説明

コネクタ着脱工具

【課題】
信号中継装置等において、高密度に実装されたコネクタあるいはキャップの着脱を容易に実行することが可能であり、かつ、構造が簡単であり容易に製作可能なコネクタの着脱工具を提供する。
【解決手段】
金属あるいは合成樹脂等の剛性を有する素材により形成された短冊状の板であり、当該短冊状の板の長手方向の少なくとも一方の端に、コネクタを挟む二本の挟持枝を設け、当該二本の挟持枝の対抗する辺にコネクタの凹凸に噛み合う凹凸を設けた構造となっている。二本の挟持枝の凹凸がコネクタの凹凸に噛み合うように、両挟持枝によりコネクタを挟持した状態で着脱工具を長手方向に移動させることにより、コネクタの装着あるいは抜き取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ等のケーブル(コード)が接続されているコネクタ(接続プラグ)を中継装置等の接続口(接続アダプタ)に装着する、あるいは接続口から抜き取る際に使用するコネクタ着脱工具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年光ケーブル等を用いた多くの広域通信ネットワークが構築されている。ネットワークは信号を中継し分配する多くの信号中継装置あるいは信号分配装置を有している。信号中継装置あるいは信号分配装置は、一つ以上の入力信号を複数の出力信号に中継あるいは分配するものであり、入力信号ラインと出力信号ラインに対応するケーブルがコネクタにより装置のアダプタに接続されている。
例えば光ケーブルネットワークの場合、光ファイバの分岐等はネットワーク内に配置された光接続装置あるいは光分岐接続装置と呼ばれる装置で行われ、各装置に設けられたアダプタに光ファイバが接続されている光コネクタを装着する構成となっている。近年、ネットワークの大規模化に伴い配線の高密度化が進み、コネクタのピッチ間が狭くなり、かつ、より小型の光コネクタを用いる傾向にある。この結果、装置のアダプタにコネクタを装着する、あるいは装着されているコネクタをアダプタから抜き取る脱着作業が困難となってきた。
【0003】
着脱作業を補助し上記の問題を解決するため、下記の特許文献1あるいは特許文献2等に示される着脱工具が提案されている。特許文献1には、ばね材から成るU形のアームの両端の内面側にゴム製の弾性体を互いに対向する位置に備えると共に、いずれか一方の弾性体よりも先端に前記弾性体よりも低く弾性体の突出方向に突出する折り曲げ部を有する工具が示されている。また、特許文献2には、光コネクタを受けるU字形の収容溝を持つ工具本体にハウジングの後端とゴムブーツの前端との境界の段差部を設け、当該段差部に光コネクタを当ててハウジングを前方に押し込むことにより光コネクタを装着するコネクタ着脱工具が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−180818号広報
【特許文献2】特開2007−76454号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献1に示される工具は、U字形のアームを弾性を有する素材により構成し、コネクタをピンセットで挟むように挟み込むようにしてアダプタから抜き取る、あるいはアダプタに装着するものである。また、文献2に示される工具は、工具本体の断面をU字形とし、当該U字形の空間にコネクタを挟み込んでアダプタからの抜き取り、あるいは装着を行う構成である。これらの工具を制作するためには、金属あるいはプラスチック等の素材をU字形のアーム構造、あるいはU字形の断面の構造に加工する必要があり、複雑な工程を採る必要がある。また、工具自体の構造も必然的に大きくなり、狭い間隔で高密度に実装されたコネクタの着脱が困難となる。
また、これらの工具はU字形のアームあるいは断面がU字形の素材の弾性力によりコネクタを挟む構造であるため、着脱時に大きな力によりコネクタを挟む必要がある。このような構成では、作業者は工具に大きな力をかける必要があり、高密度に実装されたコネクタを正確に操作する作業は困難なものとなる。
本発明は、簡単な構造であり製作が容易なコネクタ着脱工具を提供するものである。また、コネクタの着脱作業においても、狭い間隔で高密度に実装されたコネクタの着脱を容易に実行することが可能なコネクタ着脱工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、信号中継装置あるいは信号分配装置に所定間隔で実装されたコネクタの着脱を容易に実行することが可能なコネクタ着脱工具に関するものであり、二つの隣接するコネクタ間の間隙に挿入可能な厚さの板状の金属あるいは合成樹脂等により構成するものである。
本発明に係るコネクタ着脱工具は短冊形の板であり、少なくとも長手方向の一端にコネクタの凹凸部と噛み合う凹凸部を有し、コネクタを挟持する一対の挟持枝が形成されている。
コネクタの着脱にあたり、着脱工具を隣接するコネクタ間の間隙に挿入し、前記一対の挟持枝の凹部と凸部が、コネクタの上下方向あるいは左右方向から、コネクタに形成された凸部と凹部に噛み合う位置に移動させることにより、前記一対の挟持枝によりコネクタを挟んだ状態とし、着脱工具を長手方向に移動させることによりコネクタの装着あるいは抜き取りを行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタ着脱工具は短冊形の金属あるいは合成樹脂等により構成されているため、安価かつ容易に製作可能である。また、着脱工具は板状であるため、高密度に実装され、コネクタ間の狭い間隙に挿入することができ、コネクタの着脱を容易に実行することが可能となる。また、工具の長手方向の二つの端部の各々に、異なる形状のコネクタあるいはキャップに適合する挟持枝と凹凸部を設けることにより、多くの形状のコネクタに対応可能な工具とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るコネクタ着脱工具の一実施形態の図
【図2】コネクタ着脱工具とコネクタの図
【図3−1】コネクタを抜き取る行程図1
【図3−2】コネクタを抜き取る行程図2
【図4】コネクタ着脱工具とキャップの図
【図5−1】キャップを抜き取る行程図1
【図5−2】キャップを抜き取る行程図2
【図6】コネクタ着脱工具の係止具の図
【実施例】
【0009】
図1は本発明に係るコネクタ着脱工具の一つの実施形態を示すものである。同形態のコネクタ着脱工具10は金属あるいは合成樹脂等の剛性を有する短冊形の素材により形成されている。コネクタ着脱工具10の長手方向の両端に第1の挟持部11と第2の挟持部21が設けられている。第1の挟持部11はコネクタの着脱に使用する挟持部であり、第2の挟持部21は不使用のコネクタ接続口を保護するキャップの着脱に使用する挟持部である。
第1の挟持部11は第1挟持枝12と第2挟持枝13を有しており、両挟持枝の間はコネクタに接続されているケーブルが通るケーブル用切り欠き部16となっている。第1及び第2の挟持枝12と13の先端部にはコネクタの凸部と噛み合う凹部14と15、及び、コネクタの凹部と噛み合う凸部16と17が設けられている。
【0010】
図1(b)は第2の挟持部21の拡大図である。第2の挟持部21は第1挟持枝22と第2挟持枝23を有している。挟持部21はキャップの着脱を目的とするため、第1の挟持部11が有するケーブル用切り欠き部16に相当する部分は存在しない。挟持枝22と23の先端にキャップの凹部と噛み合う凸部26と27が設けられており、両挟持枝の基部にはキャップの凸部と噛み合う凹部24と25が設けられている。
本体20の中央部に、不使用時に信号中継装置等に設けられたクランプに係止し保管する第1及び第2の係止穴76と77からなる係止部75が設けられている。
【0011】
図2は、図1に示されるコネクタ着脱工具10とコネクタ30を示す図である。図2(a)の(1)はコネクタ30の全体図であり、同(3)はコネクタ着脱工具10の全体図である。また、同(2)はコネクタ30の左側からコネクタ着脱工具10の第1の挟持部11を噛み合わせた状態を示す図である。
図2(b)はコネクタ30の詳細図である。同図に示されるように、コネクタ30の本体は信号中継装置等に設けられたコネクタ接続口に挿入さる挿入部35と、挿入位置を規定するストッパ34を有している。コネクタ接続口の外側に位置する部位の上下の面には、凹部33と34、凸部35と36が設けられており、その外側にケーブル31がケーブル係止部32を介して接続されている。
【0012】
図2(c)はコネクタ30にコネクタ着脱工具10の第1の挟持部11を左側から噛み合わせた状態の詳細図である。コネクタ着脱工具10の第1の挟持部11をコネクタ30の左側からコネクタ30方向に移動させ、第1挟持枝12と第2挟持枝13に形成されている凹部14と15、及び凸部16と17をコネクタ30の凸部35と36、及び凹部33と34と噛み合わせる。第1挟持枝12と第2挟持枝13の間に設けられているケーブル用切り欠き部16にはケーブル係止部32が位置する。
第1の挟持部11の凹部と凸部がコネクタ30の凸部と凹部に噛み合った状態でコネクタ着脱工具10を後方に引くことにより、コネクタ30を装置のコネクタ接続口から抜き取ることが可能となる。また、コネクタ30をコネクタ着脱工具10の第1の挟持部11に噛み合わせた状態で、コネクタ着脱工具10を信号中継装置等のコネクタ接続口に向けて移動させることにより、コネクタ30の挿入部35をコネクタ接続口内に挿入することが可能である。
【0013】
図3−1及び図3−2の(a)ないし(d)は、信号中継装置40に装置されているコネクタをコネクタ着脱工具10を用いて取り出す行程を示す図であり、白抜きの矢印はコネクタ着脱工具10の移動方向を示す。信号中継装置40は2段10列のコネクタ挿入口を有し、全てにコネクタが実装されている。同図はその中のコネクタ41を抜き取る行程を示すものである。
(a):抜き取るコネクタ41と隣接するコネクタ42の間隙にコネクタ着脱工具10の第1の挟持部11を挿入する。
(b):挟持部11の凹部14と15及び凸部16と17が、各々コネクタ41の凸部35と36及び凹部33と34の横に位置するまでコネクタ着脱工具10を進める。
(c):コネクタ着脱工具10をコネクタ41方向に移動させ、挟持部11の凹部と凸部をコネクタ41の凸部と凹部に噛み合わせる。
(d):挟持部11の凹部と凸部がコネクタ41の凸部と凹部に噛み合った状態で、コネクタ着脱工具10を手前に引くことにより、コネクタ41の挿入部35が信号中継装置40のコネクタ接続口43から抜き取られる。
【0014】
図4はコネクタ着脱工具10と不使用のコネクタ接続口を保護するキャップ50を示す図である。図4(a)の(1)はキャップ50の全体図であり、同(3)はコネクタ着脱工具10の全体図である。また、同(2)はキャップ50の上方(あるいは下方)からコネクタ着脱工具10の第2の挟持部21を噛み合わせた状態を示す図である。
第2の挟持部21をキャップ50の上方(あるいは下方)からキャップ50方向に移動させ、次に、二本の挟持枝22と23の凹部24と25がキャップ50の凸部と噛み合い、両挟持枝の凸部26と27がキャップ50の凹部と噛み合うように下方(あるいは上方)に移動させる。
【0015】
図4(b)はキャップ50にコネクタ着脱工具10の第2の挟持部21を噛み合わせた状態の詳細図である。キャップ50は信号中継装置等の使用されていないコネクタ接続口(図3−2(d)の43、図5−2(d)の63)を保護するために装着するものであり、コネクタ接続口に挿入される挿入部51、挿入を規制するストッパ52、凹部53と54及び凸部55と56を有するつまみ57から構成されている。第2の挟持部21の第1挟持枝22と第2挟持枝23がキャップ50のつまみ57を挟み、挟持部21の凸部26と27(図1(b))がキャップ50の凹部53と53に噛み合い、凹部24と25(図1(b))がキャップ50の凸部55と56に噛み合う。両者が噛み合った状態で、コネクタ着脱工具10を後方あるいは前方に移動させることにより、キャップ50をコネクタ接続口から抜き取る、あるいはコネクタ接続口に挿入することが可能である。
【0016】
図5−1及び図5−2の(a)ないし(d)は、信号中継装置60に装置されているキャップをコネクタ着脱工具10を用いて取り出す行程を示す図であり、白抜きの矢印はコネクタ着脱工具10の移動方向を示す。信号中継装置60に設けられた2段10列のコネクタ挿入口の全てにキャップが装着されており、その中のキャップ61を抜き取るものである。同図は全てのコネクタ挿入口にキャップが装着されている図であるが、通常は、キャップが装着されている未使用のコネクタ挿入口と、コネクタが実装されている使用中のコネクタ挿入口が混在する。
(a):抜き取るキャップ61の上方にコネクタ着脱工具10の第2の挟持部21を移動させる。
(b):挟持部21の凹部24と25及び凸部26と27が各々キャップ61の凸部55と56及び凹部53と54の上方に位置するようにコネクタ着脱工具10を進める。
(c):コネクタ着脱工具10を下方向に移動させ、挟持部21の凹部と凸部をキャップ61の凸部と凹部に噛み合わせる。
(d):挟持部21の凹部と凸部がキャップ61の凸部と凹部に噛み合った状態で、コネクタ着脱工具10を手前に引くことにより、キャップ61の挿入部51が信号中継装置60のコネクタ接続口63から抜き取られる。
【0017】
信号中継装置の側壁等にクランプを設け、使用しないコネクタ着脱工具を保管する構成とすることが可能である。図6は、信号中継装置の側壁等に設けられたクランプにコネクタ着脱工具を係止する図である。同図(a)はクランプ70の詳細図であり、クランプ台71の裏面は両面接着テープ等により信号中継装置の側壁等、通常の作業に支障をきたさない位置に取り付けられる。クランプ70の前面にはコネクタ着脱工具10を掛けるフック72が有り、その先端部にはコネクタ着脱工具10の脱落防止用のフック爪73が設けてある。また、フック爪73に対向するフック台の前面には固定爪74が設けてある。
図6(b)はクランプ70にコネクタ着脱工具10を掛止する行程を示す図であり、白抜きの矢印はコネクタ着脱工具10の移動方向を示す。
(1)コネクタ着脱工具10の中央部に設けられた係止部75の第1係止穴76をクランプ70のフック72の位置まで移動させる。
(2)クランプ70のフック72をコネクタ着脱工具10の第1係止穴76に入れ、下方に移動させる。
(3)クランプ70のフック爪73と固定爪74がコネクタ着脱工具10の第2係止穴77に入り、コネクタ着脱工具10を固定する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、コネクタあるいはキャップを信号中継装置等のコネクタ接続口から抜き取る、あるいはコネクタ接続口に挿入する際に使用するコネクタ着脱工具に関するものである。本発明に係るコネクタ着脱工具は、金属あるいは合成樹脂等の剛性を有する素材により形成された短冊状の板であり、当該短冊状の板の長手方向の少なくとも一方の端に、コネクタあるいはキャップを挟む二本の挟持枝を設け、これら二本の挟持枝の対抗する辺にコネクタあるいはキャップの凹凸に噛み合う凹凸を設けた構造となっている。
本発明に係るコネクタ着脱工具は短冊状の板であるため、高密度に実装されたコネクタ間の狭い間隙に容易に挿入することが可能である。また、短冊状の板の端部に設けられた二本の挟持枝の凹凸とコネクタあるいはキャップの凹凸を噛み合わせ、工具を長手方向に移動させるという簡単な動作により、コネクタあるいはキャップの装着あるいは抜き取りが可能である。従って、コネクタが高密度に実装された装置であっても、簡単な操作によってコネクタあるいはキャップの装着あるいは抜き取りが可能である。
【0019】
本発明に係るコネクタ着脱工具は、剛性を有する板状の素材により製造するものである。また、二本の挟持枝に設けられた凹凸の形状は、コネクタあるいはキャップの凹凸と正確に一致する必要はなく、工具を長手方向に移動させた時、工具の挟持枝に設けられた凹凸がコネクタあるいはキャップの凹凸を押し一緒に移動させる形状であれば足り、簡単かつ安価に製作することが可能である。
短冊状の板の両端に設ける第1及び第2の挟持部を、異なる形状のコネクタあるいはキャップに適合する形状の挟持枝と凹凸とすることにより、多くの形状のコネクタあるいはキャップの着脱に使用可能な工具とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊状の板の長手方向の端部にコネクタを挟む二本の挟持枝を有し、前記二本の挟持枝の対抗する辺にコネクタと噛み合う形状の凹凸を設けたことを特徴とするコネクタ着脱工具。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタ着脱工具であって、
前記短冊状の板の長手方向の二つの端部に異なる形状の挟持枝と凹凸を設けたことを特徴とするコネクタ着脱工具。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタ着脱工具であって、
第1の端部の凹凸はケーブルコネクタと噛み合う形状の凹凸であり、第2の端部の凹凸はコネクタ接続口用のキャップと噛み合う形状の凹凸であることを特徴とするコネクタ着脱工具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載のコネクタ着脱工具であって、二本の挟持枝の間にケーブル用切り欠き部を有することを特徴とするコネクタ着脱工具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4記載のコネクタ着脱工具であって、中央部に係止用の穴を有することを特徴とするコネクタ着脱工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−204525(P2010−204525A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51766(P2009−51766)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】