説明

コア・シェル構造を持つトナー及びその製造方法

コア・シェル構造を持つトナー及びその製造方法が開示される。このコア・シェル構造を持つトナーは、活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含むトナーコア部と、トナーコア部を包むように配されたトナーシェル部とを備え、トナーシェル部は、活性水素含有基の少なくとも一部が架橋剤と反応することにより形成された架橋樹脂を含むことを特徴とする。したがって、このトナー及びその製造方法を使用すれば、低温定着性と高温保管安定性とを同時に確保できる。また、このトナーは、電子写真用画像形成装置に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー及びその製造方法に係り、さらに詳細には、低温定着性と高温保管安定性とを同時に確保できるトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、印刷市場で高速印刷に適したトナー、特に低温定着性と高温保管安定性とを同時に確保できるトナーへの要求が増大しつつある。
【0003】
一般的にトナーは、バインダー樹脂として作用する熱可塑性樹脂に着色剤、電荷調節剤、染料、顔料、離型剤などを添加して製造される。また、トナーに流動性を付与するか、帯電制御またはクリーニング性などの物性を向上させるために、シリカや酸化チタンなどの無機金属微粉末が外添剤としてトナーに添加される。
【0004】
かかるトナーは、物理的方法または化学的方法で製造できる。
【0005】
物理的方法としては粉砕法が代表的であり、粉砕法は、ポリエステル樹脂などのバインダー樹脂に着色剤及び帯電制御剤などを溶融混合して、これらを均一に分散させたトナー組成物を得て、前記トナー組成物を粉砕及び分級することでトナーを製造する方法である。しかし、粉砕法においては、トナー組成物の粉砕のために粉砕器などが必要であり、小粒径のトナーを製造するためには高コストが要求されて非効率的である。また、粉砕時に粒径分布の広いトナー粒子が形成されやすく、高解像度、高諧調性の画像を得るためには、3μm以下の微粉と20μm以上の粗粉とを分級して除去する必要がある。また、添加剤が均一に分散されない場合には、トナーの流動性、現像性、耐久性、及び画像品質などが低下するという問題点がある。
【0006】
一方、化学的方法には、懸濁重合法及び乳化凝集法を挙げることができる。
【0007】
懸濁重合法は、溶媒中にトナー材料を懸濁重合させることによってトナーを製造する方法である。キャノンなどはかかる方式の技術を保有している(特許文献1)。しかし、この方式は、粉砕法における問題点を改善することはできるが、スチレン・アクリル共重合体のみ基本樹脂として使われ、得られるトナー粒子が球形であるので、クリーニング性が落ちるという短所がある。したがって、懸濁重合法は、トナーが電子写真用画像の形成装置の感光体上に残留し、それが蓄積されて画像不良などが発生し、これによって帯電ローラなどの汚染が発生して、本来の帯電能力を発揮できないという問題を引き起こす。
【0008】
トナー組成物を製造するための他の化学的方法には、乳化凝集法がある(特許文献2及び3)。かかる方法は、エマルション重合反応を通じて微細乳化樹脂粒子組成物を製造した後、前記組成物を別途の分散液で顔料と共に凝集させる過程で構成される。かかる方法は、前記粉砕法における問題点を改善し、凝集条件を調節することによってトナー粒子の形態を非球形にする長所はあるが、バインダー樹脂としてスチレン・アクリル共重合体のみ使われ、別途の分散液を製造する工程が付加されねばならないという短所がある。
【0009】
前記の2つの化学的トナー製造方法は、いずれもスチレン・アクリル共重合体のみが基本樹脂として使われる。したがって、一般的にカラートナー及び高速プリンタ用トナーにおいて、優秀な流動性と、化学的構造に起因する顔料の均一な分散性及び透明性などの優秀な特性を持つポリエステル樹脂が使われないという短所がある。
【0010】
ポリエステル樹脂を利用したトナーの製造方法には、自己水分散性ポリエステル樹脂を使用する方法(前記の特許文献2)があるが、この方法は、自己水分散が可能なスルホン酸ナトリウム基などを樹脂内に導入せねばならず、このように導入された機能性基を多く含むトナーは、製造後に水分などの外気環境に影響を受ける可能性が高くてトナーの安定性を落とす恐れがある。
【0011】
特許文献4ないし6は、トナーバインダー(すなわち、バインダー樹脂)及び着色剤を含むドライトナーを開示している。この場合、トナーバインダーとしては変性ポリエステル樹脂が単独で、望ましくは、未変性ポリエステル樹脂と共に使われる。変性ポリエステル樹脂としては、イソシアネート基を持つポリエステルプレポリマーなどが使われ、未変性ポリエステル樹脂としては、ポリオールとポリカーボン酸との重縮合物などが使われうる。しかし、かかる方法は、オリゴマーにイソシアネート基を導入させる付加的な反応を通じてプレポリマーを製造し、前記プレポリマーを架橋剤及び/または伸長剤と反応させてトナー粒子を製造するなど、製造工程が複雑であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6177223号明細書
【特許文献2】米国特許第5916725号明細書
【特許文献3】米国特許第6268103号明細書
【特許文献4】特許第3640918号公報
【特許文献5】特許第3895172号公報
【特許文献6】特許第3878537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、低温定着性と高温保管安定性とを同時に確保できるトナー及びその製造方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、前記トナーを使用した電子写真用画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような課題を解決するために、本発明は、活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含むトナーコア部と、前記トナーコア部を包むように配されたトナーシェル部と、を備え、前記トナーシェル部は、前記活性水素含有基の少なくとも一部が架橋剤と反応することにより形成された架橋樹脂を含むトナーを提供する。
【0016】
また前記のような課題を解決するために、本発明は、(a)分散媒及び有機溶剤を反応器に投入し、これらを混合して有機溶剤が分散媒内に複数の島状に分散されているエマルション溶液を形成する工程と、(b)前記反応器に活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を投入し、これらを前記エマルション溶液と混合してトナー微細懸濁液を形成する工程と、(c)前記トナー微細懸濁液から有機溶剤を除去して、トナーコア部を形成する工程と、(d)前記活性水素含有基の少なくとも一部と架橋剤とを架橋反応させて、前記トナーコア部を取り囲むトナーシェル部を形成する工程と、を含むトナーの製造方法を提供する。
【0017】
また前記のような課題を解決するために、本発明は、前記具現例のうちいずれか一つの具現例によるトナーを使用した電子写真用画像形成装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の望ましい具現例に関して詳細に説明する。
【0019】
本具現例によるトナーは、トナーコア部及び前記トナーコア部を包むように配されたトナーシェル部を備える。
【0020】
前記トナーコア部は、活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含み、前記トナーシェル部は、前記活性水素含有基の少なくとも一部が架橋剤と反応することにより形成された架橋樹脂である。
【0021】
まず、活性水素含有基を持つ樹脂について説明する。
【0022】
活性水素含有基は、後述するイソシアネート化合物またはエポキシ化合物などの架橋剤と容易に結合できる水酸基(OH)、メルカプト基(SH)、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を含む。これらのうち、水酸基及び/またはカルボキシル基を持つ樹脂が前記架橋剤との反応に有利である。前記樹脂は、例えば、活性水素含有基を持つポリエステル樹脂でありうる。ポリエステル樹脂は、着色剤の分散性及び低温定着性などの観点で特に望ましい。前記樹脂の活性水素含有基の含有量は、樹脂の酸基含有量と水酸基含有量とを合せた数値であって、0.1ないし2mmol KOH/gであることが望ましい。活性水素含有基の含有量が0.1mmol KOH/g未満ならば、後述するトナーの製造が難しくて帯電性が落ちて望ましくなく、2mmol KOH/gを超過する場合には、製造されたトナーの環境安定性が顕著に低下する可能性があって望ましくない。さらに望ましくは、前記活性水素含有基の含有量は0.15ないし1.2mmol KOH/gである。
【0023】
前記ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを、必要に応じて減圧雰囲気下または触媒の存在下で加熱して重縮合反応させることにより製造できる。多価アルコール成分としては、具体的に、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロールポリオキシプロピレンなどがある。多価カルボン酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に通常的に使われる芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルを含む。かかる芳香族多価酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及び/またはこれらカーボン酸のアルキルエステルがあり、この時、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル基などが使われうる。前記芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルは、単独または2種以上が配合された形態に使われうる。
【0024】
前記活性水素含有基を持つ樹脂の含有量は、トナー組成物全体100重量部に対して50ないし98重量部である。前記含有量が50重量部未満ならば、前記樹脂がトナー組成物を結合させるのに足りなくて望ましくなく、98重量部を超過すれば、前記樹脂以外のトナー組成物含有量が少なくて、トナーとしての機能を発揮し難くて望ましくない。ここで、トナー組成物全体とは、活性水素含有基を持つ樹脂以外に、後述する着色剤、添加剤、架橋樹脂、及び外添剤などをいずれも含む広義の概念である。
【0025】
前記活性水素含有基を持つ樹脂は、数平均分子量が600ないし4,000である。数平均分子量が600未満ならば、溶融粘度が非常に低くて定着温度領域が狭くなって望ましくなく、4,000を超過すれば、架橋剤との反応性が低下し、架橋反応が進んでも高分子量成分が多くなって低温定着性が劣化し、光沢性が低下して望ましくない。
【0026】
着色剤は、着色顔料がそのままで使われてもよいが、着色顔料が樹脂内に分散された着色顔料マスターバッチ形態として使われることが望ましい。このようにマスターバッチ形態として使用することによって、着色剤の表面露出を抑制してトナー粒子の帯電性能を向上させることができる。
【0027】
着色顔料マスターバッチに使われる樹脂としては、前述した活性水素含有基を持つ樹脂が使われてもよく、この他に、他の任意の周知の樹脂が使われてもよい。着色顔料マスターバッチは、着色顔料が均一に分散された樹脂組成物をいい、これは、高温高圧下で着色顔料及び樹脂を混練するか、樹脂を溶剤に溶解して前記形成された溶液に着色顔料を添加した後、高いせん断力を加えて着色顔料を分散させる方法により製造される。本具現例で利用する着色顔料マスターバッチにおいて、着色顔料の含有量は、着色顔料マスターバッチ全体の100重量部に対して10ないし70重量部であり、望ましくは20ないし50重量部である。前記含有量が10重量部未満ならば、製造されたトナーの顔料含有量が少なくて所望の色再現が不可能で望ましくなく、70重量部を超過すれば、マスターバッチ内の顔料分散にバラツキが出る可能性が高くて望ましくない。
【0028】
前記着色顔料は、商業的にしばしば使われる顔料であるブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料及びこれらの混合物のうち適宜に選択して使われうる。
【0029】
これらの顔料の種類には、下記を挙げることができる。すなわち、ブラック顔料は、酸化チタンまたはカーボンブラックなどが使われうる。シアン顔料は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキン化合物、または塩基染料レーク化合物などが使われる。具体的にC.I.顔料ブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、または66などが使われうる。マゼンタ顔料は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーク化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、またはペリレン化合物が使われる。具体的に、C.I.顔料レッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、または254などが使われうる。イエロー顔料は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体、またはアリルイミド化合物が使われる。具体的に、C.I.顔料イエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、または168などが使われうる。
【0030】
前記着色剤の含有量は、トナーを着色して現像により可視画像を形成するのに十分な程度ならばよいが、例えば、樹脂100重量部を基準として3ないし15重量部であることが望ましい。前記含有量が3重量部未満ならば、着色効果が不十分で望ましくなく、15重量部を超過すれば、トナーの電気抵抗が低くなるため、十分な摩擦帯電量を得られなくて汚染を発生させるので望ましくない。
【0031】
一方、添加剤は帯電制御剤、離型剤、またはこれらの混合物を含む。
【0032】
帯電制御剤としては、負帯電性帯電制御剤及び正帯電性帯電制御剤がいずれも使われ、負帯電性帯電制御剤としては、クロム含有アゾ錯体またはモノアゾ金属錯体などの有機金属錯体またはキレート化合物;クロム、鉄、亜鉛などの金属含有サリチル酸化合物;及び芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との有機金属錯体が使われ、公知のものならば特別に制限されない。また、正帯電性帯電制御剤としては、ニグロシンとその脂肪酸金属塩などで改質された生成物、トリブチルベンジルアンモニウム1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩及びテトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩などの4級アンモニウム塩を含むオニウム塩などが単独で、または2種以上混合されて使われうる。これらの帯電制御剤は、静電気力によりトナーを安定的で速い速度で帯電させて、前記トナーを現像ローラ上に安定して支持させる。
【0033】
トナーに含まれる帯電制御剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部の範囲以内である。前記帯電制御剤の含有量が0.1重量部未満である場合には、トナーの帯電速度が遅く帯電量が多くなくて、帯電制御剤としての機能を発現するには足りなくて望ましくなく、10重量部を超過する場合には、過度に帯電量が多くなって、画像に歪曲が発生しうる問題点があって望ましくない。
【0034】
離型剤は、トナー画像の定着性を向上させるものであって、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレンなどのポリアルキレンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、パラフィンワックスなどが前記離型剤として使われうる。トナーに含まれる離型剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体の100重量部に対して0.1重量部ないし30重量部の範囲内である。前記離型剤の含有量が0.1重量部未満である場合には、オイルを使用せずにトナー粒子を定着させることができるオイルレス定着を実現し難くて望ましくなく、30重量部を超過する場合には、保管時にトナーのかたまり現象を引き起こす恐れがあって望ましくない。
【0035】
また、前記添加剤は、高級脂肪酸や脂肪酸アミド、またはその金属塩などをさらに含むことができる。これらの高級脂肪酸、脂肪酸アミド、及びその金属塩は、現像特性の劣化を防止して高品質の画像を得るために適宜に使われうる。
【0036】
前記活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤は、後述する製造方法によってトナーコア部を構成する。
【0037】
前記トナーコア部に含まれた樹脂の活性水素と架橋反応する架橋剤としては、イソシアネート化合物やエポキシ化合物などが使われるが、イソシアネート化合物がさらに望ましい。
【0038】
前記イソシアネート化合物としては、任意の公知の芳香族、脂肪族及び/または脂環族イソシアネート化合物と、3官能性イソシアネート化合物と、ポリオール及びジイソシアネート化合物のイソシアネート官能性付加物とが使われうる。一般的に有用なジイソシアネート化合物としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ビフェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ビス−シクロヘキシルジイソシアネート、テトラメチレンキシレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス−(4−イソシアネートシクロヘキシル)−メタン、4,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3,5−ベンゼントリイソシアネート、2,4,6−トルエントリイソシアネート、トリオール及びジイソシアネートの三官能性付加物、及び/または前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム、ジメチルピラゾールなどでブロック化したイソシアネートが使われてもよく、前記ポリイソシアネートが2種以上併用されて使われてもよい。ブロック共重合されたイソシアネートを使用する場合には、ブロック化した基を解離させるために、解離温度まで加圧して使用することもできる。
【0039】
エポキシ化合物としては、2ないし5個のエポキシ官能基を持つジフェニロールプロパン型エポキシ樹脂、ジフェニロールメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジアミン型エポキシ樹脂、ジアシッド型エポキシ樹脂、及びジオール型エポキシ樹脂などが使われうる。
【0040】
前記架橋剤の含有量は、一般的に使われる樹脂の活性水素含有基1molに対して0.004ないし0.15molであり、望ましくは0.008ないし0.075molである。
【0041】
前記架橋剤含有量が0.004mol未満である場合には、架橋が不十分で耐熱保管性が十分でなく、耐ホットオフセット性が劣化して定着範囲が狭くなって望ましくなく、0.15molを超過する場合には、架橋による高分子量成分が多くなって低温定着性が劣化するので望ましくない。
【0042】
前記樹脂の活性水素と前記架橋剤との架橋反応により架橋樹脂が形成され、かかる架橋反応は、主に前記トナーコア部の表面付近で起きてトナーシェル部を形成する。これにより、前記トナーシェル部は、架橋樹脂で形成される。結果として、トナーコア部とシェル部とで構成されたトナー複合体が形成され、分子量の大きさを考慮する時、トナーコア部に含まれた樹脂は相対的に低分子量、トナーシェル部の架橋樹脂は相対的に高分子量になる。かかる構成を持つことによって、完成されたトナーは、高温の保管環境下でもトナーコア部とトナーシェル部との複合体構造が維持されてトナー粒子間の凝集が起きず、低温の定着環境下でもトナーシェル部が容易に破壊されて円滑な定着が可能になる。したがって、高温保管安定性と低温定着性とを同時に確保できる。
【0043】
一方、前記トナー複合体に外添剤がさらに添加される。外添剤は、トナーの流動性を向上させるか、帯電特性を調節するためのものであって、大粒径のシリカ、小粒径のシリカ、及びポリマービーズを含む。
【0044】
以下、本具現例によるトナーの製造方法について詳細に説明する。
【0045】
まず、極性溶媒、界面活性剤、及び選択的に増粘剤などを反応器に投入した後、攪拌及び加熱して、前記混合液に含まれた固形分を十分に溶解させることによって分散媒を製造する。前記固形分が完全に溶解されたことを確認した後、前記分散媒に有機溶剤を添加して、有機溶剤が分散媒内に複数の微細島状に分散されている乳白色のエマルション溶液を製造する。
【0046】
次いで、前記反応器に活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を投入し、これらを前記エマルション溶液と混合してトナー微細懸濁液を形成する。この時、可溶性固形分は、分散媒内に分散されている複数の微細島状の有機溶剤に溶解される。したがって、かかる方法を使用する場合には、バルク状の有機溶剤に樹脂などを投入して、可溶性固形分を溶解させる従来の方法を使用する場合に比べて有機溶剤の使用量を低減させるだけではなく、固形分の溶解時間も短縮できる。また、前記エマルション溶液が含まれている反応器に樹脂、着色剤、及び添加剤を投入する順序を入れ替えることによって、完成されたトナー粒子におけるトナーの構成成分の相対的な配置位置を調節できる。例えば、離型剤を先ず投入し、樹脂を後で投入する場合には、離型剤を樹脂が包むようになって、低温で粘着性を持つ離型剤がトナー粒子の外部に露出されなくなるので、画像形成装置の各種ローラ(フィードローラ、転写ローラなど)にトナー粒子が付着されてトナー残留物が生じる従来技術の問題点を防止できる。一方、樹脂を先ず投入して離型剤を後で投入する場合には、離型剤が樹脂の表面に露出されて、完成されたトナー粒子が高光沢を維持するという利点がある。
【0047】
次いで、前記トナー微細懸濁液を攪拌及び加熱しつつ、望ましくは、部分減圧状態で有機溶剤を除去する。加熱温度は、60ないし90℃であることが望ましい。結果として、トナーコア部を得る。
【0048】
次いで、架橋剤を前記反応器に投入して前記活性水素含有基(具体的には、活性水素)の一部と架橋反応させることによって、前記トナーコア部を取り囲むトナーシェル部を形成する。結果として、トナーコア部とトナーシェル部構造とのトナー複合体を得る。
【0049】
最後に、前記トナー複合体を冷却させた後、ろ過装置などを利用して分離した後、これを洗浄及び乾燥してトナー粒子を得る。
【0050】
前記のような構成を持つトナーの製造方法によれば、エマルション溶液の形成時、有機溶剤が分散媒内に規則的な形状の微細島状に分散され、この有機溶剤の島にトナー構成成分らが添加されてトナー複合体を構成するようになるので、別途の凝集及び融着過程が不要になって、製造工程が単純化されてコストダウンすることになる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、必要な場合に凝集及び/または融着過程がさらに含まれてもよい。
【0051】
前記製造方法で使われる有機溶剤は揮発性であり、極性溶媒より低い沸点を持って極性溶媒と混合されないものであって、例えば、メチルアセテートやエチルアセテートなどのエステル系;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系;ジクロロメタンやトリクロロエタンなどの炭化水素系;及びベンゼンなどの芳香族炭化水素系から選択された1種以上でありうる。
【0052】
極性溶媒は、水、グリセロール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールなどから選択された1種以上であり、水が望ましい。
【0053】
増粘剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、キトサン、及びアルギン酸ナトリウムなどから選択された1種以上であり、ポリビニルアルコールが望ましい。
【0054】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のうち選択された1種以上が使われうる。
【0055】
非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノリルフェニルエーテル、エトキシレート、リン酸ノリルフェノール、トリトン、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなどがあり、陰イオン性界面活性剤としては、硫酸ドデシルナトリウム、硫酸ドデシルベンゼンナトリウム、硫酸ドデシルナフタレンナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル硫酸塩、スルホン酸塩などがあり、陽イオン性界面活性剤としては、塩化アルキルベンゼンジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルアンモニウムなどがあり、両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン系両性界面活性剤、レシチン、タウリン、ココアミドプロピルベタイン、ココアンホ二酢酸ジナトリウムなどがある。前述した界面活性剤は、単独または2種以上が一定割合で混合されて使われうる。
【0056】
本具現例による製造方法により製造されたトナーは、電子写真方式の画像形成装置に使われうる。ここで、電子写真方式の画像形成装置とは、レーザープリンタ、コピー機、またはファクシミリなどを意味する。
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
製造例
(活性水素含有基を持つポリエステル樹脂の合成)
製造例1:ポリエステル樹脂1の合成
攪拌器、温度計、及びコンデンサーが設けられた体積3リットルの反応器を、熱伝逹媒体のオイル槽内に設置した。このように設けられた反応器内にいろいろな単量体、すなわち、ジメチルテレフタレート50g、ジメチルイソフタレート47g、1,2−プロピレングリコール80g、及びトリメリット酸3gを投入した。次いで、触媒として、酸化ジブチルスズを0.09g(すなわち、単量体全体重さに対して500ppmの比率)を投入した。次いで、150rpmの速度で反応器内の混合物を攪拌しつつ反応温度を150℃まで高めた。次いで、約6時間反応を進めた後、反応温度を220℃まで高めた。次いで、副反応物の除去のために反応器を0.1torrに減圧し、前記圧力で5時間維持させて反応を完了した。その結果として、ポリエステル樹脂1を得た。
【0059】
反応完了後、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を利用してポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は41℃であった。また、ポリスチレン基準試料を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography)によりポリエステル樹脂1の数平均分子量を測定し、その結果、数平均分子量は1,300であった。滴定により測定した結果、活性水素含有基の含有量は0.4mmol
KOH/gであった。
【0060】
製造例2:ポリエステル樹脂2の合成
副生成物の除去工程を11時間行ったことを除いては、製造例1と同じ方法でポリエステル樹脂2を製造した。反応完了後、示差走査熱量計(DSC)を利用してポリエステル樹脂2のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は45℃であった。また、ポリスチレン基準試料を使用してGPCによりポリエステル樹脂2の数平均分子量を測定し、その結果、数平均分子量は2、500であった。滴定により測定した結果、活性水素含有基は0.2mmol
KOH/gであった。
【0061】
(着色顔料マスターバッチの製造)
製造例3:ブラック顔料マスターバッチ1の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1とカーボンブラック顔料(ドイツ・デグサ社製、NIPEX 150)を重量基準に8:2の割合で混合した。次いで、ポリエステル樹脂1 100重量部に対してエチルアセテート50重量部を添加し、前記混合物を約60℃に加熱した後、ニーダーで60分間混合した。次いで、前記混合物を、真空装置が連結された二軸押出器を利用して50rpmの速度で混合しつつ、真空装置を利用して溶媒であるエチルアセテートを除去することによって、ブラック顔料マスターバッチ1を得た。
【0062】
製造例4:シアン顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1と、シアン顔料(C.I.顔料ブルー15:3、色指数No.74160、大日本インキ社(DIC)製)とを混合して使用したという点を除いては、製造例3と同じ方法でシアン顔料マスターバッチを製造した。
【0063】
製造例5:イエロー顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1と、イエロー顔料(トナーイエローHG、ドイツ・クラリアント社製)を混合して使用したという点を除いては、製造例3と同じ方法によってイエロー顔料マスターバッチを製造した。
【0064】
製造例6:ブラック顔料マスターバッチ2の製造
製造例2で合成したポリエステル樹脂2を使用するという点のみを除いては、製造例3と同じ方法によってブラック顔料マスターバッチ2を製造した。
【0065】
(トナー粒子の製造)
実施例1
コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器を装着した加圧可能な体積1リットルの反応器に、蒸溜水400g、ポリビニルアルコール10g(P−24;DC Chemical Co.製、韓国・ソウル所在)、及び陰イオン性界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウム5g(Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を入れて、70℃の温度で500rpmの速度で加熱及び攪拌して十分に固形分を溶解させた。結果として、分散媒を得た。前記分散媒内の固形分が完全に溶解されたことを確認した後、メチルエチルケトン100g(Aldrich Chemical Company製、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を混合して乳白色のエマルション溶液を得た。
【0066】
次いで、前記反応器に製造例1で合成したポリエステル樹脂1 60g、製造例3で製造したブラック顔料マスターバッチ40g、帯電制御剤2g(N−23;HB Dinglong社製、中国所在)、及びパラフィンワックス8gを順次に投入し、これらを前記エマルション溶液と共に還流状態で1000rpmの攪拌速度及び75℃の温度で5時間混合した。
【0067】
次いで、攪拌速度を300rpmに減速し、反応器内の温度を90℃に加熱しつつ100mmHgの部分減圧状態で、有機溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。4時間経過後、収集されたメチルエチルケトンの量を確認して、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した後、60℃に冷却させた。
【0068】
次いで、前記反応器に樹脂の活性水素含有基の含有量1molに対して、0.01molに該当するイソシアネート架橋剤0.84g(BI 7986、Baxenden Chemical製、イギリス所在)を投入し、コンデンサーを除去した後で反応器を密閉させた。次いで、前記内容物を60℃の温度で300rpmの攪拌速度で1時間攪拌した後、1000rpmの速度で加速攪拌しつつ120℃まで昇温させて2時間さらに攪拌した。結果として、トナーを得た。
【0069】
次いで、反応器内の温度を25℃に冷却し、通常のろ過装置を使用してトナーを分離させた後、分離されたトナーを1N塩酸水溶液で洗浄し、蒸溜水で5回再洗浄して界面活性剤などをいずれも除去した。次いで、洗浄が完了したトナー粒子を流動層乾燥器で40℃の温度で5時間乾燥して、乾燥されたトナー粒子を得た。
【0070】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.7μmであり、80%スパン値は0.55であり、円形度は0.982であった。
【0071】
実施例2
樹脂の活性水素含有基の含有量1molに対して、0.002molに該当するイソシアネート架橋剤0.17g(BI 7986、Baxenden Chemical製、イギリス所在)を投入したという点を除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0072】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.8μmであり、80%スパン値は0.59であり、円形度は0.984であった。
【0073】
実施例3
有機溶剤として、メチルエチルケトンの代りにエチルアセテートを使用したという点を除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0074】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は7.1μmであり、80%スパン値は0.60であり、円形度は0.986であった。
【0075】
実施例4
製造例3で製造したブラック顔料マスターバッチ40gの代りに、製造例4で製造したシアン顔料マスターバッチ20gを使用したという点と、製造例1で合成したポリエステル樹脂1を80g使用したという点とを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0076】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.9μmであり、80%スパン値は0.64であり、円形度は0.984であった。
【0077】
実施例5
製造例3で製造したブラック顔料マスターバッチ40gの代りに、製造例5で製造したイエロー顔料マスターバッチ20gを使用したという点と、製造例1で合成したポリエステル樹脂1を80g使用したという点とを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0078】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.4μmであり、80%スパン値は0.61であり、円形度は0.988であった。
【0079】
実施例6
製造例1で合成したポリエステル樹脂1及び、製造例3で製造したブラック顔料マスターバッチ1の代りに、製造例2で合成したポリエステル樹脂2及び製造例6で製造したブラック顔料マスターバッチ2をそれぞれ使用したという点を除いては、実施例1と同じ方法でトナーを製造した。
【0080】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.6μmであり、80%スパン値は0.59であり、円形度は0.978であった。
【0081】
実施例7
樹脂の活性水素含有基の含有量1molに対して、0.2molに該当するイソシアネート架橋剤16.8g(BI 7986、Baxenden Chemical製、イギリス所在)を投入したという点を除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.4μmであり、80%スパン値は0.57であり、円形度は0.991であった。
【0082】
比較例1
実施例1で、架橋剤を投入して架橋反応を進める過程を省略したという点を除いては、実施例1と同じ方法でトナーを製造した。
【0083】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.8μmであり、80%スパン値は0.59であり、円形度は0.989であった。
【0084】
前記実施例及び比較例で、体積平均粒径はコールターマルチサイザー(Coulter Multisizer3)で測定した。前記コールターマルチサイザーにおいて、アパーチャ(開口)は100μmを使用し、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社)50〜100mlに界面活性剤を適正量添加し、これに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって試料を製造した。
また、80%スパン値は粒子のサイズ分布を規定する指数であって、体積を基準に10%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して小さな粒子から体積を累積する場合、総体積の10%に該当する粒径をd10、50%に該当する粒径をd50、90%に該当する粒径をd90に定義し、下記の数式1によりその値を求めた。
[数式1]
80%スパン値=(d90−d10)/d50
【0085】
ここで、スパン値が小さいほど狭い粒子分布を表し、大きいほど広い粒子分布を表す。
また円形度は、FPIA−3000(シスメックス社製、日本所在)を利用して測定した。FPIA−3000を利用した円形度測定において、測定試料の製造は、蒸溜水50〜100mlに界面活性剤を適正量添加し、これにトナー粒子10〜20mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって行われた。
【0086】
円形度は、下記の数式2によりFPIA−3000で自動的に求められる。
[数式2]
円形度(circularity)=2×(面積×π)1/2/周囲長
【0087】
前記式で、面積(area)は投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は投影されたトナーの周囲の長さを意味する。この値は0〜1値を持つことができ、1に近いほど球形を意味する。
【0088】
一方、樹脂の評価方法は下記の通りである。
【0089】
ガラス転移温度(Tg、℃)は、示差走査熱量計(Netzsch社製)を使用して試料を10℃/分の加熱速度で20℃から200℃まで昇温させた後、20℃/分の冷却速度で10℃まで急冷させた後、また10℃/分の加熱速度で昇温させて測定した。得られた吸熱曲線付近のベースラインとの各接線の中央値をTgとした。
【0090】
活性水素含有基の含有量は、酸基含有量と水酸基含有量とを合せた値であって、次のように求める。
【0091】
まず、酸基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gをジクロロメタン100mlに溶解させた後で冷却させて、0.1N KOHメチルアルコール溶液で、電位差滴定装置(Metrohm 736 GP
Titrino、Metrohm社製)を利用して滴定し、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S(ml)と、滴定に使用した樹脂の重さW(g)とを測定して、下記の数式3により求める。
[数式3]
酸基含有量(mmol KOH/g)=S/(W×10)
【0092】
次いで、水酸基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gに無水酢酸1〜2g、ピリジン3〜4gを混合して90〜100℃で1時間加熱した後、冷却する。これに水1〜2mlを投入して、反応しない無水酢酸を分解させる。これにジクロロメタン100mlを入れて溶解させた後、0.1N KOHメチルアルコール溶液で酸価測定と同じ方法で滴定して、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S’(ml)と、滴定に使用した樹脂の重さW’(g)とを測定する。また、樹脂だけない状態でブランク(blank)実験を施して滴定に使われた0.1N KOH使用量B(ml)を測定し、下記の数式4により水酸基含有量を求める。
[数式4]
水酸基含有量(mmol KOH/g)=(B−S’)/(W’×10)+酸基含有量
【0093】
以下、前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子を、下記の方法で評価した。
【0094】
(高温保管安定性)
前記各実施例または比較例で製造したトナー粒子9.75g、シリカ(TG 810G;キャボット社製)0.2g、及びシリカ(RX50;デグサ社製)0.05gを25mlのガラス瓶に入れて、50℃/80%水分条件で72時間放置した後、これを肉眼で観察することによって高温保管安定性を評価した。前記評価結果をそれぞれ○、△、×で表したが、これらそれぞれは下記の意味を持つ。
○:凝集トナーがなく、したがって全く問題がない
△:軽い凝集が在るが、振ればすぐなくなって実用上問題がない
×:強い凝集体が在り、容易になくならずに実用上問題がある
【0095】
(定着温度範囲)
前記各実施例または比較例で製造したトナー粒子9.75g、シリカ(TG 810G;キャボット社製)0.2g、及びシリカ(RX50;デグサ社製)0.05gを混合して製造したトナー組成物を使用して、三星CLP−510プリンタで30mmx40mmソリッド(Solid)像の未定着画像を集めた。次いで、定着温度を任意に変更できるように改造された定着試験器で、定着ローラの温度を変化させつつ前記未定着画像の定着性を評価した。
【0096】
前記のような評価結果を下記の表1に表した。
【表1】

【0097】
表1を参照すれば、高温保管安定性は実施例1〜7で製造されたトナーの場合にはいずれも良好であると分かったが、比較例1で製造されたトナーの場合には、不良と分かった。また定着性は、実施例1〜6で製造されたトナーの場合には、低温定着性と高温定着性とがいずれも良好であると分かったが、実施例7で製造されたトナーの場合には、実施例1〜6の場合に比べて低温定着性が劣化し、高温定着性は改善されると分かった。また、比較例1で製造されたトナーの場合は、実施例7の場合とは逆に、実施例1〜6の場合に比べて低温定着性が改善され、高温定着性は劣化すると分かった。したがって、架橋剤を適正量使用する場合には、架橋剤を全く使用しないか、または架橋剤の使用量が適正範囲を外れる場合に比べて、低温定着性及び高温定着性を同時に確保できる。
【0098】
以上で本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含むトナーコア部と、
前記トナーコア部を包むように配されたトナーシェル部と、を備え、
前記トナーシェル部は、前記活性水素含有基の少なくとも一部が架橋剤と反応することにより形成された架橋樹脂を含むトナー。
【請求項2】
前記活性水素含有基を持つ樹脂は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を持つポリエステル樹脂である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記架橋剤は、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項1に記載のトナー。
【請求項4】
前記架橋剤の含有量は、前記活性水素含有基1mol当り0.004ないし0.15molである請求項1に記載のトナー。
【請求項5】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチ形態である請求項1に記載のトナー。
【請求項6】
前記添加剤は、帯電制御剤及び離型剤のうち少なくとも一つを含むトナー。
【請求項7】
円形度が0.970ないし1.000で、体積平均粒径が2.0ないし10.0μmであり、80%スパン値が0.8以下である請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のトナー。
【請求項8】
(a)分散媒及び有機溶剤を反応器に投入し、これらを混合して有機溶剤が分散媒内に複数の島状に分散されているエマルション溶液を形成する工程と、
(b)前記反応器に活性水素含有基を持つ樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を投入し、これらを前記エマルション溶液と混合してトナー微細懸濁液を形成する工程と、
(c)前記トナー微細懸濁液から有機溶剤を除去して、トナーコア部を形成する工程と、
(d)前記活性水素含有基の少なくとも一部と架橋剤とを架橋反応させて、前記トナーコア部を取り囲むトナーシェル部を形成する工程と、を含むトナーの製造方法。
【請求項9】
前記トナーコア部とトナーシェル部との複合体を分離し、これを洗浄及び乾燥させてトナー粒子を形成する工程をさらに含む請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記活性水素含有基を持つ樹脂は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を含むポリエステル樹脂である請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記架橋剤は、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記架橋剤の含有量は、前記活性水素含有基1mol当り0.004ないし0.15molである請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチ形態で使われる請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項14】
前記添加剤は、帯電制御剤及び離型剤のうち少なくとも一つを含む請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項15】
前記分散媒は、極性溶媒、界面活性剤、及び増粘剤のうち少なくとも一つを含む請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載のトナーを使用した電子写真用画像形成装置。

【公表番号】特表2011−501232(P2011−501232A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530931(P2010−530931)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006256
【国際公開番号】WO2009/054679
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】