説明

ゲート降下装置

【課題】 緊急時に速やかに水門を自重降下することができ、既設の水門開閉機にも簡単に付設できる自重降下装置を提供する。
【解決手段】 水門を開閉する電動機構と水門の自重による降下を行うための自重降下操作レバーとを有する電動ラック式開閉機において、自重降下操作レバー1に、自重降下操作レバー1を自重降下の方向に付勢するウエイト10を設け、このウエイト10に自重降下円弧カム9を設け、この自重降下円弧カム9に係合する自重降下解除ピン14を設けたフロートリンク材13を設けて常時は付勢力が掛からないようにし、フロートリンク材13に、水門の外水位によって上昇するフロート17を連動させて、フロート17がある水位まで上昇したときにフロートリンク材13の自重降下解除ピン14と自重降下円弧カム9との係合を解除して自重降下操作レバー1を自重降下の方向に移動させる構成とした。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、緊急時に水門の自重で水門を閉じるゲート降下装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水門扉を開閉する際に、電動ラック式開閉機が使用されている。この開閉機の機能として、電動での開閉及び手動での開閉と、非常時に、速やかに水門扉を閉じるための水門扉自重による自重降下(手動)操作がある。この中で、緊急時に水門扉を閉める場合には、降下速度が速く、かつ停電時でも水門扉を速く降下できるが、自重降下操作をするためには、電動ラック式開閉機が据え付けてある場所まで操作人が出向いて操作しなければならなかった。
【0003】
電動ラック式開閉機に付いている自重降下機能を使用する条件は、非常時、洪水時、停電時の緊急時で、水門扉を閉じる時に使用するが、緊急時と判断して現地に出向き、自重降下操作をする段階では、操作人が危険な状況で現地に出向かなければならない。また、現地に出向くまでに時間が掛かり、緊急時の操作遅れを生じる可能性がある。
【0004】
このような問題を解決するために、特公平4−65930号公報には、水位を検出するためのフロートを設け、このフロートの昇降と水門を自重降下させる電動/手動切り換えクラッチとを連動し、水位が上がってフロートが上昇したときに、クラッチを解放して水門を自重降下させる装置が開示されている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、この装置では、フロートとクラッチが連動しているため、水位が波打って上下した場合、水門も下降と停止を繰り返し、水位が常に上昇中でなければ水門は全閉までいかず、緊急時に速やかに水門を閉じることができないという問題があった。さらに、前記従来の装置では、フロートとクラッチを連動させるための機構が複雑で大型化し、既存の水門開閉機には付設できないか、あるいは大幅な改造が必要であり、コスト的にも不経済であるという問題があった。
【0006】
本考案が解決すべき課題は、緊急時に速やかに水門を自重降下することができ、既設の水門開閉機にも簡単に付設できる自重降下装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本考案のゲート降下装置は、水門を開閉する電動機構と水門の自重による降下行うための自重降下操作レバーとを有する電動ラック式開閉機において、前記自重降下操作レバーに、同自重降下操作レバーを自重降下の方向に付勢する付勢機構を設け、この付勢機構に、常時は付勢力が掛からないようにロック手段を設け、このロック手段に、水門の外水位によって上昇するフロートを連動させて、フロートがある水位まで上昇したときに前記ロック手段を解除して前記自重降下操作レバーを自重降下の方向に移動させるものである。
【0008】
【考案の実施の形態】
本考案では、従来より使用している電動ラック式開閉機の自重降下機能を利用して、緊急時と判断される水位上昇をフロート17で検知するようにし、その検知がフロートレバー16に伝わり、フロートレバー16と連結しているフロートリンク材13の端部が持ち上がる。
【0009】
そして、今まで(通常状態を示す)ウエイト支持材8に垂下しているウエイト10の自重で、引き下げられようとする力を、自重降下円弧カム9が自重降下解除ピン14で阻止されていたが、フロートリンク材13に設けている自重降下解除ピン14は、フロートリンク材13が持ち上げられることによって、自重降下解除ピン14も持ち上げられ、自重降下円弧カム9の円弧部に自重降下解除ピン14が乗り越えると同時に、自重降下円弧カム9が、時計回りに回転し、ウエイト10が解放されて落下し、ウエイト支持材8の端部が引き下げられる。
【0010】
これにより、ウエイト支持材8の反対側端部に接続されているワイヤーロープ3がウエイト10の落下自重の反力で、勢い良く引き上げられ、各転向シーブ4〜7を経て、自重降下操作レバーリンク材2を引っ張ることで、自重降下操作レバー1が「降」方向に倒れ、操作人が現地に行くことなく、かつ操作遅れも無くなり、水門扉を閉めることができるようになる。
【0011】
【実施例】
以下、本実施例の動作について説明する。 図1は本考案の実施例を示す正面図、図2は図1のA部矢視図、図3は図1のB部断面図、図4は図1のC部断面図、図5は本実施例の自重降下時の正面図、図6はその側面図である。
【0012】
図中、1は自重降下操作レバー、2は自重降下操作レバーリンク材、3はワイヤーロープ、4,5,6,7は転向シーブ、8はウエイト支持材、9は自重降下円弧カム、10は自重降下操作レバー1の操作力以上の自重を持つウエイト、11は両端支持回転自由軸、12はフロートリンク材取付台、13はフロートリンク材、14は自重降下解除ピン、15は自重降下復帰レバー、16はフロートレバー、17はフロート、18はフロート室、19は自重降下設定水位位置、20は現在水位である。
【0013】
(a) ウエイト支持材8と、自重降下円弧カム9と、自重降下復帰レバー15は、両端支持回転自由軸11の一軸上に固定しているため、ウエイト支持材8が上下すると連動して動作する。
【0014】
(b) フロートリンク材13は、フロートリンク材取付台12とピン結合し、回転自由に取り付けられ、反対側端部に、フロートレバー16とピン結合し、フロート17からの伝達をフロートリンク材13に伝える。また、フロートリンク材13に自重降下解除ピン14を設けている。
【0015】
〔1〕 通常状態(水位が低くて、フロートが下がっている状態)
図1〜図4に示すように、自重降下操作レバー1が「通」位置にあり、自重降下操作レバーリンク材2に接続されているワイヤーロープ3は転向シーブ4〜7を経由して、ウエイト支持材8の端部に接続されている。このとき、ワイヤーロープ3の引っ張りはない。また、ウエイト支持材8の反対側端部にウエイト10が垂下していて、ウエイト支持材8を引き下げようとしているが、ウエイト支持材8に連結している自重降下円弧カム9が自重降下解除ピン14に当たって、降下を阻止しているため、ウエイト支持材8は、平行状態で降下しない。
【0016】
〔2〕 自重降下状態(水位が上昇し、フロートが自重降下設定水位位置まで上がった状態)
現在水位20が上昇すると、浮力によってフロート17とフロートレバー16が連動して上昇することにより、フロートレバー16と連結しているフロートリンク材13の端部が持ち上がっていく。
【0017】
そして、自重降下設定水位位置19までフロート10が上昇すると、いままでウエイト支持材8に垂下しているウエイト10の自重で引き下げようとする力を自重降下円弧カム9が自重降下解除ピン14で阻止していたが、図5に示すように、フロートリンク材13が持ち上げられることによってフロートリンク材13に設けている自重降下解除ピン14も持ち上げられ、自重降下円弧カム9の円弧部を自重降下解除ピン14が乗り越えると同時に、自重降下円弧カム9が時計回りに回転し、ウエイト10が解放され、落下し、ウエイト支持材8の端部が引き下げられる。
【0018】
これにより、ウエイト支持材8の反対側端部に接続しているワイヤーロープ3がウエイト10の落下自重の反力で勢いよく引き上げられ、各転向シーブ7〜4を経て、自重降下操作レバーリンク材2を引っ張ることで、自重降下操作レバー1が「降」方向に倒れて、水門扉が降下する。
【0019】
〔3〕 復帰方法について 人間が手動にて自重降下復帰レバー15を「通」位置に操作することにより、両端支持回転自由端11に固定している自重降下円弧カム9が反時計回りに回転することにより、フロートリンク材13と一体となっている自重降下解除ピン14が自重降下円弧カム9の円弧部に添って落ちる。この時点で、自重降下復帰レバー15は「通」位置に戻る。その後、自重降下操作レバー1を「通」の方向に操作する。
【0020】
【考案の効果】
上述したように、本考案によれば、緊急時に速やかに水門を自重降下することができ、既設の水門開閉機にも簡単に付設できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の実施例を示す正面図である。
【図2】 図1のA部矢視図である。
【図3】 図1のB部断面図である。
【図4】 図1のC部断面図である。
【図5】 本実施例の自重降下時の正面図である。
【図6】 本実施例の自重降下時の側面図である。
【符号の説明】
1 自重降下操作レバー、2 自重降下操作レバーリンク材、3 ワイヤーロープ、4,5,6,7 転向シーブ、8 ウエイト支持材、9 自重降下円弧カム、10 ウエイト、11 両端支持回転自由軸、12 フロートリンク材取付台、13 フロートリンク材、14 自重降下解除ピン、15 自重降下復帰レバー、16 フロートレバー、17 フロート、18 フロート室、19 自重降下設定水位位置、20 現在水位

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 水門を開閉する電動機構と水門の自重による降下を行うための自重降下操作レバーとを有する電動ラック式開閉機において、前記自重降下操作レバー1に、同自重降下操作レバー1を自重降下の方向に付勢する付勢機構を設け、この付勢機構に、常時は付勢力が掛からないようにするロック手段を設け、このロック手段に、水門の外水位によって上昇するフロート17を連動させて、フロート17がある水位まで上昇したときに前記ロック手段を解除して前記自重降下操作レバー1を自重降下の方向に移動させる構成としたことを特徴とするゲート降下装置。
【請求項2】 付勢機構は、自重降下操作レバー1に一端が取り付けられたワイヤーロープ3の他端に昇降可能に取り付けられた、前記自重降下操作レバー1の操作力以上の自重を持つウエイト10である請求項1記載のゲート降下装置。
【請求項3】 支点の回りに回転自在なウエイト支持材8の一端にワイヤーロープ3の他端を連結し、同ウエイト支持材8の他端にウエイト10を吊り下げた請求項2記載のゲート降下装置。
【請求項4】 ロック手段は、フロート17の昇降に連動して上下動するフロートリンク材13に設けられた自重降下解除ピン14と、この自重降下解除ピン14に常時は係合し、前記フロート17の上昇によるフロートリンク材13の上昇により係合状態が解除される、ウエイト支持材8と共に回動する自重降下円弧カム9である請求項3記載のゲート降下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】第3027114号
【登録日】平成8年(1996)5月15日
【発行日】平成8年(1996)7月30日
【考案の名称】ゲート降下装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−147
【出願日】平成8年(1996)1月23日
【出願人】(391029015)建設省九州地方建設局長 (1)
【出願人】(594148645)株式会社協和製作所 (10)