説明

コイン識別方法およびコインセンサ

【課題】 コイン通路を通過するコインの材質あるいは厚さを廉価な回路構成により精度良く判別可能なコイン識別方法およびコインセンサを提案すること。
【解決手段】 コインセンサ1は、コイン通路3を挟み、発振側コイル4と受信側コイル5を対峙させ、発振側コイル4と発振回路6で発振器6Aを構成することで当該コイル4を発振させ、コイン通過時における発振側コイル4の発振信号を、発振側とは共振状態に制御されていない受信側コイル5によって受信し、コイン通路3をコインCが通過する際における受信側コイル5の出力信号の変化からコイン材質を判別し、これに基づきコイン通路3を通過したコインCを識別する。発振側コイル4の出力、受信側コイル5の感度を上げることにより、十分に実用に供するレベルの出力信号が得られる廉価なコインセンサを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨識別機などに用いられているコイン識別方法およびコインセンサに関し、特に、廉価な構成でコイン通路を通過するコインの材質あるいは厚さを精度良く判別可能なコイン識別方法およびコインセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬貨識別機などに用いられているコインセンサとしては、コイン通路を挟み、発振側コイルと受信側コイルを配置し、発振側コイルに所定周波数の交流電流を流して発振させ、これによって誘起される受信側コイルの出力信号の変化に基づき、コイン通路を通過するコイルの材質を判別するものが知られている。特許文献1にはこのようなコインセンサが開示されている。
【特許文献1】特開2004−46572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この構成のコインセンサでは、受信側のゲインを確保するために、受信側コイルを発振側コイルの発振周波数に共振させるための共振回路が備わっている。共振回路では、予め定められている発振周波数に共振するように共振点周波数が定められている。共振点周波数にずれが生ずるとゲインが急激に低下し、コインの判別が不可能になってしまう。したがって、共振回路には共振点周波数のずれを補償して共振状態を維持するための補償回路が必要である。
【0004】
しかしながら、共振点周波数は部品誤差、温度変化などの様々な要因によって変動するので、共振点周波数のずれを補償してゲインを高いレベルに維持するための補償回路は回路構成が複雑になり、コインセンサのコストアップに繋がる。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、コイン通路を通過するコインの材質あるいは厚さを廉価な回路構成により精度良く判別可能なコイン識別方法およびコインセンサを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のコイン識別方法は、コイン通路を挟み、発振側コイルと受信側コイルを対峙させ、前記発振側コイルと発振回路で発振器を構成することにより当該発振側コイルを発生させるか、あるいは、前記発振側コイルに所定周波数の信号を流して当該発振側コイルを発振させ、コイン通過時における前記発振側コイルの発振信号を、当該発振側コイルとは共振状態に制御されていない前記受信側コイルによって受信し、前記コイン通路をコインが通過する際における前記受信側コイルの出力信号の変化からコイン材質を判別し、これに基づき前記コイン通路を通過したコインを識別することを特徴としている。
【0007】
また、本発明のコイン識別方法は、コイン通路の一方の側に、発振側コイルおよび受信側コイルとして機能するコイルを配置し、前記コイルと発振回路で発振器を構成することにより当該コイルを発生させるか、あるいは、前記コイルに所定周波数の信号を流して当該コイルを発振させ、前記コイルから発振して前記コイン通路を通過するコインによって反射された信号を、共振状態に制御されていない当該コイルによって受信し、前記コイン通路をコインが通過する際における前記コイルの出力信号の変化からコイン厚さを判別し、これに基づき前記コイン通路を通過したコインを識別することを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明のコインセンサは上記の各方法によってコインを識別することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共振回路を用いることなく、受信側コイルの出力信号に基づきコインの材質あるいは厚さを判別している。出力信号のレベルは共振回路を用いる場合に比べて低くなるが、発振側コイルの出力および受信側コイルの感度を上げることにより、十分に実用に供するレベルの出力信号が得られることが確認された。
【0010】
また、共振回路を用いる場合とは異なり、共振点のずれに起因して出力信号レベルが急激に低下することがなく、共振点ずれの補償などのための複雑な信号処理が不要となり、極めて簡単な信号処理回路を用いるのみでよい。したがって、発振側コイルの出力および受信側コイルの感度を上げるための対策を施したとしても、共振回路を用いる場合に比べて廉価にコインセンサを製造でき、また、調整およびメンテナンスも簡単にできるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したコインセンサを説明する。
【0012】
図1は本発明を適用した透過型のコインセンサのコイン通路部分を示す概略構成図であり、図2(a)は当該コインセンサの概略ブロック図である。コインセンサ1は、センサケース2を貫通する状態に形成したコイン通路3と、このコイン通路3を挟み一定間隔で対向配置した発振側コイル4および受信側コイル5とを有している。コインCは、コイン通路3を規定している左右の側面3a、3bのうち、一方の側面3aに沿って通過する。
【0013】
発振側コイル4と発振回路6により発振器6Aが構成され、発振側コイル4を発振させるようになっている。この代わりに、図2(b)に示すように、発振回路6aから所定周波数の交流信号を発振側コイル4aに流して発振させるようにしてもよい。受信側コイル5は、発振側コイル4からの所定波長の発振信号を受信すると、所定レベルの受信信号を信号処理回路7に出力する。信号処理回路7は半波整流回路7a、平滑回路7b等を備えており、受信側コイル5の出力信号5Sの出力電圧7Sを算出して出力する。
【0014】
発振側コイル4が発振して磁束が変化すると、当該磁束の変化に応じて受信側コイル5に誘起電流が発生する。コイン通路3をコインCが通過すると、当該コインCに渦電流が発生し、受信側コイル5に鎖交する磁束密度が減少し、当該受信側コイル5の誘起電流が減少する。コインCの材質に応じて、受信側コイル5に流れる電流の減衰率が異なるので、信号処理回路7を介して得られる出力電圧7Sは、コイン材質に応じて変化する。よって、出力電圧7Sからコイン材質を判別でき、これに基づき、コインCを識別できる。
【0015】
ここで、コインセンサ1の受信側の信号処理回路7には、発振側との共振状態を形成するための並列共振回路が備わっておらず、受信側コイル5の出力信号レベルが低い。これを補償するために、受信側コイル5として、この種のコインセンサにおいて一般的に用いられている受信側コイルよりも巻き線の巻数が多い大型のものを用いている。これにより、コイルのインピーダンスを高くして受信感度を上げている。
【0016】
本発明者は、コインセンサ1を用いて受信側コイル5の出力信号レベルを測定した。発振側コイル4に、周波数28.74kHz、振幅5000mVの正弦波交流電流6Sを流して、当該発振側コイル4を発振させた。受信側コイル5から、周波数28.74kHz、振幅910mVの正弦波交流電流5Sが出力されることが確認された。図3には、測定したこれらの信号波形を示してある。出力信号5Sは、コイル材質を判別するのに十分なレベルのものである。
【0017】
次に、図4(a)は本発明を適用した反射型のコインセンサを示す概略ブロック図である。本例のコインセンサ10は、コイン通路13の一方の側に、発振側コイルおよび受信側コイルとして機能するコイル14が配置されている。このコイル14と発振回路15によって発信器16が構成されている。この代わりに、図4(b)に示すように、発振回路15aからコイル14aに高周波交流電流を流して当該コイル14aを発振させてもよい。発振信号は、コイン通路13を通過するコインCによって反射されてコイル14によって受信され、コイル14の出力信号が変化する。この出力信号は信号処理回路17によって処理されて、当該出力信号に対応する電圧値が当該信号処理回路17から出力される。信号処理回路17の代わりに、図4(c)に示すように、周波数/電圧(F/V)変換回路18を介して周波数を電圧に変化して出力してもよい。このようして出力される電圧値に基づき、コイン通路13を通過したコインCとコイル14の距離Δが算出され、この距離Δからコイン厚さtが算出される。そして、コイン厚さtに基づき、コイン通路13を通過したコインCが識別される。
【0018】
本例のコインセンサ10においてもコイル14を発振側と共振させるための共振回路は備わっていない。発振信号のレベルを上げると共に、受信側コイルの感度を高めることにより、十分に実用に供するコインセンサを実現できることが確認された。したがって、共振回路を必要としない廉価な回路構成のコインセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した透過型のコインセンサの主要部を示す概略構成図である。
【図2】図1のコインセンサの制御系の概略ブロック図である。
【図3】図1のコインセンサにおける発振用信号および受信側コイルの出力信号を示す信号波形図である。
【図4】本発明を適用した反射型のコインセンサの概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1、10 コインセンサ
2 センサケース
3、13 コイン通路
4 発振側コイル
5 受信側コイル
6、15 発振回路
6A、16 発振器
7、17 信号処理回路
14 コイル
18 F/V変換回路
C コイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイン通路を挟み、発振側コイルと受信側コイルを対峙させ、
前記発振側コイルと発振回路で発振器を構成することにより当該発振側コイルを発生させるか、あるいは、前記発振側コイルに所定周波数の信号を流して当該発振側コイルを発振させ、
コイン通過時における前記発振側コイルの発振信号を、当該発振側コイルとは共振状態に制御されていない前記受信側コイルによって受信し、
前記コイン通路をコインが通過する際における前記受信側コイルの出力信号の変化からコイン材質を判別し、これに基づき前記コイン通路を通過したコインを識別することを特徴とするコイン識別方法。
【請求項2】
コイン通路の一方の側に、発振側コイルおよび受信側コイルとして機能するコイルを配置し、
前記コイルと発振回路で発振器を構成することにより当該コイルを発生させるか、あるいは、前記コイルに所定周波数の信号を流して当該コイルを発振させ、
前記コイルから発振して前記コイン通路を通過するコインによって反射された信号を、共振状態に制御されていない当該コイルによって受信し、
前記コイン通路をコインが通過する際における前記コイルの出力信号の変化からコイン厚さを判別し、これに基づき前記コイン通路を通過したコインを識別することを特徴とするコイン識別方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコイン識別方法によりコインの識別を行うことを特徴とするコインセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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