説明

コイル巻線装置及びコイル巻線方法

【課題】複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するにあたり、所望のコイル形状を得易く、かつ効率良く巻線を行うこと。
【解決手段】連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、軸中心に回転可能なスピンドル軸3と、ノズル5を支持すると共にスピンドル軸3の回転に伴ってスピンドル軸3を中心に旋回するフライヤ6と、線材1が巻線される複数の巻治具2と、複数の巻治具2をスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送る巻治具送り機構8と、複数の巻治具2を個別にスピンドル軸3の軸方向に移動する巻治具移動機構60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル巻線装置及びコイル巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク等の光ディスクの再生、記録用の装置におけるヘッドの駆動に用いられるコイルとしてフォーカスコイルやトラッキングコイル等が知られている。
【0003】
この種のコイルを製造するコイル巻線装置として、1本の連続する線材を用いて、連結された複数のコイルを製造する装置が知られており、本出願人は特許出願を行っている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のコイル巻線装置は、スピンドル先端部に線材を巻き付ける複数の巻治具を並列に配置し、これら巻治具をスピンドル先端部にそれぞれ軸方向へ出入り可能に支持するものである。
【特許文献1】特開平9−27435
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このコイル巻線装置では、一つのスピンドルに複数の巻治具を設ける構成のため、巻治具はスピンドルの回転中心からずれて配置される。このため、巻治具はスピンドルの軸を中心に円を描くように回転する。これにより、スピンドル回転時におけるノズルから繰り出される線材の繰り出し速度は、巻治具とノズルの距離によって変化することになる。つまり、巻治具とノズルの距離が遠くなるにしたがい線材の繰り出し速度は速くなり、線材の張力は大きくなる。また、巻治具とノズルの距離が近くなるにしたがい線材の繰り出し速度は遅くなり、線材の張力は小さくなる。
【0006】
このように、スピンドルが1回転する間で線材にかかる張力が変動するため、細線の場合には、スピンドルの回転速度を高速にすると断線することがある。したがって、スピンドルの回転速度を速くするには限界があり、効率の良い巻線を行うことができなかった。
【0007】
また、線材の張力が大きい箇所では線材が巻治具に巻締り、張力が小さい箇所では線材が巻治具に巻緩むため、所望のコイル形状が得難い。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、所望のコイル形状を得易く、かつ効率良く巻線を行うことができるコイル巻線装置及びコイル巻線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、軸中心に回転可能なスピンドル軸と、線材供給部材を支持すると共に前記スピンドル軸の回転に伴って当該スピンドル軸を中心に旋回するフライヤと、線材が巻線される複数の巻治具と、前記複数の巻治具を前記スピンドル軸と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送る巻治具送り手段と、前記複数の巻治具を個別にスピンドル軸の軸方向に移動する巻治具移動手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の巻治具はスピンドル軸と同軸上に対峙された位置に順次送られ、かつ線材はそのスピンドル軸を中心に旋回するフライヤに支持された線材供給部材から繰り出されるため、巻線される巻治具と線材供給部材との距離は、巻線時常に一定に保たれる。したがって、巻線時、線材の張力は一定に保たれるため、より高速で巻線することが可能となり、効率良く巻線を行うことができる。また、巻治具に巻線される線材の張力が一定であるため、所望のコイル形状を得易い。
【0011】
また、巻治具を個別にスピンドル軸の軸方向に移動する巻治具移動手段を備えるため、複数の巻治具のうち巻線する巻治具を他の巻治具と干渉しない位置に配置することができ、効率良く巻線を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1、図2を参照して本発明の実施の形態に係るコイル巻線装置100について説明する。図1はコイル巻線装置100を示す斜視図であり、図2はコイル巻線装置100を示す断面図である。なお、以下において、「X軸方向」とは、スピンドル軸の軸方向を指し、「Y軸方向」とは、スピンドル軸と直角水平方向を指すものとする。
【0014】
コイル巻線装置100は、複数のコイルが連結された連結コイルを巻線する装置であり、1本の連続する線材1を複数の巻治具2に順番に巻回すことによって連結コイルを製造するものである。なお、本実施の形態では、巻治具2を4つ(2a〜2d)備える場合について示すが、巻治具2の個数は所望のコイル数(連数)に対応するように設定すればよい。また、所望のコイル数となるように複数の巻治具2のうちから使用する巻治具2を選択するようにしてもよい。
【0015】
コイル巻線装置100は、図示しない線材供給源からの線材1を巻治具2の外周に巻回す線材巻回機構101と、その線材巻回機構101に対向して配置され、線材1が巻線される巻治具2の配置を調整する巻治具調整機構102とを備える。
【0016】
線材巻回機構101は、軸中心に回転するスピンドル軸3と、スピンドル軸3を回転させるスピンドル軸回転機構4と、線材供給部材としてのノズル5を支持すると共にスピンドル軸3の回転に伴ってスピンドル軸3を中心に旋回するフライヤ6とを備える。
【0017】
巻治具調整機構102は、巻治具2をスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送る巻治具送り手段としての巻治具送り機構8を備える。
【0018】
コイル巻線装置100による巻線は、線材巻回機構101及び巻治具調整機構102を同期して動作させることによって行われる。具体的には、巻治具調整機構102の巻治具送り機構8にて、複数の巻治具2a〜2dのうちの一つ、例えば巻治具2aをスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に配置する。そして、線材巻回機構101にて、スピンドル軸3を軸中心に回転させることによって、フライヤ6をスピンドル軸3中心に旋回させ、ノズル5から繰り出される線材1を巻治具2aに巻回す。巻治具2aへの巻線終了後、巻治具送り機構8にて巻治具2を送り、巻治具2aの隣の巻治具2bをスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に配置する。そして、線材巻回機構101にて巻治具2bに線材1を巻回す。この動作を繰り返すことによって1本の連続する線材1から任意の連数の連結コイルが得られる。
【0019】
以下に、線材巻回機構101及び巻治具調整機構102の詳細な構成について説明する。
【0020】
まず、線材巻回機構101について説明する。コイル巻線装置100の土台である基台10には、後述するヘッド移動機構11が配置され、そのヘッド移動機構11上にはヘッド載置台12が固定されている。スピンドル軸3は、ヘッド載置台12に載置されたヘッド13に軸受14を介して支持されている。軸受14は、スピンドル軸3のヘッド13に対する相対回転及び軸方向への相対移動が可能となるように構成されている。
【0021】
スピンドル軸3は円筒形状であり、線材供給源から供給される線材1は、スピンドル軸3の胴部3aに形成されたガイド穴3bを挿通し、ノズル5へと導かれる。
【0022】
スピンドル軸回転機構4は、スピンドルモータ16の回転を回転伝達機構15を介してスピンドル軸3に伝達するものである。スピンドルモータ16は、出力軸16aがスピンドル軸3と平行に延在するように、ヘッド13の側壁に取り付けられている。
【0023】
回転伝達機構15は、スピンドルモータ16の出力軸16aに取付けられたプーリー17と、プーリー17とベルト18を介して連結されたプーリー19とからなる。スピンドル軸3の端部にはスプライン3aが形成され、プーリー19はスプライン3aを介してスプライン軸3と同軸上にスプライン結合している。これにより、スピンドル軸3は、スピンドルモータ16の回転と同期して回転し、かつ軸方向へはプーリー19に対して摺動自在に移動する。
【0024】
スピンドル軸3における巻治具2に対向する端部には、フライヤ6を支持する円板形状のフライヤ支持板21がスピンドル軸3と同軸上に連結されている。フライヤ6は、アーム状の部材であり、先端側にて線材を繰り出すノズル5を支持し、基端側はフライヤ支持板21における巻治具2側の面の外縁に結合されている。これにより、スピンドル軸3の回転に伴ってフライヤ支持板21が回転し、フライヤ6はスピンドル軸3を中心に旋回する。
【0025】
フライヤ6は、フライヤ移動機構23によってX軸方向に移動できるように構成されている。フライヤ移動機構23は、ヘッド13に取り付けられたフライヤ移動モータ26と、フライヤ移動モータ26の出力軸に連結されスピンドル軸3と平行に延在するボールねじ25と、ボールねじ25が螺合すると共にスピンドル軸3が軸受27を介して貫通する移動板24とを備える。
【0026】
軸受27は、スピンドル軸3の移動板24に対する相対回転が可能である一方、軸方向への移動は一体となるように構成されている。これにより、フライヤ移動モータ26の駆動によって移動板24がX軸方向に移動した場合、その移動板24の移動に伴ってスピンドル軸3も軸方向へ移動し、フライヤ支持板21を介してフライヤ6もX軸方向に移動する。
【0027】
フライヤ移動機構23によってフライヤ6先端に支持されたノズル5をX軸方向、つまり巻治具2の軸方向へ移動させることができるため、巻治具2への巻線時に線材に送りをかけることができる。
【0028】
このように、フライヤ6は、スピンドル軸回転機構4によってスピンドル軸3を中心に旋回することができ、かつフライヤ移動機構23によってスピンドル軸3の軸方向に移動することができる。
【0029】
スピンドル軸3の中空部には、棒状部材であるセンターバー30が挿通している。センターバー30は、スピンドル軸3の内周に配置された軸受32を介して保持され、フライヤ支持板21の中心軸に形成された貫通孔21aを挿通し巻治具2に対峙する。センターバー30は、軸受32及び貫通孔21aによってスピンドル軸3と同軸上に位置決めされる。
【0030】
軸受32は、スピンドル軸3の回転及び移動がセンターバー30に伝達されないように構成される。また、センターバー30には、ヘッド13に設けられた永久磁石31aと引き合う永久磁石31bが設けられている。このように、センターバー30は、回転不能に配置される。
【0031】
巻治具2への巻線は、巻治具2とセンターバー30とが当接した状態にて行われる。これにより、巻治具2の軸心と、フライヤ6の回転中心であるスピンドル軸3とが一致する。このように、センターバー30は巻治具2とフライヤ6の回転中心との位置決め機能を有する。また、センターバー30の端面は、巻治具2の巻幅を規制する鍔部として機能する。
【0032】
センターバー30にはスピンドル軸3の回転及び移動が伝達されず、かつセンターバー30は、永久磁石31a、31bを介してヘッド13に連結されている。したがって、センターバー30の移動は、ヘッド13を移動させることによって行われる。以下にセンターバー30の移動機構について説明する。
【0033】
センターバー30のX軸方向への移動は、ヘッド移動機構11によってヘッド13をX軸方向へ移動させることによって行う。ヘッド移動機構11は、基台10に配置されたヘッド移動モータ38と、ヘッド移動モータ38の出力軸に連結されスピンドル軸3と平行に延在するボールねじ37と、ボールねじ37が螺合する移動台36と、基台10に配置され移動台36を案内するガイドレール35とを備える。
【0034】
移動台36上にはヘッド載置台12が固定されているため、ヘッド移動モータ38が駆動することによって、ヘッド載置台12に載置されたヘッド13はX軸方向へと移動する。このようにして、センターバー30をX軸方向へ移動させる。
【0035】
センターバー30の鉛直方向への移動は、上下移動機構40によってヘッド13を鉛直方向へ移動させることによって行う。上下移動機構40は、ヘッド載置台12に配置された上下移動モータ41と、上下移動モータ41の出力軸に連結され鉛直方向に延在するボールねじ42と、ボールねじ42が螺合すると共にヘッド13に固定されたフォロア43とを備える。また、上下移動機構40は、ヘッド載置台12に取り付けられボールねじ42と平行に延在するガイド棒44、及びヘッド13に固定されガイド棒44に沿って摺動するガイド45も備える。
【0036】
これにより、上下移動モータ41が駆動すると、ヘッド13はヘッド載置台12から離れ、ガイド棒44に案内されて上昇する。このようにして、センターバー30を鉛直方向へ移動させる。
【0037】
次に、巻治具調整機構102について説明する。複数の巻治具2a〜2dは、それぞれ複数の線材ガイド50(50a〜50d)にて個別に保持され、線材ガイド50の端面から突出した部分に線材1が巻線される。このように、線材ガイド50の端面は巻治具2の鍔部として機能する。線材ガイド50a〜50dは、ホルダー58にて、巻治具2a〜2dがその軸方向がX軸方向と一致するようにY軸方向に配列される。
【0038】
ホルダー58は、基台10に配置された巻治具送り機構8によって巻治具2a〜2dの配列方向であるY軸方向に移動する。このように、ホルダー58がY軸方向に移動することによって、巻治具2a〜2dがスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送られる。
【0039】
巻治具2に線材1を巻線するには、巻治具2a〜2dのうちの一つ、例えば巻治具2aをスピンドル軸3と同軸上に対峙させて、フライヤ6をその巻治具2aの周りを旋回させることによって巻線を行う。このとき、巻治具2aと他の巻治具2b〜2dとのX軸方向の位置が同じ場合、フライヤ6が隣の巻治具2bに干渉してしまう。そこで、フライヤ6と巻線しない巻治具2b〜2dとの干渉を防止するため、巻治具2aのX軸方向の位置を他の巻治具2b〜2dの位置とずらす、つまり巻治具2aをスピンドル軸3に向かって前進させる必要がある。この操作を行うのが、巻治具2を個別にスピンドル軸3の軸方向に移動させる巻治具移動手段としての巻治具移動機構60である。
【0040】
巻治具2は、巻治具移動機構60によって、線材ガイド50内を摺動自在に移動する。線材ガイド50の端面には、巻線時に線材1を巻治具2に案内するためのガイド部59がテーパ状に形成され、また、線材ガイド50の端面は巻治具2の鍔部として機能する。したがって、巻治具移動機構60による巻治具2の移動と共に、線材ガイド50も巻治具2に対して最適な位置に移動させる必要がある。この操作を行うのが線材ガイド50を個別にスピンドル軸3の軸方向に移動させる線材ガイド移動手段としての線材ガイド移動機構70である。
【0041】
ホルダー58は、筐体53と、Y軸方向に延在し両端が筐体53の両側壁に取り外し可能に固定されたガイドシャフト52と、ガイドシャフト52を介してY軸方向に所定間隔で配列され、線材ガイド50を摺動自在に保持する複数のカバー部材51(51a〜51d)とを備える。
【0042】
ガイドシャフト52はカバー部材51a〜51dを貫通しているため、カバー部材51は、X軸方向への移動は規制されるが、Y軸方向へはガイドシャフト52に沿って摺動することができる。したがって、隣合うカバー部材51の間隔を調整することによって、連結コイルの隣合うコイルの間隔を任意に設定することができる。巻治具2への巻線時には、ねじ等の締結部材(図示せず)によってカバー部材51をガイトシャフト52に固定する。
【0043】
線材ガイド50はカバー部材51にて摺動自在に保持されているため、ガイドシャフト52を筐体53から取り外すことによって、線材ガイド50をカバー部材51から取り外すことができる。このように、線材ガイド50はホルダー58によって着脱可能に保持されているため、連結コイルの所望の連数に応じて、巻治具2の個数を自由に設定することができる。
【0044】
巻治具送り機構8は、基台10に配置されたホルダー移動モータ54と、ホルダー移動モータ54の出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ55と、ホルダー58の下部に固定されボールねじ55が螺合するフォロア56と、ボールねじ55に沿って延在して配置されフォロア56を案内するガイドレール57とを備える。
【0045】
これにより、ホルダー移動モータ54が駆動すると、ホルダー58はガイドレール57に沿ってY軸方向に移動する。このようにして、巻治具2a〜2dを、スピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送る。
【0046】
次に、巻治具移動機構60について図2を参照して説明する。巻治具2は、線材ガイド50をX軸方向に貫通する貫通孔78内に配置され、巻治具2の背面にはばね61を介して棒状部材62が連結されている。棒状部材62の背面部63は、貫通孔78から突出し、駆動機構65に連結している。
【0047】
駆動機構65は、ホルダー58の筐体53の背面に取り付けられた巻治具移動モータ66と、巻治具移動モータ66の出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ67と、ボールねじ67が螺合し棒状部材62の背面部63と連結する移動板68とを備える。これにより、巻治具移動モータ66を駆動することによって、巻治具2をX軸方向に移動させることができる。
【0048】
移動板68にはY軸方向に蟻溝が形成され、棒状部材62の背面部63は、その蟻溝に摺動可能に嵌合している。このように、棒状部材62はX軸方向へは移動板68の移動に伴って移動し、Y軸方向へは移動板68に拘束されず自由に移動することができる。したがって、隣合うカバー部材51の間隔を調整する際、カバー部材51を駆動機構65に拘束されることなくY軸方向に移動させることができる。
【0049】
次に、線材ガイド移動機構70について図2を参照して説明する。線材ガイド50は、カバー部材51を貫通して配置される。線材ガイド50の背面端部には鍔部71が形成されている。
【0050】
鍔部71は、線材ガイド50の前進時に、カバー部材51の背面に当接することによって所定以上の移動を規制するストッパーとして機能する。鍔部71とカバー部材51の背面との間には、ばね72が介装されている。
【0051】
線材ガイド50をスピンドル軸3に向かって前進させるには、鍔部71を付勢機構73にて付勢することによって行う。また、前進させた線材ガイド50を後退させるには、付勢機構73にて鍔部71に対する付勢力を解除し、鍔部71の付勢時に鍔部71とカバー部材51の背面によって圧縮されたばね72の付勢力によって行う。
【0052】
付勢機構73は、駆動機構65と同様の構成であり、線材ガイド移動モータ74とボールねじ75と移動板76とを備え、線材ガイド移動モータ74が駆動することによって、移動板76が鍔部71を付勢する。
【0053】
以上のように、線材ガイド移動機構70による線材ガイド50の移動は、巻治具移動機構60による巻治具2の移動と独立である。したがって、線材ガイド移動機構70によって線材ガイド50を巻治具2に対して相対移動させ、線材ガイド50の端面と巻治具2に当接しているセンターバー30の端面との距離を調整することによってコイルの巻幅寸法を調整することが可能となる。
【0054】
線材巻回機構101と巻治具調整機構102との間における基台10上には、ノズル5から繰り出された線材1を保持するクランプ80が配置される。
【0055】
次に、巻線装置100の動作について説明する。巻線装置の動作は、巻線装置100に搭載された図示しないコントローラにて制御される。
【0056】
まず、巻治具送り機構8を動作させることによって、ホルダー58をY軸方向に移動させ、巻治具2a〜2dのうちの端部の巻治具2aをスピンドル軸3に対峙させる。これにより、巻治具2aはフライヤ6の回転中心に配置されることになる。なお、巻治具2aとスピンドル軸3の鉛直方向の位置がずれている場合には、上下移動機構40を動作させることによって位置調整を行う。
【0057】
巻治具2aに対応する巻治具移動機構60を動作させることによって、巻治具2aをスピンドル軸3に向かって前進させ、X軸方向の位置を他の巻治具2b〜2dとずらす。また、この動作と同時に線材ガイド移動機構70を動作させることによって、線材ガイド50aもスピンドル軸3に向かって前進させ、線材ガイド50aの端面からの巻治具2aの突出量を調整する。この突出量がコイルの巻幅となる。
【0058】
次に、ヘッド移動機構11を動作させることによって、ヘッド13に永久磁石31a、31bを介して連結されたセンターバー30を巻治具2aに向かって移動させ、センターバー30の端面と巻治具2aの端面とを当接させる。この際、巻治具2aの背面にはばね61が取り付けられているため、センターバー30を巻治具2aの端面に当接させた後、さらにセンターバー30を前進させることによって、巻治具2aはばね61を圧縮しながら後退する。これにより、センターバー30と巻治具2aとの当接を確実なものとすることができる。
【0059】
以上の動作によって、巻治具2aの一端には線材ガイド50a端面が、他端にはセンターバー30端面がそれぞれ巻治具2aの鍔部として配置され、この両鍔部間に線材1が巻線されることになる。
【0060】
次に、巻治具2aに対して線材1を巻き回す動作について説明する。まず、図示しない線材供給源から供給される線材1をノズル5に通し、線材1先端をクランプ80により保持する。
【0061】
ノズル5から繰り出される線材1を線材ガイド50の端面に設けられた溝69を介して巻治具2aに案内する。
【0062】
この状態にて、スピンドル軸3を回転させ、フライヤ6を回転させることによって、フライヤ6先端に支持されたノズル5が線材1を繰り出しながら巻治具2aの周りを旋回する。線材ガイド50aに形成されたガイド部59は線材1を巻治具2aに案内するように傾斜しているため、ノズル5から繰り出される線材1は巻治具2aの外周に巻き回される。
【0063】
巻治具2aは、その軸方向がフライヤ6の回転中心と一致するように配置されているため、巻治具2aに巻き回される線材1の張力は巻線中一定に保たれる。したがって、フライヤ6を高速に回転させて巻線を行うことができる。
【0064】
また、巻線中に、フライヤ移動機構23を動作させることによって、フライヤ6をX軸方向に移動させ、巻治具2aに巻線される線材1に対して送りをかける。
【0065】
また、巻線中に、図示しない熱風装置によって巻治具2aに巻線された線材1に対して熱風を吹きかけ、線材1の融着層を溶融して、線材相互間を融着固化させる。
【0066】
巻治具2aに対する巻線が終了した後、巻治具移動機構60及び線材ガイド移動機構70を同期して動作させることによって、巻治具2a及び線材ガイド50aを後退させ元の位置に戻す。このとき、フライヤ移動機構23を動作させ、フライヤ6も巻治具2aと同方向に同距離だけ移動させる。これは、巻治具2aの移動に伴ってフライヤ6も移動させない場合には、融着固化された線材1が巻治具2a上にて引っ張られ、線材1の融着部が剥がれてしまう可能性があり、これを防止するためである。
【0067】
そして、巻治具送り機構8を動作させることによって、ホルダー58をY軸方向に移動させ、巻治具2aの隣りに配置された巻治具2bをスピンドル軸3と同軸上に対峙させ、フライヤ6の回転中心に配置する。以降は、上記に示した動作を繰り返し、巻治具2bに対して巻線を行う。
【0068】
以上のように、巻治具2a〜2dをスピンドル軸3と同軸上でかつ対峙する位置に順次送り、巻治具2a〜2dに対して順番に巻線を行うことによって複数のコイルが連結された連結コイルを巻線する。
【0069】
巻治具2a〜2dの巻線が終了した後、線材1における巻治具2aとクランプ80の間を切断する。そして、線材1における巻治具2dとノズル5の間をクランプ80にて保持すると共に巻治具2dとクランプ80の間を切断する。これにより、巻治具2a〜2dに巻線された線材1は、クランプ80及びノズル5から切り離される。
【0070】
次に、巻治具移動機構60における駆動機構65を動作させることによって、巻治具2a〜2dを後退させ線材ガイド50a〜50dの貫通孔78内に収容する。このとき、巻治具2a〜2dに巻線されたコイルは、線材ガイド50a〜50dの端面にて移動が規制されるため、巻治具2a〜2d外周から取り外される。
【0071】
なお、コイルの取り外しは、線材ガイド移動機構70を動作させることによって、線材ガイド50a〜50dを前進させ巻治具2a〜2dを線材ガイド50a〜50dの貫通孔78内に収容することによっても行うことができる。つまり、コイルの取り外しは、巻治具移動機構60及び線材ガイド移動機構70の少なくとも一方を動作させ、巻治具2a〜2dを線材ガイド50a〜50d内に収容することによって行われる。
【0072】
以上の本実施の形態によれば、複数の巻治具2a〜2dは、スピンドル軸3と同軸上に対峙された位置に順次送られ、かつ線材1はスピンドル軸3を中心に旋回するフライヤ6に支持されたノズル5から繰り出されるため、巻線される巻治具2a〜2dとノズル5との距離は、巻線時常に一定に保たれる。したがって、巻線時、線材1の張力は一定に保たれるため、より高速で巻線することが可能となり、効率良く巻線を行うことができる。また、巻治具2a〜2dに巻線される線材の張力が一定であるため、所望のコイル形状を得易い。
【0073】
また、巻治具2a〜2dを個別にスピンドル軸3の軸方向に移動させることができるため、複数の巻治具2a〜2dのうち巻線する巻治具を他の巻治具と干渉しない位置に配置することができ、効率良く巻線を行うことができる。
【0074】
また、線材ガイド50はホルダー58によって着脱可能に保持されているため、巻治具2の個数を自由に設定することができる。したがって、従来の巻線装置のように、連結コイルの連数に応じて別体の巻線装置を用意したり、複数のスピンドル軸を用意したりする必要がなく、一の巻線装置において、所望の連数を有する連結コイルを巻線することができ、連数の違う連結コイルの巻線に柔軟に対応することができる。
【0075】
さらに、本実施の形態では、各部材の移動がモータによって行われるため、各部材の様々な制御を容易に行うことができる。例えば、連結コイルの寸法等によってホルダー58におけるカバー部材51の間隔を変更した場合には、それに併せて巻治具送り機構8による巻治具2のY軸方向への移動距離、及び巻治具移動機構60による巻治具2のX軸方向への移動距離を制御する必要がある。しかし、この制御は、ホルダー移動モータ54及び巻治具移動モータ66によって行うことができるため、非常に容易である。
【0076】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、連結コイルの巻線装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル巻線装置100を示す斜視図である。
【図2】同じくコイル巻線装置100を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100 コイル巻線装置
101 線材巻回機構
102 巻治具調整機構
1 線材
2,2a,2b,2c,2d 巻治具
3 スピンドル軸
4 スピンドル軸回転機構
5 ノズル
6 フライヤ
8 巻治具送り機構
11 ヘッド移動機構
13 ヘッド
21 フライヤ支持板
23 フライヤ移動機構
30 センターバー
50,50a,50b,50c,50d 線材ガイド
51,51a,51b,51c,51d カバー部材
52 ガイドシャフト
58 ホルダー
60 巻治具移動機構
70 線材ガイド移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、
軸中心に回転可能なスピンドル軸と、
線材供給部材を支持すると共に前記スピンドル軸の回転に伴って当該スピンドル軸を中心に旋回するフライヤと、
線材が巻線される複数の巻治具と、
前記複数の巻治具を前記スピンドル軸と同軸上でかつ対峙する位置に順番に送る巻治具送り手段と、
前記複数の巻治具を個別に前記スピンドル軸の軸方向に移動する巻治具移動手段と、
を備えることを特徴とするコイル巻線装置。
【請求項2】
前記スピンドル軸と同軸上でかつ回転不能に配置されたセンターバーを備え、
前記複数の巻治具のうち前記スピンドル軸に対峙する巻治具と前記センターバーとが当接した状態にて当該巻治具に対して巻線を行うことを特徴とする請求項1に記載のコイル巻線装置。
【請求項3】
前記巻治具送り手段は、
前記巻治具を各々保持し巻線時には線材を前記巻治具に案内する複数の線材ガイドと、
前記複数の線材ガイドを配列すると共に、個別に着脱可能とするホルダーと、
前記ホルダーを前記巻治具の配列方向に移動するホルダー移動機構と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のコイル巻線装置。
【請求項4】
前記複数の線材ガイドを個別に前記スピンドル軸の軸方向に移動する線材ガイド移動手段を備え、
前記線材ガイド移動手段による線材ガイドの移動は、前記巻治具移動手段による巻治具の移動と独立であり、
前記線材ガイドの端面と前記センターバーの端面との距離を調整することによってコイルの巻幅寸法を調整することを特徴とする請求項3に記載のコイル巻線装置。
【請求項5】
前記巻治具移動手段及び前記線材ガイド移動手段の少なくとも一方を動作させ、前記巻治具を前記線材ガイド内に収容することによって、前記巻治具外周から前記線材が取り外されてなることを特徴とする請求項4に記載のコイル巻線装置。
【請求項6】
複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線方法であって、
複数の巻治具のうち所望の巻治具を軸中心に回転可能なスピンドル軸と同軸上でかつ対峙する位置に送る工程と、
前記所望の巻治具を前記スピンドル軸に向かって前進させる工程と、
前記スピンドル軸の回転に伴って当該スピンドル軸を中心に旋回するフライヤを通じて供給される線材を前記所望の巻治具に巻線する工程と、
巻線を終えた前記所望の巻治具を元の位置に後退させる工程と、を備え、
前記各工程を繰り返し、前記複数の巻治具に対して順番に巻線を行うことによって連結コイルを巻線することを特徴とするコイル巻線方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−194460(P2007−194460A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12158(P2006−12158)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】