説明

コイル付き回路基板

【課題】高周波の信号を伝送するのに適した構成にすること。
【解決手段】3層以上の配線層11,12,13,14を有する回路基板1において、少なくとも、おもて面の配線層11とその直下の配線層12にコイルパターン21,22を形成し、それら上下のコイルパターン21,22を導電体23により電気的に接続する。回路基板1の裏面の配線層14には、コイルパターンを設けない。このように回路基板1のおもて面側にコイルパターン21,22が偏在した構成において、各配線層11,12に形成されたコイルパターン21,22が厚さ1mm以内に配置されるような構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル付き回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルを内蔵した回路基板が公知である。例えば、増幅段を構成するコイルおよびフィルタ段を構成するコイルを多層回路基板に内蔵させた高周波増幅回路が公知である(例えば、特許文献1参照。)。また、基板本体内に同一形状の2つのコイルパターンを埋設し、2つのコイルパターンを第1アース電極層と第2アース電極層で挟みこむようにした基板内層型コイルが公知である(例えば、特許文献2参照。)。一方、読み取りまたは書き込み装置と非接触でデータの通信等を行う電子カードにおいて、ケースの上カバーおよび下カバーにそれぞれ通信用コイルパターンの一部を形成した構成のものが公知である(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−250908号公報(特許請求の範囲、第1図および第2図)
【特許文献2】特開平6−140250号公報(特許請求の範囲、図1および図2)
【特許文献3】特開平6−28532号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1または2に開示された技術では、基板の内部にコイルが配置されているため、例えばこのコイルを通信用コイルとして用いて、通信相手のコイルと非接触で電磁結合させてデータ通信を行う場合、電磁結合するコイル同士が離れてしまう。そのため、高周波の信号を伝送するのが困難であるという問題点がある。一方、コイル同士を電磁結合させて高周波の信号を伝送させるには、高出力にすればよい。しかし、その場合には、消費電力が増大するという問題点がある。
【0005】
また、出力を上げる代わりに、コイル同士を近づけるようにしてもよいが、そのためには基板自体を薄くして、基板内部のコイルが通信相手のコイルにより近づくようにする必要がある。しかし、その場合には、基板の強度が低くなり、基板に反りが生じやすくなるため、例えば製造時のリフロー半田工程などで不具合が生じるおそれがある。また、前記特許文献3に開示された電子カードでは、通信用コイルパターンの、通信相手のコイルから遠い側のカバーに形成された部分が、通信相手のコイルからカードの厚さ分、離れてしまうため、高周波の信号を伝送するのが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高周波の信号を伝送するのに適したコイル付き回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるコイル付き回路基板は、3層の配線層を有する回路基板にコイルパターンが形成されたコイル付き回路基板において、第1の主面に設けられた配線層を除く2層の配線層にそれぞれ前記コイルパターンが形成されており、前記コイルパターン同士が導電体により電気的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかるコイル付き回路基板は、4層以上の配線層を有する回路基板にコイルパターンが形成されたコイル付き回路基板において、第1の主面に設けられた配線層を除く2層以上の配線層のうち、第2の主面に設けられた第1の配線層および前記第1の配線層を除く配線層のうち少なくとも1層の配線層にそれぞれ前記コイルパターンが形成されており、前記コイルパターン同士が導電体により電気的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
この発明において、前記複数の配線層に形成され、かつ前記導電体により電気的に接続されたコイルパターンは、全体として無線通信用コイルを構成していてもよい。
【0010】
また、この発明において、前記無線通信用コイルは、通信相手の無線通信用コイルに対して電磁結合するコイルであってもよい。
【0011】
また、この発明において、前記第1の配線層に設けられた前記コイルパターンを含む厚さ1mm以内に、前記無線通信用コイルを構成する各配線層の前記コイルパターンが形成されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるコイル付き回路基板によれば、高周波の信号を伝送することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるコイル付き回路基板の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、この発明にかかるコイル付き回路基板の構成を示す断面図である。図1に示すように、回路基板1は、3層以上の配線層を有する。特に限定しないが、ここでは、配線層の数が4層であるとして説明する。なお、多層配線構造の回路基板は周知であるので、その詳細な構成および製造方法については、説明を省略する。
【0015】
第1層目の配線層11および第2層目の配線層12は、それぞれ、誘電体からなる第1の基板2の上面(回路基板1のおもて面)および下面に設けられている。第3層目の配線層13および第4層目の配線層14は、それぞれ、誘電体からなる第2の基板3の上面および下面(回路基板1の裏面)に設けられている。第1層目の配線層、第2層目の配線層、第3層目の配線層および第4層目の配線層を、それぞれ、第1配線層、第2配線層、第3配線層および第4配線層とする。第1の基板2と第2の基板3は、第2配線層12と第3配線層13の間に絶縁性の接着層4を挟んで貼り合わされている。図1では省略されているが、回路基板1のおもて面および裏面は、レジストなどの保護膜で覆われている。
【0016】
第1配線層11は、所望の配線パターンに形成されている。その配線パターンのうちの一部または全部(図では、一部)にコイルパターン(以下、第1コイルパターンとする)21が形成されている。第2配線層12は、所望の配線パターンに形成されている。その配線パターンのうちの一部または全部(図では、一部)にコイルパターン(以下、第2コイルパターンとする)22が形成されている。第1コイルパターン21と第2コイルパターン22は、第1の基板2を貫通するスルーホール内の導電体23により電気的に接続されている。第1コイルパターン21、導電体23および第2コイルパターン22は、全体で一つのコイル24を構成する。
【0017】
第1コイルパターン21の上面から第2コイルパターン22の下面までの厚さ、すなわちコイル24の厚さは、例えば1mm以内であるのがよい。その理由は、コイル24を無線通信用コイルとし、この無線通信用コイル24と、図示しない通信相手の無線通信用コイルを電磁結合させて相互に高周波の信号を伝送させる際に、コイル24の厚さが1mmを超えると、コイル24と通信相手の無線通信用コイルとの電磁結合が弱くなり、通信状態が悪化するからである。従って、第1の基板2の厚さは、最大でも、1mmから第1配線層11の厚さと第2配線層12の厚さを引いた厚さである。第2の基板3の厚さおよび接着層4の厚さには、制限がない。
【0018】
なお、一つのコイルを構成するコイルパターンは、回路基板の裏面の配線層(図1では、第4配線層14)を除く複数の配線層に設けられていればよい。ただし、コイルパターンは、少なくとも、回路基板のおもて面の配線層(図1では、第1配線層11)とそのすぐ下の配線層(図1では、第2配線層12)には設けられている。そして、上下に隣り合うコイルパターン同士は、電気的に接続されている。また、回路基板のおもて面のコイルパターンの上面から、回路基板の裏面に最も近いコイルパターンの下面までの厚さは、最大でも1mmであればよい。
【0019】
例えば、図1の構成において、第3配線層13にもコイルパターンが設けられていてもよい。この場合、第3配線層13のコイルパターンは、第2コイルパターン22に電気的に接続される。そして、第1コイルパターン21の上面から第3配線層13のコイルパターンの下面までの厚さは、例えば1mm以内である。また、回路基板の配線層数は、3層でもよいし、4層以上でもよい。配線層数が4層の場合、例えば、第1層目、および第3層目の各配線層にコイルパターンが設けられていてもよい。また、配線層数が5層以上の場合、例えば、第1層目、第2層目および第4層目の各配線層にコイルパターンが設けられていてもよい。つまり、この例の第3層目の配線層のように、途中の配線層にコイルパターンがなくてもよい。
【0020】
図2は、この発明にかかるコイル付き回路基板を用いたICカードシステムの要部を示す断面図である。図2において、符号31は、ICカードの回路基板である。符号32は、ICカードからデータを読み取るための読み取り装置の回路基板である。これらを、それぞれ、ICカード基板31および読み取り装置基板32とする。ICカード基板31および読み取り装置基板32は、いずれも、上述した回路基板1により構成されている。ICカード基板31と読み取り装置基板32は、例えば、接触することなく、近接して配置される。そして、ICカード基板31の無線通信用コイル24と読み取り装置基板32の無線通信用コイル24は、相対峙して、電磁結合する。
【0021】
図3は、2層回路基板を用いた場合のコイル付き回路基板の構成を示す断面図である。図2に示すように、2層回路基板41では、配線層数が2層であるため、第1コイルパターン42および第2コイルパターン43は、それぞれ、回路基板41のおもて面および裏面に設けられる。従って、2層回路基板41の場合には、第1コイルパターン42の上面から第2コイルパターン43の下面までの厚さ、すなわち無線通信用コイル44の厚さは、2層回路基板41の厚さで決まる。
【0022】
図4は、コイル付きの2層回路基板を用いたICカードシステムの要部を示す断面図である。図4において、符号51は、ICカード基板であり、符号52は、読み取り装置基板である。図4に示すように、読み取り装置基板52において、無線通信用コイル44を2層回路基板41よりも薄くすることはできない。また、ICカード基板51において、2層回路基板41を無線通信用コイル44よりも厚くすることはできない。
【0023】
それに対して、図2に示すように、実施の形態の回路基板1を用いることによって、読み取り装置基板32において、無線通信用コイル24を回路基板1よりも薄くすることができる。また、ICカード基板31において、回路基板1を無線通信用コイル24よりも厚くすることができる。従って、ICカード基板31および読み取り装置基板32の強度を確保しつつ、あるいは、より強度を高めつつ、ICカード基板31の無線通信用コイル24と読み取り装置基板32の無線通信用コイル24をより近づけることができる。これは、ICカードにデータを書き込む書き込み装置の場合も同様である。
【0024】
以上説明したように、実施の形態によれば、回路基板1の厚さを、2層回路基板を用いた場合と同じにしても、コイル24の厚さを、2層回路基板を用いた場合よりも薄くすることができる。従って、コイル24を無線通信用コイルに用いた場合に、2層回路基板を用いた場合と同等の強度を確保しつつ、2層回路基板を用いた場合よりも高周波の信号を伝送することができる。また、コイル24の厚さを、2層回路基板を用いた場合と同じにしても、回路基板1の厚さを、2層回路基板を用いた場合よりも厚くすることができる。従って、コイル24を無線通信用コイルに用いた場合に、2層回路基板を用いた場合と同等の伝送特性を確保しつつ、2層回路基板を用いた場合よりも回路基板1の強度を高めることができる。
【0025】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、コイル24は無線通信用コイルに限らず、フィルタ用等の他の用途に用いられるコイルを形成する場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかるコイル付き回路基板は、無線通信用コイルを備えた回路基板に有用であり、特に、ICカードや、ICカードとの間でデータ通信を行う非接触型の読み取りまたは書き込み装置(リーダ・ライタ)に適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明にかかるコイル付き回路基板の構成を示す断面図である。
【図2】この発明にかかるコイル付き回路基板を用いたICカードシステムの要部を示す断面図である。
【図3】2層回路基板を用いた場合のコイル付き回路基板の構成を示す断面図である。
【図4】コイル付きの2層回路基板を用いたICカードシステムの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 回路基板
11,12,13,14 配線層
21,22 コイルパターン
23 導電体
24 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層の配線層を有する回路基板にコイルパターンが形成されたコイル付き回路基板において、
第1の主面に設けられた配線層を除く2層の配線層にそれぞれ前記コイルパターンが形成されており、前記コイルパターン同士が導電体により電気的に接続されていることを特徴とするコイル付き回路基板。
【請求項2】
4層以上の配線層を有する回路基板にコイルパターンが形成されたコイル付き回路基板において、
第1の主面に設けられた配線層を除く2層以上の配線層のうち、第2の主面に設けられた第1の配線層および前記第1の配線層を除く配線層のうち少なくとも1層の配線層にそれぞれ前記コイルパターンが形成されており、前記コイルパターン同士が導電体により電気的に接続されていることを特徴とするコイル付き回路基板。
【請求項3】
前記複数の配線層に形成され、かつ前記導電体により電気的に接続されたコイルパターンは、全体として無線通信用コイルを構成することを特徴とする請求項1または2に記載のコイル付き回路基板。
【請求項4】
前記無線通信用コイルは、通信相手の無線通信用コイルに対して電磁結合するコイルであることを特徴とする請求項3に記載のコイル付き回路基板。
【請求項5】
前記第1の配線層に設けられた前記コイルパターンを含む厚さ1mm以内に、前記無線通信用コイルを構成する各配線層の前記コイルパターンが形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のコイル付き回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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