説明

コアネットワークおよび通信システム

【課題】発信側で利用されるコーデックを着信側で利用されるコーデックとできるだけ一致させるコアネットワークを提供する。
【解決手段】移動通信ネットワークに接続されて通信装置同士の音声通信を確立するコアネットワークが、発信の移動通信装置が接続する移動通信ネットワークから着信の通信装置を識別する識別子を含む接続要求を受信し、着信の通信装置が接続する着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックを判定する。コアネットワークは、着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックがコアネットワークで利用可能である場合に、そのコーデックを発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として発信の移動通信装置に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置同士の音声通信を確立するコアネットワークおよび通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話を利用した音声通信サービスでは、種々のコーデックが使用されている。例えば、高品質の音声通信サービスのためのコーデックとして、AMR-WB(Adaptive Multi-Rate_Wideband)が提案されている。AMR-WBは、現在世界の電話で使われているAMRコーデックが改善されたものであり、3GPPでは標準化され、ITU-Tでは、G.722.2という名称で知られている(非特許文献1〜非特許文献4)。以下、従来のAMRコーデックをAMR-WBと区別するためにAMR-NB(Adaptive Multi-Rate_Narrowband)と呼ぶ。
【0003】
AMR-NBでは伝送レートが4.75〜12.2kbits/sであるが、AMR-WBでは伝送レートが12.65kbits/s、14.25kbits/s、15.85kbits/s、18.25kbits/s、19.85kbits/s、23.05kbits/s、23.85kbits/sなどであり、AMR-WBはAMR-NBより広い帯域を消費する。
【0004】
現在、AMR-WBがコーデックの主流になりつつあるが、ネットワークによって利用可能なコーデックはまちまちである。例えば、あるネットワークでは、AMR-WBとAMR-NBを利用できるのに対し、他のネットワークでは、AMR-NBしか利用できないというようにである。
【0005】
例えば携帯電話のような移動通信装置がその移動通信装置が加入している移動通信ネットワーク以外の通信ネットワークに接続された通信装置(例えば固定電話または携帯電話)と音声通信を行う場合には、移動通信ネットワークと他の通信ネットワークを接続するコアネットワークが通信装置同士の音声通信を確立する。このようなコアネットワークとしては、通信装置同士のVoIP(Voice over Internet Protocol)通信を確立するIMS(IP Multimedia Subsystem)が提案されている(非特許文献5)。IMSは、別名MMD(Multimedia Domain)としても知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ITU-T Recommendation G.722.2; "Wideband coding of speech at around 16 kbit/susing Adaptive Multi-Rate Wideband (AMR-WB)", International Telecommunication Union, 2003年7月
【非特許文献2】3GPP TS 26.190 V5.1.0 (2001-12), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Speech Codec speech processing functions; "AMR Wideband speech codec; Transcoding functions", 2001年12月
【非特許文献3】3GPP TS 26.194 V5.0.0 (2001-03), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Speech Codec speech processing functions; "AMR Wideband speech codec; Voice Activity Detector (VAD)", 2001年3月
【非特許文献4】3GPP TS 26.171 V5.0.0 (2001-03), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Speech Codec speech processing functions; "AMR Wideband speech codec; General Description", 2001年3月
【非特許文献5】3GPP TS 23.228 V10.2.0 (2010-09), 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; "IP Multimedia Subsystem (IMS)"; Stage 2 (Release 10), 2010年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IMSの利用においては、発信の移動通信装置が利用可能なコーデックと、IMSのMGCF(Media Gateway Control Function)でサポートされるコーデックの共通するコーデックが発信の移動通信装置で利用される。発信の移動通信装置が利用するべきコーデックの選択においては、着信の通信装置が接続される着信ネットワークで利用可能なコーデックは考慮されない。したがって、AMR-WBとAMR-NBの両方を利用可能な移動通信装置がAMR-WBを利用可能なネットワーク内で発信した場合には、移動通信装置はAMR-WBを利用する。
【0008】
この場合、着信装置がAMR-NBしか利用できないネットワークに接続している場合、発信の移動通信装置からIMSコアネットワークのMGW (Media Gateway)まではAMR-WBが利用され、着信側のネットワークではAMR-NBが利用されることになる。その場合には、発信側がせっかく高い伝送レートのAMR-WBを使っていたとしても、着信側が低い伝送レートのAMR-NBを使うために、結果的には音声はAMR-NBに影響された低い音声品質を持つことになる。得られる音声品質が低いのに、発信側がAMR-WBの広帯域を消費するのは無駄であり、その広帯域を減らして他の利用者の通信に無線およびコアネットワークの資源を分け与えるのが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、発信側で利用されるコーデックを着信側で利用されるコーデックとできるだけ一致させ、帯域を効率的に利用することができるコアネットワークおよび通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコアネットワークは、移動通信ネットワークに接続されており、通信装置同士の音声通信を確立するコアネットワークであって、発信の移動通信装置が接続する前記移動通信ネットワークから、着信の通信装置または着信ネットワークを識別する識別子を含む接続要求を受信する接続要求受信部と、前記着信の通信装置が接続する着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックを、前記接続要求に含まれる前記識別子に基づいて判定する着信コーデック判定部と、前記着信コーデック判定部で判定された前記着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックが前記コアネットワークで利用可能である場合に、そのコーデックを前記発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として前記発信の移動通信装置に通知する利用可能コーデック通知部とを備える。
【0011】
本発明においては、発信の移動通信装置から受信された接続要求に含まれる着信の通信装置の識別子(例えば電話番号)から着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックが判定され、そのコーデックがコアネットワークで利用可能である場合に、発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として発信の移動通信装置に通知される。例えば、着信ネットワークで利用可能なコーデックがAMR-NBであって、コアネットワークで利用可能なコーデックがAMR-WBとAMR-NBの両方であれば、AMR-NBが選択される。このように着信ネットワークに適応してコアネットワークで音声通信に利用されるコーデックを選択することにより、発信側で利用されるコーデックを着信側で利用されるコーデックとできるだけ一致させることができる。したがって、得られる音声品質に見合った帯域のコーデックを発信側が利用するので、移動通信ネットワークおよびコアネットワークでは帯域を効率的に利用することができる。すなわち、発信側で利用されるコーデックに要する帯域を着信側で利用されるコーデックに合わせて減らすことにより、他の利用者の通信に無線およびコアネットワークの資源を分け与えることができる。
【0012】
前記利用可能コーデック通知部は、前記着信コーデック判定部で判定された前記着信ネットワークで利用可能なコーデックのいずれもが前記コアネットワークで利用可能でない場合に、前記コアネットワークで利用可能なコーデックを前記発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として前記発信の移動通信装置に通知すると好ましい。
これによれば、着信ネットワークで利用可能なコーデックがコアネットワークで利用可能でない場合には、発信の移動通信装置とコアネットワークの間では、コアネットワークで利用可能なコーデックにより音声通信が可能である。
【0013】
好ましくは、着信コーデック判定部で判定された前記着信ネットワークで利用可能なコーデックと、前記コアネットワークで利用可能なコーデックに共通するコーデックがなければ、利用可能コーデック通知部は、コアネットワークで利用可能なコーデックのうち、着信ネットワークで利用可能なコーデックの伝送レートと最も近い伝送レートを持つコーデックを発信の移動通信装置に通知してもよい。これにより、発信側で利用されるコーデックの伝送レートを着信側で利用されるコーデックの伝送レートを近似させることができ、帯域の浪費を抑制することができる。
【0014】
発信の移動通信装置は、発信の移動通信装置が利用可能な複数のコーデックと利用可能コーデック通知部から通知されたコーデックに共通するコーデックがあれば、その共通するコーデックを発信の移動通信装置で利用すべき被利用コーデックとして指定する。例えば、利用可能コーデック通知部から通知された複数のコーデックが発信の移動通信装置で利用可能な複数のコーデックと共通であれば、それらの中から最も優れたコーデックが指定されるようにしてもよい。より具体的には、利用可能コーデック通知部から通知されたコーデックがAMR-WBとAMR-NBの両方であって、発信の移動通信装置でAMR-WBとAMR-NBの両方が利用可能であれば、AMR-WBが選択される。他方、利用可能コーデック通知部から通知された唯一のコーデックが発信の移動通信装置で利用可能な複数のコーデックに含まれていれば、その唯一のコーデックが指定される。より具体的には、利用可能コーデック通知部から通知されたコーデックがAMR-NBだけであって、発信の移動通信装置でAMR-WBとAMR-NBの両方が利用可能であれば、AMR-NBが選択される。
【0015】
本発明に係るコアネットワークは、前記発信の移動通信装置から前記発信の移動通信装置が実際に利用すると選択した被利用コーデックを示す被利用コーデック通知を受信する被利用コーデック通知受信部をさらに備えると好ましい。これにより、発信の移動通信装置が実際に利用する被利用コーデックをコアネットワークは知ることができる。
【0016】
本発明に係るコアネットワークはIMSコアネットワークに限られない。但し、本発明に係るコアネットワークがIMSコアネットワークである場合には、MGCF(Media Gateway Control Function)が、前記着信コーデック判定部および前記利用可能コーデック通知部として機能すると好ましい。その理由は以下の通りである。MGCFは、IMSコアネットワークのC-Plane(Control plane)に属し他のネットワークとの物理的な接続ポイントであり、接続される着信ネットワークとそのネットワークに接続する物理的な線の関係を知っているために、接続される着信ネットワークで利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をMGCFに持たせることが容易である。また、既に提案されているIMSコアネットワークにおいては、発信の移動通信装置からの接続要求に応答して、MGCFはMGCFがサポートするコーデックを発信の移動通信装置に返信するので、利用可能コーデック通知部の機能を、MGCFに持たせることが容易である。
【0017】
本発明に係るコアネットワークがIMSコアネットワークである場合には、BGCF(Breakout Gateway Control Function)が前記着信コーデック判定部として機能し、MGCFが前記利用可能コーデック通知部として機能してもよい。その理由は以下の通りである。BGCFは、既に提案されているIMSコアネットワークにおいて、IMSコアネットワークにおける回線交換ネットワークとの物理的な接続ポイント(すなわちbreakout-point)であるMGCFがいくつかIMSコアネットワークにある場合、着信ネットワークに適するMGCFを選択する。つまり、着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。したがって、着信ネットワークが回線交換ネットワークである場合、BGCFは、接続される着信ネットワークとそれに適するMGCFの関係を知っているために、接続される着信ネットワークで利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をBGCFに持たせることが容易である。また、既に提案されているIMSコアネットワークにおいては、発信の移動通信装置からの接続要求に応答して、MGCFはMGCFがサポートするコーデックを発信の移動通信装置に返信するので、利用可能コーデック通知部の機能を、MGCFに持たせることが容易である。
【0018】
本発明に係るコアネットワークがIMSコアネットワークである場合には、S-CSCF(Serving Call Session Control Function)が前記着信コーデック判定部として機能し、MGCFが前記利用可能コーデック通知部として機能してもよい。その理由は以下の通りである。S-CSCFは、既に提案されているIMSコアネットワークにおいて、着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。したがって、S-CSCFは、接続される着信ネットワークを判断することができるため、接続される着信ネットワークで利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をS-CSCFに持たせることが容易である。また、既に提案されているIMSコアネットワークにおいては、発信の移動通信装置からの接続要求に応答して、MGCFはMGCFがサポートするコーデックを発信の移動通信装置に返信するので、利用可能コーデック通知部の機能を、MGCFに持たせることが容易である。
【0019】
本発明に係る通信システムは、前記コアネットワークと、前記コアネットワークに接続される移動通信ネットワークと、前記移動通信ネットワークに接続する移動通信装置とを備え、前記移動通信装置は、前記接続要求を前記コアネットワークに送信し、前記利用可能コーデック通知部からコーデックが通知されると、前記移動通信装置が利用可能な複数のコーデックと前記利用可能コーデック通知部から通知されたコーデックの共通するコーデックを、前記移動通信装置が実際に利用するコーデックとして選択し、選択された被利用コーデックを示す前記被利用コーデック通知を前記コアネットワークに送信する。
上記の通り、着信ネットワークに適応してコアネットワークで音声通信に利用されるコーデックを選択することにより、発信側で利用されるコーデックを着信側で利用されるコーデックとできるだけ一致させることができる。また、移動通信装置が被利用コーデック通知をコアネットワークに送信することにより、発信の移動通信装置が実際に利用する被利用コーデックをコアネットワークは知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの全体を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るコアネットワークに格納されているデータベースの構造を示す図である。
【図3A】本発明の第1の実施の形態に係る通信システムでの情報フローの例を示すシーケンスダイアグラムの一部である。
【図3B】図3Aに続く前記シーケンスダイアグラムの一部である。
【図3C】図3Bに続く前記シーケンスダイアグラムの一部である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る通信システムでの情報フローを示すシーケンスダイアグラムの一部である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る通信システムでの情報フローを示すシーケンスダイアグラムの一部である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る通信システムでの情報フローを示すシーケンスダイアグラムの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る通信システムは、移動通信ネットワーク10と、EPC(Evolved Packet Core)30と、コアネットワーク40とを備える。移動通信ネットワーク10には多数の移動通信装置12が接続する。移動通信装置12は、例えば携帯電話および音声通信機能を持つその他の通信装置である。移動通信ネットワーク10は、例えばLTE(long term evolution)に準拠しているが、それには限定されない。EPC30は、各移動通信装置12のモビリティを管理する。以下では、移動通信装置12をUE(user equipment)と呼ぶことがある。
【0023】
コアネットワーク40には、複数の外部ネットワーク50が接続される。外部ネットワーク50は、PSTN(Public Switched Telephone Network)もしくはPLMN(Public Line Mobile Network)などの回線交換ネットワーク、またはその他のネットワーク(例えば、ISUPメッセージをSIPメッセージに包んで送信するSIP-Iに準拠したネットワーク)である。各外部ネットワーク50には多数の通信装置52、例えば、携帯電話または固定電話が接続する。したがって、移動通信ネットワーク10に接続するIMSに対応可能な移動通信装置12と、外部ネットワーク50に接続する通信装置52との通信(音声通信を含む)をコアネットワーク40は確立する。
【0024】
コアネットワーク40はIMSコアネットワークである。コアネットワーク40は図示のエンティティ以外にも様々なエンティティを有するが、その主要な構成エンティティは次の通りである。
【0025】
P-CSCF(Proxy Call Session Control Function)41は、Session Initiation Protocol (SIP)ルータであって、移動通信装置12からSIPメッセージを受信し、移動通信装置12にSIPメッセージを送信する。
【0026】
S-CSCF(Serving Call Session Control Function)42は、SIPルータであって、以下の機能を提供する。
・ユーザの登録情報および提供サービス情報の管理。
・ユーザのセッション管理。
・ユーザにサービスを提供するアプリケーションサーバ43の選択。
また、S-CSCF42は着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。
【0027】
AS(Application Server)43は、SIPを利用した音声アプリケーションを提供するサーバである。ユーザ間の音声通信においては、AS43は例えば音声ガイダンス等の付加サービスなどを提供する。
【0028】
BGCF(Breakout Gateway Control Function)44も、着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。BGCF44は、IMSからPSTN またはPLMN などの回線交換ネットワークの通信装置に発信する場合のみ使われる。つまり、外部ネットワーク50が回線交換ネットワークであって、外部ネットワーク50に接続する通信装置52へ発信する場合のみ、BGCF44は使われる。BGCF44は、IMSコアネットワーク40における回線交換ネットワークとの物理的な接続ポイント(すなわちbreakout-point)であるMGCFがいくつかIMSコアネットワークにある場合、着信ネットワークに適するMGCFを選択する。
【0029】
MGCF(Media Gateway Control Function)45は、IMSコアネットワーク40における回線交換ネットワークへの脱出ポイント(breakout-point)である。これは、IMSコアネットワーク40と外部ネットワーク50の間のC-Planeの制御プロトコル変換を行う装置である。具体的には、IMS制御信号であるSIPと、回線交換ネットワークの制御信号であるISUP(ISDN User Part)やBICC(Bearer Independent Call Control)との変換を行う。また、H.248等のプロトコルを利用してMGW46のリソースを制御する。
【0030】
MGW(Media Gateway)46は、外部ネットワーク50への接続時のU-Plane(User Plane)のユーザデータである音声等のインタフェース機能を有する。具体的には、移動通信装置12からコアネットワーク40までで利用されるコーデックと外部ネットワーク50で利用されるコーデックが一致しない場合、コーデックの符号変換を行う。
【0031】
図1において、コアネットワーク40内の点線のリンクはC-Planeを表し、実線のリンクはU-Planeを表す。U-PlaneはIMSではmedia planeと呼ばれる。
【0032】
第1の実施の形態
移動通信ネットワーク10に接続するIMSに対応可能な移動通信装置12が、外部ネットワーク50に接続する通信装置52に音声通信するために、発信すると想定する。移動通信装置12は、着信の通信装置52を識別する識別子(例えば、電話番号)と移動通信装置12が利用可能な複数のコーデックを示す情報を含む接続要求(SIP_INVITE)を送信する。SIP_INVITEは、移動通信ネットワーク10およびEPC30を経て、コアネットワーク40に到達し、P-CSCF41(接続要求受信部)がSIP_INVITEを受信する。SIP_INVITEは、P-CSCFからS-CSCF42に転送され、S-CSCF42(着信ネットワーク判定部、着信コーデック判定部)は、着信の通信装置52の識別子に基づいて、着信の通信装置52が接続する着信の外部ネットワーク50を判定する。S-CSFB42は、判定した着信先ネットワークに接続するため、SIP_INVITEをBGCF44に転送する。BGCF44は、適切なMGCF45を選択し、MGCF45にSIP_INVITEを転送する。
【0033】
MGCF45(着信コーデック判定部)は、着信の通信装置52が接続する着信の外部ネットワーク50で利用可能な少なくとも1つのコーデックを、外部ネットワークに関するデータベースに基づいて判定する。すなわち、S-CSCF42およびMGCF45は協働して、着信の通信装置52の識別子に基づいて、着信の外部ネットワーク50で利用可能な少なくとも1つのコーデックを判定する着信コーデック判定部として機能する。また、MGCF45(利用可能コーデック通知部)は、このようにして判定された着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックがコアネットワーク40で利用可能である場合に、そのコーデックを発信の移動通信装置12が利用すべきコーデックの候補として発信の移動通信装置12に通知する。他方、MGCF45(利用可能コーデック通知部)は、着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックがコアネットワーク40で利用可能でない場合に、コアネットワーク40で利用可能なコーデックを発信の移動通信装置12が利用すべきコーデックの候補として発信の移動通信装置12に通知する。利用可能なコーデックの通知には、SIP_183メッセージが使用される。
【0034】
例えば、着信ネットワークで利用可能なコーデックがAMR-NBであって、コアネットワークで利用可能なコーデックがAMR-WBとAMR-NBの両方であれば、AMR-NBが選択される。このように着信ネットワークに適応してコアネットワークで音声通信に利用されるコーデックを選択することにより、発信側で利用されるコーデックを着信側で利用されるコーデックとできるだけ一致させることができる。したがって、得られる音声品質に見合った帯域のコーデックを発信側が利用するので、移動通信ネットワークおよびコアネットワークでは帯域を効率的に利用することができる。すなわち、発信側で利用されるコーデックに要する帯域を着信側で利用されるコーデックに合わせて減らすことにより、他の利用者の通信に無線およびコアネットワークの資源を分け与えることができる。
【0035】
利用可能なコーデックの通知を受信した発信の移動通信装置12は、移動通信装置12が利用可能な複数のコーデックと通知されたコーデックの共通するコーデックを、移動通信装置12が実際に利用するコーデックとして選択し、選択された被利用コーデックを示す被利用コーデック通知(SIP_PRACK)をコアネットワークに送信する(図3B)。
【0036】
例えば、SIP_183メッセージが複数のコーデックが利用可能と示しており、それらが発信の移動通信装置12で利用可能な複数のコーデックと共通であれば、それらの中から最も優れたコーデックを移動通信装置12が指定する。より具体的には、SIP_183メッセージでAMR-WBとAMR-NBの両方が利用可能と示され、発信の移動通信装置12でAMR-WBとAMR-NBの両方が利用可能であれば、AMR-WBが選択される。他方、SIP_183メッセージで唯一のコーデックが利用可能と示され、それが発信の移動通信装置12で利用可能な複数のコーデックに含まれていれば、その唯一のコーデックを移動通信装置12が選択する。より具体的には、SIP_183メッセージでAMR-NBだけが利用可能と示され、発信の移動通信装置12でAMR-WBとAMR-NBの両方が利用可能であれば、AMR-NBが選択される。こうして、発信の移動通信装置12で実際に利用されるコーデックが確定される。
【0037】
P-CSCF41(被利用コーデック通知受信部)は、被利用コーデック通知(SIP_PRACK)を受信し、これをMGCF45に転送する。被利用コーデック通知(SIP_PRACK)を受信すると、MGCF45は、発信の移動通信装置12が利用するコーデックに必要なリソースをMGW46が確保するように、H.248プロトコルを利用してMGW46を制御する。
【0038】
この実施の形態では、MGCF45が、着信コーデック判定部および利用可能コーデック通知部として機能する。その理由は以下の通りである。MGCFは、IMSコアネットワークのC-Planeに属し他のネットワークとの物理的な接続ポイント(すなわちbreakout-point)であり、接続される着信の外部ネットワーク50とネットワーク事業者の関係を知っているために、接続される着信の外部ネットワーク50で利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をMGCFに持たせることが容易である。また、既に提案されているIMSコアネットワークにおいては、発信の移動通信装置12からの接続要求(SIP_INVITE)に応答して、MGCFはMGCFがサポートするコーデックを発信の移動通信装置12に返信するので、利用可能コーデック通知部の機能を、MGCFに持たせることが容易である。
【0039】
MGCF45が着信コーデック判定部として機能するために、MGCF45は図2に示されるデータベースを格納する。このデータベースは、ネットワーク事業者(すなわちネットワーク事業者が運営するネットワーク)と、ネットワーク事業者が運営するネットワークで利用可能なコーデックと、そのネットワークに接続する物理的な線との関係を示す。したがって、着信ネットワークが判定されれば、そのネットワークで利用可能なコーデックをMGCF45は判定することができる。図2に示されるデータベースは一例であり、ネットワークとコーデックの関係が記述されたデータであればいかなる形態のデータをMGCFが有していてもよい。
【0040】
図3Aから図3Cを参照しながら、第1の実施の形態に係る通信システムでの情報フローの例を説明する。便宜上、移動通信ネットワーク10およびEPC30の図示は省略する。以下では、UEが、外部ネットワーク50に接続する通信装置52に音声通信するために、発信すると想定する。
【0041】
UEには通信装置52の電話番号が入力される。UEは、SDP(Session Description Protocol)に準拠してUEのコーデック能力(UEで利用可能なコーデック)を記述したInitial SDP Offerを含むSIP_INVITEを生成する。SIP_INVITEは、通信装置52の電話番号およびUEのコーデック能力(この例ではAMR-WB, AMR-NBがUEで利用可能である)を記述している。UEのコーデック能力をSIP_INVITEで記述するのは、IMSで要求されているためである。UEは生成したSIP_INVITEをP-CSCFに送信し、P-CSCF(接続要求受信部)はSIP_INVITEをS-CSCFに転送する。
【0042】
SIP_INVITEを受信すると、S-CSCF(着信ネットワーク判定部、着信コーデック判定部)は、必要に応じてASにサービス制御を要求するとともに、通信装置52の電話番号に基づいて着信の外部ネットワークを判定する。この例では、着信ネットワークがPSTNであるが、PLMN等の他の回線交換ネットワークまたはその他のネットワークでもよい。
【0043】
S-CSCFはSIP_INVITEをBGCFに転送する。BGCFは、着信ネットワークであるPSTNに適するMGCFを選択し、SIP_INVITEをそのMGCFに転送する。MGCFは、この音声通信で使用するMGWを選択し、H.248プロトコルを利用してそのMGWを起動する。
【0044】
MGCF(着信コーデック判定部)は、着信ネットワークに基づいて着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデック(すなわち着信ネットワークでサポートされるコーデック)を判定する。さらに、MGCFは、このIMSコアネットワーク40で利用可能な複数のコーデックと、着信ネットワークで利用可能なコーデックに共通するコーデックがあるかどうか判断する。共通するコーデックがあれば、MGCFは、共通するコーデック(複数あればすべてのコーデック)を記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。
【0045】
あるいは、好ましくは、共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックのうち、着信ネットワークで利用可能なコーデックの伝送レートと最も近い伝送レートを持つコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。これにより、発信側で利用されるコーデックの伝送レートを着信側で利用されるコーデックの伝送レートを近似させることができ、帯域の浪費を抑制することができる。
【0046】
MGCF(利用可能コーデック通知部)はSIP_183メッセージ(Session Progress)を発信のUEに送信する。SIP_183メッセージ(Session Progress)は、BGCF、S-CSCF、P-CSCFを経由してUEに到達する。UEは、受信したSIP_183メッセージ(Session Progress)のSDP Answer値から利用すべきコーデックを判定すなわち選択する。具体的には、UEがサポートするコーデックと、MGCFから通知されたコーデックのうち共通のコーデックを、UEが実際に利用するコーデックとして選択する。
【0047】
MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能かつ着信ネットワークで利用可能であれば、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでも利用可能である。MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能だが着信ネットワークで利用可能でなければ、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでは利用できず、UEとMGWの間だけで利用される。この場合には、MGWはコーデックの符号変換を行うこととなる。
【0048】
次に、UEは、選択された被利用コーデックを示す2nd SDP Offerを含む前記被利用コーデック通知であるSIP_PRACKをSDPに準拠して生成し、これをコアネットワーク40に送信する。SIP_PRACKは、P-CSCF(被利用コーデック通知受信部)で受信され、S-CSCF、BGCFを経由してMGCFに到達する。MGCFは、H.248プロトコルを利用してMGWにUEが実際に利用するコーデックを通知し、MGWはそのコーデックに必要なリソースを確保する。
【0049】
MGCFはSIP_200 OKをUEに返信する。SIP_200 OKを受信すると、UEはUE内部で音声Media用リソースが確保されているか確認する(Precondition制御)。確認後、UEは、UEでリソースが確保されたことを通知するSIP_UpdateをMGCFに送信する。SIP_Updateを受信すると、MGCFは、IAM(ISUP Initial Address Message)を着信の外部ネットワーク50に送信する。つまり、MGCFは着信の通信装置52を呼び出すよう外部ネットワーク50に要求する。このIAMは、UEが実際に利用するコーデックを示す情報が含まれており、そのコーデックを着信の通信装置52が利用可能であれば、通信装置52はそのコーデックを利用すると期待される。
【0050】
MGCFは、この音声通信のために、コアネットワーク40で音声メディア用のリソースが確保されたら、USER ALERTを開始し、さらに、着信側でリソースが確保されたことを通知するSIP_200 OKを生成し、これをUEに送信する。
【0051】
また、着信の外部ネットワーク50からISUPのACM(Address Complete Message)を受信すると、MGCFはSIP_180 RingingメッセージをUEに送信する。このメッセージは、着信装置を呼出中であることを示す。
【0052】
SIP_180 Ringingメッセージを受信すると、UEは呼出音を作成し送出する。またUEはSIP_PRACKをMGCFに送信し、MGCFはそれに対してSIP_200 OKを返信する(図3C)。
【0053】
外部ネットワーク50において通信装置52が呼出に応じてオフフックになると、外部ネットワーク50はANM(Answer Message)をMGCFに送信する。MGCFは、H.248プロトコルを利用してMGWに通信装置52がオフフックになり音声メディア通信が開始したことを通知する。すると、MGCFはSIP_200 OKをUEに送信し、UEはそれに対してSIP_ACKを返信する。
【0054】
第2の実施の形態
IMSコアネットワーク40においては、着信の外部ネットワーク50が利用可能なコーデックをBGCF44が判定してもよい。すなわち、BGCF44が着信コーデック判定部として機能してもよい。BGCFは、既に提案されているIMSコアネットワークにおいて、IMSコアネットワークにおける回線交換ネットワークとの物理的な接続ポイント(すなわちbreakout-point)であるMGCFがいくつかIMSコアネットワークにある場合、着信の外部ネットワーク50に適するMGCFを選択する。つまり、着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。したがって、着信の外部ネットワーク50が回線交換ネットワークである場合、BGCFは、接続される着信の外部ネットワーク50とそれに適するMGCFの関係を知っているために、接続される着信の外部ネットワーク50で利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をBGCFに持たせることが容易である。
【0055】
図4を参照しながら、第2の実施の形態に係る通信システムでの情報フローの例を説明する。図3A〜図3Cと同様、便宜上、移動通信ネットワーク10およびEPC30の図示は省略する。以下では、UEが、外部ネットワーク50に接続する通信装置52に音声通信するために、発信すると想定する。
【0056】
UEには通信装置52の電話番号が入力される。UEは、SDP(Session Description Protocol)に準拠してUEのコーデック能力(UEで利用可能なコーデック)を記述したInitial SDP Offerを含むSIP_INVITEを生成する。SIP_INVITEは、通信装置52の電話番号およびUEのコーデック能力(この例ではAMR-WB, AMR-NBがUEで利用可能である)を記述している。UEのコーデック能力をSIP_INVITEで記述するのは、IMSで要求されているためである。UEは生成したSIP_INVITEをP-CSCFに送信し、P-CSCF(接続要求受信部)はSIP_INVITEをS-CSCFに転送する。
【0057】
SIP_INVITEを受信すると、S-CSCF(着信ネットワーク判定部、着信コーデック判定部)は、必要に応じてASにサービス制御を要求するとともに、通信装置52の電話番号に基づいて着信の外部ネットワークを判定する。この例では、着信ネットワークがPSTNであるが、PLMN等の他の回線交換ネットワークまたはその他のネットワークでもよい。
【0058】
S-CSCFはSIP_INVITEをBGCFに転送する。BGCF(着信コーデック判定部)は、着信ネットワークに基づいて着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデック(すなわち着信ネットワークでサポートされるコーデック)を判定する。BGCFはそのコーデックを記述したSIP_INVITEを生成する。このSIP_INVITEの生成では、BGCFは、受信したSIP_INVITE内のInitial SDP Offerに記述されていたUEのコーデック能力を着信ネットワークでサポートされるコーデック能力に書き換えてもよいし、UEのコーデック能力を記述したInitial SDP Offerとは別に、着信ネットワークでサポートされるコーデック能力を記述した新たな情報要素を受信したSIP_INVITEに付加してもよい。
【0059】
BGCFは、着信ネットワークであるPSTNに適するMGCFを選択し、BGCFで生成されたSIP_INVITEをそのMGCFに転送する。MGCFは、この音声通信で使用するMGWを選択し、H.248プロトコルを利用してそのMGWを起動する。
【0060】
さらに、MGCFは、このIMSコアネットワーク40で利用可能な複数のコーデックと、着信ネットワークで利用可能なコーデックに共通するコーデックがあるかどうか判断する。共通するコーデックがあれば、MGCFは、共通するコーデック(複数あればすべてのコーデック)を記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。
【0061】
あるいは、好ましくは、共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックのうち、着信ネットワークで利用可能なコーデックの伝送レートと最も近い伝送レートを持つコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。これにより、発信側で利用されるコーデックの伝送レートを着信側で利用されるコーデックの伝送レートを近似させることができ、帯域の浪費を抑制することができる。
【0062】
MGCF(利用可能コーデック通知部)はSIP_183メッセージ(Session Progress)を発信のUEに送信する。SIP_183メッセージ(Session Progress)は、BGCF、S-CSCF、P-CSCFを経由してUEに到達する。UEは、受信したSIP_183メッセージ(Session Progress)のSDP Answer値から利用すべきコーデックを判定すなわち選択する。具体的には、UEがサポートするコーデックと、MGCFから通知されたコーデックのうち共通のコーデックを、UEが実際に利用するコーデックとして選択する。
【0063】
MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能かつ着信ネットワークで利用可能であれば、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでも利用可能である。MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能だが着信ネットワークで利用可能でなければ、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでは利用できず、UEとMGWの間だけで利用される。この場合には、MGWはコーデックの符号変換を行うこととなる。
【0064】
次に、UEは、選択された被利用コーデックを示す2nd SDP Offerを含む前記被利用コーデック通知であるSIP_PRACKをSDPに準拠して生成し、これをコアネットワーク40に送信する。SIP_PRACKは、P-CSCF(被利用コーデック通知受信部)で受信され、S-CSCF、BGCFを経由してMGCFに到達する。MGCFは、H.248プロトコルを利用してMGWにUEが実際に利用するコーデックを通知し、MGWはそのコーデックに必要なリソースを確保する。
【0065】
この後の手順は、図3B、図3Cに示されて上述した第1の実施の形態の手順と同じである。
【0066】
第3の実施の形態
IMSコアネットワーク40においては、着信の外部ネットワーク50が利用可能なコーデックをS-CSCF42が判定してもよい。すなわち、S-CSCF42が着信コーデック判定部として機能してもよい。S-CSCFは、既に提案されているIMSコアネットワークにおいて、着信装置の電話番号に基づくルーティング機能を持つ。したがって、S-CSCFは、接続される着信ネットワークを判断することができるため、接続される着信ネットワークで利用可能なコーデックを判定する着信コーデック判定部の機能をS-CSCFに持たせることが容易である。
【0067】
図5を参照しながら、第3の実施の形態に係る通信システムでの情報フローの例を説明する。図3A〜図3Cと同様、便宜上、移動通信ネットワーク10およびEPC30の図示は省略する。以下では、UEが、外部ネットワーク50に接続する通信装置52に音声通信するために、発信すると想定する。
【0068】
UEには通信装置52の電話番号が入力される。UEは、SDP(Session Description Protocol)に準拠してUEのコーデック能力(UEで利用可能なコーデック)を記述したInitial SDP Offerを含むSIP_INVITEを生成する。SIP_INVITEは、通信装置52の電話番号およびUEのコーデック能力(この例ではAMR-WB, AMR-NBがUEで利用可能である)を記述している。UEのコーデック能力をSIP_INVITEで記述するのは、IMSで要求されているためである。UEは生成したSIP_INVITEをP-CSCFに送信し、P-CSCF(接続要求受信部)はSIP_INVITEをS-CSCFに転送する。
【0069】
SIP_INVITEを受信すると、S-CSCF(着信ネットワーク判定部、着信コーデック判定部)は、必要に応じてASにサービス制御を要求するとともに、通信装置52の電話番号に基づいて着信の外部ネットワークを判定する。この例では、着信ネットワークがPSTNであるが、PLMN等の他の回線交換ネットワークまたはその他のネットワークでもよい。
【0070】
S-CSCFは、着信ネットワークに基づいて着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデック(すなわち着信ネットワークでサポートされるコーデック)を判定する。S-CSCFはそのコーデックを記述したSIP_INVITEを生成する。このSIP_INVITEの生成では、S-CSCFは、受信したSIP_INVITE内のInitial SDP Offerに記述されていたUEのコーデック能力を着信ネットワークでサポートされるコーデック能力に書き換えてもよいし、UEのコーデック能力を記述したInitial SDP Offerとは別に、着信ネットワークでサポートされるコーデック能力を記述した新たな情報要素を受信したSIP_INVITEに付加してもよい。S-CSCFはS-CSCFで生成されたSIP_INVITEをBGCFに送信する。
【0071】
BGCFは、着信ネットワークであるPSTNに適するMGCFを選択し、S-CSCF42から受信したSIP_INVITEをそのままそのMGCFに転送する。MGCFは、この音声通信で使用するMGWを選択し、H.248プロトコルを利用してそのMGWを起動する。
【0072】
さらに、MGCFは、このIMSコアネットワーク40で利用可能な複数のコーデックと、着信ネットワークで利用可能なコーデックに共通するコーデックがあるかどうか判断する。共通するコーデックがあれば、MGCFは、共通するコーデック(複数あればすべてのコーデック)を記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。
【0073】
あるいは、好ましくは、共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックのうち、着信ネットワークで利用可能なコーデックの伝送レートと最も近い伝送レートを持つコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。これにより、発信側で利用されるコーデックの伝送レートを着信側で利用されるコーデックの伝送レートを近似させることができ、帯域の浪費を抑制することができる。
【0074】
MGCF(利用可能コーデック通知部)はSIP_183メッセージ(Session Progress)を発信のUEに送信する。SIP_183メッセージ(Session Progress)は、BGCF、S-CSCF、P-CSCFを経由してUEに到達する。UEは、受信したSIP_183メッセージ(Session Progress)のSDP Answer値から利用すべきコーデックを判定すなわち選択する。具体的には、UEがサポートするコーデックと、MGCFから通知されたコーデックのうち共通のコーデックを、UEが実際に利用するコーデックとして選択する。
【0075】
MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能かつ着信ネットワークで利用可能であれば、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでも利用可能である。MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能だが着信ネットワークで利用可能でなければ、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでは利用できず、UEとMGWの間だけで利用される。この場合には、MGWはコーデックの符号変換を行うこととなる。
【0076】
次に、UEは、選択された被利用コーデックを示す2nd SDP Offerを含む前記被利用コーデック通知であるSIP_PRACKをSDPに準拠して生成し、これをコアネットワーク40に送信する。SIP_PRACKは、P-CSCF(被利用コーデック通知受信部)で受信され、S-CSCF、BGCFを経由してMGCFに到達する。MGCFは、H.248プロトコルを利用してMGWにUEが実際に利用するコーデックを通知し、MGWはそのコーデックに必要なリソースを確保する。
【0077】
この後の手順は、図3B、図3Cに示されて上述した第1の実施の形態の手順と同じである。
【0078】
第4の実施の形態
IMSコアネットワーク40においては、着信の外部ネットワーク50が利用可能なコーデックをAS43が判定してもよい。すなわち、AS43が着信コーデック判定部として機能してもよい。
【0079】
図6を参照しながら、第4の実施の形態に係る通信システムでの情報フローの例を説明する。図3A〜図3Cと同様、便宜上、移動通信ネットワーク10およびEPC30の図示は省略する。以下では、UEが、外部ネットワーク50に接続する通信装置52に音声通信するために、発信すると想定する。
【0080】
UEには通信装置52の電話番号が入力される。UEは、SDP(Session Description Protocol)に準拠してUEのコーデック能力(UEで利用可能なコーデック)を記述したInitial SDP Offerを含むSIP_INVITEを生成する。SIP_INVITEは、通信装置52の電話番号およびUEのコーデック能力(この例ではAMR-WB, AMR-NBがUEで利用可能である)を記述している。UEのコーデック能力をSIP_INVITEで記述するのは、IMSで要求されているためである。UEは生成したSIP_INVITEをP-CSCFに送信し、P-CSCF(接続要求受信部)はSIP_INVITEをS-CSCFに転送する。
【0081】
SIP_INVITEを受信すると、S-CSCFは、必要に応じてASにサービス制御を要求するとともに、ASにそのSIP_INVITEを転送する。
【0082】
AS(着信ネットワーク判定部、着信コーデック判定部)は、通信装置52の電話番号に基づいて着信の外部ネットワークを判定する。この例では、着信ネットワークがPSTNであるが、PLMN等の他の回線交換ネットワークまたはその他のネットワークでもよい。ASは、ASで判定した着信ネットワークに基づいて着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデック(すなわち着信ネットワークでサポートされるコーデック)を判定する。ASはそのコーデックを記述したSIP_INVITEを生成する。このSIP_INVITEの生成では、ASは、受信したSIP_INVITE内のInitial SDP Offerに記述されていたUEのコーデック能力を着信ネットワークでサポートされるコーデック能力に書き換えてもよいし、UEのコーデック能力を記述したInitial SDP Offerとは別に、着信ネットワークでサポートされるコーデック能力を記述した新たな情報要素を受信したSIP_INVITEに付加してもよい。ASはASで生成されたSIP_INVITEをS-CSCFに送信する。
【0083】
S-CSCFも通信装置52の電話番号に基づいて着信の外部ネットワークを判定する。この例では、着信ネットワークがPSTNであるが、PLMN等の他の回線交換ネットワークまたはその他のネットワークでもよい。また、S-CSCFはASで生成されたSIP_INVITEをそのままBGCFに転送する。
【0084】
BGCFは、着信ネットワークであるPSTNに適するMGCFを選択し、S-CSCF42から受信したSIP_INVITEをそのままそのMGCFに転送する。MGCFは、この音声通信で使用するMGWを選択し、H.248プロトコルを利用してそのMGWを起動する。
【0085】
さらに、MGCFは、このIMSコアネットワーク40で利用可能な複数のコーデックと、着信ネットワークで利用可能なコーデックに共通するコーデックがあるかどうか判断する。共通するコーデックがあれば、MGCFは、共通するコーデック(複数あればすべてのコーデック)を記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。
【0086】
あるいは、好ましくは、共通するコーデックがなければ、MGCFは、IMSコアネットワーク40で利用可能なすべてのコーデックのうち、着信ネットワークで利用可能なコーデックの伝送レートと最も近い伝送レートを持つコーデックを記述したSDP Answerを含むSIP_183メッセージ(Session Progress)を生成する。これにより、発信側で利用されるコーデックの伝送レートを着信側で利用されるコーデックの伝送レートを近似させることができ、帯域の浪費を抑制することができる。
【0087】
MGCF(利用可能コーデック通知部)はSIP_183メッセージ(Session Progress)を発信のUEに送信する。SIP_183メッセージ(Session Progress)は、BGCF、S-CSCF、P-CSCFを経由してUEに到達する。UEは、受信したSIP_183メッセージ(Session Progress)のSDP Answer値から利用すべきコーデックを判定すなわち選択する。具体的には、UEがサポートするコーデックと、MGCFから通知されたコーデックのうち共通のコーデックを、UEが実際に利用するコーデックとして選択する。
【0088】
MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能かつ着信ネットワークで利用可能であれば、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでも利用可能である。MGCFから通知されたコーデックがIMSコアネットワーク40で利用可能だが着信ネットワークで利用可能でなければ、UEが実際に利用するコーデックは着信ネットワークでは利用できず、UEとMGWの間だけで利用される。この場合には、MGWはコーデックの符号変換を行うこととなる。
【0089】
次に、UEは、選択された被利用コーデックを示す2nd SDP Offerを含む前記被利用コーデック通知であるSIP_PRACKをSDPに準拠して生成し、これをコアネットワーク40に送信する。SIP_PRACKは、P-CSCF(被利用コーデック通知受信部)で受信され、S-CSCF、BGCFを経由してMGCFに到達する。MGCFは、H.248プロトコルを利用してMGWにUEが実際に利用するコーデックを通知し、MGWはそのコーデックに必要なリソースを確保する。
【0090】
この後の手順は、図3B、図3Cに示されて上述した第1の実施の形態の手順と同じである。
【0091】
他の変形
上記の実施の形態においては、コーデックの例はAMR-WBとAMR-NBであるが、他のコーデックが通信システムで利用されてもよい。
【0092】
上記の実施の形態においては、コアネットワーク40はIMSコアネットワークであるが、本発明に係るコアネットワークは、IMSコアネットワークに限られない。
【0093】
上記の実施の形態においては、着信の通信装置を識別する識別子は着信の通信装置の電話番号であるが、他の識別子を利用してもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 移動通信ネットワーク、12 移動通信装置、30 EPC、40 コアネットワーク、41 P-CSCF(接続要求受信部、被利用コーデック通知受信部)、42 S-CSCF(着信コーデック判定部)、43 AS(着信コーデック判定部)、44 BGCF(着信コーデック判定部)、45 MGCF(着信コーデック判定部、利用可能コーデック通知部)、46 MGW、50 外部ネットワーク、52 通信装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークに接続されており、通信装置同士の音声通信を確立するコアネットワークであって、
発信の移動通信装置が接続する前記移動通信ネットワークから、着信の通信装置または着信ネットワークを識別する識別子を含む接続要求を受信する接続要求受信部と、
前記着信の通信装置が接続する着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックを、前記接続要求に含まれる前記識別子に基づいて判定する着信コーデック判定部と、
前記着信コーデック判定部で判定された前記着信ネットワークで利用可能な少なくとも1つのコーデックが前記コアネットワークで利用可能である場合に、そのコーデックを前記発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として前記発信の移動通信装置に通知する利用可能コーデック通知部と
を備えるコアネットワーク。
【請求項2】
前記利用可能コーデック通知部は、前記着信コーデック判定部で判定された前記着信ネットワークで利用可能なコーデックのいずれもが前記コアネットワークで利用可能でない場合に、前記コアネットワークで利用可能なコーデックを前記発信の移動通信装置が利用すべきコーデックの候補として前記発信の移動通信装置に通知することを特徴とする請求項1に記載のコアネットワーク。
【請求項3】
前記発信の移動通信装置から前記発信の移動通信装置が実際に利用すると選択した被利用コーデックを示す被利用コーデック通知を受信する被利用コーデック通知受信部をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコアネットワーク。
【請求項4】
IMS(IP Multimedia Subsystem)コアネットワークであって、
前記着信コーデック判定部および前記利用可能コーデック通知部として機能する、MGCF(Media Gateway Control Function)を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコアネットワーク。
【請求項5】
IMS(IP Multimedia Subsystem)コアネットワークであって、
前記着信コーデック判定部として機能する、BGCF(Breakout Gateway Control Function)と、
前記利用可能コーデック通知部として機能する、MGCF(Media Gateway Control Function)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコアネットワーク。
【請求項6】
IMS(IP Multimedia Subsystem)コアネットワークであって、
前記着信コーデック判定部として機能する、S-CSCF(Serving Call Session Control Function)と、
前記利用可能コーデック通知部として機能する、MGCF(Media Gateway Control Function)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコアネットワーク。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の前記コアネットワークと、
前記コアネットワークに接続される移動通信ネットワークと、
前記移動通信ネットワークに接続する移動通信装置とを備え、
前記移動通信装置は、前記接続要求を前記コアネットワークに送信し、前記利用可能コーデック通知部からコーデックが通知されると、前記移動通信装置が利用可能な複数のコーデックと前記利用可能コーデック通知部から通知されたコーデックの共通するコーデックを、前記移動通信装置が実際に利用するコーデックとして選択し、選択された被利用コーデックを示す前記被利用コーデック通知を前記コアネットワークに送信することを特徴とする通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105210(P2012−105210A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254071(P2010−254071)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】