説明

コピー防止印刷物及びコピー防止印刷物を作成する印刷機

【課題】印刷画像のコピーを簡単かつ確実に防止可能なコピー防止印刷物及びこのコピー防止印刷物を作成する印刷機を提供すること。
【解決手段】印刷物のコピー防止を望む領域に、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートを貼り付けてなることを特徴とする、複写機によるコピー又はスキャナーによる画像読み取りを妨げることの可能なコピー防止印刷物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー防止印刷物、及びコピー防止印刷物作成のための印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物のコピー防止の方法としては、印刷する媒体に金属などを蒸着して反射率を高める方法(例えば、特許文献1参照)、印刷面に微小な凹凸を形成してコピー物にオリジナルと異なる画像を形成する方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。しかしながら、前者の方法は、印刷物そのものの視認性が悪くなるという欠点があり、後者の方法は、コピーした印刷物の識別が実質的に可能であるという欠点がある。
【0003】
また、コピー機の入射光及び受光部の方向が厳密には印刷面に対して直角ではないことを利用して、正面(直角)からのみ視認できるフィルムを印刷物に貼付してコピー防止を試みる方法(例えば、特許文献3参照)も提案されている。しかし、コピー機の入射光及び受光部の方向が直角からずれているのはわずかな角度であり、そのため視認可能な角度も狭くしなければならず、結果的に視認性を悪くしてしまう。
【0004】
また、ホログラムシールを貼付することによりコピーを防止する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、ホログラム自体、製造コストが高く、また印刷物の視認性を犠牲にせざるを得ないという問題がある。
【特許文献1】特開2005−329652号公報
【特許文献2】特開平8−39923号公報
【特許文献3】特開平7−140859号公報
【特許文献4】特開平6−259013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情の下になされ、印刷画像のコピーを簡単かつ確実に防止可能なコピー防止印刷物及びこのコピー防止印刷物を作成する印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、印刷物のコピー防止を望む領域に、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートを貼り付けてなることを特徴とする、複写機によるコピー又はスキャナーによる画像読み取りを妨げることの可能なコピー防止印刷物を提供する。
【0007】
このようなコピー防止印刷物に使用されるコピー防止シートとして、20〜60°の最大透過率角度を有するものを用いることができる。また、このようなコピー防止シートとして、対向する2枚の透明シート間に所定の角度に配置された多数枚のシートからなるルーバーを配置してなるものを用いることができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、用紙に所定の画像を印刷する手段と、前記印刷された画像の所定の領域に、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートをラミネートする手段とを具備することを特徴とする、1回の動作で画像の印刷とコピー防止シートのラミネートとを行い、コピー防止印刷物を作成することの可能な印刷機を提供する。
【0009】
本発明の第3の態様は、用紙に所定のトナー像を転写する手段と、前記転写されたトナー像を、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートで覆い、加熱又は加圧して、トナー像の定着とコピー防止シートのラミネートを同時に行う手段とを具備することを特徴とする、コピー防止印刷物を作成することの可能な印刷機を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、印刷物のコピー防止を簡単かつ確実に、効率よく行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係るコピー防止印刷物は、印刷面のコピー防止を望む領域にコピー防止シートを貼り付けたことを特徴とする。コピー防止シートは、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するものであり、可視光を選択的に透過する入射する角度は、適宜、制御することができる。なお、最も透過率が高い入射角を最大透過率角度と呼ぶ。
【0013】
例えば、コピー防止シートは、15〜60°、好ましくは30〜60°の最大透過率角度を有するものであるのが好ましい。最大透過率角度が大きいほうがコピー防止性能が良好であるが、大きくしすぎると目視での視認性が悪くなる。
【0014】
図1に、コピー防止シートによる光の透過・不透過の仕組みを示す。図1において、コピー防止シート1は、垂直方向に入射する可視光2を透過せずに反射又は吸収し、斜め方向に入射する可視光3を選択的に透過する機能を有する。
【0015】
このような機能を有するコピー防止シートとして、対向する2枚の透明シート間に所定の角度に配置された多数枚のシートからなるルーバーを配置してなるものを用いることができる。ルーバーの配置角度を制御することにより、最大透過率角度を適宜制御することができる。
【0016】
ルーバーとして黒色のものを用いれば、印刷物のコピー防止シートで覆った部分は、黒色のベタにコピーされ、ルーバーとして白色のものを用いれば、印刷物のコピー防止シートで覆った部分は、無地にコピーされる。
【0017】
このようなルーバーを用いたコピー防止シートとして、ポリカーボネート製の、最大透過率角度が23°であるビューコントロールフィルム(VC−609518:信越ポリマー(株)製)を挙げることができる。
【0018】
なお、最大透過率角度の制御方法は、ルーバーで制御する方法に限らず、例えば、シート内に斜めに着色層を設ける方法、シート内に屈折率の異なる材料の層を斜めに設けて正面からの可視光を散乱させる方向、シートに切込みを入れて正面からの可視光を散乱させる方法、着色シートに斜めに可視光透過性の材料部位を部分的に設ける方法等を用いてもよい。
【0019】
コピー防止シートの材質は、ポリカーボネート製シートに限らず、様々な素材の樹脂を用いることができる。そのような樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリシクロオレフィン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、アイオノマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セロファン等、およびその共重合体を単独、または複合で使用しても良い。但し、電子写真プリンタに使用する場合には、トナーの定着温度の観点から、軟化温度が200℃以上の耐熱性のあるシートであるのが望ましい。
【0020】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコピー防止印刷物によると、印刷面のコピー防止を望む領域にコピー防止シートが貼り付けられているため、複写機による印刷画像のコピーを簡単かつ確実に防止することができる。
【0021】
即ち、複写機によるコピーにおいては、ほぼ垂直方向(入射角0°)から可視光を印刷物に照射し、その反射光を受光して画像を識別するが、その際、ほぼ垂直方向に入射した可視光はコピー防止シートを透過しないため、印刷画像を認識することができず、コピーが不可能となる。なお、コピー防止シートは、所定の角度からの可視光を透過するため、所定の角度から印刷画像を観察することにより、印刷画像の認識が可能である。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る、コピー防止印刷物を作成する印刷機は、用紙に所定の画像を印刷する手段と、前記印刷された画像の所定の領域に、上述したコピー防止シートをラミネートする手段とを具備することを特徴とする。この印刷機は、通常の複写機の転写手段の下流に、コピー防止シートをラミネートする手段を設けた構造を有する。
【0023】
このような印刷機によると、1回の動作で画像の印刷とコピー防止シートのラミネートとを同時に行うことが可能であり、効率よくコピー防止印刷物を作成することができる。
【0024】
本発明の更に他の実施形態に係る印刷機は、用紙に所定のトナー像を転写する手段と、加熱又は加圧手段とを具備することを特徴とする。この印刷機は、通常の複写機の転写手段の代わりに、コピー防止シートを覆い、加熱又は加圧する手段を設けた構造を有する。
【0025】
このような印刷機によると、コピー防止シートを覆った後、加熱又は加圧することにより、トナー像の定着とコピー防止シートのラミネートを同時に行うことが可能であり、効率よく、少ないエネルギーでコピー防止印刷物を作成することができる。
【0026】
なお、トナー像の定着に熱定着を用いる場合には、コピー防止シートの裏面に感熱性接着剤を塗布したもので印刷画像を覆った後、加熱することにより、トナー像の定着とコピー防止シートの接着とを同時に行うことができる。また、トナー像の定着に圧力定着を用いる場合には、コピー防止シートの裏面に感圧性接着剤を塗布したもので印刷画像を覆った後、加圧することにより、トナー像の定着とコピー防止シートの接着とを同時に行うことができる。このような感熱性接着剤及び感圧性接着剤をコピー防止シートの裏面に塗布する手段を印刷機に設けることも可能である。
【0027】
以下に、本発明の実施例と比較例を示す。
【0028】
実施例1
印刷物の印字面に、光の最大透過率角度が23°(0°の透過率はわずか)のポリカーボネート製シート(VC−609518:信越ポリマー(株)製)を貼り付けて、コピー防止印刷物を作成した。
【0029】
このコピー防止印刷物をモノクロ複写機(リコー(株)製imagio Neo 602)にて複写を試みた。その結果、印刷物のコピー防止シートを貼り付けた箇所は黒くなり、印字内容を確認することは不可能であった。
【0030】
比較例1
印刷物の印字面に、光の最大透過率角度が0°(すなわち、真正面が最も透過率が高い)のポリカーボネート製シート(VC−609500:信越ポリマー(株)製)を貼り付けた。この印刷物について、モノクロ複写機(リコー(株)製imagio Neo 602)にて複写を試みた。その結果、シートを貼り付けた箇所はやや黒くなったが、その下の印字内容は容易に確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に用いるコピー防止シートの機能を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1…コピー防止シート、2…垂直方向に入射する可視光、3…斜め方向に入射する可視光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物のコピー防止を望む領域に、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートを貼り付けてなることを特徴とする、複写機によるコピー又はスキャナーによる画像読み取りを妨げることの可能なコピー防止印刷物。
【請求項2】
前記コピー防止シートは、20〜60°の最大透過率角度を有することを特徴とする請求項1に記載のコピー防止印刷物。
【請求項3】
前記コピー防止シートは、対向する2枚の透明シート間に所定の角度に配置された多数枚のシートからなるルーバーを配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のコピー防止印刷物。
【請求項4】
用紙に所定の画像を印刷する手段と、前記印刷された画像の所定の領域に、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートをラミネートする手段とを具備することを特徴とする、1回の動作で画像の印刷とコピー防止シートのラミネートとを行い、コピー防止印刷物を作成する印刷機。
【請求項5】
用紙に所定のトナー像を転写する手段と、前記転写されたトナー像を、垂直方向に入射する可視光を透過せず、斜め方向に入射する可視光を選択的に透過するコピー防止シートで覆い、加熱又は加圧して、トナー像の定着とコピー防止シートのラミネートを同時に行う手段とを具備することを特徴とする、コピー防止印刷物を作成する印刷機。

【図1】
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【公開番号】特開2008−221784(P2008−221784A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67369(P2007−67369)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】