説明

コモンモードチヨークコイル

【目的】 高周波帯域でのノイズ除去効果が良好で、機械巻きによる量産が可能なコモンモードチョークコイルを提供すること。
【構成】 ボビン1の外周に1次巻線11及び2次巻線12を単層でバイファイラ巻きした。巻線11,12の入力側端部11a,12aは端子6,7に半田付けされ、出力側端部11b,12bは端子8,9に半田付けされる。また、ボビン1の中心孔にはフェライトからなる棒状のコアが挿入される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は高周波帯域(30MHz〜1GHz)でのノイズ対策に使用されるコモンモードチョークコイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子機器のパワーラインと大地との間に流入する非対称成分ノイズ(コモンモードノイズ)を除去するために、図4に示すコモンモードチョークコイルが用いられていた。このチョークコイルは環状のトロイダルコア25にポリウレタンで被覆した銅線からなる1次巻線26と2次巻線27とをバイファイラ巻きしたものである。
【0003】
しかし、この種のコモンモードチョークコイルでは、入力側と出力側との端子の巻端が近接するため、巻線間浮遊容量が増大し、高周波帯域でのノイズ減衰特性が劣化する問題点を有していた。しかも、巻線作業は機械巻きができず手巻きであるため、生産性が悪く、コストも上昇する。
【0004】
【考案の目的、構成、作用】
そこで、本考案の目的は、高周波帯域でのノイズ除去効果が良好で、機械巻きによる量産が可能なコモンモードチョークコイルを提供することにある。
以上の目的を達成するため、本考案に係るコモンモードチョークコイルは、高抵抗率の磁性材からなる棒状コアの周囲に、1次巻線及び2次巻線を単層でバイファイラ巻きしたことを特徴とする。
【0005】
巻線は棒状コアに巻回されるためバイファイラ巻きであることと相まって高密度で結合し、かつ、巻き始めと巻き終わりの巻端間の距離が大きくなるため、線間浮遊容量が小さくなり、高周波コモンモードノイズがバイパスするといった問題点が解消され、高周波特性が向上する。また、ボビンを使用することができ、巻線作業を機械巻きで行えば、量産性が高まる。
【0006】
さらに、巻線の入力側及び出力側において異極間にも浮遊容量が発生し、この浮遊容量によって負荷電流に重畳してパワーライン間を往復する対称成分ノイズ(ノーマルモードノイズ)が除去される。
【0007】
【実施例】
以下、本考案に係るコモンモードチョークコイルの実施例を添付図面に従って説明する。
図1、図2において、本コモンモードチョークコイルはボビン1と、このボビン1の中心孔2に挿入した棒状コア5と、ボビン1の外周面に巻回した1次巻線11及び2次巻線12とで構成されている。
【0008】
巻線11、12はポリウレタンで被覆した銅線からなり、ボビン1の外周面に単層でバイファイラ巻きされている。巻数は対象となる周波数帯域によって異なるが、本実施例では20回とした。ボビン1の両端に設けたフランジ3,4には入力側端子6,7と出力側端子8,9が取り付けられている。1次巻線11の入力側端部11aは入力側端子6に接続(半田付け)され、出力側端部11bは出力側端子8に接続される。また、2次巻線12の入力側端部12aは入力側端子7に接続され、出力側端部12bは出力側端子9に接続される。
【0009】
棒状コア5は高抵抗率の磁性材、具体的には透磁率μiが約550のNi−Zn系フェライトからなり、巻線11,12が巻回されたボビン1の中心孔2に挿入される。
以上の構成からなるコモンモードチョークコイルは入力側端子6,7が電源に、出力側端子8,9が電子機器にそれぞれ接続され、1次巻線11及び2次巻線12に共通に加わるコモンモードノイズを除去する。巻線11,12は単層巻きされ、かつ出力側と入力側は大きく離れているため線間浮遊容量は小さくなり、高周波ノイズがバイパスしてしまうおそれはない。また、端子6,7間及び8,9間にも浮遊容量が発生し、この容量は巻線11,12間を往復するノーマルモードノイズをアースラインに逃がす働きを有する。
【0010】
さらに、棒状コア5を高抵抗率のものを使用することにより、高周波特性が改善され、ボビン1を用いることによって巻線11、12を自動巻線機で機械巻きすることができ、量産性が向上する。
図3は高周波ノイズの減衰特性を示し、曲線Aは前記本考案品でのコモンモードノイズの減衰特性を示す。曲線Bは本考案品でのノーマルモードノイズの減衰特性を示す。比較のために曲線Cで図4に示した従来品でのコモンモードノイズの減衰特性を示す。なお、これらのコモンモードチョークコイルは30.0〜1000MHz帯域でのノイズ対策として設計されたものである。
【0011】
なお、本考案に係るコモンモードチョークコイルは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更可能である。
例えば、1次巻線、2次巻線を棒状コアに直接巻回してもよい。この場合には、端子に代えて導電性ペーストをコアに塗布し、焼き付けることにより電極を形成することが好ましい。
【0012】
【考案の効果】
以上の説明で明らかなように、本考察によれば、棒状コアの周囲に1次巻線及び2次巻線を単層でバイファイラ巻きしたため、巻線の巻き始めと巻き終わりの距離が大きくなり、線間浮遊容量が小さくなり、高周波のコモンモードノイズの減衰特性が向上し、かつ、巻線の異極間に発生する浮遊容量によってノーマルモードノイズをも減衰させることができる。また、巻線の機械巻きが可能となり、量産性が向上し、生産コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係るコモンモードチョークコイルの一実施例を示す底面図。
【図2】図1に示したコモンモードチョークコイルのボビン及びコアを示す斜視図。
【図3】高周波ノイズ成分の減衰特性を示すグラフ。
【図4】従来のコモンモードチョークコイルの斜視図。
【符号の説明】
1…ボビン
5…棒状コア
11…1次巻線
12…2次巻線

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 高抵抗率の磁性材からなる棒状コアの周囲に、1次巻線及び2次巻線が単層でバイファイラ巻きされていることを特徴とするコモンモードチョークコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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