説明

コモンモードチョークコイル

【課題】 巻線の引き出し部分で発生する直流抵抗を低く抑えることができ、かつ、小型化が可能なコモンモードチョークコイルを提供する。
【解決手段】 コモンモードチョークコイル1は、コア10と、巻線30と、端子電極40とを備える。コア10は、巻線30が巻回された第1,2の巻芯部11,12と、これらを連結する一対の鍔部15とを有する。各鍔部15の第1の側面16には、巻線30と継線される第1の電極部分41が設けられる。Z軸方向において、第1の側面16は、第1,2の巻芯部11,12の上面よりも低い位置にある。第1の電極部分41と巻線30との継線は半田付けにより行われ、Z軸方向において、鍔部15の第2の側面17と半田付け後の第1の電極部分41との間の距離は、鍔部15の第2の側面17と第1,第2の巻芯部11,12に巻回された巻線30との間の距離に略一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードチョークコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコモンモードチョークコイルの一種として、例えば特許文献1に記載されているように、上面開口の箱型絶縁容器と、ロ字形コアを有するコイル素子とを備えたものが知られている。このコモンモードチョークコイルでは、絶縁容器にコイル素子を収納している。また、絶縁容器の側壁をピン端子が上下に貫いている。ピン端子の突出した上端部には、巻線の端部を保持する挟持部が形成されている。
【特許文献1】実開平5−11424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のコモンモードチョークコイルでは、上下の側壁からピン端子がそれぞれ突出しているため、外形サイズが大きくなってしまう。また、挟持部はピン端子の上端部に形成されているので、コイル素子から挟持部までの距離が長くなる可能性がある。この場合、コイル素子からの巻線の引き出し部分が長くなり、この部分で発生する直流抵抗が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、巻線の引き出し部分で発生する直流抵抗を低く抑えることができ、かつ、小型化が可能なコモンモードチョークコイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコモンモードチョークコイルは、並列配置された複数の巻芯部と、複数の巻芯部を連結するように当該巻芯部の両端に位置する一対の鍔部とを有するコアと、巻芯部にそれぞれ巻回された複数の巻線と、各巻芯部に対応して各鍔部それぞれに複数設けられた端子電極と、を備え、鍔部は、巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向に対向する第1及び第2の側面を有し、各端子電極は、巻線が継線されると共に第1の側面に位置する第1の電極部分と、当該接続部分と電気的に接続されると共に第2の側面に位置する第2の電極部分と、を有し、巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向において、第2の側面を含む平面から第1の側面までの距離が、第2の側面を含む平面から巻芯部の当該平面から最も離れた部分までの距離よりも短く、かつ、第2の側面を含む平面から巻芯部の当該平面に最も近い部分までの距離が、巻線の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0006】
本発明に係るコモンモードチョークコイルでは、第1の側面が巻芯部の上面よりも低い位置にあるので、巻芯部に巻回された巻線の高さ位置と、巻線が継線された第1の電極部分の高さ位置とをほぼ一致させることが容易となる。したがって、第1の電極部分が周囲から突出するといった事が無くなるので、コモンモードチョークコイルの外形サイズを小型化することができる。また、本発明に係るコモンモードチョークコイルでは、巻芯部の下面から第2の側面までの距離は、巻線の直径よりも大きい。すなわち、第1の電極部分が設けられた第1の側面は、巻芯部の上面と下面との間に位置することとなる。したがって、第1の電極部分に巻線を接続するとき、巻線の引き出し部分が短くて済む。よって、巻線の引き出し部分で発生する直流抵抗を低く抑えることができる。
【0007】
また、巻芯部において、平面から最も離れた部分を含む面及び平面に最も近い部分を含む面が、当該巻芯部の軸から巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向に向かって凸となる略円弧状の柱面であることが好ましい。この場合、巻芯部の外周面のカーブを利用することで巻線の巻きつけが容易となるため、巻線の位置ズレや緩みが生じにくくなる。
【0008】
また、コアを覆う樹脂製のカバーを更に備え、カバーは、第1の側面に対峙すると共に一対の鍔部にわたって伸びる平板状の蓋部と、当該蓋部から鍔部を挟むように第2の側面側に向かって伸びる脚部と、を有しており、脚部には、鍔部に係合して当該鍔部とカバーとを係止するための係止爪が設けられていることが好ましい。
【0009】
このように平板状の蓋部を有するカバーを備えた場合には、例えばコモンモードチョークコイルを回路基板上に自動装着する際に、蓋部を吸着ノズルで容易に吸着することができるので、自動装着を効率よく行うことができる。また、このカバーには第2の側面側に向かって伸びる脚部も設けられており、かかる脚部には鍔部に係合される係止爪が設けられているので、接着剤を用いずとも、カバーとコアとを機械的に接続することができる。よって、接着剤を用いた場合に生じ得る悪影響(接着剤が外部環境の変化に応じて膨張収縮し、コアや巻線に対して応力がかかる等)を排除することができ、その結果、外部環境の変化による影響を受けにくくなる。また、カバーは蓋部と脚部とでコアを覆うものであって、コイル素子を収納するものではない。したがって、先に述べた従来技術が有するような側壁は不要となり、更なる小型化が可能となる。
【0010】
また、脚部は、一対の鍔部それぞれを挟むように二対設けられていることが好ましい。この場合、各鍔部を2本の脚部で挟むこととなるため、カバーをコアに対してより確実に固定することができる。
【0011】
また、鍔部は、巻芯部の配列方向に対向する各鍔部の第3及び第4の側面を更に有しており、各脚部は、第3及び第4の側面に沿ってそれぞれ伸びていることが好ましい。この場合、脚部が鍔部の両脇を押さえることとなるため、巻芯部の配列方向に対するカバーのずれを抑制することができる。
【0012】
また、カバーは、二対の脚部のうち、巻芯部の軸方向に離れた2つの脚部間に渡るように巻芯部の軸方向に伸びる一対の側壁部を更に有しており、各側壁部の縁は、巻芯部の軸方向及び配列方向に対して垂直な方向に見た場合に、巻芯部の配列方向における巻線の最外位置よりも蓋部側に設けられていることが好ましい。この場合の側壁部は、巻線の最外位置よりも蓋部側に設けられるものであって、巻線の最外位置を覆うものではない。したがって、コモンモードチョークコイルの小型化を実現しつつ、最外位置よりも蓋部側にある巻線を保護することができるようになる。また、側壁部を設けることで、カバーの剛性を高めることもできる。
【0013】
また、カバーは、巻芯部の軸方向に沿って複数の巻芯部のうち隣り合う巻芯部間に設けられた板状の仕切り部を更に有していることが好ましい。この場合、隣り合う巻芯部同士を非接触とすることができる。また、仕切り部は巻芯部の軸方向に沿って設けられているので、巻芯部の軸方向に対するカバーのずれを抑制することができる。
【0014】
また、鍔部には、巻芯部の軸方向にある仕切り部の端が入る溝部が設けられており、溝部は、巻芯部の配列方向において仕切り部と対峙する面を有していることが好ましい。このような溝部は、カバーをコアに取り付ける際に、仕切り部を案内する案内溝として機能する。よって、カバーの取り付け作業が容易となる。また、取り付け後においては、カバーは溝部と仕切り部とで位置決めされるので、カバーの位置ずれをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻線の引き出し部分で発生する直流抵抗を低く抑えることができ、かつ、小型化が可能なコモンモードチョークコイルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態に係るコモンモードチョークコイルは、電子機器等において電源や信号等に畳重されるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減するためのものである。より具体的には、本実施形態に係るコモンモードチョークコイルは、カーナビゲーションといった車載用電子機器で用いられる。以下、本実施形態に係るコモンモードチョークコイル1の構成を図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るコモンモードチョークコイルを示す斜視図である。図2(a)〜(c)は、本実施形態に係るコモンモードチョークコイルを示す側面図である。図3,4は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコアを示す斜視図である。図5(a)〜(c)は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコアを示す側面図である。図6(a)〜(c)は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれる電極を示す側面図である。図7は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコア、巻線、及び端子電極を示す斜視図である。図8(a)〜(c)は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコア、巻線、及び端子電極を示す側面図である。図9は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるカバーを示す斜視図である。図10(a),(b)は、本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるカバーを示す側面図である。
【0018】
コモンモードチョークコイル1は、図1に示されるように、コア10と、巻線30と、端子電極40と、カバー60と、を備えている。
【0019】
コア10は、磁性体(例えば、フェライト等)からなっている。図3に示されるように、コア10は、第1,2の巻芯部11,12と一対の鍔部15とを有している。以下、第1,2の巻芯部11,12の軸方向をX軸方向、第1,2の巻芯部11,12の配列方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義して説明する。
【0020】
第1,2の巻芯部11,12は、互いに並列に配置されていると共に、略柱形状を呈している。図4にも示されるように、第1,2の巻芯部11,12は、Z軸方向に対向する上面13及び下面14を有している。上面13は、第1,2の巻芯部11,12の軸からZ軸上方向に向かって凸となる略円弧状となっている。下面14は、第1,2の巻芯部11,12の軸からZ軸下方向に向かって凸となる略円弧状となっている。
【0021】
図3に示されるように、X軸方向における両端には、一対の鍔部15が設けられている。鍔部15は、第1,2の巻芯部11,12と一体的に形成される。
【0022】
図4及び図5(a)〜(c)にも示されるように、鍔部15は略直方体形状を呈しており、第1〜6の側面16〜21を有している。第1の側面16と第2の側面17とは、Z軸方向において互いに対向している。鍔部15の第3の側面18と第4の側面19とは、Y軸方向において互いに対向している。また、第5の側面20と第6の側面21とは、X軸方向において互いに対向している。
【0023】
第1の側面16は、後述するカバー60と対峙する面である。図3に示されるように、第1の側面16には、凹部22が2つ設けられている。凹部22は、Y軸方向において、第1,2の巻芯部11,12と対応する位置に形成される。凹部22の開口端は、第1の側面16におけるX軸方向での途中位置から、第5の側面20の第1の側面16側の端まで至っている。凹部22は、後述する第1の電極部分41が有する凸部44をガイドする役割を果たす。
【0024】
第2の側面17は、コモンモードチョークコイル1を回路基板(図示せず)に実装する場合に、当該回路基板に対向する面(実装面)である。図4及び図5(c)に示されるように、第2の側面17には、凹部23が2つ設けられている。凹部23は、Y軸方向において、第1,2の巻芯部11,12と対応する位置に形成される。凹部23の開口端は、第2の側面17におけるX軸方向での途中位置から、第5の側面20の第2の側面17側の端まで至っている。凹部23は、後述する第2の電極部分42に設けられた凸部45をガイドする役割を果たす。
【0025】
第6の側面21は、第1,2の巻芯部11,12が形成される面である。図3及び図5(b)に示されるように、Z軸方向において、第1,2の巻芯部11,12の上面13は、第1の側面16よりも高くなっている。また、図8(b)に示されるように、第1,2の巻芯部11,12の下面14と第2の側面17との間の距離は、後述する巻線30の直径よりも大きくなっている。また、図3に示されるように、第6の側面21には溝部24が形成されている。溝部24は、Y軸方向において第1の巻芯部11と第2の巻芯部12との間に設けられ、かつ、Z軸方向において第1の側面16側の端から第2の側面17側の端に渡るように設けられる。図5(a)に示されるように、溝部24は底面25を有している。この底面25は、後述するカバー60が有する仕切り部78の、第2の側面80と対峙する。
【0026】
図3に示されるように、第1の側面16と第3の側面18との間、及び第1の側面16と第4の側面19との間には、ガイド部26がそれぞれ形成されている。ガイド部26は、後述するカバー60をコア10に取り付ける際に、カバー60の有する係止爪68を鍔部15の第2の側面17側にガイドする役割を担う。ガイド部26は、第1の平面26a及び傾斜面26bを有している。第1の平面26aは、第1の側面16と第3の側面18との間、及び第1の側面16と第4の側面19との間に位置している。傾斜面26bは、第1の側面16と第1の平面26aとの間に位置しており、第1の側面16、傾斜面26b及び第1の平面26aとで段差が形成されている。
【0027】
図4に示されるように、第2の側面17と第3の側面18との間、及び第2の側面17と第4の側面19との間には、係止受け部27がそれぞれ形成されている。係止受け部27は、第2の平面27a及び傾斜面27bを有している。第2の平面27aは、第2の側面17と第3の側面18との間、及び第2の側面17と第4の側面19との間に位置している。傾斜面27bは第2の側面17と第2の平面27aとの間に位置しており、第1の側面16、傾斜面27b及び第2の平面27aとで段差が形成されている。
【0028】
図7に示されるように、第1,第2の巻芯部11,12には、巻線30がそれぞれ巻回されている。巻線30としては、例えば、絶縁被膜銅線を用いることができる。第1,第2の巻芯部11,12に巻回された巻線30は、互いに電気的に絶縁されると共に、互いに磁気結合する。
【0029】
コア10の各鍔部15には、端子電極40が2つずつ設けられている。各端子電極40は、第1の電極部分41と、第2の電極部分42と、導体部分43と、を含んでいる。第1の電極部分41は、図8(a)にも示されるように、各鍔部15の第1の側面16にそれぞれ位置している。また、図6(b)に示されるように、第1の電極部分41のZ軸方向における下面(第1の側面16に対峙する面)には、凸部44が設けられている。第2の電極部分42は、図8(c)にも示されるように、各鍔部15の第2の側面17にそれぞれ位置している。また、図6(b)に示されるように、第2の電極部分42のZ軸方向における上面(第2の側面17に対峙する面)には、凸部45が設けられている。図6(c)及び図7に示されるように、第1の電極部分41と第2の電極部分42とは、第5の側面20に沿って設けられた導体部分43を介して接続されている。第1の電極部分41、第2の電極部分42、及び導体部分43は金属板を折り曲げ加工することにより形成される。
【0030】
また、第1の電極部分41は、第1,第2の巻芯部11,12に巻回された巻線30の継線部と接続されている。第1の電極部分41は、図6(a),(c)に示されるように、その両端部41aが第1の電極部分41の中央部41bに向けてそれぞれ折り曲げられている。このような第1の電極部分41と巻線30との接続(継線)は、半田付けにより行われる。このとき、図8(b)に示されるように、鍔部15の第2の側面17と半田付け部分(図8における点線部分)との間のZ軸方向における距離L1と、鍔部15の第2の側面17と第1,第2の巻芯部11,12に巻回された巻線30との間のZ軸方向における距離L2とは略一致している。
【0031】
図1に示されるように、コア10にはカバー60が取り付けられる。カバー60は、液晶ポリマー樹脂等の非磁性体材料からなっている。カバー60は、図9にも示されるように、蓋部61、脚部66,67、及び側壁部69,70を有している。蓋部61、脚部66,67、及び側壁部69,70は一体的に形成される。
【0032】
蓋部61は、一方の鍔部15の第1の側面16と他方の鍔部15の第1の側面16とにわたって、コア10の上面を覆うように設けられる。蓋部61の上面は平板形状を呈している。このように蓋部61の上面を平坦とすることで、コモンモードチョークコイル1を自動装着機の吸着ノズルで吸着することが可能となる。蓋部61の各角部の近傍には、凹部65が4つ形成されている。これらの凹部65は、例えば金型成形によりカバー60を形成する場合に、金型からカバー60を取り出しやすくするために設けられている。
【0033】
図1及び図9に示されるように、蓋部61からは、脚部66,67がZ軸方向に沿って伸びている。脚部66は、カバー60をコア10に取り付けた際に、各鍔部15の第3の側面18に沿うよう設けられる。また、脚部67は、カバー60をコア10に取り付けた際に、各鍔部15の第4の側面19に沿うよう設けられる。すなわち、各鍔部15は、脚部66,67よって挟まれる形となる。脚部66は第3の側面18と同等の幅を有しており、脚部67は第4の側面19と同等の幅を有している。
【0034】
各脚部66,67の先端には、係止爪68が一体的に形成されている。各係止爪68は、カバー60をコア10に取り付ける場合に鍔部15の係止受け部27で係止されるよう、鍔部15側に突設されている。また、係止爪68は、図2(c)に示されるように、カバー60をコア10に取り付けた場合に、第2の電極部分42よりもZ軸方向において上側に位置するよう設けられる。このような位置に係止爪68を設けることで、コモンモードチョークコイル1を回路基板に実装した際に、かかる回路基板と係止爪68とが当接することを抑制できる。
【0035】
図1及び図9に示されるように、脚部66と脚部66との間を渡るように、側壁部69が設けられている。また、脚部67と脚部67との間を渡るように、側壁部70が設けられている。図2(a),(b)にも示されるように、カバー60をコア10に取り付けた場合に、側壁部69の下縁71は、第1の巻芯部11に巻回された巻線30の最外位置よりもZ軸方向において蓋部61側に位置する。同様に、側壁部70の下縁73は、第2の巻芯部12に巻回された巻線30の最外位置よりもZ軸方向において蓋部61側に位置する。側壁部69,70の下縁71,73をこのような位置とすることによって、側壁部69,70及び巻線30を非接触とすることができる。また、Y軸方向において、側壁部69,70を巻線30の最外位置よりも内側に設けることが可能となる。
【0036】
図9及び図10(a)に示されるように、カバー60の裏面において、蓋部61と側壁部69との接続部分、及び蓋部61と側壁部70との接続部分には、複数のリブ75が形成されている。リブ75は、コア10と接触しないよう設けられている。このようなリブ75は、カバー60を補強する目的で設けられる。
【0037】
図1及び図9に示されるように、蓋部61の裏面には、一対の凸部分76が形成されている。カバー60をコア10に取り付けた場合に、図9に示される凸部分76の底面77が各鍔部15の第1の側面16にそれぞれ当接するよう、凸部分76は設けられる。また、その当接位置は、Y軸方向における2つの第1の電極部分41の間となる。すなわち、X軸方向において、凸部分76の長さは各鍔部15の長さよりも短くなっており、Y軸方向において、凸部分76の長さは、第1の電極部分41間の長さよりも短くなっている。また、凸部分76のZ軸方向における長さは、図2(c)に示されるように、カバー60をコア10に取り付けたときに、蓋部61の裏面とコア10に巻回された巻線30の上面とが非接触となるような長さである。このような凸部分76を設けることで、コア10に巻回された巻線30及び半田付けされた第1の電極部分41と、蓋部61との接触を防ぐことができる。
【0038】
図9及び図10に示されるように、凸部分76の間には仕切り部78が形成されている。仕切り部78は、X軸方向に伸びる平坦な板形状を呈している。仕切り部78は、コア10にカバー60を取り付けたときに、Y軸方向において第1の巻芯部11と第2の巻芯部12との間に位置し、かつ、X軸方向においてその両端部が上述した各鍔部15の溝部24にそれぞれ入るように設けられている。仕切り部78はY軸方向に対向する第1の側面79と、X軸方向に対向する第2の側面80と、を有している。第1の側面79は、溝部24の底面25と対峙する。第2の側面80は、第1,2の巻芯部11,12に巻回された巻線30と対峙する。また、図10(b)に示されるように、Z軸方向における仕切り部78の長さは、脚部66,67よりも短くなっている。仕切り部78をこのような長さとすることで、回路基板と仕切り部78との当接を防ぐことができる。
【0039】
このようなカバー60をコア10に被せると、各鍔部15に設けられたガイド部26により、カバー60の係止爪68が第2の側面17側に案内される。同時に、各鍔部15に設けられた溝部24により、カバー60の仕切り部78が第2の側面17側に案内される。係止爪68は、第3,4の側面18,19に沿ってZ軸下方向に進み、第3,4の側面18,19に形成された係止受け部27に係止される。一方、仕切り部78は、溝部24に沿ってZ軸下方向に進み、カバー60に設けられた凸部分76の底面77が各鍔部15の第1の側面16に当接すると、仕切り部78の両端を溝部24にいれた状態で位置が固定される。係止爪68が係止受け部27に係止され、仕切り部78の位置が固定されたときに、各カバー60の脚部66,67は、第3,4の側面18,19側から各鍔部15を挟持している。このようにして、コア10へのカバー60の取り付けが完了する。
【0040】
以上のように、本実施形態においては、鍔部15の第1の側面16は、Z軸方向において第1,2の巻芯部11,12の上面13よりも低い所に位置している。したがって、第1,2の巻芯部11,12に巻回された巻線30のZ軸方向における位置と、巻線30が半田付けされた第1の電極部分41のZ軸方向における位置とをほぼ一致させることが容易となる。この場合、第1の電極部分41は周囲から突出しないため、コモンモードチョークコイル1自体の外形サイズを小型化することができる。また、突出した電極部分に巻線30を接続する場合と比べて、巻線30の引き出し部分を無理に屈曲させる必要が無くなるので、巻線30の断線や損傷を防止することができる。更に、コア10にカバー60を取り付けた際には、カバー60の蓋部61をより安定した状態で水平に維持できるようになるため、コモンモードチョークコイル1を自動装着機の吸着ノズルでより確実に吸着することが可能となる。また、第1の側面16は、第1,2の巻芯部11,12の上面13と下面14との間に位置するので、巻線30の引き出し部分が短くて済む。よって、直流抵抗を低く抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、第1,2の巻芯部11,12における上面13及び下面14を、巻芯部11,12の軸から外に向かう円弧状としているので、巻線30を第1,2の巻芯部11,12の外周面に沿わせつつ巻きつけた場合には、巻線30の位置ズレや緩みが生じにくくなる。よって、巻線30を整然と巻くことができる。
【0042】
また、本実施形態においては、カバー60に脚部66,67が設けられており、この脚部66,67それぞれの先には各鍔部15に係合される係止爪68が設けられている。この係止爪68が各鍔部15に形成された係止受け部27に引っ掛かるので、カバー60をコア10に固定することができるようになる。よって、絶縁樹脂を用いずともカバー60とコア10とを機械的に接続することができるため、絶縁樹脂を用いることによる悪影響を排除できる。また、カバー60は蓋部61と脚部66,67とでコア10を覆うものであって、コア10を収納するような形状を呈していない。よって、コア10を収納するための側壁が不要となる。その結果、外部環境の変化による影響を受けにくく、小型化が可能となる。
【0043】
また、本実施形態において、脚部66,67は各鍔部15を挟むように設けられるので、コア10に対してカバー60をより確実に固定することができる。脚部66は各鍔部15の第3の側面18に沿っており、脚部67は第4の側面19に沿っているので、Y軸方向に対する鍔部15のずれを脚部66,67で抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態において、カバー60は一対の側壁部69,70を有している。側壁部69,70は、巻線30の最外位置よりも蓋部61側に設けられる。そのため、側壁部69,70を、Y軸方向において巻線30の最外位置よりも外側にはみ出さずに設けることが可能となる。よって、コモンモードチョークコイル1の小型化を実現しつつ、最外位置よりも蓋部61側にある巻線30を保護することができるようになる。更に、カバー60の剛性を高めることもできる。
【0045】
また、本実施形態において、カバー60は板状の仕切り部78を有している。仕切り部78は、カバー60をコア10に取り付けた際に、第1の巻芯部11と第2の巻芯部12との間に位置するように設けられる。このような仕切り部78を設けることによって、第1の巻芯部11と第2の巻芯部12とを非接触とすることができる。更に、仕切り部78は、X軸方向において鍔部15と鍔部15とに間に位置するように設けられるので、X軸方向に対するカバー60のずれを仕切り部78の鍔部15側の面で抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態において、鍔部15には仕切り部78の端が入る溝部24が設けられている。このような溝部24は、仕切り部78をガイドする役目を果たすので、カバー60をコア10に取り付ける際に、第1,2の巻芯部11,12に巻回された巻線30に仕切り部78が当接するのを防ぐことができる。また、カバー60を取り付けた後は、この溝部24と仕切り部78とがカバー60を位置決めすることとなるので、カバー60の位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0048】
本実施形態においては、第2の側面17と第3の側面18との間、及び第2の側面17と第4の側面19との間に係止受け部27を形成するとしたが、カバー60の係止爪68が鍔部15に係止可能であるならば、係止受け部27をあらためて形成しなくてもよい。
【0049】
本実施形態においては、第1の電極部分41と巻線30との接続(継線)は、半田付けにより行われるとしたが、その他、熱圧着、溶接、あるいは、かしめ等により行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルを示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルを示す側面図である。
【図3】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルに含まれるコアを示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルに含まれるコアを示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルに含まれるコアを示す側面図である。
【図6】本実施形態に係るコモンモードチョークコイルに含まれる電極を示す側面図である。
【図7】本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコア、巻線、及び端子電極を示す斜視図である。
【図8】本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるコア、巻線、及び端子電極を示す側面図である。
【図9】本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるカバーを示す斜視図である。
【図10】本実施形態に係るコモンモードフィルタに含まれるカバーを示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…コモンモードチョークコイル、10…コア、11,12…巻芯部、15…鍔部、16…第1の側面、17…第2の側面、18…第3の側面、19…第4の側面、24…溝部、30…巻線、40…端子電極、41…第1の電極部分、42…第2の電極部分、60…カバー、61…蓋部、66,67…脚部、68…係止爪、69,70…側壁部、78…仕切り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置された複数の巻芯部と、前記複数の巻芯部を連結するように当該巻芯部の両端に位置する一対の鍔部とを有するコアと、
前記巻芯部にそれぞれ巻回された複数の巻線と、
前記各巻芯部に対応して前記各鍔部それぞれに複数設けられた端子電極と、を備えており、
前記鍔部は、前記巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向に対向する第1及び第2の側面を有し、
前記各端子電極は、前記巻線が継線されると共に前記第1の側面に位置する第1の電極部分と、当該接続部分と電気的に接続されると共に前記第2の側面に位置する第2の電極部分と、を有し、
前記巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向において、前記第2の側面を含む平面から前記第1の側面までの距離が、前記第2の側面を含む平面から前記巻芯部の当該平面から最も離れた部分までの距離よりも短く、かつ、前記第2の側面を含む平面から前記巻芯部の当該平面に最も近い部分までの距離が、前記巻線の直径よりも大きいことを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項2】
前記巻芯部において、前記平面から最も離れた部分を含む面及び前記平面に最も近い部分を含む面が、当該巻芯部の軸から前記巻芯部の軸方向及び配列方向に垂直な方向に向かって凸となる略円弧状の柱面であることを特徴とする請求項1記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
前記コアを覆う樹脂製のカバーを更に備え、
前記カバーは、前記第1の側面に対峙すると共に前記一対の鍔部にわたって伸びる平板状の蓋部と、当該蓋部から前記鍔部を挟むように前記第2の側面側に向かって伸びる脚部と、を有しており、
前記脚部には、前記鍔部に係合して当該鍔部と前記カバーとを係止するための係止爪が設けられていることを特徴とする請求項2記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項4】
前記脚部は、前記一対の鍔部それぞれを挟むように二対設けられていることを特徴とする請求項3記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項5】
前記鍔部は、前記巻芯部の配列方向に対向する前記各鍔部の第3及び第4の側面を更に有しており、
前記各脚部は、前記第3及び第4の側面に沿ってそれぞれ伸びていることを特徴とする請求項4記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項6】
前記カバーは、前記二対の脚部のうち、前記巻芯部の軸方向に離れた2つの脚部間に渡るように前記巻芯部の軸方向に伸びる一対の側壁部を更に有しており、
前記各側壁部の縁は、前記巻芯部の軸方向及び配列方向に対して垂直な方向に見た場合に、前記巻芯部の配列方向における前記巻線の最外位置よりも前記蓋部側に設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項7】
前記カバーは、前記巻芯部の軸方向に沿って前記複数の巻芯部のうち隣り合う巻芯部間に設けられた板状の仕切り部を更に有していることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項8】
前記鍔部には、前記巻芯部の軸方向にある前記仕切り部の端が入る溝部が設けられており、前記溝部は、前記巻芯部の配列方向において前記仕切り部と対峙する面を有していることを特徴とする請求項7記載のコモンモードチョークコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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