説明

コネクタ支持具、配線具及びワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスにおける電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具及びそのような配線具に適用可能なコネクタ支持具において、電線に設けられたコネクタを所定の位置に固定する作業の工数を軽減でき、かつ、製造に要する工数及びコストを低減できること。
【解決手段】コネクタ支持部15は、凹凸をなす板状に形成され、コネクタ91の連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、板状部材の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、その一対の溝に連結部92の一対の平行凸部921が嵌め入れられる部分である。コネクタ支持部15において、中間板部152は、一対の平行凹部151の間の部分であり、コネクタ91の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入され、梁部922に形成された対向凸部923が入り込む孔153が形成された部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタを支持するコネクタ支持具、コネクタ付電線を予め定められた形状で保持する配線具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線に取り付けられた樹脂製の配線具を備え、電線がその配線具によって予め定められた経路に沿って保持された状態で敷設されることが多い。例えば、従来の一般的なワイヤハーネスにおいて、電線は、粘着テープ又はベルト部材などの結束材によって板状又は棒状の樹脂部材に固定される。これにより、電線は、予め定められた形状で保持される。
【0003】
また、特許文献1に示されるワイヤハーネスは、電線束を挟み込む状態で熱プレスによって固着された2つの板状の樹脂部材からなる配線具を備える。一方の樹脂部材は、平板状の基部と基部から起立するリブとからなる基体である。他方の樹脂部材は、基体のリブが挿入される貫通孔が形成され、基体に重ねられた状態で基体の基部に固着される平板状の被覆体である。
【0004】
特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、電線の中間部分は、基体と被覆体との間に挟み込まれる。さらに、一部の電線は、端部に設けられたコネクタの部分が、基体の縁部に固定される。また、他の一部の電線は、基体から基体の外側へ亘って配置される部分が、結束材で基体の外縁部分に形成された庇部と結束されることによってその庇部に固定される。
【0005】
ところで、ワイヤハーネスの形状において特に重要なことは、各電線が、接続相手に近い予め定められた基準位置で固定されることである。ここで、接続相手は、電装機器又は他の電線の端部に設けられたコネクタなどである。
【0006】
例えば、自動車の座席の下側に配置されるワイヤハーネスにおいては、各電線の端部のコネクタが、座席駆動用のモータなどの機器又は他の電線のコネクタに対して過不足なく届くように、各電線における端部のコネクタまたはコネクタに近い部分が、予め定められた位置(基準位置)に固定されることが重要である。
【0007】
一方、特許文献2には、コネクタを自動車のパネルなどの支持体に固定するためのコネクタ取付クランプが示されている。特許文献2に示されるコネクタ取付クランプは、コネクタの一部に形成された連結部とと係り合ってコネクタと連結される部分と、支持体の孔の縁部と係りあって支持体に固定されるクランプとが一体になった樹脂の部材である。
【0008】
特許文献2に示されるコネクタ取付クランプが採用されることにより、電線の端部に設けられたコネクタを、自動車のパネルなどの支持体における予め定められた位置に容易に固定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−27242号公報
【特許文献2】特開平8−195253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に示されるコネクタ取付クランプは、比較的複雑な三次元形状で形成されているため、製造のためにスライド金型を用いた射出成形工程が必要となる。従って、特許文献2に示されるコネクタ取付クランプは、製造に要する工数及びコストが比較的大きいという問題点を有している。
【0011】
また、特許文献2に示されるコネクタ取付クランプは、コネクタごとに1つずつ必要である。そのため、ワイヤハーネスが備える複数の電線における複数のコネクタが固定される場合、部品点数が多くなり、部品管理の工数及び複数のコネクタを個別にコネクタ取付クランプを介して支持体に固定する作業の工数が大幅に増大する。
【0012】
ここで、特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、複数のコネクタが、配線具の外縁付近の予め定められた位置に固定される場合について考える。この場合、ワイヤハーネスを自動車のパネルなどの支持体に取り付ける工程において、配線具をクランプなどを用いて支持体に固定する作業と、複数のコネクタ各々をコネクタ取付クランプを用いて支持体に固定する作業とが必要となる。そのような作業は非常に煩雑である。
【0013】
なお、特許文献1には、コネクタが基体に仮留めされることについて記載されているが、コネクタを基体に固定するための具体的な構造は示されていない。
【0014】
本発明は、ワイヤハーネスにおける電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具及びそのような配線具に適用可能なコネクタ支持具において、電線に設けられたコネクタを所定の位置に固定する作業の工数を軽減でき、かつ、製造に要する工数及びコストを低減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るコネクタ支持具による支持の対象となるコネクタは、一対の平行凸部と梁部と対向凸部とを有する連結部を備える。一対の平行凸部は、電線の端部に取り付けられたコネクタの外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された部分である。梁部は、一対の平行凸部の間においてコネクタの外表面に対して間隔を空けて形成された部分である。また、対向凸部は、梁部からコネクタの外表面に向かって突起して形成された部分である。そして、本発明に係るコネクタ支持具は、コネクタの連結部と係り合ってコネクタを支持する用具であり、凹凸をなす板状の部材からなる。その板状の部材には、以下に示される一対の平行凹部及び中間板部を有するコネクタ支持部が形成されている。
(1)一対の平行凹部は、当該板状の部材の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、その一対の溝にコネクタの連結部における一対の平行凸部が嵌め入れられる部分である。
(2)中間板部は、一対の平行凹部の間の部分であり、コネクタの外表面と連結部の梁部との間の隙間に挿入されたときに対向凸部が入り込む孔が形成された部分である。
【0016】
また、本発明に係るコネクタ支持具において、中間板部の両側における一対の平行凹部各々との境界部分が内側へ切れ込んで形成されていることが考えられる。
【0017】
また、本発明に係るコネクタ支持具において、凹凸をなす板状の部材に、さらに以下に示される内側凹部が形成されていることも考えられる。内側凹部は、中間板部よりも内側において一対の平行凹部が形成する一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である。
【0018】
また、本発明に係るコネクタ支持具が、平板状の樹脂部材の真空成形により凹凸が成形された部材からなることも考えられる。
【0019】
また、本発明は、本発明に係るコネクタ支持具の構造を備える配線具の発明として捉えられてもよい。即ち、本発明に係る配線具は、前述した連結部を有するコネクタが端部に取り付けられた電線を、予め定められた形状で保持する板状の部材を備えた配線具である。さらに、その板状の部材は、凹凸をなす板状に成形された部材であり、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、電線が配置される配線空間に面した配線部である。
(2)第2の構成要素は、配線部の外側に形成され当該板状の部材の外縁部分をなす枠部である。
(3)第3の構成要素は、枠部の一部に形成され、配線部から枠部へ亘って配置される電線の端部のコネクタが固定されるコネクタ支持部である。このコネクタ支持部は、本発明に係るコネクタ支持具の構造を備えている。
【0020】
また、本発明は、本発明に係る配線具と、その配線具のコネクタ支持部に固定されたコネクタが端部に取り付けられた電線とを備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
後述するように、本発明に係るコネクタ支持具によって支持されるコネクタは、一対の平行凸部と梁部と対向凸部とを有する連結部を備える従来周知のコネクタである。なお、そのようなコネクタは、特許文献2に示されている。
【0022】
本発明に係るコネクタ支持具が採用された場合、電線の端部のコネクタは、連結部の一対の平行凸部がコネクタ支持具における一対の平行凹部の溝に嵌り込み、コネクタ支持具の中間板部が連結部の梁部とコネクタ外表面との隙間に嵌り込み、さらに、連結部の対向凸部が中間板部の孔に嵌り込むことにより、コネクタ支持具に固定される。
【0023】
また、本発明に係るコネクタ支持具は、一部に溝が形成されて凹凸をなす板状に成形された部材によって構成される。そのような部材は、平板状の樹脂部材に対する真空成形、或いはスライド機構のない簡易な金型を用いた射出成形などによって得られ部材であり、製造に要する工数及びコストが小さい。
【0024】
また、複数のコネクタ支持部が1つのコネクタ支持具に設けられることにより、1つのコネクタ支持具が自動車のパネルなどの支持体に取り付けられるだけで、複数のコネクタが一括して支持体の所定位置に固定される。従って、本発明によれば、電線に設けられたコネクタを所定の位置に固定する作業の工数を軽減することができる。
【0025】
また、本発明に係るコネクタ支持具において、中間板部の両側における一対の平行凹部各々との境界部分が内側へ切れ込んで形成されていることが好ましい。これにより、中間板部が、コネクタの連結部における梁部に対してより安定した状態で引っ掛かり、コネクタがコネクタ支持具から外れにくくなる。
【0026】
また、本発明に係るコネクタ支持具において、一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部が形成されていることが好ましい。これにより、凹凸をなす板状の部材であるコネクタ支持具の剛性が高まり好適である。
【0027】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。従って、本発明に係るコネクタ支持具が、平板状の部材の真空成形により得られた部材であれば、製造工数及び製造コストがより低減される。なお、特許文献1に示される平板状のリブを有する基体、及び特許文献2に示されるコネクタ取付クランプは、平板状の部材の真空成形によって得ることはできない。
【0028】
また、本発明に係る配線具が取り付けられた電線において、端部のコネクタは、コネクタ支持部に支持されることにより一定の位置に保持される。即ち、電線の端部のコネクタが接続相手に対して過不足なく届くように、電線の形状が配線具によって保持される。また、コネクタ付電線に取り付けられた配線具が、クランプなどによって支持体に取り付けられるだけで、コネクタが支持体における予め定められた位置に固定される。即ち、本発明に係る配線具が採用されることにより、コネクタを支持体における予め定められた位置に固定する作業が簡素化される。複数のコネクタ支持部が配線具に設けられていれば、その効果が特に顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る配線具10の斜視図である。
【図2】配線具10の斜視図に領域区分を表す網掛けが付された図である。
【図3】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の斜視図である。
【図4】配線具10及び電線9の斜視図である。
【図5】ワイヤハーネス100の一部の断面図である。
【図6】配線具10の電線結束部に電線及び結束ベルトが固定される様子を示す斜視図である。
【図7】電線が固定された電線結束部の正面図である。
【図8】配線具10のコネクタ支持部の斜視図である。
【図9】電線の端部におけるコネクタの部分の斜視図である。
【図10】コネクタが固定されたコネクタ支持部の正断面図である。
【図11】配線具10におけるコネクタ支持部の基本構造の斜視図である。
【図12】配線具10のコネクタ支持部が支持可能なコネクタの基本構造の斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係るコネクタ支持具10Aの斜視図である。
【図14】支持体に取り付けられるときのコネクタ支持具10Aの正面図である。
【図15】参考例に係るコネクタ支持部及びコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0031】
<概略構成>
まず、図1から図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る配線具10及び本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の概略の構成について説明する。なお、図5は、図3に示されるD−D平面における断面図である。
【0032】
ワイヤハーネス100は、複数の電線9からなる電線群とその電線群に取り付けられた配線具10とを備える。ワイヤハーネス100は、例えば、車両における座席の下方のスペース、天井裏のスペース又はトランクルームなどに取り付けられ、周囲に存在する他の電線又は電装機器と接続される。そのため、ワイヤハーネス100が備える電線9は、絶縁電線と、その絶縁電線の端部に取り付けられたコネクタ91とからなるコネクタ付電線である。
【0033】
ワイヤハーネス100において、複数の電線9は、予め定められた形状に保持された状態で、配線具10によって一体化されている。そのため、ワイヤハーネス100は、クランプなどの固定具を用いて簡易に所定の位置に取り付け可能である。
【0034】
本実施形態において、配線具10は、板状の樹脂部材が真空成形されることにより得られる部材である。配線具10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。
【0035】
一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られた部材であるため、製造工数及び製造コストが低減される。
【0036】
図1に示されるように、配線具10は、ベース部1と、それに重ねられるカバー部2と、ベース部1とカバー部2とに連なってそれらを一体に接続する接続部3と、により構成されている。接続部3は、弾性的に曲げ変形可能な部分である。カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされる。なお、ベース部1及びカバー部2は、それぞれ基体及び被覆体の一例である。
【0037】
図3に示されるように、配線具10は、接続部3が曲がることによって接続部3の部分で折り返し、カバー部2がベース部1に重なる。ベース部1及びカバー部2は、それらの間に電線9を挟み込む状態で固着され、これにより、配線具10は、ベース部1とカバー部2との間に挟み込まれた電線9を予め定められた形状で保持する。
【0038】
<ベース部>
配線具10を構成するベース部1は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるベース部1は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、ベース部1は、配線部11と第一段差部12と第一枠部13とを有している。
【0039】
図2に示される斜視図のベース部1において、格子の網掛けが記された領域は、配線部11の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第一枠部13の領域である。第一段差部12は、配線部11の外縁と第一枠部13の内縁とに連なって形成されている。
【0040】
ベース部1を構成する配線部11は、電線9が配置される配線空間90に面する板状の部分である。配線部11には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。但し、配線部11における比較的広く形成された部分には、補強用の複数の凸部111が形成されている。凸部111は、後述する第一段差部12の高さ以下の高さで形成されている。なお、配線部11は、ベース部1の底面を形成する底板部であるともいえる。
【0041】
配線部11に形成された凸部111は、配線部11の底面を形成する平板状の底板部の一部が成形されて配線空間90側へ盛り上がった中空の部分である。図1に示される例では、凸部111の形状は、正六角錐がその底面に平行な面で切断されたときに底面から切断面に至る部分が形成する形状である。なお、凸部111の形状は、例えば円柱状などの他の形状であってもよい。
【0042】
ベース部1を構成する第一段差部12は、配線部11の外縁に沿って形成されるとともに配線部11から配線空間90の側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、配線部11の外縁は、第一段差部12の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第一段差部12は、表面が配線部11の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0043】
図1に示される例では、第一段差部12は、全体が一定の高さで形成されているわけではなく、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含む。例えば、図1に示される背高段差部121は、第一段差部12の一部であり、他の部分よりも高く形成されている。但し、第一段差部12は、少なくとも配線部11の凸部111の高さ以上の高さで形成されている。
【0044】
ベース部1を構成する第一枠部13は、第一段差部12の外縁に沿って形成された部分であり、ベース部1の外縁部分をなす。第一枠部13は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第一枠部13は、平坦な部分と凹部及び凸部とが混在する形状で形成されている。
【0045】
また、図1に示されるように、第一枠部13の一部には、電線結束部14、コネクタ支持部15及び仮留め用凹部16が形成されている。電線結束部14及びコネクタ支持部15は、配線部11から第一枠部13へ亘って配置される電線9が固定される部分である。
【0046】
電線結束部14及びコネクタ支持部15の詳細な説明、及びベース部1に形成された仮留め用凹部16についての説明は後に示す。なお、電線結束部14は、電線固定部の一例である。
【0047】
また、ベース部1における第一枠部13の一部には、クランプ孔17が形成されている。このクランプ孔17は、配線具10が自動車のパネルなどの支持体に取り付けられる際にクランプが通される貫通孔である。クランプが、ベース部1のクランプ孔17と支持体に形成された取付孔とに通されることにより、配線具10は、支持体に固定される。
【0048】
<カバー部>
配線具10を構成するカバー部2は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるカバー部2は、ベース部1とともに、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、カバー2は、対向壁部21と第二段差部22と第二枠部23とを有している。さらに、カバー部2は、第二枠部23の一部及び第二枠部の外側に形成された複数の仮留め用凸部26も有している。
【0049】
図2に示される斜視図のカバー部2において、格子の網掛けが記された領域は、対向壁部21の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第二枠部23の領域である。第二段差部22は、対向壁部21の外縁と第二枠部23の内縁とに連なって形成されている。
【0050】
なお、以下の説明において、カバー部2の構成要素の位置又は形状が、ベース部1と関連付けて説明される場合、カバー部2がベース部1に対して重ねられて組み合わされた状態を前提としている。
【0051】
図5に示されるように、カバー部2を構成する対向壁部21は、ベース部1の配線部11に対して配線空間90を隔てて対向する部分である。対向壁部21には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。本実施形態における対向壁部21は、その全体が平板状に形成されている。しかしながら、ベース部1における配線部11の凸部111と同様の凸部が、対向壁部21に形成されることも考えられる。
【0052】
カバー部2を構成する第二段差部22は、対向壁部21の外縁に沿って形成されるとともに対向壁部21からベース部1の反対側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、対向壁部21の外縁は、第二段差部22の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第二段差部22は、表面が対向壁部21の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0053】
図1に示される例では、第二段差部22は、全体が一定の高さで形成されている。しかしながら、第二段差部22が、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含むことも考えられる。
【0054】
カバー部2を構成する第二枠部23は、第二段差部22の外縁に沿って形成された部分であり、カバー部2の外縁部分をなす。第二枠部23は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第二枠部23の一部に、ベース部1側へ突出する凸部が形成されている。なお、カバー部2に形成された仮留め用凸部26についての説明は後に示す。
【0055】
配線具10において、ベース部1の第一段差部12は、凹凸をなす板状のベース部1の剛性を高める補強部として機能する。同様に、カバー部2の第二段差部22も、凹凸をなす板状のカバー部2の剛性を高める補強部として機能する。そのため、ベース部1及びカバー部2は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。そのため、配線具10を省スペース化及び軽量化できる。
【0056】
<接続部>
接続部3は、直線状の溝を形成するように折り返して湾曲した板状に形成された部分である。このような形状で形成された接続部3は、それが形成する溝を開閉する方向において可撓性を有し、弾性的に曲げ変形可能に構成されている。
【0057】
接続部3が溝に沿って折り返されると、カバー部2が、ベース部1に対して予め定められた位置で重なる。
【0058】
以上に示したように、配線具10において、ベース部1及びカバー部2が、曲げ変形可能な接続部3と連なって一体に形成されている。そのため、部品点数が少なくなり、配線具10を電線9に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0059】
<仮留め機構>
ベース部1における第一枠部13の一部には、仮留め用凹部16が形成されている。図1に示される例では、5つの仮留め用凹部16が、第一枠部13における電線結束部14の近傍と、接続部3の近傍とに形成されている。仮留め用凹部16は、カバー部2側に開口する窪みを形成する部分である。
【0060】
一方、カバー部2における第二枠部23の一部及び第二枠部23の外側には、ベース部1の仮留め用凹部16に嵌り込む仮留め用凸部26が形成されている。図1に示される例では、5つの仮留め用凸部26が、5つの仮留め用凹部16各々に対向する位置に形成されている。
【0061】
配線具10において、ベース部1の一部に形成された仮留め用凹部16及びカバー部2の一部に形成された仮留め用凸部26は、カバー部2をベース部1に対して留める仮留め機構を構成している。
【0062】
仮留め用凸部26の側面の外形は、わずかに圧縮した状態で仮留め用凹部16の内壁面に内接する形状で形成されている。これにより、仮留め用凸部26が、仮留め用凹部16へ押し入れられると、仮留め用凸部26の側面と仮留め用凹部16の内壁面との摩擦抵抗により、カバー部2は、ベース部1の配線部11を覆う状態でベース部1に対して留められる。
【0063】
以上に示したように、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26は、凸部と凹部との嵌め合い構造により、カバー部2をベース部1に対して配線部11を覆う状態で留める仮留め機構を構成している。
【0064】
なお、図1に示される例では、仮留め用凹部16がベース部1側に設けられ、仮留め用凸部26がカバー部2側に設けられているが、その逆の構成も考えられる。即ち、仮留め用凹部16がカバー部2側に設けられ、仮留め用凸部26がベース部1側に設けられてもよい。また、ベース部1及びカバー部2の各々において、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが混在してもよい。
【0065】
<ワイヤハーネス>
図3及び図4に示されるように、ワイヤハーネス100において、複数の電線9の中間部分は、ベース部1の配線部11に配置されている。また、一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1のコネクタ支持部15に固定されている。従って、コネクタ支持部15に固定されたコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12を通過して第一枠部13へ亘って配置されている。
【0066】
また、他の一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1の外側に配置され、そのコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12と第一枠部13における電線結束部14の部分とを通過して第一枠部13の外側へ亘って配置されている。また、その電線9は、電線結束部14に対して結束ベルトにより固定されている。
【0067】
そして、図3に示されるように、ベース部1及びカバー部2は、配線部11に配置された複数の電線9の中間部分を配線部11と対向壁部21との間に挟み込んで組み合わされた状態で固着されている。本実施の形態では、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26における相互に接触する部分が、超音波溶接などのスポット加熱の装置により溶着され、カバー部2がベース部1に対して固着されている。これにより、カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされた状態で保持されている。
【0068】
例えば、仮留め用凸部26が仮留め用凹部16に嵌め入れられたときに、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触することが考えられる。この場合、図3に示されるように、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触する部分に溶着部6が形成される。
【0069】
<電線結束部>
次に、図6及び図7を参照しつつ、電線結束部14について説明する。図6は、配線具10電線結束部14に電線9及び結束ベルト8が固定される様子を示す斜視図である。また、図7は、電線9が固定された電線結束部14の正面図である。なお、図6及び図7において、電線9の端部は省略されて電線9の断面が示されている。
【0070】
図6に示されるように、本実施形態における電線結束部14は、第一枠部13における、電線通過部141と第一ベルト通過部1420と第二ベルト通過部1430とにより構成されている。電線通過部141は、第一枠部13における電線9が通る部分である。第一枠部13において、第一ベルト通過部1420は、電線通過部141に隣接し、第二ベルト通過部1430は、電線通過部141に対し第一ベルト通過部1420の側の反対側に隣接している。
【0071】
第一ベルト通過部1420は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な貫通孔142が形成された部分である。この貫通孔142は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8のベルト部81が通される孔である。従って、貫通孔142は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な大きさで形成されている。なお、結束ベルト8は、結束材の一例であり、ベルト部81は、結束ベルト8における結束対象への巻き付け部である。
【0072】
また、第二ベルト通過部1430は、結束ベルト8のベルト部81の厚みよりも大きな幅で、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成された切れ込み部143が形成された部分である。切れ込み部143は、第一枠部13における電線通過部141に対して貫通孔142が位置する側の反対側に隣接する部分に形成されている。
【0073】
貫通孔142及び切れ込み部143は、例えば、真空成形される前の平板状の樹脂部材に対するトムソン加工などによって形成される。
【0074】
図6に示される例では、切れ込み部143は、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成されたスリット状の外側孔部1431と、外側孔部1431と連通し外側孔部1431の幅よりも広い幅の孔である内側孔部1432とにより構成されている。
【0075】
内側孔部1432は、貫通孔142に対して電線通過部141を挟んで対向する位置に形成され、外側孔部1431から電線通過部141側へ幅が拡がって形成されている。そのため、外側孔部1431における電線通過部141側の縁と内側孔部1432における電線通過部141側の縁との境界部分には、段差1433が形成されている。即ち、内側孔部1432は、外側孔部1431から電線通過部141側へ段差1433を経て幅が拡がって形成されている。
【0076】
結束ベルト8は、まず、切れ込み部143における外側孔部1431から内側孔部1432へ通される。その後、結束ベルト8は、先端が貫通孔142に通されるとともに、電線通過部141と電線通過部141に配置された電線9とに巻き付けられる。
【0077】
以上のようにして取り付けられた結束ベルト8は、図7に示されるように、電線9と電線通過部141とを結束した状態で保持され、電線9は、電線結束部14の電線通過部141に固定される。
【0078】
図6に示される電線結束部14において、貫通孔142の縁部及び切れ込み部143の段差1433の部分は、振動などによって電線9に対する結束ベルト8の位置が移動し、結束ベルト8が第一枠部13から外れることを防止する。
【0079】
なお、配線具10に適用可能な電線結束部14の他の例としては、以下のような例も考えられる。他の例に係る電線結束部は、第一枠部13における電線通過部141と、第一枠部13における電線通過部141の両側に隣接する2つの貫通孔が形成された部分とを有する。この場合、2つの貫通孔は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8が通される孔である。
【0080】
<コネクタ支持部>
次に、図8から図12を参照しつつ、コネクタ支持部15について説明する。図8は、配線具10におけるコネクタ支持部15の斜視図である。図9は、電線9の端部におけるコネクタ91の部分の斜視図である。図10は、コネクタ91が固定されたコネクタ支持部15の正断面図である。
【0081】
ここで、コネクタ支持部15について説明する前に、コネクタ支持部15に固定されるコネクタ91の構造について説明する。
【0082】
図9に示されるように、電線9の端部のコネクタ91には、クランプなどの他の部材と連結される連結部92が形成されている。連結部92は、一対の平行凸部921と梁部922と対向凸部923とを有する。
【0083】
本実施形態において、一対の平行凸部921は、連結される相手側部材の一部が嵌り込む隙間を形成する平行な一対のガイドレール部である。また、梁部922は、一対の平行凸部921に架け渡された架設部である。また、対向凸部923は、その架設部におけるコネクタ91の本体の底面に対向する面においてコネクタ91の本体側に向かって突出して形成された凸部である。
【0084】
一対の平行凸部921は、コネクタ91の外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行な凸部を形成している。また、梁部922は、一対の平行凸部921の間においてコネクタ91の外表面に対して間隔を空けて形成された梁部を形成している。また、突起部923は、梁部922からコネクタ91の外表面に向かって突起して形成された凸部を形成している。
【0085】
図9に示されるコネクタ91は、特許文献2に示されるように、自動車に搭載されるワイヤハーネスにおいて広く用いられている。一般的には、連結部92に対する相手側部材は、連結部92における一対の平行凸部921が形成する隙間に嵌り込む嵌入片を有する。また、その嵌入片には、その嵌入片が一対の平行凸部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔が形成されている。嵌入片が一対の平行凸部921の隙間に嵌め入れられることにより、連結部92と相手側部材とは、連結した状態で保持される。
【0086】
一方、図8に示されるように、本実施形態におけるコネクタ支持部15には、一対の平行凹部151と、それら一対の平行凹部151の間の部分である中間板部152とが形成されている。
【0087】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、ベース部1における第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成する部分である。より具体的には、第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びて形成された底板部1511と、その底板部1511の両側方において底板部1511に連なって形成された2つの側壁部1512とにより構成されている。側壁部1512は、底板部1511の両側方において底板部1511から起立する段差を形成している。一対の平行凹部151が形成する一対の溝には、コネクタ91の連結部92における一対の平行凸部921が嵌め入れられる。
【0088】
また、コネクタ支持部15において、中間板部152は、一対の平行凹部151の間の板状の部分であり、コネクタ91の本端部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入される部分である。本実施形態においては、中間板部152は、平板状である。
【0089】
また、中間板部152には、中間板部152がコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入されたときに、梁部922に形成された突起部923が嵌り込む孔153が形成されている。
【0090】
図10に示されるように、コネクタ91がコネクタ支持部15に固定された状態において、コネクタ91の連結部92における一対の平行凸部921は、コネクタ支持部15における一対の平行凹部151に嵌め入れられている。さらに、コネクタ支持部15の中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入されており、連結部92の梁部922に形成された突起部923が、中間板部152に形成された孔153に嵌り込んでいる。
【0091】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、一対の平行凹部151の溝の長手方向に対して直交する方向におけるコネクタ91の動きを制限する。また、中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入されることにより、一対の平行凹部151の溝の深さ方向におけるコネクタ91の動きを制限する。さらに、中間板部152における孔153の縁部は、一対の平行凹部151の溝の長手方向におけるコネクタ91の動きを制限する。
【0092】
また、本実施形態においては、中間板部152の両側における一対の平行凹部151各々との境界部分に、内側へ切れ込んだ切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152における第一枠部13の外縁側の端部は、片持ち梁状に張り出した庇部1521を形成している。
【0093】
図9に示されるコネクタ91の連結部92においては、一対の平行凸部921各々と梁部922との間に、一対の平行凹部151の側壁部1512の一部が入り込む隙間924が形成されている。この場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることは必須ではない。
【0094】
本実施形態においては、中間板部152が、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間により深く挿入されるように、中間板部152の両側に切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152が、梁部922に対してより安定した状態で引っ掛かり、コネクタ91がコネクタ支持部15から外れにくくなる。
【0095】
しかしながら、コネクタ91の連結部92に隙間924が形成されていない場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることが必要である。これにより、中間板部152をコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の梁部922との間の隙間に挿入することが可能となる。
【0096】
また、図9に示されるコネクタ91の連結部92においては、中間板部152よりも内側において一対の平行凹部151が形成する一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部155がさらに形成されている。この内側凹部155は、凹凸をなす板状の部分であるコネクタ支持部15の剛性を高める効果、特に、コネクタ支持部15をねじるように作用する外力に対する剛性を高める効果を発揮する。
【0097】
以上に示したように、コネクタ91は、コネクタ支持部15によって支持され、第一枠部13の一部に固定される。即ち、コネクタ支持部15は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91の外表面に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。これにより、電線9の端部のコネクタ91は、ごく簡易な作業により第一枠部13における予め定められた位置に固定される。
【0098】
なお、コネクタ支持部15が形成された配線具10は、本発明の実施形態に係るコネクタ支持具の一例でもある。
【0099】
次に、図11及び図12を参照しつつ、コネクタ支持部15の基本構造について説明する。図11は、コネクタ支持部15の基本構造の斜視図である。図12は、コネクタ支持部15が支持可能なコネクタ91の基本構造の斜視図である。即ち、図11及び図12は、図8に示されるコネクタ支持部15及び図9に示されるコネクタ91における必須の構成のみが模式的に表された斜視図である。なお、図11及び図12において、図8及び図9に示される構成要素と同じ構成要素に対して同じ符号が付されている。
【0100】
図12に示されるように、コネクタ支持部15によって支持されるコネクタ91の連結部92において、一対の平行凸部921は、必ずしも相手側の板状部分が差し込まれる隙間を形成するガイドレール状である必要はない。コネクタ支持部15は、コネクタ91に形成された周知の連結部92における一対のガイドレール部を、一対の平行凸部921として利用する。
【0101】
同様に、コネクタ支持部15によって支持されるコネクタ91の連結部92において、梁部922は、必ずしも一対の平行凸部921に架け渡された架設部である必要はない。図12に示される梁部922は、コネクタ91の外表面から突出した支柱部に対して片持ち梁状に張り出した部分である。コネクタ支持部15は、コネクタ91に形成された周知の連結部92における架設部を、梁部922として利用する。
【0102】
また、図11に示されるように、コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、板状の第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、その一対の溝にコネクタ91の連結部における前記一対の平行凸部が嵌め入れられる部分であればよい。
【0103】
また、コネクタ支持部15において、中間板部152は、一対の平行凹部151の間の部分であり、前記コネクタの外表面と前記連結部の前記梁部との間の隙間に挿入されたときに対向凸部923が入り込む孔153が形成された板状の部分であればよい。
【0104】
また、コネクタ支持部15において、内側凹部155は、コネクタ支持部15の剛性を高めるために設けられた部分である。従って、板状の部材の厚みなどの他の構造によってコネクタ支持部15の剛性が確保される場合には、図12に示されるように、内側凹部155が設けられないことも考えられる。
【0105】
ワイヤハーネス100において、電線9は、配線具10を構成するベース部1及びカバー部2の間に挟み込まれる。さらに、板状のベース部1において内側の配線部11から外側の第一枠部13に亘って配置された電線9は、第一枠部13における予め定められた位置に設けられた電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定される。
【0106】
従って、配線具10が取り付けられた電線9において、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線9の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線9の形状が配線具10によって保持される。また、電線9は、ベース部1及びカバー部2によって保護される。
【0107】
一方、配線具10が取り付けられた電線9において、配線部11に配置された部分、即ち、ベース部1の第一枠部13に至るまでの途中の中間部分は、ベース部1の内側の領域を占める配線部11とカバー部2の内側の領域を占める対向壁部21との間の仕切の無い配線空間90内に収容される。
【0108】
従って、電線9をベース部1の配線部11に配線する作業において、配線部11内の任意の経路での配線が許容され、電線9が配線部11から浮き上がっていても、カバー部2をベース部1に重ねて押し付けるだけで、電線9は配線部11と対向壁部21との間の配線空間90に収容される。即ち、配線部11から浮き上がる電線9を配線部11に対して押さえ込みつつ電線9を配線するという煩雑な作業は不要である。即ち、ワイヤハーネス100が採用されることにより、配線具10を電線9に取り付けるための工数を簡素化できる。
【0109】
<コネクタ支持部の効果>
配線具10のコネクタ支持部15において、電線9の端部のコネクタ91は、連結部92の一対の平行凸部921が一対の平行凹部151の溝に嵌り込み、中間板部152が連結部92の梁部922とコネクタ91の外表面との隙間に嵌り込み、さらに、連結部92の対向凸部923が中間板部152の孔153に嵌り込むことにより、コネクタ支持部15に固定される。
【0110】
また、コネクタ支持部15は、一部に溝が形成されて凹凸をなす板状に成形された部材によって構成される。そのような部材は、平板状の樹脂部材に対する真空成形、或いはスライド機構のない簡易な金型を用いた射出成形などによって得られ部材であり、製造に要する工数及びコストが小さい。
【0111】
また、複数のコネクタ支持部15が1つの配線具10に設けられることにより、1つの配線具10が自動車のパネルなどの支持体に取り付けられるだけで、複数のコネクタ91が一括して支持体の所定位置に固定される。従って、配線具10が採用されることにより、電線9に設けられたコネクタ91を所定の位置に固定する作業の工数を軽減することができる。
【0112】
また、配線具10のコネクタ支持部15において、中間板部152の両側における一対の平行凹部各々との境界部分が内側へ切れ込んで形成されている。これにより、中間板部152が、コネクタ91の連結部92における梁部922に対してより安定した状態で引っ掛かり、コネクタ91がコネクタ支持部15から外れにくくなる。
【0113】
また、配線具10のコネクタ支持部15において、一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部155が形成されている。これにより、凹凸をなす板状の部材である配線具10におけるコネクタ支持部15の剛性が高まる。
【0114】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。従って、コネクタ支持部15を含む配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られた部材であるため、製造工数及び製造コストがより低減される。
【0115】
また、配線具10が取り付けられた電線9において、端部のコネクタ91は、コネクタ支持部15に支持されることにより一定の位置に保持される。即ち、電線9の端部のコネクタ91が接続相手に対して過不足なく届くように、電線9の形状が配線具10によって保持される。
【0116】
また、電線9に取り付けられた配線具10が、クランプなどによって支持体に取り付けられるだけで、コネクタ91が支持体における予め定められた位置に固定される。即ち、配線具10が採用されることにより、コネクタ91を支持体における予め定められた位置に固定する作業が簡素化される。特に、配線具10は、複数のコネクタ支持部15を備えるため、その効果は特に顕著である。
【0117】
<参考例に係るコネクタ支持部>
ここで、図15を参照しつつ、コネクタ支持部15との比較対象である参考例に係るコネクタ支持部18について説明する。図18は、コネクタ支持部18及びコネクタ91の斜視図である。
【0118】
図15に示されるように、コネクタ支持部18は、コネクタ91の連結部92における一対の平行凸部921の隙間に嵌り込む嵌入片181を有する。嵌入片181は、第一枠部13の縁部に形成された一対の切り込みの間の部分である。また、嵌入片181には、嵌入片181が一対の平行凸部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔182が形成されている。
【0119】
嵌入片181が連結部92における一対の平行凸部921の隙間に嵌め入れられることにより、コネクタ91は、コネクタ支持部18に固定される。即ち、コネクタ支持部18は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。
【0120】
図15に示されるようなコネクタ支持部18は、凹凸をなす板状の部材からなる配線具10に適用可能である。しかしながら、コネクタ支持部18は、庇状の嵌入片181の部分でのみコネクタ91を支持する。そのため、コネクタ支持部18は、振動を受ける環境下における耐久性を十分に確保することが難しい。
【0121】
一方、図8に示されるコネクタ支持部15において、一対の平行凹部151及び中間板部152の全体が、コネクタ91を支持する。また、一対の平行凹部151とそれらの間の中州状の部分である中間板部152とに亘る部分は、全体として凹凸をなしており、剛性が高い。そのため、コネクタ支持部15は、振動を受ける環境下においても十分な耐久性を確保できる。
【0122】
<コネクタ支持具>
次に、図13及び図14を参照しつつ、本発明の実施形態に係るコネクタ支持具10Aについて説明する。図13は、コネクタ支持具10Aの斜視図である。図14は、自動車におけるボディの一部を構成するパネル又はインスツルメントパネルなどの板状の支持体7に取り付けられるときのコネクタ支持具10Aの正面図である。
【0123】
コネクタ支持具10Aは、配線具10と同様に、凹凸をなす板状の樹脂部材である。コネクタ支持具10Aには、配線具10と同様に、複数のコネクタ支持部15が形成されている。コネクタ支持具10Aに形成されているコネクタ支持部15の構造は、図8に示されるコネクタ支持部15の構造と同じである。
【0124】
なお、図14に示されるコネクタ支持具10Aは、5つのコネクタ支持部15を備えるが、コネクタ支持具10Aが、2つ乃至4つのコネクタ支持部15を備えること、又は、6つ以上のコネクタ支持部15を備えることも考えられる。
【0125】
また、コネクタ支持具10Aにも、配線具10と同様に、クランプ孔17が形成されている。図14に示されるように、コネクタ支持具10Aは、複数のコネクタ支持部15において複数のコネクタ91を支持する。また、コネクタ支持具10Aが複数のコネクタ91を支持する状態で、クランプ5が、コネクタ支持具10Aのクランプ孔17と支持体7に形成された取付孔71とに通されることにより、コネクタ支持具10Aは、支持体7に固定される。
【0126】
図14に示される1つのコネクタ支持具10Aが支持体7に取り付けられれば、複数のコネクタ91が一括して支持体7の所定位置に固定される。従って、コネクタ支持具10Aが採用されることにより、電線9に設けられたコネクタ91を所定の位置に固定する作業の工数を軽減することができる。
【0127】
図13に示されるコネクタ支持具10Aは、クランプ5により支持体7に取り付けられるクランプ孔17を備えている。しかしながら、コネクタ支持具10Aが、支持体7又は配線具などの他の部材との間で嵌め合わせにより連結される連結構造を有することも考えられる。
【0128】
<その他>
前述の配線具10においては、ベース部1とカバー部2とは、接続部3を介して繋がって一体に形成されている。しかしながら、ベース部1とカバー部2とが別部材で構成されることも考えられる。
【0129】
また、配線具10のベース部1において、凸部111が形成されていない平坦な配線部11が採用されることも考えられる。また、ベース部1の配線部11に、格子状又は網目状に連なる凸部又は溝が形成されることも考えられる。そのような凸部又は溝も、配線部11の剛性を高める効果を奏する。
【0130】
また、配線具10及びコネクタ支持具10Aが、樹脂の射出成形により得られる部材であることも考えられる。但し、配線具10及びコネクタ支持具10Aは、上下方向(一次元方向)においてのみ凹凸をなす板状に成形された部材であり、板状の樹脂部材に対する真空成形によって容易に得られる部材である。従って、製造工数及び製造コストの面において、配線具10及びコネクタ支持具10Aは、平板状の部材の真空成形により得られる部材であることが望ましい。
【符号の説明】
【0131】
1 ベース部(基体)
2 カバー部(被覆体)
3 接続部
5 クランプ
6 溶着部
7 支持体
8 結束ベルト
9 電線
10 配線具
10A コネクタ支持具
11 配線部
12 第一段差部
13 第一枠部
14 電線結束部
15,18 コネクタ支持部
16 仮留め用凹部
17 クランプ孔
21 対向壁部
22 第二段差部
23 第二枠部
26 仮留め用凸部
81 ベルト部
90 配線空間
91 コネクタ
92 コネクタの連結部
100 ワイヤハーネス
111 配線部の凸部
121 背高段差部
141 電線通過部
142 貫通孔
143 切れ込み部
144 突起部
151 平行凹部
152 中間板部
153 中間板部の孔
154 切れ込み部
155 内側凹部
181 嵌入片
182 嵌入片の孔
921 平行凸部
922 梁部
923 対向凸部
924 隙間
1420 第一ベルト通過部
1430 第二ベルト通過部
1431 外側孔部
1432 内側孔部
1433 段差
1511 底板部
1512 側壁部
1521 庇部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に取り付けられたコネクタの外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行凸部と、
前記一対の平行凸部の間において前記コネクタの外表面に対して間隔を空けて形成された梁部と、
前記梁部から前記コネクタの外表面に向かって突起して形成された対向凸部と、を備える連結部と係り合って前記コネクタを支持するコネクタ支持具であって、
凹凸をなす板状の部材からなり、
当該板状の部材の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、該一対の溝に前記コネクタの前記連結部における前記一対の平行凸部が嵌め入れられる部分である一対の平行凹部と、
前記一対の平行凹部の間の部分であり、前記コネクタの外表面と前記連結部の前記梁部との間の隙間に挿入されたときに前記対向凸部が入り込む孔が形成された中間板部と、を有するコネクタ支持部が形成されていることを特徴とするコネクタ支持具。
【請求項2】
前記中間板部の両側における前記一対の平行凹部各々との境界部分が内側へ切れ込んで形成されている、請求項1に記載のコネクタ支持具。
【請求項3】
前記中間板部よりも内側において前記一対の平行凹部が形成する一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部がさらに形成されている、請求項1又は請求項2に記載のコネクタ支持具。
【請求項4】
平板状の樹脂部材の真空成形により凹凸が成形された部材からなる、請求項1から請求項3のいずれかに記載のコネクタ支持具。
【請求項5】
コネクタの外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行凸部と、
前記一対の平行凸部の間において前記コネクタの外表面に対して間隔を空けて形成された梁部と、
前記梁部から前記コネクタの外表面に向かって突起して形成された対向凸部と、
を備える連結部が形成された前記コネクタが端部に取り付けられた電線を、予め定められた形状で保持する板状の部材を備えた配線具であって、
前記板状の部材は、凹凸をなす板状に成形された部材であり、
前記電線が配置される配線空間に面した配線部と、
前記配線部の外側に形成され当該板状の部材の外縁部分をなす枠部と、
前記枠部の一部に形成され、前記配線部から前記枠部へ亘って配置される前記電線の端部の前記コネクタが固定されるコネクタ支持部と、を備え、
前記コネクタ支持部には、
前記基体における前記枠部の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、該一対の溝に前記コネクタの前記連結部における前記一対の平行凸部が嵌め入れられる部分である一対の平行凹部と、
前記一対の平行凹部の間の部分であり、前記コネクタの外表面と前記連結部の前記梁部との間の隙間に挿入されたときに前記対向凸部が入り込む孔が形成された中間板部と、が形成されていることを特徴とする配線具。
【請求項6】
コネクタの外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行凸部と、
前記一対の平行凸部の間において前記コネクタの外表面に対して間隔を空けて形成された梁部と、
前記梁部から前記コネクタの外表面に向かって突起して形成された対向凸部と、
を備える連結部が形成された前記コネクタが端部に取り付けられた電線と、
前記電線を予め定められた形状で保持する板状の部材を備えた配線具と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記配線具の前記板状の部材は、凹凸をなす板状に成形された部材であり、
前記電線が配置される配線空間に面した配線部と、
前記配線部の外側に形成され当該板状の部材の外縁部分をなす枠部と、
前記枠部の一部に形成され、前記配線部から前記枠部へ亘って配置される前記電線の端部の前記コネクタが固定されるコネクタ支持部と、を備え、
前記コネクタ支持部には、
前記基体における前記第一枠部の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成し、該一対の溝に前記コネクタの前記連結部における前記一対の平行凸部が嵌め入れられた部分である一対の平行凹部と、
前記一対の平行凹部の間の部分であり、前記コネクタの外表面と前記連結部の前記梁部との間の隙間に挿入されており、前記対向凸部が入り込んだ孔が形成された中間板部と、が形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−16367(P2013−16367A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148806(P2011−148806)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】