説明

コネクタ

【課題】本発明は、第1シール部材17に当たる配管Pのシール面Pbが錆びることなく、高いシール性を維持することができるコネクタ1を提供する。
【解決手段】コネクタ1はその接続孔に配管Pを挿入することにより配管Pを接続する。コネクタ1は、コネクタ本体10の接続孔16に、第1シール部材17、第2シール部材20を備える。第2シール部材20は、ストッパリング18と一体に組み付けられている。第2シール部材20は、第1シール部材17より曲げ弾性率が小さい材料から形成され、シールリブ20cにより配管Pのシール面を押圧することで外部からシール面に至る間隙をシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の配管を他の管体に接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとして、例えば特許文献1等に記載されたものが知られている。特許文献1のコネクタは、車両の冷却配管に使用される、いわゆるクックコネクタであり、金属製の配管を挿入可能な接続孔を有するコネクタ本体と、コネクタ本体に取り付けられ配管を抜止めすることで配管をコネクタ本体に接続するリテーナとを備えている。また、コネクタ本体の接続孔には、Oリングからなるシール部材がストッパリングにより止められることで収納されており、このシール部材により配管のシール面に対してシールし、配管内の流体が漏れることを防止している。さらに、コネクタの外周部には、筒状の防水キャップが装着されている。防水キャップは、配管のシール面に外部からの水分に起因した錆びを発生させないためや、泥水などの侵入を防止するための円筒状の部材である。
【0003】
しかし、防水キャップは、コネクタの外形に適合して成形しているために汎用性に乏しい。また、防水キャップをコネクタの外周部に装着するには、防水キャップを弾性変形により拡張しつつ行なわなければならず、コネクタに装着する作業が面倒であるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−71074
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、部品点数を増加させず、簡単な構成で汎用性に優れ、シール部材に当たる配管のシール面が錆びることなく、高いシール性を維持することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、金属製の配管を他の管体に接続するためのコネクタにおいて、
上記配管を挿入するための接続孔を有するコネクタ本体と、
上記接続孔に配置され、上記配管のシール面を押圧することで該配管の通路と外部とをシールする第1シール部材と、
上記接続孔に配置され、上記第1シール部材を上記コネクタ本体に保持するためのストッパリングと、
上記ストッパリングに組み付けられた第2シール部材と、
を備え、
上記第2シール部材は、上記ストッパリングより曲げ弾性率が小さい弾性材料から形成され、配管のシール面を押圧することで外部からシール面に至る間隙をシールするシールリブを備えていること、
を特徴とする。
【0008】
適用例1において、コネクタ本体の接続孔に第1シール部材を配置するとともに、第1シール部材を、第2シール部材を一体に組み付けたストッパリングで押さえて組み付ける。この状態にて、配管をコネクタ本体の接続孔に挿入すると、第1シール部材が配管のシール面に対してシールして、配管の通路がコネクタにシールした状態にて接続される。こうした接続状態にて、第2シール部材のシールリブは、配管のシール面に当たって、外部からシール面に至る間隙をシールする。これにより、配管のシール面は、外部からの水分によって錆びるのが防止される。
【0009】
すなわち、第2シール部材は、第1シール部材をコネクタ本体に保持するストッパリングに一体に組み付けられて、シール面に対する防錆機能を効果的に発揮する。よって、防錆機能を与えるために、従来の技術で説明したようなブーツを用いる必要がなく、部品点数が増加することもない。
また、第2シール部材のシールリブは、舌片であり、配管の挿入時に、容易に撓むとともにその摩擦係数が小さいから、配管の挿入荷重を増加させず、接続作業性に優れている。また、シールリブは、配管に追従して弾性変形するから、配管の形状に制約が少ない。
【0010】
本発明の適用例として、ストッパリングは、樹脂材料から形成され、第2シール部材は、上記ストッパリングに溶着する熱可塑性エラストマから形成されている構成をとることができる。この構成により、樹脂材料により18aを射出成形した後に、熱可塑性エラストマをストッパリング上に射出することにより第2シール部材を溶着により一体化することができ、組付作業が不要となり、作業工程が簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1) コネクタ1の概略構成
図1は本発明の一実施例にかかるコネクタ1を分解して示す斜視図、図2はコネクタ1に配管Pを接続した状態を示す斜視図である。コネクタ1は、燃料電池を搭載した車両のインバータなどの冷却系統に使用され、配管PをチューブTbに接続するためのものであり、コネクタ本体10と、Oリングからなる第1シール部材17と、ストッパリング18と、リテーナ30とを備えている。なお、図1において、第1シール部材17、ストッパリング18は、一部破断して示している。配管Pは、金属製(例えば、アルミニウム製)でほぼ丸パイプ状に形成されている。配管Pの先端面から所定距離を隔てた位置の外周面上には、環状に突出したバルジ部からなるフランジ部Paが形成されている。また、配管Pの外周部には、フランジ部Paから先端側に第1シール部材17によりシールされるシール面Pbが形成されている。以下、コネクタ本体10、リテーナ30を順に説明する。
【0012】
(2) コネクタ1の各部の構成
(2)−1 コネクタ本体10
図3はコネクタ1を分解した断面図、図4は配管Pを接続したコネクタ1を示す半断面図である。図3および図4において、コネクタ本体10は、例えば樹脂製で、ほぼ円筒状に形成されている。コネクタ本体10の一端部は、配管Pを接続する配管接続部11となっており、その他端部は、例えば合成樹脂製のチューブTb(図1)が圧入によって装着されるチューブ接続部12となっている。なお、以下、コネクタ1の配管接続部11の側を前側、チューブ接続部12の側を後側として、以下の説明を行なう。
【0013】
コネクタ本体10内の中空部は、後方から前方に向かって内径を段階的に大きくする段付孔状をなす第1ないし第4の接続孔13〜16に形成されている。第3の接続孔15内には、第1シール部材17が配置されている。コネクタ本体10内には、第3の接続孔15と第4の接続孔16にまたがって樹脂製のストッパリング18およびストッパリング18に一体に組み付けられる第2シール部材20が配置される。
【0014】
図5はストッパリング18および第2シール部材20を一部破断した斜視図である。ストッパリング18は、主に第1シール部材17を抜止めする部材であり、環状のストッパ本体18aと、ストッパ本体18aの外周部から配管接続部11の凹所に位置決めされる係合突起18bと、第2シール部材20に組み付けるための嵌合部18cとを備え、樹脂により一体成形されている。第2シール部材20は、環状のシール基体20aと、シール基体20aの側端部に形成され、ストッパリング18の嵌合部18cに嵌合する被嵌合部20bと、シール基体20aの内周部から突設されたシールリブ20cとを備えている。第2シール部材20は、ストッパリング18より曲げ弾性率が小さくゴムまたはエラストマから形成されており、配管Pのシール面を押圧することで外部からシール面に至る間隙をシールしている。
【0015】
図1および図2において、コネクタ本体10の配管接続部11の外周面には、その前側から後方に向かって所定間隔を隔てて平行に並ぶ第1および第2の規制フランジ21,22が形成されている。第1の規制フランジ21と第2の規制フランジ22との間には、左右1対の差込孔26が左右対称に形成されている。
【0016】
(2)−2 リテーナ30
リテーナ30は、弾性変形可能な樹脂製であり、配管接続部11の外周部の一部を囲むコ字形に形成されたリテーナ本体31を備えている。リテーナ本体31は、平板状の基板部32の両側から下方に突設された左右1対の抜止片33、検知片34およびガイド片37を備えている。
【0017】
(3) コネクタ1の接続作業
図3および図4において、コネクタ1の組み付け作業において、第1シール部材17を第3の接続孔15に挿入する。このとき、第1シール部材17は、第2の接続孔14との段部で位置決めする。続いて、ストッパリング18および第2シール部材20と一体の第2シール部材20を第4の接続孔16に挿入することで、第1シール部材17を配管接続部11に脱落を防止する。
【0018】
上記のように構成されたコネクタ1に配管Pを接続するには、コネクタ本体10にリテーナ30を仮組みした後に、第1シール部材17および第2シール部材20の貫通穴に配管Pを挿入し、さらにリテーナ30を押し込むことにより行なわれる。すなわち、図1において、リテーナ30の抜止片33を差込孔26に、第1および第2の規制フランジ21,22の間にそれぞれ位置合わせするとともに、両方の検知片34で配管接続部11の外周面を挟んだ状態にて、リテーナ30を下方へ押し込む。これにより、抜止片33が差込孔26内に、ガイド片37がガイド規制部23内に挿入されつつリテーナ30の傾きを規制しつつリテーナ30が装着方向へ移動して仮組状態になる。
【0019】
続いて、配管Pをコネクタ1に接続するには、図1および図4に示すように、配管Pにコネクタ本体10の配管接続部11を押し入れる。配管Pがコネクタ本体10の正規の接続位置に挿入されると、配管Pのフランジ部Paがリテーナ30における検知片34の検知突起35が拡げられる方向に弾性変形され、検知片34の検知突起35が受入孔28の係合爪29から側方へずれる。これにより、受入孔28の係合爪29に対する検知突起35の下面の係合が解除されるため、リテーナ30の下方への移動が可能になる。続いて、リテーナ30の基板部32を下方へ押し込むと、リテーナ30が下方へ移動する。そして、検知片34の検知突起35が、コネクタ本体10の側面11aに沿って摺動しつつ下降し、最終的にはコネクタ本体10の下端に達することで検知片34が弾性復元する。そして、検知突起35がコネクタ本体10の下端に係合することにより、リテーナ30の上動が規制される。リテーナ30が抜止位置に移動されると、抜止片33が配管Pに対してフランジ部Paの反挿入側、すなわち前側に係合する。これによって、配管Pは、抜け方向の移動が規制され、コネクタ本体10に対して抜止めされてコネクタ1に接続される。
このとき、第2シール部材20の一方の外周部は、コネクタ本体10の開口壁面により押されることで圧縮される。
【0020】
(4) コネクタ1の作用・効果
(4)−1 図5に示すように、配管Pがコネクタ本体10の正規の接続位置に完全に挿入されると、配管Pは、第2シール部材20を一体に組み付けたストッパリング18、第2シール部材20を順次貫通し、第1シール部材17が配管Pのシール面Pbに対して押圧することで、コネクタ1の接続箇所にて高いシール性が確保されている。
【0021】
(4)−2 配管Pをコネクタ1に接続した状態にて、第2シール部材20のシールリブ20cは、配管Pのシール面Pbに当たって、外部からシール面Pbに至る間隙Gpをシールする。これにより、配管のシール面は、外部からの水分によって錆びるのが防止される。すなわち、第2シール部材20は、ストッパリング18に一体に組み付けられてコネクタ本体10に保持する機能の他に、シール面Pbに対する防錆機能を効果的に発揮する。
【0022】
(4)−3 第2シール部材20のシールリブ20cは、舌片であり、配管Pの挿入時に、容易に撓むとともにその摩擦係数が小さいから、配管Pの挿入荷重を増加させず、接続作業性に優れている。また、シールリブ20cは、配管Pに追従して弾性変形するから、配管Pの形状に制約が少ない。
【0023】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例にかかるコネクタを分解して示す斜視図である。
【図2】コネクタに配管を接続した状態を示す斜視図である。
【図3】コネクタを分解した断面図である。
【図4】配管を接続したコネクタを示す半断面図である。
【図5】ストッパリングおよび第2シール部材を一部破断した斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1…コネクタ
10…コネクタ本体
11…配管接続部
11a…側面
12…チューブ接続部
13…第1の接続孔
14…第2の接続孔
15…第3の接続孔
16…第4の接続孔
17…第1シール部材
18…ストッパリング
18a…ストッパ本体
18b…係合突起
18c…嵌合部
20…第2シール部材
20a…シール基体
20b…被嵌合部
20c…シールリブ
21,22…第1および第2の規制フランジ
23…ガイド規制部
24…係合端
26…差込孔
28…受入孔
29…係合爪
30…リテーナ
31…リテーナ本体
32…基板部
33…抜止片
34…検知片
35…検知突起
37…ガイド片
P…配管
Pa…フランジ部
Pb…シール面
Tb…チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の配管(P)を他の管体に接続するためのコネクタにおいて、
上記配管(P)を挿入するための接続孔を有するコネクタ本体(10)と、
上記接続孔に配置され、上記配管(P)のシール面(Pb)を押圧することで該配管(P)の通路と外部とをシールする第1シール部材(17)と、
上記接続孔に配置され、上記第1シール部材(17)を上記コネクタ本体(10)に保持するためのストッパリング(18)と、
上記ストッパリング(18)に組み付けられた第2シール部材(20)と、
を備え、
上記第2シール部材(20)は、上記ストッパリング(18)より曲げ弾性率が小さい弾性材料から形成され、配管(P)のシール面を押圧することで外部からシール面(Pb)に至る間隙をシールするシールリブ(20c)を備えていること、
を特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
上記ストッパリング(18)は、樹脂材料から形成され、上記第2シール部材(20)は、上記ストッパリング(18)に溶着する熱可塑性エラストマから形成されているコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−32004(P2010−32004A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196585(P2008−196585)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】