説明

コイル装置アレイ

【課題】 外的な要因によってクラックが生じても、その影響を低減して電気的特性および信頼性の劣化を防止する。
【解決手段】 積層体で構成されるとともに、複数のコイル装置を備えたコイル装置アレイにおいて、
複数のコイル装置のうち隣接されているコイル装置の間であって、隣接されているコイル装置のコイル素子の間に、スリットが設けられている。
【効果】
外部からの機械的、熱的な衝撃や応力がコイル装置アレイに加わった場合、積層体内のスリットを形成した付近に応力が集中し、スリットの近傍にクラックを発生しやすくすることができる。このため、個々のコイル装置の電気的特性および信頼性の劣化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体で構成されるとともに、複数のコイル装置を備えたコイル装置アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は小型化、高機能化が進み、電子機器に内蔵されている回路基板も小型化され、実装密度を上げる必要が出てきた。このため、回路基板に実装される電子部品は、より小型で低背のものが必要となってきた。
【0003】
一方で、回路基板の実装密度を上げる別の方法として、同一機能を有する複数の電子部品を備えるアレイ状の電子部品を利用する方法がある。アレイ状の部品は、回路基板上に同一機能の電子部品を複数実装するよりも実装面積が小さく済むため、実装密度を上げることができる。
【0004】
また、電子部品の一種であるコイル装置では、フェライトなどのコアにワイヤを巻いた巻き線タイプのコイル装置に対して、磁性体と、コイル素子を構成する内部導体とを積層してなる積層タイプが開発されてきた。このタイプのコイル装置は、従来の巻き線タイプに比べて小型、低背化が容易で、複数のコイル装置を備えるコイル装置アレイも実現しやすい。
【0005】
この積層タイプのコイル装置アレイの一例として、特許文献1に開示されているようなコモンモードチョークコイルアレイがある。
【0006】
このような従来のコモンモードチョークコイルアレイついて、図を使って説明する。図11、図12、図14はそれぞれ従来のコモンモードチョークコイルアレイの外観を示す斜視図、積層方向から平面視した図、電気的等価回路図である。また、図13は図11のB−B断面図を示す。
【0007】
図11に示すように、従来のコモンモードチョークコイルアレイ10は、積層体15と外部電極11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14bとからなる。外部電極11a、12a、13a、14aは、積層体15の一方側面近傍であって、その一方主面から一方側面を経て他方主面に折り返すように形成されている。外部電極11b、12b、13b、14bは、積層体15の前記一方側面に対向する他方側面近傍であって、その一方主面から他方側面を経て他方主面に折り返すように形成されている。
【0008】
また、図12に示すように、コモンモードチョークコイルアレイ10は、ふたつのコモンモードチョークコイル21、22を有し、それらのコモンモードチョークコイル21、22は、積層体15の長さ方向に一列に並設されている。
【0009】
更に、積層体15の内部であって、コモンモードチョークコイル21に相当する部分に、コイル素子31、32が内蔵されている。同様に、コモンモードチョークコイル22に相当する部分に、コイル素子33、34が内蔵されている。
【0010】
また、コイル素子31の上にコイル素子32が配置され、コイル素子33の上にコイル素子34が配置されており、コイル素子31、32は、コイル素子33、34と離隔して並設されている。
【0011】
コイル素子31は外部電極11a、11bに、コイル素子32は外部電極12a、12bに、コイル素子33は外部電極13a、13bに、コイル素子34は外部電極14a、14bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0012】
図14に示すように、コイル素子31、32、コイル素子33、34がそれぞれ一対の関係あり、それぞれがコモンモードチョークコイル21、22として機能するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−138937
【発明の概要】
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、上述した従来のコモンモードチョークコイルアレイ10では、高さ(h寸法)に対してコモンモードチョークコイル21、22が一列に並ぶ方向の長さ(l寸法)が相対的に長くなってしまう。
【0016】
このため、回路基板への実装時の衝撃や、実装後での回路基板の変形に起因する応力により、図11および図13に示すように、クラック401が積層体15の長さ方向に対向する側面であって、回路基板へ実装される側に発生する。
【0017】
クラック401が磁性体に入ると、磁束の状態が変化し電気的特性が劣化する。また、磁性体に加えて、コイル素子の内部導体にまでクラック401が発生したときは、内部導体が断線されるため電気的特性が劣化する。更に、湿気がクラック401に侵入し、内部導体の腐食やマイグレーションが発生することで信頼性が劣化するという問題があった。
【0018】
そこで本発明は、このような問題点を解決し、外的な要因によってクラックが生じても、その影響を低減して電気的特性および信頼性の劣化を防止することができるコイル装置アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記問題点を解決するために、本発明に係わるコイル装置アレイは、積層体で構成されるとともに、前記積層体の一方主面に沿う方向に一列に設けられた複数のコイル装置を備えたコイル装置アレイにおいて、前記コイル装置はコイル素子を内蔵しており、前記複数のコイル装置のうち隣接されているコイル装置の間であって、前記隣接されているコイル装置のコイル素子の間に、スリットが設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、前記スリットは、前記積層体の積層方向において、少なくとも前記コイル素子の上端から下端の区間を含み、その長さが前記積層体の厚みよりも小さくなるように設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、前記積層体は、複数の磁性体層と、前記コイル素子を構成する複数の内部導体とが交互に積層されて構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、前記積層体は、コイル積層体と、前記コイル積層体の前記一方主面側に形成されている第1の磁性体と、前記コイル積層体の他方主面側に形成されている第2の磁性体とからなり、前記コイル積層体は、少なくとも、前記コイル素子を構成する複数の内部導体と、複数の絶縁層とからなることを特徴とする。
【0023】
また、前記第1及び第2の磁性体は、積層された複数の磁性体層で構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、前記スリットは、前記コイル積層体に形成されており、前記第1及び第2の磁性体には形成されていないことを特徴とする。
【0025】
また、前記スリットの内部に、絶縁体が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコイル装置アレイにおいては、外部からの機械的、熱的な衝撃や応力がコイル装置アレイに加わった場合、積層体内のスリットを形成した付近に応力が集中し、スリットの近傍にクラックを発生しやすくすることができる。このため、クラックによる磁束の状態の変化も少なく、内部導体の断線や腐食、マイグレーション等も発生しない。よって、電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わるコイル装置アレイの一実施形態(実施形態1)の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の積層方向から平面視した図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1の電気的等価回路図である。
【図5】本発明に係わるコイル装置アレイの一実施形態(実施形態2)の外観を示す斜視図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】図5の積層体45の製造方法を説明する図。
【図8】本発明に係わるコイル装置アレイの実施形態を示し、同図(a)は実施形態3の断面図、同図(b)は実施形態4の断面図である。
【図9】本発明に係わるスリットの形状に関する種々の変形例を示した積層方向から平面視した図である。
【図10】本発明のコイル装置アレイを回路基板に実装する様子を示す図である。
【図11】従来のコイル装置アレイの外観を示す斜視図である。
【図12】図11の積層方向から平面視した図である。
【図13】図11のB−B断面図である。
【図14】図11の電気的等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態では、コイル装置アレイがコモンモードチョークコイルアレイであり、コイル装置がコモンモードチョークコイルの場合について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1、図2、図4はそれぞれ本発明に係るコモンモードチョークコイルアレイの実施形態1の外観を示す斜視図、積層方向から平面視した図、電気的等価回路図である。また、図3は図1のA−A断面図を示す。
【0030】
図1に示すように、本発明のコモンモードチョークコイルアレイ40は、外形サイズが長さl、幅d、高さhの積層体45と、外部電極41a、41b、42a、42b、43a、43b、44a、44bとからなる。
【0031】
外部電極41a、42a、43a、44aは、積層体45の一方側面近傍であって、その一方主面から一方側面を経て他方主面に折り返すように形成されている。外部電極41b、42b、43b、44bは、積層体45の前記一方側面に対向する他方側面近傍であって、その一方主面から他方側面を経て他方主面に折り返すように形成されている。
【0032】
なお、ここで言う一方主面は、コモンモードチョークコイルアレイ40を回路基板に実装する際の実装面に相当する。
【0033】
また、図2に示すように、コモンモードチョークコイルアレイ40は、ふたつのコモンモードチョークコイル51、52を有し、それらのコモンモードチョークコイル51、52は、積層体45の一方主面に沿う方向で、その長さ方向に一列に並設されている。
【0034】
更に、積層体45の内部であって、コモンモードチョークコイル51に相当する部分に、コイル素子61、62が内蔵されている。同様に、コモンモードチョークコイル52に相当する部分に、コイル素子63、64が内蔵されている。
【0035】
また、コイル素子61の上にコイル素子62が配置され、コイル素子63の上にコイル素子64が配置されており、コイル素子61、62は、コイル素子63、64と離隔して並設されている。
【0036】
コイル素子61は外部電極41a、41bに、コイル素子62は外部電極42a、42bに、コイル素子63は外部電極43a、43bに、コイル素子64は外部電極44a、44bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0037】
図4に示すように、コイル素子61、62、コイル素子63、64がそれぞれ一対の関係あり、それぞれがコモンモードチョークコイル51、52として機能するように構成される。
【0038】
更に、図1、図2に示すように、スリット301が、外部電極42a、42bと外部電極43a、43bの間、すなわち、隣接されているコモンモードチョークコイル51、52の間であって、図3に示すように、コイル素子61、62とコイル素子63、64の間に設けられている。
【0039】
また、図2に示すように、スリット301は、積層体45を積層方向から平面視した場合に、ひし形の形状を有している。
【0040】
ひし形の一方対角は、積層体45の幅方向に並行になるように配置されており、その長さaは、ひし形の他方対角の長さbの2倍以上の長さで、かつ、積層体45の幅dよりも短くなるように設けられている。
【0041】
一方、ひし形の他方対角の長さbは、スリット301の内部にコイル素子の内部導体が露出しない程度にその長さが設定されている。
【0042】
上記のように、スリット301の形状を設定することで、後述するクラック401は、スリット301の近傍で発生しやすくなる。
【0043】
例えば、実装機でコモンモードチョークコイルアレイ40を回路基板202に実装する際(図10に示す)に、機械的な衝撃がコモンモードチョークコイルアレイ40に加わり、この外的な要因により積層体45内で応力が生じ、クラック401が発生する場合がある。このとき、この応力は、スリット301を形成した付近に集中するので、図2および図3に示すように、スリット301の近傍でクラック401を発生しやすくすることができる。
【0044】
この部分は、ちょうどコモンモードチョークコイル51、52が隣接する部分であるため、この部分は、クラック401が発生したとしても、最も電気的特性への影響が少ない部分になる。このため、クラック401による磁束の状態の変化も少ない。また、クラック401によるコイル素子61、62、63、64を構成する内部導体の断線や腐食、マイグレーション等も発生しないので、電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【0045】
上記の例では、実装時の機械的な衝撃に関する例であるが、このほかに実装後での回路基板の変形に起因する応力など、外部からの機械的、熱的な衝撃や応力により発生するクラックに対しても同様の効果を発揮する。
【0046】
より好ましくは、スリット301は、積層体45の積層方向において、少なくともコイル素子62、64の上端からコイル素子61、63の下端の区間、すなわち、図3に示すW1の区間を含んでおり、スリット301の長さPは、積層体45の厚みhよりも小さくなるように設けられている。
【0047】
この構成にすることにより、更に、クラック401がコイル素子61、62、63、64を構成する内部導体に及びにくくなり、内部導体の断線や腐食、マイグレーション等を確実に防止することができる。
【0048】
なお、図3では、積層方向において、スリット301の中心が、積層体45のほぼ中心にほぼ一致している例を示したが、上記条件を満たせば、積層体45に中心に対してスリット301の中心が積層方向にずれていてもよい。
【0049】
本実施形態の積層体45は、複数の磁性体層と、コイル素子を構成する複数の内部導体とが交互に積層されて構成されている。
【0050】
この場合、積層体45は、例えば、以下に説明する製法によって製作される。
【0051】
まず、磁性体のグリーンシートが用意され、その上に内部導体がスクリーン印刷される。これらを所望の枚数分積層され、表面に何も印刷していない磁性体のグルーンシートを上下に配設された後、成形され、一体的に焼成して形成される。
【0052】
内部導体は、磁性体のグリーンシートそれぞれに設けられたビアホールを介して電気的に直列に接続され、コイル素子61、62、63、64となる。
【0053】
一方、このビアホールは、内部導体を印刷する前の段階の磁性体のグリーンシートの所定の位置に、レーザーあるいはパンチングにより形成される。
【0054】
スリット301は、ビアホール形成する工程と同時にレーザーあるいはパンチングで形成される。
【0055】
なお、この実施形態では、グリーンシートを積み重ねた後、一体的に焼成するものであるが、必ずしもこれに限定しない。例えば、以下に説明する製法によって積層体45を製作してもよい。ペースト状の磁性体材料を印刷、乾燥して磁性体層が形成された後、その表面に内部導体が印刷され、乾燥される。これらが順に重ね塗りされ、成形され、一体的に焼成される。この場合は、ビアホールおよびスリット301は磁性体材料の印刷時の印刷パターンを使って形成される。
【0056】
図5は本発明に係るコモンモードチョークコイルアレイの実施形態2の外観を示す斜視図である。また、図6は図5のC−C断面図を示す。積層方向から平面視した図、および、電気的等価回路図は、それぞれ実施形態1の図2、図4と同様である。
【0057】
実施形態2は、ほぼ実施形態1と同様であるため、構造上の違う部分のみを詳細に説明する。
【0058】
実施形態2では、積層体45は、第1の磁性体81とコイル積層体70と第2の磁性体82で構成されている。更に、図5および図6に示すように、コイル積層体70の中にコイル素子61、62、63、64が形成されている。
【0059】
また、コイル積層体70は、コイル素子61、62、63、64を構成する複数の内部導体と、複数の絶縁層とからなり、絶縁層と内部導体とが交互に積層されている。
【0060】
更に、図5に示すように、スリット301は、外部電極42a、42bと外部電極43a、43bの間、すなわち、隣接されているコモンモードチョークコイル51、52の間であって、図6に示すように、コイル素子61、62とコイル素子63、64の間に設けられている。
【0061】
また、スリット301は、実施形態1と同様で、積層方向から平面視した場合に、ひし形の形状を有している。
【0062】
また、スリット301は、積層体45の積層方向において、第1の磁性体81および第2の磁性体82には設けられず、コイル積層体70の上端から下端の区間、すなわち、図6に示すW2の区間に設けられており、スリット301の長さPは、コイル積層体70の厚みW2と等しくなるように設けられている。
【0063】
この構成においても、実施形態1と同様に、クラック401による電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【0064】
次に、本実施形態2の積層体45の製造方法について図7を使って説明する。
【0065】
図7は図5の積層体45の製造方法を説明する図である。
【0066】
まず、第1の磁性体81が用意され、第1の磁性体81の上に、絶縁層71gが、フォトリソ工法により形成される。同時に、同じフォトリソ工程により、スリット301の一部分301gが形成される。磁性体の材料としては、フェライト等のNi-Zn系やMn-Zn系等の材料が使用される。絶縁層の材料としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等の種々の材料が使用される。本実施形態では感光性ポリイミド樹脂を使用した。
【0067】
次に、絶縁層71gの上に、絶縁層71gと同様のフォトリソ工法で、絶縁層71fとスリット301の一部分301fが形成される。絶縁層71fの上に、導電材料膜がスパッタや蒸着等の薄膜形成法により形成され、レジスト塗布―露光―現像―エッチング等の一連のフォトリソ技術により、内部導体91a、93aが形成される。内部導体91a、93aの上には、絶縁層71eが形成される。その際、同時に、同じフォトリソ工程で、スリット301の一部分301eと、ビアホール95、97とが形成される。ビアホール95、97は、内部導体91a、93aと、後に形成される内部導体91b、93bをそれぞれ電気的に接続するためのものである。
【0068】
絶縁層71eの上に、内部導体91b、93bが、内部導体91a、93aと同様のフォトリソ技術で形成される。内部導体91aと内部導体91bはコイル素子61として、また、内部導体93aと内部導体93bはコイル素子63として機能するように構成される。導電材料膜としては、導電性に優れた金属、例えばAg、Pd、Cu、Al、Niあるいはこれらの合金等が使用される。
【0069】
同様な方法で、更にその上に、絶縁層71d、スリット301の一部分301d、内部導体92a、94a、絶縁層71c、スリット301の一部分301c、ビアホール96、98、内部導体92b、94b、絶縁層71b、スリット301の一部分301bが順に形成され、次いで、絶縁層71a、スリット301の一部分301aが形成される。内部導体92aと内部導体92bはコイル素子62として、また、内部導体94aと内部導体94bはコイル素子64として機能するように構成される。この段階で、第1の磁性体81の上に、コイル積層体70が完成する。
【0070】
さらに、コイル積層体70の上に第2の磁性体82が、接着剤で接着される。接着剤としては、熱硬化性のポリイミド樹脂を含んだ材料等が用いられる。
【0071】
上述の製造方法で製造することで、積層体45が得られる。
【0072】
このような製造方法の場合、絶縁層71a、71b、71c、71d、71e、71f、71gがフォトリソ工法で形成される際に、同時にそれぞれスリット301の一部301a、301b、301c、301d、301e、301f、301gが形成されるため、新たな工程を追加することなく、容易にスリット301が得られる。
【0073】
なお、コイル積層体70は、絶縁層71aから71gの7層の例を示したが、絶縁層71aと絶縁層71gを抜いた5層構造であってもよい。
【0074】
図8(a)は本発明に係わるコイル装置アレイの一実施形態(実施形態3)の断面図である。
【0075】
実施形態3は実施形態2の一変形例で、スリット301は、積層体45の積層方向において、少なくともコイル素子62、64の上端からコイル素子61、63の下端の区間、すなわち、図3に示すW1の区間を含んでおり、スリット301の長さPは、コイル積層体70の厚みW2よりも小さくなるように設けられている。
【0076】
実施形態2の図7を借りて説明すると、積層体45のスリット301の一部301a、301b、301f、301gを形成しない場合、もしくは、スリット301の一部301a、301gを形成しない場合の両方が実施形態3に相当する。前者の場合がスリット301の長さPが、コイル素子62、64の上端からコイル素子61、63の下端の区間、すなわち、図3に示すW1の区間にほぼ等しい場合であり、後者の場合が、スリット301が、コイル素子62、64の上端からコイル素子61、63の下端の区間、すなわち、図3に示すW1の区間を含んでおり、スリット301の長さPは、コイル積層体70の厚みW2よりも小さくなる場合である。
【0077】
この構成においても、実施形態1または実施形態2と同様に、クラック401による電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【0078】
図8(b)は本発明に係わるコイル装置アレイの一実施形態(実施形態4)の断面図である。
【0079】
実施形態4は実施形態2の一変形例で、積層体45の積層方向において、スリット301の長さPは、コイル積層体70の厚みW2よりも大きく、積層体45の厚みhよりも小さくなるように設けられている。
【0080】
この場合、積層体45を構成する第1磁性体81及び第2磁性体82は、積層された複数の磁性体層で構成され、所望の磁性体層にスリット301を形成することで実現できる。
【0081】
この構成においても、実施形態1ないし実施形態3と同様に、クラック401による電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【0082】
なお、実施形態3よび実施形態4においても、積層体45の積層方向において、スリット301の中心が、積層体45のほぼ中心にほぼ一致している例を示したが、それぞれの条件を満たせば、積層体45に中心に対してスリット301の中心が積層方向にずれていてもよい。
【0083】
また、本発明に係わるスリット301は、その内部に絶縁体を充填したものであってもよい。この場合、充填される絶縁体は、その弾性率が、積層体を構成する磁性体(もしくは磁性体層)、絶縁層のそれぞれの弾性率に対して、低い弾性率を有する材料であることが望ましい。この場合、充填された絶縁体が、積層体45内で最も弾性率が低い部分となるので、外部からの機械的、熱的な衝撃や応力等の外的な要因による積層体45内の応力が、スリット301を形成した付近に集中するので、スリット301の近傍にクラック401を発生しやすくすることができる。これにより、クラック401による電気的特性および信頼性の劣化を防止することができる。
【0084】
また、本発明に係わるスリット301は、積層方向から平面視した場合に、ひし形の形状を有している例を示したが、スリット301の形状は必ずしもこれに限定するものではない。例えば、図9(a)〜(d)に示すように、六角形、平行四辺形、台形、長方形などであってもよい。より好ましくは、スリット301は、積層体45の幅方向に対しては鋭角な角を有するものであればよく、その他に、多角形あるいは円弧を組み合わせた形状であってもよい。
【0085】
本発明に係わるコモンモードチョークコイルアレイは前記実施形態に限定するものでなく、その要旨の範囲内で種々に変形することができる。例えば、一対のコイル素子はそれぞれ独立した状態にする必要はなく、バイファイラ状に重ねたものであってもよい。また、絶縁層71a、71b、71c、71d、71e、71f、71gは磁性体、非磁性体のいずれであってもよい。
【0086】
更に、実施形態では2つのコモンモードチョークコイルを内蔵したコモンモードチョークコイルアレイの例を示したが、3つ以上のコモンモードチョークコイルを内蔵するコモンモードチョークコイルアレイであってもよい。
【0087】
このほか、コイル装置アレイがコモンモードチョークコイルアレイの場合について説明したが、コイル素子を内蔵した積層体から構成されたコイル装置アレイであれば他の電子部品(たとえばトランスやインダクタアレイ)であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
10、40 コイル装置アレイ(コモンモードチョークコイルアレイ)
21、22、51、52 コイル装置(コモンモードチョークコイル)
15、45 積層体
11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14b、41a、41b、42a、42b、43a、43b、44a、44b 外部電極
31、32、33、34、61、62、63、64 コイル素子
70 コイル積層体
71a、71b、71c、71d、71e、71f、71g 絶縁層
81 第1の磁性体
82 第2の磁性体
91a、91b、92a、92b、93a、93b、94a、94b 内部導体
95、96、97、98 ビアホール
201 実装機のノズル
202 回路基板
301 スリット
301a、301b、301c、301d、301e、301f、301g スリットの一部
401 クラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体で構成されるとともに、前記積層体の一方主面に沿う方向に一列に設けられた複数のコイル装置を備えたコイル装置アレイにおいて、
前記コイル装置はコイル素子を内蔵しており、
前記複数のコイル装置のうち隣接されているコイル装置の間であって、前記隣接されているコイル装置のコイル素子の間に、スリットが設けられていることを特徴とするコイル装置アレイ。
【請求項2】
前記スリットは、前記積層体の積層方向において、少なくとも前記コイル素子の上端から下端の区間を含み、その長さが前記積層体の厚みよりも小さくなるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコイル装置アレイ。
【請求項3】
前記積層体は、複数の磁性体層と、前記コイル素子を構成する複数の内部導体とが交互に積層されて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル装置アレイ。
【請求項4】
前記積層体は、コイル積層体と、前記コイル積層体の前記一方主面側に形成されている第1の磁性体と、前記コイル積層体の他方主面側に形成されている第2の磁性体とからなり、
前記コイル積層体は、少なくとも、前記コイル素子を構成する複数の内部導体と、複数の絶縁層とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル装置アレイ。
【請求項5】
前記第1及び第2の磁性体は、積層された複数の磁性体層で構成されていることを特徴とする請求項4に記載のコイル装置アレイ。
【請求項6】
前記スリットは、前記コイル積層体に形成されており、前記第1及び第2の磁性体には形成されていないことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のコイル装置アレイ。
【請求項7】
前記スリットの内部に、絶縁体が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のコイル装置アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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