説明

コイル巻線装置及びコイル巻線方法

【課題】簡便な構造のコイル巻線装置及びそれを用いたコイル巻線方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能な巻軸2と、巻軸2に対して線材1を繰り出すと共に巻軸2の軸方向に移動可能なノズル4と、コイル巻線時にはコイルの端部を規定すると共に、コイル巻線後には巻軸2の進入を許容するチャック24とを備え、巻軸2に巻線されたコイルをチャック24内に順次収容し、巻軸2に対して複数のコイルを直列に巻線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル巻線装置及びコイル巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク等の光ディスクの再生、記録用の装置におけるヘッドの駆動に用いられるコイルとしてフォーカスコイルやトラッキングコイル等が知られている。
【0003】
この種のコイルを製造するコイル巻線装置として、1本の連続する線材を用いて、連結された複数のコイルを製造する装置が知られており、本出願人は特許出願を行っている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のコイル巻線装置は、スピンドル先端部に線材を巻き付ける複数の巻治具を並列に配置し、これら巻治具をスピンドル先端部にそれぞれ軸方向へ出入り可能に支持するものである。
【0005】
このコイル巻線装置では、一つのスピンドルに複数の巻治具を設ける構成のため、巻治具はスピンドルの回転中心からずれて配置される。このため、巻治具はスピンドルの軸を中心に円を描くように回転する。これにより、スピンドル回転時におけるノズルから繰り出される線材の繰り出し速度は、巻治具とノズルの距離によって変化することになる。つまり、巻治具とノズルの距離が遠くなるにしたがい線材の繰り出し速度は速くなり、線材の張力は大きくなる。また、巻治具とノズルの距離が近くなるにしたがい線材の繰り出し速度は遅くなり、線材の張力は小さくなる。
【0006】
このように、特許文献1に記載のコイル巻線装置では、スピンドルが1回転する間で線材にかかる張力が変動するため、スピンドルの回転速度を速くするには限界がある。また、線材の張力が大きい箇所では線材が巻治具に巻締り、張力が小さい箇所では線材が巻治具に巻緩むため、所望のコイル形状が得難い。
【0007】
そこで、本出願人は、このような問題点を解決するコイル巻線装置を発明し、特許出願を行っている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2に記載のコイル巻線装置は、スピンドル軸の回転に伴ってスピンドル軸を中心に旋回するフライヤと、複数の巻治具をスピンドル軸と対峙する位置に順番に送る機構とを備え、複数の巻治具に対して線材を順次巻線するものである。
【特許文献1】特開平9−27435
【特許文献2】特願2006−12158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載のコイル巻線装置では、連結コイルの連数分すなわちコイルの数に対応する巻治具を備えるものであるため、各巻治具毎にコイルの巻幅を調整する機構等を設ける必要がある。したがって、装置が大掛かりとなりかつ複雑な構造となる。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な構造のコイル巻線装置及びそれを用いたコイル巻線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能な巻軸と、前記巻軸に対して線材を繰り出すと共に当該巻軸の軸方向に移動可能な線材供給部と、コイル巻線時にはコイルの端部を規定すると共に、コイル巻線後には前記巻軸の進入を許容するチャックとを備え、前記巻軸に巻線されたコイルを前記チャック内に順次収容し、前記巻軸に対して複数のコイルを直列に巻線することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線材が巻線されるのは巻軸のみであり、連結コイルの連数に対応する巻治具を必要としないため、簡便な構造のコイル巻線装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜図3を参照して本発明の実施の形態に係るコイル巻線装置100について説明する。図1はコイル巻線装置100を示す斜視図であり、図2はコイル巻線装置100を示す断面図であり、図3はチャック近傍の拡大斜視図である。
【0015】
コイル巻線装置100は、1本の連続する線材1を用いて、複数のコイルが連結された連結コイルを製造するものであり、線材供給部としてのノズル4から繰り出される線材1を、軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能な巻軸2の外周に巻線するものである。
【0016】
巻軸2は、土台5上に立設する基台6に軸受7を介して回転可能に支持される円筒部材8を挿通している。巻軸2の外周には、円筒部材8の内周に設けられたキー溝8aと嵌合するキー2aが形成されている。したがって、巻軸2は、円筒部材8と一体に回転し、軸方向へは円筒部材8に対して摺動可能である。
【0017】
巻軸2の先端には、巻始め時に線材1を引っ掛けて保持するための切り欠き2bが設けられている。
【0018】
また、巻軸2の逆端付近には、巻軸2を軸方向に移動させる巻軸移動機構11と、巻軸2を軸中心に回転させる巻軸回転機構12とが配置されている。
【0019】
巻軸移動機構11は、巻軸移動モータ13と、巻軸移動モータ13の出力軸に連結され巻軸2と平行に延在するボールねじ14と、ボールねじ14が螺合する移動板15とを備える。
【0020】
移動板15には巻軸2が軸受16を介して貫通している。軸受16は、巻軸2の移動板15に対する相対回転が可能である一方、軸方向への移動は一体となるように構成されている。
【0021】
これにより、巻軸移動モータ13が駆動すると、巻軸2は移動板15を介して軸方向へ移動する。
【0022】
巻軸回転機構12は、巻軸回転モータ18と、巻軸回転モータ18の出力軸に取付けられた第一プーリー19と、第一プーリー19とベルト20を介して連結された第二プーリー21とを備える。
【0023】
巻軸2の端部にはスプライン2cが形成され、第二プーリー21はスプライン2cを介して巻軸2とスプライン結合している。
【0024】
これにより、巻軸2は、巻軸回転モータ18の回転と同期して回転し、かつ軸方向へは第二プーリー21に対して摺動自在に移動する。
【0025】
巻軸2と同軸上には、軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能なチャック軸23が巻軸2に対向して設けられている。チャック軸23の先端には巻軸2と対向するチャック24が連結されている。
【0026】
チャック24は、円筒状部材であり、端面24aには巻軸2の外周面が摺動する開口部24bが設けられ、胴部24cの内径は巻軸2の外径と比較して大きい。
【0027】
巻軸2が開口部24bを挿通しチャック24内に挿入された状態では、端面24aはコイルの端部を規定する鍔部として機能する。また、円筒部材8の端面8bもコイルの端部を規定する鍔部として機能する。このように、線材1は、チャック24の端面24aと円筒部材8の端面8bとの間にて巻幅が規定された状態にて、巻軸2に巻線される。このチャック24及び円筒部材8が巻幅規定部材である。
【0028】
チャック24は、軸方向に二つに分割された半円筒形状の分割チャック(24dと24e)からなり、この分割チャック24dと24eは、後述する開放機構27によって軸方向と直交する方向に開放可能な構造となっている。
【0029】
チャック24が開放した状態では、チャック24の開口部24bの面積が大きくなるため、巻軸2にコイルが巻線された状態においても、巻軸2は開口部24からチャック24内に進入することが可能となる。
【0030】
このように、チャック24は、巻軸2への巻線時には閉鎖状態にてコイルの端部を規定し、巻軸2へのコイル巻線後には開放状態となり巻軸2のチャック内への進入を許容する。このチャック24の閉鎖開放動作と巻軸2の軸方向への移動動作とを同期して行うことによって、巻軸2への複数のコイルの巻線が行われる。
【0031】
なお、分割チャック24eの端部外周には、巻軸2に巻線されるコイル間の渡り線を係止するための係止部材としての係止ピン25が設けられる。
【0032】
チャック24を開放する開放機構27について説明する。チャック軸23の先端には円板部材28が連結されている。円板部材28の端面には、巻軸2と直交する方向にガイド溝28aが形成されている。
【0033】
分割チャック24d,24eにおける端面24aの逆端には、それぞれフランジ部29a,29bが形成されている。フランジ部29a,29bのそれぞれの背面には、ガイド溝28aと摺動可能に嵌合する板部材30a,30bがネジ31によって連結されている。フランジ部29aと29bは、スプリング32によって分割チャック24d,24eが閉鎖する方向に付勢されている。
【0034】
チャック軸23の中空部には、軸方向に移動可能な中棒35が挿通している。中棒35の先端には先細形状の楔部34が連結され、板部材30a,30bのそれぞれには楔部34の先細形状に沿ったテーパ部33が形成されている。中棒35が前進し、楔部34が板部材30a,30bのテーパ部33に当接し押圧することによって、板部材30a,30bは円板部材28のガイド溝28aに沿って、互いに離れる方向へ移動する。
【0035】
これにより、分割チャック24dと24eは、スプリング32の付勢力に抗して互いに離れる方向へ移動し、チャック24は巻軸2と直交する方向に開放する。中棒35を後退させ、楔部34を板部材30a,30bから離せば、スプリング32の付勢力によってチャック24は閉鎖する。このように、中棒35の前進及び後退によってチャック24の開放及び閉鎖が行われる。
【0036】
中棒35の前進及び後退は、中棒移動機構37によって行われる。中棒移動機構37は、中棒移動モータ38と、中棒移動モータ38の出力軸に連結され中棒35と平行に延在するボールねじ39と、ボールねじ39が螺合すると共に中棒35が固定された移動板40とを備える。これにより、中棒移動モータ38が駆動すると、中棒35は移動板40を介して軸方向へ移動する。
【0037】
チャック軸23は、土台5上に立設する基台42に軸受43を介して回転可能に支持される円筒44を挿通している。チャック軸23の外周には、円筒44の内周に設けられたキー溝44aと嵌合するキー23aが形成されている。したがって、チャック軸23は、円筒44と一体に回転し、軸方向へは円筒44に対して摺動可能である。
【0038】
チャック軸23の軸方向への移動はチャック軸移動機構45によって行われ、チャック軸23の回転はチャック軸回転機構46によって行われる。チャック軸移動機構45は、チャック軸移動モータ47と、チャック軸移動モータ47の出力軸に連結されチャック軸45と平行に延在するボールねじ48と、ボールねじ48が螺合する移動板49とを備える。
【0039】
移動板49にはチャック軸23が軸受50を介して貫通している。軸受50は、チャック軸23の移動板49に対する相対回転が可能である一方、軸方向への移動は一体となるように構成されている。
【0040】
これにより、チャック軸移動モータ47が駆動すると、チャック軸23は移動板49を介して軸方向へ移動する。
【0041】
チャック軸回転機構46は、チャック軸回転モータ52と、チャック軸回転モータ52の出力軸に取付けられた第一プーリー53と、第一プーリー53とベルト54を介して連結された第二プーリー55とを備える。
【0042】
チャック軸23の端部にはスプライン23bが形成され、第二プーリー55はスプライン23bを介してチャック軸23とスプライン結合している。
【0043】
これにより、チャック軸23は、チャック軸回転モータ52の回転と同期して回転し、かつ軸方向へは第二プーリー55に対して摺動自在に移動する。
【0044】
以上のように、チャック軸23は軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能であり、チャック24の回転及び軸方向への移動は、チャック軸23を介して行われる。
【0045】
ノズル4は、線材供給源(図示せず)から供給される線材1を、巻軸2に対して繰り出すためのものであり、ノズル保持部材60に保持され直交三軸方向に移動可能に構成される。線材1はノズル保持部材60の貫通孔及びノズル4を挿通して、巻軸2に導かれる。
【0046】
ノズル保持部材60にはクランプシリンダ61が設けられ、クランプシリンダ61を駆動することによって、ピストン(図示せず)が線材1をノズル保持部材60に対して押し付け保持する。
【0047】
ノズル4を直交三軸方向に移動させるノズル移動機構62について説明する。ノズル移動機構62は、ノズル4を巻軸2と直角水平方向に移動させるX軸移動機構63と、ノズル4を巻軸2の軸方向に移動させるY軸移動機構64と、ノズル4を鉛直方向に移動させるZ軸移動機構65とからなる。なお、以下において、「X軸方向」とは、巻軸2と直角水平方向を指し、「Y軸方向」とは、巻軸2の軸方向を指し、「Z軸方向」とは鉛直方向を指すものとする。
【0048】
X軸移動機構63は、第一支持台67上に配置され、X軸移動モータ68と、X軸移動モータ68の出力軸に連結されX軸方向に延在するボールねじ69と、ボールねじ69が螺合すると共にノズル保持部材60に固定された移動板70と、X軸方向に延在しノズル保持部材60を案内するガイドレール71とを備える。
【0049】
これにより、X軸移動モータ68が駆動すると、ノズル4を保持するノズル保持部材60はガイドレール71に沿ってX軸方向に移動する。
【0050】
Y軸移動機構64は、第二支持台72上に配置され、第一支持台67をY軸方向に移動させるものであり、Y軸移動モータ73と、Y軸移動モータ73の出力軸に連結されY軸方向に延在するボールねじ74と、ボールねじ74が螺合すると共に第一支持台67に固定された移動部材75と、Y軸方向に延在し第一支持台67を案内する一対のガイドレール76とを備える。
【0051】
これにより、Y軸移動モータ73が駆動すると、第一支持台67はガイドレール76に沿ってY軸方向に移動し、ノズル4もY軸方向に移動する。
【0052】
Z軸移動機構65は、土台5上に配置され、第二支持台72をZ軸方向に移動させるものであり、Z軸移動モータ78と、Z軸移動モータ78の出力軸に連結されZ軸方向に延在するボールねじ79と、ボールねじ79が螺合すると共に第二支持台72に固定された移動部材80と、Z軸方向に延在し第二支持台72を摺動可能に貫通する摺動軸81とを備える。
【0053】
これにより、Z軸移動モータ78が駆動すると、第二支持台72は摺動軸81に沿ってZ軸方向に移動し、ノズル4もZ軸方向に移動する。
【0054】
以上のように、ノズル4は、ノズル移動機構62によって直交三軸方向に移動可能である。
【0055】
コイル巻線装置100は、巻線中にコイルに対して熱風を吹きかけ、コイルを溶着させる熱風装置83を備える。熱風装置83は、巻軸2のノズル移動機構62と反対側に配置される。
【0056】
また、コイル巻線装置100は、巻軸2への巻線終了後に、線材1を切断するためのカッター84を備える。カッター84は、シリンダ85の動作によって鉛直方向に移動可能である。
【0057】
次に、図4〜図6を参照してコイル巻線装置100の動作について説明する。図4はコイル巻線装置100による巻線動作の手順を示す図であり、図5は巻線終了後の状態を示す図である。コイル巻線装置100の動作は、コイル巻線装置100に搭載されたコントローラ(図示せず)にて制御される。
【0058】
まず、クランプシリンダ61を駆動させ線材1を保持した状態にて、図4(A)に示すように、ノズル4先端から繰り出されている線材1を、巻軸2先端の切り欠き2bに係止させる。
【0059】
クランプシリンダ61による線材1の保持を解除し、図4(B)に示すように、巻軸2を約1回転させ線材1を巻軸2に巻き付ける。
【0060】
図4(C)に示すように、中棒35を前進させチャック24を開放した状態にてチャック24を前進させる。
【0061】
次に、図4(D)に示すように、中棒35を後退させチャックを閉鎖する。これにより、巻軸2には、チャック24の端面24aと円筒部材8の端面8bとを鍔部とする巻胴部87が形成され、端面24aと端面8bにてこれから巻線されるコイルの巻幅が規定される。つまり、端面24aと端面8bとの間隔がコイルの巻幅となる。
【0062】
次に、図4(E)に示すように、ノズル4を移動させることによって、線材1を係止ピン25に掛け回すと共に、チャック24の端面24a近傍の巻始め位置に線材1を案内する。
【0063】
この状態にて、図4(F),(G)に示すように、チャック24と巻軸2を同期回転させると共に、ノズル4を端面24aと端面8bとの間を巻軸2と平行に往復移動させることによって、線材1を巻胴部87に多層に巻線する。このようにして、巻軸2には連結コイルを構成する一つコイル88が形成される。
【0064】
線材1の巻線中、巻軸2に巻線された線材1には、図4(G)に示すように、熱風装置83にて熱風が吹き付けられる。これにより、線材1の自己溶着層が溶融してコイル88は溶着される。
【0065】
なお、線材1を巻胴部87に巻線する際、チャック軸23を回転させたが、巻始め時に線材1を巻胴部87の外周に案内した状態にて巻軸2を回転させるようにすれば、チャック軸23を回転させなくとも巻線を行うことは可能である。
【0066】
コイル88の巻線終了後、図4(H)に示すように、チャック24及び巻軸2を円筒部材8から遠ざかる方向へ所定距離移動させる。この移動距離は、コイル間のスペースと次に巻線するコイルの巻幅分である。
【0067】
次に、図4(I)に示すように、チャック24を開放すると共に巻軸2側に移動させ、再びチャック24を閉鎖する。これにより、コイル88はチャック24内に収容され、巻軸2には、次に巻線するコイルの巻胴部87が形成される(図4(D)と同じ状態)。
【0068】
なお、図4(H),(I)に示したように、チャック24を後退、前進させる代わりに、コイル88の巻線終了後、チャック24をその場にて開放し、巻軸2が所定距離移動した後にチャック24を閉鎖しコイル88を収容するようにしてもよい。
【0069】
次に、図4(E)の場合と同様に、線材1を係止ピン25に掛け回し、次に巻線するコイルの巻始め位置に線材1を移動させる。このように、コイル間の渡り線を係止ピン25に掛け回すことによって、次のコイルを巻線する際に、線材1の張力はコイル88に及び難くなるため、コイル88の端部がほずれるのを防止することができる。
【0070】
以降の手順は図4(F)〜(I)に示した手順と同じであり、この手順を連結コイルの所望の連数分繰り返し、図5に示すように、複数のコイル(88a〜88e)を巻軸2に対して直列に巻線する(図5では5連の連結コイル)。
【0071】
巻線が終了したら、図5に示すように、チャック24を開放して後退させ、クランプシリンダ61を駆動させ線材1を保持し、カッター84にてコイルとノズル4の間の線材1を切断する。
【0072】
以上のように、コイル巻線装置100による連結コイルの巻線方法は、チャック24と円筒部材8との間の巻胴部87にコイルを巻線した後に、巻軸2を巻幅規定部材であるチャック24及び円筒部材8に対して相対移動させることによって、チャック24と円筒部材8との間に再び巻胴部87を形成してコイルを巻線するという工程を繰り返し、巻軸2に対して複数のコイルを直列に巻線するものである。
【0073】
次に、図6を参照して、巻軸2に巻線された連結コイルを巻軸2から取り外す方法について説明する。図6は連結コイルを巻軸2から取り外す手順を示す図である。
【0074】
連結コイルを巻軸2から取り外すには、巻軸2の下方に配置される取外治具90を用いる。
【0075】
取外治具90は、図5に示すように、連結コイル89を収容する半円筒形状の収容部91と、連結コイル89の各コイル(88a〜88e)間に挿入される複数の爪部92とを備える。
【0076】
連結コイル89を取り外すには、まず、図6(A)に示すように、取外治具90を上方に移動させ、収容部91に連結コイル89を収容すると共に、各コイル(88a〜88e)間に爪部92を挿入する。
【0077】
次に、図6(B)に示すように、巻軸2を後退させ、円筒部材8内に収める。このとき、連結コイル89は爪部92によって移動が規制されるため、連結コイル89から巻軸2が抜き取られ、連結コイル89は取外治具90に保持される。
【0078】
次に、図6(C)に示すように、排出棒93を連結コイル89内に挿通させた後、取外治具90を下降させ元の位置に戻す。これにより、連結コイル89は排出棒93にて保持される。
【0079】
そして、図6(D)に示すように、連結コイル89を排出ボックス94上まで移動させ、排出棒93を後退させ抜き取ることによって、連結コイル89を排出ボックス94に落下させる。以上のようにして、連結コイル89を排出ボックス94に回収する。
【0080】
以上のように、本実施の形態によれば、線材1が巻線されるのは巻軸2のみであり、一つの巻軸2によって多連の連結コイルを製造することができる。このように、連結コイルの連数に対応する巻治具を必要としないため、巻線装置の構造が大掛かりで複雑になることはなく、簡便な構造とすることができる。
【0081】
また、連結コイルを構成する各コイルの巻幅は、チャック24の端面24aと円筒部材8の端面8bにて規定される。つまり、各コイルの巻幅の調整は、共通の部材によって行われるため、各コイル間の巻幅のばらつきを抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態では、ノズルを巻治具の周囲を回転させるフライヤ式の巻線方法ではなく、巻線される巻軸2を回転させて巻線を行う方法であるため、線材1に捻れが生じることがなく、安定した巻線を行うことができる。
【0083】
さらに、コイル巻線装置100の構造が簡便であることに起因して、熱風装置83を巻軸2の近い位置に配置することができるため、各コイルの溶着状態を均一にすることができる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、連結コイルの巻線装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係るコイル巻線装置100を示す斜視図である。
【図2】同じくコイル巻線装置100を示す断面図である。
【図3】チャック近傍の拡大斜視図である。
【図4】同じくコイル巻線装置100による巻線動作の手順を示す図である。
【図5】巻線終了後の状態を示す図である。
【図6】連結コイルを巻軸から取り外す手順を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
100 コイル巻線装置
1 線材
2 巻軸
4 ノズル
8 円筒部材
8a 円筒部材の端面
23 チャック軸
24 チャック
24a チャックの端面
25 係止ピン
89 連結コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線装置であって、
軸中心に回転すると共に軸方向へ移動可能な巻軸と、
前記巻軸に対して線材を繰り出すと共に当該巻軸の軸方向に移動可能な線材供給部と、
コイル巻線時にはコイルの端部を規定すると共に、コイル巻線後には前記巻軸の進入を許容するチャックと、を備え、
前記巻軸に巻線されたコイルを前記チャック内に順次収容し、前記巻軸に対して複数のコイルを直列に巻線することを特徴とするコイル巻線装置。
【請求項2】
前記巻軸を摺動可能に支持する円筒部材を備え、
前記連結コイルの各コイルは、前記チャックの端面と前記円筒部材の端面との間にて巻幅が規定されることを特徴とする請求項1に記載のコイル巻線装置。
【請求項3】
前記チャックは、
開放可能な分割構造であり、
閉鎖状態にてコイルの端部を規定し、開放状態にて前記巻軸の進入を許容することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイル巻線装置。
【請求項4】
前記チャックには、コイル間の渡り線を係止する係止部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル巻線装置。
【請求項5】
複数のコイルが連結された連結コイルを巻線するコイル巻線方法であって、
軸中心に回転する巻軸における巻幅規定部材間に線材を繰り出しコイルを巻線する工程と、
前記巻軸を前記巻幅規定部材に対して相対移動させる工程と、
前記巻軸における前記巻幅規定部材間に線材を繰り出し、前記コイルと直列にコイルを巻線する工程と、を備え、
前記工程を繰り返し、前記巻軸に対して複数のコイルを直列に巻線することを特徴とするコイル巻線方法。
【請求項6】
前記巻幅規定部材の一方は、開放可能な分割構造であり、閉鎖状態にてコイルの端部を規定し、開放状態にて前記巻軸の進入を許容することを特徴とする請求項5に記載のコイル巻線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−311530(P2007−311530A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138671(P2006−138671)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】