説明

ゲル芳香剤

【課題】水性ゲル芳香剤中に装飾粒状物として金属を添加し分散させて美観やファッション性を通じて商品価値を一層高め、なおかつ自動車の車内等で使用する製品に求められる耐熱性と耐光性を備えたゲル芳香剤を提供することである。
【解決手段】ジェランガムおよび香料を含有する水性ゲル状組成物中に装飾粒状物を添加し分散させてなるゲル芳香剤であって、前記水性ゲル状組成物は70℃で溶解せず、また、前記装飾粒状物はアルミニウム表面を必要に応じて着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものであり、かつ前記装飾粒状物の平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とするゲル芳香剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル中に香料が添加されたゲル芳香剤に関する。さらに詳しくは、美観に優れ、建物の屋内、自動車等の乗物の車内で使用される置き型のゲル芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅のリビングルームやトイレ、自動車等の車内において、香りの拡散を目的とした芳香剤が使われている。芳香剤の剤型は液体、固形、ゲル等に大別できるが、透明、二層、粒状物の分散など、剤型の外観は美麗さを高めたり、目的の機能をイメージさせたりする上で極めて重要な要素である。近年では、芳香剤も、芳香機能だけでなく、香りによるリラックス感や、リフレッシュ感を目的とした製品が増加し、剤型の外観は、香りの心理的な効果を高める上で密接な関わりを有している。
【0003】
特に自動車の車内に設置して使用されるゲル芳香剤は、香りの拡散だけが目的ではなく、車内のインテリアとしての美観やファッション性が求められている。このため自動車用の芳香剤は自動車のダッシュボード上に粘着テープなどにより固定され設置され使用されることが多く、直射日光を受けたり、特に夏場の駐車時は非常な高温に晒されたりすることになる。
また、自動車用品専門店などでは、直近で蛍光灯をあてて陳列されるケースが見受けられる。そのため自動車の車内で使用される芳香剤は、リビングルームやトイレで使用される住居用の芳香剤よりも高い耐熱性と耐光性を求められる。
【0004】
高い耐熱性のある芳香剤として、例えば、高温下でもゲル状態がくずれず安定な透明ゲル状組成物が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら当該透明ゲル状組成物は、耐光性や芳香剤に添加される粒状装飾物の安定性に関しては一切の考慮がされていない。
【0005】
また、実質的に水に不溶の機能性成分を均一に分散させたゲル化組成物も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら当該ゲル化組成物は、機能性成分をゲル中に分散した状態で固化することが特徴とされており、その機能性成分およびゲル化組成物自体の耐熱性と耐光性に関しては一切の考慮がされていない。
【0006】
このような状況のなかで、ゲル芳香剤中に装飾粒状物を添加し分散させて美観やファッション性を持たせ、なおかつ高い耐熱性と耐光性を持たせることは、商品価値を高める上で効果が高いと考えられる。たとえばゲル芳香剤の性状としては水性または油性が挙げられ、装飾粒状物としては樹脂フィルム、ガラスビーズや金属が挙げられ、ガラスビーズなどを分散させた自動車用の油性ゲル芳香剤が多く市販されている。
【0007】
一方で、ゲル芳香剤の性状は安全性および環境配慮の面から水性が望ましく、また装飾粒状物は美観の点から光を大きく反射できる金属、特にアルミニウムが望ましい。
しかしながら、アルミニウムは水に対する反応性があるために、自動車等の車内のような過酷な環境では安定性が低い。そのため金属を分散させた自動車用の水性ゲル芳香剤は未だ知られていない。
【特許文献1】特開平1−74239号公報
【特許文献2】特開2005−73926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記の従来技術における問題点を解決し、水性ゲル芳香剤中に装飾粒状物として金属を添加し分散させて美観やファッション性を通じて商品価値を一層高め、なおかつ自動車の車内等で使用する製品に求められる耐熱性と耐光性を備えたゲル芳香剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行ったところ、特定のゲル化剤と特定の加工を施した装飾粒状物とを組み合わせたゲル芳香剤が、上記問題点を解決することを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ジェランガムおよび香料を含有する水性ゲル状組成物中に装飾粒状物を添加し分散させてなるゲル芳香剤であって、前記水性ゲル状組成物は70℃で溶解せず、また、前記装飾粒状物はアルミニウム表面を必要に応じて着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものであり、かつ前記装飾粒状物の平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とするゲル芳香剤である。
さらに、本発明は上記ゲル芳香剤において、コーティング材料の基材樹脂が熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂又はメラミン樹脂であり、また、装飾粒状物のアルミニウムがアルミニウム箔又はアルミニウム薄膜であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
自動車等の車内で使用する芳香剤に求められる耐熱性や耐光性などの安定性は、水性ゲル状組成物自体の安定性、装飾粒状物自体の安定性および装飾粒状物と水性ゲル状組成物との相互の安定性のそれぞれを考慮しなくてはならない。
本発明によれば、水性ゲル状組成物自体の安定性は、高い耐熱性をもつゲル化剤であるジェランガムと、紫外線吸収剤などの公知の安定化剤とを併用することで確保することができ、例えば70℃という高温でも溶解することのない水性ゲル状組成物を得ることができる。
【0012】
一方、装飾粒状物自体の安定性、および装飾粒状物と水性ゲル状組成物との相互の安定性は、アルミニウム表面を必要に応じ着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものであり、かつ前記装飾粒状物の平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とする装飾粒状物を使用することにより確保することが可能になる。
【0013】
これにより、軽量でコストに優れた装飾粒状物基材であるものの、水性製剤に不安定なため使用に制約があったアルミニウムを水性ゲル状組成物に添加し分散させた水性ゲル芳香剤を提供することができる。
また、コーティング材料は耐熱性や耐光性だけでなく耐薬品性をも有しているので水性ゲル状組成物に含まれる溶剤や香料等の種々の化学物質に対して安定であり長期間にわたってアルミニウムを被覆し保護することができる。
【0014】
そして、コーティング材料中に着色顔料が配合される場合はそれが脱離して装飾粒状物が退色することがないので長期間安定して装飾性の高いゲル芳香剤を提供することが可能となる。
すなわち本発明によれば、建物の屋内に比べて過酷な環境である自動車などの乗物の車内等で使用する製品に求められる耐熱性と耐光性を備えたゲル芳香剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
〔A〕ジェランガム
本発明のゲル芳香剤は、ゲル化剤としてジェランガムが含有される水性ゲル状組成物からなる。ジェランガムは微生物であるSphingomonas elodea(スフィンゴモナス・エロデア)が産出する発酵多糖類およびその誘導体の総称である。現在商業的に入手できるものとしてネイティブ型ジェランガムと脱アシル型ジェランガムの2種類が存在するが、本発明のゲル芳香剤に含有されるジェランガムはこれらに限定されるものではない。
【0016】
ネイティブ型ジェランガムは、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース及び1−4結合したラムノースの4分子を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類の、1−3結合したグルコースに1構成単位当たりグリセリル基1残基とアセチル基が平均1/2残基結合したものであり、その1構成単位当たりカルボキシル基1残基を有するものである。
ネイティブ型ジェランガムの商業的に入手可能な製品として、CPケルコ社製の「ケルコゲル(登録商標)LT−100」、「ケルコゲル(登録商標)HM」及び「ケルコゲル(登録商標)HT」などを挙げることができ、このうち「ケルコゲル(登録商標)HT」が透明性の点から好ましい。
【0017】
また、ジェランガムのうち脱アシル型ジェランガムは、ネイティブ型ジェランガムの1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基を除去した以外はネイティブ型ジェランガムと同様である。
商業的に入手可能な製品として、CPケルコ社製の「ケルコゲル(登録商標)」が挙げられる。
【0018】
ここで、ジェランガムの使用量としては特に制限はないが、水性ゲル状組成物の合計質量のうち0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%である。少なすぎると安定性が悪くなり、多すぎると残渣が増えて見栄えが悪いという問題点がある。
【0019】
なお、本発明のゲル芳香剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記の必須のゲル化剤であるジェランガムの他に他の種類のゲル化剤、増粘剤または分散安定剤を配合することができる。
具体的には、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、グアガム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子やカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどの合成高分子などが挙げられる。
【0020】
〔B〕香料
本発明のゲル芳香剤に用いられる香料は、リモネンなどのモノテルペン系炭化水素、アビエチンなどのジテルペン炭化水素、パラサイメンなどの芳香族炭化水素、リナロールなどのテルペン系アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、シトラールなどのテルペン系アルデヒド、メントンなどのテルペン系ケトン、p−メチルアセトフェノンなどの芳香族ケトン、ジフェニルエーテルなどのフェノール誘導体、デカナールなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、シトラールジメチルアセタールなどのアセタール類、イソアミルアセテート、ギ酸ゲラニル、安息香酸メチルなどの脂肪族、芳香族酸カルボン酸エステル、α、β、γ−イオノンなどの脂環式ケトン、ムスコンなどの大環状ケトン、ローズオキサイドなどの環状エーテル、インドールなどの複素環式化合物、γ−へプチルブチロラクトンなどのラクトン類、レモン油、オレンジ油、ライム油、ユーカリ油、ヒノキ油、ヒバ油、パイン油、ベルガモット油、ペパーミント油、テレピン油、ホー油、ラベンダー油、ジャスミン油、バニラなどの精油などが任意に用いられるが、上記に限定されるものではない。
【0021】
香料の素材の選択は必要とする香りの種類や質、用途などで適宜選択されるもので、1種単独で使用することもでき、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
香料の配合量は、必要に応じて適宜選定されるが、水性ゲル状組成物全体の0.1〜15質量% 、好ましくは1.0〜10質量%である。0.1質量%未満では、香料の揮発が十分に行われず、満足する香りの強さを得ることができない。また、15質量%を超えるとゲル安定性の低下の原因となるので好ましくない。
【0022】
〔C〕装飾粒状物
本発明のゲル芳香剤に分散されて含有される装飾粒状物は、装飾性を付与して商品価値を高めるために用いられる。また自動車の車内で使用される場合には、真夏の高温と強い紫外線を考慮して高度の耐熱性と耐光性が要求される。さらに水性ゲル状組成物に含有される種々の化学物質との相互安定性つまり耐薬品性が要求される。
従って、本発明のゲル芳香剤に分散されて含有される装飾粒状物は、アルミニウム表面を、必要に応じて着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものであり、かつ前記装飾粒状物の平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とする。
【0023】
本発明の装飾粒状物において、光を反射させるために使用される装飾基材となる金属はアルミニウムである。アルミニウムの形状は特に制限されないが、例えば破片、粉末、箔、および樹脂フィルム等の表面にアルミ蒸着等によって形成された薄膜などを挙げることができる。好ましくは箔および樹脂フィルム等の表面に蒸着させた薄膜であり、より好ましくは箔である。
また、他の金属種として、例えば銀や金などを上げることができるが、これらはコストの点で問題がある。
【0024】
アルミニウム表面を被覆するコーティング材料は、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を兼ね備えたものであることが要求され、そうしたコーティング材料の基材樹脂については塗料の塗膜形成成分として使用される樹脂の耐候性、耐熱性、耐薬品性、特に耐溶剤性を参考にして選択することができる。
すなわち、基材樹脂としてフェノール樹脂(耐熱温度80℃)、フタル酸樹脂(耐熱温度80℃)、エポキシ樹脂(耐熱温度130℃)、変性エポキシ樹脂(耐熱温度130℃)、ポリウレタン樹脂(耐熱温度130℃)、アルキド変性シリコン樹脂(耐熱温度80℃)、アクリルシリコン樹脂(耐熱温度120℃)、フッ素樹脂(耐熱温度130℃)、熱硬化アクリル樹脂、熱硬化ポリエステル樹脂が好ましく、特に香料や水性ゲル状組成物の添加物に対して安定性(耐薬品性)の高いエポキシ樹脂やメラミン樹脂といった熱硬化性樹脂、とりわけエポキシ樹脂が好適である。
【0025】
ここで、エポキシ樹脂とはエピクロルヒドリンとビスフェノール類または多価アルコール類との反応により得られる、分子内に2個以上のエポキシ基を有する鎖状縮合体、およびそれをアミン、酸無水物等によって硬化させた樹脂である。コーティング材料の基材としては、低粘度の液状樹脂は100%樹脂塗料として使用できるが、通常のエポキシ樹脂は溶液として使用される。この場合、溶剤には、例えばキシレン(トルエン)とブタノールを4:1に混合したもの、MEK、MIBK、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ系(メチル、エチル、またはブチルのモノあるいはジエーテル)、クロロホルム等を用いるのが一般的である。
また、硬化剤に脂肪族アミン類またはポリアミドを用いた常温乾燥性エポキシ樹脂塗料は塗膜が可撓性に富み、耐薬品性、耐候性に優れるので、アルミニウム箔の透明着色コーティング材料に適している。
一方、メラミン樹脂(塗料用)は、メラミンとホルムアルデヒドとを1対3〜6モル比で仕込み、アルカリ性でメチロール化反応を行ったのち過剰のアルコール(一般にブタノール)を加えてシュウ酸触媒下pH4〜5でエーテル化して作られる。メラミン樹脂は単独では硬くて脆い塗膜を形成するので、アルキド樹脂のほかエポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等と併用して弱点をカバーし金属表面に焼付塗装されることが多い。
【0026】
微小のアルミニウム箔上にエポキシ樹脂と顔料との混合物がコーティングされた着色金属粉としては、例えば、ダイヤ工業株式会社製の「ダイヤモンドピースHタイプ(商品名)」があり、市場で入手可能である。
【0027】
アルミニウム表面を被覆するコーティング材料には、必要に応じて着色顔料を含有させることができる。なお、同じ着色を目的とするものであっても染料は熱、光および薬品に対して不安定なので本発明においては顔料を使用する。
着色顔料としては、パーマネントレッド(有機顔料、赤)、ファーストイエロー(有機顔料、黄)、フタロシアニングリーン(有機顔料、緑)、チタン(無機顔料、白)、カーボン(無機顔料、黒)、弁柄(無機顔料、茶)、クロムバーミリオン(無機顔料、朱)、紺青(無機顔料、青)、黄鉛(無機顔料、黄)、酸化鉄(無機顔料、赤)などを挙げることができる。一般に、有機顔料に比べて無機顔料の方が、耐候性や耐薬品性に優れて退色も少ない。
【0028】
装飾粒状物の粒度は、平均粒度1μm〜5mmの範囲を挙げることができる。好ましくは10μm〜3mmの範囲である。小さすぎるとアルミニウムの露出部表面積が大きくなり、水への安定性が悪くなり、大きすぎると残渣の見栄えが悪いという問題点がある。
ここで平均粒度とは、光学顕微鏡を用いた測定及び/又はJIS Z 8801で規定される金属製網ふるい等を用いて測定される値である。
【0029】
装飾粒状物の形状、比重等は、本発明の効果を妨げなければ、特に制限されるものではなく、形状としては、粉末状、顆粒状、球状、楕円状、破砕状、角状、多角形状又は破片状のいずれであってもよい。
さらに、粒状物の比重は、0.01〜10g/cm3の範囲を挙げることができる。好ましくは0.1〜5g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.5〜4g/cm3である。さらに、ゲル芳香剤全体に対する粒状物の含有量は、配合した目的を達成する量であればよく、特に制限されない。
【0030】
なお、本発明のゲル芳香剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記のアルミニウム装飾粒状物の他にその他の粒状物を配合することができる。また、粒状物であれば装飾性以外の機能性、例えば脱臭性を付与する粒状物であってもよい。
【0031】
装飾性を付与するその他の粒状物として、例えば、ガラスビーズ、光輝性顔料、色彩を施したマイクロカプセル若しくはゼラチンカプセル、粉砕した野菜や果物、香辛料、胡麻等の種子、パルプ、ファイバー、プラスチック成型物、フィルム等が挙げられる。
【0032】
また、機能性を付与する粒状物として、活性炭、備長炭等の炭、ゼオライト、セピオライト、銀担持ゼオライト等のアルミノケイ酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土等の吸着剤が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
〔D〕添加成分
本発明のゲル芳香剤は以上の成分の他、以下の成分を水性ゲル状組成物中に添加することができる。
(1)界面活性剤
本発明の水性ゲル状組成物に含有される香料やその他の油溶性の成分は、界面活性剤を用いて可溶化させて含有させることができる。
界面活性剤の種類としては特に制限はないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などに代表される可溶化、乳化、分散の目的で使用される非イオン性界面活性剤が好ましく、1種単独で使用することもでき、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
また、非イオン性界面活性剤の他に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を併用してもよい。
【0034】
(2)ゲル化助剤
本発明のゲル芳香剤の調製に際しては、必要に応じて、ゲル化助剤としてカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム等の金属イオン;コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アスパラギン酸等の有機酸若しくはそれらの塩;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸若しくはそれらの塩等を含有させることができる。
【0035】
具体的には、乳酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等が上げられる。
これらのゲル化助剤の種類やその含有量は、所望のゲル強度やゲル化温度に応じて適宜選択することができ、使用するゲル化助剤の種類によっても異なるが、通常、水性ゲル状組成物全体に対して0〜3質量%の範囲で使用される。
【0036】
(3)溶剤
本発明のゲル芳香剤の調製に際しては、さらに必要に応じて揮発性成分の保留目的、揮発性成分の可溶化助剤目的、及びゲル化剤、増粘剤などの一次分散剤などのために溶剤を水性ゲル状組成物中に含有させることができる。
具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル類等の水溶性溶剤が挙げられる。
【0037】
(4)その他の成分
さらに、本発明のゲル芳香剤には、ゲル芳香剤の付加価値を高める成分として消臭剤、防虫剤、殺虫剤、忌避剤、誘引剤、フェロモン、殺菌剤、抗菌剤、防黴剤、染料、着色顔料以外の体質顔料やアルミニウム防錆顔料などや、ゲル芳香剤自身の安定性を高める成分として防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤などを含有させることができる。これらは、医薬品分野、医薬部外品分野、香粧品分野、食品分野などにおいて通常使用されるものを任意に用いることができる。
【0038】
〔E〕ゲル芳香剤の製造方法
本発明のゲル芳香剤の製造方法は特に制限されないが、その一例としては、以下の製造方法が挙げられる。
釜などの製造設備で、ジェランガムを水に90℃以上に加熱しながら溶解し、次いでその他の水性添加物、香料、その他の油性添加物を添加し均一になるように撹拌する。
さらにその中に装飾粒状物を添加し、撹拌することによって、装飾粒状物を均一に分散させ、その分散状態を維持しながら容器に充填し、ゲル化温度以下まで自然冷却する。
【0039】
充填される容器の材質として、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ステンレス、アルミ、陶器などが挙げられるが、容器外側から充填されたゲル芳香剤が見え、耐衝撃性、耐薬品性が高いガラス、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。容器の形状として、静置したときに容易に転倒しない形状であれば何ら制限はない。
【実施例】
【0040】
以下、実施例等を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。なお、下記の処方において%とは、特に指定しない限り、質量%を意味するものとする。
【0041】
実施例1〜4及び比較例1〜4
〔I〕ゲル芳香剤の調製
プロピレングリコール:3g中に分散させたネイティブ型ジェランガム:0.1g及び脱アシル型ジェランガム:0.6gにイオン交換水:68.8gを加えた後、90℃以上に加熱してネイティブ型ジェランガム及び脱アシル型ジェランガムを溶解し、70℃に冷却した後に、1%乳酸カルシウム水溶液:4g、POE硬化ヒマシ油:9g、POEアルキルエーテル:1g、アルコール系溶剤:8g、香料(フルーティ香料(小川香料株式会社製)):5g、防腐剤:0.1g、紫外線吸収剤:0.2g及び装飾粒状物:0.2gを加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。
これを50℃に冷却し、ゲル化していない状態で開口部面積5.7cm2、胴部面積6.6cm2、高さ5.3cmのガラス製円筒状容器に肩口まで充填し、室温下で自然冷却させてプラスチック製の蓋をし、装飾粒状物が均一に分散した約20gのゲル芳香剤4個を調製した。
【0042】
なお、それぞれの実施例および比較例に対応する装飾粒状物の態様と入手先は下記の表1の通りである。
【表1】

【0043】
〔II〕ゲル芳香剤の安定性試験
4個作成したゲル芳香剤のうち、1個は標準品として室温暗所に保管し、3個に対して耐熱性試験および2種類の耐光性試験を実施した。各安定性試験の詳細を以下に示す。
【0044】
(1)耐熱性試験
自動車の車内の高温を想定し、下記の条件で耐熱性試験を実施した。
試験機器:インキュベーター(ヤマト科学株式会社製「IS400」)
試験温度:70℃
試験期間:1週間
【0045】
(2)耐光性試験(A)
自動車の車内の直射日光を想定し、下記の条件で耐光性試験を実施した。
試験機器:キセノンアーク灯式試験機(JIS B 7754を参考に作成したもの)
試験温度:25℃
試験光源:キセノンアーク灯
試験照度:10万ルクス
試験期間:2週間
【0046】
(3)耐光性試験(B)
店頭の商品陳列時の直射蛍光灯を想定し、下記の条件で耐光性試験を実施した。
試験機器:グロースチャンバ(三洋電機株式会社製「MLR−350T」)
試験温度:25℃
試験光源:蛍光灯
試験照度:3万ルクス
試験期間:4週間
【0047】
〔III〕ゲル芳香剤の安定性評価
それぞれの安定性試験終了後に、標準品および試験品の外観を目視評価し、装飾粒状物の光沢安定性、装飾粒状物の着色安定性、ゲル芳香剤の性状安定性を評価した。各安定性評価の詳細を以下に示す。
【0048】
(1)装飾粒状物の光沢安定性
装飾粒状物が光沢を維持し、光を反射して見えるかどうかを以下の基準に従って5人の専門パネルにより評価した。
○:ほとんどの装飾粒状物が光沢を維持し光を反射して見える
△:半分程度の装飾粒状物が光沢を維持し光を反射して見える
×:ほとんどの装飾粒状物が光沢を失って光を反射しない
【0049】
(2)装飾粒状物の着色安定性
装飾粒状物が本来の着色を維持し、退色や水性ゲル状組成物への色素溶出が起って変色していないかどうかを以下の基準に従って5人の専門パネルにより評価した。
○:ほとんどの装飾粒状物が本来の着色を維持している
△:半分程度の装飾粒状物が本来の着色を維持している
×:ほとんどの装飾粒状物が退色や水性ゲル状組成物への色素溶出により変色している
【0050】
(3)ゲル芳香剤の性状安定性
ゲル芳香剤が溶解したり、装飾粒状物が沈殿したりしていないかどうかを以下の基準に従って5人の専門パネルにより評価した。
○:ゲル芳香剤が溶解していない、なおかつほとんどの装飾粒状物が沈殿していない
△:ゲル芳香剤が部分的に溶解している、または半分程度の装飾粒状物が沈殿している
×:ゲル芳香剤が完全に溶解している、またはほとんどの装飾粒状物が沈殿している
【0051】
〔IV〕
〔評価結果〕
耐熱性試験、耐光性試験(A)および耐光性試験(B)の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0052】
表2に示す結果から明らかなように、本発明によるアルミニウム表面に樹脂と顔料とを混ぜ合わせたものをコーティングして着色されたものであって、かつ平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とする装飾粒状物を使用したものは自動車の車内や店頭の環境を想定した耐熱性や耐光性に優れる。
他のサンプルはアルミニウムやコーティング用樹脂が変質して光沢を失ったり、色素が退色したり、色素が水性ゲル状組成物中へ溶出したりした。なお、比較例3の装飾粒状物は耐光性に優れたが、着色の耐熱性に劣り、自動車の車内で使用されるゲル芳香剤用としては不向きであった。
【0053】
また、表2に示す結果から明らかなように、安定性試験に共通して使用したジェランガムおよび香料を含有する水性ゲル状組成物は、いかなる装飾粒状物を分散させた場合でも、自動車の車内や店頭の環境を想定した耐熱性や耐光性に優れた性状安定性を持つことが判明した。
【0054】
実施例5、6及び比較例5、6
〔I〕ゲル芳香剤の調製
下記の表3に示す処方および表中の対応する製法A〜Dに従って、ゲル芳香剤を調製した。なお表3には比較のため前記実施例4の処方も例示した。
【0055】
〔製法A〕
プロピレングリコール中に分散させた脱アシル型ジェランガムにイオン交換水を加えた後、90℃以上に加熱して脱アシル型ジェランガムを溶解し、70℃に冷却した後に、その他成分を加温したのちに加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。これを38℃以下に冷却し、ゲル化していない状態で開口部面積5.7cm2、胴部面積6.6cm2、高さ5.3cmのガラス製円筒状容器に肩口まで充填し、室温下で自然冷却させてプラスチック製の蓋をし、装飾粒状物が均一に分散した約20gのゲル芳香剤4個を調製した。
【0056】
〔製法B〕
プロピレングリコール中に分散させたネイティブ型ジェランガムにイオン交換水を加えた後、90℃以上に加熱してネイティブ型ジェランガムを溶解し、80℃に冷却した後に、その他成分を加温したのちに加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。これをゲル化していない状態で開口部面積5.7cm2、胴部面積6.6cm2、高さ5.3cmのガラス製円筒状容器に肩口まで充填し、室温下で自然冷却させてプラスチック製の蓋をし、装飾粒状物が均一に分散した約20gのゲル芳香剤4個を調製した。
【0057】
〔製法C〕
プロピレングリコール中に分散させたカラギーナンおよびローカストビーンガムにイオン交換水を加えた後、60℃以上に加熱してカラギーナンおよびローカストビーンガムを溶解し、その他成分を加温したのちに加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。これを45℃以下に冷却し、ゲル化していない状態で開口部面積5.7cm2、胴部面積6.6cm2、高さ5.3cmのガラス製円筒状容器に肩口まで充填し、室温下で自然冷却させてプラスチック製の蓋をし、装飾粒状物が均一に分散した約20gのゲル芳香剤4個を調製した。
【0058】
〔製法D〕
プロピレングリコール中に分散させたゼラチンにイオン交換水を加えた後、90℃以上に加熱してゼラチンを溶解し、その他成分を加温したのちに加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。これを35℃以下に冷却し、ゲル化していない状態で開口部面積5.7cm2、胴部面積6.6cm2、高さ5.3cmのガラス製円筒状容器に肩口まで充填した後、プラスチック製の蓋をし、冷蔵庫で強制冷却させて、装飾粒状物が均一に分散した約20gのゲル芳香剤4個を調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
〔II〕ゲル芳香剤の安定性試験および評価
4個作成したゲル芳香剤のうち、1個は標準品として室温暗所に保管し、3個に対して耐熱性試験および2種類の耐光性試験を実施した。各安定性試験の詳細は上述された通りである。
【0061】
それぞれの安定性試験終了後に、標準品および試験品の外観を目視評価し、装飾粒状物の光沢安定性、装飾粒状物の着色安定性、ゲル芳香剤の性状安定性を評価した。各安定性評価の詳細は上述された通りである。
【0062】
〔III〕評価結果
耐熱性試験、耐光性試験(A)、耐光性試験(B)の評価結果を表4に示す。
【表4】

【0063】
表4に示す結果から明らかなように、本発明によるジェランガムおよび香料を含有する水性ゲル状組成物を使用したものは自動車の車内や店頭の環境を想定した耐熱性や耐光性に優れる。他のものは特に耐熱性が悪く、ゲル芳香剤が溶解して、なおかつ装飾粒状物が沈殿してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のゲル芳香剤によれば、水性ゲル芳香剤中に装飾粒状物としてアルミニウム箔を分散させて美観やファッション性を通じて商品価値を一層高め、なおかつ建物屋内に比べて環境条件が厳しい自動車等の車内で使用する製品に求められる耐熱性と耐光性を備えたゲル芳香剤を提供することができる。
これにより、芳香のみならず外観の美麗をも要求される芳香剤市場において、光を大きく反射できるアルミニウム箔を分散させるという、これまでにない美観をもつ付加価値の高い水性ゲル芳香剤を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェランガム及び香料を含有する水性ゲル状組成物中に装飾粒状物を添加し分散させてなるゲル芳香剤であって、前記水性ゲル状組成物は70℃で溶解せず、また、前記装飾粒状物はアルミニウム表面を、必要に応じて着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものであり、かつ前記装飾粒状物の平均粒度が1μm〜5mmであることを特徴とするゲル芳香剤。
【請求項2】
コーティング材料の基材樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1に記載のゲル芳香剤。
【請求項3】
コーティング材料の基材樹脂がエポキシ樹脂又はメラミン樹脂である請求項1に記載のゲル芳香剤。
【請求項4】
装飾粒状物のアルミニウムがアルミニウム箔又はアルミニウム薄膜である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル芳香剤。

【公開番号】特開2009−82593(P2009−82593A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258505(P2007−258505)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】