説明

ゲル乾燥物、混合物、経口用医薬品及び経口用医薬品の調製方法

【課題】経口用医薬品の嚥下を改善し、不快な風味の経口用医薬品のマスキングに好適なゲル乾燥物、及び該乾燥物を含有する経口用医薬品並びに該医薬品の安価且つ簡便な調製方法の提供。
【解決手段】正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合して得られたゲル状物質を乾燥させて得られるゲル乾燥物;かかる乾燥物及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を含有する混合物;かかる混合物から調製された経口用医薬品;正に荷電する高分子電解質、負に荷電する高分子電解質及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を混合してゲル状物質とし該ゲル状物質を乾燥させるか、或いは正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合してゲル状物質とし該ゲル状物質を乾燥させ、該ゲル乾燥物に医薬品有効成分の溶液若しくは懸濁液又は医薬品添加物の溶液若しくは懸濁液を添加して膨潤ゲル化を行い、ゲルを乾燥する経口用医薬品の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用医薬品の嚥下補助剤として好適なゲル乾燥物、該ゲル乾燥物を含有する混合物、該混合物を含有する経口用医薬品及び該経口用医薬品の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小児及び高齢者は嚥下力が一般に弱く、経口用医薬品の服用が困難である。これを改善するために、これまでに錠剤の小型化、口腔内崩壊錠製剤の開発、オブラート包の開発等、種々の工夫がこらされてきている。このような経口用医薬品の服用を容易にするものとして、例えば、ゼリー乾燥物を使用する嚥下補助剤が提案されている(特許文献1参照)。当該ゼリー乾燥物は酸性又は中性の増粘多糖類から調製されることが特徴であり、当該ゼリー乾燥物の通常使用法として、事前に加水してゲルに戻した後に経口服用する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2004−97114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし特許文献1に記載の方法では、少量の水で元のゼリーに速やかに復元し得るゼリー乾燥物を得るために、ゼリーの切断、網からの押し出し又は滴下などの操作が必要とされ、その結果得られたゼリーを凍結乾燥してゼリー乾燥物を調製する。そのため、切断ゼリー片の大きさ、網目サイズ、滴下スピードが、ゼリー復元スピードに影響をおよぼす重要なパラメータとなり、これらパラメータを最適な範囲に保持するために、調製法が煩雑になるという問題点があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、種々の経口用医薬品の嚥下を改善し、経口用医薬品の不快な風味のマスキングに好適な新規ゲル状物質の乾燥物、及び該乾燥物を含有する経口用医薬品並びに該医薬品の安価且つ簡便な調製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意研究を行い、口腔内環境下の少量の唾液で速やかにゲルに戻る性質を有するゲル乾燥物と、その簡便な調製法について探索した結果、正に荷電する高分子電解質と負に荷電する高分子電解質とから複合体を形成させて得られたある種のゲル状物質の乾燥物が、このような性質を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、上記課題を解決するため、
本発明は、正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合して得られたゲル状物質を乾燥させて得られることを特徴とするゲル乾燥物を提供する。
【0007】
本発明のゲル乾燥物において、正に荷電する高分子電解質がキトサンで、負に荷電する高分子電解質がカラギーナンであることが好ましい。
本発明のゲル乾燥物において、正に荷電する高分子電解質がキトサンで、負に荷電する高分子電解質がアルギネートであることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、上記本発明のゲル乾燥物及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を含有することを特徴とする混合物を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の混合物から調製されたことを特徴とする経口用医薬品を提供する。
【0010】
本発明の経口用医薬品は、内服後に口腔内環境下で、速やかに元のゲル状物質に復元することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、正に荷電する高分子電解質、負に荷電する高分子電解質及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を混合してゲル状物質を形成させ、得られたゲル状物質を乾燥させるか、あるいは、正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合してゲル状物質を形成させ、得られたゲル状物質を乾燥させてゲル乾燥物とし、該ゲル乾燥物に医薬品有効成分の溶液若しくは懸濁液又は医薬品添加物の溶液若しくは懸濁液を添加して膨潤ゲル化を行い、得られたゲルを乾燥すること、を特徴とする経口用医薬品の調製方法を提供する。
【0012】
本発明の経口用医薬品の調製方法において、正に荷電する高分子電解質がキトサンで、前記負に荷電する高分子電解質がカラギーナンであることが好ましい。
本発明の経口用医薬品の調製方法において、正に荷電する高分子電解質がキトサンで、負に荷電する高分子電解質がアルギネートであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の調製方法で調製されたことを特徴とする経口用医薬品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、種々の経口用医薬品の嚥下を改善でき、不快な風味もマスキング可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
<ゲル乾燥物及びその調製方法>
本発明のゲル乾燥物は、正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合して得られたゲル状物質を乾燥させて得られるものである。ここで、「正に荷電する高分子電解質」とは、少なくとも溶液中において正電荷を有する高分子電解質のことを指し、「負に荷電する高分子電解質」とは、少なくとも溶液中において負電荷を有する高分子電解質のことを指す。
ゲル状物質が得られるのは、正に荷電する高分子電解質と負に荷電する高分子電解質とが、静電的な引力により複合体を形成するためであると推測される。
【0016】
正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質としては、これらを混合した時にゲル状物質を形成するものであれば、特に限定されない。
具体的には、タンパク質、ペプチド、多糖、オリゴ糖、核酸、合成高分子、及びこれら高分子が化学修飾された修飾高分子が例示できる。さらに、前記高分子および修飾高分子からなる群から選択される二種以上が直接または間接的に結合した複合体でも良い。ここで「化学修飾」とは、例えば、高分子中の原子や官能基の一部が、他の原子や官能基で置換されることを指し、代表的な例としてエステル化、アミノ化、アルキル化などによる修飾が挙げられる。また、「直接結合した複合体」とは、高分子同士が共有結合により結合した複合体を指し、「間接的に結合した複合体」とは、高分子同士が適当なリンカーを介して共有結合により結合した複合体を指す。
【0017】
より具体的には、プロタミン、ゲラチンA、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ−(L)−リジン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、ゲラチンB、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ−(L)−グルタミックアシッドその他の生体適合性高分子、生分解性高分子、DNA、RNA、酵素若しくは抗体その他の生体高分子、ポリメタクリリックアシッド系ポリマー(例えば、商品名;オイドラギット)、ポリジアリールジメチルアンモニウムその他の合成高分子又はそれらが適当なリンカーでクロスリンクされた高分子が例示できる。
これらの中でも、正に荷電する高分子電解質としてはキトサン、負に荷電する高分子電解質としてカラギーナン又はアルギネートが好ましい。
【0018】
正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質としては、一種を単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0019】
上記電解質の使用比率(質量比)は特に限定されないが、(正に荷電する高分子電解質):(負に荷電する高分子電解質)=1:0.5〜1:5であることが好ましく、1:1〜1:3であることがより好ましい。
【0020】
正に荷電する高分子電解質と負に荷電する高分子電解質を混合する方法は特に限定されない。例えば、(a)それぞれの電解質の溶液を調製し、これら溶液同士を混合する方法、(b)一方の電解質の溶液を調製し、該溶液に固体である他方の電解質を添加する方法、(c)溶媒にそれぞれの固体の電解質を添加する方法、などが挙げられる。ここで、溶液の調製に用いる溶媒は、水、エタノール又はこれらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。水及びエタノールの混合溶媒は、水の比率が大きいほど好ましい。
また前記電解質の溶液には、ゲル状物質をより安定して形成させるために、各種添加剤を含有させても良い。添加剤としては、酸性物質、アルカリ性物質、塩などが例示でき、これらは無機化合物及び有機化合物のいずれでも良い。具体的には、酢酸、塩化ナトリウム等が例示できる。
電解質を混合する方法としては、ゲル状物質をより安定して形成できることから、方法(a)が好ましい。
【0021】
上記の電解質を混合してゲル状物質を形成させる時の条件は、用いる電解質や溶液の種類によって適宜選択し得るが、例えば、電解質を混合後に所定条件で撹拌した後、静置するのが好ましい。
例えば、水溶液を用いる通常の条件においては、撹拌時の温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜100℃、特に好ましくは80〜100℃であり、撹拌時間は、好ましくは5〜120分、より好ましくは10〜60分、特に好ましくは10〜30分である。
【0022】
撹拌は、回転翼や撹拌子を回転させる方法、超音波等で振動を加える方法など、公知の方法で良い。
【0023】
撹拌後の静置は、二段階で行うことが好ましい。この時の第一段階の静置温度は、好ましくは15〜30℃、より好ましくは20〜25℃であり、第二段階の静置温度は、好ましくは0〜10℃、より好ましくは2〜6℃である。
静置時間は、第一および第二段階の静置のいずれにおいても、好ましくは1〜24時間、より好ましくは5〜15時間である。
このような条件とすることで、取り扱い性に優れた好ましい形態のゲル状物質が得られる。
【0024】
前記ゲル状物質を乾燥する方法は特に限定されず、公知の方法を適用できるが、30℃以下での送風乾燥又は凍結乾燥が好ましく、凍結乾燥が特に好ましい。乾燥時の温度が高過ぎると、ゲル乾燥物が水飴状となり、好ましい形態で得られないことがある。
【0025】
<混合物及びその調製方法>
本発明の混合物は、上記本発明のゲル乾燥物及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を含有するものである。
医薬品有効成分としては、医薬品として認可されているものに含有されているものであればいずれでも良く、目的に応じて適宜選択できる。なかでも、難水溶性の医薬品有効成分が好適であり、具体的には、(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミド、2−[4−[2−(4−クロロベンザミド)エチル]フェノキシ]−2−メチルプロピオニック アシッド、3,7−ジヒドロ−1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6−ジオン、クラリスロマイシン、ケイキサレートが例示できる。
医薬品有効成分は一種を単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0026】
医薬品添加物としては、医薬品の製造に通常用いられる有効成分以外の物質であればいずれでも良く、目的に応じて適宜選択できる。具体的には、賦形剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤などが例示できる。
医薬品添加物は一種を単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0027】
前記ゲル乾燥物と医薬品有効成分又は医薬品添加物との使用比率(質量比)は特に限定されないが、(ゲル乾燥物):(医薬品有効成分又は医薬品添加物)=0.2:1〜20:1であることが好ましく、0.5:1〜15:1であることがより好ましい。このような比率とすることで、後記する方法で得られる経口用医薬品の口腔内におけるゲル化がより良好に進行するなど、ゲルを用いた効果が得られ易い。
【0028】
前記混合物は、固形状、粉末状、ゲル状など、いずれの形状でも良い。なかでも、ゲル状の混合物が、汎用性が高いので好ましい。
ゲル状の混合物は、例えば、医薬品有効成分又は医薬品添加物の溶液若しくは懸濁液とゲル乾燥物を混合することにより、該ゲル乾燥物が再膨潤してゲル化することで得られる。ここで、溶液若しくは懸濁液の調製に用いる溶媒としては、先に述べた電解質の混合で用いるものと同様のものが挙げられる。すなわち、溶液若しくは懸濁液としては、水溶液若しくは水懸濁液が特に好ましい。そして溶液若しくは懸濁液としては、適宜必要に応じて溶解、洗浄、ろ過、乾燥などの処理を経て得られたものでも良い。
【0029】
この時のゲル化の条件は、用いる電解質などに応じて適宜選択し得るが、例えば、混合後に所定条件で撹拌した後、静置するのが好ましい。
例えば、水溶液若しくは水懸濁液を用いる通常の条件においては、撹拌時の温度は、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜25℃であり、撹拌時間は、好ましくは10〜60分、より好ましくは10〜30分である。
撹拌は、先の電解質の混合で述べた方法と同様で良い。
【0030】
撹拌後の静置は、二段階で行うことが好ましい。この時の第一段階の静置温度は、撹拌時と同様で良く、第二段階の静置温度は、好ましくは0〜10℃、より好ましくは2〜6℃である。
静置時間は、第一および第二段階の静置のいずれにおいても、好ましくは1〜24時間、より好ましくは5〜15時間である。
このような条件とすることで、取り扱い性に優れた好ましい形態のゲル状混合物が得られる。
【0031】
またゲル状の混合物は、上記調製方法において、ゲル乾燥物に代わり、正に荷電する高分子電解質と負に荷電する高分子電解質を混合した溶液を用いても得られる。このような混合溶液としては、例えば、先にゲル乾燥物の調製方法で述べたのと同様の方法で得られる、ゲル状化前の溶液を用いることができる。
【0032】
固形状又は粉末状の混合物は、例えば、固形状又は粉末状のゲル乾燥物と、固形状又は粉末状の医薬品有効成分又は医薬品添加物を混合することで得られる。
【0033】
混合物中には、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有させても良い。ここで「その他の成分」とは、ゲル乾燥物、医薬品有効成分又は医薬品添加物、及びこれら有効成分又は添加物の溶液若しくは懸濁液の調製に用いた溶媒、以外の成分を指す。ただし、混合物中に占めるその他の成分の比率は、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが特に好ましい。前記比率が低いほど、本発明の奏する効果に優れる。
【0034】
<経口用医薬品及びその調製方法>
本発明の経口用医薬品は、上記本発明の混合物から調製されたものである。
特に、上記本発明のゲル状の混合物を乾燥したものが好ましい。この時の乾燥方法は、先にゲル乾燥物の乾燥方法で述べたのと同様の方法で良い。また、乾燥に供する前に前記ゲル状の混合物は、適宜必要に応じて溶解、洗浄、ろ過などの処理を行っても良い。
【0035】
本発明の経口用医薬品は、従来の嚥下補助剤とは異なり、ゲルの調製に切断、網からの押し出し又は滴下などの操作が不要なので、安価且つ簡便に安定した品質で調製できる。しかも、口腔内において、少量の唾液でも迅速且つ安定して再膨潤してゲル化するため、医薬品及び嚥下補助剤として優れた効果を奏し、口腔内即崩壊錠に代わる、新規で容易に服用可能な製剤とすることができる。また、不快な風味もマスキング可能である。
【0036】
さらに、前記経口用医薬品は、正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質の組み合わせの種類を適当に選択するか、又は前記混合物の調製過程における再膨潤ゲル化の時間を適当に調節することで、医薬品有効成分の放出時間の制御が可能である。再膨潤ゲル化の時間は、先に述べた混合後の撹拌条件や静置条件を調節することで調節できる。
【実施例】
【0037】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
2容量%の酢酸溶液25gに対して1.36gのNaClを加えた。この溶液に攪拌下、0.525gのキトサン100を加えた。この溶液を90℃で15分攪拌した。
蒸留水25gに対して1.36gのNaClを加えた。この溶液に攪拌下、1.225gのカラギーナンを加えた。この溶液を90℃で15分攪拌した。
これら二つの溶液を混合し、この溶液を90℃で15分攪拌した後、室温で12時間静置した。続いて冷蔵庫で12時間静置後、得られたゲル状物質を凍結乾燥して、ゲル乾燥物4.45gを得た。
1.0gのケイキサレート(プロトンフォーム)を蒸留水4mlに懸濁させ、攪拌下100mgの(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミドを加えて、室温で20分攪拌した。懸濁液をろ過後,蒸留水1.5mlで2回洗浄後、真空ポンプで減圧下乾燥した。得られた粉体100mgを蒸留水0.4mlに懸濁させ、この懸濁液を全量、ゲル乾燥物100mgに添加し、ボルテックスで10分間ミキシングして均一なゲル状とした後、1時間室温で静置した。さらに冷蔵庫内に2時間静置して膨潤再ゲル化させた。ゲルを凍結乾燥して、経口用医薬品を得た。
【0038】
[実施例2]
2容量%の酢酸溶液25gに対して1.36gのNaClを加えた。この溶液に攪拌下、0.525gのキトサン100を加えた。この溶液を90℃で15分攪拌した。
蒸留水25gに対して1.36gのNaClを加えた。この溶液に攪拌下、1.225gのカラギーナンを加えた。この溶液を90℃で15分攪拌した。
これら二つの溶液を混合しこの溶液を90℃で15分攪拌した後、室温で12時間静置した。続いて冷蔵庫で12時間静置後、得られたゲル状物質を凍結乾燥して、ゲル乾燥物4.45gを得た。
(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミド10mgを蒸留水0.4mlに懸濁させ、この懸濁液を全量、ゲル乾燥物100mgに添加し、ボルテックスで10分間ミキシングして均一なゲル状とした後、1時間室温で静置した。さらに冷蔵庫内に2時間静置して膨潤再ゲル化させた。ゲルを凍結乾燥して、経口用医薬品を得た。
【0039】
[実施例3]
(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミドに代えて、2−[4−[2−(4−クロロベンザミド)エチル]フェノキシ]−2−メチルプロピオニック アシッドを用いて、実施例2と同様の手順で経口用医薬品を得た。
【0040】
[実施例4]
(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミドに代えて、3,7−ジヒドロ−1,3−ジメチル−1H−プリン−2,6−ジオンを用いて、実施例2と同様の手順で経口用医薬品を得た。
【0041】
[実施例5]
(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミドに代えて、クラリスロマイシンを用いて、実施例2と同様の手順で経口用医薬品を得た。
【0042】
[実施例6]
(−)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−({2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル}アミノ)プロピル]−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−カルボキサミドに代えて、レボフロキサシンを用いて、実施例2と同様の手順で経口用医薬品を得た。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、経口用医薬品の嚥下補助剤に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合して得られたゲル状物質を乾燥させて得られることを特徴とするゲル乾燥物。
【請求項2】
前記正に荷電する高分子電解質がキトサンで、前記負に荷電する高分子電解質がカラギーナンであることを特徴とする請求項1に記載のゲル乾燥物。
【請求項3】
前記正に荷電する高分子電解質がキトサンで、前記負に荷電する高分子電解質がアルギネートであることを特徴とする請求項1に記載のゲル乾燥物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル乾燥物及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を含有することを特徴とする混合物。
【請求項5】
請求項4に記載の混合物から調製されたことを特徴とする経口用医薬品。
【請求項6】
内服後に口腔内環境下で、速やかに元のゲル状物質に復元することを特徴とする請求項5に記載の経口用医薬品。
【請求項7】
正に荷電する高分子電解質、負に荷電する高分子電解質及び医薬品有効成分又は医薬品添加物を混合してゲル状物質を形成させ、得られたゲル状物質を乾燥させるか、
あるいは、正に荷電する高分子電解質及び負に荷電する高分子電解質を混合してゲル状物質を形成させ、得られたゲル状物質を乾燥させてゲル乾燥物とし、該ゲル乾燥物に医薬品有効成分の溶液若しくは懸濁液又は医薬品添加物の溶液若しくは懸濁液を添加して膨潤ゲル化を行い、得られたゲルを乾燥すること、
を特徴とする経口用医薬品の調製方法。
【請求項8】
前記正に荷電する高分子電解質がキトサンで、前記負に荷電する高分子電解質がカラギーナンであることを特徴とする請求項7に記載の経口用医薬品の調製方法。
【請求項9】
前記正に荷電する高分子電解質がキトサンで、前記負に荷電する高分子電解質がアルギネートであることを特徴とする請求項7に記載の経口用医薬品の調製方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の調製方法で調製されたことを特徴とする経口用医薬品。