説明

ゲル状組成物の製造方法

【課題】 低減された多価アルコールの配合量においても親水性高分子化合物を容易に分散し、均一なゲル状組成物を製造する方法の提供。
【解決手段】 カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールを混合した後又は混合しながら、反応温度が80℃〜200℃で、反応時間が0.1〜20時間の条件で加熱処理し、その後、得られた加熱反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法、並びに、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を多価アルコールで部分的にエステル化させた後、得られた反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法、及び該方法により得られる除毛用ゲル状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物の製造方法、より詳しくは、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を含有するゲル状組成物の製造方法、及び除毛用ゲル状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル状組成物は、体の表面あるいは表面に比較的近い部位に対し薬効を作用させ局所効果を期待する外用貼付剤に用いられ、親水性高分子化合物、水及び架橋剤を含む配合物を架橋することによって製造される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩あるいはそれらの共重合体を含有するゲルを用い、除毛剤成分としてチオグリコール酸等のケラチン還元性化合物を含有するゲルシート状除毛剤が開示されている。該ゲルシート状除毛剤は、除毛部に直接貼付するだけの簡単な操作で、短時間に処理でき、薬剤の臭気が気にならず、きれいに剥離できるという利点がある。
【0004】
この場合、貼付されたゲルの薬効成分が均一に皮膚に作用すること、ゲルの皮膚への密着性に優れること、及びゲルがきれいに剥離できることを満足するためには、ゲルが均一に混合されている必要がある。
【0005】
しかしながら、ゲル状組成物の製造において、親水性高分子化合物を多量の水中に溶解させる場合、溶解した高分子粘稠部が未溶解の粉体部を包み込み、溶解速度を著しく低下させる「ままこ」を形成しやすい。これを避けるために、高速攪拌下の媒体にゆっくり粉体を投入する方法を用いることが知られている。しかしながら、この方法は、「ままこ」を完全に抑制することはできず、単にその生成量を少なくするというものであり、また溶解に長時間を要するため経済的に不利である。
【0006】
また、特許文献2には、カルボキシル基を有している水溶性高分子物質又はその塩及び多価アルコールを含有する外用貼付剤が開示されている。特許文献2には、多価アルコールが貼付剤製造工程で水溶性高分子の分散媒として良い役割を行うことが記載されており、濃グリセリンにポリアクリル酸ナトリウム、CMC−Na及びメチルパラベンを分散させたグリセリンペーストを調製し、他の成分を混練して膏体を調製する方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、多価アルコールを用いて良好な分散性を得るためには、ある程度多量の多価アルコールを配合する必要がある。特許文献2においても、配合量が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%であることが記載されている。
【特許文献1】特開2002-293723号公報
【特許文献2】特開2002-20274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、多価アルコールの多量の配合は、他の成分、特に薬効成分の配合量を低下させることになり、その結果、効果を低減させるという問題点を有する。薬効成分の効果を維持するためには薬効成分以外の成分を低減させる必要があり、配合物の安定性という観点より好ましいことではない。また、多価アルコールの存在が薬効成分の効果を減じる場合がある。このような場合、多価アルコールの配合量は可能な限り低減することが求められている。
【0009】
本発明は、低減された多価アルコールの配合量においても親水性高分子化合物を容易に分散し、均一なゲル状組成物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールを混合した後又は混合しながら、反応温度が80℃〜200℃で、反応時間が0.1〜20時間の条件で加熱処理し、その後、得られた加熱反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法、並びに、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を多価アルコールで部分的にエステル化させた後、得られた反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法、及び該方法により得られる除毛用ゲル状組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多価アルコールの配合量を低減しても、親水性高分子化合物が配合されたゲル状組成物の製造の際に生じやすい「ままこ」の形成を抑制することができ、均一なゲル状組成物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<配合原料>
<親水性高分子化合物>
本発明で使用される親水性高分子化合物は、カルボキシル基を有する高分子化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸をモノマー単位として含有する重合体またはその架橋体、セルロース誘導体又はその架橋体、デンプン誘導体(例えば、カルボキシメチルデンプン)、多糖類誘導体等の半合成高分子化合物が挙げられ、これらは、1種類以上を用いることができる。
【0013】
(メタ)アクリル酸をモノマー単位として含有する重合体としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びその塩、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体及びその塩、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体及びその塩等が例示される。
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース及びその塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)等が例示される。
【0014】
<分子量>
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物の分子量は、ゲル形成のし易さ、及び薬効成分との混合性の観点から、重量平均で1万以上であることが好ましく、1万〜1000万が更に好ましい。更に該親水性高分子化合物は2種類の分子量、例えば分子量が100万以下の高分子化合物と分子量が100万を超える高分子化合物とを混合したものでもよく、混合して使用することによりゲルに皮膚への適度な密着性を持たせることが可能となり、好ましい。
【0015】
<配合量>
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物の配合量は、水や薬効成分等の他の成分の保持性を良好にすると共に、ゲル状組成物自体の機械的強度を向上させ、また得られるゲル状組成物に優れた柔軟性を与える観点から、ゲル状組成物中、3〜50重量%が好ましく、5〜30重量%が更に好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。
【0016】
<多価アルコール>
本発明で使用される多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、1、3−ブタンジオール等が挙げられ、中でもプロピレングリコール、グリセリンがゲルの調製の簡便さ、安定性の点で好ましい。多価アルコールは1種または2種以上を用いることができる。多価アルコールの配合量は、全ゲル状組成物100重量部に対し0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、0.1〜4重量部が更に好ましい。
【0017】
また、多価アルコールの配合量は、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物100重量部に対し、1〜200重量部が好ましく、2〜50重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
【0018】
<製造工程>
<加熱処理>
本発明においては、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールとを混合した後、加熱処理を行う。この際、カルボキシル基と多価アルコールの水酸基が部分的にエステル化する。
【0019】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールは、加熱処理に先立ち、あらかじめ混合してポリマー組成物を得ておいてもよい。この際、適当な溶媒を加えることで、均一分散をより容易に実現することができる。適当な溶媒としては、メタノール、エタノール、エタノール水溶液等、多価アルコールと親和性を持つ溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、均一混合が実現された後、蒸留等適当な方法により除去しても構わない。なお、加熱処理に先立ち、薬効成分及びその他の成分を混合しておいても差し支えない。
【0020】
加熱処理は、「ままこ」の生成をより効率的に抑制するために、架橋剤を加える前に行うことが好ましい。多価アルコールを、後に述べる架橋剤として兼ねる場合には、配合すべき多価アルコールの全量を加熱処理前に混合しても良く、あるいは、一部を加熱処理前に混合し、残りの量を加熱処理後に混合しても良い。
【0021】
加熱処理の条件は、親水性高分子化合物のカルボキシル基と多価アルコールとがエステル化し、脱水を起こす条件であれば適宜設定することができるが、反応温度としては80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。反応時間は、反応温度に依存するが、0.1〜20時間が好ましく、1〜12時間がより好ましい。反応圧力は特に規定されないが、脱水を促進するため、減圧条件で行うことが好ましい。
【0022】
エステル化率は、親水性高分子化合物のカルボキシル基の2〜95モル%がエステル化することが好ましく、5〜50モル%がより好ましい。この範囲において「ままこ」の発生を効果的に抑制することができるが、これはポリマー中のカルボキシル基が部分的にエステル化されるためにポリマーの吸水性が低下して膨潤性を抑制するものと推定される。
【0023】
ここで、エステル化率は、エステル化により減少した多価アルコール量を、85%エタノール水溶液でポリマー組成物から抽出しガスクロマトグラフ法にて定量して求めた後、(I)式に従い、計算により求めることができる。

エステル化率(モル%)=(反応により減少した多価アルコールのモル数)/(エステル化前のカルボキシル基のモル数)×100 (I)

エステル化の進行は、加熱処理前後の多価アルコールの減少により確認することもできる。
【0024】
<ゲル状組成物の調製>
加熱処理を行ったポリマー組成物に、架橋剤、水、その他の成分を配合し、ゲル状組成物を調製する。
【0025】
<架橋剤>
架橋剤としては、共有結合性の架橋剤や、イオン結合性の架橋剤が挙げられる。
共有結合性の架橋剤としては、ジアルコール、トリアルコール等の多価アルコール類;ジメチロール尿素、エピクロルヒドリン等の二官能性物質が挙げられる。親水性高分子化合物とエステル化を行わせるために加えた多価アルコールは架橋剤を兼ねることができる。
イオン結合性の架橋剤としては、ジアミン、トリアミン及びポリアミン等の多価アミン類及びその塩;多価金属水酸化物、多価金属酸化物、多価金属塩(多価金属無機塩及び多価金属有機塩)等が挙げられる。
【0026】
<水>
本発明のゲル状組成物の含水率は、水、薬効成分、及び他の成分の保持性を良好にすると共に、ゲル状組成物自体の機械的強度を向上させ、また、得られるゲル状組成物の柔軟性を向上させる観点から、30重量%以上が好ましく、30〜90重量%が更に好ましく、30〜85重量%が特に好ましい。
【0027】
<他の成分の配合>
本発明のゲル状組成物には、その他必要に応じて、通常化粧料に用いられる成分、例えば、活性剤、起泡性向上剤、溶剤、ポリオール類、低級アルコール、油分、増粘剤、保湿剤、湿潤剤、感触向上剤、消炎剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、粉体、香料、色素、着色顔料、パール化剤、温感剤、キレート剤、薬効成分、噴射剤、pH調整剤、消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0028】
<pH>
本発明のゲル状組成物のpHは、pH調製剤により、適宜調製することができる。液性はアルカリ性、中性あるいは酸性でもよい。
【0029】
<除毛用ゲル状組成物の製造方法>
加熱処理を行ったポリマー組成物に、架橋剤、水、及びケラチン還元性化合物を配合することで、除毛用ゲル状組成物が製造される。
【0030】
<ケラチン還元性化合物>
ケラチン還元性化合物は、体毛のケラチン蛋白を還元的に切断する種々の化合物の中から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。このようなケラチン還元性化合物としては、チオグリコール酸、システイン、及びそられの誘導体並びにそれらの塩を挙げることができる。ここで、チオグリコール酸の誘導体としてはチオグリコール酸モノグリセリルエステル等を、システインの誘導体としては、N−アシルシステイン、特にアシル基が炭素数1〜10のアルキロイル基からなるN−アシルシステイン等を例示することができる。また、チオグリコール酸、システイン又はこれらの誘導体の塩としては、これらのアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、モノ−、ジ−、トリ−エタノールアミン塩、塩基性アミノ酸等を例示することができる。
【0031】
ケラチン還元性化合物の配合量は、化合物の種類等により適宜定められるが、システイン、N−アシルシステインあるいはチオグリコール酸を配合する場合、十分な除毛性能を得、また肌荒れを防止する観点から、除毛用ゲル状組成物中0.5〜30重量%が好ましく、1〜20重量%が更に好ましい。
【0032】
<除毛用ゲル状組成物のpH>
本発明の除毛用ゲル状組成物のpH値は、ケラチン還元性化合物の種類、配合量、アルコール類等の添加の有無等に応じて適宜定められる。本発明の除毛剤組成物に、チオグリコール酸又はその塩が配合される場合は、除毛性能を向上させ、また皮膚への刺激を低減させる観点から、pH8〜13が好ましく、9〜13が更に好ましく、10〜13が特に好ましい。pHは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムといったアルカリ金属水酸化物等で調整することができる。
【0033】
かかる条件下では、一般にエステル化合物は容易に加水分解を起こし、元の成分である親水性高分子化合物と多価アルコールに分解される。しかし本手法によれば、分解生成物はいずれも当初から除毛用ゲル状組成物中に配合を予定していたものであるからなんら不都合を生じない。
【0034】
<架橋剤>
架橋剤としては、上述の共有結合性の架橋剤や、イオン結合性の架橋剤の1種以上を用いることができるが、イオン結合性架橋剤が好ましく、多価金属水酸化物、多価金属酸化物、多価金属塩(多価金属無機塩及び多価金属有機塩)がより好ましい。架橋に要する時間、即ちゲル化するまでの時間が適度であるため、多価金属水酸化物、多価金属酸化物がより好ましく、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムが特に好ましい。
【0035】
架橋剤の配合量は架橋剤の種類によっても異なるが、十分な架橋を行い、水や薬効成分等の他の成分の保持性を良好にするとともに、ゲル状組成物自体の機械的強度を向上させ、また適度な柔軟性を与える観点から、ゲル状組成物中0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。
【0036】
<他の成分の配合>
さらに、ゲルの安定性を向上させるために、非イオン性親水性高分子化合物、水不溶性粒子を配合することができる。水不溶性粒子の「水不溶性」とは、25℃において水99重量部に対象粒子1重量部を溶解させたとき、溶解度が50重量%以下のものを意味する。溶解度とは水溶液を濾紙(No.2)で濾過中の固形分量より算出する。
【0037】
さらに、本発明の除毛用ゲル状組成物には、ケラチン還元性化合物の体毛内への浸透速度を一層高め、除毛能を向上させる目的で、浸透促進剤を配合することが好ましく、柔軟性、粘度調整の点から可塑剤を用いたり、又は、ゲルの補強の点から各種の充填剤を用いることができる。
【0038】
なお、本発明の除毛用ゲル状組成物の配合に使用する原料は、色相の悪化、臭いの悪化、ケラチン還元性物質の変質等を防ぎ保存安定性を良好にするために、鉄分等の金属含有量の少ないものが好ましい。
【0039】
<ゲルの粘度>
本発明の除毛用ゲル状組成物の粘度は、25℃で、ヘリカル粘度計(TOKI SANGYO.CO.LTD製)のスピンドル No.T−F、T−D、T−E、回転速度 0.5−5r/min、3分間の条件で測定したときの値が、10万mPa・s以上であることが好ましく、30万mPa・s以上であることが更に好ましく、50万mPa・s以上であることが特に好ましい。上限は、2000万mPa・s以下であることが好ましく、1500万mPa・s以下であることが更に好ましく、1000万mPa・s以下であることが特に好ましい。10万〜2000万mPa・sの範囲内では、ゲルから液滴が生じたり、ゲルが固くなりすぎず、成形性がよく、シート状にしやすい。
【0040】
<剤型>
本発明の除毛用ゲル状組成物の剤型としては特に制限はなく、ゲル状であるため、そのまま用いることができるし、必要に応じて除毛用ゲル状組成物を支持体上及び/又は支持体内に有する除毛用ゲルシートとして用いることもできる。
【0041】
支持体上に有する場合、不織布等のシートに除毛用ゲル状組成物を貼布させる方法が、また、支持体内に有する場合、不織布等のシートに、ケラチン還元性化合物と架橋剤を含む本発明にかかるポリマー組成物を、ゲル化する前に塗布し、固定化させる方法等がある。
【0042】
不織布等のシートに貼布又は融着させたゲルの表面上に、非透湿性の剥離フィルムを貼布し、更に非透湿性のラミネート等からなるパウチ、ピロー等の開閉可能な密閉した袋状物に入れた形態が、ゲルの安定性が保持出来るため好ましい。使用時には、密閉した袋内から取り出して、剥離フィルムを剥がし、除毛部位に直接除毛用ゲル状組成物を貼布することが出来るので、操作が最も容易であり、好ましい。
【0043】
また、シートを用いる場合は、シートの全周辺、一部周辺部又は四隅部を残して、除毛用ゲル状組成物をシート上に有することが、手を汚さず、操作性上好ましい。除毛用ゲル状組成物が、シート上に存在する場合は、0.01〜5mmの厚さが好ましく、0.05〜3mmの厚さが更に好ましい。また除毛用ゲル状組成物をそのまま用いる場合は、0.5〜10mmの厚さが好ましく、1〜5mmの厚さが更に好ましい。
【0044】
[支持体]
本発明にかかる除毛用ゲルシートに用いられる支持体は、透湿性、又は非もしくは難透湿性であってもよい。その構造は、耐水性があり、貼布、剥離に耐えるものであればいずれでもよく、透湿性を有する支持体として、織布、不織布、多孔性フィルム、透気性フィルム等のシート又はフィルム及びそれらの積層体が挙げられる。シートとフィルムは、層の厚みだけで、区別されるため、フィルムはシートに含まれるものとする。成形性の点で、不織布からなるシートが更に好ましい。使用時の薬剤臭の抑制、乾燥の防止、有効成分の蒸散防止には、非もしくは難透湿性の支持体であることが好ましい。非もしくは難透湿性を有する支持体として、不織布や紙にポリエチレン等をラミネートした積層シート等が挙げられる。
【0045】
支持体の材質は、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン、セルロース、レーヨン、アセテート等の各種合成繊維、紙、布等を1種若しくは2種以上用いたシートが挙げられる。
【0046】
本発明の支持体の厚さは、0.01〜5mmが好ましく、0.1〜3mmが更に好ましく、0.1〜2mmが特に好ましい。
【0047】
[除毛用ゲル状組成物の使用方法]
本発明の除毛用ゲル状組成物の使用に際しては、除毛用ゲル状組成物を除毛部位に貼付し、好ましくは2〜20分、更に好ましくは3〜15分放置し、ケラチン還元性化合物を体毛内に浸透、還元させる。途中、ゲルを少し剥離し、体毛の膨潤状態を確認することも出来る。その後、ゲルを剥離し、水洗や拭き取りにより切断された体毛と共に剤を除去する。除毛部位としては、腕、足、ワキ、ビキニライン等、市販除毛剤を使用する部位すべてに適用でき、さらに使用が非常に簡便であり臭気が低いため、顔(眉、髭、産毛)に適用することも可能である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下において、部は特に断らない限り重量部を意味するものとする。
【0049】
実施例1
(ポリマー組成物の調製)
300mLナスフラスコにグリセリン5gと85%エタノール水溶液150gを混合し、部分中和ポリアクリル酸ナトリウム塩(日本純薬製、アロンビスAH、70%中和品)27.5g、ポリアクリル酸(日本純薬製、AC-10LHP)7.5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙製、F30LC)10.0gを順次加え、ロータリーエバポレータを使用して65℃で1時間混合し、その後エタノールを減圧留去した。
(加熱処理)
得られた含水混合物をステンレスバットに移し、真空乾燥機内で圧力30kPa、温度120℃で12時間加熱処理反応を行い、ポリマー組成物を得た。
(ゲル状組成物の調製)
上記(B)工程で得られたポリマー組成物10gに、架橋剤として水酸化アルミニウム(協和化学製、乾燥水酸化アルミニウムゲルFM)0.1g、ケラチン還元性化合物としてチオグリコール酸カルシウム4gと混ぜ合わせ、5N水酸化ナトリウム水溶液と水を添加し、100gのpH12の除毛用ゲル状組成物A1を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。
【0050】
実施例2
実施例1の加熱処理条件を、30kPa、120℃、8時間とした以外は、実施例1と同様にして除毛用ゲル状組成物A2を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。なお、加熱処理後、仕込みグリセリンの50重量%がエステル化していることがガスクロマトグラフ法にて確認された。これより、親水性高分子化合物中のカルボキシル基の14モル%がエステル化されているものと計算された。
【0051】
実施例3
実施例1の加熱処理条件を、30kPa、120℃、5時間とした以外は、実施例1と同様にして除毛用ゲル状組成物A3を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。
【0052】
実施例4
実施例1の加熱処理条件を、30kPa、130℃、8時間とした以外は、実施例1と同様にして除毛用ゲル状組成物A4を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。なお、加熱処理後、仕込みグリセリンの73重量%がエステル化していることがガスクロマトグラフ法にて確認された。これより、親水性高分子化合物中のカルボキシル基の20モル%がエステル化されているものと計算された。
【0053】
比較例1
(ポリマー組成物の調製)
グリセリン1g、部分中和ポリアクリル酸ナトリウム塩5.5g、ポリアクリル酸1.5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.0gを、ハイブリッドミキサー(キーエンス社製)を使用して50℃で10分間混合した。
(ゲル状組成物の調製)
その後、ポリマー組成物の調製工程で得られた混合物10gを、加熱処理を行わずに、架橋剤として水酸化アルミニウム(協和化学製、乾燥水酸化アルミニウムゲルFM)0.1g、ケラチン還元性化合物としてチオグリコール酸カルシウム4gと混ぜ合わせ、5N水酸化ナトリウム水溶液と水を添加し、100gのpH12の除毛用ゲル状組成物B1を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。
【0054】
比較例2
実施例1の加熱処理条件を、30kPa、50℃、12時間とした以外は、実施例1と同様にして除毛用ゲル状組成物B2を得た。除毛用ゲル状組成物中のグリセリン含有量は1重量%であった。
【0055】
<ゲルの評価結果>
得られた除毛用ゲル状組成物の均一性を目視で観察し、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例で得られた除毛用ゲル状組成物は、「ままこ」がなく、均一なゲルであった。一方、比較例で得られた除毛用ゲル状組成物は「ままこ」が多く残っており、粉体が均一に分散していなかった。
【0058】
実施例5
除毛用ゲル状組成物A1を、厚さ0.5mm、3.0cm×2.5cmのポリプロピレン製の不織布に、厚さ1mmに塗布し、密閉容器に入れ、50℃の恒温槽中で12時間、ゲルを安定化させ、除毛剤ゲルシートを調製した。
【0059】
実施例6
除毛用ゲル状組成物A1に代えて除毛用ゲル状組成物A3を用い、実施例5と同じ方法で除毛剤ゲルシートを調製した。
【0060】
比較例3
除毛用ゲル状組成物A1に代えて除毛用ゲル状組成物B1を用い、実施例5と同じ方法で除毛剤ゲルシートを調製した。
【0061】
比較例4
除毛用ゲル状組成物A1に代えて除毛用ゲル状組成物B2を用い、実施例5と同じ方法で除毛剤ゲルシートを調製した。
【0062】
実施例5、実施例6、比較例3、及び比較例4で得られた除毛剤ゲルシートの性能評価を、以下の方法で行った。
【0063】
[除毛性能]
男性パネラー(1名)の前脚脛部の毛長を1cm以下に切り揃え、2.5cm×2.5cmの範囲内にある1mm以上1cm以下の毛の本数を数えた。次に、除毛用ゲル状組成物を貼付した不織布をこの範囲内に貼付し、10分放置後、剥離し、コットンで水拭きした。この後、除毛されずに残存する1mm以上の体毛の本数を数え、下記の式(1)により除毛率を求めた。

除毛率(%)=(除毛前の体毛本数−除毛後に残存する体毛本数)/除毛前の体毛本数×100 (1)

[除毛剤ゲルシートの密着性]
貼付10分後の皮膚への付着状態を観察により評価した。
【0064】
<除毛剤ゲルシートの評価結果>
各除毛剤ゲルシートの評価結果を表2に示した。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例5及び6のゲルシートの表面は均一であり、10分後にも剥離は起きなかった。除毛率はそれぞれ97%、95%と高く、有効成分が貼付面全体に作用していることが示された。
【0067】
比較例3及び4のゲルシートはところどころに粒状の固まりがあり、シート表面がいびつであった。比較例3の除毛率は58%、比較例4の除毛率は65%と低く、貼付したゲルシートの一部分しか作用を及ぼさないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールを混合した後又は混合しながら、反応温度が80℃〜200℃で、反応時間が0.1〜20時間の条件で加熱処理し、その後、得られた加熱反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法。
【請求項2】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物と多価アルコールを加熱処理した後、ケラチン還元性化合物を混合する、請求項1記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項3】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を多価アルコールで部分的にエステル化させた後、得られた反応生成物を架橋剤と混合し、ゲル化を行う、ゲル状組成物の製造方法。
【請求項4】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を多価アルコールで部分的にエステル化させた後、ケラチン還元性化合物を混合する、請求項3記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項5】
ケラチン還元性化合物を混合した後、pHを8〜13に調整する、請求項2又は4記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項6】
カルボキシル基を有する親水性高分子化合物が、メタアクリル酸(塩)及び/又はアクリル酸(塩)をモノマー単位として含む高分子化合物である、請求項1〜5いずれかに記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項7】
多価アルコールの配合量が、全ゲル状組成物原料の0.1〜20重量%である、請求項1〜6いずれかに記載のゲル状組成物の製造方法。
【請求項8】
ゲル状組成物であって、請求項1〜7いずれかに記載の製造方法で製造される、除毛用ゲル状組成物。