説明

コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物およびその製造方法

【課題】糖ペプチド合成の際の最後の脱保護で塩基性条件を必須としない新規なコア4構造を有するO-結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物およびその化学的合成方法の提供。
【解決手段】N-アセチルガラクトサミンの3位と6位水酸基にガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)が結合し、N-アセチルガラクトサミン残基、およびラクトサミン残基のすべての水酸基が、ベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、トレオニン残基またはセリン残基のアミノ基が9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護された、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖機能の解明に有用なコア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然に存在するタンパク質の半数以上は糖鎖が結合した糖タンパク質として存在するといわれている。この糖鎖はタンパク質の構造や物理化学的性質を保持する役割の他に、糖タンパク質が他の生体分子との相互作用のなかで正しくその機能を果たすためのシグナルあるいは機能制御の役割を担っているものと考えられている。糖タンパク質糖鎖は主にアスパラギン残基の側鎖アミド上に糖鎖が結合するN-結合型糖鎖とセリンやトレオニンの側鎖水酸基に糖鎖が結合するO-結合型糖鎖に大別される。後者はアミノ酸水酸基とαグリコシド結合したN-アセチルガラクトサミンを共通とし、さらに生合成過程において糖残基付加がなされ、大きな糖鎖へと変換されるが、付加する糖残基、結合位置、グリコシド結合様式(立体配置)によって基本分岐構造であるコア1−8型に分類される。
【0003】
O-結合型糖鎖をもつ典型的な糖タンパク質としてムチンが知られている。ムチンは400-1000kDaに及ぶ巨大な分子量をもつ糖タンパク質であり、その大分子量の大半は糖鎖に由来する。タンパク質部分には、8アミノ酸残基からなる繰り返し配列を基本骨格とするMUC5ACをはじめ169アミノ酸の繰り返しを持つMUC6までさまざまな長さの基本構造が知られ、ヒトムチンでは10数種のMUC構造の存在が報告されている。これらの配列には多くのトレオニン残基とセリン残基が含まれており、その大部分に上記O-結合型糖鎖が結合して糖鎖クラスターを呈している。ムチンにおけるこれらの構造は高い親水性を保持するものであることから、粘膜の乾燥からの保護や、病原性微生物からの保護、さらに機械的な損傷からの保護のためにその役割があるものと考えられている。粘膜表面に存在するムチンばかりでなく、例えば乳汁などに分泌されるムチンも多くは組織や個体の保護を目的として存在しているものと思われている。
【0004】
一方、ムチンあるいはムチン様糖タンパク質が、ガン化や悪性化を生じた細胞から発現される場合、ムチン自身の発現量の変化とともに、その結合している糖鎖構造に大きな変化が現れることが知られている。発現する糖鎖は正常細胞のそれと異なり不完全なものであったり、糖鎖の伸長に関わる糖転移酵素の異常な発現により、長大なN-アセチルラクトサミン繰り返し構造が付加したものであったりする。これらは腫瘍マーカーとして免疫学的な診断の基盤となっている。一方、異常糖鎖の発現は診断のみでなく、免疫に着目した療法やワクチンの開発につながるものとして注目されている。クラスター状で存在する糖鎖の構造は均質なものではなく、いくつかのコア構造に属する糖鎖群の混在したものである。
【0005】
したがって、糖鎖機能を応用する新しい生体制御技術の開発をめざすには先ず糖鎖構造の定性的および定量的な変化を的確にとらえる方法を確立することが必須の要件となる。現在マススペクトルを活用した糖タンパク質の構造解析法が種々研究されている。それにより、糖タンパク質の分子量を知ることができるばかりでなく、糖鎖の構成および結合様式までを明らかにできるようになった。
【0006】
これらの研究を遂行する上で確定した糖鎖構造をもつ、均一な構造を有する糖タンパク質の安定的な取得は不可欠である。しかしながら、極微量にしか得られない天然の糖タンパク質にこれを求めることは困難である。糖タンパク質の化学合成法は構造解析のための試料を提供するばかりでなく、糖鎖機能を応用するワクチン開発などの技術につながるため、その化学合成法の確立が重要である。
【0007】
本発明で対象とするコア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物は近縁のコア2型、コア3型糖鎖構造を持つものとともに、嚢胞性線維症患者の気管支ムチン、ヒト大腸がん細胞由来ムチン、ヒト胎便ムチン、ヒツジ胃ムチンなどからその存在が見いだされている糖鎖構造を有するが、その生理的な意義はまだ不明である。ムチン型糖鎖の構造上の多様性はその構造解析ばかりでなく生物現象の解析をも困難にしており、糖鎖生物学研究や応用面での進展の大きな障害となっている。
【0008】
コア4型糖鎖関連の糖アミノ酸複合体化合物の化学合成法はすでに提案されている〔非特許文献1〕。それによると、糖鎖水酸基の保護基としてアセチル基が使用されているため、糖ペプチド合成に用いたときには最後の脱保護で塩基性条件が必須となる。強い塩基性条件ではアミノ酸部のラセミ化やβ脱離などの副反応が懸念される。また糖転移酵素基質として糖鎖のみの誘導体の合成とその酵素化学的な研究が報告されている〔非特許文献2〕。
【非特許文献1】J. Chem. Soc., Perkin 1, 1997, 2359-2368.
【非特許文献2】Carbohydr. Lett. 2001, 4, 71-76.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のコア4構造を有するO-結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物が有する、前記課題を解消した新規なコア4構造を有するO-結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物を提供することが目的である。すなわち、Fmoc法による糖ペプチドの固相合成に用いたときに、最後の脱保護で塩基性条件を必須としないコア4構造を有するO-結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物およびその化合物の化学的合成方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、構造式(1)で表される、N-アセチルガラクトサミンの3位と6位水酸基に結合し、ラクトサミンガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)が残基のすべての水酸基が、ベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、トレオニン残基またはセリン残基のアミノ基が9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護された、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物、である。
【化13】

(式中、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Fm
ocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、Rは水素原子またはメチル
基を表す。)
【0011】
また、本発明は、下記の工程からなる前記構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物の製造方法、である。
(第一工程)アミノ化合物を用いて、構造式(2)で表される、ガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)のフタロイル化物3の脱フタロイル化を行い、構造式(3)で表される、アミノ体4を合成し、
【化14】

(式中、Bnはベンジル基を、Phthはフタロイル基を、SiPh2Butはt
−ブチルジフェニルシリル基を表す。)
【0012】
(第二工程)該アミノ体4にトリクロロアセチルクロリドを付加して、構造式(3)で表される、トリクロロアセチル化体5を合成し、
【化15】

(式中、Bnはベンジル基を、SiPh2Butはt−ブチルジフェニルシリル基
を、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0013】
(第三工程)該トリクロロアセチル化体5を、好ましくは弱酸の存在下、テトラブチルアンモニウムフルオリドで処理して、t−ブチルジフェニルシリル基の脱離を行い、構造式(4)で表される、ヘミアセタール化体6を合成し、
【化16】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を表す。)
【0014】
(第四工程)該ヘミアセタール化体6、好ましくはジエチルアミノサルファートリフルオリドを用いてフッ素化して、構造式(5)で表される、フッ素化体7を合成し、
【化17】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を表す。)
【0015】
(第五工程)該フッ素化体7を、構造式(6)で表される、単糖アミノ酸誘導体8、9と縮合して、構造式(7)で表される、ベンジル基およびベンジリデン基を有するコア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物10、11を合成し、
【化18】

(式中、Phはフェニル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−
フルオレニルメトキシカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
【化19】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキ
シカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
【0016】
(第六工程)該糖鎖関連化合物10、11を、好ましくは強酸で処理して、ベンジリデン基を除去して構造式(8)で表される、コア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物12、13を合成し、
【化20】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Rは水素原子
またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、A
llはアリル基を表す。)
【0017】
(第七工程)該糖鎖関連化合物12、13を、構造式(9)で表される、ガラクトース残基およびN−アセチルグルコサミン残基のすべての水酸基がベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、N−アセチルグルコサミン残基のN−アセチル基がN−トリクロロアセチル基であって、該残基の1位がフッ素原子で置換された二糖類14によりグリコシド化して、構造式(10)で表される、ベンジル基およびベンジリデン基を有するコア4型構造を有する5糖性のO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物15、16を合成し、
【化21】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を表す。)
【化22】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキ
シカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
【0018】
(第八工程)該糖鎖関連化合物15、16から金属還元条件下で脱塩素化し、さらにアジド基から変換されたアミノ基をアセチル化して、構造式(11)で表される、トリアセトアミド体17、18を合成する工程である。この反応は、マイクロ波の照射下で行うことが好ましい。
【化23】

(式中、Bnはベンジル基を、Acはアセチル基を、Phはフェニル基を、Rは
水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル
基を、Allはアリル基を表す。)
【0019】
(第九工程)該トリアセトアミド体17、18の脱アリル化を行い、構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物を合成する
【化24】

(式中、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Fm
ocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、Rは水素原子またはメチル
基を表す。)
ことを特徴とする、構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物の製造方法、である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造式(1)で表されるコア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物1、2は、Fmoc法による糖ペプチドの固相合成のための鍵中間体として有用な新規な糖鎖化合物である。該糖鎖化合物の保護基は、ペプチド類の化学的安定性を損なわない酸条件で糖のグリコシド結合を侵すことなく除去できる。
また、本発明の製造方法は、糖鎖関連化合物12、13の糖供与体として、構造式(9)で表される二糖類14を用いるため、グルコシド化反応の際の副生物が少なく、最終生成物である、構造式(1)で表されるコア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物1、2を好収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物1,2は、N-アセチルガラクトサミンの3位と6位水酸基にガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)が結合した単位を有する、新規化合物である。該糖鎖関連化合物は、糖水酸基の保護基としてベンジル基およびベンジリデン基を有する点に特徴がある。これらの保護基はペプチド鎖の化学的安定性を損なわない酸性条件下で、糖のグリコシルド結合をも侵すことなく脱離させることができる。化合物1は、セリン誘導体であり、タンパク質中のセリン残基がコア4型糖鎖によってグリコシル化された糖アミノ酸構造を表すものである。化合物2は、トレオニンがグリコシル化されたものに相当する。
【0022】
本発明の構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物1,2を製造する方法、すなわち、ラクトサミンのアミノ体4を合成する第一工程から、ラクトサミンのフッ素化体7を合成する第四工程、および、該フッ素化体7を二糖類で縮合してグルコシド化する第五工程を経て、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物を合成する第九工程に至る方法を以下に説明する。なお、各工程の反応は一般的な条件で実施可能である。
【0023】
第一工程は、アミノ化合物を用いて、構造式(2)で表される、フタロイル化物3の脱フタロイル化により、構造式(3)で表される、アミノ体4を合成する工程である。フタロイル化物3は、文献(Biosci. Biotechnol. Biochem. 2002, 66, 1904-1914.)に記載された既知化合物である。アミノ化合物はヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどのジアミンが好適であり、エチレンジアミンが特に好適である。ブチルアミンなどのアルキルアミンを用いることもできる。溶媒は1−ブタノールなどのアルコールが好適であるが、これに限定されない。反応は不活性ガス雰囲気下、50〜120℃の温度で実施される。
【0024】
第二工程は、該アミノ体4に、トリクロロアセチルクロリドを付加して、構造式(3)で表される、トリクロロアセチル化体5を合成する工程である。該反応はピリジン、ピリジンとジクロロメタンの混合溶媒などを溶媒に用い、50℃以下の低温で実施される。トリクロロアセチルクロリドの代わりに無水トリクロロ酢酸を用いて反応させることもできる。
【0025】
第三工程は、該トリクロロアセチル化体5を、好ましくは弱酸の存在下、テトラブチルアンモニウムフルオリドで処理して、トリクロロアセチル化体6を合成するとともに、該トリクロロアセチル化体6の還元末端アノマー位のt−ブチルジフェニルシリル基などのシリルエーテル型保護基を脱離して、構造式(4)で表される、ヘミアセタール化体6を合成する工程である。該反応は、不活性ガスの雰囲気下、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどの溶媒を用いて、50℃以下の低温で実施される。弱酸は酢酸が好適であるが、その他の有機酸や希塩酸なども使用することができる。また、希釈したフッ化水素酸を用いて、アセトニトリル中で脱シリル化反応を行うこともできるし、ピリジン、フッ化水素塩を代わりに用いることもできる。
【0026】
第四工程は、該ヘミアセタール化体6を、好ましくはジエチルアミノサルファートリフルオリドまたはモルフォリノサルファートリフルオリドを用いて、該ヘミアセタール化体7をフッ素化して、構造式(5)で表される、フッ素化体7を合成する工程である。該反応は不活性ガスの雰囲気下、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エーテルなどを溶媒に用いて、20℃以下の低温で実施される。
【0027】
第五工程は、該フッ素化体7を、構造式(6)で表される、単糖アミノ酸誘導体8、9と縮合して、ベンジリデン保護基を有するコア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物10、11を合成する工程である。単糖アミノ酸誘導体8および9は、それぞれ、文献(Carbohydr. Res. 1995, 269, 227-257.およびCarbohydr. Res. 2000, 325, 132-142.)に記載された既知化合物である。
該フッ素化体7と、該単糖アミノ酸誘導体8または9との縮合は、好ましくは縮合促進剤として、予め調製したビスシクロペンタジエニルジルコノセンジクロリドと過塩素酸銀と粉末モレキュラーシーヴスのジクロロメタン溶液を用いて、低温下に実施すると、立体選択的なグリコシド化が進み、該糖鎖関連化合物10または11が主成分として得られる。縮合促進剤としては、ビスシクロペンタジエニルハフノセンジクロリドなども使用することができる。また、過塩素酸銀の代わりに、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸第一スズを使用してもよい。該反応は、−20〜0℃程度の低温で行うと、副反応が少なく、好ましい。溶媒は、該フッ素化体7および該単糖アミノ酸誘導体8、9を溶解するものであれば、特に限定されないが、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、トルエン、アセトニトリルなどが好適である。
縮合反応生成物をろ過し、ろ液を濃縮し、抽出により、生成物である該糖鎖関連化合物10または11を精製分離する。
【0028】
第六工程は、該糖鎖関連化合物10または11を酸で処理して、ベンジリデン基を除去してコア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物12または13を合成する工程である。強酸は、トリフルオロ酢酸が好適であるが、希塩酸または加熱条件下での80%酢酸なども使用することができる。該反応は80℃以下の低温で実施される。
【0029】
第七工程は、該糖鎖関連化合物12または13を、構造式(9)で表される、ガラクトース残基およびN−アセチルグルコサミン残基のすべての水酸基がベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、N−アセチルグルコサミン残基のN−アセチル基がN−トリクロロアセチル基であって、該残基の1位がフッ素原子で置換された二糖類14によりグリコシド形成反応を行い、ベンジル基およびベンジリデン基を保護基として有するコア4型構造を有する5糖性のO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物15または16を合成する工程である。
該糖鎖関連化合物12または13と、該二糖類14との反応は、好ましくは縮合促進剤として、予め調製したビスシクロペンタジエニルジルコノセンジクロリドと過塩素酸銀と粉末モレキュラーシーヴスのジクロロメタン溶液を用いて、不活性ガス気流下、低温で実施される。
縮合促進剤としては、ビスシクロペンタジエニルハフノセンジクロリドなども使用することができる。また、過塩素酸銀の代わりに、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸第一スズを使用してもよい。該反応は、−30〜0℃程度の低温で行うと、副反応が少なく好ましい。
【0030】
糖鎖関連化合物12または13を受容体として、前記フッ素化体7を糖供与体として用いて、グリコシド形成のために縮合反応を行うと、該フッ素化体7の反応性が高すぎるためか、通常のグリコシド形成反応では可能な4位と6位間の位置選択的な反応ではなく、4位での反応生成物が生成物の40%程度副生する。ところが、該二糖類14を糖供与体として用いると、該副生量が低減し、所望のコア4型構造を有する5糖性のO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物15または16の収率が向上する。よって、該二糖類14の使用は重要である。
【0031】
第八工程は、該糖鎖関連化合物15または16の脱塩素化を金属還元条件下で行い、かつアセチル化してトリアセトアミド体17または18を合成する工程である。反応は、該糖鎖関連化合物15または16を有機溶媒に溶解し、好ましくは過剰の金属亜鉛と酢酸の存在下に、不活性ガス雰囲気下、マイクロ波を照射して行うと反応速度を速めることができる。その後、有機溶媒溶液に好ましくは無水酢酸を加えて、アセチル化する。マイクロ波を照射しない場合は、反応の終結に2日以上要し、大過剰の亜鉛が必要になる。亜鉛の使用量は反応物1mmol当たり10〜50g、好ましくは10〜20gである。マイクロ波の照射は、強度15〜150Wのマイクロ波を0.5〜6時間かけて実施される。
【0032】
第九工程は、該トリアセトアミド体17または18の脱アリル化を行い、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物1または2を合成する工程である。脱アリル化触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒が好適であり、その使用量は5〜20%程度である。脱アリル化反応は、不活性ガス気流下、室温程度の温度で行うと、副反応が少ない。有機溶媒は特に限定されないが、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが好適である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<工程[1]: tert-ブチルジフェニルシリル 2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アミノ-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシド(化合物4)の合成>
tert-ブチルジフェニルシリル 2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)- 3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フタルイミド-b-D-グルコピラノシド(化合物3)(703 mg)の1-ブタノール(25 mL)溶液に、エチレンジアミン(0.75 mL)を加え、アルゴン雰囲気下、90 ℃で2日間攪拌を続けた。反応液を減圧濃縮した後、クロロホルムで希釈した。有機層を分液ロートに移し、水および飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。クロロホルムで溶出して化合物4(603 mg、収率 96%)を得た。
【0034】
<化合物4の同定>
[a]D -5.3° (c = 1.0 クロロホルム)
1H-NMR d: 7.71-7.67, 7.49-7.10 (40H, m, Ar), 5.16 (1H, d, J = 10.5 Hz, PhCH2-), 4.97 (1H, d, J = 11.2 Hz, PhCH2-), 4.76-4.69 (4H, m, 4 PhCH2-), 4.58-4.47 (2H, m, 2 PhCH2-), 4.45 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-1b), 4.39 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.37 (1H, d, J = 7.1 Hz, H-1a), 4.36 (1H, d, J = 12.2 Hz, PhCH2-), 4.26 (1H, d, J = 11.7 Hz, PhCH2-), 4.20 (1H, d, J = 12.2 Hz, PhCH2-), 4.01 (1H, t, J = 9.3 Hz, H-4a), 3.91 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4b), 3.72 (1H, t, J = 8.1 Hz, H-2b), 3.67 (1H, dd, J = 2.9, 11.2 Hz, H-6a), 3.53 (1H, m, H-6a), 3.43-3.37 (3H, m, H-3b, H-5b, H-6b), 3,26-3.21 (2H, m, H-3a, H-6b), 2.91-2.98 (2H, m, H-2a, H-5a), 1.10 (9H, s, tBu).
MALDI TOF MS : calcd for C70H77NO10Si: 1119.53, found 1142.75 (+Na)+,.
元素分析 Calcd. for C70H77NO10Si ; C: 75.04, H: 6.93, N: 1.25, Found C: 75.01, H: 6.83, N: 1.14.
以上の測定結果から、構造式4で表される化合物であることが同定された。
【0035】
<工程[2]: tert-ブチルジフェニルシリル 2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセタミド-b-D-グルコピラノシド(化合物5)の合成>
化合物4(3.43 g)をピリジン(40 mL)に溶かして氷冷し、トリクロロアセチルクロリド(513 mL)を加え氷冷下で1.5時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し、クロロホルムで希釈し、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)で精製し、化合物5(3.23 g, 84%)を得た。
【0036】
<化合物5の同定>
[a]D -3.3° (c = 1.0 クロロホルム)
1H-NMR d: 7.69-7.62, 7.39-7.10 (40H, m, Ar), 6.88 (1H, d, J = 7.8 Hz, -NH), 4.95 (1H, d, J = 10.5 Hz, PhCH2-), 4.94 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.89 (1H, d, J = 7.1 Hz, H-1a), 4.76-4.66 (4H, m, PhCH2-x4), 4.54 (1H, d, J = 10.5 Hz, PhCH2-), 4.52 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.44 (1H, d, J = 7.6 Hz, H-1b), 4.37 (1H, d, J = 12.2 Hz, PhCH2-), 4.33 (1H, d, J = 11.7 Hz, PhCH2-), 4.23 (1H, d, J = 11.7 Hz, PhCH2-), 4.22 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.04 (1H, t, J = 8.8 Hz, H-4a), 3.89 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4b), 3.83 (1H, t, J = 7.8 Hz, H-3a), 3.77 (1H, dd, J = 7.8, 9.8 Hz, H-2b), 3.71 (1H, dd, J = 7.8, 9.8 Hz, H-2b), 3.66 (1H, dd, J = 3.4, 11.2 Hz, H-6a), 3.41 (1H, dd, J = 2.9, 9.8 Hz, H-3b), 3.40-3.37 (1H, m, H-5b), 3.33-3.29 (2H, m, H-6a, H-6b), 3.07-3.05 (1H, m, H-5a), 1.05 (9H, s, tBu).
MALDI TOF MS : calcd for C72H76Cl3NO11Si: 1263.42, found 1286.26 (+Na)+..
元素分析 Calcd. for C72H76Cl3NO11Si ; C : 68.32, H : 6.05, N: 1.11, Found C : 68.51, H : 5.84, N : 1.01.
以上の測定結果から、構造式5で表される化合物であることが同定された。
【0037】
<工程[3]: 2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセタミド-D-グルコピラノース(化合物6)の合成>
化合物5(2.03 g)をテトラヒドロフラン(20 mL)に溶かし、氷冷下で酢酸(917 mL)を加えて15分間撹拌した。その後、1M テトラブチルアンモニウムフルオリドーテトラヒドロフラン溶液(6.41 mL)を加え、一晩撹拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムで希釈し、水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 4:1 - 2 : 1)で精製し、化合物6(1.46 g)を収率89%で得た。
【0038】
<化合物6の同定>
1H-NMR d: 7.70-7.69, 7.44-7.11 (30H, m, Ar), 6.88 (1H, d, J = 7.8 Hz, -NH), 5.33 (1H, brt, J = 3.4 Hz, H-1a), 5.02 (1H, d, J = 11.0 Hz, PhCH2-), 4.94 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.83 (1H, d, J = 11.2 Hz, PhCH2), 4.78 (1H, d, J = 11.0 Hz, PhCH2-), 4.71 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.68 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.53 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.50 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.32 (1H, d, J = 8.1 Hz, H-1b), 4.30 (1H, d, J = 12.6 Hz, PhCH2-), 4.29 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.19 (1H, d, J = 11.7 Hz, PhCH2-), 4.14-4.08 (1H, m, H-2a), 4.02-3.93 (2H, m, H-4a, H-5a), 3.89 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4b), 3.82-3.74 (3H, m, H-2b, H-3a, H-6a), 3.59 (1H, brd, J = 9.8 Hz, H-6a), 3.43-3.34 (4H, m, H-3b, H-5b, H-6b, OH), 3.32-3.28 (1H, m, H-6b).
MALDI TOF MS : calcd for C56H58Cl3NO11 : 1025.30, found 1048.27 (Na)+.
元素分析 Calcd. for C56H58Cl3NO11 ; C : 65.46, H : 5.69, N: 1.36, Found C : 65.73, H : 5.72, N : 1.24.
以上の測定結果から、構造式6で表される化合物であることが同定された。
【0039】
<工程[4]: 2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセタミド-a-D-グルコピラノシルフルオリド(化合物7)の合成>
化合物6(635 mg) をアルゴン下でテトラヒドロフラン(10 mL)に溶かし、氷冷下でジエチルアミノサルファートリフルオリド(121 mL)を加え、1時間撹拌した。反応終了後、メタノールを加え、減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで希釈し、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル 19:1 - 9 : 1)で精製し、化合物7(582 mg, 92%)をa:b = 19:1の混合物で得た。
【0040】
<化合物7の同定>
1H-NMR d: 7.36-7.14 (30H, m, Ar), 6.54 (1H, d, J = 8.1 Hz, -NH), 5.75 (1H, dd, J = 2.4, 53.7 Hz, H-1a), 5.03 (1H, d, J = 11.0 Hz, PhCH2-), 4.96 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.84 (1H, d, J = 11.2 Hz, PhCH2), 4.76 (1H, d, J = 11.2 Hz, PhCH2-), 4.72-4.67 (2H, m, 2PhCH2-), 4.66 (1H, d, J = 8.3 Hz, H-1b), 4.63 (1H, d, J = 11.2 Hz, PhCH2-), 4.56 (1H, d, J = 12.0 Hz, PhCH2-), 4.54 (1H, d, J = 11.5 Hz, PhCH2-), 4.38-4.36 (4H, m, 4PhCH2-), 4.24 (1H, d, J = 11.3 Hz, PhCH2-), 4.15 (1H, t, J = 9.5 Hz H-2a), 3.92-3.89 (2H, m, H-4b, H-5a), 3.86 (1H, brd, J = 11.4 Hz, H-2b), 3.79-3.72 (2H, m, H-3a, H-6a), 3.56 (1H, dd, J = 1.22, 11.0 Hz, H-6a), 3.52-3.43 (1H, m, H-6b), 3.38-3.32 (3H, m, H-4a, H-5b, H-6b).
MALDI TOF MS : calcd for C56H57Cl3FNO10 (M+Na)+, m/z 1050.29, found 1050.39.
元素分析 Calcd. for C56H57Cl3FNO10 ; C : 65.34, H : 5.58, N: 1.36, Found C : 65.45, H : 5.58, N : 1.33.
以上の測定結果から、構造式7で表される化合物であることが同定された。
【0041】
<工程[5]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)-2-アジド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-セリン アリルエステル(化合物10)の合成>
予め減圧下で加熱乾燥した粉末モレキュラーシーヴス 4A (1 g)、ビスシクロペンタジエニルジルコノセンジクロリド(315 mg)、および過塩素酸銀(447 mg)の混合物を褐色フラスコ中アルゴン気流下室温でジクロロメタン(3 mL)を加えて30分攪拌した。この混合物を−15℃に冷却し、ここに化合物8(415 mg)および化合物7(554 mg)のジクロロメタン(7 mL)溶液を加えた。反応液を−15℃で1時間攪拌した後、過剰の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで希釈した。その後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(90 : 10)の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル(88 : 12)の混合溶媒で溶出して化合物10(670 mg、収率 75%)を得た。
【0042】
<化合物10の同定>
[a]D +62.9° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.76 (2H, d, J = 7.6 Hz, Ar-H), 7.62 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.61-7.06 (40H, m, Ar-H and TCANH), 5.98-5.85 (2H, m, -CH=, FmocNH), 5.351 [1H, s, PhCH(O)2], 5.350 (1H, d, J = 17.1 Hz, =CH2), 5.28 (1H, d, J = 10.7 Hz, =CH2), 5.26 (1H, d, J = 7.1 Hz, H-1b), 5.04 (1H, d, J = 10.3 Hz, -CH2Ph), 4.97 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.95 (1H, d, J = 3.5 Hz, H-1a), 4.85 (1H, d, J = 11.6 Hz, -CH2Ph), 4.82 (1H, d, J = 11.6 Hz, -CH2Ph), 4.74 (1H, d, J = 12.2 Hz, -CH2Ph), 4.73-4.68 (1H, m, -CH2Ph), 4.69 (2H, d, J = 5.9 Hz, -CH2C=), 4.55 (1H, d, J = 10.3 Hz, -CH2Ph), 4.54 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 3.92 (1H, d, J = 2.7 Hz, H-4c), 3.83 (1H, dd, J = 10.7, 3.5 Hz, H-2a), 3.73-3.67 (1H, m, H-5b), 3.59 (1H, brs, H-4a), 3.45 (1H, dd, J = 9.8, 2.7 Hz, H-3c), 3.39 (1H, dd, J = 7.6, 4.9 Hz, H-5c), 3.32 (1H, dd, J = 8.5, 4.9 Hz, H-6c); 13C-NMR (CDCl3) d .169.2 (-CO2), 161.7 (Cl3CCONH), 155.7 (OCONH), 131.1 (-CH=), 119.0 (=CH2), 103.1 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 100.4 [PhCH(O)2], 99.8 (GlcNTCA C-1, GalN3 C-1), 92.3 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C90H90N5O19Cl3 1649.53, found; 1672.56 (+Na) +, 1688.34 (+K) +.
元素分析 Calcd for C90H90N5O19Cl3: C, 65.43; H, 5.49; N, 4.24. Found: C, 65.61; H, 5.64 ; N, 3.90. (アジド基不安定のためNの値が少なめである)
以上の測定結果から、構造式10で表される化合物であることが同定された。
【0043】
<工程[5’]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)-2-アジド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-トレオニン アリルエステル(化合物11)の合成>
予め減圧下で加熱乾燥した粉末モレキュラーシーヴス 4A (1 g)、ビスシクロペンタジエニルジルコノセンクロリド(273 mg)、および過塩素酸銀 (387 mg) の混合物を褐色フラスコ中アルゴン気流下室温でジクロロメタン(3 mL)を加えて30分攪拌した。この混合物を−15℃に冷却し、ここに化合物9(368 mg) および化合物7(481 mg)のジクロロメタン(7 mL)溶液を加えた。反応液を−15℃で1時間攪拌した後、過剰の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで希釈した。その後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(90 : 10)の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル(88 : 12)の混合溶媒で溶出して化合物11(622 mg、収率 80%)を得た。
【0044】
<化合物11の同定>
[a]D +58.8° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.77 (2H, d, J = 7.6 Hz, Ar-H), 7.64 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.52-7.06 (40H, m, Ar-H and TCANH), 5.92 (1H, ddt, J = 17.1, 10.5, 6.1 Hz, -CH=), 5.72 (1H, d, J = 9.5 Hz, FmocNH), 5.36 [1H, s, PhCH(O)2], 5.35 (1H, dd, J = 17.1, 1.2 Hz, =CH2), 5.33 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-1b), 5.25 (1H, dd, J = 10.5, 1.2 Hz, =CH2), 5.05 (1H, d, J = 10.3 Hz, -CH2Ph), 5.01 (1H, d, J = 3.7 Hz, H-1a), 4.97 (1H, d, J = 11.2 Hz, -CH2Ph), 4.85 (1H, d, J = 11.2 Hz, -CH2Ph), 4.82 (1H, d, J = 11.2 Hz, -CH2Ph), 4.74 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.70 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.66 (2H, m, -CH2C=), 4.54 (2H, d, J = 11.2 Hz, -CH2Ph), 4.49-4.39 (4H, m, -CHMe, H-6a, and -CH2CH), 4.40 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-1c), 4.33 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.32 (1H, d, J = 11.7 Hz, -CH2Ph), 4.31-4.27 (3H, m, H-3b, H-6a, and -CH2CH), 4.22 (1H, d, J = 11.7 Hz, -CH2Ph), 4.18 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.11-4.04 (2H, m, H-6b and H-3a), 3.92 (1H, d, J = 2.7 Hz, H-4c), 3.93-3.78 (2H, m, H-4b, and H-5a), 3.85 (1H, dd, J = 10.7, 3.7 Hz, H-2a), 3.80 (1H, dd, J = 9.3, 7.8 Hz, H-2c), 3.76-3.72 (2H, m, H-5b, -CHCO2), 3.63 (1H, brd, J = 12.0 Hz, H-6b), 3.58 (1H, brs, H-4a), 3.52-3.45 (3H, m, H-2b, H-6c, and H-3c), 3.41 (1H, dd, J = 7.8, 5.1 Hz, H-5c), 3.32 (1H, dd, J = 8.8, 5.1 Hz, H-6c), 1.30 (3H, d, J = 6.3 Hz, -CH3); 13C-NMR (CDCl3) d .169.7 (-CO2), 161.8 (Cl3CCONH), 156.6 (OCONH), 131.1 (-CH=), 119.2 (=CH2), 103.1 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 100.5 [PhCH(O)2], 99.6 (1JCH 160.1 Hz, GlcNTCA C-1), 99.3 (1JCH 173.4 Hz , GalN3 C-1), 92.3 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C91H92N5O19Cl3 1663.55, found; 1686.85 (+Na) +, 1702.75 (+K) +.
元素分析 Calcd for C91H92N5O19Cl3: C, 65.60; H, 5.57; N, 4.20. Found: C, 65.84; H, 5.74; N, 3.87. (アジド基不安定のためNの値が少なめである)
以上の測定結果から、構造式11で表される化合物であることが同定された。
【0045】
<工程[6]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)-2-アジド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-セリン アリルエステル(化合物12)の合成>
化合物10(266 mg)のジクロロメタン(8 mL)溶液に氷冷下で攪拌しつつ80%トリフルオロ酢酸水溶液(4 mL)をゆっくり加えた。反応液を氷冷下で30分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで希釈した。有機層を分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(67 : 33)の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル (60 : 40) の混合溶媒で溶出して化合物12(237 mg、収率 94%)を得た。
【0046】
<化合物12の同定>
[a]D +41.9° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.74 (2H, d, J = 7.6 Hz, Ar-H), 7.62 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.57-7.06 (35H, m, Ar-H and TCANH), 6.09 (1H, d, J = 8.3 Hz, FmocNH), 5.90 (1H, ddt, J = 16.8, 10.5, 5.9 Hz, -CH=), 5.33 (1H, d, J = 16.8 Hz, =CH2), 5.25 (1H, d, J = 10.5 Hz, =CH2), 5.21 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-1b), 5.02 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 4.97 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.85 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.84-4.83 (1H, m, H-1a), 4.79 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.74 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.71 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.69-4.63 (2H, m, -CH2C=), 4.55 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 4.54 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.56-4.52 (1H, m, NCHCO2), 4.44-4.28 (1H, m, H-1c, -NCO2CH2CH, -CH2Ph x 3), 4.23 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.10 (1H, brs, H-4a), 3.34 (1H, dd, J = 8.5, 4.9 Hz, H-6c), 3.24 (1H, brs, -OH), 2.41 (1H, brs, -OH),; 13C-NMR (CDCl3) d .169.3 (-CO2), 161.9 (Cl3CCONH), 155.6 (OCONH), 131.1 (-CH=), 118.9 (=CH2), 103.1 (1JCH 160.9 Hz, Gal C-1), 99.3 (1JCH 168.4 Hz , GalN3 C-1), 98.8 (1JCH 167.6 Hz, GlcNTCA C-1), 92.1 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C83H86N5O19Cl3 1561.50, found; 1584.27 (+Na) +, 1600.24 (+K) +.
元素分析 Calcd for C83H86N5O19Cl3: C, 63.74; H, 5.54; N, 4.48. Found: C, 63.42 ; H, 5.72; N, 4.09. (アジド基不安定のためNの値が少なめである)
以上の測定結果から、構造式12で表される化合物であることが同定された。
【0047】
<工程[6’]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)-2-アジド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-トレオニン アリルエステル(化合物13)の合成>
化合物11(403 mg)のジクロロメタン(12 mL)溶液に氷冷下で攪拌しつつ80%トリフルオロ酢酸水溶液(6 mL)をゆっくり加えた。反応液を氷冷下で15分攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで希釈した。有機層を分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(67 : 33)の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル (60 : 40) の混合溶媒で溶出して化合物13(319 mg、収率 83%)を得た。
【0048】
<化合物13の同定>
[a]D +34.5° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.76 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.63 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.41-7.12 (35H, m, Ar-H and TCANH), 5.92 (1H, ddt, J = 17.1, 10.5, 5.9 Hz, -CH=), 5.66 (1H, d, J = 9.3 Hz, FmocNH), 5.34 (1H, brd, J = 17.1 Hz, =CH2), 5.29 (1H, d, J = 7.6 Hz, H-1b), 5.25 (1H, d, J = 10.5 Hz, =CH2), 5.02 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 4.97 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.95 (1H, d, J = 5.1 Hz, H-1a), 4.85 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.79 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.75 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.71 (1H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph), 4.65 (2H, d, J = 5.9 Hz, -CH2C=), 4.54 (2H, d, J = 11.2 Hz, -CH2Ph x 2), 4.48-4.20 (1H, m, H-1c), 4.15 (1H, brs, H-4a), 4.01 (1H, dd, J = 10.5, 2.7 Hz, H-3a), 3.94 (1H, d, J = 2.4 Hz, H-4c), 3.35 (1H, dd, J = 8.5, 4.9 Hz, H-6c), 3.25 (1H, brs, -OH), 2.30 (1H, brs, -OH), 1.30 (3H, d, J = 6.3 Hz, -CH3); 13C-NMR (CDCl3) d .169.8 (-CO2), 162.1 (Cl3CCONH), 156.6 (OCONH), 131.2 (-CH=), 119.2 (=CH2), 103.2 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 98.9 (1JCH 175.1 Hz , GalN3 C-1), 98.4 (1JCH 161.8 Hz, GlcNTCA C-1), 92.1 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C84H88N5O19Cl3 1575.51 found; 1598.69 (+Na) +.
元素分析 Calcd for C84H88N5O19Cl3: C, 63.94; H, 5.62; N, 4.44. Found: C, 64.11; H, 5.46; N, 4.15.
以上の測定結果から、構造式13で表される化合物であることが同定された。
【0049】
<工程[7]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アジド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-セリン アリルエステル(化合物15)の合成>
予め減圧下で加熱乾燥した粉末モレキュラーシーヴス 4A (700 mg)、ビスシクロペンタジエニルジルコノセンクロリド(89 mg)、および過塩素酸銀(127 mg)の混合物を褐色フラスコ中アルゴン気流下室温でジクロロメタン(5 mL)を加えて30分攪拌した。この混合物を−40℃に冷却し、ここに予め−40℃に冷却した、化合物12(218 mg)および2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-α-D-グルコピラノシルフルオリド(化合物14) (143 mg)のジクロロメタン(15 mL)溶液を加えた。反応液を-15℃で2時間攪拌した後、過剰の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで希釈した。その後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(80 : 20)の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル(75 : 25)の混合溶媒で溶出して化合物15(233 mg、収率 68%)を得た。
【0050】
<化合物15の同定>
[a]D +28.5 ° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.71 (1H, d, J = 6.6 Hz, Ar-H), 7.70 (1H, d, J = 6.8 Hz, Ar-H), 7.61 (1H, d, J = 7.6 Hz, Ar-H), 7.55 (1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.54-7.09 (60H, m, Ar-H and TCANH), 5.96-5.83 (1H, m, -CH=), 5.80 (1H, d, J = 7.3 Hz, FmocNH), 5.46 [1H, s, PhCH(O)2], 5.31 (1H, d, J = 16.6 Hz, =CH2), 5.21 (1H, d, J = 9.3 Hz, TCANH), 5.21 (1H, d, J = 10.3 Hz, =CH2), 5.13 (1H, d, J = 7.6 Hz, H-1b), 5.01 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 4.97 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.95 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-1d), 4.80 (1H, d, J = 5.1 Hz, H-1a), 4.84 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 2.98 (1H, brs, -OH), 2.95 (1H, s, H-4e); 13C-NMR (CDCl3) d 169.0 (-CO2), 161.8 (Cl3CCONH), 161.4 (Cl3CCONH), 155.5 (OCONH), 131.1 (-CH=), 118.9 (=CH2), 102.9 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 102.6 (1JCH 160.9 Hz, Gal C-1), 101.2 [PhCH(O)2], 99.3 (1JCH 163.4 Hz, GlcNTCA C-1d), 99.0 (1JCH 169.3 Hz, GlcNTCA C-1b), 97.5 (1JCH 173.4 Hz , GalN3 C-1a), 92.4 (-CCl3), 92.1 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C132H134N6O29Cl6 2476.73, found; 2499.82 (+Na)+.
元素分析 Calcd for C132H134N6O29Cl6: C, 63.90; H, 5.44; N, 3.39. Found: C, 63.68; H, 5.47; N, 3.20.
以上の測定結果から、構造式15で表される化合物であることが同定された。
【0051】
<工程[7']: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-2-トリクロロアセトアミド-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アジド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-トレオニン アリルエステル(化合物16)の合成>
予め減圧下で加熱乾燥した粉末モレキュラーシーヴス 4A (1 g)、ビスシクロペンタジエニルジルコノセンクロリド (127 mg)、および過塩素酸銀(181 mg)の混合物を褐色フラスコ中アルゴン気流下室温でジクロロメタン(10 mL)を加えて30分攪拌した。この混合物を−40℃に冷却し、ここに予め−40℃に冷却した、化合物13(312 mg)および化合物14(204 mg)のジクロロメタン(20 mL)溶液を加えた。反応液を−15℃で2時間攪拌した後、過剰の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで希釈した。その後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル (88 : 12) の混合溶媒で溶出した後、トルエンー酢酸エチル(80 : 20)の混合溶媒で溶出して化合物16(351 mg、収率 71%)を得た。
【0052】
<化合物16の同定>
[a]D +21.7° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 7.74 (2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.60 (2H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H), 7.60-7.05 (60H, m, Ar-H and TCANH), 6.95 (1H, d, J = 7.3 Hz, TCANH), 6.00-5.80 (1H, m, -CH=), 5.59 (1H, d, J = 9.5 Hz, FmocNH), 5.45 [1H, s, PhCH(O)2], 5.33 (1H, d, J = 17.1 Hz, =CH2), 5.24 (1H, d, J = 10.3 Hz, =CH2), 5.23 (1H, d, J = 7.6 Hz, H-1b), 5.19 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 5.00 (1H, d, J = 10.5 Hz, -CH2Ph), 4.96 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.88 (1H, d, J = 8.8 Hz, H-1d), 4.87 (1H, d, J = 4.1 Hz, H-1a), 4.84 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.49-4.28 (10H, m, H-1c, H-1e, one of H-6a, -CH2CH-, -CHMe, and one of CH2Ph x 4), 2.99 (1H, brs, -OH), 2.90 (1H, s, H-4e), 1.29 (3H, d, J = 6.3 Hz, -CH3); 13C-NMR (CDCl3) d 169.6 (-CO2), 161.9 (Cl3CCONH), 161.3 (Cl3CCONH), 156.5 (OCONH), 131.1 (-CH=), 119.1 (=CH2), 102.9 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 102.5 (1JCH 160.1 Hz, Gal C-1), 101.2 [PhCH(O)2], 99.9 (1JCH 165.9 Hz, GlcNTCA C-1d), 99.0 (1JCH 172.5 Hz , GalN3 C-1a), 98.6 (1JCH 169.2 Hz, GlcNTCA C-1b), 92.4 (-CCl3), 92.1 (-CCl3).
MALDI TOF MS: calcd for C133H136N6O29Cl6 2490.75, found; 2514.13 (+Na) +.
元素分析 Calcd for C133H136N6O29Cl6: C, 64.02; H, 5.49; N, 3.37. Found: C, 64.02; H, 5.32; N, 3.22.
以上の測定結果から、構造式16で表される化合物であることが同定された。
【0053】
<工程[8]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-2-アセトアミド- 3,6-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O
-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-セリン アリルエステル(化合物17)の合成>
化合物15(254 mg)の酢酸エチル(10 mL)溶液に、室温で攪拌しつつ酢酸(1 mL)と亜鉛末(1 g)を加え、アルゴン雰囲気下、150Wのマイクロウェーブ照射下にて30分間攪拌を続けた。クロロホルムで希釈した後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後減圧濃縮した。得られた残渣をジクロロメタン(8 mL)ーメタノール(2 mL)の混合溶液に溶解し、無水酢酸(1 mL)を加えて室温で一時間撹拌を続けた。反応液を減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(20 : 80)の混合溶媒で溶出した後、クロロホルムーメタノール(95 : 5)の混合溶媒で溶出して化合物17(200 mg、収率 85%)を得た。
【0054】
<化合物17の同定>
[a]D +26.7 ° (c 1.1, クロロホルム)
1H-NMR (DMSO-d6): d 7.85 (3H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.75 (2H, d, J = 8.3 Hz, Ar-H), 7.70-7.67 (2H, m, Ar-H), 7.56-7.02 (60H, m, Ar-H and NH x 4), 5.92-5.81 (1H, m, -CH=), 5.64 [1H, s, PhCH(O)2], 5.29 (1H, d, J = 17.3 Hz, =CH2), 5.18 (1H, d, J = 10.5 Hz, =CH2), 5.09 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.88 (1H, d, J = 10.7 Hz, -CH2Ph), 4.84 (1H, d, J = 11.7 Hz, -CH2Ph), 1.83 (3H, s, CH3CO), 1.77 (6H, s, CH3CO x 2); 13C-NMR (CDCl3) d 170.5, 170.1, 170.0, 169.7 (CH3CONH x 3, -CO2All), 155.8 (OCONH), 131.1 (-CH=), 118.8 (=CH2), 102.8 (1JCH 160.9 Hz, Gal C-1), 102.5 (1JCH 165.1 Hz, Gal C-1), 101.0 [PhCH(O)2], 100.3 (1JCH 165.9 Hz, GlcNAc C-1 x 2), 97.8 (1JCH 172.6 Hz , GalNAc C-1), 23.41, 23.36, 23.2 (CH3CO x 3).
MALDI TOF MS: calcd for C134H144N4O30 2288.99 found; 2312.28 (+Na) +, 2328.31 (+K) +.
元素分析 Calcd for C134H144N4O30・0.8H2O: C, 69.82; H, 6.37; N, 2.43. Found: C, 69.82; H, 6.46; N, 2.39.
以上の測定結果から、構造式17で表される化合物であることが同定された。
【0055】
<工程[8']: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-トレオニン アリルエステル(化合物18)の合成>
化合物16(46 mg)の酢酸エチル(2 mL)溶液に、室温で攪拌しつつ酢酸(0.2 mL)と亜鉛末(180 mg)を加え、 アルゴン雰囲気下、150Wのマイクロウェーブ照射下にて30分間攪拌を続けた。クロロホルムで希釈した後、セライト上でろ過をした。ろ液の有機層を集めて分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後減圧濃縮した。得られた残渣をジクロロメタン(2 mL)ーメタノール(0.5 mL)の混合溶液に溶解させ無水酢酸(0.2 mL)を加え、室温で一時間撹拌を続けた。反応液を減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。トルエンー酢酸エチル(20 : 80)の混合溶媒で溶出した後、クロロホルムーメタノール(95 : 5)の混合溶媒で溶出して化合物18(33.3 mg、収率 80%)を得た。
【0056】
<化合物18の同定>
[a]D +29.5 ° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (CDCl3): d 3.64 (1H, t, J = 8.5 Hz, H-17), ; 13C-NMR (CDCl3) d 170.6 (CH3CONH), 170.33 (CH3CONH), 170.26 (CH3CONH), 169.8 (-CO2), 156.3 (OCONH), 130.9 (-CH=), 119.3 (=CH2), 103.0 (1JCH 160.9 Hz, Gal C-1), 102.7 (1JCH 165.1 Hz, Gal C-1), 101.1 [PhCH(O)2], 100.5 (1JCH 163.4 Hz, GlcNAc C-1), 100.3 (1JCH 167.6 Hz, GlcNAc C-1), 99.0 (1JCH 170.1 Hz , GalNAc C-1).
MALDI TOF MS: calcd for C135H146N4O30 2303.00, found; 2325.96 (+Na)+, 2341.92 (+K)+.
元素分析 Calcd for C135H146N4O30・H2O: C, 69.81; H, 6.42; N, 2.43. Found: C, 69.84; H, 6.16; N, 2.30.
以上の測定結果から、構造式18で表される化合物であることが同定された。
【0057】
<工程[9]: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-セリン(化合物1)の合成>
化合物17(49 mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3 mg)、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン(60 mg)のテトラヒドロフラン(5 mL)溶液をアルゴン気流下、室温で30分攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。先ずクロロホルムーメタノール(95 : 5)の混合溶媒で過剰の5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオンおよび低極性の副生成物を溶出し、次に酢酸 (2%) を含むクロロホルムーメタノール(95 : 5)の混合溶媒で溶出して化合物1(44 mg、収率 93%)を得た。
【0058】
<化合物1の同定>
[a]D +31.1 ° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (DMSO-d6): d 7.85 (2H, d, J = 7.6 Hz, Ar-H), 7.80-7.03 (65H, m, Ar-H and NH x 4), 5.63 [1H, s, PhCH(O)2], 5.09 (1H, d, J = 10.7 Hz, -CH2Ph), 4.87 (1H, d, J = 11.0 Hz, -CH2Ph), 4.84 (1H, d, J = 11.7 Hz, -CH2Ph), 1.85 (3H, s, CH3CO), 1.79 (3H, s, CH3CO), 1.77 (3H, s, CH3CO); 13C-NMR (DMSO-d6) d 171.5 (-CO2H), 169.0, 168.8, 168.7 (CH3CONH x 3), 155.8 (OCONH), 102.0 (Gal C-1 x 2), 101.8, 101.4 (GlcNAc C-1 x 2), 99.7 [PhCH(O)2], 97.7 (GalNAc C-1), 23.0 (CH3CO x 3).
MALDI TOF MS: calcd for C131H140N4O30 2248.96 found; 2271.87 (+Na) +, 2287.85 (+K) +.
元素分析 Calcd for C131H140N4O30・H2O: C, 69.36; H, 6.31; N, 2.47. Found: C, 69.34; H, 6.33; N, 2.47.
以上の測定結果から、構造式1で表される化合物であることが同定された。
【0059】
<工程[9']: N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-[2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→6)-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-b-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-3,6-ジ-O-ベンジル-2-アセトアミド-2-デオキシ-b-D-グルコピラノシル-(1→3)]-2-アセトアミド-2-デオキシ-a-D-ガラクトピラノシル]-L-トレオニン(化合物2)の合成>
化合物18(102 mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5 mg)、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン(124 mg)のテトラヒドロフラン(10 mL)溶液をアルゴン気流下、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。先ずクロロホルムーメタノール(95 : 5)の混合溶媒で過剰の5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオンおよび低極性の副生成物を溶出し、次に酢酸 (2%) を含むクロロホルムーメタノール (95 : 5) の混合溶媒で溶出して化合物2(92 mg、収率 92%)を得た。
【0060】
<化合物 2の同定>
[a]D +32.2 ° (c 1.0, クロロホルム)
1H-NMR (DMSO-d6): d 7.93-7.77, 7.77-7.55, 7.48-7.03 (67H, m, Ar-H and NH x 4), 5.64 [1H, s, PhCH(O)2], 5.08 (1H, d, J = 10.7 Hz, -CH2Ph), 4.88 (1H, d, J = 10.7 Hz, -CH2Ph), 4.84 (1H, d, J = 11.7 Hz, -CH2Ph), 4.82-4.73 (5H, m, H-1b, -CH2Ph x 4), 4.70 (1H, d, J = 11.5 Hz, -CH2Ph), 4.69 (3H, d, J = 12.7 Hz, -CH2Ph x 3), 4.63 (1H, d, J = 12.5 Hz, -CH2Ph), 4.61 (2H, d, J = 12.0 Hz, -CH2Ph x 2), 1.91, 1.794, 1.790 (3H x 3, s, CH3CO x 3), 1.11 (3H, d, J = 6.1 Hz, -CHCH3); 13C-NMR (DMSO-d6) d 171.4 (-CO2H), 169.0, 168.8, 168.4 (CH3CONH x 3), 156.3 (OCONH), 102.0 (1JCH 161.8 Hz, Gal C-1 x 2), 101.3 (1JCH 157.6 Hz, GlcNAc C-1 x 2), 99.7 [PhCH(O)2], 98.5 (1JCH 168.4 Hz , GalNAc C-1), 23.03, 22.97 (CH3CO x 3), 18.8 (CH3CH-).
MALDI TOF MS: calcd for C132H142N4O30 2262.97 found; 2285.75 (+Na)+, 2301.72 (+K)+.
元素分析 Calcd for C131H140N4O30・H2O: C, 69.46; H, 6.36; N, 2.45. Found: C, 69.22; H, 6.22; N, 2.35.
以上の測定結果から、構造式2で表される化合物であることが同定された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の糖鎖構造をもつ糖ペプチドを合成する方法を確立することは、糖鎖機能の研究、しいては生体制御技術の開発のために重要である。本発明は糖鎖構造をもつ糖ペプチドの化学合成法の基本技術を提供するものであり、さらにペプチド上に展開したり、酵素によって糖鎖の伸長を施すなどの関連分子ライブラリー作成への応用が期待できるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1)で表される、N-アセチルガラクトサミンの3位と6位水酸基にガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)が結合し、ラクトサミン残基のすべての水酸基が、ベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、トレオニン残基またはセリン残基のアミノ基が9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護された、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物。
【化1】

(式中、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Fm
ocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、Rは水素原子またはメチル
基を表す。)
【請求項2】
アミノ化合物を用いて、構造式(2)で表される、ガラクトシル-β-(1→4)-N-アセチルグルコサミン構造(ラクトサミン)のフタロイル化物3の脱フタロイル化を行い、構造式(3)で表される、アミノ体4を合成し(第一工程)、
【化2】

(式中、Bnはベンジル基を、Phthはフタロイル基を、SiPh2Butはt
−ブチルジフェニルシリル基を表す。)
該アミノ体4にトリクロロアセチルクロリドを付加して、構造式(3)で表される、トリクロロアセチル化体5を合成し(第二工程)、
【化3】

(式中、Bnはベンジル基を、SiPh2Butはt−ブチルジフェニルシリル基
を、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
該トリクロロアセチル化体5からt−ブチルジフェニルシリル基の脱離を行い、構造式(4)で表される、ヘミアセタール化体6を合成し(第三工程)、
【化4】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を表す。)
該ヘミアセタール化体6をフッ素化して、構造式(5)で表される、フッ素化体7を合成し(第四工程)、
【化5】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を表す。)
該フッ素化体7を、構造式(6)で表される、単糖アミノ酸誘導体8、9と縮合して、構造式(7)で表される、ベンジル基およびベンジリデン基を有するコア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物10、11を合成し(第五工程)、
【化6】

(式中、Phはフェニル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−
フルオレニルメトキシカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
【化7】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキ
シカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
該糖鎖関連化合物10、11を酸で処理して、構造式(8)で表される、ベンジリデン基を除去してコア3型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物12、13を合成し(第六工程)、
【化8】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Rは水素原子
またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、A
llはアリル基を表す。)
該糖鎖関連化合物12、13を、構造式(9)で表される、ガラクトース残基およびN−アセチルグルコサミン残基のすべての水酸基がベンジル基またはベンジリデン基で保護され、かつ、N−アセチルグルコサミン残基のN−アセチル基がN−トリクロロアセチル基であって、該残基の1位がフッ素原子で置換された二糖類14によりグリコシド化して、構造式(10)で表される、ベンジル基およびベンジリデン基を有するコア4型構造を有する5糖性のO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物15、16を合成し(第七工程)、
【化9】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を表す。)
【化10】

(式中、Bnはベンジル基を、TCAはトリクロロアセチル基を、Phはフェニ
ル基を、Rは水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキ
シカルボニル基を、Allはアリル基を表す。)
該糖鎖関連化合物15、16から金属還元条件下で脱塩素化し、さらにアジド基から変換されたアミノ基をアセチル化して、構造式(11)で表される、トリアセトアミド体17、18を合成し(第八工程)、
【化11】

(式中、Bnはベンジル基を、Acはアセチル基を、Phはフェニル基を、Rは
水素原子またはメチル基を、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル
基を、Allはアリル基を表す。)
該トリアセトアミド体17、18の脱アリル化を行い、構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物を合成する(第九工程)
【化12】

(式中、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、Fm
ocは9−フルオレニルメトキシカルボニル基を、Rは水素原子またはメチル
基を表す。)
ことを特徴とする、構造式(1)で表される、コア4型構造を有するO−結合型糖タンパク質糖鎖関連化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−24659(P2008−24659A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200069(P2006−200069)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「糖鎖エンジニアリングプロジェクト/糖鎖構造解析技術開発」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】