説明

コネクタ及び雌端子金具

【課題】電気的接続状態を良好にしつつ小型化することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】雌ハウジングに収容された雌端子金具10は、一対のバレル片11,12を有し、このうちの第一バレル片11を弾性変形させて第二バレル片12に係止させた係止状態として、両ハウジングの嵌合時に、一対のバレル片11,12の間に形成された雄端子進入路に雄ハウジングから突出する雄端子金具の雄タブ20が進入していくと、雄ハウジングに設けられた係止解除部30が第一バレル片11の第一係止リブ11Bに当接して第一バレル片11の係止が解除され、第一バレル片11が弾性復帰して一対のバレル片11,12により雄タブ20を締め付け状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び雌端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雌コネクタに収容された雌端子金具には、角筒状の部材の内部に弾性舌片を設け、この弾性舌片が相手側雄コネクタに設けられる雄端子金具の突起状接触部と弾性接触することにより、両端子間の電気的接続が図られるものがある。
ここで、弾性舌片としては、例えば、特許文献1に示すように、先端側でU字状に折り返されて後方に延びるとともに、その末端が底板と接するものがあり、これにより弾性舌片が両側から両持ち状に支持されたようになっている。
そして、コネクタの嵌合時には、雄コネクタの突起状接触部が雌コネクタの弾性舌片を弾性変形させつつ進入する。これにより、雄タブと弾性舌片との間には、弾性舌片の弾性力(復元力)が作用することになり所定の接触圧が保たれて良好な電気的接続が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2004−039559
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した形状の端子金具について小型化を図ろうとする場合に、弾性舌片の長さを短くする(例えば両持ち状を片持ち状にする)等が考えられるが、このようにすることは雄タブとの間で電気的接続状態を良好にしうる接触圧を確保することが難しくなる等の理由から困難であった。
このため、弾性舌片を有さない異なる形状で、電気的接続状態を良好にしつつ小型化された端子金具及びこの端子金具が収容されるコネクタが求められていた。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電気的接続状態を良好にしつつ小型化することが可能なコネクタ及び雌端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタは、
突起状接触部を有する雄端子金具と、
この雄端子金具を収容する雄ハウジングと、
前記雄ハウジングと嵌合する雌ハウジングと、
この雌ハウジングに収容され前記雄ハウジング及び前記雌ハウジングの嵌合時に前記雄端子金具の前記突起状接触部が進入する雄端子進入路を有する雌端子金具と、
前記雌端子金具に形成され、前記雄端子進入路内に進入した前記突起状接触部に当接する当接位置とここから離れる方向に弾性変形可能な弾性接触片と、
前記雌端子金具又は前記雌ハウジングに設けられ、前記弾性接触片に設けた被係止部に係止することで前記弾性接触片を前記当接位置から離れた状態に保持する係止部と、
前記雄ハウジング又は前記雄端子金具に設けられ前記両ハウジングの嵌合時に前記係止部による前記被係止部の係止状態を解除する係止解除部とを備えてなるところに特徴を有する(手段1)。
手段1の構成によれば、雌端子金具の弾性接触片と雄端子金具の突起状接触部との接触部分には弾性力が生じることになるから、電気的接続状態を良好にしうる接触圧を確保することが可能になる。即ち、突起状接触部との電気的接続に際して突起状接触部の進入方向に延びる弾性舌片を要しなくても、電気的接続状態を良好にできる。したがって、突起状接触部の進入方向において雌端子金具を小型化でき、これにより、この雌端子金具が収容されるコネクタも小型化することができる。
【0006】
また、手段1の構成において、前記突起状接触部は丸ピン状をなし、前記弾性接触片は前記突起状接触部の外周部に巻き付くように当接する一対の円弧状接触片からなるようにしてもよい(手段2)。
手段2の構成によれば、突起状接触部と弾性接触片との間に生じる抵抗を少なくすることができる。
【0007】
手段1又は手段2の構成に加えて、前記雄ハウジングは合成樹脂製であり、
前記係止解除部は、前記雄ハウジングに一体に形成されているようにしてもよい(手段3)。
手段3の構成によれば、係止解除部を雄ハウジングと一体に形成することにより、係止解除部の成形が容易になる。
【0008】
手段1ないし手段3の構成に加えて、前記弾性接触片の終端部には外方に突出する係止リブが設けられ、前記係止リブに前記係止解除部が突き当てられて係止状態が解除されるようにしてもよい(手段4)。
手段4の構成によれば、係止解除部を外方に突出する係止リブに突き当てればよいから、係止状態の解除が容易になる。
【0009】
本発明に係る雌端子金具は、突起状接触部を有する雄端子金具を収容する雄ハウジングと嵌合する雌ハウジングに収容され、前記雄ハウジング及び前記雌ハウジングの嵌合時に前記雄端子金具の前記突起状接触部が進入する雄端子進入路を有する雌端子金具であって、
前記雄端子進入路内に進入した前記突起状接触部に当接する当接位置とここから離れる方向に弾性変形可能な弾性接触片と、
前記弾性接触片に設けた被係止部に係止することで前記弾性接触片を前記当接位置から離れた状態に保持する係止部と、を備え、
前記両ハウジングの嵌合時に、前記雄ハウジングに設けられる係止解除部により前記係止部による前記被係止部の係止状態が解除されるところに特徴を有する(手段5)。
手段5の構成によれば、雌端子金具の弾性接触片と雄端子金具の突起状接触部との接触部分には弾性力が生じることになるから、電気的接続状態を良好にしうる接触圧を確保することが可能になる。即ち、突起状接触部との電気的接続に際して突起状接触部の進入方向に延びる弾性舌片を要しなくても、電気的接続状態を良好にできるから、突起状接触部の進入方向において雌端子金具を小型化することができる。
【0010】
また、手段5の構成において、前記突起状接触部は丸ピン状であって、
前記弾性接触片は、前記突起状接触部の外周部に巻き付くように当接する一対の円弧状接触片からなるようにしてもよい(手段6)。
手段6の構成によれば、突起状接触部と弾性接触片との間に生じる抵抗を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、突起状接触部の進入方向において端子金具を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1〜図15を参照して説明する。
本実施形態におけるコネクタは、雄端子金具が収容される雄ハウジング(雄ハウジングの全体は図示せず、図8に示すように雄端子金具の雄タブ20の近傍を図示)と雌端子金具10が収容される雌ハウジング(雌ハウジングは図示せず、雌端子金具10のみ図示)とが嵌合してなるものである。このうち雌端子金具10は、両ハウジングの嵌合時に雄端子金具の雄タブ20(本発明の「突起状接触部」に相当)が当該雌端子金具10に設けられた一対のバレル片11,12の間に挿し込まれて、電気的接続が図られる。以下、両ハウジングの嵌合方向を前方、即ち、端子金具については図2の左方を前方、右方を後方とし、図2の上側を上方、下側を下方として説明する。
【0013】
雄ハウジングは、合成樹脂製であって、前方へ開口する略角筒状をなすフード部と、フード部の内部を閉塞する奥壁部21(図8のように奥壁部21の一部のみを図示する)と、を有する。
フード部は、その上壁と両側壁とがほぼ直交する形状であって、前方から雌ハウジングを内嵌可能とされている。
奥壁部21は、上壁と両側壁とほぼ直交しており、幅方向に複数の雄端子金具がこの奥壁部21を貫通して設けられている。
【0014】
雄端子金具は、銅合金製の棒状の端子であって、その一端側は、奥壁部21からほぼ垂直に雄タブ20が突出している。したがって、フード部内には、複数の雄タブ20が幅方向に並んで形成されている。
【0015】
雄タブ20は、円柱状をなし(円弧状の周面を有し)、その先端部の周面にはテーパ上に切り欠かれたテーパ面20Aが形成されている(図6参照)。
なお、奥壁部21から外部に露出した側は、L字状に下方に屈曲されており、その先端部が図示しない基板等に接続される。
【0016】
奥壁部21からは、図6に示すように雄タブ20の上方の位置に、後述する雌端子金具10の一対のバレル片11,12の係止位置を解除するための係止解除部30が突出している(図7参照)。なお、この係止解除部30は、後述する第一バレル片11に突き当てて第一バレル片11の係止状態を解除するものであるため、係止状態にある第一バレル片11の位置に応じて配される。
【0017】
係止解除部30は、概ね幅方向にやや長い長方形であって、その先端部(前端部)には、下方に膨出した膨出部31が形成されている。
膨出部31は、幅方向の一端側(図6の右端側)が一定の長さで下方に突出した凸部32とされるとともに、幅方向の他端側(図6の左端側)は、当該他端側に向けて高くなるように傾斜する傾斜部33(他端側に向けて雄タブ20との間のギャップが広がる傾斜部)とされている。
【0018】
この凸部32の前面のうちの傾斜部33側には、傾斜部33側が深くなるように切り欠かれた凸部テーパ面32Aが形成されているとともに、傾斜部33の前面うちの下部には、下方側が深くなるように切り欠かれた傾斜テーパ面33Aが形成されている。
【0019】
なお、膨出部31の後方側(奥壁側)は、後述する第一バレル片11の係止状態が解除されて弾性復帰した際に、当該第一バレル片11が係止解除部30に遮られずに締付位置に移動できる空間が設けられた通過凹部34となっている(図7参照)。
【0020】
雌ハウジングは、合成樹脂製で雄ハウジングに内嵌可能な直方体状であって、雌端子金具10を収容するためのキャビティが幅方向に並んで形成されている。
雌端子金具10は、図1に示すように、相手側の雄タブ20との電気的接続を行う一対のバレル片11,12(本発明の「一対の円弧状接触片」の一例)と、底板部15と、角筒状の角筒部17と、被覆電線の芯線が接続されるワイヤバレル部18と、被覆電線を絶縁被覆の上から保持するインシュレーションバレル部19と、を有する。なお、図1は、成形時(第一バレル片11の弾性変形前)の雌端子金具10を表す図である。
【0021】
角筒部17は、コネクタ嵌合時には、一対のバレル片11,12の間に形成された雄端子進入路を進入した雄タブ20がこの角筒部17の内部に収容されるようになっている。また、雌端子金具10が雌ハウジングの図示しないキャビティに収容された際には、この角筒部17の上壁の後端部17Aが雌ハウジングのランスに係止されて雌端子金具10の抜け止めが図られる。
【0022】
ワイヤバレル部18は、角筒部17の後方に形成されており、底板部15の左右両側縁から一対のかしめ片18A,18Aが立ち上げられている。これら一対のかしめ片18A,18Aが被覆電線の芯線を包み込むように圧着する。なお、ワイヤバレル部18及び底板部15には、圧着の際に芯線の周囲に形成された酸化膜を破るためのセレーション33が凹設されている。
【0023】
インシュレーションバレル部19は、ワイヤバレル部18の後方にてワイヤバレル部18と連結部分を介して連なり、底板部15の左右両側縁から一対のかしめ片19A,19Aが立ち上げられてなる。これらの一対のかしめ片19A,19Aを被覆電線側に湾曲させることにより、被覆電線が離脱や位置ずれしないように保持されている。
【0024】
底板部15は、角筒部17の前方から突き出された連結部15Bを有し、その連結部15Bの前端部が、一対のバレル片11,12が延出される基端部となっている。
【0025】
一対のバレル片11,12は、底板部15の一方の側縁から延出され弾性変形可能な第一バレル片11(本発明の「弾性接触片」の一例)と、底板部15の他方の側縁から延出された第二バレル片12と、からなり、両バレル片11,12により概ね円形の雄端子進入路が形成される。
これら第一バレル片11と第二バレル片12とは、前後方向に位置をずらして形成されており、第一バレル片11(の基端部)の直後から、第二バレル片12(の基端部)が延出されている。
【0026】
第一バレル片11は、円弧状の第一円弧部11Aと、円弧部の終端部から外方に突出する第一係止リブ11B、とを有する。
第一円弧部11Aは、底板部15の前端部である基端部(の幅方向の中心)から時計回りに半円(円形の上側の中心)をやや越える位置まで延出されている。
【0027】
第二バレル片12は、円弧状の第二円弧部12Aと、円弧部の終端部から外方に突出する第二係止リブ12B、とを有する。
第二円弧部12Aは、底板部15の前端部である基端部(の幅方向の中心)から反時計回りにほぼ半円(円形の上側の中心)の位置まで延出されている。
【0028】
なお、第一円弧部11A及び第二円弧部12Aで形成される雄端子進入路の大きさは、雄タブ20の大きさ(円形の断面の大きさ)よりもわずかに小さくなっており、これにより、雄タブ20と一対のバレル片11,12との間における電気的接続状態を良好にしうる接触圧が確保されるようになっている。したがって、かかる大きさの雄端子進入路が形成される一対のバレル片11,12であれば雄タブ20に当接するため、図1の第一バレル片11の位置は、本発明における「雄端子進入路内に進入した雄タブ20(突起状接触部)に当接する当接位置」となる。
これら一対のバレル片11,12は、上記した当接位置から第一バレル片11を弾性変形させた状態で第二バレル片12に係止させた係止位置(図4の状態)と、雄タブ20に対して締付状態となり電気的に接続される締付位置(図15の状態)と、に変形できるようになっている。
【0029】
次に係止位置について説明する。
まず、図1に示す弾性変形前の当接位置にある第一バレル片11について、治具等により第一係止リブ11Bを掴み、外方(端子進入路が広がる方向)に広げる。
【0030】
第一係止リブ11Bの全体が第二係止リブ12Bを越える位置(第二係止リブ12Bよりも左方になる)まで広がったら、第一係止リブ11Bを後方に引く。そして、第一係止リブ11Bの全体が第二係止リブ12Bを越える位置(第二係止リブ12Bより後方になる)まで引いたら、第一係止リブ11Bを右方に引きよせる。
【0031】
そして、第一係止リブ11Bが第二係止リブ12Bの後方に重なったら、第一係止リブ11Bを離す。
【0032】
すると、このときは、弾性復帰しようとする力は、係止が解除されない右方(右前方)に向かっているから、図4に示すように、第一係止リブ11Bが第二係止リブ12Bの後方であって、第一係止リブ11Bが第二係止リブ12Bよりも右側の位置となる係止位置で係止される。言い換えると、係止位置の第一バレル片11は、前方側に弾性復帰しようとする弾性力が生じているものの、前方の第二バレル片12によって係止されているため、弾性復帰できない状態にある。
【0033】
したがって、この係止位置では、第二バレル片12の第二円弧部12Aの終端部近傍が第一バレル片11を係止する係止部とされ、これと当接する第一バレル片11の第一円弧部11Aの終端部近傍が被係止部となる。
【0034】
なお、第一バレル片11が係止位置にあるときの雄端子侵入路の大きさは、雄タブ20の大きさ(雄タブ20の断面の大きさ)よりもわずかに大きくなっている(雄タブ20挿入時にわずかに隙間ができる雄端子侵入路の大きさとされる)。
【0035】
そして、この第一バレル片11が係止位置に係止された状態の雌端子金具10について、端末部の芯線を露出させた被覆電線を載置し、芯線をワイヤバレル部18でかしめ、絶縁被覆の上からインシュレーションバレル部19でかしめる。なお、これら被覆電線のかしめ工程を行った後で、上記した当接位置の第一バレル片11を係止位置に移行させるようにしてもよい。
そして、被覆電線がかしめられ、第一バレル片11が係止位置とされた雌端子金具10が、雌ハウジングのキャビティに収容される。
【0036】
次に締付位置について説明する。
締付位置は、コネクタ嵌合時に、雄ハウジングの係止解除部30により、一対のバレル片11,12の係止状態が解除されて第一バレル片11が弾性復帰した場合における一対のバレル片11,12の位置である(図15)。
【0037】
具体的には、係止位置にある第一バレル片11が弾性復帰することにより、第一バレル片11の第一係止リブ11Bの位置が第二バレル片12の前に戻されている。このときは、円形状の雄タブ20に円弧部がほぼ隙間なく密着するとともに、第一バレル片11は当接位置に対してやや外方に開いた(弾性変形した)締付位置にあるため第一バレル片11から雄タブ20に向かう弾性力が生じており、一対のバレル片11,12の間に雄タブ20を締め付ける力の作用した締め付け状態となり、一対のバレル片11,12と雄タブ20との間に電気的接続状態を良好にするだけの接触圧が生じている。
【0038】
次に、本実施形態におけるコネクタの作用について説明する。
図7に示すように、第一バレル片11が係止位置とされた雌端子金具10が収容された雌ハウジングと雄ハウジングとを嵌合させていく。
すると、雄タブ20が一対のバレル片11,12の間の雄端子進入路に進入する。先端部が雄端子進入路を通過すると、図8に示すように、雄ハウジングに設けられた係止解除部30のうち凸部テーパ面32Aと傾斜テーパ面33Aとが交差した部分付近が、第一バレル片11の第一係止リブ11Bの先端部に当接する。
【0039】
そして、雄タブ20の進入に伴って、第一バレル片11の第一係止リブ11Bが係止解除部30の傾斜テーパ面33Aに摺接しながら第一バレル片11が外方(拡開する方向)に弾性変形する。そして、図12に示すように、第一係止リブ11Bの全体が第二係止リブ12Bの外方となる係止位置まで第一バレル片11が拡開すると、第一係止リブ11Bと係止解除部30の傾斜テーパ面33Aとが離れるとともに、第一バレル片11が前方に向けて弾性復帰しようとする力が作用する。
【0040】
これにより、第二係止リブ12Bのうちの第一バレル片11側の面を摺接面13として、第一係止リブ11Bの基端部の屈曲した部分がこの摺接面13に摺接しながら第一係止リブ11Bが前方に移動する。
【0041】
そして、図13に示すように、第一係止リブ11Bの全体が第二係止リブ12Bを超えると、このとき、係止解除部30の下側には通過凹部34が配されることになり、第一係止リブ11Bが通過凹部34に入り込むように弾性復帰する。
この締付位置では、図15に示すように、一対のバレル片11,12が雄タブ20の外周部に巻き付くように当接することで、一対のバレル片11,12と雄タブ20との間がほぼ隙間なく締め付け状態となり、良好な電気的接続状態を得ることができる。
【0042】
(本実施形態の効果)
このように、コネクタの雌ハウジングに収容される雌端子金具10は、雄端子進入路内に進入した雄タブ20(突起状接触部)に当接する当接位置とここから離れる方向に弾性変形可能な第一バレル片11(弾性接触片)と、第一バレル片11に設けた被係止部に係止することで第一バレル片11を当接位置から離れた状態に保持する係止部を有する第二バレル片12と、を有する。そして、雄ハウジングに設けられた係止解除部30が両ハウジングの嵌合時に係止部による被係止部の係止状態を解除する。
これにより、雌端子金具10の第一バレル片11と雄タブ20との接触部分には弾性力が生じることになるから、電気的接続状態を良好にしうる接触圧を確保することが可能になる。また、雌端子金具10と雄タブ20との電気的接続に際して雌端子金具10が雄タブ20の挿入方向に延びる弾性舌片を要しなくても、電気的接続状態を良好にできる。したがって、雄タブ20の挿入方向において雌端子金具10を小型化でき、これにより、この雌端子金具10が収容されるコネクタも雄タブ20の挿入方向において小型化することができる。
【0043】
また、雄タブ20は丸ピン状をなし、一対のバレル片11,12は雄タブ20の外周部に巻き付くように当接する一対の円弧状接触片であるから、雄タブ20と一対のバレル片11,12との間に生じる電気抵抗を少なくすることができる。
【0044】
さらに、係止解除部30は、合成樹脂製の雄ハウジングに一体に形成されているから、銅合金製の雄端子金具に設けるよりも係止解除部30の成形が容易になる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、第一バレル片11の被係止部を、第二バレル片12の係止部に係止させることとしたが、これに限られない。例えば、雌端子金具10の他の部分を係止部として第一バレル片11の被係止部を係止させるようにしてもよい。また、雌端子金具10ではなく、雌ハウジングに係止部を設けてもよく、例えば、雌ハウジングのキャビティ内から突出する係止部を雌ハウジングと一体に設け、この係止部に第一バレル片11の被係止部を係止させるようにしてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、第一バレル片11が弾性変形する構成としたが、第二バレル片12が弾性変形するものでもよい。この場合、例えば、第二バレル片12の第二係止リブ12Bを第一係止リブ11Bの前まで弾性変形させて、係止位置とするものでもよい。
【0048】
(3)係止解除部30は雄ハウジングに設けることとしたが、雄端子金具に設けるようにしてもよく、例えば、雄端子金具と一体成形した係止解除部としてもよい。
【0049】
(4)係止解除部30を設けずに係止状態が解除されるものでもよい。例えば、係止位置における雄端子進入路の大きさを雄タブ20の大きさよりも小さくなるように一対のバレル片を構成し、雄タブ20の挿入時に、雄タブ20自身が第一バレル片11に当接して係止が解除される方向の力を第一バレル片11に与えるようにしてもよい。
【0050】
(5)雄タブ20を丸ピン状とし、一対のバレル片11,12を一対の円弧状接触片としたが、これに限られない。例えば、断面が円形でない雄タブに密着する形状の一対のバレル片を構成してもよく、また、一対のバレル片が雄タブ外周の全体に密着せず、隙間が生じる形状であってもよいが、一対のバレル片が雄タブ外周に密着する形状とした方が電気抵抗を少なくできるから、より好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係る雌端子金具の第一バレル片が当接位置にあるときを示す斜視図
【図2】図1の側面図
【図3】図1の前面図
【図4】雌端子金具が係止状態にあるときの斜視図
【図5】図4の前面図
【図6】係止解除部の前面図
【図7】雄ハウジングと雌ハウジングが嵌合する前の状態の概略図
【図8】係止解除部が第一バレル片に当接した状態の概略図
【図9】図8の側面図
【図10】図8の断面図
【図11】第一バレル片が広がる方向に弾性変形した状態の側面図
【図12】図10の断面図
【図13】第一バレル片が前方に弾性復帰している状態の側面図
【図14】図12の断面図
【図15】第一バレル片が締付位置に至った状態の断面図
【符号の説明】
【0052】
10…雌端子金具
11…第一バレル片(弾性接触片)
11A…第一円弧部
11B…第一係止リブ
12…第二バレル片
12A…第二円弧部
12B…第二係止リブ
20…雄タブ(突起状接触部)
30…係止解除部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状接触部を有する雄端子金具と、
この雄端子金具を収容する雄ハウジングと、
前記雄ハウジングと嵌合する雌ハウジングと、
この雌ハウジングに収容され前記雄ハウジング及び前記雌ハウジングの嵌合時に前記雄端子金具の前記突起状接触部が進入する雄端子進入路を有する雌端子金具と、
前記雌端子金具に形成され、前記雄端子進入路内に進入した前記突起状接触部に当接する当接位置とここから離れる方向に弾性変形可能な弾性接触片と、
前記雌端子金具又は前記雌ハウジングに設けられ、前記弾性接触片に設けた被係止部に係止することで前記弾性接触片を前記当接位置から離れた状態に保持する係止部と、
前記雄ハウジング又は前記雄端子金具に設けられ前記両ハウジングの嵌合時に前記係止部による前記被係止部の係止状態を解除する係止解除部とを備えてなるコネクタ。
【請求項2】
前記突起状接触部は丸ピン状をなし、前記弾性接触片は前記突起状接触部の外周部に巻き付くように当接する一対の円弧状接触片からなる請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記雄ハウジングは合成樹脂製であり、
前記係止解除部は、前記雄ハウジングに一体に形成されている請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性接触片の終端部には外方に突出する係止リブが設けられ、前記係止リブに前記係止解除部が突き当てられて係止状態が解除されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
突起状接触部を有する雄端子金具を収容する雄ハウジングと嵌合する雌ハウジングに収容され、前記雄ハウジング及び前記雌ハウジングの嵌合時に前記雄端子金具の前記突起状接触部が進入する雄端子進入路を有する雌端子金具であって、
前記雄端子進入路内に進入した前記突起状接触部に当接する当接位置とここから離れる方向に弾性変形可能な弾性接触片と、
前記弾性接触片に設けた被係止部に係止することで前記弾性接触片を前記当接位置から離れた状態に保持する係止部と、を備え、
前記両ハウジングの嵌合時に、前記雄ハウジングに設けられる係止解除部により前記係止部による前記被係止部の係止状態が解除される雌端子金具。
【請求項6】
前記突起状接触部は丸ピン状であって、
前記弾性接触片は、前記突起状接触部の外周部に巻き付くように当接する一対の円弧状接触片からなる請求項5記載の雌端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−129358(P2010−129358A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302503(P2008−302503)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)