説明

ゲルの製造方法

【課題】所定位置に微小なゲルを生成して、種々の形態のゲルを製造することが可能なゲルの製造方法を提供する。
【解決手段】互いに接触するとゲル化する2種類の液体を、液滴吐出ヘッド2の異なるノズルから液滴として夫々吐出し、それらの液滴を同じ又はほぼ同じ位置に着弾させてそれら2種類の液体をゲル化するにより、何れかの液体に流動が生じることがないので、所定位置に微小なゲルを生成することができ、これにより種々の形態のゲルを製造することが可能となる。液滴吐出に際しては、2種類の液体の液滴のうち、何れか一方の液体の液滴を先に吐出し、他方の液体の液滴を後から吐出するようにしてもよいし、2種類の液体の液滴を同時又はほぼ同時に吐出するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接触するとゲル化する2種類の液体でゲルを製造するゲルの製造方法に関するものであり、特に液滴吐出型印刷装置などに用いられる液滴吐出ヘッドを用いてゲルを製造するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出ヘッドを利用する液滴吐出型印刷装置は、家庭用の印刷装置として開発された技術であり、微小液滴を高精度に吐出することができる。この種の液滴吐出ヘッドの利点は、必要な量の液滴を、必要な部分だけに吐出、着弾させるところであり、印刷装置に止まらず、工業、医療の分野でも使用され、省エネルギー、省資源など環境負荷低減にも有効である。
工業分野では、液滴吐出ヘッドにより金属の微細配線を形成する開発が行われている。医療分野では、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズがマイクロメータオーダであることから、液滴吐出ヘッドから吐出される液体(液滴)をゲル化させ、マイクロビーズを作成し、ドラッグデリバリーシステム(DDS)などの開発に用いられている。また、再生医療の分野では、細胞を入れた液体を液滴吐出ヘッドから吐出し、ゲル化させて、三次元構造を作る開発が行われている。下記特許文献1では、互いに接触するとゲル化する2種類の液体のうち、一方の液体を容器内に貯留し、この容器内の液体に向けて、他方の液体の液滴を液滴吐出ヘッドから吐出することで、一方の液体の内部にゲルを生成し、これを一次元とか二次元方向に並べて種々の形態のゲルを製造するようにしている。
【特許文献1】特開2008−126459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるゲルの製造方法では、貯留した一方の液体に流動が生じると、他方の液体の液滴を所定位置に吐出することができず、従って、所定位置にゲルを生成することができないことから、例えば一次元とか二次元のゲルを製造することが困難になってしまうという問題がある。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、所定位置に微小なゲルを生成して、種々の形態のゲルを製造することが可能なゲルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記諸問題を解決するため、本発明のゲルの製造方法は、互いに接触するとゲル化する2種類の液体を、液滴吐出ヘッドの異なるノズルから液滴として夫々吐出し、それらの液滴を同じ又はほぼ同じ位置に着弾させて前記2種類の液体をゲル化することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、何れかの液体に流動が生じることがないので、所定位置に微小なゲルを生成することができ、これにより種々の形態のゲルを製造することが可能となる。
【0005】
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の液滴を一次元方向に並べて吐出することで線分的なゲルを製造することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、線分的なゲルを容易且つ高精度に製造することができる。
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の液滴を二次元方向に並べて吐出することで平面的なゲルを製造することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、平面的なゲルを容易且つ高精度に製造することができる。
【0006】
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の液滴を三次元方向に並べて吐出することで立体的なゲルを製造することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、立体的なゲルを容易且つ高精度に製造することができる。
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の液滴のうち、何れか一方の液体の液滴を先に吐出し、他方の液体の液滴を後から吐出することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、液滴吐出ヘッドと液滴吐出対象物を相対的に移動することで、容易且つ高精度にゲルを生成することができる。
【0007】
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の液滴を同時又はほぼ同時に吐出することを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、液滴吐出ヘッドと液滴吐出対象物を移動することなく、容易且つ高精度にゲルを生成することができる。
また、本発明のゲルの製造方法は、前記2種類の液体の組合せが、アルギン酸塩水溶液とアルカリ土類金属塩水溶液の組合せ、又はトロンビン水溶液又はフィブリノーゲン水溶液とカルシウム塩水溶液の組合せ、又はホウ酸水溶液とポリビニルアルコール水溶液の組合せ、又はペプチドハイドロゲル形成性ペプチド水溶液と塩化ナトリウム水溶液の組合せ、又は昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル形成性親水性高分子水溶液と温水の組合せ、の何れかであることを特徴とするものである。
このゲルの製造方法によれば、人体に入っても害のないゲルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明のゲルの製造方法の一実施形態として、液滴吐出型印刷装置に適用されたものについて説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
液滴吐出型印刷装置のうち、液滴吐出ノズルの形成された液滴吐出ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液滴吐出ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。
【0009】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液滴吐出ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液滴吐出ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、吐出する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液滴吐出ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液滴吐出ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液滴が吐出され、印刷が行われる。
【0010】
液滴吐出ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、各液滴吐出ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液滴を吐出することにより、印刷媒体1上に微小なドットを出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂1パスによる印刷を行うことができる。
液滴吐出ヘッドの各ノズルから液滴を吐出する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液滴吐出方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから吐出されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の吐出量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液滴吐出方法にも、同様に適用可能である。
【0011】
液滴吐出ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液滴吐出ヘッド2から液滴を吐出して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、例えば搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をノズルアクチュエータに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液滴を吐出し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0012】
この印刷装置内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、各液滴吐出ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、各ドライバ63、65、66と外部の給紙ローラモータ17、液滴吐出ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0013】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液滴吐出ヘッド2の何れのノズルから液滴を吐出するか或いはどの程度の液滴を吐出するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63、65、66に制御信号を出力する。各ドライバ63、65、66からはアクチュエータを駆動するための駆動信号が出力され、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液滴吐出ヘッド2内のノズルアクチュエータなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0014】
図4には、本実施形態の印刷装置の制御装置から液滴吐出ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、ノズルアクチュエータを駆動して液滴を吐出する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の吐出面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の吐出面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから吐出される。
【0015】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の吐出量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を吐出したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回吐出したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液滴が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を吐出するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を吐出せずに、例えばノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0016】
各液滴吐出ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて吐出するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液滴吐出ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液滴吐出ヘッド2に送信するためのクロック信号CLKが入力されている。なお、これ以後、ノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0017】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエータ22に供給するために各液滴吐出ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液滴を吐出させるべきノズルに対応した圧電素子などのノズルアクチュエータ22を指定するための駆動信号選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
【0018】
シフトレジスタ211には、駆動信号選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号CLKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動信号選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのノズルアクチュエータは駆動信号選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動信号選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液滴の吐出タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのノズルアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、圧電素子などのノズルアクチュエータを駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0019】
図6には、ノズルアクチュエータの駆動回路の概略構成を示す。ラインヘッド型印刷装置を構成する液滴吐出ヘッド2には多数のノズルが形成されており、図7に示すように、その夫々に、前述したノズルアクチュエータ22が設けられており、それらのノズルアクチュエータ22の上流側に例えばトランスミッションゲートで構成される選択スイッチ201が配設され、選択スイッチ201がオンされているノズルアクチュエータ22にのみ駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が印加される。
本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COMの元、つまりノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅回路、所謂D級アンプ28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として選択スイッチ201からノズルアクチュエータ22に供給する平滑フィルタ29とを備えて構成される。
【0020】
駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすると共に、それをD/A変換器でアナログ変換して駆動波形信号WCOMとして出力する。この駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26には、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、例えば所定周波数の三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号と入力信号、この場合は駆動波形信号WCOMを比較し、例えば駆動波形信号WCOMが基準信号より大きいときにオンデューティとなるパルスデューティの変調信号を出力する。また、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。また、何れの場合も、プログラムによる演算処理によって変調回路26を構成することができる。
【0021】
デジタル電力増幅回路28は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイサイドのスイッチング素子Q1及びローサイドのスイッチング素子Q2からなるハーフブリッジD級出力段21と、変調回路26からの変調信号に基づいて、それらのスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲート駆動回路30とを備えて構成されている。デジタル電力増幅回路28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジD級出力段21の出力は、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は0となる。
平滑フィルタ29には、図9に示すように、2つのコンデンサC1、C2、コイルL、抵抗Rからなる3次のフィルタを用いた。この平滑フィルタ29によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分を減衰して除去し、前述したような波形特性の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を出力する。
【0022】
本実施形態では、前記液滴吐出ヘッド2に形成された複数のノズル列のうち、何れか1つのノズル列及びそれ以外の何れか1つのノズル列の夫々に、互いに接触するとゲル化する液体を供給する。前述したように、各ノズルから吐出される液体の液滴は、同じ位置又はほぼ同じ位置に着弾するように設定されている。そこで、これらのノズル列のうち、何れか1つのノズル列及びそれ以外の何れか1つのノズル列の夫々に、互いに接触するとゲル化する液体を供給すると、図10に示すように、それらのノズル列から個別に吐出された二つの液体の液滴が印刷媒体1上の同じ位置又はほぼ同じ位置に着弾し、両者が接触してゲルが生成される。ラインヘッド型印刷装置の場合、多い場合には、1パスで、印刷媒体1の印刷面全面に液滴を吐出しなければならない。このような場合に、吐出された液滴がゲル化することにより、ある印刷媒体1に吐出された液滴が他の印刷媒体1に写ってしまうといったような、液体の転写を抑制防止したり、乾燥時間を短縮させたりすることが可能となる。また、このように一方の液滴を先に吐出し、後から他方の液滴を吐出するような場合、何れもノズルは印刷媒体1に対して垂直とし、印刷媒体1と液滴吐出ヘッド2を相対移動させて液滴を吐出するだけで、容易且つ高精度にゲルを生成することができる。なお、このように何れかの液滴を先に吐出し、後から個別の液滴を吐出するような場合、先に吐出される液体の液適量は、後で吐出される液体の液適量と同等か、乾燥を見込んだ分、やや多めに設定するとよい。
【0023】
また、図11に示すように、異なるノズル列のノズルの向きを変更し、2つのノズルから吐出される液体の液滴が、印刷媒体1の同じ位置に同時に又はほぼ同時に着弾するようにしてもよい。このようにすることで、2つの液体の液滴が印刷媒体1に着弾すると同時にゲルが生成される。この場合、ノズルの精度が要求されるが、印刷媒体1と液滴吐出ヘッド2を相対移動させることなく、容易且つ高精度にゲルを生成することができる。なお、図中の符号202は、液体を収納し、前述のようにピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22によって容積が制御されるキャビティ、符号203は、キャビティ202への液体を貯留するリザーバである。
【0024】
なお、前記実施形態では、本発明のゲルの生成方法をラインヘッド型の液滴吐出型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明のゲルの生成方法は、マルチパス型の液滴吐出型印刷装置にも同様に適用可能である。
また、本発明のゲルの生成方法は、液滴吐出型印刷装置のみに適用されるものではなく、互いに接触するとゲル化する2種類の液体を、液滴吐出ヘッドで吐出するタイプのものであれば、如何様な装置にも適用可能である。そして、前記実施形態では、ゲルはドットにしか生成されないが、これを1次元方向に並べて線分的なゲルを製造したり、2次元方向に並べて平面的なゲルを製造したり、3次元方向に並べて立体的なゲルを製造したりすることができる。
【0025】
また、特にゲルが広がらないことに着目して、液滴吐出対象物の上で液体の塗れ広がりを抑制することが必要な場合に使用することも可能であり、例えばピコリットルオーダといった、微小なサイズのマイクロカプセルや、金属配線、液晶の間隔を保持するスペーサなどにも適用可能である。
また、特に、2種類の液体の組合せが、アルギン酸塩水溶液とアルカリ土類金属塩水溶液の組合せ、又はトロンビン水溶液又はフィブリノーゲン水溶液とカルシウム塩水溶液の組合せ、又はホウ酸水溶液とポリビニルアルコール水溶液の組合せ、又はペプチドハイドロゲル形成性ペプチド水溶液と塩化ナトリウム水溶液の組合せ、又は昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル形成性親水性高分子水溶液と温水の組合せ、の何れかである場合には、人体に入っても害のないゲルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のゲルの製造方法を用いた液滴吐出型印刷装置の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の液滴吐出型印刷装置に用いられる液滴吐出ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の液滴吐出型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】各液滴吐出ヘッド内のノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】ノズルアクチュエータの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6の液滴吐出ヘッドのブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅回路のブロック図である。
【図9】図6の平滑フィルタのブロック図である。
【図10】液滴吐出ヘッドから吐出される液滴でゲルが生成される状態の説明図である。
【図11】異なる液滴吐出ヘッドの説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1は印刷媒体、2は液滴吐出ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11は固定プレート、21はハーフブリッジD級出力段、22はノズルアクチュエータ、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、28はデジタル電力増幅回路、29は平滑フィルタ、30はゲート駆動回路、65はヘッドドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触するとゲル化する2種類の液体を、液滴吐出ヘッドの異なるノズルから液滴として吐出し、前記2種類の液滴を同じ位置に着弾させて前記2種類の液体をゲル化することを特徴とするゲルの製造方法。
【請求項2】
前記2種類の液滴を一次元方向に並べて吐出することで線分的なゲルを製造することを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項3】
前記2種類の液滴を二次元方向に並べて吐出することで平面的なゲルを製造することを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項4】
前記2種類の液滴を三次元方向に並べて吐出することで立体的なゲルを製造することを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項5】
前記2種類の液滴のうち、何れか一方の液滴を先に吐出し、他方の液滴を後から吐出することを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項6】
前記2種類の液滴を同時に吐出することを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項7】
前記2種類の液体の組合せが、アルギン酸塩水溶液とアルカリ土類金属塩水溶液の組合せ、又はトロンビン水溶液又はフィブリノーゲン水溶液とカルシウム塩水溶液の組合せ、又はホウ酸水溶液とポリビニルアルコール水溶液の組合せ、又はペプチドハイドロゲル形成性ペプチド水溶液と塩化ナトリウム水溶液の組合せ、又は昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル形成性親水性高分子水溶液と温水の組合せ、の何れかであることを特徴とする請求項1に記載のゲルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−125403(P2010−125403A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303767(P2008−303767)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】