コモンモード巻線インダクタ用リードフレーム、及びそれを用いたコモンモード巻線インダクタの製造方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、面実装に供し、且つ二つのインダクタンス回路を持つコモンモード巻線インダクタに係わり、特に、コモンモード巻線インダクタを製造する際に用いるリードフレーム、及びこれを用いたコモンモード巻線インダクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の巻線チップインダクタでは、一般に、1部品に対し、1つのインダクタンス素子を持つ巻線チップインダクタが製品化されており、ノーマルモードノイズを除去するノイズフィルター等に利用されているが、近年、このノーマルモード巻線チップインダクタの小型化、低コスト化を実現する構造及び製造方法が、考案、発明されている。この製造方法は、リードフレームを用いるのが特徴である。このリードフレーム51は、図11に示す様に、対の端子52,53と、この両端末52,53を帯状に複数対連結する連結部56,57とを有し、この連結部56,57による端子52,53の連結方向を端子52,53の配列方向と斜めに交差する方向としてある。この斜連鎖状と成したリードフレーム51を用いたノーマルモード巻線チップインダクタの製造方法は、先ず、リードフレーム51上に、磁気コア61を接着固定し、このリードフレーム51の一方の連結部56を切断して、櫛形の連結体70を構成し、そして、図12に示すように、この連結体70のある一つの磁気コア61に巻線81を施し、その後、磁気コア61の配列ピッチで1ピッチ分だけ連結体70を順送し、次の磁気コア61に巻線81を施し、こうした巻線と順送とを繰り返すことによって、ある磁気コア61に施された巻線81の巻終り端83と次の磁気コア61に施された巻線81の巻始め端82との間に生ずる線材84を、端子52,53の接続箇所52c,53cを通過させ、そしてこの線材84と端子52,53を電気的に接続し、図13に示すように、切断点85,86にて余線87を切断、除去するように成っている。この製造方法によれば、巻線工程が大幅に簡略化されるため、巻線工程における所要時間が飛躍的に短縮されるとともに、巻線に供されるフライヤー巻線機のフライヤーヘッドの制御機構を、フライヤー回転を行うθ軸と、フライヤー回転軸方向の直線移動を行うY軸の二軸に簡略化することが可能となる。また、連結体70の相互間に生ずる余線87を除去する工程も簡素化されるため、生産性が大幅に高まるとともに設備コストも飛躍的に低減される。
【0003】
一方、複数のインダクタンス素子を1部品に持ち、コモンモードノイズを除去するラインフィルターとして主に用いられるコモンモード巻線インダクタにおいては、一般に、図14R>4に示す様に、四つ以上の端子90を持つドラムコア91を保持し、巻線用ノズル100によって巻線92を施すとともに、巻線端末93を端子90にからげ、切断する工程を数回繰り返し、各端子90と各巻線端末93とをそれぞれハンダ付け等により電気的に接続する製造方法が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のコモンモード巻線インダクタの製造方法では、巻線端末を端子にからげるのに要する時間が長く、生産性を向上させるのが困難であるとともに、からげ及び切断に要する機構が複雑となり、巻線機の設備コストが低減し難い。更に、からげ動作のため、隣接する端子間は、巻線機のノズルが通過出来るのが望ましいため、端子間の距離に制約が生じ、インダクタを小型化するのが難しいと言う欠点があった。
【0005】
これらの欠点は上述のノーマルモード巻線インダクタの製造方法を、コモンモード巻線インダクタの製造方法に適用する事により解決されるが、これは、以下に記す問題点により実現が不可能であった。
【0006】
即ち、ノーマルモード巻線インダクタの製造方法においては、隣接する巻線81の間にある線材84は、巻始め82と巻終わり83とを単純に結んだ形となるため、同様にして、一つの磁気コアに複数の巻線を施すと、巻線端末が同じ点を通ってしまい、各々の巻線端末をそれぞれ別々の端子に接続するのが困難であると言う問題点がある。
【0007】
従って、各巻線端末と各端子の接続箇所を個別に得られる様にするために、線材の通過点を自由に設定しできにする手段が必要となる。
【0008】
それ故に、本発明の課題は、従来のリードフレームを用いたノーマルモード巻線インダクタの製造方法をコモンモード巻線インダクタの製造方法に適用可能とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレームを提供すると共に、このリードフレームを用いたコモンモード巻線インダクタの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、磁気コア(11)の第1側及び第2側にそれぞれ設けられる第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)と、該端子の配列方向と斜めに交差する連結方向で前記磁気コア(11)の第1側の両端子(2、3または4、5)及び前記磁気コアの第2側の両端子(4、5または2、3)をそれぞれ複数組連結する連結部(7)とを有し、前記第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)の中で、少なくとも一本の対角線上にある二つの端子(2、5または3、4)にそれぞれ引掛け部が形成されていることを特徴とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレームが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、上記コモンモード巻線インダクタ用リードフレーム上に前記磁気コアを複数個載置し、該複数の磁気コアにそれぞれ前記端子を固着する固着工程と、該固着工程後、前記リードフレームの一方の側の連結部を切断して略櫛状の連結体を得る切断工程と、該切断工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第1の巻線工程と、該第1の巻線工程後、更に前記複数の磁気コアに巻線を施す第2の巻線工程とを有し、前記第1及び第2の巻線工程の際に、前記巻線の端末を前記引掛け部を経由させるようにしたことを特徴とするコモンモード巻線インダクタの製造方法が得られる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施例に係るコモンモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。このリードフレーム1は、端子2,3,4,5と、連結部6,7と、連結片8とを有している。
【0013】
端子2,3は、磁気コア11の一側面側に配され、端子4,5は磁気コア11の他側面側に配される(図2参照)。端子2,3は、互いに連結されて略コ字状の端子片9を構成し、同様に、端子4,5は、互いに連結されて略コ字状の端子片10を構成している。端子2,4は、第1側(第1のインダクタンス回路側)の端子であり、端子3,5は、第2側(第2のインダクタンス回路側)の端子である。各端子2,3,4,5は、磁気コア11を係止するための係止部2a,3a,4a,5aをそれぞれ有している。
【0014】
連結部6は、端子2,3の組(端子片9)を多数組、斜連鎖状に連結する。同様に、連結部7は、端子4,5の組(端子片10)を多数組、斜連鎖状に連結する。連結部6,7による端子2,3,4,5の連結方向は、第1側同士の端子2,4、及び第2側同士の端子3,5の配列方向(対を成す端子片9と端子片10の配列方向に等しい)と斜めに交差する方向である。
【0015】
連結片8は、連結部6と連結部7とを連結する。
【0016】
端子2には、略顎状の引掛け部2bが形成され、また、端子5にも、略顎状の引掛け部5bが形成されている。本実施例の場合、端子2、3、4、5同士を結ぶ線の内、一本の対角線上にある端子2及び5に引掛け部2b、5bを形成してあるが、もう一本の対角線上にある端子3、4の方に引掛け部を設けても良いし、或いは全ての端子2、3、4、5に引掛け部を設けてもよい。
【0017】
図2は本発明の一実施例に係る製造方法における固着工程を示す斜視図、図3は図2に示す製造方法における第1の巻線工程を示す平面図、図4は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図、図5は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図、図6は図3に示す第1の巻線工程の後の連結体を示す平面図、図7は図2に示す製造方法における第2の巻線工程を示す平面図、図8は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図、図9は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図、図10は図7に示す第2の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【0018】
図2乃至図10に基づいて、本発明の一実施例に係る製造方法について説明する。
【0019】
本実施例のコモンモード巻線インダクタ用リードフレームを用いたコモンモードインダクタの製造方法は、固着工程と、切断工程と、第1の巻線工程と、第2の巻線工程とを有している。
【0020】
固着工程では、先ず、図1に示すリードフレーム1を用意し、そして、図2に示す様に、リードフレーム1に形成された端子2,3,4,5の係止部2a,3a,4a,5aに、予め熱硬化系の接着剤12を塗布しておく。次ぎに、各端子2,3,4,5上に複数の磁気コア11を順次載置し、加熱処理して各磁気コア11に端子2,3,4,5をそれぞれ固着する。
【0021】
固着工程後の切断工程では、リードフレーム1の一方の連結部6を二つの磁気コア11の間で順次切断し、同時にリードフレーム1の連結片10も順次切断する。これにより、略櫛型の連結体20が得られ、この連結体20は、次ぎの第1の巻線工程に供される。
【0022】
第1の巻線工程では、図3に示す様に、連結体20の磁気コア11にフライヤーノズル30を介して巻線31を施し、この巻線端末33を引掛け部2bを経由させた後、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送する事により、巻線端末33,32間の線材34が端子2,4との接続箇所2c,4cを通過するようにしてあり、この引掛け部2bを経由させた巻線31と、連結体20の順送が繰り返される。
【0023】
第1の巻線工程における巻線31を引掛け部2bを経由させる動作について更に詳しく説明する。図4に示すように、巻線直後、フライヤーノズル30は30−Aに示す位置にある。次にフライヤーノズル30をθ軸を中心に旋回させるとともに、Y軸方向に移動させ、30−Bに示す位置に移動させると、巻線端末33は、33−Aに示す位置から33−Bに示す位置へと移動し、端子2の端面に掛かる。この状態から、図5に示す様に、フライヤーノズル30を30−Bに示す位置から30−Cに示す位置へと、上述の動作と同様にして移動させると、巻線端末33は、33−Bに示す位置から33−Cに示す位置へと、端子2の側縁部に沿って移動し、引掛け部2bに引っ掛かる。以上の様に、巻線端末33を引掛け部2bを経由させる動作は非常に単純であり、巻線工程に供されるフライヤー巻線機のフライヤーヘッドの制御機構は、θ軸回転及び、Y軸方向移動の二つの制御機構で十分となり、引掛け動作にかかる時間も最小限に抑えられる。
【0024】
第1の巻線工程の後、端末処理工程が行われる。端末処理工程では、図6に示す様に、巻線端末33,32を接続箇所2c,4cにて端子2,4にそれぞれ電気的に接続し、切断点35,36にて二つの巻線31の相互間の余った線材、即ち、余線37を切断し、除去するように成っている。
【0025】
以上の工程により、インダクタンス回路が一回路形成されるが、続けて第2の巻線工程が行われる。
【0026】
第2の巻線工程では、図7に示すように、二回路目の巻線41の端末42,43は、一回路目の巻線31の端末32,33とは別の接続箇所5c,3cを得るため、引掛け部5bを経由させる。
【0027】
この引掛け部5bに巻線端末42を経由させる動作について詳しく説明する。一つの磁気コア11に対する巻線41が終了し、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送した直後、図8に示すように、フライヤーノズル40(フライヤーノズル30と別のもの)は40−Aに示す位置にある。次にフライヤーノズル40を40−Aに示す位置から40−Bに示す位置へ、更に、図9において40−Bに示す位置から40−Cに示す位置へと移動させると、図8に示すように、巻線端末42は、42−Aに示す位置から42−Bに示す位置へ、更に、図9に示すように、42−Bに示す位置から42−Cに示す位置へと移動し、引掛け部5bに引っ掛かる。その後、巻線41を施し、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送する事により、図7に示すように、巻線端末43,42間の線材44は、端子3,5との接続箇所3c,5cを通過する。
【0028】
次に、巻線端末処理工程に移り、図10に示す様に、巻線端末42,43は、接続箇所5c,3cにてそれぞれ端子5,3に電気的に接続され、更に、切断点45,46にて余線47が切断し除去される。
【0029】
その後、ノーマルモード巻線インダクタと同様に、モールド工程、連結部7の切断工程等を経て、コモンモード巻線インダクタが完成する。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明のコモンモード巻線インダクタ用リードフレームは、引掛け部を有しているので、製造の際に、巻線端末を、端子に設けた引掛け部を経由することで、巻線端末と端子の接続箇所を個別に設ける事が可能となり、端末と端子の接続が容易となる。また、巻線端末を顎状部分に経由させる動作は非常に単純な動作であるため、巻線工程に要する時間の増加を最少限に抑えるとともに、上記の動作は、フライヤー巻線機のフライヤーヘッドのθ軸回転、及びY軸方向移動のみで十分達成出来るため、巻線工程に供されるフライヤー巻線機の構成を複雑化する事はない。結果として、ノーマルモード巻線チップインダクタの製造方法をコモンモード巻線インダクタの製造方法に導入する事が可能となり、従来のコモンモード巻線インダクタの製造方法に比べ、巻線工程の所要時間が大幅に短縮されるとともに、巻線工程に供される巻線機の構成が簡略化される。更に、本発明のコモンモード巻線インダクタの製造方法における、巻線、端末処理等の工程と、ノーマルモード巻線チップインダクタのそれとでは、各工程が共通であるため、双方のインダクタの各工程における生産設備の構成が共通化され、設備の開発コストを低減する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るコモンモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施例に係る製造方法における固着工程を示す斜視図である。
【図3】図3は図2に示す製造方法における第1の巻線工程を示す平面図である。
【図4】図4は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図である。
【図5】図5は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図である。
【図6】図6は図3に示す第1の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【図7】図7は図2に示す製造方法における第2の巻線工程を示す平面図である。
【図8】図8は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図である。
【図9】図9は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図である。
【図10】図10は図7に示す第2の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【図11】図11はノーマルモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。
【図12】図12は図11に示すリードフレームを用いたノーマルモード巻線インダクタの製造方法における巻線工程を示す平面図である。
【図13】図13は図12に示す製造方法における端末処理工程を示す平面図である。
【図14】図14は従来のコモンモード巻線インダクタの製造方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 リードフレーム
2 端子
2b 引掛け部
3 端子
4 端子
5 端子
5b 引掛け部
6 連結部
7 連結部
11 磁気コア
20 連結体
30 フライヤーノズル
31 巻線
40 フライヤーノズル
41 巻線
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、面実装に供し、且つ二つのインダクタンス回路を持つコモンモード巻線インダクタに係わり、特に、コモンモード巻線インダクタを製造する際に用いるリードフレーム、及びこれを用いたコモンモード巻線インダクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の巻線チップインダクタでは、一般に、1部品に対し、1つのインダクタンス素子を持つ巻線チップインダクタが製品化されており、ノーマルモードノイズを除去するノイズフィルター等に利用されているが、近年、このノーマルモード巻線チップインダクタの小型化、低コスト化を実現する構造及び製造方法が、考案、発明されている。この製造方法は、リードフレームを用いるのが特徴である。このリードフレーム51は、図11に示す様に、対の端子52,53と、この両端末52,53を帯状に複数対連結する連結部56,57とを有し、この連結部56,57による端子52,53の連結方向を端子52,53の配列方向と斜めに交差する方向としてある。この斜連鎖状と成したリードフレーム51を用いたノーマルモード巻線チップインダクタの製造方法は、先ず、リードフレーム51上に、磁気コア61を接着固定し、このリードフレーム51の一方の連結部56を切断して、櫛形の連結体70を構成し、そして、図12に示すように、この連結体70のある一つの磁気コア61に巻線81を施し、その後、磁気コア61の配列ピッチで1ピッチ分だけ連結体70を順送し、次の磁気コア61に巻線81を施し、こうした巻線と順送とを繰り返すことによって、ある磁気コア61に施された巻線81の巻終り端83と次の磁気コア61に施された巻線81の巻始め端82との間に生ずる線材84を、端子52,53の接続箇所52c,53cを通過させ、そしてこの線材84と端子52,53を電気的に接続し、図13に示すように、切断点85,86にて余線87を切断、除去するように成っている。この製造方法によれば、巻線工程が大幅に簡略化されるため、巻線工程における所要時間が飛躍的に短縮されるとともに、巻線に供されるフライヤー巻線機のフライヤーヘッドの制御機構を、フライヤー回転を行うθ軸と、フライヤー回転軸方向の直線移動を行うY軸の二軸に簡略化することが可能となる。また、連結体70の相互間に生ずる余線87を除去する工程も簡素化されるため、生産性が大幅に高まるとともに設備コストも飛躍的に低減される。
【0003】
一方、複数のインダクタンス素子を1部品に持ち、コモンモードノイズを除去するラインフィルターとして主に用いられるコモンモード巻線インダクタにおいては、一般に、図14R>4に示す様に、四つ以上の端子90を持つドラムコア91を保持し、巻線用ノズル100によって巻線92を施すとともに、巻線端末93を端子90にからげ、切断する工程を数回繰り返し、各端子90と各巻線端末93とをそれぞれハンダ付け等により電気的に接続する製造方法が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のコモンモード巻線インダクタの製造方法では、巻線端末を端子にからげるのに要する時間が長く、生産性を向上させるのが困難であるとともに、からげ及び切断に要する機構が複雑となり、巻線機の設備コストが低減し難い。更に、からげ動作のため、隣接する端子間は、巻線機のノズルが通過出来るのが望ましいため、端子間の距離に制約が生じ、インダクタを小型化するのが難しいと言う欠点があった。
【0005】
これらの欠点は上述のノーマルモード巻線インダクタの製造方法を、コモンモード巻線インダクタの製造方法に適用する事により解決されるが、これは、以下に記す問題点により実現が不可能であった。
【0006】
即ち、ノーマルモード巻線インダクタの製造方法においては、隣接する巻線81の間にある線材84は、巻始め82と巻終わり83とを単純に結んだ形となるため、同様にして、一つの磁気コアに複数の巻線を施すと、巻線端末が同じ点を通ってしまい、各々の巻線端末をそれぞれ別々の端子に接続するのが困難であると言う問題点がある。
【0007】
従って、各巻線端末と各端子の接続箇所を個別に得られる様にするために、線材の通過点を自由に設定しできにする手段が必要となる。
【0008】
それ故に、本発明の課題は、従来のリードフレームを用いたノーマルモード巻線インダクタの製造方法をコモンモード巻線インダクタの製造方法に適用可能とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレームを提供すると共に、このリードフレームを用いたコモンモード巻線インダクタの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、磁気コア(11)の第1側及び第2側にそれぞれ設けられる第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)と、該端子の配列方向と斜めに交差する連結方向で前記磁気コア(11)の第1側の両端子(2、3または4、5)及び前記磁気コアの第2側の両端子(4、5または2、3)をそれぞれ複数組連結する連結部(7)とを有し、前記第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)の中で、少なくとも一本の対角線上にある二つの端子(2、5または3、4)にそれぞれ引掛け部が形成されていることを特徴とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレームが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、上記コモンモード巻線インダクタ用リードフレーム上に前記磁気コアを複数個載置し、該複数の磁気コアにそれぞれ前記端子を固着する固着工程と、該固着工程後、前記リードフレームの一方の側の連結部を切断して略櫛状の連結体を得る切断工程と、該切断工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第1の巻線工程と、該第1の巻線工程後、更に前記複数の磁気コアに巻線を施す第2の巻線工程とを有し、前記第1及び第2の巻線工程の際に、前記巻線の端末を前記引掛け部を経由させるようにしたことを特徴とするコモンモード巻線インダクタの製造方法が得られる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施例に係るコモンモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。このリードフレーム1は、端子2,3,4,5と、連結部6,7と、連結片8とを有している。
【0013】
端子2,3は、磁気コア11の一側面側に配され、端子4,5は磁気コア11の他側面側に配される(図2参照)。端子2,3は、互いに連結されて略コ字状の端子片9を構成し、同様に、端子4,5は、互いに連結されて略コ字状の端子片10を構成している。端子2,4は、第1側(第1のインダクタンス回路側)の端子であり、端子3,5は、第2側(第2のインダクタンス回路側)の端子である。各端子2,3,4,5は、磁気コア11を係止するための係止部2a,3a,4a,5aをそれぞれ有している。
【0014】
連結部6は、端子2,3の組(端子片9)を多数組、斜連鎖状に連結する。同様に、連結部7は、端子4,5の組(端子片10)を多数組、斜連鎖状に連結する。連結部6,7による端子2,3,4,5の連結方向は、第1側同士の端子2,4、及び第2側同士の端子3,5の配列方向(対を成す端子片9と端子片10の配列方向に等しい)と斜めに交差する方向である。
【0015】
連結片8は、連結部6と連結部7とを連結する。
【0016】
端子2には、略顎状の引掛け部2bが形成され、また、端子5にも、略顎状の引掛け部5bが形成されている。本実施例の場合、端子2、3、4、5同士を結ぶ線の内、一本の対角線上にある端子2及び5に引掛け部2b、5bを形成してあるが、もう一本の対角線上にある端子3、4の方に引掛け部を設けても良いし、或いは全ての端子2、3、4、5に引掛け部を設けてもよい。
【0017】
図2は本発明の一実施例に係る製造方法における固着工程を示す斜視図、図3は図2に示す製造方法における第1の巻線工程を示す平面図、図4は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図、図5は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図、図6は図3に示す第1の巻線工程の後の連結体を示す平面図、図7は図2に示す製造方法における第2の巻線工程を示す平面図、図8は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図、図9は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図、図10は図7に示す第2の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【0018】
図2乃至図10に基づいて、本発明の一実施例に係る製造方法について説明する。
【0019】
本実施例のコモンモード巻線インダクタ用リードフレームを用いたコモンモードインダクタの製造方法は、固着工程と、切断工程と、第1の巻線工程と、第2の巻線工程とを有している。
【0020】
固着工程では、先ず、図1に示すリードフレーム1を用意し、そして、図2に示す様に、リードフレーム1に形成された端子2,3,4,5の係止部2a,3a,4a,5aに、予め熱硬化系の接着剤12を塗布しておく。次ぎに、各端子2,3,4,5上に複数の磁気コア11を順次載置し、加熱処理して各磁気コア11に端子2,3,4,5をそれぞれ固着する。
【0021】
固着工程後の切断工程では、リードフレーム1の一方の連結部6を二つの磁気コア11の間で順次切断し、同時にリードフレーム1の連結片10も順次切断する。これにより、略櫛型の連結体20が得られ、この連結体20は、次ぎの第1の巻線工程に供される。
【0022】
第1の巻線工程では、図3に示す様に、連結体20の磁気コア11にフライヤーノズル30を介して巻線31を施し、この巻線端末33を引掛け部2bを経由させた後、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送する事により、巻線端末33,32間の線材34が端子2,4との接続箇所2c,4cを通過するようにしてあり、この引掛け部2bを経由させた巻線31と、連結体20の順送が繰り返される。
【0023】
第1の巻線工程における巻線31を引掛け部2bを経由させる動作について更に詳しく説明する。図4に示すように、巻線直後、フライヤーノズル30は30−Aに示す位置にある。次にフライヤーノズル30をθ軸を中心に旋回させるとともに、Y軸方向に移動させ、30−Bに示す位置に移動させると、巻線端末33は、33−Aに示す位置から33−Bに示す位置へと移動し、端子2の端面に掛かる。この状態から、図5に示す様に、フライヤーノズル30を30−Bに示す位置から30−Cに示す位置へと、上述の動作と同様にして移動させると、巻線端末33は、33−Bに示す位置から33−Cに示す位置へと、端子2の側縁部に沿って移動し、引掛け部2bに引っ掛かる。以上の様に、巻線端末33を引掛け部2bを経由させる動作は非常に単純であり、巻線工程に供されるフライヤー巻線機のフライヤーヘッドの制御機構は、θ軸回転及び、Y軸方向移動の二つの制御機構で十分となり、引掛け動作にかかる時間も最小限に抑えられる。
【0024】
第1の巻線工程の後、端末処理工程が行われる。端末処理工程では、図6に示す様に、巻線端末33,32を接続箇所2c,4cにて端子2,4にそれぞれ電気的に接続し、切断点35,36にて二つの巻線31の相互間の余った線材、即ち、余線37を切断し、除去するように成っている。
【0025】
以上の工程により、インダクタンス回路が一回路形成されるが、続けて第2の巻線工程が行われる。
【0026】
第2の巻線工程では、図7に示すように、二回路目の巻線41の端末42,43は、一回路目の巻線31の端末32,33とは別の接続箇所5c,3cを得るため、引掛け部5bを経由させる。
【0027】
この引掛け部5bに巻線端末42を経由させる動作について詳しく説明する。一つの磁気コア11に対する巻線41が終了し、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送した直後、図8に示すように、フライヤーノズル40(フライヤーノズル30と別のもの)は40−Aに示す位置にある。次にフライヤーノズル40を40−Aに示す位置から40−Bに示す位置へ、更に、図9において40−Bに示す位置から40−Cに示す位置へと移動させると、図8に示すように、巻線端末42は、42−Aに示す位置から42−Bに示す位置へ、更に、図9に示すように、42−Bに示す位置から42−Cに示す位置へと移動し、引掛け部5bに引っ掛かる。その後、巻線41を施し、磁気コア11の配列ピッチで1ピッチ分、連結体20を順送する事により、図7に示すように、巻線端末43,42間の線材44は、端子3,5との接続箇所3c,5cを通過する。
【0028】
次に、巻線端末処理工程に移り、図10に示す様に、巻線端末42,43は、接続箇所5c,3cにてそれぞれ端子5,3に電気的に接続され、更に、切断点45,46にて余線47が切断し除去される。
【0029】
その後、ノーマルモード巻線インダクタと同様に、モールド工程、連結部7の切断工程等を経て、コモンモード巻線インダクタが完成する。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明のコモンモード巻線インダクタ用リードフレームは、引掛け部を有しているので、製造の際に、巻線端末を、端子に設けた引掛け部を経由することで、巻線端末と端子の接続箇所を個別に設ける事が可能となり、端末と端子の接続が容易となる。また、巻線端末を顎状部分に経由させる動作は非常に単純な動作であるため、巻線工程に要する時間の増加を最少限に抑えるとともに、上記の動作は、フライヤー巻線機のフライヤーヘッドのθ軸回転、及びY軸方向移動のみで十分達成出来るため、巻線工程に供されるフライヤー巻線機の構成を複雑化する事はない。結果として、ノーマルモード巻線チップインダクタの製造方法をコモンモード巻線インダクタの製造方法に導入する事が可能となり、従来のコモンモード巻線インダクタの製造方法に比べ、巻線工程の所要時間が大幅に短縮されるとともに、巻線工程に供される巻線機の構成が簡略化される。更に、本発明のコモンモード巻線インダクタの製造方法における、巻線、端末処理等の工程と、ノーマルモード巻線チップインダクタのそれとでは、各工程が共通であるため、双方のインダクタの各工程における生産設備の構成が共通化され、設備の開発コストを低減する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るコモンモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施例に係る製造方法における固着工程を示す斜視図である。
【図3】図3は図2に示す製造方法における第1の巻線工程を示す平面図である。
【図4】図4は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図である。
【図5】図5は図3に示す第1の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図である。
【図6】図6は図3に示す第1の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【図7】図7は図2に示す製造方法における第2の巻線工程を示す平面図である。
【図8】図8は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける迄の動作を示す斜視図である。
【図9】図9は図7に示す第2の巻線工程の際の巻線端末を引掛け部に引き掛ける動作を示す斜視図である。
【図10】図10は図7に示す第2の巻線工程の後の連結体を示す平面図である。
【図11】図11はノーマルモード巻線インダクタ用のリードフレームの斜視図である。
【図12】図12は図11に示すリードフレームを用いたノーマルモード巻線インダクタの製造方法における巻線工程を示す平面図である。
【図13】図13は図12に示す製造方法における端末処理工程を示す平面図である。
【図14】図14は従来のコモンモード巻線インダクタの製造方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 リードフレーム
2 端子
2b 引掛け部
3 端子
4 端子
5 端子
5b 引掛け部
6 連結部
7 連結部
11 磁気コア
20 連結体
30 フライヤーノズル
31 巻線
40 フライヤーノズル
41 巻線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コア(11)の第1側及び第2側にそれぞれ設けられる第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)と、
該端子の配列方向と斜めに交差する連結方向で前記磁気コア(11)の第1側の両端子(2、3または4、5)及び前記磁気コアの第2側の両端子(4、5または2、3)をそれぞれ複数組連結する連結部(7)とを有し、
前記第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)の中で、少なくとも一本の対角線上にある二つの端子(2、5または3、4)にそれぞれ引掛け部が形成されていることを特徴とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレーム。
【請求項2】
請求項1記載のコモンモード巻線インダクタ用リードフレーム上に前記磁気コアを複数個載置し、該複数の磁気コアにそれぞれ前記端子を固着する固着工程と、
該固着工程後、前記リードフレームの一方の側の連結部を切断して略櫛状の連結体を得る切断工程と、
該切断工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第1の巻線工程と、
該第1の巻線工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第2の巻線工程とを有し、
前記第1及び第2の巻線工程の際に、前記巻線の端末を前記引掛け部を経由させるようにしたことを特徴とするコモンモード巻線インダクタの製造方法。
【請求項1】
磁気コア(11)の第1側及び第2側にそれぞれ設けられる第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)と、
該端子の配列方向と斜めに交差する連結方向で前記磁気コア(11)の第1側の両端子(2、3または4、5)及び前記磁気コアの第2側の両端子(4、5または2、3)をそれぞれ複数組連結する連結部(7)とを有し、
前記第1側及び第2側の端子(2、3、4、5)の中で、少なくとも一本の対角線上にある二つの端子(2、5または3、4)にそれぞれ引掛け部が形成されていることを特徴とするコモンモード巻線インダクタ用リードフレーム。
【請求項2】
請求項1記載のコモンモード巻線インダクタ用リードフレーム上に前記磁気コアを複数個載置し、該複数の磁気コアにそれぞれ前記端子を固着する固着工程と、
該固着工程後、前記リードフレームの一方の側の連結部を切断して略櫛状の連結体を得る切断工程と、
該切断工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第1の巻線工程と、
該第1の巻線工程後、前記連結体の複数の磁気コアに巻線を施す第2の巻線工程とを有し、
前記第1及び第2の巻線工程の際に、前記巻線の端末を前記引掛け部を経由させるようにしたことを特徴とするコモンモード巻線インダクタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【特許番号】特許第3577603号(P3577603)
【登録日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【発行日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−304151
【出願日】平成5年12月3日(1993.12.3)
【公開番号】特開平7−161563
【公開日】平成7年6月23日(1995.6.23)
【審査請求日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【参考文献】
【文献】特開平03−046206(JP,A)
【文献】実開平05−028014(JP,U)
【文献】特開昭58−087810(JP,A)
【文献】特開平04−346403(JP,A)
【文献】特開平06−151177(JP,A)
【文献】特開平06−333768(JP,A)
【登録日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【発行日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成5年12月3日(1993.12.3)
【公開番号】特開平7−161563
【公開日】平成7年6月23日(1995.6.23)
【審査請求日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【参考文献】
【文献】特開平03−046206(JP,A)
【文献】実開平05−028014(JP,U)
【文献】特開昭58−087810(JP,A)
【文献】特開平04−346403(JP,A)
【文献】特開平06−151177(JP,A)
【文献】特開平06−333768(JP,A)
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