説明

コップ

【課題】2つ以上のコップを重ねたときに、それぞれの外壁が接触するのを防止して、外壁に傷が付いたり、外壁が割れたりするのを防止する。
【解決手段】コップ10は、円板状の底部11と、底部11の外側の周縁部11aから立ち上がる外壁12と、底部11の内側の周縁部11bから立ち上がる係合突起13とを備えている。外壁12は上部に位置する部分ほど広がる円錐台状の筒状に形成され、係合突起13は上部に位置する部分ほど縮まる円錐台状の筒状に形成されている。係合突起13の肉厚t3は、底部11の肉厚t1よりも薄く、外壁12の肉厚t2よりも厚く設定されている。係合突起13の傾斜角度βは、外壁12の傾斜角度αよりも大きく設定されている。このため、2つのコップ10,10を、それぞれの係合突起13,13を係合させることで上下に重ねたときに、それぞれの外壁12,12の間にギャップGが形成されて両者は接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる外壁を備えていて、上下に重ねることが可能なコップに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水や清涼飲料、アルコール類を飲む際に使用するコップにおいて、外壁が斜めになったものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているコップは、円形の底部の外周面から外壁が立ち上がるように形成されていて、この外壁は、上部ほど開口面積が大きくなっている。すなわち、外壁は、下端側よりも上端側の方が直径が大きくなる円錐台状の筒状に形成されている。
【0004】
このような形状のコップは、外壁が円筒状のコップとは異なり、複数個のものを上下に重ねることができるため、収納スペースを節約することができる、また、使用後のコップを回収する際に、重ねることで沢山のコップを1度で回収することができる等の利点がある。
【特許文献1】特開2000−51044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなコップは、重ねた際に、下側のコップの外壁の内表面に、上側のコップの外壁の外表面が接触するために、両者が擦れて外壁に傷が付いたり、1つの外壁に横方向の力(外表面が円錐台状の場合には径方向)が作用したときにはその力はこの外壁に接触している他のコップに直接、伝達されるために外壁が割れやすいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、重ねたときに、下側のコップの外壁と上側のコップの外壁とが接触しないようにすることにより、外壁が傷付いたり、割れたりすることを防止するようにしたコップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、周縁部が円形又は正多角形に形成された底部と、前記周縁部から上方に立ち上がり、上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる円錐台状又は角錐台状の筒状の外壁とを備えたコップに関する。
【0008】
この発明に係るコップは、前記底部の中心に上方に位置する部分ほど細くなる円錐状,円錐台状,角錐状,又は角錐台状の筒状の係合突起であって、前記2つのコップが上下に重ねられる際に、相互に上下方向に係合される係脱自在な係合突起を有し、
【0009】
2つの前記コップが上下に重ねられて前記2つの係合突起が係合され、下側の前記コップに対して、上側の前記コップが上下方向及び横方向に位置決めされた状態において、下側の前記コップの前記外壁と上側の前記コップの前記外壁とが外側と内側とで重なる領域内の任意の高さ位置において、前記係合突起の中心軸から、下側の前記コップの前記外壁の内表面までの距離が、上側の前記コップの前記外壁の外表面までの距離よりも大きくなるように、前記係合突起及び前記外壁が形成されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るコップにおいて、前記外壁は、前記中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が直線状である、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に係るコップにおいて、前記外壁は、前記中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が曲線状である、ことを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に係るコップにおいて、前記外壁は、前記断面形状が前記中心軸を基準として外側に向かって凹状に形成されている、ことを特徴としている。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に係るコップにおいて、前記係合突起の肉厚が、前記外壁の肉厚よりも厚く設定されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によると、2つのコップの係合突起を上下に係合させることにより、一方のコップに対して他方のコップを位置決めした状態で上下に重ね合わせることができ、この際、2つのコップのそれぞれの外壁が接触しないので、接触に起因する傷や、割れを防止することができる。
【0015】
請求項2の発明によると、外壁は、中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が直線状であるので、コップ全体の形状を単純なものとすることができる。
【0016】
請求項3の発明によると、外壁は、中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が曲線状であるので、コップ全体の形状を変化に富んだものとすることができる。
【0017】
請求項4の発明によると、外壁は、断面形状が中心軸を基準として外側に向かって凹状に形成されているので、外壁の外表面を手で握ったときに親指と他の指との間にコップを自然に挟み込むことができ、かつコップが手から滑り落ちにくい。
【0018】
請求項5の発明によると、2つのコップを上下に重ねたときに、相互に係合(接触)される係合突起の肉厚が、相互に接触することのない外壁の肉厚よりも厚く形成されているので、係合突起が割れにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るコップの最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
【0020】
図1を参照して、実施形態1のコップ10について説明する。ここで、図1(a)は2つのコップ10,10を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ10,10を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【0021】
これらの図に示すように、コップ10は、底部11と外壁12と係合突起13とを備えている。本実施形態のコップ10は、上下方向(垂直方向)に向いた中心軸Cを基準に、(b)に示す断面形状のものを回転させて形成した、いわゆる回転体となっている。したがって、中心軸Cは、底部11,外壁12,係合突起13の中心、またコップ10全体の中心となっている。
【0022】
底部11は、外側の周縁部11aが円形に形成されており、また、内側の周縁部11bは、外側の周縁部11aよりも直径が小さい小径の円形に形成されている。つまり、底部11は、ドーナツを軸方向に押しつぶしたような環状の円板に形成されている。
【0023】
外壁12は、底部11における外側の周縁部11aから上方に延びるように形成されている。外壁12は上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる円錐台の筒状に形成されている。つまり、外壁12の外表面12a及び内表面12bは、上方に位置する部分ほど中心軸Cを中心とした直径が大きくなるように形成されている。また、本実施形態では、外壁12は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が直線状になっている。つまり、外壁12は、中心軸Cに沿って下方から上方に向かうときの外表面12a及び内表面12bの直径の増加率が一定となっている。外壁12は、外表面12a及び内表面12bの直径が、上端に形成される開口部12cにおいて最大となっている。
【0024】
係合突起13は、上方に位置する部分ほど細くなる円錐台の筒状に形成されている。すなわち、係合突起13は、底部11の内側の周縁部11bから上方に立ち上がるように形成されていて、外側面13a及び内側面13bの、中心軸Cを基準とした直径が、上端側に位置する部分ほど小さくなるように形成されている。本実施形態では、係合突起13の上端は、ほぼ円板状の頂部13cとなっている。また、本実施形態では、係合突起13は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が直線状になっている。つまり、係合突起13は、中心軸Cに沿って下方から上方に向かうときの外側面13a及び内側面13bの直径の減少率が一定となっている。係合突起13は、外側面13a及び内側面13bの直径が、上端の頂部13c近傍で最小となっている。
【0025】
上述の係合突起13の高さhは、外壁12の高さHのほぼ半分となっている。高さも含め、係合突起13を大きく形成したときには、コップ10全体の、液体を収納できる容積が減少するが、後述するように、2つのコップ10,10の係合突起13,13を係合させることで、2つのコップ10,10を上下に重ね合わせる際に、両係合突起13,13の接触面積が広くなるので、両コップ10,10を安定的に重ね合わせることができる。
【0026】
本実施形態では、底部11の肉厚をt1,外壁12の肉厚をt2,係合突起13の肉厚をt3としたときに、これら底部11,外壁12,係合突起13は、これらの肉厚t1,t2,t3の間に、
t2<t3<t1
が成り立つように形成されている。
【0027】
すなわち、コップ10全体の支持部分となる底部11の肉厚t1が最も厚く、ついで、重ねる際に、相互に係合される係合突起13の肉厚t3が厚く、外壁12の肉厚t2が最も薄くなるように形成されている。
【0028】
ここで、図1(b)に示すように、底部11に対する(水平面に対する)外壁12の傾斜角度をα、同じく底部11に対する係合突起の傾斜角度をβとすると、本実施形態では、これらの傾斜角度α,βの間に、
α<β
が成立するように、外壁12及び係合突起13が形成されている。
【0029】
ここで、コップ10の材質については、プラスチックやガラスを好適に使用することができるが、これらに限定されるものではなく、金属や木材を使用することも可能である。また、色については、任意の色を使用することができ、さらに、透明や半透明であってもよい。特に透明や半透明の場合には、コップ10内に入れられた液体を透かして、係合突起13が見えるので、造形的に興趣あるものとなる。なお、材質や色については、他の実施形態においても同様に、任意のものを使用することが可能である。
【0030】
本実施形態においては、上述のように、外壁12の肉厚t2を、係合突起13の肉厚t3よりも薄く設定し、また、外壁12の傾斜角度αを、係合突起13の傾斜角度βよりも小さく設定することにより、図2(b)に示すように、2つのコップ10,10を上下に重ね合わせて、それぞれの係合突起13,13を係合させたときに、下側のコップ10に対して、上側のコップ10が上下方向及び横方向(水平方向)に位置決めされる。このとき、下側のコップ10の外壁12と上側のコップ10の外壁12とが外側と内側とで重なる領域内の任意の高さ位置において、中心軸Cから、下側のコップ10の外壁12の内表面12bまでの距離Rが、上側のコップ10の外壁12の外表面12aまでの距離rよりも大きくなる。これにより、下側のコップ10の外壁12と上側のコップ10の外壁12との間にギャップGが形成されることになる。
【0031】
ギャップGができる理由について説明する。コップ10において、外壁12の肉厚t2と係合突起13の肉厚t3とが同じで、かつ、外壁12の傾斜角度αと係合突起13の傾斜角度βとが同じである場合において、係合突起13,13を係合させると、それぞれのコップ10,10の外壁12,12が接触することになる。これを外壁接触状態とすると、この外壁接触状態から、外壁12,12の肉厚t2を薄くする場合を考えると、2つの外壁12,12の間にギャップGが形成されることがわかる。つまり、傾斜角度α,βが同じ場合には、係合突起13の肉厚t3よりも外壁12の肉厚t2が薄い場合には、ギャップGが形成される。
【0032】
一方、上述と同じ外壁接触状態から、外壁12,12の傾斜角度αを小さくしていくと、この場合も2つの外壁12,12の間にギャップGが形成されることがわかる。つまり、外壁12の肉厚t2と係合突起13の肉厚t3が同じ場合には、係合突起13の傾斜角度βよりも外壁12の傾斜角度αが小さい場合には、ギャップGが形成される。
【0033】
このことから、本実施形態のように、外壁12の肉厚t2を係合突起13の肉厚t3よりも薄く設定し、かつ外壁12の傾斜角度αを係合突起13の傾斜角度βよりも小さく設定した場合には、2つの外壁12,12の間にギャップGが形成されることになる。
【0034】
そしてギャップGが形成されると、2つのコップ10,10の外壁12,12が接触しないので、これらが擦れて傷ついたり、割れたりすることがない。3つ以上のコップ10,10……を重ねたときも同様である。
<実施形態2>
【0035】
図2を参照して、実施形態2のコップ20について説明する。ここで、図2(a)は2つのコップ20,20を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ20,20を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【0036】
これらの図に示すように、コップ20は、底部21と外壁22と係合突起23とを備えている。本実施形態のコップ20は、上下方向(垂直方向)に向いた中心軸Cを基準に、(b)に示す断面形状のものを回転させて形成した、いわゆる回転体となっている。したがって、中心軸Cは、底部21,外壁22,係合突起23の中心、またコップ20全体の中心となっている。
【0037】
底部21は、外側の周縁部21aが円形に形成されており、また、内側の周縁部21bは、外側の周縁部21aよりも直径が小さい小径の円形に形成されている。つまり、底部21は、ドーナツを軸方向に押しつぶしたような環状の円板に形成されている。
【0038】
外壁22は、底部21における外側の周縁部21aから上方に延びるように形成されている。外壁22は上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる円錐台状の筒状に形成されている。つまり、外壁22の外表面22a及び内表面22bは、上方に位置する部分ほど中心軸Cを中心とした直径が大きくなるように形成されている。また、本実施形態では、外壁12は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が直線状と曲線状とを合成したような形状になっている。つまり、外壁12は、下端から上端の開口部22cの少し下までは直線状に形成され、開口部近傍においては中心軸Cを基準として外側に向かって凹状の曲線状となるように形成されている。
【0039】
係合突起23は、上方に位置する部分ほど細くなるほぼ円錐の筒状に形成されている。すなわち、係合突起23は、底部21の内側の周縁部21bから上方に立ち上がるように形成されていて、外側面23a及び内側面23bの、中心軸Cを基準とした直径が、上端側に位置する部分ほど小さくなるように形成されている。また、本実施形態では、係合突起23は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が直線状になっている。
【0040】
上述の係合突起23の高さhは、外壁22の高さHのほぼ1/3となっている。高さも含め、係合突起13を大きく形成したときには、コップ20全体の、液体を収納できる容積が減少するが、後述するように、2つのコップ20,20の係合突起23,23を係合させることで、2つのコップ20,20を上下に重ね合わせる際に、両係合突起13,13の接触面積が広くなるので、両コップ20,20を安定的に重ね合わせることができる。
【0041】
本実施形態においても、上述の実施形態1と同様の理由で、上下に2つ重ねたコップ20,20のそれぞれの外壁20,20の間にギャップGが形成される。
【0042】
これにより、2つのコップ20,20の外壁22,22が接触しないので、これらが擦れて傷ついたり、割れたりすることがない。3つ以上のコップ20,20……を重ねたときも同様である。
【0043】
本実施形態によると、さらに、外壁22の開口部22c近傍が、凹状に湾曲しているので、カップ20内に入れられた液体を飲む際に、外壁22の上端に口を当てたときに、下唇がこの凹状に湾曲した部分に倣って自然に当たるので、液体を飲む際に飲みやすい、という効果がある。
<実施形態3>
【0044】
図3を参照して、実施形態3のコップ30について説明する。ここで、図3(a)は2つのコップ30,30を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ30,30を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【0045】
これらの図に示すように、コップ30は、底部31と外壁32と係合突起33とを備えている。本実施形態のコップ30は、上下方向(垂直方向)に向いた中心軸Cを基準に、(b)に示す断面形状のものを回転させて形成した、いわゆる回転体となっている。したがって、中心軸Cは、底部31,外壁32,係合突起33の中心、またコップ30全体の中心となっている。
【0046】
底部31は、外側の周縁部31aが円形に形成されており、また、内側の周縁部31bは、外側の周縁部31aよりも直径が小さい小径の円形に形成されている。つまり、底部31は、ドーナツを軸方向に押しつぶしたような環状の円板に形成されている。
【0047】
外壁32は、底部31における外側の周縁部31aから上方に延びるように形成されている。外壁22は上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなるほぼ円錐台の筒状に形成されている。つまり、外壁32の外表面32a及び内表面32bは、上方に位置する部分ほど中心軸Cを中心とした直径が大きくなるように形成されている。また、本実施形態では、外壁32は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が2つの曲線を合成したような形状になっている。つまり、外壁32は、下端側が中心軸Cを基準として外側に向かって凸状の曲線となるように形成され、上端側が中心軸Cを基準に外側に向かって凹状の曲線となるように形成されている。このため、コップ30を手で持つ際に、上端側の凹状の部分を親指と人差し指で挟み込み、残りの指を外壁の外表面32aに自然に当てることができるので、非常に持ちやすい形状となっている。
【0048】
係合突起33は、上方に位置する部分ほど細くなるほぼ円錐台状に形成されている。すなわち、係合突起33は、底部31の内側の周縁部31bから上方に立ち上がるように形成されていて、外側面33aの、中心軸Cを基準とした直径が、上端側に位置する部分ほど小さくなるように形成されている。本実施形態では、係合突起33の下端の裏面側に、この係合突起33の先端側と同形の係合凹部33bが形成されている。この係合凹部33bは、2つのコップ30,30を上下に重ねる際に、下側のコップ30の係合突起33の先端側が係合されるものである。
【0049】
上述の係合突起33の高さhは、外壁32の高さHのほぼ1/3となっている。
【0050】
本実施形態においては、外壁32の形状や肉厚や傾斜角度、また係合とき33の形状や傾斜角度が、2つのコップ30,30を重ね合わせて、それぞれの係合突起33を係合させた際に、2つのコップ30,30のそれぞれの外壁32,32が接触することなく、これらの間にギャップGが形成されるようになっている。
【0051】
これにより、2つのコップ30,30の外壁32,32が接触しないので、これらが擦れて傷ついたり、割れたりすることがない。3つ以上のコップ30,30……を重ねたときも同様である。
【0052】
本実施形態によると、さらに、外壁32の開口部32c近傍が、凹状に湾曲しているので、カップ30内に入れられた液体を飲む際に、外壁22の上端に口を当たときに、下唇がこの凹状に湾曲した部分に倣って自然に当たるので、液体を飲む際に飲みやすい、という効果がある。また、上述のように、非常に持ちやすいという効果もある。
<実施形態4>
【0053】
図4を参照して、実施形態4のコップ40について説明する。ここで、図4(a)はコップ40の上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は(a)をA−A線で切断して示す縦断面図、(d)は2つのコップ40,40を上下に重ねた状態を(a)に示すA−A線で切断して示す縦断面図である。
【0054】
これらの図に示すように、コップ40は、底部41と外壁42と係合突起43とを備えている。本実施形態のコップ40は、上下方向(垂直方向)に向いた中心軸Cを基準に、(d)に示す断面形状のものを回転させて形成した、いわゆる回転体となっている。したがって、中心軸Cは、底部41,外壁42,係合突起43の中心、またコップ40全体の中心となっている。
【0055】
底部41は、外側の周縁部41aが円形に形成されており、また、内側の周縁部41bは、外側の周縁部41aよりも直径が小さい小径の円形に形成されている。つまり、底部41は、ドーナツを軸方向に押しつぶしたような環状の円板に形成されている。
【0056】
外壁42は、底部41における外側の周縁部41aから上方に延びるように形成されている。外壁22は上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる円錐台状の筒状に形成されている。つまり、外壁42の外表面42a及び内表面42bは、上方に位置する部分ほど中心軸Cを中心とした直径が大きくなるように形成されている。また、本実施形態では、外壁42は、中心軸Cを含む仮想平面(不図示)で切断したときの断面形状が、2つの曲線を合成したような形状になっている。つまり、外壁42は、上述の実施形態3と同様の形状となっていて、下端側が中心軸Cを基準として外側に向かって凸状の曲線状となるように形成され、上端側が中心軸Cを基準に外側に向かって凹状の曲線状となるように形成されている。このため、コップ40を手で持つ際に、上端側の凹状の部分を親指と人差し指で挟み込み、残りの指を外壁の外表面42aに自然に当てることができるので、非常に持ちやすい形状となっている。
【0057】
係合突起43は、上方に位置する部分ほど細くなるほぼ円錐状の筒状に形成されている。すなわち、係合突起43は、底部41の内側の周縁部41bから上方に立ち上がるように形成されていて、外側面43a及び内側面43bの、中心軸Cを基準とした直径が、上端側に位置する部分ほど小さくなるように形成されている。また、本実施形態では、係合突起43は、内側面43bが中心軸Cに沿って段状に形成されている。すなわち、内側面43bは、中心軸Cに沿って下方か上方に向かうに従って、中心軸Cを中心とした直径(内径)が同じ部分が少しつづいた後、直径が小さくなる。そして、小さくなった直径が少しつづいた後、さらに直径が小さくなる。これを複数回繰り返すことで、段状に形成されている。このように内側面43bが段状に形成されることにより、2つのコップ40,40を上下に重ねる際に、上側のコップ40の段状の内側面43bが、下側のコップ40の係合突起43の外側面43aに係合するので、滑り止めとなって、係合状態を確実なものとすることができる。さらに、コップ40全体を透明または半透明な材料によって形成し、この段状の内側面43bに色を付けることにより、コップ40内に入れられた液体を透かして、見える段状が造形的に優れた演出となる。
【0058】
上述の係合突起43の高さhは、外壁42の高さHのほぼ1/2となっている。高さも含め、係合突起43を大きく形成したときには、コップ40全体の、液体を収納できる容積が減少するが、後述するように、2つのコップ40,40の係合突起43,43を係合させることで、2つのコップ40,40を上下に重ね合わせる際に、両係合突起43,43の接触面積が広くなるので、両コップ40,40を安定的に重ね合わせることができる。
【0059】
本実施形態では、底部41の肉厚をt1,外壁42の肉厚をt2,係合突起43の肉厚をt3(最も薄い部分の肉厚)としたときに、これら底部41,外壁42,係合突起43は、これらの肉厚t1,t2,t3の間に、
t2<t3<t1
が成り立つように形成されている。
すなわち、コップ40全体の支持部分となる底部41の肉厚t1が最も厚く、ついで、重ねる際に、相互に係合される係合突起43の肉厚t3が厚く、外壁42の肉厚t2が最も薄くなるように形成されている。
【0060】
本実施形態においては、外壁42の形状や肉厚や傾斜角や湾曲の程度、また係合突起43の形状や肉厚や傾斜角度が、2つのコップ40,40を重ね合わせて、それぞれの係合突起43,43を係合させた際に、2つのコップ40,40のそれぞれの外壁42,42が接触することなく、これらの間にギャップGが形成されるように設定されている。
【0061】
これにより、2つのコップ40,40の外壁42,42が接触しないので、これらが擦れて傷ついたり、割れたりすることがない。3つ以上のコップ40,40……を重ねたときも同様である。
【0062】
本実施形態によると、さらに、外壁32の開口部42c近傍が、凹状に湾曲しているので、カップ40内に入れられた液体を飲む際に、外壁42の上端に口を当たときに、下唇がこの凹状に湾曲した部分に倣って自然に当たるので、液体を飲む際に飲みやすい、という効果がある。また、上述のように、非常に持ちやすいという効果もある。さらに、上述のように係合突起43の段状の内側面43bは滑り止めとなり、またこれに色を付すことにより造形的に優れたものとすることができる。
<実施形態5>
【0063】
図5を参照して、実施形態5のコップ50について説明する。ここで、図5(a)はコップ50の上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【0064】
これらの図に示すように、コップ50は、底部51と外壁52と係合突起53とを備えている。本実施形態のコップ50は、中心軸Cが、底部51,外壁52,係合突起53の中心、またコップ50全体の中心となっている。
【0065】
底部51は、外側の周縁部51aが正六角形に形成されており、また、内側の周縁部51bは、外側の周縁部51aよりも小さい正六角形に形成されている。
【0066】
外壁52は、底部51における外側の周縁部51aから上方に立ち上がるように形成されている。外壁52は上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる正六角錐台状の筒状に形成されている。つまり、外壁52の外表面52a及び内表面52bは、上方に位置する部分ほど中心軸Cからの距離が遠くなるように形成されている。また、本実施形態では、外壁52は、図5(a)に示すように、上方から見た形状が正六角形となっている。
【0067】
係合突起53は、上方に位置する部分ほど細くなるほぼ正六角錐台状の筒状に形成されている。すなわち、係合突起53は、底部51の内側の周縁部51bから上方に立ち上がるように形成されていて、外側面53a及び内側面53bの、中心軸Cを基準とした距離が、上端側に位置する部分ほど近くなるように形成されている。
【0068】
上述の係合突起53の高さhは、外壁52の高さHのほぼ1/2となっている。高さも含め、係合突起53を大きく形成したときには、コップ50全体の、液体を収納できる容積が減少するが、後述するように、2つのコップ50,50の係合突起53,53を係合させることで、2つのコップ50,50を上下に重ね合わせる際に、両係合突起53,53の接触面積が広くなるので、両コップ50,50を安定的に重ね合わせることができる。
【0069】
本実施形態では、底部51の肉厚をt1,外壁52の肉厚をt2,係合突起53の肉厚をt3としたときに、これら底部51,外壁52,係合突起53は、これらの肉厚の間に、
t2<t3<t1
が成り立つように形成されている。
【0070】
すなわち、コップ50全体の支持部分となる底部51の肉厚t1が最も厚く、ついで、重ねる際に、相互に係合される係合突起53の肉厚t3が厚く、外壁52の肉厚t2が最も薄くなるように形成されている。
【0071】
本実施形態においては、外壁52の形状や肉厚や傾斜角度、また、係合突起53の形状や肉厚や傾斜角度が、2つのコップ50,50を重ね合わせて、それぞれの係合突起53,53を係合させた際に、上述の実施形態1と同様の理由で、2つのコップ50,50のそれぞれの外壁52,52が接触することなく、これらの間にギャップG(不図示)が形成されるようになっている。
【0072】
これにより、2つのコップ50,50の外壁52,52が接触しないので、これらが擦れて傷ついたり、割れたりすることがない。3つ以上のコップ50,50……を重ねたときも同様である。
【0073】
本実施形態では、係合突起53は、ほぼ正六角錐台状の筒状に形成されているが、ほぼ六角錐状の筒状に形成されているものであってもよい。
【0074】
また、本実施形態では、コップ50全体の形状が正六角形である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、正三角形、正四角径、正五角形、正七角形、正八角形等の、正多角形に適用することができ、この場合も同等の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)は2つのコップ10,10を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ10,10を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【図2】(a)は2つのコップ20,20を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ20,20を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【図3】(a)は2つのコップ30,30を上下に重ねた状態を上方から見た上面図、(b)は(a)をA−A線で切って示す縦断面図、(c)は2つのコップ30,30を上下に重ねた状態を下方から見た下面図である。
【図4】(a)は2つのコップ40の上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は(a)をA−A線で切断して示す縦断面図、(d)は2つのコップ40,40を上下に重ねた状態を(a)に示すA−A線で切断して示す縦断面図である。
【図5】(a)は2つのコップ50の上面図、(b)は正面図、(c)は下面図である。
【符号の説明】
【0076】
10,20,30,40,50
カップ
11,21,31,41,51
底部
11a,21a,31a,41a,51a
底部の周縁部
12,22,32,42,52
外壁
12a,22a,32a,42a,52a
外壁の外表面
12b,22b,32b,42b,52b
外壁の内表面
12c,22c,32c,42c,52c
開口部
13,23,33,43,53
係合突起
C 中心軸
R 中心軸から下側のコップの内表面までの距離
r 中心軸から上側のコップの外表面までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部が円形又は正多角形に形成された底部と、前記周縁部から上方に立ち上がり、上方に位置する部分ほど開口面積が大きくなる円錐台状又は角錐台状の筒状の外壁とを備えたコップにおいて、
前記底部の中心に上方に位置する部分ほど細くなる円錐状,円錐台状,角錐状,又は角錐台状の筒状の係合突起であって、前記2つのコップが上下に重ねられる際に、相互に上下方向に係合される係脱自在な係合突起を有し、
2つの前記コップが上下に重ねられて前記2つの係合突起が係合され、下側の前記コップに対して、上側の前記コップが上下方向及び横方向に位置決めされた状態において、下側の前記コップの前記外壁と上側の前記コップの前記外壁とが外側と内側とで重なる領域内の任意の高さ位置において、前記係合突起の中心軸から、下側の前記コップの前記外壁の内表面までの距離が、上側の前記コップの前記外壁の外表面までの距離よりも大きくなるように、前記係合突起及び前記外壁が形成されている、
ことを特徴とするコップ。
【請求項2】
前記外壁は、前記中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が直線状である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコップ。
【請求項3】
前記外壁は、前記中心軸を含む仮想平面で切断したときの断面形状が曲線状である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコップ。
【請求項4】
前記外壁は、前記断面形状が前記中心軸を基準として外側に向かって凹状に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のコップ。
【請求項5】
前記係合突起の肉厚が、前記外壁の肉厚よりも厚く設定されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35972(P2010−35972A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205365(P2008−205365)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(508240616)カツワークス有限会社 (2)
【Fターム(参考)】