る非維管束植物の例は、ゼニゴケ類またはツノゴメ類のような苔植物類を含む。場合によっては、生物は藻類(例えば、大型藻またはChlamydomonas reinhardtii、Chorella vulgaris、Dunaliella salina、Haematococcus pluvalis、Scenedesmus ssp.のような微細藻)である。藻類は、単細胞藻類または多細胞藻類であることができる。場合によっては、生物は、紅藻、緑藻、珪藻、黄緑藻、灰色藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ類、ハプト藻、クリプトモナド、渦鞭毛藻、または植物プランクトンである。他の例において、当業者は、これらの生物が単に例として与えられており、かつ他の生物が適当な陽性および陰性の選択可能マーカーが利用可能である場合に置き換えられ得ることを理解するだろう。
【0127】
上述の発明は、実例としておよび理解を明確にする目的のための例として多少詳しく記載されてきたが、特定の変化および変更が添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなくそれに対してなされ得ることは、本発明の教示に鑑みて当業者に明らかである。
【実施例1】
【0128】
実施例1:DNAの精製および分析
DNAは、当該分野において公知の方法に従って単離および分析される。
【0129】
Chlamydomonas reinhardtiiからDNAを調製してPCRのためのテンプレートとして使用するために、(寒天プレートまたは液体培養からの)106個の藻細胞が10mM EDTA中に懸濁され、95℃まで10分間加熱され、次いで、23℃近くまで冷却される。溶液は、PCR混合物に直接的に添加される。
【0130】
Chlamydomonas reinhardtiiから精製された葉緑体DNAを調製するために、5×108個の藻細胞が3000×gで10分間の遠心分離によって液体培養から収集され、水で1回洗浄され、3000×gで10分間遠心分離され、10mLの溶解溶液(10mM Tris pH=8.0、10mM EDTA、150mM NaCl、2%SDS、2%サルコシル、および25μg/mLプロナーゼ(Roche))中に再懸濁され、そして37℃で1時間インキュベートされる。溶解物は、次いで、フェノール/クロロホルムで徐々に抽出され、その後クロロホルムで2回洗浄される。全DNAがエタノール沈降および再懸濁緩衝液(10mM Tris pH=7.4、1mM EDTA、および0.1mg/mL RNA分解酵素)における再懸濁によって単離される。葉緑体DNAは、変性溶液(200mM NaOHおよび1%SDS(w/v))の添加によって精製されることができ、再懸濁されたDNAに添加されかつ数回逆方向にされる。中和溶液(3.0M酢酸カリウム、pH=5.5)が添加され、混合され、氷上で10分間インキュベートされ、そして15000RPMで30分間遠心分離される。上清は静かに移され、QIAGEN−tip500に適用され、そしてDNAが、QIAGEN Plasmid Maxi Kitに従って単離される。
【0131】
Chlamydomonas reinhardtiiから精製された葉緑体DNAを調製するための代替的な方法は、DNAのせん断を防ぐために藻細胞または精製された葉緑体を低融点アガロースプラグ中に埋め込むことを含む。葉緑体は、窒素減圧チャンバにおいて完全な細胞を溶解し、パーコール密度勾配遠心分離によって無傷の細胞と破片を葉緑体から分離することによって単離される。細胞および/または葉緑体を溶解するために、プラグは溶解緩衝液(0.5M EDTA、1%サルコシル、0.2mg/mLプロテイナーゼK)において55℃で36時間インキュベートされる。溶解が完了されると、プラグはTEで3回洗浄され、次いで、保存緩衝液(10mM Tris pH=7.4、1mM EDTA)中で保存される。葉緑体DNAを溶液中に放出するために、プラグは30mM NaClで3回洗浄され、65℃で10分間融解される。融解されたプラグは、42℃に変えられ、β−アガラーゼ(New England Biolabs)で1時間処理される。DNAの溶液は、サンプルを濃縮するためのエタノール沈降または下流適用のために直接的に使用されることができる。
【0132】
酵母からDNAを調製してPCRのためのテンプレートとして使用するために、寒天プレートまたは液体培養からの)106個の藻細胞が溶解緩衝液(6mM KHPO4、pH=7.5、6mM NaCl、3%グリセロール、1U/mLザイモリアーゼ)中に懸濁され、37℃まで30分間加熱され、95℃まで10分間、次いで、23℃近くまで冷却される。溶液は、PCR混合物に直接的に添加される。
【0133】
酵母からプラスミドDNAを調製するために、所望のクローンが選択的液体培地(例えば、CSM−Trp)において飽和まで30℃で増殖される。細胞は、3000×gで10分間の遠心分離によって収集され、そして150μLの溶解緩衝液(1Mソルビトール、0.1Mクエン酸ナトリウム、0.06M EDTA pH=7.0、100mM β−メルカプトエタノール、および2.5mg/mLザイモリアーゼ)において再懸濁される。溶液は、1時間37℃でインキュベートされる。300μLの変性溶液(1%SDSおよび0.2N NaOH)が添加され、溶液は60℃で15分間インキュベートされる。150μLの中和溶液(3M酢酸カリウム、pH=4.8)が添加され、溶液は氷上で10分間インキュベートされる。溶液は、14,000PRMで10分間遠心分離され、そして上清が別の管に移される。1mLのイソプロパノールが添加され、混合物は、徐々に混合され、14,000PRMで10分間遠心分離される。ペレットは、1mLの70%エタノールで1回洗浄され、そして14,000PRMで10分間遠心分離される。DNAペレットは風乾され、60μLの再懸濁緩衝液(10mM Tris pH=7.4、1mM EDTA、および0.1mg/mL RNA分解酵素)中に再懸濁される。
【0134】
細菌からプラスミドDNAを調製するために、細胞は適当な抗生物質(KanまたはAmp)を含有するLBにおいて飽和まで37℃で増殖される。もし目的のDNAが標準的な複製要素を含有するならば、細胞は遠心分離によって採取される。もし目的のDNAがP1複製要素を含有するならば、飽和された細胞培養物はLB+Kan+IPTGにおいて1:20に希釈され、そして37℃で4時間増殖され、次いで、採取される。Plasmid Maxiキット(QIAGEN)は、細胞ペレットからプラスミドDNAを調製するために使用される。
【0135】
例示的な目的のために、かつ、本発明を記載される特定の方法に限定することなく、藻類、酵母、または(プラグまたは溶液における)細菌から調製されたDNAサンプルは、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)によって分析され、または適当な制限エンドヌクレアーゼ(例えば、SmaI)で消化され、そしてPFGE、慣習的アガロースゲル電気泳動法、および/またはサザンブロットによって分析される。これらの目的のために有用な標準的プロトコルは、Gemmillら(「Advances in Genome Biology」,Vol.1,「Unfolding The Genome」pp217 251,Ram S.Verma編)に十分に記載される。
【0136】
当業者は、当該分野において公知の多くの他の方法が、具体的に記載または参照される方法の代わりに置き換えられ得ることを理解するだろう。
【実施例2】
【0137】
実施例2:形質転換方法
E.coli株DH10BまたはGenehogは、0.7のOD600まで細胞を増殖させることによってエレクトロコンピテントにされ、次いで、収集され、氷冷10%グリセロールで2回洗浄され、ドライアイスエタノール浴において急速冷凍され、−80℃で保存される。全酵母または藻類のDNAが調製され、例えば、Bio−Rad Gene Pulsar Electroporatorにおいて0.1cmキュベットを1,800V、200オーム、および25mFで使用することによってE.coli中にエレクトロポレーションされる。細胞は回収され、クローンは、カナマイシン(50μg/mL)、アンピシリン(100μg/mL)、ゲンタマイシン(50μg/mL)、テトラサイクリン(51μg/mL)またはクロラムフェニコール(34μg/mL)のような1種以上の抗生物質を含有する寒天増殖培地上で選択される。
【0138】
酵母株YPH857、YPH858、またはAB1380は、Sheistl&Geitz(Curr.Genet.16:339 346,1989)およびShermanら、「Laboratory Course Manual Methods in Yeast Genetics」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1986)に記載されるような酢酸リチウム法、またはSipiczkiら、Curr.Microbiol.,12(3):169−173(1985)によって記載される方法のようなスフェロプラスト法によって形質転換され得る。酵母形質転換体は、トリプトファン、ロイシン、またはウラシルのようなアミノ酸および/または核酸を欠く寒天培地上で選択およびスクリーニングされる。酵母の増殖および表現型試験のための標準的な方法が、Shermanら(前出)によって記載されるように利用される。
【0139】
藻株csc137c(mt+)、W1.1、またはW1−1は、粒子衝突によって形質転換され得る。細胞は、100rpmに設定されたロータリーシェーカー上で450ルクスの連続照明下、23℃で0.5mM 5−フルオロデオキシウリジン(GormanおよびLevine,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 54:1665−1669,1965,これは参照によって本明細書中に援用される)の存在下または不在下でTAP培地において後期対数期まで(およそ7日間)増殖される。4,000×g、23℃で5分間の遠心分離によって50mlの細胞が採取される。上清は静かに移され、細胞は、その後の粒子衝突(Cohenら(前出)、1998)による葉緑体形質転換のために4mlのTAP培地に再懸濁される。
【0140】
当業者は、当該分野において公知の多くの他の形質転換方法が、本明細書において具体的に記載または参照される方法の代わりに置き換えられ得ることを理解するだろう。
【実施例3】
【0141】
実施例3:葉緑体ゲノムを捕捉するためのハイブリッドギャップ充填ベクター
この実施例において、系は葉緑体DNAを捕捉するためにハイブリッドギャップ充填ベクターを使用して確立される(図1)。ハイブリッドギャップ充填ベクターのバックボーンは、ベクターが酵母人工プラスミド(YAP)として機能することを可能にする酵母要素、およびベクターがプラスミド人工染色体(PAC)として機能することを可能にする細菌要素を含有する。酵母要素は、酵母選択マーカー配列(例えば、TRP1またhLEU2)、酵母動原体配列(CEN)、および酵母自己複製ヌクレオチド配列(ARS)を含む。細菌要素は、P1または細菌性複製起点配列、および細菌選択マーカー配列(例えば、Kanr)を含む。
【0142】
ハイブリッドギャップ充填ベクターを操作するために、ベクターpDOCI(配列番号1)が産生された。pTRP−AU(図2)の一部は、TEL、ADE2、およびURA3を包含する領域を囲む部位にアニールするPCRプライマー対を使用して増幅された。1つの対は、酵母要素(配列番号21および22)内の領域を増幅し、他方の対は細菌要素(配列番号23および24)内の領域を増幅する。PCR産物は、単一のプライマー対(配列番号21および24)を使用するPCRアセンブリによって単一のDNAフラグメントへと組立てられた。組み立てられた産物は、NotIで消化され、NotIで消化されたpUC−SE(配列番号2)に連結されてpDOCI(配列番号1)を形成した。
【0143】
ハイブリッドギャップ充填ベクターを適合させて葉緑体DNAを捕捉するために、ベクターpDOCI−10(配列番号3)が産生された。C.reinhardtii葉緑体ゲノムの一部は、psbD遺伝子座(図3;四角形によって囲まれた数字10によって示される)近くの2つの隣接領域に特異的な2つのプライマー対(配列番号25および26、ならびに配列番号27および28)を使用してPCR増幅された。各PCR産物は、NotIおよびI−SceIで消化され、I−SceIで消化されてpDOCI−10(配列番号3)を形成したpDOCI(配列番号1)に連結された。
【0144】
pDOCI−10を適合させて、藻類に抗生物質耐性を付与するために、選択マーカーがクローニングされた。細菌由来のカナマイシン耐性コード遺伝子を含有し、5‘UTRおよびC.reinhardtii由来のatpA遺伝子のためのプロモーター配列およびC.reinhardtii由来のrbcL遺伝子のための3’UR配列によって調節されるpSE−3HB−Kan(配列番号4)は、カナマイシン耐性カセットを遊離させるSnaBIで消化された。カセットは、SnaBIで消化されたpDOCI−10に連結されて、pDOCI−10−Kan(配列番号5)を形成した。
【0145】
葉緑体DNAを捕捉するためのハイブリッドギャップ充填ベクターpTRP−10−Kan(配列番号6)は、酵母における組換えを使用して構築された(図2)。簡単には、pDOCI−10−KanはPacIおよびAscIで消化されて、葉緑体ゲノム特異的要素をハイブリッドギャップ充填ベクター中に導入するカセットを遊離させた。このカセットは、酢酸リチウム法を使用して酵母株YPH858中にpTRP−AUと共に形質転換された。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。カセットと正しく一体化された形質転換体は、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を含有するCSM−Trp寒天培地上の増殖に基づいて、および赤色によって単離された。5−FOAは、機能的URA3遺伝子を欠くクローンおよびADE2遺伝子が除去される場合に生じる赤色を選択する。プラスミドDNAは、CSM−Trp液体培地において増殖され、かつE.coli(DH10B)に形質転換された酵母クローンから単離された。大量のpTRP−10−Kanを産生するために、pTRP−10−Kanを含むDH10B細胞が、LB+Kan(50μg/mL)において37℃で飽和まで増殖され、次いで、LB+Kan+IPTGにおいて1:20に希釈され、37℃で4時間増殖された。DNAは、Plasmid Maxiキット(QIAGEN)を使用して細菌培養物から調製された。
【0146】
ベクターの組成は、全プラスミドのDNA配列決定によって確認された。
【実施例4】
【0147】
実施例4:外来栄養宿主における葉緑体ゲノムDNAを安定および/または修飾するベクター
しばしば、非相同DNAの大きな断片は、酵母または細菌のような宿主生物において不安定である。これは、限定されないが、毒性遺伝子産物またはコドンバイアスの存在、および/または選択圧の欠如を含む、複数の因子のためであり得る。したがって、シャトルベクター内の標的DNAは、酵母または細菌内で変更され得る。例えば、標的DNA配列の特定の部分(例えば、コード領域またはプロモーター)は、宿主生物内の組換えによって除去または移動され得る。同様に、標的DNAを担持するシャトルベクターが標的DNAを提供した生物(または近縁の種)に戻された場合、標的DNAは不安定になることができる。
【0148】
そのような不安定部位および感受性配列は、ゲノムDNAのどの断片が捕捉を回避し、または時間とともに消失するかを決定することによって容易に発見される。これらの部位は、最初に単離されたギャップ充填標的DNAプラスミドと、プラスミドにコードされた選択可能マーカー(例えば、TRP1)の存在を選択する条件下で実験室において連続的に継代されてきた形質転換された株から単離されたプラスミドとを比較することによって、または、天然の標的DNA(例えば、C.reinhardtii葉緑体DNA)との比較によって検出されることができる。そのような比較は、例えば、制限フラグメント長多型(RFLP)分析または直接配列決定によって実施され得る。当業者は、そのような差異を決定するための複数の他のプロトコルおよび方法が存在することを認識するだろう。
【0149】
いったん特定されると、そのような部位および配列は、マーカーの選択の間残存させられることができる。図4は、ベクターの複数のクローニング部位における選択可能マーカーの配列の例を示す。
【0150】
酵母安定要素および藻類安定要素を含有する安定化ベクターを産生するために、ADE2遺伝子およびURA3遺伝子を包含するpTrp−AUにおけるDNAの領域は、SfiIでの消化の後の所望のフラグメントのゲル精製によって遊離された。フラグメントは、平滑末端を作製するためにKlenowフラグメントで処理され、PmlIで消化されたpSE−3HB−Strep(配列番号7)に連結されて、pSE−3HB−Strep−AUを作製した(図4B)。pSE−3HB−Strepは、細菌由来のストレプトマイシン耐性コード遺伝子を、C.reinhardtii葉緑体ゲノムの3HB遺伝子座に対して標的化するベクターであり、それは、5’UTRおよびC.reinhardtii由来のatpA遺伝子のためのプロモーター配列およびC.reinhardtii由来のrbcL遺伝子のための3’UTR配列によって調節される。
【0151】
葉緑体ゲノムの他の領域を標的化するベクターを産生するために、図3において丸数字によって示される部位(1−5’部位、配列番号29および30;1−3’部位、配列番号31および32;3−5’部位、配列番号33および34;3−3’部位、配列番号35および36;4−5’部位、配列番号37および38;4−3’部位、配列番号39および40;5−5’部位、配列番号41および42;5−3’部位、配列番号43および44;および7−5’部位、配列番号45および46;7−3’部位、配列番号47および48)に隣接する5’領域および3’領域にアニールするPCRプライマー対を使用して800〜1000bpの領域が増幅された。PCR産物の各対は、NotIおよびI−SceIで消化され、混合され、そしてNotIで消化されたpUC−SE(配列番号2)に連結されて、(それらの組込み位置に名前が由来する)プラスミドpUC1、pUC3、pUC4、pUC5、およびpUC7を生成した。
【0152】
酵母選択マーカーの対は、複数の安定化部位が同時に利用されることができるように構築された(図4B)。各マーカー対は、pRS416からPCR増幅されたURA3遺伝子(配列番号8)を含有する。各マーカー対はまた、pRS415から増幅されたLEU2遺伝子(配列番号9)、pRS413から増幅されたHIS3遺伝子(配列番号10)、pTrp−AUから増幅されたADE2遺伝子(配列番号11)、S.cerevisiaeゲノムDNAから増幅されたLYS2遺伝子(配列番号12)、または、抗真菌剤G418に対する耐性を付与するpFA6a−kanMX6からのkanMX6遺伝子(配列番号13)を含有する。URA3遺伝子のために使用されるプライマーは、5’末端(配列番号49)にXmaI制限部位を加え、3’末端(配列番号50)にSalIおよびSacIIを加える。LEU2、HIS3、ADE2、LYS2、およびG418r遺伝子のために使用されるプライマーは、5’末端(LEU2について配列番号51、HIS3について配列番号52、ADE2について配列番号53、LYS2について配列番号54、およびG418rについて配列番号55)にXmaI制限部位を加え、3’末端(LEU2について配列番号56、HIS3について配列番号57、ADE2について配列番号58、LYS2について配列番号59、およびG418rについて配列番号60)にSpeI部位を加える。各PCR産物はXmaIおよびSalIで消化され、対に混合され、所望の組込みベクター中に連結されて、pUC1−URA3/ADE2、pUC3−URA3/LEU2、pUC4−URA3/HIS3、pUC5−URA3/ADE2、およびpUC7−URA3/LYS2を生じた。URA3は、陽性選択および陰性選択を可能にするので、各場合において使用される。マーカー対は、(単一修飾の場合において)各遺伝子、2つ以上の修飾の場合おいて非URA3遺伝子についての選択に基づいて導入さてることができる。次いで、マーカーは、マーカー対を囲む配列に相同な末端配列でDNAを導入すること、および5−FOAを含有する最小培地上での増殖を選択することによって除去されることができる。
【0153】
細菌における配列安定性を促進するために、抗生物質耐性マーカーが酵母選択マーカー対中にクローニングされた。細菌安定マーカーは、限定されないが、pET−21aから増幅されたアンピシリン耐性遺伝子(Ampr、配列番号14)、pBR322から増幅されたテトラサイクリン耐性遺伝子(Tetr、配列番号15)、pETcoco−1から増幅されたクロラムフェニコール耐性遺伝子(Camr、配列番号16)、およびpJQ200から増幅されたゲンタマイシン耐性遺伝子(Gentr、配列番号17)を含む。各遺伝子について、5’末端および3’末端の両方にXmaI部位を加えるプライマー対(Amprについて配列番号61および62、Tetrについて配列番号63および64、Camrについて配列番号65および66、ならびにGentrについて配列番号67および68)は、抗生物質耐性フラグメントをPCR増幅するために使用された。各PCR産物はXmaIで消化され、XmaIで消化されたpUC1−URA3/ADE2、pUC3−URA3/LEU2、pUC4−URA3/HIS3、pUC5−URA3/ADE2、およびpUC7−URA3/LYS2中に連結された。図4Cは、酵母安定マーカーおよび細菌安定マーカーの配列を示す。
【実施例5】
【0154】
実施例5:葉緑体ゲノム中へのハイブリッドベクターおよび安定化ベクターの導入
安定化ベクター有りまたは無しでハイブリッドベクターを含有するC.reinhardtii葉緑体ゲノムを産生するために、pTRP−10−KanおよびpSE−3HB−Strep−AUは、藻細胞に形質転換された。pTRP−10−Kanは、葉緑体標的化要素が各末端にあるようにするためにベクターを線状にするためにNotIで消化された(図5)。pSE−3HB−Strep−AUは、環状DNAとして形質転換された。
【0155】
これらの実験のために、全ての形質転換は、C.reinhardtii株137c(mt+)上で実行される。細胞は、100rpmに設定されたロータリーシェーカー上で450ルクスの連続照明下、23℃で0.5mM 5−フルオロデオキシウリジンの存在下でTAP培地(GormanおよびLevine,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 54:1665−1669,1965,これは参照によって本明細書中に援用される)において後期対数期まで(およそ7日間)増殖される。4,000×g、23℃で5分間の遠心分離によって50mlの細胞が採取される。上清は静かに移され、細胞は、その後の粒子衝突(Cohenら(前出)、1998)による葉緑体形質転換のために4mlのTAP培地に再懸濁される。全ての形質転換は、「Kan」と標識された図5におけるセグメント(Chlamydomonas Stock Center,Duke University)によってコードされる遺伝子によって耐性が付与されるカナマイシン選択(100μg/ml)下で実行される。
【0156】
PCRは、形質転換された株を特定するために使用される。PCR分析のために、(寒天プレートまたは液体培養からの)106個の藻細胞が、10mM EDTA中に懸濁され、95℃まで10分間加熱され、次いで、23℃近くまで冷却される。反応緩衝液、MgCl2、dNTP、PCRプライマー対、DNAポリメラーゼ、および水からなるPCRカクテルが調製される。反応のためのテンプレートを提供するために、EDTA中の藻溶解物が添加される。添加される藻溶解物およびEDTAの量および濃度を補償するために、マグネシウム濃度が変えられる。特定のプライマー対について最適なアニーリング温度を決定するために、アニーリング温度勾配が利用される。
【0157】
図6は、pSE−3HB−Strep−AU有りおよび無しでpTrp−10−Kanを含有する単離された藻株の例を示す。pTRP−10−Kanを組み込んだ株は、ベクターバックボーンにおける異なる領域を増幅するプライマー対のセットのいずれか(レーン1、配列番号69および70;レーン2、配列番号71および72;レーン3、配列番号73および74;レーン4、配列番号75および76;レーン5、配列番号77および78;レーン6、配列番号79および80;レーン7、配列番号81および82;レーン8、配列番号83および84;ならびにレーン9、配列番号85および86)、または、pTrp−10−Kan DNAと葉緑体ゲノムDNAとの間の接合を補うプライマー対(レーン10、配列番号87および88;レーン11、配列番号89および90)を使用して特定された。組み込まれたpSE−3HB−Strep−AUを有する株を特定するために、ADE2遺伝子内の領域を増幅するプライマー対(配列番号91および92)が使用された。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を得るクローンである。
【実施例6】
【0158】
実施例6:外来栄養宿主中への葉緑体ゲノムの捕捉
この実施例において、C.reinhardtii葉緑体ゲノムは、上記に記載されるような標準的技術を使用して単離される。pSE−3HB−Strep−AU有りまたは無しでpTRP−10−Kanベクターを含有するC.reinhardtii葉緑体DNAは、細菌を形質転換するために使用された。エレクトロコンピテントE.coli株DH10BまたはGenehogは、形質転換され、カナマイシン(50mg/l)を有するLB寒天増殖培地上で選択された。個々のクローンからのDNAは、細胞を37℃でカナマイシン(50mg/l)を有するLB液体増殖培地において飽和まで増殖させることによって単離された。飽和された細胞培養物は、LB+Kan+IPTGにおいて1:20に希釈され、そして37℃で4時間増殖される。Plasmid Maxiキット(QIAGEN)は、単離されたクローンからプラスミドDNAを調製するために使用される。
【0159】
図7Aは、親ハイブリッドベクター(クローンC)に比較される、細菌形質転換から得られた2つのタイプのクローン(クローン1およびクローン2)の制限分析を示す。クローン1および2は、>100kbのDNAからなるが、親ハイブリッドベクターは、23kbのDNAのみからなり、DNAの大きな部分がハイブリッドベクターによって実際に捕捉されたことを実証する。制限マッピングは、クローン1が葉緑体ゲノムのおよそ半分を含むことを示す(図8A)。ハイブリッドベクターに隣接する領域のDNA配列は、組換え事象がC.reinhardtiiカナマイシン耐性カセットの3’UTR(C.reinhardtiiにおけるrbcL遺伝子に由来する3’UTRである)と、C.reinhardtiiストレプトマイシン耐性カセットの3’UTR(C.reinhardtiiにおけるrbcL遺伝子に由来する3’UTRである)との間で起こったことを示す。クローン1はC.reinhardtiiカナマイシン耐性カセットを保持したが、C.reinhardtiiストレプトマイシン耐性カセットを失った。制限マッピングは、クローン2もまた葉緑体ゲノムのおよそ半分を含むことを示す(図8B)。しかしながら、ハイブリッドベクターに隣接する領域のDNA配列決定は、異なる組換え事象がクローン2を生じさせるために起こったことを示す。C.reinhardtiiカナマイシン耐性カセットの5’UTR(C.reinhardtiiにおけるatpA遺伝子に由来する5’UTR)は、C.reinhardtii葉緑体ゲノムにおけるatpA遺伝子の5’UTRと逆方向反復Aで(図8におけるIR−A)組換えられた逆方向反復B(図8におけるIR−B)を組み換えた。クローン2は、C.reinhardtiiカナマイシン耐性カセットとC.reinhardtiiストレプトマイシン耐性カセットの両方を消失した。
【0160】
ハイブリッドベクターが酵母における安定した複製を支援し得ることを実証するために、クローン1は、酢酸リチウム法によって酵母株AB1380に形質転換され、形質転換体は、CSM−Trp寒天培地上でた選択された。形質転換体は、クローン1の葉緑体ゲノムDNAを有する領域を増幅するプライマー対(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、期待される大きさのPCR産物を生じさせるクローンである。個々のPCR−陽性クローンは、分離株ごとに複数のクローンを産生するためにストリーキングされた。DNAは単離された酵母クローンから調製され、細菌に形質転換された。細菌は、クローン1の葉緑体ゲノムDNA内の領域を増幅するプライマー対(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製され、EcoRIでの制限消化によって分析された。図7Bは、全ての単離されたクローンが、もともとの単離されたクローン1と同一の制限マップを有することを示す。したがって、ハイブリッドベクターは、酵母における安定した複製を支援する。
【0161】
捕捉されたDNAが実際に葉緑体ゲノムDNAであるかどうかを決定するために、サザンブロットが実施された。細菌から調製されたクローン1および2は、EcoRIで消化され、ゲル電気泳動法によって分離され、メンブレンに転移され、そして、C.reinhardtii由来の放射性のHindIIIで消化された全DNAで調べられた。図7Cは、クローン1および2におけるDNAがシグナルを生じさせ、したがって、捕捉されたDNAが葉緑体ゲノムDNAであることを示すことを示す。
【実施例7】
【0162】
実施例7:藻類への葉緑体ゲノムDNAの再導入
これらの実験について、全ての形質転換は、内因性psbA遺伝子座由来のSAAを発現するC.reinhardtii株W1.1、または内因性psbA遺伝子座由来のLuxABを発現するW1−1のいずれかで実行される。W1.1とW1−1の両方が、16S rRNAにおいて変異を導入するp228の形質転換のおかげでスペクチノマイシンに対して耐性である。細胞は、100rpmに設定されたロータリーシェーカー上で450ルクスの連続照明下、23℃でTAP培地(GormanおよびLevine,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 54:1665−1669,1965,これは参照によって本明細書中に援用される)において後期対数期まで(およそ7日間)増殖される。4,000×g、23℃で5分間の遠心分離によって50mlの細胞が採取される。上清は静かに移され、細胞は、その後の粒子衝突(Cohenら(前出)、1998)による葉緑体形質転換のために4mlのHSM培地に再懸濁される。全ての形質転換は、HSM寒天上で実行される。
【0163】
形質転換体は、HSM上の増殖によって選択されて、psbA遺伝子座の機能が回復されたことを示した。クローンはまたその後、TAP上、スペクチノマイシン(150μg/ml)を有するTAP上、カナマイシン(100μg/ml)を有するTAP上、HSM上、およびカナマイシン(100μg/ml)を有するHSM上での増殖について調べられた。図9は、クローン1で形質転換されたW1−1が全ての培地タイプ上で増殖することができることを示す。図9はまた、クローン2で形質転換されたW1−1が、カナマイシンを含有する培地上で増殖できないことを示し、それは、クローン2がKan耐性マーカーを含まないので予測される。
【実施例8】
【0164】
実施例8:バイオマス分解酵素を生成するための葉緑体の修飾
捕捉された葉緑体ゲノムDNAをキシラナーゼの生成のために修飾するために、藻発現カセットが、実施例4に記載される酵母マーカーベクター中にクローニングされた。簡単には、C.reinhardtii葉緑体発現ベクターは、C.reinhardtii由来のpsbD遺伝子について5’UTRによって調節され、そしてC.reinhardtii由来のpsbA遺伝子について3’UTRで調節されるT.reeseiからキシラーゼを有するDNAのフラグメント(配列番号18)を遊離するためにSpeIで消化された。フラグメントは、平滑末端を作製するためにKlenowフラグメントで処理され、pUC1−URA3/ADE2、pUC3−URA3/LEU2、およびpUC4−URA3/HIS3において酵母マーカー間でSmaI(XmaI)部位中にクローニングされた。図10Aは、新しいベクターにおける種々の要素の配列を示す。
【0165】
葉緑体ゲノムDNAは、修飾ベクターを、捕捉されたDNAを含む酵母に形質転換することによって修飾された。形質転換のために、全ての修飾ベクターは、NotIでの消化によって線状にされた。(実施例6からの)クローン1を含む酵母は、30℃でCSM−Trp培地において飽和まで増殖され、次いで、YPADにおいて1:20に希釈され、そして30℃で4時間増殖される。酵母は酢酸リチウム法を使用して形質転換され、形質転換体は、CSM−Ura培地上での増殖によって選択された。形質転換体は、CSM−Trp−Ura培地上で増殖され、次いで、キシラナーゼ発現カセットについて特異的なプライマー(配列番号95および96)および葉緑体ゲノムDNA内の領域ついて特異的なプライマー(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、両方の反応について期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された酵母クローンから調製され、細菌内に形質転換された。細菌は、キシラナーゼ発現カセットについて特異的なプライマー(配列番号95および96)および葉緑体ゲノムDNA内の領域ついて特異的なプライマー(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、両方の反応について期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製されて、EcoRIでの制限消化によって分析された。図10Bは、単離されたクローンが所望の位置におけるキシラナーゼ発現カセットの組込みと一致する制限マップを含むことを示す。
【0166】
これらの実験について、全ての形質転換は、内因性psbA遺伝子座由来のSAAを発現するC.reinhardtii株W1.1、または内因性psbA遺伝子座由来のLuxABを発現するW1−1のいずれかで実行されるW1.1とW1−1の両方が、16S rRNAにおいて変異を導入するp228の形質転換のおかげでスペクチノマイシンに対して耐性である。細胞は、100rpmに設定されたロータリーシェーカー上で450ルクスの連続照明下、23℃でTAP培地(GormanおよびLevine,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 54:1665−1669,1965,これは参照によって本明細書中に援用される)において後期対数期まで(およそ7日間)増殖される。4,000×g、23℃で5分間の遠心分離によって50mlの細胞が採取される。上清は静かに移され、細胞は、その後の粒子衝突(Cohenら(前出)、1998)による葉緑体形質転換のために4mlのHSM培地に再懸濁される。全ての形質転換は、HSM寒天上で実行される。
【0167】
形質転換体は、HSM上の増殖によって特定されて、psbA遺伝子座の機能が回復されたことを示した。PCRは、エンドキシラナーゼ発現カセットも含有する形質転換体を特定するために使用される。PCR分析のために、(寒天プレートまたは液体培養からの)106個の藻細胞が、10mM EDTA中に懸濁され、95℃まで10分間加熱され、次いで、23℃近くまで冷却される。反応緩衝液、MgCl2、dNTP、PCRプライマー対(表2)、DNAポリメラーゼ、および水からなるPCRカクテルが調製される。反応ためのテンプレートを提供するために、EDTA中の藻溶解物が添加される。添加される藻溶解物およびEDTAの量および濃度を補償するために、マグネシウム濃度は変えられる。特定のプライマー対について最適なアニーリング温度を決定するために、アニーリング温度勾配が利用される。
【0168】
エンドキシラナーゼ発現カセットを有する株を特定するために、エンドキシラナーゼ発現カセット内の領域を増幅するプライマー対(配列番号95および96)が使用された。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を得るクローンである。図11Aは、エンドキシラナーゼ発現カセット(アスタリスク付きで示されるPCR産物)を含有する複数の藻株が得られたことを示す。
【0169】
機能的キシラナーゼが発現されるかどうか決定するために、酵素活性が試験される。カナマイシン(100μg/mL)を含有するTAP寒天プレートからの細胞(パッチごとにおよそ2mg)のパッチは、丸底96ウェルプレート(Corning)において50μlの100mM酢酸ナトリウム(pH4.8)中に再懸濁された。再懸濁された細胞は、20μlのBugBuster Protein Extraction Reagent(Novagen)の添加によって溶解され、そして室温で5分間振動された。細胞溶解物(50μl)は、ブラック96ウェルプレートに移され、生じたウェルのクロロフィル蛍光が、440nmの励起波長および740nmの発光波長で、695nmのカットオフフィルターを備えるSpectraMax M2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)において測定された。測定されたクロロフィルシグナル(RFU:相対蛍光単位)は、反応物に添加されたバイオマスの量に対してキシラーゼ活性シグナルを正規化するために使用された。
【0170】
クロロフィル蛍光の測定後に、キシラナーゼ基質が添加された。EnzCheck Ultra Xylanase基質(Invitrogen)は、50μg/mlの濃度で100mM酢酸ナトリウム(ph4.8)中に溶解され、50μlの基質がマイクロプレートの各ウェルに添加された。蛍光シグナルは、360nmの励起波長および460nmの発光波長で、カットオフフィルターを備えず、かつ42℃に設定されたプレートチャンバを備えるSpectraMax M2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)において測定された。蛍光シグナルは15分間測定され、酵素速度は、Softmax Pro v5.2(Molecular Devices)で計算された。酵素速度は、RFU/分として記録された。酵素の比活性度は、クロロフィル蛍光のRFUあたりの、1分あたりのミリRFUとして計算された。図11Bは、部位1、3、および4においてキシラナーゼ発現カセットを含有する複数の藻株(図3および10を参照のこと)が得られ、それが機能的キシラナーゼ酵素を生成することを示す。
【実施例9】
【0171】
実施例9:テルペンを生成するための葉緑体ゲノムの修飾
捕捉された葉緑体ゲノムDNAをFPPシンターゼの生成のために修飾するために、藻発現カセットが、実施例4に記載される酵母マーカーベクター中にクローニングされた。簡単には、C.reinhardtii葉緑体発現ベクターは、C.reinhardtii由来のpsbD遺伝子について5’UTRによって調節され、そしてC.reinhardtii由来のpsbA遺伝子について3’UTRで調節されるG.gallusからFPPシンターゼを有するDNAのフラグメント(配列番号19)を遊離するためにSpeIで消化された。フラグメントは、平滑末端を作製するためにKlenowフラグメントで処理され、pUC1−URA3/ADE2、pUC3−URA3/LEU2、およびpUC4−URA3/HIS3において酵母マーカー間でSmaI(XmaI)部位中にクローニングされた。図10Aは、新しいベクターにおける種々の要素の配列を示す。
【0172】
葉緑体ゲノムDNAは、修飾ベクターを、捕捉されたDNAを含む酵母に形質転換することによって修飾された。形質転換のために、全ての修飾ベクターは、NotIでの消化によって線状にされた。(実施例6からの)クローン1を含む酵母は、30℃でCSM−Trp培地において飽和まで増殖され、次いで、YPADにおいて1:20に希釈され、そして30℃で4時間増殖される。酵母は酢酸リチウム法を使用して形質転換され、形質転換体は、CSM−Ura培地上での増殖によって選択された。形質転換体は、CSM−Trp−Ura培地上で増殖され、次いで、FPPシンターゼ発現カセットについて特異的なプライマー(配列番号95および96)および葉緑体ゲノムDNA内の領域ついて特異的なプライマー(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、両方の反応について期待される大きさのPCR産物を与えたクローンである。DNAは、単離された酵母クローンから調製され、細菌内に形質転換された。細菌は、FPPシンターゼ発現カセットについて特異的なプライマー(配列番号95および96)および葉緑体ゲノムDNA内の領域ついて特異的なプライマー(配列番号97および98)を使用してPCRスクリーニングされた。所望されるクローンは、両方の反応について期待される大きさのPCR産物を与えたクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製されて、制限消化によって分析された。図10Cは、単離されたクローンが所望の位置におけるFPPシンターゼ発現カセットの組込みと一致する制限マップを含むことを示す。
【0173】
これらの実験について、全ての形質転換は、内因性psbA遺伝子座由来のSAAを発現するC.reinhardtii株W1.1、または内因性psbA遺伝子座由来のLuxABを発現するW1−1のいずれかで実行される。W1.1とW1−1の両方が、16S rRNAにおいて変異を導入するp228の形質転換のおかげでスペクチノマイシンに対して耐性である。細胞は、100rpmに設定されたロータリーシェーカー上で450ルクスの連続照明下、23℃でTAP培地(GormanおよびLevine,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 54:1665−1669,1965,これは参照によって本明細書中に援用される)において後期対数期まで(およそ7日間)増殖される。4,000×g、23℃で5分間の遠心分離によって50mlの細胞が採取される。上清は静かに移され、細胞は、その後の粒子衝突(Cohenら(前出)、1998)による葉緑体形質転換のために4mlのHSM培地に再懸濁される。全ての形質転換は、HSM寒天上で実行される。
【0174】
形質転換体は、HSM上の増殖によって特定されて、psbA遺伝子座の機能が回復されたことを示した。PCRは、FPPシンターゼ発現カセットも含有する形質転換体を特定するために使用される。PCR分析のために、(寒天プレートまたは液体培養からの)106個の藻細胞が、10mM EDTA中に懸濁され、95℃まで10分間加熱され、次いで、23℃近くまで冷却される。反応緩衝液、MgCl2、dNTP、PCRプライマー対、DNAポリメラーゼ、および水からなるPCRカクテルが調製される。反応ためのテンプレートを提供するために、EDTA中の藻溶解物が添加される。添加される藻溶解物およびEDTAの量および濃度を補償するために、マグネシウム濃度は変えられる。特定のプライマー対について最適なアニーリング温度を決定するために、アニーリング温度勾配が利用される。
【0175】
FPPシンターゼ発現カセットを有する株を特定するために、エンドキシラナーゼ発現カセット内の領域を増幅するプライマー対が使用された。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を得るクローンである。FPPシンターゼ発現カセット(図12、アスタリスク付きで示されるPCR産物)を含有する複数の藻株が得られた。
【実施例10】
【0176】
実施例11:部分的葉緑体ゲノムのギャップ充填
この実施例において、系は、酵母における組換えによって葉緑体DNAを捕捉するためにハイブリッドギャップ充填ベクターを使用して確立される(図13)。ハイブリッドギャップ充填ベクターを葉緑体DNAを捕捉するように適合させるために、ベクターpDOCI−B5A10(配列番号20)が産生された。C.reinhardtii葉緑体ゲノムの一部が、psbD遺伝子(A10、配列番号27および28)およびpsbH遺伝子(B5、配列番号787および788)付近に隣接する領域に特異的な2つのプライマー対を使用してPCR増幅された。各PCR産物は、NotIおよびI−SceIで消化され、I−SceIで消化されてpDOCI−B5A10(配列番号20)を形成するpDOCI(配列番号1)に連結された。
【0177】
葉緑体DNAを捕捉するためのハイブリッドギャップ充填ベクターpTRP−B5A10は、酵母における組換えを使用して構築された。簡単には、pDOCI−B5A10(配列番号20)が、葉緑体ゲノム特異的要素をハイブリッドギャップ充填ベクター中に導入するカセットを遊離するために、PacIおよびAscIで消化された。このカセットは、酢酸リチウム法を使用して酵母株YPH858中にpTRP−AUと共に形質転換された。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。カセットと正しく一体化された形質転換体は、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を含有するCSM−Trp寒天培地上の増殖に基づいて、および赤色によって単離された。5−FOAは、機能的URA3遺伝子を欠くクローンおよびADE2遺伝子が除去される場合に生じる赤色を選択する。プラスミドDNAは、CSM−Trp液体培地において増殖され、かつE.coli(DH10B)に形質転換された酵母クローンから単離された。大量のpTRP−10−Kanを産生するために、pTRP−10−Kanを含むDH10B細胞が、LB+Kan(50μg/mL)において37℃で飽和まで増殖され、次いで、LB+Kan+IPTGにおいて1:20に希釈され、37℃で4時間増殖された。DNAは、Plasmid Maxiキット(QIAGEN)を使用して細菌培養物から調製された。
【0178】
所望のゲノムDNAは、標的ゲノムDNAの領域に対して高い相同性を有するギャップ充填ベクターの部位(図13においてA10およびB5によって示される)を使用して捕捉される。線状化されたギャップ充填ベクターDNAおよび葉緑体ゲノムDNAは、実施例2に記載されるような酢酸リチウム法またはスフェロプラスト法を使用してS.cerevisiaeを形質転換するために使用される。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。いったん、標的DNAが、相同組換えを介してベクターによって捕捉されると、DNAは酵母系および細菌系の両方において安定に複製されることができる。図1において示されるように、ギャップ充填ベクターは選択可能マーカーTRP1を含有する。したがって、酵母細胞は、陽性形質転換体をスクリーニングするために、トリプトファン不含培地上に培養される。トリプトファン不含培地上で増殖する形質転換された株は、ギャップ充填プラスミドにおける標的DNA挿入部分の存在についてスクリーニングされる。そのようなスクリーニングは、当該分野における任意の公知の方法、例えば、制限酵素消化、PCR、および/またはゲル電気泳動法によることができる。
【0179】
酵母形質変換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRによってスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された酵母から調製され、細菌に形質転換される。細菌形質転換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製され、そしてEcoRIでの制限消化によって分析される。
【実施例11】
【0180】
実施例12:完全な葉緑体ゲノムのギャップ充填
この実施例において、系は、酵母における組換えによって完全な葉緑体ゲノムを捕捉するためにハイブリッドギャップ充填ベクターを使用して確立される(図14)。葉緑体DNAを捕捉するためのギャップ充填ベクターpTRP−10は、酵母における組換えを使用して構築された。簡単には、pDOCI−10(実施例3に記載される配列番号3)が、葉緑体ゲノム特異的要素をハイブリッドギャップ充填ベクター中に導入するカセットを遊離するために、PacIおよびAscIで消化された。このカセットは、酢酸リチウム法を使用して酵母株YPH858中にpTRP−AUと共に形質転換された。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。カセットと正しく一体化された形質転換体は、5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を含有するCSM−Trp寒天培地上の増殖に基づいて、および赤色によって単離された。5−FOAは、機能的URA3遺伝子を欠くクローンおよびADE2遺伝子が除去される場合に生じる赤色を選択する。プラスミドDNAは、CSM−Trp液体培地において増殖され、かつE.coli(DH10B)に形質転換された酵母クローンから単離された。大量のpTRP−10−Kanを産生するために、pTRP−10−Kanを含むDH10B細胞が、LB+Kan(50μg/mL)において37℃で飽和まで増殖され、次いで、LB+Kan+IPTGにおいて1:20に希釈され、37℃で4時間増殖された。DNAは、Plasmid Maxiキット(QIAGEN)を使用して細菌培養物から調製された。
【0181】
所望されるゲノムDNAは、標的ゲノムDNAの隣接領域に対して高い相同性を有するギャップ充填ベクターにおける部位(図14におけるA10およびB10によって示される)を使用することによって捕捉される。線状化されたギャップ充填ベクターDNAおよび葉緑体ゲノムDNAは、実施例2に記載されるような酢酸リチウム法またはスフェロプラスト法を使用してS.cerevisiaeを形質転換するために使用される。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。いったん、標的DNAが、相同組換えを介してベクターによって捕捉されると、DNAは酵母系および細菌系の両方において安定に複製されることができる。図1において示されるように、ギャップ充填ベクターは選択可能マーカーTRP1を含有する。したがって、酵母細胞は、陽性形質転換体をスクリーニングするために、トリプトファン不含培地上に培養される。トリプトファン不含培地上で増殖する形質転換された株は、ギャップ充填プラスミドにおける標的DNA挿入部分の存在についてスクリーニングされる。そのようなスクリーニングは、当該分野における任意の公知の方法、例えば、制限酵素消化、PCR、および/またはゲル電気泳動法によることができる。
【0182】
酵母形質変換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRによってスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された酵母から調製され、細菌に形質転換される。細菌形質転換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製され、そしてEcoRIでの制限消化によって分析される。
【実施例12】
【0183】
実施例13:完全な葉緑体ゲノム上での再組立て
【0184】
場合によっては、葉緑体ゲノムは、合計するとゲノムの全体を含む異なるプラスミド中へと分割され得る(図15)。そのような場合において、より小さな部分の捕捉は、ゲノム内の複数の部分の急速かつ複雑な修飾を促進し得る。葉緑体ゲノムフラグメントは、次いで、組み合わせられて、完全な(そして場合によっては修飾された)葉緑体ゲノムを再形成する。
【0185】
この実施例において、葉緑体は2つのベクター間に分割される。1つのベクターは、それぞれ、(NCBI、NC_005353から入手可能な配列に従って)B5〜A10、またはヌクレオチド76,400位〜176,500位までの葉緑体ゲノムからなる。このベクターは、実施例11において記載される手順によって入手され得る。他方のベクターは、それぞれ、(NCBI、NC_005353から入手可能な配列に従って)B10〜A5、またはヌクレオチド176,500位〜76,400位までの葉緑体ゲノムからなる。このベクターは、実施例6において記載されるクローン1と同じものであり、かつ、実施例6において記載される手順によって入手され得る。両ベクターは、ハイブリッドベクター配列を共有し、かつ、組換えのための相同な領域としてそれを使用することができる。この実施例において、組換え事象は、領域A10およびB10の間にハイブリッドベクター配列を挿入する(図5)。しかしながら、領域A5およびB5を結合する組換えを促進するのに十分な相同性は存在しない(図5)。したがって、A5およびB5に相同な配列間の選択可能マーカーを有する第3のベクターが添加される。
【0186】
葉緑体ゲノムは、3つのベクターの全てを組み合わせること、および実施例2に記載されるような酢酸リチウム法またはスフェロプラスト法を使用しておよびS.cerevisiaeを形質転換することによって再組立てされる。相同組換えは、形質転換された酵母細胞においてインビボで起こる。いったん、標的DNAが、相同組換えを介して作製されると、DNAは酵母系および細菌系の両方において安定に複製されることができる。図15において示されるように、第3のベクターは、選択可能マーカーURA3およびADE2を含有する。したがって、酵母細胞は、陽性形質転換体をスクリーニングするために、トリプトファン不含培地上に培養される。ウラシルおよび/またはアデニン不含培地上で増殖する形質転換された株は、ギャップ充填プラスミドにおける標的DNA挿入部分の存在についてスクリーニングされる。そのようなスクリーニングは、当該分野における任意の公知の方法、例えば、制限酵素消化、PCR、および/またはゲル電気泳動法によることができる。
【0187】
酵母形質変換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRによってスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された酵母から調製され、細菌に形質転換される。細菌形質転換体は、葉緑体ゲノムDNAに特異的なプライマー(配列番号89および90)を使用してPCRスクリーニングされる。所望のクローンは、期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製され、そしてEcoRIでの制限消化によって分析される。
【実施例13】
【0188】
実施例14:外来栄養宿主において葉緑体ゲノムDNAの領域を除去するベクターおよび方法
葉緑体ゲノムDNAの領域を除去するベクターを産生するために、葉緑体ゲノムDNAの800〜1000bp領域が、図4において示される部位に隣接する5’領域および3’領域にアニールするPCRプライマー対(1−5’部位、配列番号1079および1080;1−3’部位、配列番号1125および1126;3−5’部位、配列番号1083および1084;3−3’部位、配列番号1129および1130;4−5’部位、配列番号1087および1088;4−3’部位、配列番号1133および1134;5−5’部位、配列番号789および790;5−3’部位、配列番号787および788;ならびに7−5’部位、配列番号1091および1092;7−3’部位、配列番号1089および1090)を使用して増幅される。異なる部位に対する5’領域および3’領域からのPCR産物の対は、NotIおよびI−SceIで消化され、NotIで消化されたpUC−SE(配列番号2)に連結される。(実施例4に記載される)酵母選択マーカーの対は、SalIを使用して5’フラグメントおよび3’フラグメント間でクローニングされる。
【0189】
葉緑体ゲノムDNAの領域は、欠失ベクターを捕捉されたDNAを含む酵母に形質転換することによって除去される。形質転換のために、全ての修飾ベクターは、NotIでの消化によって線状にされた。所望のクローンを含む酵母は、30℃でCSM−Trp培地において飽和まで増殖され、次いで、YPADにおいて1:20に希釈され、そして30℃で4時間増殖される。酵母は酢酸リチウム法を使用して形質転換され、形質転換体は、CSM−Ura培地上での増殖によって選択された。形質転換体は、CSM−Trp−Ura培地上で増殖され、次いで、標的領域および欠失ベクターによって標的化されていない葉緑体ゲノムDNAの領域に特異的なプライマーを使用してPCRスクリーニングされた。所望のクローンは、標的化領域のための産物を与えないが、標的化されていない領域のための期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された酵母から調製され、細菌に形質転換される。細菌は、標的化領域および欠失ベクターによって標的化されていない葉緑体ゲノムDNAの領域に特異的なプライマーを使用してPCRスクリーニングされた。所望のクローンは、標的化領域のための産物を与えないが、標的化されていない領域のための期待される大きさのPCR産物を与えるクローンである。DNAは、単離された細菌クローンから調製され、そして制限消化によって分析される。
【0190】
本明細書において適用可能であり得る種々の変更、プロセス、ならびに多くの構造は明らかであろう。種々の態様、特徴、または実施形態が、理解、信念、理論、基本的前提、および/または実施例もしくは予言的実施例に関して説明または記載されてきたが、いかなる特定の理解、信念、理論、基本的前提、および/または実施例もしくは予言的実施例も限定的ではないことが理解されるだろう。種々の態様および特徴が、本明細書において種々の実施形態および特定の実施例に関して記載されてきたが、それらのいずれも添付の請求項または本願に関連し得る他の請求項の全範囲に関して限定的ではないことが理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酵母要素、(b)細菌性複製起点、および(c)少なくとも20kbの光合成生物由来のゲノムDNAを含む単離されたベクター。
【請求項2】
前記酵母要素は酵母動原体、酵母自己複製配列、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記生物は非維管束光合成生物である、請求項1に記載のベクター。
【請求項4】
前記生物は大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
前記ゲノムDNAは修飾される、請求項1に記載のベクター。
【請求項6】
前記修飾は、非相同または相同ポリヌクレオチドの挿入、1個以上の核酸塩基の欠失、1個以上の核酸塩基の突然変異、1個以上のポリヌクレオチドの再配列、またはそれらの組み合わせである、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
前記修飾は合成修飾である、請求項5に記載のベクター。
【請求項8】
宿主細胞における前記ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来は生成されない生成物を生成する、請求項4に記載のベクター。
【請求項9】
前記生成物は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドを含む、請求項7に記載のベクター。
【請求項10】
前記ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物の増加をもたらす、請求項5に記載のベクター。
【請求項11】
前記生成物は、バイオマス分解酵素、テルペン、またはテルペノイドである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
1種以上の選択マーカーをさらに含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項13】
前記選択マーカーは、酵母栄養素要求性マーカー、酵母抗生物質耐性マーカー、細菌栄養素要求性マーカー、細菌抗生物質耐性マーカー、藻類栄養素要求性マーカー、藻類抗生物質耐性マーカー、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
前記葉緑体ゲノムDNAは10〜200個の遺伝子を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項15】
前記葉緑体ゲノムDNAは全ての本質的な葉緑体遺伝子を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項16】
前記葉緑体ゲノムDNAは30〜400kbを含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項17】
請求項1に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
前記宿主細胞は、本来は非光合成細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞は、本来は光合成細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される生物由来である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項21】
ベクターを製造するための方法であって、
(a)標的DNAを含むポリヌクレオチドを、酵母動原体、酵母自己複製配列、および細菌性複製起点を含むベクター中に挿入すること、
(b)生物を前記ベクターで形質転換すること、および
(c)葉緑体ゲノムの一部を捕捉することを含み、それによって、前記葉緑体ゲノムの一部を有するベクターを製造する、方法。
【請求項22】
前記標的DNAは、葉緑体ゲノムDNAである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記一部は、長さ10〜400kbである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記捕捉工程は組換えによって起こる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記葉緑体ゲノムの一部は前記ベクターを有する前記生物中に同時形質転換される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組換え工程はインビボで起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記生物は真核生物である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記生物は光合成生物である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記生物は非維管束光合成生物である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記生物は大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記生物は非光合成生物である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記生物は酵母である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記酵母は外因性の葉緑体DNAを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記葉緑体ゲノムの一部を修飾する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記修飾工程は相同組換えを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組換えは生物内で起こる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記生物は真核生物である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生物は光合成生物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生物は非維管束光合成生物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生物は大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記生物は非光合成生物である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記生物は酵母である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記修飾工程は、ポリヌクレオチドの付加、1個以上の核酸塩基の欠失、1個以上の核酸塩基の突然変異、ポリヌクレオチドの再配列、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
本質的な葉緑体遺伝子、選択可能マーカー、およびベクター中の1個以上の核酸の操作を含む、単離されたベクター。
【請求項45】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、非維管束光合成生物からクローニングされる、請求項44に記載の単離されたベクター。
【請求項46】
前記生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項45に記載のベクター。
【請求項47】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、合成遺伝子である、請求項44に記載のベクター。
【請求項48】
発現カセットをさらに含む、請求項44に記載のベクター。
【請求項49】
前記発現カセットは、標的DNAへの組込みのための領域をさらに含む、請求項48に記載のベクター。
【請求項50】
前記標的DNAはオルガネラDNAである、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
1種以上の選択マーカーをさらに含む、請求項44に記載のベクター。
【請求項52】
前記選択マーカーは、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1種以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である、請求項44に記載のベクター。
【請求項54】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、200個までの遺伝子を含む、請求項44に記載のベクター。
【請求項55】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、400kbまでからなる、請求項44に記載のベクター。
【請求項56】
前記操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含む、請求項44に記載のベクター。
【請求項57】
宿主細胞における前記ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来は生成されない生成物を生成する、請求項44に記載のベクター。
【請求項58】
前記ベクターの発現は、前記宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらす、請求項44に記載のベクター。
【請求項59】
前記生成物は、バイオマス分解酵素、脂肪酸、テルペン、またはテルペノイドである、請求項57または58に記載のベクター。
【請求項60】
請求項44に記載のベクターを含む単離された葉緑体。
【請求項61】
請求項44に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項62】
前記宿主細胞は、本来は非光合成細胞である、請求項61に記載の宿主細胞。
【請求項63】
前記宿主細胞は、本来は光合成細胞である、請求項61に記載の宿主細胞。
【請求項64】
前記細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Escherichia coli、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される生物由来である、請求項61に記載の宿主細胞。
【請求項65】
細胞または生物を形質転換するための方法であって、前記細胞または生物中に、全ての本質的な葉緑体遺伝子、および任意選択的に前記細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子を含むベクターを挿入する、方法。
【請求項66】
前記細胞または生物において実質的に全ての葉緑体ゲノムを除去する工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞または生物は、本来は非光合成細胞である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞または生物は、本来は光合成細胞である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞または生物は、真核細胞である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記生物は、非維管束細胞である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記ベクターは、発現カセットをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記発現カセットは、非核DNA中に組み込まれる、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞または生物において本来は存在しない1個以上の遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における遺伝子である、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、葉緑体機能、光合成、炭素固定、1つ以上の炭化水素の生成、またはそれらの組み合わせに必要とされる遺伝子である、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
生物を修飾するための方法であって、前記生物を、葉緑体機能を行うのに十分な1個以上のポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換する工程を含む、方法。
【請求項76】
前記ベクターは、前記生物から化合物を生成または分泌するための配列をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記化合物はイソプレノイドである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記ベクターは、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記本質的な葉緑体遺伝子は、再配列または突然変異される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
生物は、前記形質転換の前に本質的に葉緑体ゲノムを含まない、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
生物から生成物を作製するための方法であって、少なくとも20kbのゲノムDNA、および、(i)前記生物において本来は存在しない遺伝子;(ii)前記生物において本来存在する遺伝子の欠失;(iii)前記生物において本来存在する遺伝子の再配列;および(iv)前記生物において本来存在する遺伝子における突然変異のうちの1つ以上を含むベクターで前記生物を形質転換する工程を含む、方法。
【請求項82】
前記生物は、本来光合成生物である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記さらなる遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路にある、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
葉緑体および、全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを細胞または生物中に挿入することを含む、細胞または生物を形質転換するための方法。
【請求項85】
(a)1個以上の本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;
(b)前記ベクターにDNAフラグメントを付加する工程;
(c)工程(b)によって生成されたベクターで細胞または生物を形質転換する工程;および
(d)前記付加されたDNAフラグメントと共に葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程
を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法。
【請求項86】
前記付加されたDNAフラグメントは、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路における酵素のための1個以上のコード領域を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
葉緑体ゲノムを含むシャトルベクター。
【請求項88】
前記葉緑体ゲノムは修飾される、請求項87に記載のシャトルベクター。
【請求項89】
単離された機能的葉緑体ゲノムを含むベクター。
【請求項90】
前記葉緑体ゲノムは修飾される、請求項89に記載のベクター。
【請求項91】
(a)全ての本質的な葉緑体遺伝子を含むベクターを提供する工程;および
(b)前記葉緑体ゲノムからDNAを、除去、付加、突然変異、または再配列する工程
を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法。
【請求項92】
(c)編集されたゲノムを宿主生物に形質転換する工程;および
(d)前記宿主生物における葉緑体機能を決定する工程
をさらに含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
工程(b)、(c)、および(d)は繰り返される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記葉緑体ゲノムは、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群から選択される生物に由来する、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記宿主生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記葉緑体ゲノムから重複DNAを除去する工程をさらに含む、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
前記ベクターは、全てまたは実質的に全ての葉緑体ゲノムを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項98】
前記葉緑体ゲノムは、光合成生物からクローニングされる、請求項91に記載の方法。
【請求項99】
前記葉緑体ゲノムは、合成葉緑体ゲノムである、請求項91に記載の方法。
【請求項100】
前記ベクターは、前記宿主細胞において本来は存在しないさらに遺伝子を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項101】
前記遺伝子は、イソプレノイド経路、MVA経路、またはMEP経路由来の遺伝子である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
(a)全葉緑体ゲノムを含むベクターを提供する工程;
(b)前記全葉緑体ゲノムの一部を欠失させる工程;および
(c)前記欠失された部分無しで葉緑体機能が存在するかどうか決定する工程
を含む、人工葉緑体ゲノムを生成する方法。
【請求項103】
単離された機能的葉緑体ゲノムを含む組成物。
【請求項104】
前記葉緑体ゲノムへの修飾をさらに含む、請求項103に記載の組成物。
【請求項105】
(a)葉緑体ゲノムの少なくとも約10%を含む核酸、および(b)前記ベクターにおける1個以上の核酸の操作を含むエキソビボベクター。
【請求項106】
前記核酸は、非維管束光合成生物からクローニングされる、請求項105に記載のベクター。
【請求項107】
前記生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項106に記載のベクター。
【請求項108】
前記核酸は合成核酸である、請求項105に記載のベクター。
【請求項109】
発現カセットをさらに含む、請求項105に記載のベクター。
【請求項110】
前記発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含む、請求項109に記載のベクター。
【請求項111】
前記標的DNAは、オルガネラDNAである、請求項110に記載のベクター。
【請求項112】
1種以上の選択マーカーをさらに含む、請求項105に記載のベクター。
【請求項113】
前記選択マーカーは、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項112に記載のベクター。
【請求項114】
前記操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含む、請求項105に記載のベクター。
【請求項115】
前記ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成をもたらす、請求項105に記載のベクター。
【請求項116】
ベクターの発現は、宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらす、請求項105に記載のベクター。
【請求項117】
前記生成物は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素である、請求項115または116に記載のベクター。
【請求項118】
(a)葉緑体ゲノムの少なくとも約20キロベースを含む核酸、および
(b)前記ベクターにおける1個以上の核酸の操作を含む、エキソビボベクター。
【請求項119】
前記核酸は、非維管束光合成生物からクローニングされる、請求項118に記載のベクター。
【請求項120】
前記生物は、大型藻、微細藻、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisからなる群より選択される、請求項119に記載のベクター。
【請求項121】
前記核酸は、合成核酸である、請求項118に記載のベクター。
【請求項122】
発現カセットをさらに含む、請求項118に記載のベクター。
【請求項123】
前記発現カセットは、標的DNA中への組込みのための領域をさらに含む、請求項122に記載のベクター。
【請求項124】
前記標的DNAは、オルガネラDNAである、請求項123に記載のベクター。
【請求項125】
1種以上の選択マーカーをさらに含む、請求項118に記載のベクター。
【請求項126】
前記選択マーカーは、栄養素要求性マーカー、抗生物質耐性マーカー、葉緑体マーカー、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項125に記載のベクター。
【請求項127】
前記操作は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含む、請求項118に記載のベクター。
【請求項128】
前記ベクターの発現は、宿主細胞によって本来は生成されない生成物の生成をもたらす、請求項118に記載のベクター。
【請求項129】
前記ベクターの発現は、宿主細胞によって本来生成される生成物の増加された生成をもたらす、請求項118に記載のベクター。
【請求項130】
前記生成物は、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素である、請求項128または129に記載のベクター。
【請求項131】
再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する方法であって、(a)ゲノムのフラグメントを含む2つ以上のベクターを宿主細胞に導入すること、(b)前記ベクターをゲノムの少なくとも約90%を含む単一のベクター中に組み換えることを含み、それによって再構築されたゲノムを含有するベクターを製造する、方法。
【請求項132】
前記宿主細胞は、真核細胞である、請求項145に記載の方法。
【請求項133】
前記宿主細胞は、S.cerevisiaeである、請求項145に記載の方法。
【請求項134】
前記ゲノムは、オルガネラゲノムである、請求項145に記載の方法。
【請求項135】
前記オルガネラは、葉緑体である、請求項148に記載の方法。
【請求項136】
前記葉緑体は、藻類葉緑体である、請求項145に記載の方法。
【請求項137】
前記藻類は、微細藻である、請求項150に記載の方法。
【請求項138】
前記微細藻は、Ch.vulgaris、C.reinhardtii、D.salina、S.quadricanda、またはH.pluvalisである、請求項151に記載の方法。
【請求項139】
前記ベクターの少なくとも1つは、選択可能マーカーを含む、請求項145に記載の方法。
【請求項140】
前記フラグメントの少なくとも1つは、合成フラグメントである、請求項145に記載の方法。
【請求項141】
前記ゲノムの一部を修飾することをさらに含む、請求項145に記載の方法。
【請求項142】
前記修飾は、付加、欠失、突然変異、または再配列を含む、請求項155に記載の方法。
【請求項143】
前記修飾は、外因性の核酸の付加であり、それは、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、またはバイオマス分解酵素の生成または増加された生成をもたらす、請求項155に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−539979(P2010−539979A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528006(P2010−528006)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/011540
【国際公開番号】WO2009/045550
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(509328308)サファイア エナジー,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】