説明

コイル部品

【課題】実装や配線の制約を少なくしたうえでコイル部品の特性を安定させるもの。
【解決手段】単一の平角導体からなり、同一平面上に形成した第1巻回部8と第2巻回部9と、ロ字形磁心とを備え、第1巻回部8は閉じた第1空心部8Aを有するとともに、この第1空心部8Aにロ字形磁心の脚部を貫通させ、第2巻回部9は開口部21を設けた第2空心部9Aを有し、この第2空心部9Aにロ字形磁心の脚部を貫通させて第1巻回部8および第2巻回部9によりロ字形磁心に生じる磁束を同一方向とさせ、平角導体の両端をロ字形磁心に対して一方側に引き出したコイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるコイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のコイル部品について図面を用いて説明する。図6は従来のコイル部品を示す外観図であり、このコイル部品ではチョークコイル1を構成するにあたり、ロ字形磁心2の脚部3、4に、複数の個別の巻線部である第一巻線部5と第二巻線部6とを巻回配置し、第一巻線部5と第二巻線部6とのそれぞれにおいて電流が流れることによって生じる磁束5a、6aがロ字形磁心2を通る状態において同一方向となるように、第一巻線部5と第二巻線部6とを接続するものであった。
【0003】
ここで、図中の矢印Aの方向から第一巻線部5と第二巻線部6とを見る場合、概ね8の字状の軌跡を描いたうえで図6におけるロ字形磁心2の手前側から第一巻線部5の端部5bを引き込み、ロ字形磁心2の奥側へ第二巻線部6の端部6bを引き出すよう構成するものであった。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−273975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコイル部品では、第一巻線部5と第二巻線部6とを同一の巻回数とする際には、当然ながら端部5b、6bはロ字形磁心2を挟んで反対側に位置するため、チョークコイル1の実装および配線においてはその位置に制約条件を有してしまう恐れがあるものであった。
【0007】
また、上記の制約条件を取り除くため、図7に示すように第二巻線部6の端部6bをロ字形磁心2の手前側へと引き出すことは可能であるものの、ここでチョークコイル1を大電流対応とするために平角導体を適用して少ない巻回数で第一巻線部5、第二巻線部6を形成する場合などにおいては、第一巻線部5と第二巻線部6とでは巻回数が異なる状態となり、同時にそれぞれの巻回数が少ないために第一巻線部5と第二巻線部6とにおける発熱量にもまた差異が生じることとなり、この発熱量の差異を考慮したうえでの設計や配置が必要となる課題を有するものでもあった。
【0008】
またここでは、チョークコイルとして例示したが、図6において示した第一巻線部5と第二巻線部6とをトランスの一次側巻線として形成した場合、二次側巻線(図示せず)の端部(図示せず)をロ字形磁心2の手前側あるいは奥側にて引き込みや引き出しを行うと、一次側の端部5b、6bと二次側の端部(図示せず)とが必ず近接する事態が生じることとなり、絶縁状態を強く考慮した設計が必要となるものであった。
【0009】
あるいは、同様に図7において示した第一巻線部5と第二巻線部6とをトランスの一次側巻線として形成した場合、第一巻線部5と第二巻線部6との巻回数が異なるために、それぞれに対向する二次側巻線(図示せず)との結合状態もまた異なり、結合状態の平衡を得るために二次側巻線(図示せず)における第一巻線部5側に位置する部分と第二巻線部6側に位置する部分をそれぞれ異なる特性に設定することや、異なる位置関係とすることが必要となる課題を有するものであった。
【0010】
そこで本発明は、実装や配線の制約を少なくしたうえでコイル部品の特性を安定させることを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そしてこの目的を達成するために、単一の平角導体からなり、同一平面上に形成した第1巻回部と第2巻回部と、ロ字形磁心とを備え、前記第1巻回部は閉じた第1空心部を有するとともに、この第1空心部に前記ロ字形磁心の脚部を貫通させ、前記第2巻回部は開口部を設けた第2空心部を有し、この第2空心部に前記ロ字形磁心の脚部を貫通させて前記第1巻回部および前記第2巻回部により前記ロ字形磁心に生じる磁束を同一方向とさせ、前記平角導体の両端を前記ロ字形磁心に対して一方側に引き出したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子や配線の引き出しの自由度が高まることで絶縁等を考慮した設計が可能となるとともに、分割した2つの巻線部における個々の特性を同等とすることでコイル部品としての発熱や結合についての特性を安定したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例におけるコイル部品の第1の分解斜視図
【図2】本発明の実施例におけるコイル部品の第1の断面図
【図3】本発明の実施例におけるコイル部品の第2の分解斜視図
【図4】本発明の実施例におけるコイル部品の第2の断面図
【図5】本発明の実施例におけるコイル部品の第3の分解斜視図
【図6】従来のコイル部品の第1の配線図
【図7】従来のコイル部品の第2の配線図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例を用いて本発明について説明する。
【実施例】
【0015】
図1は本発明のコイル部品を示す分解斜視図である。ここではまずチョークコイル7を例として説明する。
【0016】
チョークコイル7は第1巻回部8と第2巻回部9とを接続点10において接続したコイル部11と、突き合せてロ字形状とするU字形磁心12とを組み合わせることによって構成している。第1巻回部8は、第1始端部13と第1終端部14とを有する第1導体15を曲げ加工することによって第1始端部13と第1終端部14との間に交差部16を形成すると同時に、上面からみて第1空心部8Aを有するとともに閉じた状態となる第1環状部17を形成している。ここで、第1環状部17の第1始端部13から第1終端部14へと至る巻回方向としては上面から見て反時計方向に巻回している。そして、第2巻回部9は第2始端部18と第2終端部19とを有する第2導体20を曲げ加工することによって、第2始端部18と第2終端部19との間に上面からみて第2空心部9Aを有するとともに閉じた状態とならずに開口部21を有した第2環状部22を形成している。ここで、第2環状部22の第2始端部18から第2終端部19へと至る巻回方向としては上面から見て時計方向に巻回している。ここでは、第1環状部17を反時計方向、第2環状部22を時計方向として巻回することとして説明しているが、お互いが逆方向の巻回方向となれば、何れが時計回りであっても、或いは反時計回りであっても構わなく、この関係を満たしたうえで第1環状部17の第1空心部8Aおよび第2環状部22の第2空心部9AにU字形磁心12の対向した位置にあるそれぞれの磁脚12aを貫通させている。また、第1巻回部8と第2巻回部9とを接続点10において接続することとして説明しているが、第1導体と第2導体とを連続した1本の導体によって形成し、各部位の便宜上の名称として上記の形態として何ら問題は無いものである。
【0017】
また、チョークコイル7が外部と接続や実装を行う際の外部接続端子となり得る第1導体15の第1始端部13および第2導体20の第2終端部19は、突き合せることによってロ字形状とするU字形磁心12に対して図1における手前側あるいは奥側の何れか一方側に共に同一方向へ並列して配置している。
【0018】
以上の構成により、図2の断面図に示すようにロ字形磁心23の内部を通ることとなる磁束φは第1巻回部8で発生するものと第2巻回部9で発生するものとで方向が同一となり、また第1巻回部8と第2巻回部9とを共に1ターンとしていることからそれぞれに発生する磁束量もまたほぼ同一となった状態でチョークコイル7が機能することとなる。そしてそのうえで、図1に示すように外部との接続を行う第1始端部13と第2終端部19とは、ロ字形磁心を形成することとなるU字形磁心12に対して同一方向に配置した状態となる。
【0019】
従って、第1巻回部8と第2巻回部9とでは発熱量がほぼ同等となり、第1導体15と第2導体20とは同一の断面寸法の導体を適用して最適な設定とすることができ、何れか一方において発熱に対して余裕が大きな設計、あるいは何れか一方において発熱に対する余裕が小さな設計となることはなく、熱に関する偏りが生じ難いことから何れの巻回部に対しても適切であり材料の使用においても効率的な設計を行うことができるものである。そして、この形態では外部との接続を行う第1始端部13と第2終端部19とが、ロ字形磁心23に対して同一方向に位置することで、実装や接続の際に必要とする被実装部(図示せず)の面積を抑制することが可能ともなる。
【0020】
また、第1導体15と第2導体20とは先述のように同一の断面寸法としたうえで、つまり単一の平角導体を使用し、図2に示すように第1巻回部8の第1終端部14と第2巻回部9とは同一平面上に形成することが望ましい。ここで第1巻回部8は、図1に示すように閉じた状態の第1環状部17を単一の第1導体15によって形成するため必然的に交差部16を生じることとなる。これは図2に示すように第1巻回部8における特に第1終端部14の近傍では交差部16と第1終端部14とが上下に重なった位置関係となる。
【0021】
しかしながら、コイル部11の断面としては部分的に上下に重複する部分は存在するものの概ね一層の導体からなるものとすることができ、そのうえで第1終端部14と第2巻回部9とのそれぞれの底面を同一面として平角導体を適用することで、非常に安定した状態でロ字形磁心23との位置関係を維持することが可能となる。これは、ロ字形磁心23に対して直接その上にコイル部11を載置する場合はロ字形磁心内周部23aの平坦度が確保できていれば、これらの安定した位置関係を確保できるものであり、また或いはここでは図示していないものの、ボビンを使用してコイル部11を保持する場合も、そのボビンとコイル部11との位置関係を安定化させ、電気的、磁気的特性を安定化させることは言うまでもない。それに加え、第1終端部14と第2巻回部9とのそれぞれの底面を同一面として平角導体を適用することでボビン(図示せず)の形状を複雑化することなく、コイル部11において発生する熱が伝達する面積を大きくすることで、この熱を効率良く伝えることが可能となる。
【0022】
ここまでは、単一のコイル部11をロ字形磁心23と組み合わせることで、チョークコイル7を形成するものについて述べたが、コイル部11を2層、或いは偶数層積層することで、効率良く薄型化を実現することもできる。その例として、2層のコイル部を設けた場合を図3の分解斜視図に示す。コイル部11については図1と同様に図3においても示しており、チョークコイル7は第1巻回部8と第2巻回部9とを接続点10において接続したコイル部11と、突き合せてロ字形状とするU字形磁心12とを組み合わせることによって構成している。第1巻回部8は、第1始端部13と第1終端部14とを有する第1導体15を曲げ加工することによって第1始端部13と第1終端部14との間に交差部16をコイル部11の上面側に形成すると同時に、上面からみて閉じた状態となる第1環状部17を形成している。ここで、第1環状部17の第1始端部13から第1終端部14へと至る巻回方向としては上面から見て反時計方向に巻回している。そして、第2巻回部9は第2始端部18と第2終端部19とを有する第2導体20を曲げ加工することによって、第2始端部18と第2終端部19との間に上面からみて閉じた状態とならずに開口部21を有した第2環状部22を形成している。ここで、第2環状部22の第2始端部18から第2終端部19へと至る巻回方向としては上面から見て時計方向に巻回している。
【0023】
ここではさらに、コイル部11に加えてコイル部11の上に第2コイル部11aを積層している。この第2コイル部11aは基本的な構造としてコイル部11に準じたものであり、コイル部11の上面と下面とを裏返した状態としたものであっても構わない。
【0024】
この第2コイル部11aは第3巻回部8aと第4巻回部9aとを第2接続点10aにおいて接続することで形成している。ここで第3巻回部8aは、第3始端部13aと第3終端部14aとを有する第3導体15aを曲げ加工することによって第3始端部13aと第3終端部14aとの間に第2交差部16aを第2コイル部11aの下面側に形成すると同時に、上面からみて閉じた状態となる第3環状部17aを形成している。ここで、第3環状部17aの第3始端部13aから第3終端部14aへと至る巻回方向としては上面から見て時計方向に巻回している。そして、第4巻回部9aは第4始端部18aと第4終端部19aとを有する第4導体20aを曲げ加工することによって、第4始端部18aと第4終端部19aとの間に上面からみて閉じた状態とならずに第2開口部21aを有した第4環状部22aを形成している。ここで、第4環状部22aの第4始端部18aから第4終端部19aへと至る巻回方向としては上面から見て反時計方向に巻回している。
【0025】
ここで、コイル部11と第2コイル部11aとの間の差異として重要な点は、コイル部11では第1始端部13と第1環状部17との間に位置する交差部16が第1巻回部8と第2巻回部9の上側に位置することに対して、第2コイル部11aでは第3始端部13aと第3環状部17aとの間に位置する第2交差部16aが第3巻回部8aと第4巻回部9aの下側に位置することである。また、上面側から或いは下面側から見た場合に、上下に位置することとなる第1環状部17と第4環状部22aとで同一の第1の方向の電流となるような第1の巻回方向、同様に上下に位置することとなる第2環状部22と第3環状部17aとで同一の第2の方向の電流となるような第2の巻回方向として巻回あるいは接続しており、第1の巻回方向と第2の巻回方向は逆方向としている。そして、以上の関係を満たしたうえで第1環状部17と第4環状部22aにU字形磁心12の一方の磁脚12aを、第2環状部22と第3環状部17aにU字形磁心12の他方の磁脚12aをそれぞれ貫通させている。つまり、第1環状部17、第4環状部22a、第2環状部22および第3環状部17aに電流が流れることによってU字形磁心12に生じる磁束の方向が同一方向のループを描くこととなるようにしている。
【0026】
このとき、第2終端部19と第3始端部13aとを接続して短絡させた場合は、第1始端部13と第4終端部19aとが外部接続のための端子となり、またあるいは、第1始端部13と第4終端部19aとを接続して短絡させた場合は第2終端部19と第3始端部13aとが外部接続のための端子となる。これにより、それぞれの磁脚12aに対して各々2ターンの巻回数を得ることとなる。
【0027】
以上の図3に示したチョークコイル7を図4の断面図を用いて説明する。ここでも、第1巻回部8の第1終端部14と第2巻回部9とは同一平面上に形成し、同様に第3巻回部8aの第3終端部14aと第4巻回部9aともまた同一平面上に形成している。
【0028】
そしてこれに加えて、コイル部11の上面側に位置する交差部16と、第2コイル部11aの下面側に位置する第2交差部16aとをほぼ同一平面上に形成し、交差部16と第2交差部16aとは共にコイル部11の大部分と第2コイル部11aの大部分とに挟まれた位置に配置している。つまり、断面形状としては上側へ凸状に突出している部位である交差部16を有するコイル部11と、下側へ凸状に突出している部位である第2交差部16aを有する第2コイル部11aとを巴状に配置した形態としている。
【0029】
このとき、図4においても明らかなように双方の磁脚12aには巻数としては各々2ターンが巻回された状態となっており、それを得るために3層相当に積層した導体が存在することともなる。仮に引き込み側と引き出し側との双方に交差する部位が存在する場合、各々の磁脚12aに1ターンの巻回部位を形成するにあたってそれを形成するためには2層分に相当する導体を積層することとなり、必然的に各々の磁脚12aに2ターンの巻回部位を形成するためには4層分に相当する導体を積層することとなる。このような構成の比較からも明らかなように図4に示すコイル部11と第2コイル部11aとを形成して配置することにより、積層する層数を少なくしたうえで同等の巻回数を得ることが可能となる。従って、薄型化への対応が可能であることや、第1環状部17と第4環状部22aとを、あるいは第2環状部22と第3環状部17aとを密着するように接近配置ができるため、より効率よくインダクタンスを得ることが可能ともなる。これについては、特に大電流対応で巻回数が少なく、大きな断面積を有する導体を適用する際において近接、密着配置に対応し易く、非常に大きな効果を有することとなる。
【0030】
また、複数層に積層しない先に述べた例と同様に、左右の磁脚12aに巻回する導体からの発熱量がほぼ同等となり、何れか一方において発熱に対して余裕が大きな設計、あるいは何れか一方において発熱に対する余裕が小さな設計となることはなく、熱に関する偏りが生じ難いことから何れの巻回部に対しても適切であり材料の使用においても効率的な設計を行うことができることは言うまでも無い。特に、一方の磁脚12aでは閉じた形状の第1環状部17と開口部を有した形状の第4環状部22aとによって2ターンを形成し、他方の磁脚12aでも開口部を有した形状の第2環状部22と閉じた形状の第3環状部17aとによって2ターンを形成することで発熱量やインダクタンスの、双方の磁脚12aにおける巻回部位における近似度をより高めることができるものでもある。
【0031】
そして、この形態では外部との接続を行う第1始端部13と第4終端部19a、あるいは第2始端部18と第3終端部14aとが図3に示すU字形磁心12に対する同一方向に位置することで、実装や接続の際に必要とする実装先の面積を抑制することが可能ともなる点についても同様である。
【0032】
ここではコイル部11と第2コイル部11aとは全く同形状のものを互いに裏返した位置関係で配置することで説明したが、全く同形状のものを適用する必要はなく、第1始端部13、第2始端部18、第3終端部14a、第4終端部19aについては、外部の実装部位や内部の接続部位に応じて、左右の水平方向に移動させても構わなく、第1環状部17と第4環状部22aとが、そして第2環状部22と第3環状部17aとが磁脚12aを軸として上下方向に一致する位置関係を維持すればよいものである。これらの効果については、コイル部11と第2コイル部11aとを1組とするように偶数のコイル部11を適用する際に、より大きなものとすることができる。
【0033】
ここまでの説明では、コイル部品をチョークコイル7として適用することで説明したが、図5の分解斜視図に示すようにコイル部11と第2コイル部11aとを接続して一次側あるいは二次側とし、二次側あるいは一次側として巻線部24および巻線部24aを各々の磁脚12aへ巻回配置してコイル部品をトランスとしても構わない。ここでは、一方の磁脚12a側に配置した巻線部24が有する巻線端部25のうちの一方と、他方の磁脚12a側に配置した巻線部24aが有する巻線端部25aのうちの一方とを、巻線部24と巻線部24aとが同一の巻回数として接続するとよい。
【0034】
ここで、コイル部11と第2コイル部11aとを接続して一次側とする場合は、第1環状部17、第2環状部22、第3環状部17a、第4環状部22aのそれぞれで生じる磁束が、突き合せることによってロ字形状とするU字形磁心12において同一方向となる接続とし、巻線部24と巻線部24aとは、そこに流れる電流が打ち消しあうことのない順方向として、同一方向となるように単出力となるべく接続すればよい。あるいは、巻線部24と巻線部24aとを接続して一次側とする場合は、巻線部24と巻線部24aとのそれぞれで生じる磁束が、突き合せることによってロ字形状とするU字形磁心12において同一方向となる接続とし、コイル部11と第2コイル部11aとは、そこに流れる電流が打ち消しあうことのない順方向として、同一方向となるように単出力となるべく接続すればよいことは同様である。当然ながら二出力とする場合は、二次側における相互の接続は行わないため、その極性を考慮する必要はない。
【0035】
この構成とすることで、例えば巻線部24と巻線部24aとを接続して一次側とする場合、巻数の少ない二次側となるコイル部11と第2コイル部11aにおいて各々の磁脚12aに巻回するターン数が近似しているため、一次側の巻線部24に対向する第1環状部17、第4環状部22aとの結合状態が、一次側の巻線部24aに対向する第2環状部22、第3環状部17aとの結合状態とが非常に近似した状態となる。その結果として非常に効率よくトランスを構成する個々要素を機能させ、トランスとして損失が少ない状態で動作させることができ、かつ、出力が複数となる場合においては平衡の採れた出力を得ることができるものである。
【0036】
また、先にも述べたように、コイル部11や第2のコイル部11aの引き込み側は、突き合せることによってロ字形状とするU字形磁心12の一方側に集中させ、引き出し側を巻線部24や巻線部24aをロ字形状とするU字形磁心12の他方側に集中させることができるので、高圧側である一次側(あるいは二次側)と低圧側である二次側(あるいは一次側)とを引き込みや引き出しの領域で分離でき、一次側と二次側との絶縁性の維持を容易にするものでもある。
【0037】
ここでは二次側として、コイル部11と第2のコイル部11aとによる複数のコイル部によって形成するものを例として示したが、コイル部11あるいは第2のコイル部11aの何れか一方としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のコイル部品は、実装や配線の制約を少なくしたうえでコイル部品の特性を安定させる効果を有し、各種電子機器において有用である。
【符号の説明】
【0039】
7 チョークコイル
8 第1巻回部
8a 第3巻回部
8A 第1空心部
9 第2巻回部
9a 第4巻回部
9A 第2空心部
10 接続点
10a 第2接続点
11 コイル部
11a 第2コイル部
12 U字形磁心
12a 磁脚
13 第1始端部
13a 第3始端部
14 第1終端部
14a 第3終端部
15 第1導体
15a 第3導体
16 交差部
16a 第2交差部
17 第1環状部
17a 第3環状部
18 第2始端部
18a 第4始端部
19 第2終端部
19a 第4終端部
20 第2導体
20a 第4導体
21 開口部
21a 第2開口部
22 第2環状部
22a 第4環状部
23 ロ字形磁心
23a ロ字形磁心内周部
24、24a 巻線部
25、25a 巻線端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の平角導体からなり、同一平面上に形成した第1巻回部と第2巻回部と、
ロ字形磁心とを備え、
前記第1巻回部は閉じた第1空心部を有するとともに、この第1空心部に前記ロ字形磁心の脚部を貫通させ、前記第2巻回部は開口部を設けた第2空心部を有し、
この第2空心部に前記ロ字形磁心の脚部を貫通させて前記第1巻回部および前記第2巻回部により前記ロ字形磁心に生じる磁束を同一方向とさせ、
前記平角導体の両端を前記ロ字形磁心に対して一方側に引き出したコイル部品。
【請求項2】
第1始端部と第1終端部とを有する第1導体を前記第1始端部と前記第1終端部との間で交差させて閉じた環状の第1環状部を第1巻回方向に形成した第1巻回部と、第2始端部と第2終端部とを有する第2導体を前記第2始端部と前記第2終端部との間に開口部を有した環状の第2環状部を前記第1巻回方向とは逆方向の第2巻回方向に形成した第2巻回部とを、前記第1終端部と前記第2始端部とを接続することで形成したコイル部と、ロ字形磁心とを備え、このロ字形磁心において対向する磁脚のうちの一方の磁脚を前記第1環状部に、他方の磁脚を前記第2環状部に貫通させ、前記第1始端部と前記第2終端部とを前記ロ字形磁心に対して同一方向となる一方側に配置したコイル部品。
【請求項3】
第1導体と第2導体とは連続した単一の平角導体によって形成したうえで第1終端部と第2巻線部とは同一平面上に形成した請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
第1始端部と第1終端部とを有する第1導体を前記第1始端部と前記第1終端部との間で交差させて閉じた環状の第1環状部を第1巻回方向に形成した第1巻回部と、第2始端部と第2終端部とを有する第2導体を前記第2始端部と前記第2終端部との間に開口部を有した環状の第2環状部を前記第1巻回方向とは逆方向の第2巻回方向に形成した第2巻回部とを、前記第1終端部と前記第2始端部とを接続することで形成した第1コイル部と、第3始端部と第3終端部とを有する第3導体を前記第3始端部と前記第3終端部との間で交差させて閉じた環状の第3環状部を第3巻回方向に形成した第3巻回部と、第4始端部と第4終端部とを有する第4導体を前記第4始端部と前記第4終端部との間に開口部を有した環状の第4環状部を前記第1巻回方向とは逆方向の第4巻回方向に形成した第4巻回部とを、前記第3終端部と前記第4始端部とを接続することで形成した第2コイル部と、ロ字形磁心とを備え、このロ字形磁心において対向する磁脚のうちの一方の磁脚を前記第1、4環状部に、他方の磁脚を前記第2、3環状部にそれぞれ貫通させ、前記第2終端部と前記第3始端部とを或いは前記第4終端部と前記第1始端部とを接続したうえで、前記第1始端部と前記第1環状部との間に位置する第1引き込み部と前記第3始端部と前記第3環状部との間に位置する第3引き込み部とを同一平面上に配置したコイル部品。
【請求項5】
コイル部を二次側とし、一方の磁脚と他方の磁脚とにそれぞれ第1の一次巻線と第2の一次巻線とを巻回し、前記第1の一次巻線における一方の端部と前記第2の一次巻線における一方の端部とをロ字形磁心内に生じる磁束が同一方向となるよう接続し、コイル部に流れる電流が順方向となるようにした請求項2〜4の何れかに記載のコイル部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−38371(P2013−38371A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175810(P2011−175810)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】