説明

コネクタ

【課題】導電性の異物が混入していても異物による漏電の発生を抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30とを備える。オス側コネクタ20は、基体本体22aを備えたオス側基体22と、基体本体22aの表面に間隔をあけて突設された2本のオス端子24と、オス端子24の間に頂部が線状となるように形成された切断突起26とを備えている。メス側コネクタ30は、基体本体32aを備えたメス側基体32と、基体本体32aの表面のうち2本のオス端子24と対向する位置に形成された2つのメス端子34と、基体本体32aの表面のうち切断突起26に対向する位置に形成された突起受部36を備えている。この突起受部36は、切断突起26の頂部と接触するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとしては、ハウジング内にオス端子が立設されたものが知られている。こうしたコネクタにおいて、コネクタ内に異物が混入するのを抑止するため、オス端子の周囲に板状の異物混入抑止手段を立設することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−301855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のコネクタでは、例えば、ビス、ボルトなど、比較的大きな塊状の異物の混入を抑止することはできるが、ウィスカや繊維のような異物の混入を抑止することはできなかった。そして、混入した異物が導電性のものである場合には、異物が異なる端子間を導通させ、漏電を発生させてしまうことがあった。このため、導電性の異物が混入した場合でも異物による漏電の発生を抑制できるコネクタが望まれていた。
【0005】
本発明のコネクタは、導電性の異物が混入した場合でも異物による漏電を抑制できるコネクタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のコネクタは、
第1基体に複数の第1基体側端子を備えた第1部材と、第2基体に前記第1基体側端子と対をなす第2基体側端子を備えた第2部材と、を接続して前記第1基体側端子と前記第2基体側端子との間を導通させるコネクタにおいて、
前記第1部材は、第1基体側端子間に頂部が線状となるように形成された切断突起を備え、
前記第2部材は、前記第2基体表面の前記切断突起に対向する位置に突起受部を備え、 前記第1部材と前記第2部材とを接続したとき、前記切断突起の頂部と前記突起受部とが接触するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
このコネクタでは、第1部材と第2部材とを接続したとき、第1部材に設けられた切断突起の頂部と第2部材に設けられた突起受部とが接触するように形成されている。このため、例えば端子間のピッチよりも長い異物がコネクタ内に存在する場合でも、この異物は第1部材と第2部材との接続時に切断突起と突起受部によって切断される。端子間に導電性の異物が存在する場合、導通時にこの異物が複数の端子と接触して漏電を発生させることがあるが、本発明では、端子間の異物が切断されるため、導電性の異物が混入した場合でも、漏電の発生を防止することができる。特に、突起の頂部が面状でなく、切断突起の頂部と突起受部との接触面積が小さい線状のため、異物に加わる圧力が大きく、異物を切断できる。
【0009】
こうした本発明のコネクタにおいて、前記切断突起の断面はくさび形であり、前記突起受部は前記切断突起と同形状の空間を有する凹部である、ものとしてもよい。
【0010】
また、本発明のコネクタにおいて、前記第1基体側端子はオス端子であり、前記切断突起は該オス端子よりも低く形成されている、ものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としてのコネクタ10の構成の概略を示す断面図である。
【図2】オス側コネクタ20を端子側から見た模式図である。
【図3】メス側コネクタ30を端子側から見た模式図である。
【図4】コネクタ10を接続する様子を示す説明図である。
【図5】従来例のコネクタ110の構成の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのコネクタ10の構成の概略を示す断面図である。図2は、オス側コネクタ20を端子側から見た模式図であり、図3は、メス側コネクタ30を端子側から見た模式図である。
【0014】
コネクタ10は図示するように、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30とを備えている。
【0015】
オス側コネクタ20は、オス側基体22と、オス側基体22に突設された2本のオス端子24とを備えている。オス側基体22は、絶縁性及び可撓性を有する樹脂で形成されている。このオス側基体22は、基体本体22aと、その基体本体22aの周縁に設けられた壁部22bとを備えている。2本のオス端子24は、基体本体22aの表面に間隔をあけて突設されている。これらのオス端子24は、壁部22bによって保護されている。オス端子24は、先端が基体本体22aに埋め込まれたリード線(リード部材)42と接続されており、このリード線42を介して図示しない外部機器に接続されている。壁部22bの外周面には、2つの嵌合凸部22cが上下対称となるように形成されている。これらの嵌合凸部22cは、メス側コネクタ30との接続を強固にするためのものである。
【0016】
このオス側コネクタ20は、2本のオス端子24の間に切断突起26を備えている。この切断突起26は、一端26aが壁部22bと所定位置で繋がっており、他端26bが壁部22bと所定位置とは反対側の位置で繋がっている。このため、切断突起26は、基体本体22aの表面を、一方のオス端子24が立設している領域と他方のオス端子24が立設している領域に二分している。また、切断突起26は、断面がくさび形となるように形成されており、頂部が刃として機能するように線状になっている。この切断突起26は、オス端子24よりも高さが低く形成されている。
【0017】
メス側コネクタ30は、メス側基体32とメス側基体32の表面に形成された2つのメス端子34とを備えている。メス側基体32は、絶縁性及び可撓性を有する樹脂で形成されている。このメス側基体32は、基体本体32aと、その基体本体32aの裏面に設けられたフランジ32bと、フランジ32bの周縁に設けられた外周壁32dとを備えている。2つのメス端子34は、基体本体32aの表面のうち2本のオス端子24と対向する位置に形成されている。メス端子34は、オス端子24を挿入可能な穴であり、基体本体32aに埋め込まれたリード線(リード部材)44の先端がその穴に露出している。外周壁32dは、内面に、嵌合凸部22cと嵌り合う嵌合凹部32cが形成されている。
【0018】
このメス側コネクタ30は、基体本体32aの表面のうち切断突起26に対向する位置に突起受部36を備えている。この突起受部36は、切断突起26と同形状の空間を有し、切断突起26とほぼ隙間なく組み合うように形成されている。このため、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30とを接続した際には、切断突起26の頂部と突起受部36とが接触し、異物が混入している場合には、この異物を切断することができる。
【0019】
次に、実施例のコネクタ10を用いた外部機器間の接続について説明する。本発明のコネクタは、例えば、ハイブリッド車におけるモータの制御を司るECUと各種センサや各種モジュールとの接続などに用いられる。センサとしては、電流センサや、ILK(インターロック)センサ、水温センサなどが挙げられる。モジュールとしては、IPM(Intelligent Power Module)などが挙げられる。
【0020】
図4は、コネクタ10を接続する様子を示す説明図である。図4(a)はコネクタ10の接続前、図4(b)はコネクタ10の接続途中、図4(c)はコネクタ10の接続後(接続時)の様子である。コネクタ10を接続するときには、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30とを各々のリード側から押圧する。オス側コネクタ20の嵌合凸部22cとメス側コネクタ30の外周壁32dが接触したあと更に押圧すると、図4(b)に示すように、外周壁32dが嵌合凸部22cの傾斜面に押されて撓みながらオス側コネクタ20とメス側コネクタ30とが互いに接近する。さらに押圧を続けると、図4(c)に示すように、オス側コネクタ20の嵌合凸部22cがメス側コネクタ30の外周壁32dの嵌合凹部32cに嵌り込み、外周壁32dの撓みは解消されて元の形状に戻る。このようにして、オス側コネクタ20の嵌合凸部22cがメス側コネクタ30の嵌合凹部32cに固定される。これにより、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30が確実に固定される。
【0021】
このように接続したとき、オス側基体22の基体本体22aの表面とメス側基体32の基体本体32aの表面とは接触しないが、切断突起26の頂部と突起受部36とが接触する。そして、切断突起26の頂部と突起受部36とが接触することにより、図4(c)に示すように、コネクタ内に異物が混入している場合には切断突起26と突起受部36によって異物が切断される。このため、混入した異物が、導電体であり端子間のピッチより長いものであったとしても、その異物が端子間を導通させることがない。
【0022】
比較のため、図5に、従来例のコネクタ110の接続前後の様子を示す。図5(a)はコネクタ110の接続前、図5(b)はコネクタ110の接続後(接続時)の様子である。従来例のコネクタ110は、オス側コネクタ120に切断突起がなく、メス側コネクタ130に突起受部がない点以外は、実施例のコネクタ10と同様である。このコネクタ110では、図5に示すように、異物を切断することができないため、コネクタ内に異物が混入している場合、異物が端子間を導通させることがある。
【0023】
以上説明したコネクタ10によれば、コネクタ内に異物が混入している場合には、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30との接続時にこの異物が切断される。このため、異物が導電性のものであっても、異なる端子間を導通させることがなく、漏電や短絡の発生を抑制することができる。また、コネクタ10では、切断突起26の一端26a及び他端26bが壁部22bと繋がっている。このため、異物を確実に切断できる。また、コネクタ10の接続時には切断突起26と突起受部36とが接触することによって、2つの端子が存在する領域が仕切られるため、異物が端子間を導通することがない。さらに、突起受部36は、切断突起26と同形状の空間を有する凹部であり切断突起26とほぼ隙間なく組み合うため、切断した異物が移動しにくい。さらにまた、切断突起26がオス端子24より短いため、切断突起26をオス端子24より長くした場合と比較して、切断突起26が折れにくく、また、切断突起26部分の材料費を抑制でき、さらに、切断突起26に指等が接触しにくく安全である。そして、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30とが、嵌合凸部22cと嵌合凹部32cとで強固に固定されるため、切断突起26と突起受部36との間の異物に加わる力が大きくなり、異物が切断されやすい。そしてまた、切断突起26と突起受部36とを設けるという単純な構造のため、製造コストを低減できる。
【0024】
実施例のコネクタ10では、切断突起26は、オス端子24よりも低く形成されているものとしたが、オス端子24の高さ以上の高さに形成されていてもよい。この場合、切断突起26は壁部22bよりも低く形成されていることが好ましい。こうすれば、切断突起26に指などが直接接触しにくく安全である。また、切断突起26は、断面がくさび形となるように形成されているものとしたが、頂部が線状であればこれに限定されない。また、切断突起26は、一端26a及び他端26bで壁部22bと繋がっているものとしたが、繋がっていなくてもよい。また、突起受部36は、切断突起26と同形状の空間を有する凹部としたが、これに限定されない。例えば、切断突起26よりも頂角の大きな凹部としてもよいし、平面としてもよい。こうしても、突起受部36が切断突起26の頂部と接触するため、異物を切断できる。
【0025】
実施例のコネクタ10では、オス側基体22の基体本体22aの表面とメス側基体32の基体本体32aの表面とは接触しないものとしたが、接触してもよい。
【0026】
実施例のコネクタ10では、オス側コネクタ20とメス側コネクタ30との接続に際して、嵌合凸部22cが嵌合凹部32cに固定されるものとしたが、嵌合凸部22cや嵌合凹部32cを有さなくてもよい。
【0027】
実施例のコネクタ10では、オス端子24及びメス端子34の数を2つずつとしたが、2つ以上であればよい。2つ以上の端子を有するものであれば、端子間の導通によって、漏電や短絡が生じる可能性があり、これを防止する必要があるからである。
【0028】
実施例のコネクタ10では、オス側コネクタ20に切断突起26が設けられ、メス側コネクタ30に突起受部36が設けられたものとしたが、オス側コネクタ20に突起受部36が設けられ、メス側コネクタ30に切断突起26が設けられたものとしてもよい。
【0029】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、オス側コネクタ20が「第1部材」に相当し、オス側基体22が「第1基体」に相当し、オス端子24が「第1基体側端子」に相当する。また、メス側コネクタ30が「第2部材」に相当し、メス側基体32が「第2基体」に相当し、メス端子34が「第2基体側端子」に相当する。
【0030】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0031】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
10,110 コネクタ、20,120 オス側コネクタ、22 オス側基体、22a 基体本体、22b 壁部、22c 嵌合凸部、24 オス端子、26 切断突起、26a 一端、26b 他端、30,130 メス側コネクタ、32 メス側基体、32a 基体本体、32b フランジ、32c 嵌合凹部、32d 外周壁、34 メス端子、36 突起受部、42,44 リード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基体に複数の第1基体側端子を備えた第1部材と、第2基体に前記第1基体側端子と対をなす第2基体側端子を備えた第2部材と、を接続して前記第1基体側端子と前記第2基体側端子との間を導通させるコネクタにおいて、
前記第1部材は、第1基体側端子間に頂部が線状となるように形成された切断突起を備え、
前記第2部材は、前記第2基体表面の前記切断突起に対向する位置に突起受部を備え、 前記第1部材と前記第2部材とを接続したとき、前記切断突起の頂部と前記突起受部とが接触するように形成されている、
コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−55010(P2013−55010A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194130(P2011−194130)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】