説明

コバエ防除用エアゾール製品

【課題】コバエに噴霧した際に、噴霧の勢いでコバエを吹き飛ばすことなく、効率よく虫体に薬液を付着させることで優れた防除効果を発揮すると共に、噴霧時の安全性にも配慮したコバエ防除用エアゾール製品の提供。
【課題の解決手段】ピレスロイド系殺虫成分を含むエアゾール原液と噴射剤として液化ガスとからなるエアゾール組成物を噴霧するコバエ防除用エアゾール製品において、その噴射力が2〜15gf/15cmで、かつ、噴霧粒子の平均粒子径が40μm以下であるコバエ防除用エアゾール製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバエ防除用エアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガーデニングや昆虫飼育の流行、消費者の害虫防除意識の向上に伴い、コバエ類は屋内でよく見られる害虫として広く注目を集め、人に不快感を与えることから問題となっている。一般家庭で見かけるコバエの代表種として、生ゴミや食品まわり等で発生するショウジョウバエやノミバエ、屋内の観葉植物やベランダのプランターまわり等で発生するクロバネキノコバエ等があげられ、一般家庭での防除対象害虫としては蚊に次いで2番目に多い。
そこで、市場には、(1)誘引捕獲器、(2)忌避スプレーなど多種のコバエ防除用製品が出回り、その市場規模は年々拡大している。しかしながら、(1)誘引捕獲器にあっては、コバエ類が侵入するのを待ち伏せる消極的な方法であり、また、(2)忌避スプレーについても、その作用は天然ハーブによるコバエ類の忌避・虫よけ効果に留まっている。
【0003】
かかる現状から、消費者のなかには、コバエ類に対して殺虫作用を示す直接的な防除方法を求めるニーズもあり、このための提案がいくつかなされている。例えば、特開2005−330264号公報(特許文献1)は、殺虫成分と共に、常温、常圧で液体であって、沸点が60℃未満の炭化水素類を含有してなるコバエ用エアゾール製品を開示し、また、特開2005−281141号公報(特許文献2)には、害虫駆除成分としてのピレトリン、溶解補助剤、溶剤及び噴射剤を含有してなる害虫駆除用エアゾール剤が開示され、イエバエ、ヒメイエバエなどのハエ類に適用できるとしている。
【0004】
本発明者らは、直接的なコバエ類の防除方法として、殺虫成分を含むエアゾール剤を検討する過程において、噴射力が防除効果に大きな影響を及ぼすことを認めた。これに対し、特許文献1のコバエ用エアゾール製品では、沸点が60℃未満の炭化水素類を使用し、噴射量が5〜10g/10秒となるように調整すると共に、平均粒子径は40〜70μmが好ましいとしているが、噴射力に関する記載はない。また、特許文献2の害虫駆除用エアゾール剤についても、天然ピレトリンと共に用いる溶解補助剤が製剤安定性の向上に有用であることを示唆するのみで、噴射力に関する技術情報を提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−330264号公報
【特許文献2】特開2005−281141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コバエに噴霧した際に、噴霧の勢いでコバエを吹き飛ばすことなく、効率よく虫体に薬液を付着させることで優れた防除効果を発揮すると共に、噴霧時の安全性にも配慮したコバエ防除用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)ピレスロイド系殺虫成分を含むエアゾール原液と噴射剤として液化ガスとからなるエアゾール組成物を噴霧するコバエ防除用エアゾール製品において、その噴射力が2〜15gf/15cmで、かつ、噴霧粒子の平均粒子径が40μm以下であるコバエ防除用エアゾール製品。
(2)前記ピレスロイド系殺虫成分がピレトリンエキスである(1)に記載のコバエ防除用エアゾール製品。
(3)前記エアゾール原液が20〜70W/V%の水を含有し、かつ前記液化ガスが80容量%以上のジメチルエーテルを含有する(1)又は(2)に記載のコバエ防除用エアゾール製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、噴霧した薬液が効率よくコバエ類の虫体に付着し優れた防除効果を奏すると共に、噴霧時の安全性にも配慮されているのでその実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では殺虫成分としてピレスロイド系殺虫成分を使用する。ピレスロイド系殺虫成分としては、例えばピレトリンエキス等の天然成分の他、フタルスリン、レスメトリン、イミプロトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、シフルトリン、エトフェンプロックス等の合成ピレスロイド系殺虫成分、及びこれらの立体異性体、光学異性体等が挙げられるが、これらの殺虫成分を1種もしくは2種以上で組合わせて用いることが可能である。本製剤の使用場面が主に台所であることを想定すると、安全性の高いピレトリンエキスの採用が好ましい。
また、本発明のコバエ防除用エアゾール製品に含有される殺虫成分の配合量は、エアゾール原液全体量当り有効成分として0.01〜2.0W/V%が適当であり、0.01W/V%未満であると所望の効果が得られないし、一方、2.0W/V%を超えると水性製剤とした場合の液性に問題が生じる場合がある。
【0010】
本発明では、コバエに対する直撃効果を補強するために、上記殺虫成分に加えて、効力増強成分を配合することができる。効力増強成分としては、n−パラフィンやイソパラフィン、常温で液状の脂肪酸や脂肪酸エステル化合物、各種植物抽出エキス等を例示できる。
効力増強成分の配合量は、エアゾール原液全体量あたり0.5〜10W/V%程度が適当であり、0.5W/V%未満であると所望の効力増強効果が得られないし、一方、10W/V%以上配合しても増強効果のアップは認められない。
【0011】
本発明に用いるエアゾール原液は、前記したピレスロイド系殺虫成分と前記の効力増強成分とを混合し、必要に応じて適時、溶剤に配合することによって調製される。本目的に使用される溶剤としては、炭素数2〜3の低級アルコール、グリコールエーテル類、パラフィン系溶剤、及び水等があげられる。かかる溶剤は、前記ピレスロイド系殺虫成分、効力増強成分等をエアゾール容器内で安定的に溶解、もしくは均一分散する目的を達成できる限り特に限定されず、これらの単独、もしくは2種以上を適時混合して使用すればよい。
【0012】
本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、その噴射力を2〜15gf/15cmの範囲に設定し、かつ噴霧粒子の平均粒子径を40μm以下となしたことに特徴を有する。本発明においては、飛んでいるコバエに噴霧する場合や停まっているコバエにかける使用方法が想定されるが、噴射力が15gf/15cmを超えると、噴射の勢いが強過ぎるためにコバエが吹き飛んでしまい、殺虫効果に支障を来たす。一方、噴射力が2gf/15cmより低いと噴射の勢いが弱いためにコバエへの薬液付着量が減少して殺虫効果の低下を招く恐れが避けられない。なお、前記の噴射力を測定するにあたっては、エアゾールのノズルをテンシロン(測定装置)の面に対して15cm離した箇所に位置させて、そこから前記の面に対して噴射し、その噴射力を測定することにより行う。
噴射力を前記の範囲に設定するためには、エアゾール内容物の噴射量を調整するか、もしくは噴射ノズルの構造によって調整することができる。コバエ用の場合、広角に噴霧するノズル構造とするのが好ましく、噴射パターンは円形状のほか、楕円形状に広がる噴射パターンでもよい。この具体例を示すと、噴射口から約15cm離れた箇所から噴射した場合、直径10〜20cm等の円形状、あるいはたて10〜20cm、よこ5〜8cm等の楕円形状が例示できる。
【0013】
本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、噴射剤として液化ガスを使用し、平均粒子径を40μm以下に微細化することを必須とする。液化ガスとしては、液化石油ガス、フッ化炭化水素ガス、ジメチルエーテル等が挙げられ、それらを単独、もしくは適時混合して使用することができる。平均粒子径が40μmを超えると粒子が粗いために噴霧粒子が長く空間に滞留せずに落下して防除効果の低下を来たす。
本発明では、飛んでいるコバエに向けて噴霧処理するに際し、特定の噴射力を採用し、かつ平均粒子径を40μm以下となしたことによって、好ましくは広角に噴霧された薬液粒子がより確実にコバエに接触して防除効果を高めることが可能となる。
【0014】
エアゾール原液中に水を含有する水性製剤の場合、水の配合量は20〜70W/V%が好ましい。20%未満では火気に対する安全性の面で不十分であり、70W/V%を超えるとエアゾール製品の安定性の面で支障を来たす。また、水に対する溶解性の面から噴射剤としてはジメチルエーテルを使用するのが好ましく、水の含有量に応じて、単独、もしくは他の液化ガスと併用すればよい。
【0015】
こうして得られた本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、台所、リビングルームや和室、玄関などの室内で発生したコバエ類に向けて噴射すると優れた防除効果を奏する。対象となるコバエ類としては、ショウジョウバエ科、ノミバエ科、キノコバエ科、クロバネキノコバエ科、ケバエ科、チョウバエ科、チーズバエ科などがあげられるが、これらに限定されない。
【0016】
次に具体的な実施例に基づき、本発明のコバエ防除用エアゾール製品について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
ピレトリンエキスをエアゾール原液全体量に対して0.5W/V%[有効成分として0.25W/V%]、イソパラフィン溶剤(商品名 IPソルベント1620、出光興産製)を2.0W/V%、イソプロパノールを40W/V%、及び水を57.5W/V%を含有するコバエ防除用の水性エアゾール原液を調製した。この水性エアゾール原液を、金属製エアゾール容器にアルコール溶解相と水相を別々にトータルとして45mL入れた後、噴射剤のジメチルエーテルを55mL加圧充填した。このエアゾール剤に0.45mmφのメカニカルブレークアップ噴口の付いた噴射ボタンをセットして、本発明のコバエ防除用エアゾール製品(容量;100mL)を得た。
得られた製品につき、15cm離れたテンシロンの測定面に噴射して噴射力を測定したところ、7.8gfであった。本エアゾール製品を台所のゴミ入れまわりで飛翔するショウジョウバエを目がけて約2g噴霧したところ、ショウジョウバエは直ちに動かなくなり、確実に防除できた。また、本エアゾール製品の火炎長を測定したところ25cm未満であり、火気に対しても高い安全性を有していることが確認された。
【0018】
実施例1に準じて、表1に示す各種コバエ防除用エアゾール製品を調製し、その防除効果を評価した。
〔コバエ防除効果試験〕
直径40cm、高さ20cmのプラスチック製シリンダーを設置し、その内部にショウジョウバエを20〜40匹放ち、シリンダーの上方から供試コバエ防除用エアゾール製品を約1秒間噴霧した。
時間の経過に伴うノックダウン虫数を数えてKT50値を算出すると共に、24時間後の致死率を観察し、供試コバエ防除用エアゾール製品のコバエ防除効果を評価した。結果を併せて表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
試験の結果、本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、ピレスロイド系殺虫成分を含むエアゾール原液と液化ガスとからなるエアゾール組成物を噴霧するにあたり、噴射力が2〜15gf/15cmで、かつ平均粒子径が40μm以下の噴霧性状となしたことによって、コバエ類に対し優れた速効性及び致死効果を示すことが認められた。
なお、水性製剤であっても火気に対する安全性の面を考慮すると、実施例3と比較例4の対比から、エアゾール原液中の水の配合量としては、20〜70W/V%が好適であった。
これに対し、噴射力が15gf/15cmを超えた比較例1、及び2gf/15cm未満の比較例2の場合、いずれも速効性及び致死率が劣る結果となった。また、平均粒子径が40μmより大きい比較例3においても、致死率は優れるものの、速効性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、コバエ以外の防除用途を目的として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピレスロイド系殺虫成分を含むエアゾール原液と噴射剤として液化ガスとからなるエアゾール組成物を噴霧するコバエ防除用エアゾール製品において、その噴射力が2〜15gf/15cmで、かつ、噴霧粒子の平均粒子径が40μm以下であることを特徴とするコバエ防除用エアゾール製品。
【請求項2】
前記ピレスロイド系殺虫成分がピレトリンエキスであることを特徴とする請求項1に記載のコバエ防除用エアゾール製品。
【請求項3】
前記エアゾール原液が20〜70W/V%の水を含有し、かつ前記液化ガスが80容量%以上のジメチルエーテルを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコバエ防除用エアゾール製品。

【公開番号】特開2012−116774(P2012−116774A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266212(P2010−266212)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】