説明

ゲル含有飲食品

【課題】ゲルに独特な風味が包摂されたゲル含有飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】植物由来の不溶な微細物が含有され、所定の形状からなる第1ゲルと、該第1ゲルを含有する第2成分と、を備えたゲル含有飲食品であり、第1ゲルに用いられるゲル化剤が、グルコマンナン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、及びアルギン酸塩のうち1以上であり、第2成分が液体成分又はゲル成分であるゲル含有飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルに独特な風味が包摂されたゲル含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲料にゲルが含有されたものなど様々なゲル含有飲食品が提案されている。例えば、ジェランガムとローメトキシルペクチンを併用したゲルが飲料に含有されたゲル含有飲料(特許文献1)や、ゲル小片が飲料全体に均一に分散したゲル含有飲料(特許文献2)が提案されている。これらのゲル含有飲食品は、ゲルと飲料の食感のコントラスト等を楽しむことができる。
【特許文献1】特許第2798475号
【特許文献2】特公平7−71462号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これら従来の飲食品は、ゲルの食感を楽しむことができるが、ゲルに独特な風味が施されていないため、ゲル自体の風味を十分に楽しむことができないという問題がある。果汁により、ゲル自体に独特な風味を付すこともできるが、ゲルから飲料に溶け出してしまう。そこで、本発明は、ゲル自体に独特な風味を包摂させたゲル含有飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ゲルに植物由来の不溶な微細物を含ませることより、ゲル自体に独特な風味を包摂させ、付加価値の高いゲル含有飲食品が提供できることを見出した。すなわち、本発明は、植物由来の不溶な微細物が含有され、所定の形状からなる第1ゲルと、該第1ゲルを含有する第2成分と、を備えたゲル含有飲食品である。
【発明の効果】
【0005】
以上のように、本発明によれば、ゲル自体に独特な風味が包摂されたゲル含有飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係るゲル含有飲食品としては、第2成分を液体成分とする第1の態様と、第2成分を、前記第1ゲルを形成するゲル成分と異なるゲル成分とする第2の態様と、がある。第1の態様は、液体成分にゲルが含有されたものであり、液体成分としては、乳飲料、果汁飲料、及びコーヒー豆などから抽出された飲料等が挙げられる。第2の態様は、ゲルの中に異なるゲルが含有されたものであり、両者のゲル強度などを異ならせることによって、新たな食感を演出することができる。このゲル成分としては、グルコマンナン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、又はアルギン酸塩などのゲル化剤により形成されたゲル成分が挙げられる。
【0007】
本発明に係るゲル含有飲食品は、第1ゲルに含有されている微細物は不溶であるため、第1ゲルに含有された微細物が第2成分に溶け出すことはなく、第1ゲルに包摂させることができる。このため、本発明に係るゲル含有飲食品を摂食の際に第1ゲルが崩壊されると、はじめて第1ゲルに包摂された微細物の風味が露呈されるので、これまでのゲル含有飲食品にない風味を楽しむことができる。
【0008】
本発明に係るゲル含有飲食品に用いられる第1ゲルは、グルコマンナン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、及びアルギン酸塩のうち1以上であることが好ましい。
【0009】
第1ゲルの形状としては、例えば、ダイス状や球形状が挙げられる。第1ゲルは、複数が第2成分に含まれていることが好ましく、また第2成分中に分散されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係るゲル含有食品において、植物由来の不溶な微細物としては、例えば、果物、野菜、コーヒー豆、及び茶葉の微細物が挙げられる。微細物は、ミキサーで破砕した微粉末や、果物等をすりつぶした微細物状のものが挙げられる。微細物の平均粒子径は、400μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。微細物の平均粒子径が前記範囲を超えると、第1ゲルの食感がざらつくので好ましくない。微細物の添加量は、第1ゲル中に、乾燥重量として0.1〜15重量%が好ましい。
【0011】
第1ゲルは、溶液の段階で微細物が添加され、それを既知の方法によってゲル化させることによって得ることができる。
【0012】
本発明に係るゲル含有飲食品の第1の態様は、第1ゲルを飲料に添加することにより得ることができる。本発明に係るゲル含有飲食品の第2の態様は、第2成分を構成するゲルの溶液に第1ゲルを添加し、それを既知の方法によってゲル化させることによって得ることができる。
【0013】
本発明に係るゲル含有飲食品は、飲料やデザート食品として利用することができる。
【実施例】
【0014】
次に、本発明に係るゲル含有飲食品の実施例について説明する。実施例及び比較例において用いられたゲル成分で使用する増粘多糖類は、以下の通りである。
グルコマンナン:伊那食品工業株式会社製 イナゲルマンナン100A
寒天:伊那食品工業株式会社製 伊那寒天S−7
アルギン酸塩:伊那食品工業株式会社製 イナゲルGS−30
カラギーナン:伊那食品工業株式会社製 イナゲルE−150
キサンタンガム:CPケルコ社製
ローカストビーンガム:伊那食品工業株式会社製 イナゲルL−85
【0015】
実施例1
次に、本発明に係るゲル含有飲食物の実施例について説明する。先ず、みかんの皮をミキサーによって粉砕することによって微細物1を得た。微細物1の平均粒子径は、100μmであった。平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製)によって測定した。次に、ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、グラニュー糖5g及び水89gにこの微細物5gを添加し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である酸性乳飲料100gと混合し、その後、ボイル殺菌することによって、実施例1に係るゲル含有飲料を得た。
【0016】
実施例2
先ず、みかんを丸ごとミキサーによってすりつぶすことによって微細物2を得た。微細物2の平均粒子径は、100μmであった。平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製)によって測定した。次に、ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、グラニュー糖5g及び水83gにこの微細物5g及びオレンジ濃縮果汁6gを添加し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である酸性乳飲料100gと混合し、その後、ボイル殺菌することによって、実施例2に係るゲル含有飲料を得た。
【0017】
比較例1
次に、本発明に係るゲル含有飲食物の比較例について説明する。先ず、ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、オレンジ果汁混濁(雄山商事社製)6g、グラニュー糖5g及び水88gを混合し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である酸性乳飲料100gと混合し、その後、ボイル殺菌することによって、比較例1に係るゲル含有飲料を得た。
【0018】
比較例2
オレンジ果汁混濁の代わりにオレンジ果汁透明(雄山商事社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして比較例2に係るゲル含有飲料を得た。なお、実施例2並びに比較例1及び2に係るゲル含有飲料は、果汁率30%となるように添加量を調整した。
【0019】
(評価)
次に、これら実施例1及び2並びに比較例1及び2に係るゲル含有飲料について、第1ゲルに風味が包摂されているかどうかを評価した。すなわち、第1ゲルについては、味から第1ゲルに風味が包摂されているかどうかを総合評価した。第2成分については、味から第1ゲル成分から風味が溶け出していないかどうかを総合評価した。評価は、当社の評価員により行われ、評価は、第1ゲルに風味が包摂されている(○)、第1ゲルからやや風味が溶け出している(△)、第1ゲルから風味が溶け出している(×)の三段階とした。測定は、第1ゲルを第2成分に混合してボイル殺菌後、3日経過後に行った。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例3
次に、本発明に係るゲル含有飲食物の実施例について説明する。先ず、コーヒー豆を丸ごとミキサーによって微粉砕することによって微細物3を得た。微細物3の平均粒子径は、100μmであった。平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製)によって測定した。次に、ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、グラニュー糖5g及び水92gにこの微細物2gを添加し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である乳飲料100gと混合し、その後、レトルト殺菌することによって、実施例3に係るゲル含有飲料を得た。
【0022】
比較例3
次に、本発明に係るゲル含有飲食物の比較例について説明する。先ず、ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、コーヒー豆を焙煎し粉砕したコーヒーの粉に含まれている成分を抽出した液体8g、グラニュー糖5g及び水86gを混合し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である乳飲料100gと混合し、その後、レトルト殺菌することによって、比較例3に係るゲル含有飲料を得た。
【0023】
次に、実施例1及び2並びに比較例1及び2に係るゲル含有飲料と同様に実施例3及び比較例3も評価した。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例4
次に、本発明に係るゲル含有飲食物の実施例について説明する。ゲル化剤(グルコマンナン0.2g、寒天0.5g、及びアルギン酸塩0.3gの混合物)1g、グラニュー糖5g及び水92gに微細物3を2g添加し、その後冷却してゲル化させ、Ca液に2時間浸漬することによって、第1ゲルを得た。この第1ゲルを一辺が7mmのダイス形状に切断し、切断された第1ゲル20gを第2成分である乳飲料100gにゲル化剤(寒天0.5g、カラギーナン0.2g、キサンタンガム0.1g、及びローカストビーンガム0.2gの混合物)1gを溶解させた溶液と混合し、その後、レトルト殺菌して第2成分をゲル化させることによって、実施例4に係るゲル含有ゼリー食品を得た。
【0026】
次に、実施例1及び2並びに比較例1及び2に係るゲル含有飲料と同様に実施例4も評価した。結果を表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例1乃至4に係るゲル含有飲食品から、第1ゲルに植物由来の不溶な微細物を含ませることによって、第1ゲルに独特な風味を包摂させることができることが分かる。すなわち、第1ゲルに微細物が包摂しているため、第1ゲルの風味が良く、ゲルに付加価値をつけることができる。一方、第2成分は第1ゲルからの微細物の溶け出しがない。実施例3においては、ゲル含有飲料の製造段階においてレトルト殺菌しているため、実施例1及び2よりも結果が劣ってしまったと考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の不溶な微細物が含有され、所定の形状からなる第1ゲルと、
該第1ゲルを含有する第2成分と、を備えたゲル含有飲食品。
【請求項2】
前記第2成分が液体成分であることを特徴とする請求項1記載のゲル含有飲食品。
【請求項3】
前記第2成分が前記第1ゲルを形成するゲル成分と異なるゲル成分であることを特徴とする請求項1記載のゲル含有飲食品。
【請求項4】
前記微細物の平均粒子径が400μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のゲル含有飲食品。
【請求項5】
前記第1ゲルに用いられるゲル化剤が、グルコマンナン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、及びアルギン酸塩のうち1以上であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のゲル含有飲食品。

【公開番号】特開2009−261309(P2009−261309A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114240(P2008−114240)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】