説明

コネクタ保護具及びワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスが運搬及び敷設される際にワイヤハーネスのコネクタを保護できるとともに、ワイヤハーネスにおけるコネクタが設けられた部分を、パネルの貫通孔に容易に通すことができること。
【解決手段】コネクタ保護具10は、相互に組み合わされる第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bを備える。ロック部23は、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bをそれらが組み合わされた状態で保持し、その保持は解除可能である。コネクタ収容部21は、複数のコネクタ8が配置される収容空間2Sを取り囲む。テーパ部22は、コネクタ収容部21と連なり、外形がコネクタ収容部21との境界部分から先細りに形成されている。電線挟持部24は、コネクタ収容部21の内側面に間隔を空けて設けられ、収容空間2S内に配置されるコネクタ8に繋がる枝線92の一部を挟んで支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に設けられたコネクタを保護するコネクタ保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の絶縁電線が束ねられた電線束を備え、その電線束には、端部にコネクタが設けられた電線であるコネクタ付電線が含まれる。また、ワイヤハーネスにおいて、コネクタは、電線束の幹線部の端部から延び出た電線の端部に設けられていたり、或いは、電線束の幹線部の中間部分から分岐した枝線の端部に設けられていたりする。
【0003】
ワイヤハーネスにおいて、コネクタは、一定範囲内で自由に移動可能な状態であるため、ワイヤハーネスが運搬及び敷設される際、コネクタが、周囲の物と衝突して破損する恐れがある。また、コネクタにおける電気的接続部は、接続相手である他のコネクタと接続される前において露出しているため、異物が付着しやすい。
【0004】
従って、ワイヤハーネスのコネクタは、極力、ワイヤハーネスの敷設が完了する直前まで保護具により覆われて保護されることが望ましい。
【0005】
従来の一般的なワイヤハーネスは、運搬及び敷設の途中までの過程において、個々のコネクタに被せられた保護キャップを備える。通常、保護キャップは、ワイヤハーネスのコネクタが接続相手である他のコネクタと接続される前に取り外される。
【0006】
また、特許文献1には、ワイヤハーネスの末端部が折り返され、コネクタの接続端面がワイヤハーネスの幹線部に押し当てられた状態で、ワイヤハーネスの末端部が、幹線部に対して粘着テープで固定されることについて示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−102123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両に搭載されるワイヤハーネスは、パネルに形成された貫通孔に通されることがある。例えば、エンジンルームとキャビンとに亘る経路に沿って敷設されるワイヤハーネスは、ボディパネルに形成された貫通孔に通される。
【0009】
しかしながら、従来の一般的なワイヤハーネスは、パネルの貫通孔に通される際、複数のコネクタ各々は保護キャップで保護されるものの、各コネクタが貫通孔の縁部に引っ掛かりやすいという問題点を有している。特に、複数のコネクタが、電線束の幹線部の中間部分から分岐した複数の枝線各々の端部に設けられている場合、コネクタが貫通孔の縁部に引っ掛かる問題はより顕著となる。
【0010】
また、特許文献1に示されるように、ワイヤハーネスの末端部が折り返されている場合、非常に太くなった折り返し部分が、やはり貫通孔の縁部に引っ掛かりやすい。
【0011】
本発明は、ワイヤハーネスが運搬及び敷設される際にワイヤハーネスのコネクタを保護できるとともに、ワイヤハーネスにおけるコネクタが設けられた部分を、パネルの貫通孔に容易に通すことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコネクタ保護具は、相互に組み合わされる2つの要素部材を備え、端部にコネクタが設けられた電線を含む電線束におけるコネクタを保護する用具である。そして、本発明に係るコネクタ保護具は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、2つの要素部材各々の一部からなり、相互に係り合うことにより2つの要素部材をそれらが組み合わされた状態で保持するとともにその保持の解除が可能なロック部である。
(2)第2の構成要素は、複数のコネクタが配置される収容空間を取り囲むコネクタ収容部である。
(3)第3の構成要素は、コネクタ収容部と連なり、外形がコネクタ収容部との境界部分からコネクタ収容部に対し反対側の端へ先細りに形成されたテーパ部である。
(4)第4の構成要素は、コネクタ収容部の内側面に間隔を空けて設けられ、収容空間内に配置されるコネクタに繋がる電線の一部を挟んで支持する複数の電線挟持部である。
【0013】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部及びテーパ部が筒状に形成されていることが考えられる。
【0014】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部とそのコネクタ収容部の両側に連なる2つのテーパ部とが、筒状に形成されていることが考えられる。
【0015】
また、本発明に係るコネクタ保護具が、さらに以下に示される構成要素を備えることも考えられる。
(5)第5の構成要素は、コネクタ収容部の内側面に間隔を空けて設けられ、収容空間を複数の電線挟持部各々に対応したコネクタごとの配置空間に仕切る隔壁である。
【0016】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、2つの要素部材が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていることが考えられる。
【0017】
また、本発明は、本発明に係るコネクタ保護具を備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。即ち、本発明に係るワイヤハーネスは、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、端部にコネクタが設けられた電線を含む電線束である。
(2)第2の構成要素は、本発明に係るコネクタ保護具である。このコネクタ保護具において、コネクタ収容部は、複数のコネクタが配置された収容空間を取り囲む。また、複数の電線挟持部各々は、収容空間内に配置されたコネクタに繋がる電線の一部を挟んで支持する。
【0018】
また、本発明に係るワイヤハーネスが、以下に示される各構成を有していることが考えられる。即ち、コネクタ収容部及びテーパ部は、電線束の幹線部が貫通した筒状に形成されている。さらに、コネクタ収容部は、電線束の幹線部の中間部分から分岐した枝線の端部に設けられたコネクタが配置された収容空間を取り囲む。さらに、電線挟持部は、その枝線の一部を挟んで支持している。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部は、収容空間に配置された複数のコネクタを取り囲む。さらに、電線挟持部が、コネクタに繋がる電線の一部を挟んで支持することにより、コネクタは、コネクタ収容部内のほぼ一定の位置に保持される。そのため、当該コネクタ保護具を備えたワイヤハーネスが運搬及び敷設されるときに、各コネクタは、コネクタ収容部によって保護される。
【0020】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部は、その内側に複数のコネクタを一まとめにして収容し、さらに、先細りに形成されたテーパ部と連なっている。そのため、ワイヤハーネスにおけるコネクタが設けられた部分、即ち、コネクタ保護具が取り付けられた部分は、テーパ部の細い先端からパネルの貫通孔に通されることにより、コネクタが引っ掛かることなく円滑かつ容易に貫通孔を通る。
【0021】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部及びテーパ部が筒状に形成されていれば、電線束の幹線部が、コネクタ収容部及びテーパ部の中空部を貫通可能である。そのようなコネクタ保護具は、電線束の幹線部の中間部分から分岐した枝線の端部に設けられたコネクタを保護することもできる。
【0022】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部とコネクタ収容部の両側に連なる2つのテーパ部とが、筒状に形成されていればなお好適である。この場合、幹線部の中間部分から分岐した枝線のコネクタの保護が可能であるとともに、ワイヤハーネスが、両端うちのいずれの一方からパネルの貫通孔に通されても、コネクタ保護具は、テーパ部の細い先端から円滑に貫通孔に通されることになる。従って、ワイヤハーネスをパネルの貫通孔に通す作業の自由度が高まり好適である。
【0023】
また、本発明に係るコネクタ保護具において、コネクタ収容部の内側面に、収容空間をコネクタごとの配置空間に仕切る隔壁が設けられていれば好適である。この場合、複数のコネクタが、コネクタ収容部内で相互に接触することが防止され、コネクタの保護がより確実となる。
【0024】
また、コネクタ保護具において、2つの要素部材が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていれば好適である。この場合、部品点数が少なくなり、コネクタ保護具をワイヤハーネスに取り付けるための工数、及び部品管理のための工数がより簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタ保護具10の五面図である。
【図2】コネクタ保護具1の背面図である。
【図3】第一電線束に取り付けられる前のコネクタ保護具10及び第一電線束の平面図である。
【図4】第一電線束に取り付けられる過程のコネクタ保護具10及び第一電線束の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の平面図である。
【図6】第二電線束に取り付けられる前のコネクタ保護具10及び第二電線束の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るコネクタ保護具10Aの五面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス1Bの平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス1Cの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0027】
<第1実施形態:コネクタ保護具>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るコネクタ保護具10の構成について説明する。コネクタ保護具10は、端部にコネクタが設けられた電線を含む電線束におけるコネクタを保護する用具である。なお、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は背面図、図1(d)は左側面図、図1(e)は右側面図である。
【0028】
コネクタ保護具10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。
【0029】
なお、コネクタ保護具10が、ゴム又はゴム系材料であるエラストマー(elastic polymer)などからなる弾性部材であることも考えられる。なお、エラストマーには、天然ゴム及び合成ゴムなどの加硫ゴム、並びにウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムなどの熱硬化性樹脂系エラストマーが含まれる。
【0030】
図1に示されるように、コネクタ保護具10は、相互に組み合わされる第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bを備えている。これら第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bは、相互に組み合わされることにより、後述する電線束の幹線部が貫通可能な筒状に形成される。以下、組み合わされた第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bのことを筒状部20と称する。なお、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bは、コネクタ保護具10を構成する2つの要素部材の一例である。
【0031】
また、第一半筒部材2Aと第二半筒部材2Bとの間には、曲げ変形可能な接続部3が形成されている。第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bは、接続部3と連なって一体に形成されている。さらに、コネクタ保護具10は、ロック部23、複数の電線挟持部24及び複数の隔壁25を備えている。
【0032】
<接続部>
接続部3は、直線状の溝を形成するように折り返して湾曲した板状に形成された部分である。このような形状で形成された接続部3は、それが形成する溝を開閉する方向において可撓性を有し、弾性的に曲げ変形可能に構成されている。
【0033】
<筒状部>
コネクタ保護具10は、接続部3が曲がることによって接続部3の部分で折り返し、第一半筒部材2Aと第二半筒部材2Bとが、相互に内側面が対向する状態で重なる。第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bは、相互に内側面が対向する状態で組み合わされることにより、筒状部20となる。
【0034】
なお、図2は、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bが組み合わされた状態におけるコネクタ保護具10の背面図である。図2において、コネクタ保護具10が取り付けられる対象となる電線束における幹線部91、枝線92及びコネクタ8が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0035】
筒状部20は、コネクタ収容部21とテーパ部22とにより構成されている。コネクタ収容部21は、複数のコネクタが配置される収容空間2Sを取り囲む筒状の部分である。本実施形態においては、コネクタ収容部21は、円筒状である。しかしながら、コネクタ収容部21が、楕円筒状又は断面が多角形の筒状などであることも考えられる。
【0036】
テーパ部22は、コネクタ収容部21と連なって筒状に形成されるとともに、外形がコネクタ収容部21との境界部分からコネクタ収容部21に対し反対側の端へ先細りに形成されている。本実施形態においては、テーパ部22の外形は、円錐の頭頂部分がカットされることにより得られる形状である。しかしながら、コネクタ収容部21の外形が、楕円錐又は角錐などの他の錐形状の頭頂部分がカットされることにより得られる形状であることも考えられる。
【0037】
<ロック部>
ロック部23は、第一半筒部材2Aの一部と第二半筒部材2Bの一部とにより構成され、相互に係り合うことにより第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bをそれらが組み合わされた状態で保持するとともにその保持の解除が可能な機構である。
【0038】
本実施形態におけるロック部23は、第一半筒部材2Aの一部である突起部231と、第二半筒部材2Bの一部である孔部232とにより構成されている。突起部231は、第一半筒部材2Aの縁部から起立して形成されており、これにより起立方向に直交する方向において弾性変形可能である。また、突起部231の先端部分には側方へ張り出した張出部2311が形成されている。
【0039】
第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bが、相互に内側面が対向する状態で組み合わされると、突起部231の張出部2311が第二半筒部材2Bの孔部232に嵌り込む。これにより、突起部231及び孔部232は、相互に引っ掛かり合うことにより、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bをそれらが組み合わされた状態で保持する。
【0040】
また、突起部231の張出部2311が、孔部232において先の細い工具などによって押さえられると、突起部231が撓み、突起部231の張出部2311及び孔部232が引っ掛かり合う状態が解除される。これにより、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bが組み合わさって保持された状態が解除される。
【0041】
<電線挟持部>
電線挟持部24は、コネクタの収容空間2S内に配置されるコネクタに繋がる電線の一部を挟んで支持する部分である。複数の電線挟持部24が、コネクタ収容部21の内側面に間隔を空けて設けられている。より具体的には、複数の電線挟持部24は、コネクタ収容部21の内側面に、周方向において等間隔で設けられている。図1及び図2に示される例では、コネクタ保護具10は、4つの電線挟持部24を備えるが、電線挟持部24の数が2つ、3つ又は5つ以上であることも考えられる。
【0042】
また、本実施形態では、電線挟持部24は電線が挿入される空間を隔てて対向する一対の棒状の突起部である。それら一対の棒状の突起部は、それらの間に挿入された電線を挟んで保持する。
【0043】
なお、電線挟持部24が、中間部分で折り返して形成された1本の曲がった棒状であることも考えられる。この場合、電線は、折り返された部分に挟み込まれる。
【0044】
<隔壁>
隔壁25は、コネクタ収容部21の内側の空間、即ち、コネクタの収容空間2Sを複数の電線挟持部24各々に対応したコネクタごとの配置空間に仕切る壁である。複数の隔壁25は、コネクタ収容部21の内側面に間隔を空けて設けられている。より具体的には、複数の隔壁25は、コネクタ収容部21の内側面に、周方向において等間隔で設けられている。
【0045】
<第1実施形態:ワイヤハーネス>
次に、図3から図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。図3は、第一電線束9に取り付けられる前のコネクタ保護具10及び第一電線束9の平面図である。図4は、第一電線束9に取り付けられる過程のコネクタ保護具10及び第一電線束9の平面図である。図5は、ワイヤハーネス1の平面図である。なお、図5において、ワイヤハーネス1が貫通するパネル7が仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0046】
ワイヤハーネス1は、端部にコネクタ8が設けられた電線を含む第一電線束9と、この第一電線束9に取り付けられたコネクタ保護具10とを備える。
【0047】
第一電線束9は、複数の電線が粘着テープ又は結束ベルトなどの結束材により束ねられた構造を有する。また、第一電線束9は、複数の電線が束ねられた幹線部91と、幹線部91の中間部分から分岐した電線である複数の枝線92とを有している。第一電線束9において、コネクタ8は、複数の枝線92各々の端部に設けられている。
【0048】
以下、コネクタ保護具10を第一電線束9に取り付ける手順について説明する。まず、図3に示されるように、第一電線束9における複数の枝線92の部分が、組み合わされる前、即ち、開いた状態の第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bの内側に配置される。
【0049】
次に、図4に示されるように、複数の枝線92各々におけるコネクタ8の近傍の部分が、コネクタ保護具10における複数の電線挟持部24に挟み込まれる。これにより、複数の電線挟持部24各々は、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2B各々におけるコネクタ収容部21となる部分の内側に配置されたコネクタ8に繋がる枝線92の一部を挟んで支持する。
【0050】
最後に、第一半筒部材2A及び第二半筒部2Bが、筒状となるように組み合わされ、ロック部23が、第一半筒部材2A及び第二半筒部2Bを組み合わさった状態で保持する。これにより、各枝線92の端部の各コネクタ8は、収容空間2S内に保持される。
【0051】
図5に示されるように、ワイヤハーネス1において、コネクタ保護具10は、第一電線束9の幹線部91が筒状部20(コネクタ収容部21及びテーパ部22)の中空部を貫通した状態で、第一電線束9に取り付けられている。
【0052】
また、コネクタ収容部21は、第一電線束9の幹線部91の中間部分から分岐した枝線92のコネクタ8が配置された収容空間2Sを取り囲む。即ち、ワイヤハーネス1において、コネクタ8の収容空間2Sは、幹線部91とコネクタ収容部21との間の環状の空間である。また、複数の電線挟持部24各々は、収容空間2S内に配置されたコネクタ8に繋がる枝線92の一部(コネクタ8に近い部分)を挟んで支持する。
【0053】
また、各枝線92におけるコネクタ8に近い部分が電線挟持部24によって固定されることにより、枝線92の端部の各コネクタ8は、収容空間2S内おける隔壁25によって仕切られたコネクタ8ごとの配置空間内に保持される。
【0054】
なお、ワイヤハーネス1が予め定められた経路に沿って敷設された後に、コネクタ保護具10におけるロック部23の保持が解除され、コネクタ保護具10は、第一電線束9から取り外される。
【0055】
<効果>
ワイヤハーネス1において、コネクタ保護具10のコネクタ収容部21は、収容空間2Sに配置された複数のコネクタ8を取り囲む。さらに、電線挟持部24が、コネクタ8に繋がる枝線92の一部を挟んで支持することにより、コネクタ8は、コネクタ収容部21内のほぼ一定の位置に保持される。そのため、ワイヤハーネス1が運搬及び敷設されるときに、各コネクタ8は、コネクタ収容部21によって保護される。
【0056】
また、ワイヤハーネス1において、コネクタ保護具10のコネクタ収容部21は、その内側に複数のコネクタ8を一まとめにして収容し、さらに、先細りに形成されたテーパ部22と連なっている。そのため、図5に示されるように、ワイヤハーネス1におけるコネクタ8が設けられた部分、即ち、コネクタ保護具10が取り付けられた部分は、テーパ部22の細い先端からパネル7の貫通孔71に通されることにより、コネクタ8が引っ掛かることなく円滑かつ容易に貫通孔71を通る。
【0057】
コネクタ保護具10において、コネクタ収容部21及びテーパ部22が筒状に形成されているため、第一電線束9の幹線部91が、コネクタ収容部21及びテーパ部22の中空部を貫通可能である。そのようなコネクタ保護具10は、第一電線束9の幹線部91の中間部分から分岐した枝線92の端部に設けられたコネクタ8を保護できる。
【0058】
また、ワイヤハーネス1において、コネクタ保護具10のコネクタ収容部21の内側面に、収容空間2Sをコネクタ8ごとの配置空間に仕切る隔壁25が設けられている。そのため、複数のコネクタが8、コネクタ収容部21内で相互に接触することが防止され、各コネクタ8がより確実に保護される。
【0059】
また、コネクタ保護具10において、2つの要素部材である第一半筒部材2A及び第二半筒部2Bは、曲げ変形可能な接続部3と連なって一体に形成されている。そのため、部品点数が少なくなり、コネクタ保護具10を電線束に取り付けるための工数、及び部品管理のための工数がより簡素化される。
【0060】
<第2実施形態:ワイヤハーネス>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aについて説明する。ワイヤハーネス1Aは、図5に示されたワイヤハーネス1と比較して、電線束におけるコネクタ8の位置のみが異なる構成を有している。図6及び図7において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
ワイヤハーネス1Aにおいて、コネクタ保護具10は、第一電線束9とは異なる第二電線束9Aに取り付けられる。なお、図6は、第二電線束9Aに取り付けられる前のコネクタ保護具10及び第二電線束9Aの平面図である。また、図7は、ワイヤハーネス1Aの平面図である。図7において、ワイヤハーネス1Aが貫通するパネル7が仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0062】
ワイヤハーネス1Aが備える第二電線束9Aにおいて、複数のコネクタ8は、幹線部91の端部から延び出た複数の枝線92各々の端部に設けられている。ワイヤハーネス1Aは、そのような第二電線束9Aとコネクタ保護具10とを備える。
【0063】
図7に示されるように、ワイヤハーネス1Aにおいて、コネクタ保護具10は、第二電線束9Aの端部に取り付けられる。そのため、第二電線束9Aの幹線部91は、コネクタ保護具10を貫通していない。
【0064】
以上に示したように、コネクタ保護具10は、第二電線束9Aにおける幹線部91の端部から延び出た枝線92のコネクタ8を保護することもできる。また、ワイヤハーネス1Aは、コネクタ保護具10におけるテーパ部22の細い先端からパネル7の貫通孔71に通されることにより、コネクタ8が引っ掛かることなく円滑かつ容易に貫通孔71を通る。
【0065】
<第2実施形態:コネクタ保護具>
次に、図8を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るコネクタ保護具10Aについて説明する。コネクタ保護具10Aは、図1から図5に示されたコネクタ保護具10と比較して、2つのテーパ部22を備える点のみが異なる。図8において、図1から図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、コネクタ保護具10Aにおけるコネクタ保護具10と異なる点についてのみ説明する。
【0066】
なお、図8は、コネクタ保護具10Aの五面図である。また、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図、図8(c)は背面図、図8(d)は左側面図、図8(e)は右側面図である。
【0067】
コネクタ保護具10Aの筒状部20Aは、コネクタ収容部21とコネクタ収容部21の両側に連なる2つのテーパ部22とを備える。コネクタ保護具10Aにおいても、コネクタ収容部21及び2つのテーパ部22からなる筒状部20Aは、電線束の幹線部91が貫通可能な筒状である。
【0068】
<第3実施形態:ワイヤハーネス>
次に、図9を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス1Bについて説明する。ワイヤハーネス1Bは、第一電線束9とコネクタ保護具10Aとを備える。なお、図9はワイヤハーネス1Bの平面図である。また、図9において、ワイヤハーネス1Bが貫通するパネル7が仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0069】
図9に示されるように、筒状のコネクタ保護具10Aが採用されることにより、幹線部91の中間部分から分岐した枝線92のコネクタ8の保護が可能である。さらに、ワイヤハーネス1Bが、両端うちのいずれの一方からパネル7の貫通孔71に通されても、コネクタ保護具10Aは、2つのテーパ部22のうちのいずれか一方の細い先端から円滑に貫通孔71に通されることになる。従って、ワイヤハーネス1Bをパネル7の貫通孔71に通す作業の自由度が高まり好適である。
【0070】
また、コネクタ保護具10Aが備える2つの筒状のテーパ部22のうちの一方は、コネクタ収容部21内に収容された複数のコネクタ8に連なる枝線92の周囲を取り囲む。これにより、コネクタ8とともに枝線92も保護される。
【0071】
<第4実施形態:ワイヤハーネス>
次に、図10を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るワイヤハーネス1Cについて説明する。ワイヤハーネス1Cは、第二電線束9Aとコネクタ保護具10Aとを備える。なお、図10はワイヤハーネス1Cの平面図である。また、図10において、ワイヤハーネス1Cが貫通するパネル7が仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0072】
図10に示されるように、コネクタ保護具10Aは、幹線部91の端部から延び出た複数の枝線92のコネクタ8の保護も可能である。さらに、コネクタ保護具10Aが備える2つの筒状のテーパ部22のうちの一方は、コネクタ収容部21内に収容された複数のコネクタ8に連なる枝線92の周囲を取り囲む。これにより、コネクタ8とともに枝線92も保護される。
【0073】
<その他>
コネクタ保護具10,10Aにおいて、接続部3が省略され、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bが、分離して形成されてもよい。この場合、ロック部23は、第一半筒部材2A及び第二半筒部材2Bにおける幅方向の両側に設けられる。
【0074】
また、第二電線束9Aが採用されるワイヤハーネス1Aにおいては、コネクタ保護具10のテーパ部22は、必ずしも筒状でなくてもよい。即ち、ワイヤハーネス1Aにおけるテーパ部22は、コネクタ収容部21と連なる側に対し反対側の端部が閉じたキャップ状であってもよい。
【0075】
同様に、第二電線束9Aが採用されるワイヤハーネス1Cにおいては、コネクタ保護具10の2つのテーパ部22のうちの一方は、必ずしも筒状でなくてもよい。即ち、ワイヤハーネス1Cにおける2つのテーパ部22のうちの一方は、コネクタ収容部21と連なる側に対し反対側の端部が閉じたキャップ状であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B,1C ワイヤハーネス
2 筒状部
2A 第一半筒部材
2B 第二半筒部材
2S 収容空間
3 接続部
7 パネル
8 コネクタ
9 第一電線束
9A 第二電線束
10,10A コネクタ保護具
20,20A 筒状部
21 コネクタ収容部
22 テーパ部
23 ロック部
24 電線挟持部
25 隔壁
71 パネルの貫通孔
91 幹線部
92 枝線
231 突起部
232 孔部
2311 突起部の張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に組み合わされる2つの要素部材を備え、端部にコネクタが設けられた電線を含む電線束における前記コネクタを保護するコネクタ保護具であって、
2つの前記要素部材各々の一部からなり、相互に係り合うことにより2つの前記要素部材をそれらが組み合わされた状態で保持するとともにその保持の解除が可能なロック部と、
複数の前記コネクタが配置される収容空間を取り囲むコネクタ収容部と、
前記コネクタ収容部と連なり、外形が前記コネクタ収容部との境界部分から前記コネクタ収容部に対し反対側の端へ先細りに形成されたテーパ部と、
前記コネクタ収容部の内側面に間隔を空けて設けられ、前記収容空間内に配置される前記コネクタに繋がる前記電線の一部を挟んで支持する複数の電線挟持部と、を備えることを特徴とするコネクタ保護具。
【請求項2】
前記コネクタ収容部及び前記テーパ部は筒状に形成されている、請求項1に記載のコネクタ保護具。
【請求項3】
前記コネクタ収容部と該コネクタ収容部の両側に連なる2つの前記テーパ部とが、筒状に形成されている、請求項2に記載のコネクタ保護具。
【請求項4】
前記コネクタ収容部の内側面に間隔を空けて設けられ、前記収容空間を複数の前記電線挟持部各々に対応した前記コネクタごとの配置空間に仕切る隔壁をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載のコネクタ保護具。
【請求項5】
2つの前記要素部材は、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載のコネクタ保護具。
【請求項6】
端部にコネクタが設けられた電線を含む電線束と、
相互に組み合わされる2つの要素部材を備え、前記電線束における前記コネクタを保護するコネクタ保護具と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記コネクタ保護具は、
2つの前記要素部材各々の一部からなり、相互に係り合うことにより2つの前記要素部材をそれらが組み合わされた状態で保持するとともにその保持の解除が可能なロック部と、
複数の前記コネクタが配置された収容空間を取り囲むコネクタ収容部と、
前記コネクタ収容部と連なり、外形が前記コネクタ収容部との境界部分から前記コネクタ収容部に対し反対側の端へ先細りに形成されたテーパ部と、
前記コネクタ収容部の内側面に間隔を空けて設けられ、前記収容空間内に配置された前記コネクタに繋がる前記電線の一部を挟んで支持する複数の電線挟持部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
前記コネクタ収容部及び前記テーパ部は、前記電線束の幹線部が貫通した筒状に形成され、
前記コネクタ収容部は、前記電線束の幹線部の中間部分から分岐した枝線の端部に設けられた前記コネクタが配置された前記収容空間を取り囲み、
前記電線挟持部は、前記枝線の一部を挟んで支持している、請求項6に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−37844(P2013−37844A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171885(P2011−171885)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】