説明

コネクタ

【課題】簡単な構成で高い耐久性を発揮するコネクタを提供すること。
【解決手段】管体81を接続可能な少なくとも2つの接続口12〜14及びこれらの接続口12〜14を連通する内部空間15とを有するコネクタ管6と、第1の磁石8Aを有し、第1の接続口12を密閉する弁体7Aと、内部空間15に第1の磁石8Aに反発するように配置された第2の磁石9Aとを備えたコネクタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに関し、さらに詳しくは、簡単な構成で高い耐久性を発揮するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタには種々のものが知られているが、例えば、医療用コネクタが挙げられる。医療用コネクタは、例えば、患者に留置されたカテーテル等を介して患者に必要な薬液、体液、栄養剤等(この発明において流体と称する。)を投与する静脈内投与又は輸血等に用いられるコネクタ、具体的には注入管、1つの管体に接続された第1の流体とは異なる種類又は濃度の第2の流体を同様にして患者に静脈内投与する場合に用いられるコネクタ、具体的には混注管等が挙げられる。
【0003】
従来、混注管等の医療用コネクタに第2の流体を注入するのに注射針を備えた注射器等を用いていたが、医療従事者の針刺しによる感染を未然に回避するために、近年、このような注射器に代えて、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等が医療用コネクタに接続する管体として用いられるようになっている。
【0004】
このような注射針を備えていない管体を接続可能又は使用可能な医療用コネクタは、接続口を常時液密にシールする一方、必要時に限って接続口を開いて流体を投与可能にするために、その内部に弁体を備えている。
【0005】
このような医療用コネクタは種々のタイプが知られており、その1つとして、例えば、接続口を閉塞するシール部をその軸線方向に前後進させることで接続口を開閉させる医療用コネクタが挙げられる。このような医療用コネクタとして、例えば、特許文献1には「第1の連結部材とバルブ部材と第2の連結部材とを備えた流体ライン接続用のアセンブリ」が記載されている(例えば、請求項1等)。この流体ライン接続用のアセンブリにおいて、「ステムは、第2の連結部材に向けて移動し、それによって、弾性本体が圧縮されると共に、密封面が雌型ルアーから離れる方向に移動し、雌型ルアーと円筒形チャンバとの間が開口して流体連通が生じるように寸法決めされて」いる(請求項2、図4〜図6等)。
【0006】
別のタイプのコネクタ又は弁体として、例えば、接続口を閉塞する弁体を軸線方向に対して傾斜又は屈曲させて接続口を開閉させる医療用コネクタが挙げられる。このような医療用コネクタとして、例えば、特許文献2には、概略、「軸線に沿って延在するハウジングと、このハウジングに内蔵され、ハウジングの基端に配置された弁座を密閉する第1姿勢及び自身の軸線がハウジングの軸線からずれた第2姿勢に変形する弁要素とを含むコネクタ」(請求項1等)が記載されている(第9欄第19行〜同第34行、図12等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2000−503096号公報
【特許文献2】米国特許第5782816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような医療用コネクタは感染症の感染を防ぐため、第1の流体を投与後に使い捨てにされることもあるが、第1の流体の投与が完了するまでに1つのコネクタを介して第2の流体を複数回注入することも、また複数種の流体を注入しなければならないこともある。さらに、近年は感染症の感染対策も講じられており、1つのコネクタを用いて流体を例えば数日間にわたって多数回注入することもある。したがって、コネクタに内蔵される弁体には、接続口を液密に密閉する密閉性はもちろんのこと、流体の複数回注入においても流体の注入が容易となるように毎回同様に接続口を開閉する開閉性が求められる。
【0009】
ところが、特許文献1のアセンブリにおいて弾性本体を複数回、特に多数回圧縮すると圧縮状態が一様にならないことがあり、また特許文献2の弁要素を複数回、特に多数回ハウジングの軸線からずれた第2姿勢に変形させると弁要素の変形状態及び復帰状態が次第に不均一になることがある。そもそも特許文献1のアセンブリは構造が複雑であるから複雑な構造が圧縮状態の均一性に与える影響も小さくない。
【0010】
このように、圧縮状態又は変形状態の均一性が損なわれると、密閉性が低下してコネクタ内の流体が接続口から漏出することもあり、また管体からコネクタに流体を容易かつ確実に注入できなくなることもある。したがって、近年のコネクタには、流体の注入を複数回、特に多数回行ってもコネクタの弁体が一様に開閉する耐久性も要求されるようになっている。
【0011】
この発明は、簡単な構成で高い耐久性を発揮するコネクタを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の発明者らは、コネクタ特に弁体の耐久性に関して、コネクタ及び弁体の構造及び開閉動作等に着目して鋭意検討したところ、弁体及びコネクタそれぞれに互いに反発するように磁石を埋設又は配置等すると、コネクタ自体の構造を簡略できるうえ弁体等を弾性変形させる必要もなく弁体がスムーズで一様に開閉動作することを見出した。
【0013】
前記課題を解決するための手段であるこの発明に係るコネクタは、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口及びこれらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、第1の磁石を有し、第1の前記接続口を密閉する弁体と、前記内部空間に前記第1の磁石に反発するように配置された第2の磁石とを備えていることを特徴とする。
【0014】
このコネクタにおける好適な一例は、
(1)前記第2の磁石は前記内部空間に配置された中子に埋設されており、
(2)前記中子はその側面から前記内部空間まで放射状に伸びる支持部で前記内部空間に浮揚状態に配置されており、
(3)前記支持部は前記側面から前記内部空間まで放射状に伸びる少なくとも1つの支持体と前記中子の軸線方向に貫通する少なくとも1つの貫通部とを有しており、
(4)前記中子は前記内部空間の軸線と異なる軸線を有して配置されており、
(5)前記弁体は前記第1の接続口の内周面に密接する側面又は環状シール部を有しており、
(6)前記弁体は前記第1の接続口に露出する頂面が平坦な表面又は外側に膨出する湾曲面であり、
(7)前記弁体はその全体が弾性材料で作製されており、
(8)前記弁体における前記中子側に位置する端部及び前記中子における前記弁体側に位置する端部の少なくとも一方は前記第1の接続口の軸線に対して傾斜しており、
(9)前記弁体の前記端部及び前記中子の前記端部は共に同方向に傾斜しており、
(10)前記弁体は前記第1の磁石の磁力と前記第2の磁石の磁力との反発力で前記第1の接続口を密閉する密閉位置と前記第1の接続口を開放する開放位置とに移行可能であり、
(11)前記コネクタは2つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた注入管であり、
(12)前記コネクタは少なくとも3つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた混注管である。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るコネクタは、弁体及びコネクタそれぞれに磁石を配置等するという簡単な構成によって、弁体又はコネクタの構成部材を変形させることなく、磁石の磁力に基づく反発力で弁体が一様に開閉動作する。したがって、この発明に係るコネクタは簡単な構成であるにもかかわらず高い耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明に係るコネクタの一例を示す概略断面図であり、図1(a)はこの発明に係るコネクタの一例における密閉状態を示す概略断面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A断面を示す概略断面図であり、図1(c)はこの発明に係るコネクタの一例における開放状態を示す概略断面図である。
【図2】図2は、この発明に係るコネクタの別の一例を示す概略断面図であり、図2(a)はこの発明に係るコネクタの別の一例における密閉状態を示す概略断面図であり、図2(b)はこの発明に係るコネクタのまた別の一例における密閉状態を示す概略断面図であり、図2(c)はこの発明に係るコネクタのまた別の一例における開放状態を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係るコネクタのさらにまた別の一例を示す概略断面図であり、図3(a)はこの発明に係るコネクタのさらにまた別の一例における密閉状態を示す概略断面図であり、図3(b)は図3(a)におけるA−A断面を示す概略断面図であり、図3(c)はこの発明に係るコネクタのさらにまた別の一例における開放状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係るコネクタは、少なくとも2つの管体同士を接続するコネクタ、例えば、患者に留置されたカテーテルに連結されたチューブ等と輸液管等とを接続する医療用コネクタすなわち注入管等として、特に、前記チューブと、注射針を備えていない注射器等の管体、例えば、ルアーロック付きシリンジ、ルアーロック付き輸液管等(この発明において針無し管体と称する。)を接続する医療用コネクタすなわち混注管等として、好適に用いられる。
【0018】
この発明に係るコネクタは、管体を接続可能な少なくとも2つの接続口、及び、これらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、第1の磁石を有し、第1の接続口を密閉する弁体と、コネクタ管の内部空間に第1の磁石に反発するように配置された第2の磁石とを備えている。この発明に係るコネクタにおいて、コネクタ管の接続口は例えば針無し管体が接続可能になっているのが好ましく、コネクタ管の内部空間は流体の流路と弁体及び第2の磁石を収納する収納部とを兼ねている。
【0019】
このコネクタにおいて、弁体は第1の磁石を内蔵し、コネクタ管の内部空間は第2の磁石が配置されているから、これら磁石の反発力によって弁体が開閉する。すなわち、この発明に係るコネクタにおいて、接続口に針無し管体等が接続されていない状態では第1の磁石と第2の磁石との反発力で弁体が接続口に向かって付勢されて密閉位置に到達して接続口を密閉する。一方、接続口に針無し管体等が接続された状態では第2の磁石との反発力に反して第2の磁石に近接する弁体は反発力で水平方向に偏倚した密閉位置に到達して接続口を開放する。
【0020】
この発明に係るコネクタにおいては、このように、磁石の磁力に基づく反発力で弁体が一様に開閉動作する。したがって、この発明に係るコネクタは互いに反発する少なくとも2つの磁石を配置又は内蔵するという簡単な構成であっても、磁石の磁力はほとんど不変で通常一定であるから、流体の注入を複数回、特に多数回行っても、弁体は一様に開閉する動作して高い耐久性を発揮する。
【0021】
このように、この発明においては、弁体及びコネクタ管それぞれに少なくとも1つの磁石が配置等されていればよく、その他の構成はコネクタに要求される機能等に応じて適宜に変更できる。
【0022】
この発明に係るコネクタを具体的に説明する。この発明に係るコネクタの一例であるコネクタ1は、図1(a)〜図1(c)に示されるように、平面視略T字状のコネクタ管6とコネクタ管6に内蔵される弁体7Aとコネクタ管6の内部空間に配置された第2の磁石9Aとを備えている。このコネクタ管6は弁体7A及び第2の磁石9Aを内蔵又は配置できる限り従来公知のコネクタ管を限定されることなく用いることができ、例えば、図1に示される平面視略T字状のコネクタ管6、平面視略Y字状のコネクタ管、平面視略十字状のコネクタ管等が挙げられる。
【0023】
コネクタ管6は、概略中空円筒状を成しており、その軸線方向の一端側に針無し管体81が接続される第1の接続口12が配置され、他端側にカテーテル等に連結された管体が接続される第2の接続口13が配置され、前記軸線方向に交差する方向に突出し、流体を収納したバッグ等に連結された管体が接続される第3の接続口14が配置されている。このコネクタ管6において、例えば、第1の接続口12には針無し管体81等が接続され、第2の接続口13には患者に留置されたカテーテル等に連結された図示しない管体が接続され、第3の接続口14には患者に投与する流体を収納したバッグ等に連結された図示しない管体が接続される。コネクタ管6の各接続口12〜14には必要に応じて、後述する針無し管体81と接続可能な構造又は接続を一時的に保持可能な構造、例えば、ルアーロックネジ等が形成されている。このコネクタ管6において、内部空間15がもっとも大径の中空構造になっており、第1の接続口12、第2の接続口13及び第3の接続口14が内部空間15よりも小さな径の管体構造になっている。
【0024】
このコネクタ管6において、第1の接続口12と第2の接続口13との間に接続口12〜14を連通し、弁体7A及び第2の磁石9Aを収納可能な内部空間15が配置されている。この内部空間15は流体の流路と弁体7A及び第2の磁石9Aを収納する収納部とを兼ねている。この内部空間15は、具体的には、第1の接続口12側が円錐台形の第1の縮径部16と、第2の接続口13側が半球形の第2の縮径部18と、第1の縮径部16及び第2の縮径部18の間に一定の内径を有する中間部17とを有する中空円筒形になっている。内部空間15、特に中間部17は第1の接続口13の直径と後述する弁体7Aの直径との合計よりも小さな直径を有している。内部空間15がこのような直径を有していると、弁体7Aがコネクタ管6の軸線に対して偏倚しても針無し管体81の先端面83との当接又は圧接状態を保持できるから開放位置から密閉位置に復帰しやすくなると共に内部空間15からの流体の漏出を防止できる。内部空間15の第1の縮径部16は、第1の接続口12に向かって内径が徐々に小さくなる円錐台形になっているから、この内周面は弁体7Aが開放位置から密閉位置に移行すなわち復帰する際に弁体7Aを案内する案内面19になっている。
【0025】
弁体7Aは、略円筒状をなし、外径が第1の接続口12の内径と同一又はわずかに大きな円筒状をなしており、第1の接続口12の内周面に密接する側面すなわち外周面を有している。したがって、この弁体7Aは第1の接続口12に進入して第1の接続口12を液密に密閉する。弁体7Aは、自身の軸線方向に作用する圧力によって大きく変形しないように中実になっている。この弁体7Aは、第1の接続口12に露出する頂面21が平坦な表面で、第1の接続口12及び頂面21を清掃しやすく、バクテリア等の繁殖を抑制できるようになっている。弁体7Aの頂面21と反対側の底面は弁体7Aの軸線に対して垂直な平面になっている。
【0026】
弁体7Aは、第1の接続口12の密閉性に優れる点で弾性材料で作製され、弾性を有しているのが好ましい。例えば、弁体7Aは30〜70のJIS A硬度を発現させる弾性を有しているのが好ましい。このような硬度を発現させる弾性材料として、例えば、各種ゴム、各種エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この弁体はこれら弾性部材を定法によって成形又は加工することで製造できる。
【0027】
また、弁体7Aは、コネクタ1に注入される流体で膨潤しにくい樹脂材料又は金属材料で作製されているのが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、シリコン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系樹脂、又はこれら樹脂を1種以上含むブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。また金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。なお、弁体7Aを樹脂材料又は金属材料で作製する場合には第1の接続口12の密閉性を確保するために弁体7Aの外周面に半径方向に突出して第1の接続口の内周面に密接する弾性材料製の環状シール部又はOリング等を設けるのが好ましい。
【0028】
この弁体7Aは、弁体7Aの頂面21と反対側に位置する底部近傍に第1の磁石8Aが埋設されている。この第1の磁石8Aは後述する第2の磁石9Aの磁力に反発するように配置されており、第2の磁石9Aとの反発力によって弁体7Aが第1の接続口12を密閉できる程度の磁力を有している。したがって、弁体7Aに圧力が作用していない状態において弁体7Aは内部空間15内に磁力の反発力で第1の接続口12に進入した状態に配置されている。したがって、第1の磁石8Aは、弁体7Aを第1の接続口12に進入させることができる磁力を有していれば、その材質、磁力、形状、数等は特に限定されず、永久磁石でも電磁石でもよい。例えば、第1の磁石8Aの形状は、球状、楕円状、円盤状、柱状等が挙げられ、1つ又は複数が弁体7Aに埋設されていてもよい。また、第1の磁石は、例えば、マグネタイト、アルニコ磁石、フェライト磁石、希土類磁石(例えば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石等)等が挙げられ、ボンド磁石とされてもよい。この弁体7Aにおいて、第1の磁石8Aは球状の永久磁石が採用されている。
【0029】
第2の磁石9Aは、内部空間15に第1の磁石8Aに反発するように配置されており、具体的には内部空間15内に好ましくはコネクタ1の軸線Cを共有するように配置された中子31に埋設されている。中子31は、その軸線方向の両端面がこの軸線に対して垂直な平面を有する円筒体になっている。この中子31は、その側面から放射状に内部空間15の内面まで伸びる支持部32で内部空間15に浮揚状態すなわち中子31における第2の接続口13側の端部がこの接続口13から離間した状態に配置されている。このように第2の磁石9Aが中子31に埋設されることで内部空間15内に配置されていると、コネクタ1自体の構造が簡単になるうえ、第1の接続口12及び第3の接続口14からコネクタ管6内に注入された流体を第2の接続口13に流通しやすくなる。
【0030】
この支持部32は、図1(a)及び図1(b)によく示されるように、中子31における第1の接続口12側における外周面から中子31の周方向に均等な間隔を空けて内部空間15すなわちコネクタ1の軸線に対して略垂直に放射状に伸びる4本の柱状支持体33と、隣接する2つの注状支持体33、中子31の外周面及び内部空間15の内周面で画成され、内部空間15の軸線方向に貫通する4つの扇状の貫通部34とを有している。この注状支持体33は、平面視十字形であって、第3の接続口14の開口よりも第1の接続口12側で内部空間15の内面に連接するように内部空間15の軸線方向長さが決定されている。支持部32がこのように構成されていると、中子31及び第2の磁石9Aを内部空間15に所望のように配置できるうえ、第1の接続口12及び第3の接続口14からコネクタ管6内に注入された流体を第2の接続口13に流通しやすくなる。
【0031】
この中子31は、樹脂材料、金属材料又は弾性材料で作製されているのが好ましく、コネクタ4に注入される流体で膨潤しにくい樹脂材料又は金属材料で作製されているのがより一層好ましく、成形容易性等の点で樹脂材料で作製されているのが特に好ましい。樹脂材料及び金属材料としては前記した通りである。これらの中でも特に成形容易性に優れる点で熱可塑性樹脂が好ましい。
【0032】
第2の磁石9Aは、中子31における第1の接続口12側の上流側端部近傍に第1の磁石8Aの磁力に反発するように埋設されており、第1の磁石8Aとの反発力によって弁体7Aが第1の接続口12を密閉できる程度の磁力を有している。したがって、第2の磁石9Aは、弁体7Aを第1の接続口12に進入させることができる磁力を有していれば、その材質、磁力、形状、数等は特に限定されず、永久磁石でも電磁石でもよい。これらは第1の磁石8Aで説明した通りである。この弁体7Aにおいて、第2の磁石9Aは球状の永久磁石が採用されている。この第2の磁石9Aは、図1(a)に示されるように、弁体7Aに圧力が作用していない状態において、第1の磁石8Aと同一直線上すなわちコネクタ4の軸線C上に配置されている。
【0033】
コネクタ1に接続される針無し管体81は、内腔81aすなわち流体を流通させる流路を内部に有していれば特に限定されず、前記した各種の管体が挙げられる。図1(c)に示されるように、この管体の先端部82は第1の接続口12に接続可能な形状になっており、通常、第1の接続口12の内径よりも僅かに小さな外径を有する小径環状構造になっている。この先端部82の外周面には第1の接続口12に所望により形成されたルアーロックに螺合するルアー溝を有していてもよい。
【0034】
コネクタ管6及び針無し管体81は通常剛性のある材料、例えば、樹脂材料、ガラス材料、セラミックス、金属材料で形成される。樹脂材料及び金属材料は弁体7Aで例示した材料を特に限定されることなく例示できる。
【0035】
コネクタ1は、コネクタ管6と弁体7Aと第2の磁石9Aとを備えており、弁体7Aに埋設された第1の磁石8Aの磁力と第2の磁石9Aの磁力との反発力で弁体7Aが第1の接続口12を密閉する密閉位置と、管体の第1の接続口12への進入によって弁体7Aの軸線方向に作用する圧力で磁力の反発力に反して弁体7Aが内部空間15内に後退して管体の内腔と内部空間15とを連通させる開放位置とに移行可能になっている。
【0036】
コネクタ1の作用を具体的に説明する。コネクタ1は、図1(a)に示されるように、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないとき、弁体7Aは中子31に埋設された第2の磁石9Aとの反発力によって第1の接続口12に向かって付勢されてその内部に進入している。このとき弁体7Aはその側面が第1の接続口12の内面に密接して第1の接続口12を液密に密閉する密閉位置に位置している。弁体7Aはこのように第1の接続口12を密閉しているから第3の接続口13を通過した患者の血液又は第2の接続口14から注入された流体等が第1の接続口12から流出することがなく、この弁体7Aは逆止弁、止血弁等としても機能する。また、密閉位置において弁体7Aの平坦な頂面21は第1の接続口12に面一に露出しているから容易に清掃することができる。
【0037】
コネクタ1を介して患者に流体を供給するには、図1(c)に示されるように、針無し管体81の先端部82を磁石8A及び9Aの反発力に反して第1の接続口12に圧入する。そうすると、弁体7Aは針無し管体81によって作用する弁体7Aの軸線C方向の押圧力で内部空間15内に後退しつつ、第2の磁石に近接するに従って次第に強くなる反発力で軸線がコネクタ1の軸線Cから半径方向に偏倚した状態になる。一方、軸線Cに沿って第1の接続口12に圧入された針無し管体81の軸線は軸線Cに一致している。したがって、偏倚した弁体7Aの頂面21と針無し管体81の先端面83との軸線もずれて先端面83における内腔81aの開口が内部空間15に連通し、内腔81aに充填された流体はコネクタ管6に注入される。このように管体81の先端部82を第1の接続口12に圧入すると弁体7Aは針無し管体81の内腔81aと内部空間15とが連通した開放位置になり、第1の接続口12を開放する。そして、注入された流体は弁体7Aの外周及び貫通部34を流通して第2の接続口13に流入する。
【0038】
このようにして所望の流体をコネクタ1に注入した後に針無し管体81を第1の接続口12から抜脱すなわち退避すると、針無し管体81により負荷された押圧力が解除されて、弁体7Aは磁石8A及び9Aの反発力で内部空間15の案内面19に案内されつつ第1の接続口12に向かって前進して密閉位置に移行すなわち復帰する。
【0039】
すなわち、弁体7A及び第2の磁石9Aとを備えた簡単な構造を有するコネクタ1は、針無し管体81が第1の接続口12に接続されていないときは密閉位置を保持し、針無し管体81が第1の接続口12に接続されているときは開放位置を保持すると共に、針無し管体81が第1の接続口12から抜脱された押圧力が解除されると磁石8A及び9Aの反発力及び案内面19によって弁体7Aが開放位置から密閉位置に移行する。したがって、このように、ほとんど不変である磁石の反発力で第1の接続口12を開閉するから、たとえ流体を複数回、特に多数回注入する場合であっても、弁体7Aの第1位置及び第2位置の移行は毎回同様に一様に繰り返され、流体の漏出も注入容易性の低下もなく高い耐久性を発揮する。
【0040】
また、コネクタ1において弁体7A、中子31及び支持部32が樹脂材料で形成されていると、流体によって膨潤することも樹脂材料が抽出されることもほとんどなく、所期の機能を長期間にわたって発揮すると共に高い安全性を有する。
【0041】
この発明に係るコネクタの別の一例であるコネクタ2は、図2(a)に示されるように、コネクタ管6と弁体7Bと第2の磁石9Bとを備えている。このコネクタ2は、第1の磁石8B及び第2の磁石9Bの形状が第1の磁石8A及び第2の磁石9Aと異なること以外はコネクタ1と基本的に同様である。具体的には第1の磁石8B及び第2の磁石9Bは共に球状ではなく円盤状をしている。したがって、このコネクタ2はコネクタ1と基本的に同様に弁体7Bが開閉動作するから高い耐久性を発揮する。
【0042】
この発明に係るコネクタのまた別の一例であるコネクタ3は、図2(b)及び図2(c)に示されるように、コネクタ管6と弁体7Cと第2の磁石9Aとを備えている。このコネクタ3は、弁体7C及び中子37の形状が異なること以外はコネクタ1と基本的に同様である。
【0043】
すなわち、弁体7Cは、中子37側に位置する端部が第1の接続口12すなわちコネクタ3の軸線Cに対して傾斜している底面22を有している。この底面22は頂面21と反対側に位置している。また、中子37は、弁体7C側に位置する端部が第1の接続口12すなわちコネクタ3の軸線Cに対して傾斜している頂面38を有している。そして、底面22と頂面38とは互いに同方向に傾斜しており、好ましくは互いに平行に対面するように同じ傾斜角で傾斜している。このように底面22と頂面38とが傾斜した傾斜面に成っていると、図2(c)に示されるように、頂面38に到達した弁体7Cは頂面38の傾斜方向に沿って案内されて偏倚し、針無し管体81からコネクタ1内に流体を速やかに注入できる。
【0044】
このコネクタ3は底面22及び頂面38以外はコネクタ1と基本的に同様であるから弁体7Cはコネクタ1と基本的に同様に開閉動作して高い耐久性を発揮する。
【0045】
この発明に係るコネクタのさらにまた別の一例であるコネクタ4は、図3(a)〜図3(c)に示されるように、コネクタ管6と弁体7Dと第2の磁石9Bとを備えている。このコネクタ4は、弁体7D及び中子41が異なること以外はコネクタ1と基本的に同様である。
【0046】
弁体7Dは、外径が第1の接続口12の内径と同一又はわずかに大きな円筒状の本体25と、本体25における頂面21と反対側に配置された円錐台形の底部26と、底部26に埋設された第1の磁石8Bとを有していること以外は弁体7Aと基本的に同様である。底部26の周側面は後述する支持部42に対応するように傾斜している。
【0047】
中子41は、第2の磁石9Bを埋設すると共に、その側面から放射状に内部空間15の内面まで伸びる支持部42で内部空間15の軸線と異なる軸線を有するように内部空間15内に配置されていること以外は中子31と基本的に同様である。この支持部42は、中子41における第1の接続口12側における外周面から中子41の周方向に均等な間隔を空けて放射状に伸びる2つの扇状支持体43と、扇状支持体43、中子41の外周面及び内部空間15の内周面で画成され、内部空間15の軸線方向に貫通する2つの扇状の貫通部44とを有している。扇状支持体43それぞれは、第1の接続口12側の表面が内部空間15の内周面側から中子41側に向かって同じ角度で下降する傾斜面になっており、中子41の軸線と内部空間15の内周面との距離が大きい方に位置する扇状支持体43が弁体7Dの後退と偏倚とを案内する案内面として機能する。このように弁体7D、中子41及び支持部42が構成されていると、図3(c)に示されるように、弁体7Cは後退と共に扇状支持体43で案内されて偏倚し、中子41に直列状態の開放位置に安定保持されるから、針無し管体81からコネクタ1内に流体を速やかに注入できる。
【0048】
このコネクタ4は弁体7D、中子41及び支持部42以外はコネクタ1と基本的に同様であるから弁体7Dはコネクタ1と基本的に同様に開閉動作して高い耐久性を発揮する。
【0049】
なお、図3は理解容易のため誇張して図示しているが、第2の磁石9Bが配置される位置は磁石8B及び9Bの反発力と針無し管体81の壁厚等を考慮して適宜に決定される。
【0050】
この発明に係るコネクタは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、コネクタ1〜4はいずれも第1の磁石8A又は8B及び第2の磁石9A又は9Bを1個有しているが、この発明において、第1の磁石及び第2の磁石は共に複数配置又は埋設されていてもよい。また、コネクタ1〜4において、弁体7A〜7Dはいずれも底部近傍に第1の磁石8A又は8Bが埋設されているが、この発明において、弁体は第1の磁石を有していればよく、例えば底面に一部が露出するように埋設又は内蔵されていてもよい。
【0052】
コネクタ1〜4において、弁体7A〜7Dはいずれも円筒形になっているが、この発明において、弁体はその外周面から半径方向に突出し、弁体が第1の接続口から抜け落ちないように規制する突出部を備えていてもよい。弁体7A〜7Dはいずれも第1の接続口12の内周面に密接する側面を有しているが、この発明において弁体はその外周面に半径方向に突出して第1の接続口の内周面に密接する、好ましくは弾性材料製の環状シール部又はOリング等を有していてもよい。さらに、弁体7A〜7Dはいずれも第1の接続口12に露出する頂面21が平坦な表面になっているが、この発明において、弁体は、第1の接続口に露出する頂面が外側に膨出する湾曲面であってもよく、また、その頂面に流体を案内する溝又は凸条を有していてもよい。弁体の頂面がこのような溝又は凸条を有しているとたとえ弁体がコネクタの軸線から側方に偏倚する偏倚量が小さくてもが針無し管体の先端部と頂面との間に流体が流通する空間又は間隙が形成されるので流体の注入性が高くなる。
【0053】
コネクタ1〜4において支持部32及び42は中子31、37又は41の側面から内部空間15まで放射状に伸びる注状支持体33又は扇状支持体43と貫通部34及び44とを有しているが、この発明において、支持部は中子の底部又は側面から第2の接続口に向けて第2の縮径部まで延在する少なくとも1本の支持脚を、注状支持体若しくは扇状支持体に代えて、又は、注状支持体若しくは扇状支持体と共に、有していてもよい。
【0054】
コネクタ1〜3において支持部32は4つの注状支持体33と4つの貫通部34を有し、コネクタ4において支持部42は2つの扇状支持体43と2つの貫通部44を有しているが、この発明において、支持部は少なくとも1つの支持体と少なくとも1つの貫通部を有していればよく、支持体及び貫通部の形状及び寸法も特に限定されず、コネクタの形状及び寸法等に応じて適宜に決定できる。また、コネクタ1〜4において注状支持体33及び扇状支持体43は前記のように軸線方向長さが決定されているが、この発明において、支持体の軸線方向長さは特に限定されず、例えば、第3の接続口の開口を挟むように支持体を配置すれば中子と同じ軸線方向長さ又は中子よりも長い軸線長さに設定することもできる。
【0055】
コネクタ1〜4において第2の磁石9A又は9Bは中子31、37又は41の上流側端部近傍に埋設されているが、この発明において、第2の磁石は内部空間内に配置されていればよく、例えば中子の上流側端面に一部が露出するように埋設又は内蔵されていてもよい。
【0056】
コネクタ4は、2つの扇状支持体43のいずれも斜方向に延在する傾斜面を有しているが、この発明において、傾斜面を有する扇状支持体は1つでもよく、また複数のうちの一部であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3、4 コネクタ
6 コネクタ管
7A〜7D 弁体
8A、8B 第1の磁石
9A、9B 第2の磁石
12 第1の接続口
13 第2の接続口
14 第3の接続口
15 内部空間
16 第1の縮径部
17 中間部
18 第2の縮径部
19 案内面
21、38 頂面
22 底面
25 本体
26 底部
31、37、41 中子
32、42 支持部
33 柱状支持体
34、44 貫通部
43 扇状支持体
81 針無し管体
81a 内腔
82 先端部
83 先端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を接続可能な少なくとも2つの接続口、及び、これらの接続口を連通する内部空間を有するコネクタ管と、
第1の磁石を有し、第1の前記接続口を密閉する弁体と、
前記内部空間に前記第1の磁石に反発するように配置された第2の磁石とを備えたコネクタ。
【請求項2】
前記第2の磁石は、前記内部空間に配置された中子に埋設されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記中子は、その側面から前記内部空間まで放射状に伸びる支持部で前記内部空間に浮揚状態に配置されている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記支持部は、前記側面から前記内部空間まで放射状に伸びる少なくとも1つの支持体と、前記中子の軸線方向に貫通する少なくとも1つの貫通部とを有している請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記中子は、前記内部空間の軸線と異なる軸線を有して配置されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弁体は、前記第1の接続口の内周面に密接する側面又は環状シール部を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記弁体は、前記第1の接続口に露出する頂面が平坦な表面又は外側に膨出する湾曲面である請求項1〜6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記弁体は、その全体が弾性材料で作製されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記弁体における前記中子側に位置する端部、及び、前記中子における前記弁体側に位置する端部の少なくとも一方は、前記第1の接続口の軸線に対して傾斜している請求項2〜8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記弁体の前記端部及び前記中子の前記端部は、共に同方向に傾斜している請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記弁体は、前記第1の磁石の磁力と前記第2の磁石の磁力との反発力で前記第1の接続口を密閉する密閉位置と前記第1の接続口を開放する開放位置とに移行可能な請求項1〜10のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記コネクタは、2つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた注入管である請求項1〜11のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記コネクタは、少なくとも3つの前記接続口を有する前記コネクタ管を備えた混注管である請求項1〜11のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44375(P2013−44375A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182143(P2011−182143)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】