説明

コネクタ装置

【課題】差動信号端子間で適切にインピーダンスを調整すること。
【解決手段】メモリカードを装着可能なハウジングと、ハウジングに設けられ、メモリカードの電極に接続可能な複数のコンタクト端子(4)とを備え、複数のコンタクト端子(4)のうち隣り合う一対のコンタクト端子(4)は、差動伝送に対応した一対の差動信号端子(41)であり、一対の差動信号端子(41)の延在方向の途中部分には、当該途中部分を挟んで一端側及び他端側で互いに幅寸法または厚さ寸法が異なり、一端側から他端側に進むにつれて幅寸法または厚さ寸法が変化する形状変化部(46)が形成され、一対の形状変化部(46)間の少なくとも一部に誘電体が介在するように一対の差動信号端子(41)がハウジングに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器とそれに装着されるメモリカード等の被装着部材との間のデータ伝送の高速化に対応するコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データ伝送の高速化に対応したコネクタ装置として、電子機器とメモリカードとの間で、インピーダンスを整合させて伝送効率を高めるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のコネクタ装置では、カード挿入方向に延びる複数の端子がハウジングの底壁部上に配設され、各端子に対向するように底壁部の下面にグランド板が設けられている。各端子は、ハウジングに固定された基端部から奥方に先細りのアーム部が延出し、基端部から前方に幅狭の半田付け部が突出している。
【0003】
また、グランド板は、アーム部の全長以上の縦幅、複数の端子の両端と略一致する横幅を有している。この構成により、各端子の真下にグランド板が位置することとなり、全ての端子についてマイクロストリップライン構造が形成される。特許文献1のコネクタ装置は、マイクロストリップライン構造において、各端子とグランド板との間の距離を調整することで端子のインピーダンスを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−129173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したコネクタ装置では、データ伝送の高速化に対応するため、一対の差動信号端子によって高速でありながらノイズに強い差動伝送が行われる。しかしながら、上記した端子形状は、基端部と半田付け部との間で急激に幅狭となるので、一対の差動信号端子の間隔が大幅に変化する。この部分では、インピーダンスが急激に変化するため、端子におけるインサーションロス(挿入損失)やリターンロス(反射損失)が大きくなり、コネクタ装置の伝送効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、差動信号端子間で適切にインピーダンスを調整できるコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタ装置は、被装着部材を装着可能なハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、前記複数の端子のうち隣り合う一対の端子は、差動伝送に対応した一対の差動信号端子であり、前記一対の差動信号端子の延在方向の途中部分には、当該途中部分を挟んで一端側及び他端側で互いに幅寸法または厚さ寸法が異なり、前記途中部分において一端側から他端側に進むにつれて幅寸法または厚さ寸法が変化する形状変化部が形成され、前記一対の形状変化部間の少なくとも一部に誘電体が介在するように前記一対の差動信号端子が前記ハウジングに設けられることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、インピーダンスが大きく変化する一対の形状変化部間に誘電体が介在されることで、端子の形状変化によりインピーダンスが受ける影響を抑えることができる。これにより、差動信号端子間のインピーダンスが適切に調整されてインサーションロス及びリターンロスが小さくなり、データ伝送等の伝送効率が向上される。
【0009】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記ハウジングは樹脂からなり、前記誘電体は前記ハウジングの一部からなる。この構成によれば、誘電体がハウジングの一部で構成できるため、一対の形状変化部間に誘電体を容易に介在させることができる。
【0010】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の形状変化部間の少なくとも一部は前記ハウジングに埋め込まれている。この構成によれば、樹脂によって形状変化部の外面が周囲から覆われるため、端子の形状変化によってインピーダンスが受ける影響をさらに抑えることができる。
【0011】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の差動信号端子は、互いに隣り合う側面の逆側の側面において前記一対の形状変化部から離間した位置に、前記他の端子との繋ぎ桟の切断痕が残存する。この構成によれば、相互に対向する側面では切断痕によって形状を変化することがないので、切断痕によるインピーダンスに影響を与えることがない。
【0012】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記形状変化部における前記差動信号端子の側面は、直線状または曲線状あるいは直線を折り繋げた形状に変化する。この構成によれば、幅寸法が急激に変化する形状変化部の場合に比べて、形状変化部におけるインピーダンスを緩やかに変化させて、信号伝送に対するインピーダンスの影響を軽減できる。
【0013】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記形状変化部において、前記差動信号端子の幅寸法または厚さ寸法の変化の大きさに応じて前記誘電体の厚みを変化させる。この構成によれば、形状変化部における形状変化に応じてインピーダンスを適切に調整できる。
【0014】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の形状変化部は、前記一対の差動信号端子間の中点を前記端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成される。この構成によれば、一対の差動信号端子間のインピーダンスを容易に調整できる。
【0015】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の形状変化部の互いに隣り合う側面は、前記一対の差動信号端子間の中点を前記差動信号端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成される。この構成によれば、インピーダンスに対する影響が大きな一対の形状変化部の互いに隣り合う側面を対称的に形成することで、端子の形状変化によってインピーダンスが受ける影響を小さくできる。
【0016】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記一対の差動信号端子の延在方向の途中部分には、当該途中部分を挟んで一端側及び他端側で互いに幅寸法が異なり、前記形状変化部が前記途中部分において一端側から他端側に進むにつれて幅寸法が変化するように形成され、前記一対の形状変化部間の少なくとも一部に誘電体が介在するように前記一対の差動信号端子が前記ハウジングに設けられる。この構成によれば、インピーダンスが大きく変化する一対の形状変化部間に誘電体が介在されることで、一対の形状変化部の端子間隔の変化によりインピーダンスが受ける影響を抑えることができる。これにより、差動信号端子間のインピーダンスが適切に調整されてインサーションロス及びリターンロスが小さくなり、データ伝送等の伝送効率が向上される。
【0017】
また、本発明の上記コネクタ装置において、前記被装着部材が、メモリカードである。この構成によれば、メモリカードと電子機器との間の伝送効率を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、差動信号端子間で適切にインピーダンスを調整できるコネクタ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係るコネクタ装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るカバーを外したコネクタ装置の斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【図4】本実施の形態に係る差動信号端子周辺の斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る形状変化部におけるキャパシタンスの変化量を示すグラフである。
【図6】本実施の形態に係る端子保持部の保持位置とインピーダンスの関係の説明図である。
【図7】本実施の形態に係るコネクタ装置のロック部及びスライド部材の斜視図である。
【図8】本実施の形態に係る厚型カードの装着動作の説明図である。
【図9】本実施の形態に係る薄型カードの装着動作の説明図である。
【図10】本実施の形態に係る薄型カードの平面図である。
【図11】本実施の形態に係る差動伝送に非対応の厚型カードの平面図である。
【図12】本実施の形態に係る差動伝送に対応した厚型カードの平面図である。
【図13】第1の変形例に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【図14】第2の変形例に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【図15】第3の変形例に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【図16】第4の変形例に係る端子保持部の保持範囲とインピーダンスの関係の説明図である。
【図17】第5の変形例に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、薄型カード及び2種類の厚型カードを挿入可能とするコネクタ装置を例示して説明する。しかしながら、コネクタ装置は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0021】
まず、本実施の形態に係るコネクタ装置について説明する前に被装着部材となる薄型カード及び2種類の厚型カードについて説明する。図10は、本実施の形態に係る薄型カードの平面図である。図11は、本実施の形態に係る差動伝送に非対応の厚型カードの平面図である。図12は、本実施の形態に係る差動伝送に対応した厚型カードの平面図である。
【0022】
図10A、図10Bに示すように、薄型カード7は、挿入方向に一定の厚さで形成されたいわゆるマルチメディアカード(MMC)であり、上面視略矩形状に形成されている。薄型カード7の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面71が形成されている。傾斜面71は、薄型カード7の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面71が形成されている側が挿入方向における先端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。また、薄型カード7の先端側には、コネクタ装置1の複数のコンタクト端子4bに接触する複数のパッド72が設けられている。
【0023】
図11A、図11Bに示すように、厚型カード8は、薄型カード7よりも厚く形成されたいわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。また、厚型カード8は、薄型カード7の仕様に基づいて構成されており、正面視において上段が薄型カード7と同一の幅を有する段状に形成されている。厚型カード8の一の角部には、薄型カード7と同様に切り欠かれて約45度に傾斜した挿入方向識別用の傾斜面81が形成されている。
【0024】
また、厚型カード8の傾斜面81が形成された先端側には、複数の挿入方向に延在する複数の仕切壁83によって溝部82が形成されている。この溝部82には、コネクタ装置1の複数のコンタクト端子4bに接触する複数のパッド84が設けられている。さらに、厚型カード8の一の側面には、後述するスライド部材5の係止部53に係止される切欠き85が設けられている。また、厚型カード8の他の側面には、カード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部86が設けられている。
【0025】
図12A、図12Bに示すように、他の厚型カード9は、SDカードと略同形に形成されており、SDカードよりもパッド数を増加させた差動伝送に対応したカード(例えば、UHS−IIカード)である。厚型カード9は、厚型カード8と同様に上面視矩形状の一の角部を約45度に切り欠いた挿入方向識別用の傾斜面91を有している。厚型カード9の裏面には、複数のパッド94a、94bが前後2列に配置されている。前列の一部のパッド94aには、差動信号用のパッドが含まれている。また、厚型カード9は、一の側面にスライド部材5の係止部53に係止される切欠き95が設けられ、他の側面にカード内のメモリに対する書き込み禁止用の操作部96が設けられている。
【0026】
次に、図1および図2を参照して、コネクタ装置の全体構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るコネクタ装置の斜視図である。図2は、本実施の形態に係るカバーを外したコネクタ装置の斜視図である。
【0027】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るコネクタ装置1は、上面および前面が開口されたハウジング本体2に対して、上方からカバー3を装着することで挿入口21を有する箱状体(ハウジング)を成している。挿入口21は、正面視において2種類の厚型カード8、9と相補的な形状を有している。2種類の厚型カード8、9は挿入口21の段状領域に挿入され、薄型カード7は挿入口21の上段の矩形領域に挿入される。
【0028】
ハウジング本体2の底壁部22には、例えばリン青銅等によって形成された複数のコンタクト端子4a、4bが幅方向に前後2列で配置されている。前列側のコンタクト端子4aは、ハウジング本体2を幅方向に横切る端子保持部23によって所定の間隔を空けて横並びに保持される。コンタクト端子4aの一端は、底壁部22の窓部24aにおいて奥方に向って延在し、厚型カード9の手前のパッド94aに接続可能となっている。コンタクト端子4aの他端は、前方に突出し、実装基板に半田付けされる。また、コンタクト端子4aの隣接する一部の端子は、差動伝送用の一対の差動信号端子となっている。
【0029】
後列側のコンタクト端子4bは、奥壁部25によって所定の間隔を空けて横並びに保持される。コンタクト端子4bの一端は、ハウジング外に突出し、実装基板に半田付けされる。コンタクト端子4bの他端は、底壁部22の窓部24bにおいて前方に向って延在し、カード7、8、9のパッド72、84、94bに対して接続可能となっている。コンタクト端子4a、4bは、比誘電率が4前後の材料であるLCP(Liquid Crystal Polymer)等の合成樹脂で形成されたハウジング本体2に対して、インサート成形により取り付けられる。
【0030】
ハウジング本体2の一の側壁部26には、側面に沿ってスライド可能なスライド部材5と、スライド部材5のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ(不図示)とが設けられている。排出バネは、一端が奥壁部25に当接され、他端がスライド部材5に当接されており、スライド部材5を排出方向に付勢している。スライド部材5は、排出バネに付勢された状態で挿入および排出方向にスライド可能に構成されている。
【0031】
スライド部材5の前端側の上面にはハートカム溝51(図7参照)が形成されており、このハートカム溝51と側壁部26の前端側に設けられたラッチピン6によりスライド部材5の位置が規定される。ラッチピン6は、側壁部26に沿って延在し、両端が下方に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン6の一端は、側壁部26の前端側に回動可能に支持され、他端はスライド部材5のハートカム溝51上で摺動される。
【0032】
ハートカム溝51は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材5のスライドに応じてラッチピン6の他端を一方向に摺動させる。スライド部材5が奥壁部25の近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン6の他端がハートカム溝51の係止部分に係止され、排出バネの付勢によるスライド部材5の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材5が押し込まれると、ラッチピン6とハートカム溝51との係止状態が解除されて、排出バネの付勢によってスライド部材5が復帰される。このように、ラッチピン6とハートカム溝51は、スライド部材5の装着位置における保持機能を有している。
【0033】
スライド部材5には、後端側を基端として前方に延在する金属性の板バネ52が設けられている。板バネ52の前端側には、板面の一部をハウジングの内側に向けて山形に折り曲げた係止部53が形成されている。スライド部材5は、ハウジングに挿入された厚型カード8、9の切欠き85、95を係止部53が係止することで、厚型カード8、9と一体的にスライドされる。なお、切欠きの無い薄型カード7がハウジングに挿入される場合には、カード側面に係止部53が弾接している状態で、スライド部材5と薄型カード7とが一体的にスライドされる。
【0034】
スライド部材5の後端側には、ハウジングの中央に向って突出する突出部54が形成されている。突出部54の先端側は、カード7、8、9の傾斜面71、81、91の傾斜に沿うように約45度に傾斜している。また、板バネ52の基端側は、突出部54の傾斜と共にカード7、8、9の傾斜面71、81、91に沿うように傾斜されている。この突出部54の傾斜部分と板バネ52の基端側の傾斜部分によって、カード7、8、9が正挿入時のみ装着位置まで案内されるので、カードの誤装着が防止される。
【0035】
カバー3は、金属板材を折り曲げて形成されており、側壁部26に対応する上板部分にはラッチピン6を押えるピン押え31が形成されている。ピン押え31は、底壁部22側に切り起された片持バネであり、ラッチピン6の中間部分を押圧してラッチピン6の他端をハートカム溝51に押し付けている。また、ピン押え31の後方には、装着位置において板バネ52の外側への開きをロックするロック部32が形成されている。詳細は後述するが、ロック部32は、板バネ52の外側への開きを抑制することで、装着位置におけるカードの無理抜きを防止している。
【0036】
図3を参照して、本実施の形態の特徴部分である一対の差動信号端子について説明する。図3は、本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の模式図である。図4は、本実施の形態に係る一対の差動信号端子周辺の斜視図である。
【0037】
図3に示すように、一対の差動信号端子41は、隣接する端子間に伝送される信号の電位差を利用して信号(データ)を伝送する差動伝送に対応し、厚型カード9のパッド94a用のコンタクト端子である。また、一対の差動信号端子41は、端子間の中点を端子の延在方向に通る仮想断面Aを基準として対称的に形成されている。各差動信号端子41は、端子保持部23からハウジング奥方に延在するバネ部42を有している。バネ部42の先端部分は、二股に分けられており、一片部が細長に形成され、他片部が幅広で短く形成されている。バネ部42の一片部は、上向きに湾曲され、厚型カード9のパッド94aに接触する接触部43となっている。バネ部42の他片部は、上向きに湾曲され、差動伝送に非対応の厚型カード8の装着時にカード裏面の仕切壁83に当接する当接部44となっている。
【0038】
図4に示すように、この当接部44は、厚型カード8のパッド84間に配置された仕切壁83に当接することで、差動信号端子41を押し下げている。この結果、接触部43が厚型カード9の裏面から離間方向に移動されて、接触部43と厚型カード8の裏面との接触圧が緩められる。また、接触部43の側面と仕切壁83の内側面とが接触しないものとなる。よって、差動伝送に非対応の厚型カード8の装着時に、カード裏面と接触部43とが強く摺動することがなく、接触部43の摩耗を効果的に防止している。さらに、接触部43の側面と仕切壁83の内側面とが接触しないので、接触部43の変形防止とともに、仕切壁83の内側面が傷つくことを防止している。
【0039】
また、各差動信号端子41は、端子保持部23からハウジング前方に引き出された半田付け部45を有している。半田付け部45は、底壁部22の上面よりも下方に向けて引き出されて、電子機器の実装基板に半田付けされる。半田付け部45の幅寸法は、バネ部42の幅寸法よりも小さく形成されている。バネ部42と半田付け部45は、バネ部42から半田付け部45に向って幅寸法が徐々に狭くなる形状変化部46によって接続されている。隣り合う一対の差動信号端子41において、形状変化部46の向かい合う内向きの側面47は緩やかに傾斜し、外向きの側面48は大きく傾斜している。
【0040】
各差動信号端子41の側面48には、隣接するコンタクト端子4aとの繋ぎ桟の切断痕49が残存している。切断痕49は、形状変化部46から離れた前後2箇所に位置している。
【0041】
ところで、一対の差動信号端子41では差動伝送が行われるが、端子の入力端から出力端の間にインピーダンスに大幅な変化を生じさせるような形状がある場合、この形状によるリターンロス及びインサーションロスが生じる。このリターンロス及びインサーションロスが大きい場合には、差動信号波形がつぶれてデータを判別することが困難となっていた。本発明者が、リターンロス及びインサーションロスの要因を調査した結果、端子形状の変化によってインピーダンスのアンマッチが生じることを発見した。そこで、本実施の形態では、インピーダンスの変化が大きい形状変化部46を、誘電体としての端子保持部23に保持させることで、インピーダンスの大幅な変化を抑えている。
【0042】
以下、差動信号端子間のインピーダンスの変化を抑制する構成について説明する。インピーダンスは、次式(1)で表わされるように、インダクタンスとキャパシタンスとによって求められる。ここで、式(1)では、Zがインピーダンス、Lがインダクタンス、Cがキャパシタンスをそれぞれ示す。
Z=√(L/C) …(1)
【0043】
また、キャパシタンスは、次式(2)で表わされるように、形状変化部46の厚さ及び長さ、対向する側面47間の介在物の誘電率、対向する側面47の間隔によって求められる。ここで、式(2)では、tが形状変化部46の厚さ(厚さ寸法)、dxが形状変化部46の微小長さ、εが誘電率、Wが側面47の間隔(幅寸法)をそれぞれ示す(図3参照)。なお、誘電体に囲まれた範囲の総キャパシタンスは、上記キャパシタンスを誘電体長さで積算することで求められる。
C=t・dx・ε/W …(2)
【0044】
例えば、本実施の形態の形状変化部46が端子保持部23に保持されない構成とした場合、形状変化部が空気中に露出される。この場合、空気の誘電率εairが小さいため、キャパシタンスが端子の形状変化(端子間隔)の影響を強く受けてしまっていた。具体的には、図5に示すように、キャパシタンスCairは、半田付け部45に向って大きく低下している。この結果、インピーダンスが大幅に変化して、リターンロス及びインサーションロスが大きくなる。
【0045】
これに対し、本実施の形態では、空気よりも誘電率が高い合成樹脂によって形状変化部46を保持することで、キャパシタンスに作用する端子の形状変化(端子間隔)の影響を小さくしている。形状変化部46の側面47間には、合成樹脂が介在されており、この合成樹脂の誘電率εresinは、空気の誘電率εairよりも大きい。よって、図5に示すように、形状変化部が空気中に露出される構成と比較してキャパシタンスCresinの低下量が抑えられている。このように、本実施の形態では、端子形状の変化によってキャパシタンスが低下する部分を合成樹脂によって保持することで、キャパシタンスの大幅な低下を抑えてインピーダンスの変化を抑制している。
【0046】
次に、図6Aに示すように、端子保持部23による差動信号端子41の保持位置を変化させてインピーダンス特性を3次元電磁界解析で調べた結果、図6Bに示す結果が得られた。一対の差動信号端子41のバネ部42の基端側は、幅寸法が一定であり、隣接する端子に対して側面が平行に形成された平行部分となっている。この平行部分を合成樹脂により保持した場合には、破線W1に示すように形状変化部46付近のインピーダンスの変化量が大きくなっている。具体的には、約190[Ω]から約200[Ω]に増加した後、約100[Ω]まで低下し、再び増加して約140[Ω]で安定している。一方、一対の差動信号端子41の形状変化部46を合成樹脂により保持する場合には、実線W2に示すように形状変化部46付近のインピーダンスの変化量が抑えられている。具体的には、約190[Ω]から約130[Ω]まで低下した後、再び増加して約140[Ω]で安定している。
【0047】
このように、本実施の形態では、形状変化部46を合成樹脂によって保持することにより、平行部分のみを合成樹脂によって保持する構成と比較して、インピーダンスの落ち込みを大幅に抑えてインピーダンスの変化量とその変化の傾きを低減している。また、本実施の形態では、形状変化部46から離れた位置、かつ、相互に対向する側面の逆側の側面に切断痕49が残存しているため、切断痕49によってインピーダンスが影響を受けることがない。また、相互に対応する側面間を平行に形成することもできる。さらに、斜面47、48によって形状変化部46の幅寸法が緩やかに変化されるため、幅寸法が急激に変化する場合に比べて、インピーダンスの急激な変化が抑制される。
【0048】
なお、本実施の形態では、合成樹脂により一対の形状変化部46を全体的に保持する構成としたが、これに限定されるものではない。インピーダンス変化を緩やかにすることができればよく、少なくとも一対の形状変化部46の対向する側面47間の一部に合成樹脂が介在されていればよい。
【0049】
また、本実施の形態では、形状変化部46の側面47、48が傾斜する構成としたが、これに限定されるものではない。形状変化部46は、バネ部42と半田付け部45とを連ねる形状であれば、どのような形状でもよい。例えば、図13Aに示すように、形状変化部46の側面47、48が湾曲して形成されていてもよい。また、図13Bに示すように、形状変化部46の側面47、48が複数の直線(図では2直線)を折り繋げた形状に形成されてもよい。この場合、側面47、48は、傾斜角度の浅い側面47a、48aと傾斜角度の深い側面47b、48bによって2段階に傾斜して形成される。これらの構成であっても、隣り合う一対の差動信号端子41において、形状変化部46の側面47、48の幅寸法を緩やかに変化さることができ、信号伝送に対するインピーダンスの影響を軽減できる。なお、図13に示す第1の変形例おいては、説明の便宜上、本実施の形態と同一の名称について同一の符号を付している。
【0050】
また、本実施の形態では、一対の差動信号端子41の幅寸法を変化させて形状変化部46が形成されたが、これに限定されるものではない。形状変化部46は、当該形状変化部46を挟んだ一端側と他端側の幅寸法または厚さ寸法を合わせるように形成されていればよく、例えば、厚さ寸法だけを変化させて形状変化部46が形成されてもよい。ここで、幅寸法とは差動信号端子41の側面間の間隔を指しており、厚さ寸法とは一対の差動信号端子41の厚さ方向(上下方向)の厚さtを指しているものである。
【0051】
また、本実施の形態では、一対の形状変化部46間に合成樹脂を介在させて、インピーダンスの変化を抑える構成としたが、これに限定されない。例えば、本実施の形態に係る合成樹脂の代わりに、他の誘電率の材料を用いて、インピーダンスの変化をさらに抑えることも可能である。また、端子保持部23の厚さを部分的に調整することにより、インピーダンスの変化を抑えることも可能である。さらに、上面視において端子保持部23の厚みを調整することにより、インピーダンスの変化を抑えることも可能である。
【0052】
例えば、図14A及び図14Bに示すように、形状変化部46において端子保持部23の厚さがバネ部42側から半田付け部45側に向って厚くなるように形成されてもよい。上記したように、キャパシタンスは、形状変化(端子間隔)の影響を受けてバネ部42側から半田付け部45側に向って低下する。このため、端子間隔の変化に応じて端子保持部23の厚さを調整することで、キャパシタンスの変化を緩やかにすることができる。よって、端子保持部23を一定の厚さで形成する構成と比較して、インピーダンスの変化を精度よく調整できる。
【0053】
また、形状変化部46の厚さを調整するにより、インピーダンスの変化を抑えることも可能である。例えば、図14C及び図14Dに示すように、形状変化部46の厚さがバネ部42側から半田付け部45側に向って減少するように形成されてもよい。このような構成でも、キャパシタンスの変化を緩やかにして、端子保持部23を一定の厚さで形成する構成と比較して、インピーダンスの変化を精度よく調整できる。なお、図14に示す第2の変形例おいては、説明の便宜上、本実施の形態と同一の名称について同一の符号を付している。
【0054】
また、本実施の形態では、一対の形状変化部46が、仮想断面Aを基準として対称的に形成されたが、これに限定されない。一対の形状変化部46は、非対称の場合でもインピーダンスの変化を抑えることが可能である。また、本実施の形態では、一対の形状変化部46の上面が露出しているが、合成樹脂によって覆われていてもよい。例えば、図15A及び図15Bに示すように、一対の形状変化部46の外面が、複数の押え穴29を除いて合成樹脂(端子保持部23)により周囲から覆われてもよい。なお、押え穴29は、インサート成形時に金型内でコンタクト端子4aを支持する押えピンによって形成される穴である。
【0055】
この形状変化部46が合成樹脂によって周囲から覆われる構成では、図15C及び図15Dに示すように、形状変化部46のバネ部42側の一部が端子保持部23の上面から露出してもよい。この場合、形状変化部46に設けられた厚さ方向の曲げによって、バネ部42側の略半部46aが端子保持部23の上面から露出されるように、半田付け部45側の略半部46bよりも高い位置に位置付けられる。バネ部42側の略半部46aが端子保持部23の上端に位置するため、ハウジング本体2が設置される設置基板からバネ部42を十分に離間させることができる。このように、端子保持部23の厚みが増した分だけバネ部42を設置基板から離間させることで、バネ部42と設置基板との衝突が防止される。なお、図15に示す第3の変形例おいては、説明の便宜上、本実施の形態と同一の名称について同一の符号を付している。
【0056】
また、本実施の形態では、一対の形状変化部46の側面47間に全体的に合成樹脂が介在される構成としたが、この構成に限定されない。図16Aに示すように、一対の形状変化部46の側面47間で、少なくとも一部に合成樹脂が介在する構成としてもよい。このような構成でも、インピーダンスの急激な変化を抑制できる。例えば、図16Bに示すように、一対の側面47間に部分的に合成樹脂が介在する場合には、一対の側面47間に合成樹脂が介在しない場合よりもインピーダンスの変化が抑えられる。
【0057】
具体的には、一対の側面47間に合成樹脂が介在しない場合には、破線W3に示すように形状変化部46のバネ部42側の位置P1から半田付け部45側の位置P2に向けてインピーダンスが上昇する。よって、インピーダンスのアンマッチが大きくなる。これに対し、一対の側面47間に部分的に合成樹脂が介在する場合には、実線W4に示すように合成樹脂が介在するバネ部42側の位置P1から途中位置P3に向けてインピーダンスが低下する。その後、合成樹脂が介在しない途中位置P3から半田付け部45側の位置P2に向けてインピーダンスが増加する。このように、一対の側面47間の少なくとも一部に合成樹脂が介在する場合には、部分的にインピーダンスを低下させることで、インピーダンスのアンマッチが小さくなる。なお、図16に示す第4の変形例おいては、説明の便宜上、本実施の形態と同一の名称について同一の符号を付している。
【0058】
また、本実施の形態では、一対の形状変化部46の両側面47、48が想断面Aを基準として対称的に形成されたが、この構成に限定されない。図17Aに示すように、一対の形状変化部46の内側の側面47が仮想断面Aを基準として対称に形成され、外側の側面48が仮想断面Aを基準として非対称に形成されてもよい。これは、図17Bに示すように、一対の差動信号端子41の内側と外側とで電気力線の密度が異なるからである。すなわち、一対の差動信号端子41の内側では導体間に生じる電気力線が密となり、一対の差動信号端子41の外側では導体間に生じる電気力線が疎となる。したがって、一対の形状変化部46の外側の側面48が非対称に形成されても、インピーダンスに与える影響が少ない。なお、形状変化部46の側面47間に限らず、一対の差動信号端子41全体の側面47を含む内側面全体が仮想断面Aを基準として対称に形成され、側面48を含む外側面全体が仮想断面Aを基準として非対称に形成されてもよい。なお、図17に示す第5の変形例おいては、説明の便宜上、本実施の形態と同一の名称について同一の符号を付している。
【0059】
次に、図7を参照して、コネクタ装置のロック構成について説明する。図7は、本実施の形態に係るコネクタ装置のロック部及びスライド部材の斜視図である。
【0060】
図7に示すように、板バネ52は、スライド部材5の後端側に支持されており、初期状態では厚型カード9の切欠き95を係止可能な係止位置に係止部53を位置付けている。また、板バネ52は、外側に開かれることで、係止部53を係止位置から離間した離間位置に移動可能になっている。例えば、板バネ52は、厚型カード9の挿入時に、カード側面によって係止部53が押し出されることで外側に揺動し、切欠き95に係止部53が入り込むことで初期状態に復帰する。板バネ52の前端部には、カバー3側に向って突出した突起部55が形成されている。
【0061】
カバー3には、スライド部材5が装着位置にある場合に、板バネ52の外側への揺動を防止するロック部32が設けられている。ロック部32は、板バネ52の板面に沿う規制片35を一対の腕部36で支持すると共に、規制片35の下端に乗り上げ片37を連ねて形成される。規制片35は、前後方向に延び、前後両端において一対の腕部36の自由端で下方に折り曲げられて形成される。この場合、規制片35は、一対の腕部36によって板バネ52のハウジング外側に面した背面側を覆うように位置付けられる。乗り上げ片37は、前後方向に延び、規制片35の下端から水平に折り曲げられて形成される。乗り上げ片37の前端部分は、斜め上方に僅かに起こされており、板バネ52の突起部55に乗り上がり易く形成されている。
【0062】
このように構成されたロック部32では、厚型カード9が排出位置にある場合には、規制片35が板バネ52の基端側に位置して板バネ52の揺動を許容する。厚型カード9が装着位置にある場合には、規制片35が板バネ52の前端側に位置して板バネ52の揺動を規制する。よって、装着位置においては、板バネ52の係止部53が厚型カード9の切欠き95から外れにくくなり、厚型カード9の無理抜きが防止される。この場合の無理抜き防止とは、装着位置にあるカードを引き抜こうとしたときに容易に抜けないようにすることを指している。すなわち、カードを引き抜こうとした場合に、カードが破損しない程度の所定の力(4〜10N程度の力)では引き抜けるものとなっている。なお、差動伝送に非対応の厚型カード8の無理抜きも、同様な構成により防止される。
【0063】
また、ロック部32では、薄型カード7が排出位置にある場合には、規制片35が板バネ52の基端側に位置して板バネ52の揺動を許容する。ここで薄型カード7は切欠きが形成されていないため、外側に開かれた状態で板バネ52が装着位置に移動する。このとき、乗り上げ片37が突起部55に乗り上がってロック部32を上方に逃がしている(図9C参照)。また、乗り上げ片37は、板バネ52に乗り上がることで、板バネ52に対して復帰方向にロック部32(腕部36)のバネ力を作用させている。よって、装着位置においては、板バネ52及びロック部32のバネ力が薄型カード7の側面に掛かっている状態となるが、薄型カード7に対して、過度の力が掛かることがなく、ロック部32や板バネ52の破損、変形を防ぐものとなっている。
【0064】
以下、図8及び図9を参照して、各カードの装着動作について説明する。図8は、本実施の形態に係る厚型カードの装着動作の説明図である。図9は、本実施の形態に係る薄型カードの装着動作の説明図である。なお、図8及び図9においては、説明の便宜上、ロック部を除いてカバーを省略している。また、図8では、厚型カードとして差動伝送に対応した厚型カードを例示して説明するが、差動伝送に非対応の厚型カードも装着動作は同様である。
【0065】
初めに、厚型カード9の装着動作について説明する。図8Aに示すように、スライド部材5が排出位置にある場合には、板バネ52の基端側が規制片35に位置付けられており、板バネ52の外側への揺動が許容されている。この状態で、コネクタ装置1に厚型カード9が挿入されると、係止部53がカード側面によって押し込まれることで板バネ52が外側に開かれる。厚型カード9がスライド部材5の突出部54に当接されると、係止部53が切欠き95に入り込み、板バネ52が元の状態に復帰される。この排出位置においては、板バネ52が規制片35に規制されることなく揺動可能なため、厚型カード9の抜き差しが許容される。
【0066】
図8Aの状態から、さらに厚型カード9が押し込まれると、図8Bに示すように、厚型カード9とスライド部材5とが一体となって装着位置に移動される。スライド部材5は、装着位置まで移動されると、ラッチピン6の他端がハートカム溝51の係止部分に係止され、厚型カード9と共に装着位置に保持される。このスライド部材5が装着位置にある場合には、板バネ52の前端側が規制片35に位置付けられ、板バネ52の外側への揺動が規制される。
【0067】
具体的には、図8Cに示すように、ハウジング外側に面した板バネ52の背面側に規制片35が位置するため、板バネ52の揺動範囲が規制片35よりも厚型カード9側に制限される。この状態で、厚型カード9に引き出し方向の力を加えると、板バネ52に対してハウジング外側向きの力が作用するが、規制片35によって板バネ52の揺動が所定の範囲内に規制される。このように、規制片35によって板バネ52の揺動が規制されるため、板バネ52の係止部53が厚型カード9の切欠き95から外れることがなく、厚型カード9の無理抜きが防止される。このとき、さらに、強い力(上述の所定の力)で厚型カード9を引き抜こうとした場合には、規制片35は板バネ52に対して腕部36側よりも乗り上げ片37側が遠ざかるように形成されている自身の緩やかな傾斜により、板バネ52の上方へ腕部36を撓ませて乗り上げていくことになり、板バネ52は規制片35に規制されなくなり、圧型カード9は引き抜かれることになる。
【0068】
そして、図8Bの状態から、さらに厚型カード9が押し込まれると、ラッチピン6とハートカム溝51との係止状態が解除されて、スライド部材5が排出バネにより排出位置に押し戻される。
【0069】
次に、薄型カード7の装着動作について説明する。図9Aに示すように、スライド部材5が排出位置にある場合には、板バネ52の基端側が規制片35に位置付けられており、板バネ52の外側への揺動が許容されている。この状態で、コネクタ装置1に薄型カード7が挿入されると、係止部53がカード側面に押し込まれることで板バネ52が外側に開かれる。薄型カード7には切欠きが形成されていないため、板バネ52が外側に開かれた状態で薄型カード7がスライド部材5の突出部54に当接される。この排出位置においては、板バネ52のバネ力だけが薄型カード7に作用するため、薄型カード7の抜き差しが許容される。
【0070】
図9Aの状態から、さらに薄型カード7が押し込まれると、図9Bに示すように、薄型カード7とスライド部材5とが一体となって装着位置に移動される。スライド部材5は、装着位置まで移動されると、ラッチピン6の他端がハートカム溝51の係止部分に係止され、薄型カード7と共に装着位置に保持される。この場合、板バネ52が外側に開かれた状態でスライド部材5が装着位置に移動するため、板バネ52の突起部55が乗り上げ片37の下に入り込み、ロック部32が上方に押し上げられる。
【0071】
具体的には、図9Cに示すように、乗り上げ片37が板バネ52の突起部55に乗り上がると、腕部36の基端側を中心としてロック部32が上方に持ち上げられる。このとき、ロック部32は、板バネ52に対してカード側面側にバネ力を作用させている。すなわち、装着位置においては、板バネ52及びロック部32のバネ力が薄型カード7の側面に作用し、ハウジング本体2の側壁部27に薄型カード7が押し付けられる。この状態で、薄型カード7に引き出し方向の力を加えると、板バネ52及びロック部32のバネ力によって薄型カード7の引き抜きに対して抵抗感が生じることとなる。また、薄型カード7に対して過度の力が掛かることなく、ロック部32や板バネ52の破損、変形を防ぐものとなっている。
【0072】
そして、図9Bの状態から、さらに薄型カード7が押し込まれると、ラッチピン6とハートカム溝51との係止状態が解除されて、スライド部材5が排出バネにより排出位置に押し戻される。
【0073】
なお、上記した実施形態においては、カバー3の上板部分にロック部32が形成されたが、これに限定されない。ロック部32は、スライド部材5の板バネ52をロック可能な構成であればよく、例えば、カバー3の側板部分から腕部36を伸ばして形成されてもよい。
【0074】
以上のように、本実施の形態に係るコネクタ装置1によれば、形状変化部46間に誘電体としての合成樹脂が介在されることで、インピーダンスに作用する端子の形状変化(端子間隔)の影響を小さくしている。これにより、差動信号端子41間のインピーダンスが適切に調整されてインサーションロス及びリターンロスが小さくなり、コネクタ装置1の伝送効率が向上される。
【0075】
また、上記した実施形態においては、コネクタ装置に装着される被装着部材としてメモリカードを例示したが、これに限定されず、差動伝送に対応した媒体であればよい。
【0076】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 コネクタ装置
2 ハウジング本体(ハウジング)
3 カバー(ハウジング)
4a、4b コンタクト端子(端子)
5 スライド部材
9 厚型カード(被装着部材、メモリカード)
23 端子保持部
32 ロック部
35 規制片
36 腕部
37 乗り上げ片
41 差動信号端子
42 バネ部
43 接触部
44 当接部
45 半田付け部
46 形状変化部
47、48 側面
49 切断痕
52 板バネ
94a、94b パッド(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被装着部材を装着可能なハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記被装着部材の電極に接続可能な複数の端子とを備え、
前記複数の端子のうち隣り合う一対の端子は、差動伝送に対応した一対の差動信号端子であり、
前記一対の差動信号端子の延在方向の途中部分には、当該途中部分を挟んで一端側及び他端側で互いに幅寸法または厚さ寸法が異なり、前記途中部分において一端側から他端側に進むにつれて幅寸法または厚さ寸法が変化する形状変化部が形成され、
前記一対の形状変化部間の少なくとも一部に誘電体が介在するように前記一対の差動信号端子が前記ハウジングに設けられることを特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは樹脂からなり、前記誘電体は前記ハウジングの一部からなることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記一対の形状変化部間の少なくとも一部は前記ハウジングに埋め込まれていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記一対の差動信号端子は、互いに隣り合う側面の逆側の側面において前記一対の形状変化部から離間した位置に、前記他の端子との繋ぎ桟の切断痕が残存することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記形状変化部における前記差動信号端子の側面は、直線状または曲線状あるいは直線を折り繋げた形状に変化することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記形状変化部において、前記差動信号端子の幅寸法または厚さ寸法の変化の大きさに応じて前記誘電体の厚みを変化させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記一対の形状変化部は、前記一対の差動信号端子間の中点を前記端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項8】
前記一対の形状変化部の互いに隣り合う側面は、前記一対の差動信号端子間の中点を前記差動信号端子の延在方向に通る仮想断面を基準として対称的に形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項9】
前記一対の差動信号端子の延在方向の途中部分には、当該途中部分を挟んで一端側及び他端側で互いに幅寸法が異なり、前記形状変化部が前記途中部分において一端側から他端側に進むにつれて幅寸法が変化するように形成され、
前記一対の形状変化部間の少なくとも一部に誘電体が介在するように前記一対の差動信号端子が前記ハウジングに設けられることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項10】
前記被装着部材が、メモリカードであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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