説明

ゲート弁およびゲート弁におけるシール材の交換方法

【課題】シリンダシャフトと弁板との連結を解除しなくてもシール材の交換あるいはメンテナンスを行なうことができるゲート弁を提供する。
【解決手段】弁箱4と、該弁箱4の側面に着脱自在に取り付けられたバルブケース21と、弁箱4とバルブケース21との間に弁板10を往復移動させるシリンダ装置6、8と、を備え、シリンダ装置6、8が、弁箱4に設置されたガイド15に規制され、弁箱4上をバルブケース21側に向かって水平方向に往復移動可能に設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材の交換を容易にしたゲート弁およびゲート弁におけるシール材の交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハなどの半導体製造、薄膜製造、液晶製造などにおいては、クリーンな環境下、高い真空中で、イオンプレーティング、プラズマエッチングなどのワークの加工、処理などが行われている。近年、これら被処理体は次第に大型化される傾向にある。このように大型の被処理体を扱う製造ラインのゲート弁では、例えば、図3に示したように、水平移動方式と呼ばれる移動方式が採用されている(特許文献1)。
【0003】
すなわち、このゲート弁20では、図4に拡大して示したように弁板10の上下端部に、略L字状の取付金具14が取り付けられ、弁板10は、これらの取付金具14を介して、図3に示した上下のガイドレール16,18に移動自在に取り付けられている。また、シリンダ装置6,8のシャフト6a,8aの先端部が、これらの取付金具14の先端部に連結されることにより、シリンダ装置6,8の駆動に応じて弁板10が図3に示した矢印方向(水平方向)に往復移動するように構成されている。
【特許文献1】特開2006−97849号号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなゲート弁20では、図4に示したように、弁板10の基端10aおよび先端10bに渡って船形形状のシール材装着溝10cが形成されている。そして、このシール材装着溝10cに装着されるシール材は、周期的に交換したり、メンテナンスのため周期的に点検したりすることが行なわれている。
【0005】
大型のゲート弁20において、弁板10の外周面に装着されたシール材を交換するには、先ず、図3の状態から弁箱4と弁箱4の側方に設けられたバルブケース21との係合を解除する。そして、係合が解除されたバルブケース21を仮想線で示した位置まで水平方向に引き出す。その後、シリンダ装置6,8と弁板10との連結を解除し、さらに、ガイドレール16,18に支持させて弁板10を水平方向に移動させ、弁板10が弁箱4の外方に露出した状態からシール材の交換が行なわれている。
【0006】
このように、従来の真空用ゲート弁20では、シール材を交換するにあたり、シリンダ装置6,8と弁板10との連結を解除する必要があった。
一方、真空用ゲート弁20が、プロセスチャンバとトランスファーチャンバの間に設置される場合、弁板10は常時真空環境下でプロセス側から輻射による熱を受けることが多いため、弁板10が熱膨張を起こし易い。このような場合、弁板10に冷却パイプなどを取り回して弁板10を強制的に冷却することが行なわれている。
【0007】
しかしながら、冷却水により弁板10を強制的に冷却する構造を備えた真空用ゲート弁20において、弁板10からシール材を交換する場合には、弁板10を弁箱4より外側に引き出すととともに、シリンダ装置6、8と弁板10との連結を解除するのは勿論のこと、弁板10と冷却パイプとの連結も解除する必要がある。
【0008】
よって、このように冷却水による冷却構造を備えた真空用ゲート弁20では、シール材の交換やメンテナンスにかかる工数が増え、その手順も複雑で、困難になるという問題が
あった。
【0009】
さらに、大型の真空用ゲート弁20において、シリンダ装置6,8と弁板10との係合を解除する場合は、弁板10を引き出した時、弁板10の姿勢が不安定となるので、弁板10の倒れを防止するための専用の治具を用意しなければならないという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような従来の実情に鑑み、シリンダシャフトと弁板との連結を解除しなくてもシール材の交換あるいはシール材周辺のメンテナンスを行なうことができるゲート弁を提供することを目的としている。
【0011】
また、弁板とシリンダ装置との係合を解除する場合に、弁板の倒れを防止する専用の治具も不要とし、シール交換あるいはメンテナンス作業をより簡便に安全に行なうことのできるゲート弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、
弁箱と、該弁箱の側面に着脱自在に取り付けられたバルブケースと、
前記弁箱および前記バルブケースの間を往復移動することにより前記弁箱に設けられた開口部を閉または開とする弁板と、該弁板を往復移動させるシリンダ装置と、を備え、
該シリンダ装置が、前記弁箱に設置されたガイドに規制され、前記弁箱上を前記バルブケース側に往復移動可能に設置されていることを特徴としている。
【0013】
このような構成のゲート弁によれば、シリンダシャフトと弁板との連結を解除しなくても、シリンダ装置を弁板とともにバルブケース側に移動させることにより、弁板を弁箱の外側に露出させることができる。
【0014】
したがって、この状態から弁板に取り付けられたシール材を取り外して新たなシール材と交換することが可能となる。
また、弁板の倒れを防止する専用の治具も不要で、シ−ル材を安全に交換することができる。
【0015】
また、本発明に係るシール材の交換方法は、
弁箱と、該弁箱の側面に着脱自在に取り付けられたバルブケースと、
前記弁箱および前記バルブケースの間を往復移動することにより前記弁箱に設けられた開口部を閉または開とする弁板と、該弁板を往復移動させるシリンダ装置と、を備え、
該シリンダ装置が、前記弁箱に設置されたガイドに規制され、前記バルブケース側に移動可能に設置されたゲート弁において、
該ゲート弁に装着されたシール材の交換方法であって、
前記弁箱内にある前記弁板が、前記シリンダ装置により、前記バルブケース側に移動し、開口部を開とする弁板移動工程と、
前記バルブケースを前記弁箱から取り外すバルブケース取り外し工程と、
前記弁箱に固定されていた前記シリンダ装置を、ガイドに規制され、前詭弁箱上を前記バルブケース側に移動させるシリンダ及び弁板移動工程と、
前記弁板に装着されているシール材の交換作業を行い得るシール材交換工程と、を有することを特徴としている。
【0016】
このような方法によれば、弁板をシリンダ装置の駆動により開口部を開とする位置まで移動させた後、シリンダ装置をバルブケース側に移動させることにより、シリンダ装置と連結している弁板を弁箱から露出させることができる。このような位置に弁板が露出すれば、シリンダシャフトと弁板との連結部を解除することなく、シール材の交換やメンテナ
ンスを安全に行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る真空用ゲート弁およびこのゲート弁におけるシール材の交換方法によれば、シリンダ装置と弁板との連結を外さずに弁板に取り付けられたシール材を容易に取り外して新たなシール材に交換することができる。また、シール材の交換作業を行なうにあたり、弁板の倒れ防止のために特別な治具が不要である。また、メンテナンス性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1および図2は、本発明の一実施例に係るシール材の交換方法が実施されるゲート弁を示したもので、特にワンアクションタイプと称される大型の真空用ゲート弁30を示したものである。なお、以下の説明で、「右」、「左」、「上」、「下」など方向を示す文言は、図1の状態を基準として示したものであり、左右方向は水平方向と同じである。
【0019】
さらに、図1および図2において、図3および図4と同一要素については同一符号を付して説明する。
この真空用ゲート弁30は、弁箱4と、弁箱4の側方に着脱自在に取り付けられたバルブケース21と、これら弁箱4およびバルブケース21の間を往復移動する弁板10と、弁板10を往復移動させるシリンダ装置6、8と、を有している。
【0020】
略箱型の弁箱4は、弁箱本体4aと、フランジ部4bとからなり、ゲート開口部12が形成されている。
そして、弁箱4の下部内壁面には、バルブケース21内まで伸びるガイドレール18が配置されている。
【0021】
バルブケース21は、弁板10が弁箱4から案内されてきたときに、弁板10の収容体を構成するもので、弁箱4のフランジ部4bに着脱自在に取り付けられている。
弁板10は、図4に示した弁板10と略同形状であり、複数のローラ52と、図4に示した取付金具14に相当するシャフト連結部材13と、が設置されている。
【0022】
そして、このシャフト連結部材13は、上下のシリンダ装置6,8、のシャフト6a,8bと一体化されている。
このような構成により、シリンダ装置6,8の駆動に伴い、弁板10が水平方向に直線的な単一の移動をすることで、弁箱4内に形成されたゲート開口部12を開閉する構造になっている。
【0023】
シリンダ装置6,8は、シャフト6a,8aおよびケーシング6b,8bから構成されてなる。
シリンダ装置のシャフト6a,8aは、弁箱4のフランジ部4bに形成された軸シール部65に挿通され、弁箱4およびバルブケース21内を気密に保持しながら、左右方向に摺動自在になっている。
【0024】
以下、弁箱本体4aとシリンダ装置6,8との取り付けについて詳述する。
弁箱本体4aの上下面に、それぞれガイド15,15が一体的に設置され、このガイド15に対してベースプレート19が移動可能に設置されている。そして、ベースプレート19にシリンダ取付金具23が設置され、このシリンダ取付金具23を介してシリンダ装置6,8のケーシング6b,8bがベースプレート19に取り付けられている。
【0025】
このような構成により、ケーシング6b,8bは、ベースプレート19と一体でガイド15に対して左右方向に移動可能にされる。
そして、上記真空用ゲート弁30の弁板10はシャフト6a,8aの移動とともに、左右方向に移動するとともに、ケーシング6b,8bの移動とともに、弁板10はさらに左右方向に移動する。
【0026】
本実施例によるゲート弁30は、上記のように構成されているが、以下に、その作用について説明する。
今、弁板10およびシリンダ装置6が図1の状態にある。この時、無端状のシール材24が装着された弁板10が、弁箱内に形成されたシール座面(図示せず)と当接し、ゲート開口部12が閉にされている。シリンダ装置6,8のシャフト6a,8aは、その大部分がケーシング6b,8b内に没入されている。
【0027】
図1の状態から、シリンダ装置6,8を駆動すると、先ずシリンダ装置6,8のシャフ
ト6a,8aが右方向に突出する。シャフト6a,8aが右方向に突出移動すると、シャフト連結部材13を介して連結されている弁板10が、ガイドレール18上をローラ52の回転動作によりバルブケース21内へと案内される。
【0028】
これにより、弁板10は、シリンダシャフト6a,8aの水平方向の移動に伴って安定した状態で水平方向に移動することができ、ゲート開口部12が開となる。
なお、上記ゲート開口部12を開閉する、通常の使用状態のとき、シリンダ装置6,8
は、ケーシング6b,8bが図1の位置で固定されている。
【0029】
次に、弁板10に装着されているシール材24の交換作業を行う時、ゲートバルブ30は、まず、図1の状態から、弁箱4内にある弁板10が、シリンダ装置6,8により、バ
ルブケース21内に移動し、ゲート開口部12を開の状態とする。
【0030】
そして、バルブケース21と弁箱4との係合を解除するとともに、解除されたバルブケース21を図2の位置まで水平に引き出す。
その後、弁箱本体4aに図1の状態で固定されていたシリンダ装置6,8のケーシング6b、8bを、右方向に移動する。
【0031】
これにより、ゲートバルブ30は、図2に示したように弁板10が弁箱4から完全に露出される。
ケーシング6b,8bは、ベースプレート19にシリンダ取付金具23にて固定され、弁箱本体4aの上下面に一体的に設置されたガイド15,15に規制され、ベースプレート19と一体に水平移動される。
【0032】
なお、ケーシング6b,8bが移動する際、シリンダシャフト6a,8bの突出長さが最大となっている。
そして、ケーシング6b,8bが、ガイド15,15の右端まで水平移動すると、シリンダシャフト6a,8bに連結された弁板10は、図2に示したように、弁箱4から完全に露出する。
【0033】
よって、この状態から、弁板10の先端部に装着されたシール部材を交換することが可能になる。
上記弁箱4に形成されたゲート開口部12は、開口径が1メートル程度の大きさである。本実施例のゲート弁30では、大型かつ大重量の弁板10であるが、一対のシリンダ装置6,8およびガイドレール18により支持されているので、下方に落下の恐れもなく、特別な治具を不要とし、シール材の交換を行なうことが可能である。
【0034】
このように、本実施例のゲート弁30では、最初にシャフト6a,8aを右方に移動させ、次いで、バルブケース21を取り外し、そして、ケーシング6b,8bを右方に移動
させたが、この順番は特に限定されず、図2の状態となればシール部材を新たなものと交換することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、シール交換ではなく、シール部材や弁板の状態を確認するなどのメンテナンスを行なう場合にも、上記と同じ状態にすれば、メンテナンスを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の一実施例によるシール部材の交換方法が実施される真空用ゲート弁の閉の状態を示す概略断面図である。
【図2】図2は図1に示した真空用ゲート弁のシール材交換時の状態を示す断面図である。
【図3】図3は従来の真空用ゲート弁の概略断面図である。
【図4】図4は図3に採用された弁板の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
4 弁箱
4a 弁箱本体
4b フランジ部
6,8 シリンダ装置
6a,8a シャフト
6b,8b ケーシング
10 弁板
10a 基端
10b 先端
10c シール部材装着溝
12 ゲート開口部
13 シャフト連結部材
14 取付金具
15 ガイド
16,18 ガイドレール
19 ベースプレート
20 真空用ゲート弁
21 バルブケース
23 シリンダ取付金具
25 ストッパ
30 真空用ゲート弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱と、該弁箱の側面に着脱自在に取り付けられたバルブケースと、
前記弁箱および前記バルブケースの間を往復移動することにより前記弁箱に設けられた開口部を閉または開とする弁板と、該弁板を往復移動させるシリンダ装置と、を備え、
該シリンダ装置が、前記弁箱に設置されたガイドに規制され、前記弁箱上を前記バルブケース側に往復移動可能に設置されていることを特徴とするゲート弁。
【請求項2】
弁箱と、該弁箱の側面に着脱自在に取り付けられたバルブケースと、
前記弁箱および前記バルブケースの間を往復移動することにより前記弁箱に設けられた開口部を閉または開とする弁板と、該弁板を往復移動させるシリンダ装置と、を備え、
該シリンダ装置が、前記弁箱に設置されたガイドに規制され、前記バルブケース側に移動可能に設置されたゲート弁において、
該ゲート弁に装着されたシール材の交換方法であって、
前記弁箱内にある前記弁板が、前記シリンダ装置により、前記バルブケース側に移動し、開口部を開とする弁板移動工程と、
前記バルブケースを前記弁箱から取り外すバルブケース取り外し工程と、
前記弁箱に固定されていた前記シリンダ装置を、ガイドに規制され、前記弁箱上を前記バルブケース側に移動させるシリンダ及び弁板移動工程と、
前記弁板に装着されているシール材の交換作業を行い得るシール材交換工程と、を有することを特徴とするゲート弁におけるシール材交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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