説明

コラーゲンペプチド含有ゼリー及びその製造方法

【課題】コラーゲンペプチドに特有の臭気や風味がマスキングされた風味良好なコラーゲン含有ゼリー及びその製造方法、ならびに前記コラーゲン含有ゼリーを含むゼリー複合菓子を提供すること。
【解決手段】コラーゲンペプチド、酵母エキス、植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上、乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又はコンニャク分解物、ならびにゲル化剤を含有することを特徴とするゼリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチド含有ゼリー及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記コラーゲンペプチド含有ゼリーを含むゼリー複合菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは動物組織における主要な構成タンパク質であり、皮膚、血管、内臓、骨等のいたるところに存在していることが知られている。特に、近年まではコラーゲンを分解したコラーゲンペプチドに関しては、コラーゲン臭と呼ばれる独特の獣臭や動物臭だけでなく、低分子が原因として生じる不快味が原因となって、美味しく、且つ、手軽に摂取することは困難であった。低分子のものほどコラーゲン臭及びエグ味がきつく、重量平均分子量(これより平均分子量と略記する)2,700以下のナノサイズコラーゲンペプチドや特許文献1で示されているようなオリゴコラーゲンペプチドは強烈な臭いやエグ味を生じる。これらのコラーゲンペプチドは飲料やキャンディ、ゼリー、タブレット等の形態で摂る場合が多いが、コラーゲン臭並びに不快味による違和感や不快感を生じるという問題がある。特に近年、美容飲食品としてのコラーゲンゼリー市場規模が国内外共に目覚しい成長を遂げていることから、ゼリー中にコラーゲンペプチドを加えた場合のコラーゲン臭の低減に関しては極めて重要な問題となっている。例としてかつては美味しく、且つ手軽に摂取できるようにするために、オレンジ等の柑橘系のフレーバー等で味を改善する従来の試みやオリゴ糖の添加(特許文献2)が行われてきたが、コラーゲン臭のような強烈な不快味に対するマスキング効果としては、不十分であった。
【0003】
コラーゲン臭のマスキングあるいは不快味の改善方法に関してフレーバー及びオリゴ糖添加以外のいくつかの方法を試みた例がある。一つはコラーゲン含有食品に甘味料であるスクラロースを含有すること(特許文献3)や、魚由来コラーゲンペプチドに加えて難消化性デキストリンを含有すること(特許文献4)や、コラーゲン、コラーゲンペプチド及びゼラチンから選ばれた1種以上のものにエチルオクタノエートを含有すること(特許文献5)、及びコラーゲン飲食品にステビア抽出物及びスクラロースを含有すること(特許文献6)、及び桑葉を含有すること(特許文献7)についての提案があった。
【0004】
前述したコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、いずれもコラーゲン飲食物にマスキング作用のある物質を添加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に行うことが可能であるが、飲食品の味をも左右してしまうことから、前記物質を十分量添加することは難しく、マスキング効果としては不十分な点も多く残る。
【0005】
また、コラーゲン臭のマスキング方法として、コラーゲンペプチドとエタノールが含まれる水溶液を加熱することを特徴とする方法も公表されている(特許文献8)。コラーゲン臭に関与するメタンジオールとジメチルジスルフィドを少量のエタノールを含む水溶液中で熱処理することによって低減することを目的としている。しかしながら、魚由来のコラーゲンペプチドに関しての有効性は示されているが、その他の動物由来のコラーゲンに関しては明示されていない。しかも、コラーゲン臭のマスキングに関して、完全にコラーゲン臭を除去することが困難である。特に、コラーゲンペプチドの重量平均分子量(Mw)が2,700以下になると、コラーゲン臭が非常に強くなり、上記の方法では望ましい消臭効果が見られなかった。
前述したコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、コラーゲン飲食物にエタノールを添加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に行うことが可能である。しかしながら、エタノールは飲食品の味をも左右してしまうことから不十分な点も残る。
【0006】
一方、関節炎の症状を和らげ、骨の形成を促進するためコラーゲンを各種飲食品に添加するいくつかの特許技術が知られている。コラーゲンを含有する飲食品の例として、ペプチドとポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンを組み合わせた渋み低減飲料(特許文献9)、プロアントシアニジン及びグルタチオンを含有する食品組成物(特許文献10)、コラーゲン、並びに、ツボクサ、その乾燥物若しくはその抽出物及び/又は海洋深層水を含有することを特徴とする食品組成物(特許文献11)、タンナーゼを作用させた茶抽出液と、コラーゲンペプチドとを含有することを特徴とするコラーゲンペプチド含有茶飲料、植物ポリフェノールとコラーゲンを含む液体にペクチンを添加することにより、植物ポリフェノールとコラーゲンによる白濁物質及び/又は沈殿物質の生成が抑制された液体組成物(特許文献12)等がある。
但し、前述したコラーゲン含有飲料に関する文献はコラーゲン臭のマスキングに関する目的のものではなく、さらにマスキングを行うための手段としては全く好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−245285号公報
【特許文献2】特開2005−137362号公報
【特許文献3】特開2000−152757号公報
【特許文献4】特開2006−180812号公報
【特許文献5】特開2006−197856号公報
【特許文献6】特開2006−204287号公報
【特許文献7】特開2004−357584号公報
【特許文献8】特開2007−159557号公報
【特許文献9】特開2006−271259号公報
【特許文献10】特許第3040992号公報
【特許文献11】特開2002−238497号公報
【特許文献12】特許第3416102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、コラーゲンペプチドに特有の臭気や風味がマスキングされた風味良好なコラーゲン含有ゼリー及びその製造方法、ならびに前記コラーゲン含有ゼリーを含むゼリー複合菓子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、酵母エキスには特にコラーゲンペプチドやゼラチンの独特の臭みや風味をマスキングする作用が強いことを見出し、さらに、植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノーの内一種類を併用することによってマスキング作用が向上することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) コラーゲンペプチド、
酵母エキス、
植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上、
乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又は乳酸菌で発酵させたコンニャク分解物、ならびに
ゲル化剤
を含有することを特徴とするゼリー(以下、コラーゲン含有ゼリーともいう)、
(2) 前記ゼリー中に含まれるコラーゲンペプチドに分子量2,700以下のコラーゲンペプチドが50%(w/w)以上含まれる前記(1)に記載のゼリー、
(3) 前記ゼリー中に含まれる寒天分解物及び/又はコンニャク分解物に6糖以下の分解物を80%(w/w)以上含有した乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物が含まれる前記(1)又は(2)に記載のゼリー、
(4) 前記(1)〜(3)いずれかに記載のゼリーを焼き菓子ではさみこむことを特徴とするゼリー複合菓子、
(5) 水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、
寒天及び/又はコンニャクを加水分解した後に乳酸菌によって発酵させた乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物を調製する工程、
ゲル化剤を溶解後に上記の二種の工程で調製されたコラーゲンペプチド溶液と、乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物とゲル化剤とを混合する工程、
を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載のゼリーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゼリー中に添加する前のコラーゲンペプチドに、酵母エキスだけでなく、植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を併用して添加することにより、コラーゲンペプチド由来の臭みを簡単にマスキングすることができる。しかも、酵母エキスと植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノールの使用量は微量でも十分な効果が奏されるため、ゼリー本来の風味を損なうことなくコラーゲン臭の改善を成し遂げることが可能となる。また、乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又はコンニャク分解物を添加することで、前記のマスキング効果を顕著に向上させることができ、また、乳酸菌及び寒天やコンニャクによる整腸作用も期待できる。
【0012】
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーは、コラーゲン独特の臭いが顕著にマスキングされているため、様々な風味を簡単に付与することも出来るので、バラエティーに富んだ風味をもつゼリーを作製することが可能となる。しかも、飲料とは異なり、焼き菓子との複合化によって、よりおいしくコラーゲンを食すことが可能になる。
【0013】
本発明により、コラーゲンペプチドの不快臭を減じることが出来、コラーゲンの苦手な人にとっても親しみやすい、様々な生理活性効果を有するコラーゲンペプチドを含有したゼリーを提供することが可能となる。本発明では、従来法では消臭効果が十分でなかった平均分子量(Mw)が2,700以下のコラーゲンペプチドでも優れた消臭を行うことができるため、マスキング効果としては、コラーゲンの由来(例えば、牛皮・牛骨・豚皮・鶏・魚類等)にも制限されない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーは、
コラーゲンペプチド、
酵母エキス、
植物由来カテキン、
タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上、
乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又は乳酸菌で発酵させたコンニャク分解物、ならびに
ゲル化剤
を含有することを特徴とする。
中でも、本発明では、コラーゲンペプチドに対して酵母エキスと、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上とを併用することにより、コラーゲンペプチド由来の臭いを顕著に減少させることができるという優れた効果が奏される。さらに、乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又はコンニャク分解物を併用することで、コラーゲンペプチド由来の臭いをより一層顕著に減少させることができ、また、整腸作用を向上するという効果も期待される。
【0015】
(コラーゲンペプチド)
本発明に用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素等で加水分解させることで得られる。現在コラーゲンは豚、牛、鶏、魚等多様な動物から抽出されたものを食品として用いている。何れのコラーゲンも特有のコラーゲン臭が存在することが明らかである。中でも、コラーゲンを酵素等で加水分解させたものを用いた場合には、分解物中に存在するコラーゲン、コラーゲンペプチド、及びゼラチンによる様々な生理活性効果が期待されるので好ましい。
【0016】
前記コラーゲンペプチドを作製する際に用いられる酵素としては、コラーゲンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィチン等のシステインプロテアーゼや、ペプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素群等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような加水分解は、水又は各種バッファー等の緩衝液中で行われることが好ましい。本発明では、前記の加水分解された水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥処理等で粉末化したものを用いてもよい。
【0017】
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリー中に含まれるコラーゲンペプチドとしては、分子量2,700以下のコラーゲンペプチドを50%以上含有していることが、本発明の主旨であるマスキング効果を十分に有効化させるという観点から、好ましい。コラーゲンの分子量に関する情報は、粘度測定やHPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。なお、ここで分子量とは重量平均分子量をいう。
【0018】
また、本発明では、原料コラーゲンやゼラチンの由来・処理方法の異なる各種のコラーゲンペプチドを当然のことながら使用できる。
【0019】
前記コラーゲンペプチドの配合量は、コラーゲンペプチド含有ゼリー中において3〜30重量%が好ましく、7〜20重量%がより好ましい。
【0020】
(酵母エキス)
前記酵母エキスとは、酵母を原料とした食品添加物であり、例えば、酵母由来の旨味成分(イノシン酸、グアニル酸)を多く含んだものや補足的に核酸あるいは乳酸菌等の他種類の菌主に由来する旨味物質を含有しても良い。酵母エキスが持つ旨味に関してはコラーゲンペプチド含有ゼリーの味調整においてあまり影響が無ければ、酵母の種類や特に酵母エキス中の旨味構成成分の組成の違いによる酵母エキスの種類は限定されない。近年、「乾燥酵母」という呼び名で呈味やマスキング作用を持つものも市販されているが、本発明で用いられる酵母エキスの中にはこのような乾燥酵母も含まれる。
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリー中に含有される酵母エキスの量としては、0.01〜1重量%であり、さらにマスキング効果に優れていながらコラーゲンペプチド含有ゼリーの風味が向上し、且つ酵母特有の風味を過剰に出現させないためには、0.1〜1重量%が好ましい。
【0021】
(植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノール)
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーにおいては、植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる一種類以上を必須成分としている。これらの成分はいずれも単独ではコラーゲン臭の低減効果はほとんどみられないが、前記酵母エキスと併用することで、優れたコラーゲン臭の低減効果が奏される。
【0022】
本発明では、前記のように植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールと酵母エキスとを併用することで優れたコラーゲン臭の低減効果が奏される。これらの作用メカニズムの詳細は不明であるが、植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールと、酵母エキス中に含まれる成分(例えば、旨み成分であるペプチドあるいはアミノ酸)と、コラーゲンペプチドとの間で複合体が形成されることで、コラーゲン臭を低減していると考えられる。
【0023】
また、前記複合体の状態について、植物由来カテキン及びタンニンと、ゆずポリフェノールとは別の作用メカニズムによることが考えられる。
例えば、タンパク質とタンニン(カテキンを含む)とが結合することに関しては渡辺らの研究(T. Watanabe, Y. Matuo, T. Mori, R. Sano, T. Tosa, I. Chibata, J. Solid−Phase Biochemistry, 3, 161(1978)、渡辺泰三,土佐哲也,坂田信行,布川弥太郎,推木 敏,三上重明,日本醸造協会雑誌,79, 193(1983))がある。
一方、ゆずポリフェノールは、タンパク質及び/又はペプチド間と結合することは技術的に知られておらず、ゆずポリフェノールに含まれるナリンジンの苦味成分が酵母エキスと共にコラーゲン臭の低減に作用していることが考えられる。
【0024】
本発明で用いられる植物由来カテキンとしては、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、化学式C15146で表されるフラボノイド及びその誘導体となるポリフェノールが挙げられる。カテキンは酸化による重合によってタンニンとなる成分である。
また、タンニンは、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。
カテキン、タンニンの原料となる植物としては、柿、茶、ゆず、イモ、ワイン、リンゴ、ブルーベリー、バナナ、栗皮、タマリンド、ミモザ、五倍子等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0025】
また、ゆずポリフェノールとは、「ゆず(柚子)」の植物体から熱水や含水エタノールにより抽出処理されて得られるポリフェノールをいう。抽出処理後には、必要に応じてろ過、精製、乾燥処理を施されてもよい。
【0026】
本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリー中における植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールの総量は0.1ppm〜100ppmであり、苦味の度合いや沈殿の頻度の観点から、0.5ppm〜10ppmが好ましい。
【0027】
(乳酸菌で発酵させた寒天分解物)
本発明で用いられる寒天分解物は、部分加水分解作用を有する酸及び/又は酵素水溶液中で寒天を膨潤・液化させることで得られる。
【0028】
前記寒天としては、オゴノリ(Gracilaria verrucosa)、オオオゴノリ(Gracilaria gigas)、マクサ(Gelidium amansii)、オバクサ(Pterocladia capillacea)、イタニグサ(Ahnfeltia plicata)等の紅藻類由来の素材が多く用いられるが、特に寒天原料の由来は限定されない。寒天の形態として、棒状・粉末・顆粒等の様々な種類が存在するが、本発明において特に限定されない。
また、加水分解時に用いられる酸としては、寒天を部分加水分解できるものであればよく、例えば、塩酸等の強酸、及び酢酸、クエン酸、フマル酸等の弱酸及びこれらの酸の混合物が挙げられるが、特に酸の種類については限定されない。また、酵素による加水分解を行ってもよく、その場合に用いられる酵素として、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アガラーゼ、ガラクトシダーゼ等の食品用の加水分解酵素を使用することが可能である。
【0029】
本発明において、寒天は酸処理あるいは酵素処理を行うが、必要であれば前述した方法を複合的に使用しても構わない。酸加水分解処理を行う際、例として述べると、予め0.5%〜20%の弱酸水溶液を作製しておき、その中に寒天を加える。さらに、80℃〜100℃まで加熱し、10分〜24時間前述した温度帯を維持する。寒天が分解しているかを確認するために溶液の一部を分取し、B型粘度計で測定した粘度(20rpm、30℃)が3.5Pa・s以下であることが好ましい。なお、分解前の寒天がこの粘度以下である場合には、サイズ排除クロマトグラフィーや各種分子量分画法を用いて確認しても良い。また、酵素処理を行う際、例として述べると、予め酵素に最適な緩衝液を作製しておき、寒天量に適した酵素を可溶化しておく。さらに最適温度に溶媒を保持し、寒天を溶解していく。食品用のアガラーゼを使用できれば、高濃度(40%〜70%)の寒天溶液を最終的に得ることも可能である。
【0030】
酵素部分分解のみを行った寒天は100℃まで加熱した後に冷却するか、加熱せずにそのまま乳酸発酵を行ってもよい。また、後述の乳酸発酵で用いる乳酸菌の生育条件を最適にするため、寒天水溶液のpHを5.5〜7.5に調整しておくのが好ましい。
以上のようにして得られる部分加水分解寒天は、部分加水分解処理した際に、pH4〜10、50℃の状態では完全にゲル化しておらず液状であること、及び1%の部分加水分解寒天溶液の粘度がB型粘度計で測定した場合(20rpm、30℃)に3.5Pa・s以下であるものが好ましい。
【0031】
本発明では、前記部分加水分解寒天に乳酸菌を加えて乳酸発酵させる。
前記乳酸菌としては、ガラクトースを資化することができ、かつアガロオリゴ糖及び寒天を資化することが実質的にできないという資化性を兼ね備えた種あるいは株であればよい。なお、糖の資化とは、菌体が必要な炭素源として前記糖を用いて生育できることをいう。また、資化することができない寒天としては、通常の前記紅藻類由来の素材から作製されたものであり、アガロースとアガロペクチンを含むものであればよく、部分加水分解等の低分子化処理を施されたものも含まれる。
【0032】
本発明では、このような特性を有する乳酸菌を用いることで、部分加水分解された寒天に含有される、悪玉菌等の資化要因となるガラクトースを低減させることができる。そのため、悪玉菌の増殖を抑えることで、部分加水分解寒天本来の整腸効果が改善される。また、前記分解物中には乳酸菌が含まれるため整腸効果をより一層向上することができる。しかも、部分加水分解寒天から除去するのに種々の煩雑な操作を必要としていたガラクトースを乳酸発酵に用いることで、より簡易に低減することができる。
したがって、本発明は、乳酸菌飲料に寒天類を入れたものや、寒天培地から乳酸菌を採取して乳酸発酵させて得られる乳酸菌飲料と比べて、整腸効果及び製造し易さの点で、優れた効果を発現する。
【0033】
本発明に使用される乳酸菌としては、以下のような菌が例示される。
エンテロコッカス(Enterococcus)属に属する菌: エンテロコッカス・マロドラタス (E. malodoratus)、フェシウム (E. faecium)、フェカーリス(E. faecalis)、デューランス(E. durans)、ラクトバチルス(Lactobacillus) 属に属する菌: ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、サリバリウス (L. salivarius)、ビフィダス (L. bifidus)、L.ブルガリカス (L. bulgaricus)、カゼイ(L. casei)、アシドフィルス (L. acidphilus)、ガセリ (L. gasseri)、ファーメンタム (L. fermentum)、ヘルベティカス (L. helveticus)、ユーグルティ (L. jugurti)、デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス (L. delbrueckii sub. bulgaricus)、デルブルッキー (L. delbrueckii)、ラムノーサス (L. rhamnosus)、ストレプトコッカス (Streptococcus)属に属する菌: ストレプトコッカス・サーモフィルス (S. thermophilus)、ボビス (S. bovis)、ミュータンス (S. mutans)、サンギス (S. sanguis)、クレモリス (S. cremoris)、ラクチス (S. lactis)、ラクトコッカス (Lactococcus)属に属する菌: ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus lactis sub. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス (Lactococcus lactis sub. cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス (Lactococcus lactis)、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する菌: ロイコノストック・メセンテロイデス (Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・デキストラニカム (Leuconostoc dextranicum)、ペジオコッカス(Pediococcus)属に属する菌: ペジオコッカス・ペントサセウス (Pediococcus pentosaceus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌:ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)。
本発明においては、これらの乳酸菌群から選択される1種又は2種以上の菌体を用いて発酵を行うことが可能である。
【0034】
本発明では、前記乳酸菌の乳酸発酵は、部分加水分解寒天中で乳酸菌を培養することで行うことができる。
前記乳酸発酵の条件(培養時の部分加水分解寒天のpH、培養温度等)は、乳酸菌の種類によって適宜調整すればよい。
中でも、寒天の効能をより向上させるという観点から、乳酸発酵時には、前記部分分解寒天を用いる以外は、乳酸菌の糖原となるような糖質を添加せずに発酵させることが好ましい。即ち、加水分解処理によって生じた寒天由来のガラクトースによって乳酸菌が十分に増殖可能となり、これにより本発明の効果が好適な乳酸発酵の状態となることが確認されている。また、乳酸菌によってはホモ発酵あるいはヘテロ発酵に分けられるが、細胞外多糖等の乳酸菌生成物や場合によっては二酸化炭素や乳酸や酢酸も含み、さらに乳酸菌体も腸内改善に役立つことから、特に乳酸菌の発酵方法又は代謝産物の違いによって乳酸菌の種類は限定されない。
【0035】
本発明ではガラクトースを資化させる乳酸発酵を行っているが、ヒトが栄養素として吸収してしまうガラクトースを減少させるという目的だけではなく、乳酸菌がガラクトースを資化することによって生じる細胞外多糖や乳酸及び乳酸菌体が持っている整腸作用にも注目している。従って、発酵せずに高濃度の乳酸菌を付加したとしても、効果的な面では本発明の方法はより優れた方法である。
【0036】
なお、一般的な乳酸菌は、特殊な糖原を加えた場合を除き、部分加水分解寒天以外の他の糖原を添加して乳酸発酵させたからといって、乳酸菌がヒトにとって特別に有益な物質を生成してくれることや増殖が著しく促進することは考え難い。しかも、他の糖原を添加することで、添加した糖原の量だけ寒天由来の単糖類が残存してしまう可能性がある。したがって、本発明では、寒天を高度利用する観点から、部分加水分解寒天以外の糖原を添加せずに乳酸発酵を行うことが好ましい。但し、糖原の添加は本発明を制限するものではなく、寒天を加水分解した際、及び乳酸発酵させた際に、寒天の機能性を損なわなければ、他の糖類を併用してもよい。糖類としては、例えば、還元したものも含めて澱粉、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリンが挙げられる。なお、これらの糖類は前記分解物中の乳酸菌が生菌である場合、該乳酸菌が資化できないものを選べばよく、また、前記乳酸菌が死菌である場合、糖類は特に限定されない。
【0037】
また、前記乳酸発酵の終了は、菌体濃度、pH、ガラクトース量の条件により、確認することができる。乳酸発酵の終了を確認後、得られた発酵組成物を60℃以上で加熱処理することによって発酵を停止させることが好ましい。この発酵組成物を、乳酸発酵させた寒天分解物乳酸発酵寒天分解物)として使用する。
【0038】
中でも、乳酸発酵させた寒天分解物(としては、ヒトの整腸効果を促進させる観点から、寒天分解物に6糖以下の分解物を80%(w/w)以上含有しているものが好ましい。なお、6糖以下の成分の含有量は分子量分布分析法等によって測定することができる。
【0039】
また、前記のようにして得られた乳酸発酵させた寒天分解物の量としては、本発明のゼリー中において0.001〜10重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
【0040】
(乳酸菌で発酵させたコンニャク分解物)
本発明で用いるコンニャク分解物は、コンニャクマンナンを、部分加水分解作用を有する酵素水溶液中で膨潤・液化させることで得られる。
前記コンニャクマンナンとしては、あらかじめ80%(v/v)以上のエタノールで脱色・脱臭し乾燥するか、あるいはエタノール洗浄・乾燥しない市販のコンニャク粉を使用する。
また、酵素水溶液に用いる酵素としては、コンニャクマンナンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、セルラーゼ、へミセルラーゼ、ペクチナーゼ、及びこれらの酵素を混合する粗酵素等が挙げられるが、特に限定はない。また、水溶液の媒体としては、水又は酢酸バッファー等の緩衝液が用いられる。
【0041】
本発明において、前記コンニャク粉は、前記酵素水溶液と混合する前に、水又は温水に漬けて混合攪拌して、糊状とする必要はない。即ち、アスペルギルス属あるいはトリコデルマ属等の粗酵素か、あるいはその他のセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等の多糖分解酵素を10mM〜1Mクエン酸あるいは酢酸バッファー水溶液(pH4.0〜6.0;35〜60℃)中に溶解しておき、この酵素水溶液に徐々にコンニャク粉を加えていく。このとき、コンニャク粉は最大50〜70%(w/v)まで可溶であるが、溶液中での酵素反応が好適となるような粘度に調整する観点から、40%(w/v)以下となるようにするのが好ましい。ここで、コンニャク粉を徐々に加えることにより、マンナン糊を形成するよりも遥かに速やかにコンニャクマンナンが直接膨潤・液化される。この時、分割投入量、投入間隔時間、攪拌速度・攪拌方法、攪拌温度を厳密に規定することによって、コンニャクマンナンの分子量分布等の諸条件を固定し、再現性可能になる。
なお、酵素反応前に、予め、コンニャク粉を0.5%以上の濃度で温水中に溶解すると、酵素の最適温度である50℃前後の温度帯にした場合にゲル化してしまい、引き続き酵素処理をするときには酵素液の拡散や酵素反応を阻害する(固体なので酵素反応が低下する)要因となるため、好ましくない。
【0042】
また、全てのコンニャク粉を投入してから5分〜1時間経過した後に100℃まで加熱してからその後冷却するか、加熱せずにそのまま乳酸発酵を行ってもよい。また、後述の乳酸発酵で用いる乳酸菌の生育条件を最適にするため、コンニャク混合液のpHを4.5〜5.5以上に調整しておくのが好ましい。
以上のようにして得られる部分加水分解コンニャクマンナンは、前記のような部分加水分解処理した際に、pH4〜10、50℃の状態では完全にゲル化しておらず液状であること、及び1%の部分加水分解コンニャク溶液の粘度がB型粘度計で測定した場合(20rpm、50℃)に3.5Pa・s以下であるものが好ましい。
【0043】
本発明では、前記部分加水分解コンニャクマンナンに乳酸菌を加えて乳酸発酵させる。
前記乳酸菌としては、グルコース、マンノース及びセロビオースを資化することができ、かつマンノオリゴ糖、コンニャクマンナンを資化することが実質的にできないという資化性を兼ね備えた種あるいは株であればよい。なお、糖の資化とは、菌体が必要な炭素源として前記糖を用いて生育できることをいう。
【0044】
前記乳酸菌としては、前記寒天の発酵に使用される菌が例示される。中でも、本発明において、前記乳酸菌としては、前記のような糖資化性を備えていていれば、ビフィドバクテリウム属の乳酸菌も使用できる。また、コンニャクマンナンが本来持つ異臭の改善効果が大きい観点から、アシドフィルス菌のように酸味を生産する乳酸菌を使用することが好ましい。
【0045】
前記乳酸菌の乳酸発酵は、部分加水分解コンニャクマンナン中で乳酸菌を培養することで行うことができる。
前記乳酸発酵の条件(培養時の部分加水分解コンニャクマンナンのpH、培養温度等)は、乳酸菌の種類によって適宜調整すればよい。
中でも、コンニャクマンナンの効能をより向上させるという観点から、乳酸発酵時には、前記コンニャクマンナンを用いる以外は、乳酸菌の糖原となるような糖質を添加せずに発酵させることが本発明の大きな特徴のひとつである。即ち、加水分解処理によって生じたコンニャクマンナン由来の一部の糖質(単糖及び二糖)によって乳酸菌が十分に増殖可能となり、これにより本発明の効果が奏される好適な乳酸発酵の状態となることが確認されている。また、乳酸菌によってはホモ発酵あるいはヘテロ発酵に分けられるが、細胞外多糖等の乳酸菌生成物や場合によっては二酸化炭素や乳酸や酢酸も含み、さらに乳酸菌体も腸内改善に役立つことから、特に発酵代謝方法についての違いによって乳酸菌の種類は限定されない。
なお、一般的な乳酸菌は、特殊な糖原を加えた場合を除き、部分加水分解コンニャクマンナン以外の他の糖原を添加して乳酸発酵させた場合、乳酸菌がヒトにとって有益な物質を精製してくれることや増殖が著しく促進することは考え難い。しかも、他の糖原を添加することで、この添加した糖原の量だけコンニャクマンナン由来の単糖類や二糖類が残存してしまう。したがって、本発明では、コンニャクマンナンを高度利用する観点から、部分加水分解コンニャクマンナン以外の糖原を添加せずに乳酸発酵を行う。
【0046】
また、前記乳酸発酵の終了は、菌体濃度、pH、グルコース量等により、確認することができる。乳酸発酵の終了を確認後、得られた発酵組成物を加熱処理することによって酵素反応を停止させることが好ましい。この発酵組成物を、乳酸発酵させたコンニャク分解物(乳酸発酵コンニャク分解物)として使用する。
【0047】
中でも、乳酸発酵させたコンニャク分解物としては、ヒトの整腸効果を促進させる観点から、コンニャク分解物のうち6糖以下の分解物を80%(w/w)以上含有しているものが好ましい。
【0048】
また、前記乳酸発酵させたコンニャクマンナン分解物の量としては、本発明のゼリー中に0.001〜10重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
【0049】
なお、本発明では、前記寒天分解物又はコンニャク分解物の発酵組成物中において、乳酸菌は生菌であればよいが、死菌でもよい。これは、先にも述べているように死んだ乳酸菌の細胞は腸内に存在する有害物質を吸着し、体外に排泄する働きを持っており、即ち食物繊維が腸管内を掃除するのと同じ効果を期待できるからである。また、乳酸菌の摂取量としては、前記発酵組成物中において1x106〜1x1012個/mLが好ましい。
【0050】
(ゲル化剤)
本発明に用いられるゲル化剤としては、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸等が挙げられる。
前記ゲル化剤の配合量は、コラーゲンペプチド含有ゼリー中において0.5〜3.0重量%が好ましく、0.8〜1.5重量%がより好ましい。
【0051】
(糖類及び/又は果汁・酸味料)
また、本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーには、所望の味を付与する観点から、糖類及び/又は果汁・酸味料等を含有することができる。
【0052】
使用可能な糖類としては、特に限定は無い。例えば、ぶどう糖や果糖等の単糖類、ショ糖及び乳糖のような二糖類からラフィノースやスタキオースのような少糖類、トレハロースのようにブドウ糖が還元末端同士で結合したもの、糖アルコール(マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖等)、タガトース等のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、水飴や液糖等の混合糖も使用できる。
【0053】
(その他成分)
また、本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーには、必要に応じて、その風味に悪影響を及ぼさない程度に、下記の任意成分を添加することができる。
【0054】
また、酸味料、香料、着色料等を用いることに関しても特に制限されない。
【0055】
また、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、ネオテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等が用いられる。
【0056】
(製造方法)
前記の構成を有する本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーは、
水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、
寒天及び/又はコンニャクを加水分解した後に乳酸菌によって発酵させた乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物を調製する工程、
ゲル化剤を溶解後に上記の二種の工程で調製されたコラーゲンペプチド溶液と、乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物とゲル化剤とを混合する工程
を経ることで製造することができる。
【0057】
前記製造方法は、コラーゲンペプチド溶液の調製工程において、水又は緩衝液へのコラーゲンペプチドと酵母エキスと添加した後にタンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれた1種以上を添加する点に一つの特徴がある。かかる添加順序を採用することで、風味を損なうことなくコラーゲン臭が低減したゼリーを効率よく得ることができる。
ここで、コラーゲンペプチドと酵母エキスの添加順序については、別々に添加しても、同時に添加してもよく、特に限定はない。また、コラーゲンペプチドと酵母エキスとは水又は緩衝液中に溶解した後、植物由来カテキン、タンニン又はゆずポリフェノールを添加することが好ましい。
【0058】
水又は緩衝液中のコラーゲンペプチドの量としては、10〜60重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましい。
【0059】
コラーゲンペプチドとして、前記のようにコラーゲンを加水分解処理したものを使用する場合には、加水分解処理を水又は緩衝液中で行い、得られた加水分解液をそのまま使用してもよい。
ゼラチンの加水分解には、前記酵素を用いればよく、分解処理の程度としては、得られるゼラチン分解物中におけるコラーゲンペプチドに、分子量2,700以下のコラーゲンペプチドが50%以上含まれるまで行えばよい。また、分解処理条件としては、使用する酵素の最適な条件を選択すればよい。
【0060】
乳酸発酵寒天分解物及び乳酸発酵コンニャク分解物は、前記のように調製することができる。
【0061】
また、ゼリー中への酵母エキス及び植物由来カテキン、タンニン及びポリフェノール、寒天及びコンニャクの加水分解した乳酸発酵物、ならびにゲル化剤の量としては、最終的に各成分について前記したような含有量となるように調整すればよい。
【0062】
また、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階で混合すればよい。
【0063】
また、ゲル化剤の溶解に使用する水の量や温度条件については、常法に基づいて適宜決定すればよい。
【0064】
前記のようにして得られるコラーゲンペプチド溶液と、乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物と、ゲル化剤との混合は、ゲル化剤を含む溶解物が固まらない温度条件で行えばよく、混合順序や手段については特に限定はない。
なお、溶液状態の混合物は、所望の形状の容器に流しこんだ後、冷却することでゼリーとして固めることができる。
【0065】
前記のようにして得られたゼリーは、公知の手段により所望の形になるように加工してもよい。
【0066】
以上のようにして本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーを製造することができる。ただし、上記の製造方法は一例であり、本発明のコラーゲンペプチド含有ゼリーの製造方法を限定するものではない。
【0067】
(ゼリー複合菓子)
本発明は、前記コラーゲンペプチド含有ゼリーを焼き菓子ではさみこむことを特徴とするゼリー複合菓子に関する。
前記焼き菓子としては、マカロン、クッキー、マフィン、ビスケット、ケーキ、パイ等が挙げられる。
前記コラーゲンペプチド含有ゼリーを焼き菓子ではさみこむことでゼリー複合菓子を得ることができる。はさみこむ手段としては、コラーゲンペプチド含有ゼリーをはさんだ焼き菓子を適当な力で押圧すればよく、コラーゲンペプチド含有ゼリーと焼き菓子との接着性を高めるために、でん粉、砂糖、酵素(例えばトランスグルタミナーゼ)等をコラーゲンペプチド含有ゼリー又は焼き菓子の接着面に塗布してもよい。
得られるゼリー複合菓子は、焼き菓子の香ばしさとゼリーのフルーティーな香りを兼ね備え、かつ食感差が味わえるという風味を有するものである。
【実施例】
【0068】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例の記載中、特に断らない限り、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を表す。
【0069】
(比較例1〜4)
あらかじめ分子量分布を測定した際に50%以上が分子量2,700以下である豚由来コラーゲンペプチド(SCP−3100;新田ゼラチン社製)を使用した。10mM以下のクエン酸バッファー溶液(クエン酸は酸味料に含まれる)にコラーゲンペプチド(分子量2,700以下のコラーゲンペプチド含有量65%)を溶解し、その後、酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加した。最終的にゼリー中にコラーゲンペプチド水溶液及び香料・酸味料・水飴・果汁を添加してゼリーを作製した。なおゼリーの組成を表1に示す。また、酵母エキスの量としてはゼリー中に、「0.001%」(比較例1)、「0.01%」(比較例2)、「0.1%」(比較例3)、「1.0%」(比較例4)となるように添加した。
【0070】
【表1】

【0071】
比較例1〜4で得られたコラーゲンペプチド含有ゼリーを用いたコラーゲン臭のマスキング評価を、試食後にパネラー15名により、下記官能評価基準により評価した。その結果を表2において示す。
【0072】
<官能評価基準>
ゼリーの風味に対する評価基準
評点:内容
A:ゼリーとして良好な味である。
B:ゼリーとしては良好であるが、コラーゲン臭が微かに感じられる。
C:ゼリーとして普通に味わえるが、コラーゲン臭が感じられる。
D:ゼリー中にコラーゲン臭を強く感じるが、食べることが出来る。
E:ゼリーの味よりもコラーゲン臭が強く、不味い。
【0073】
コラーゲン臭に関する評価基準
評点:内容
A:コラーゲン臭がほとんど感じられない。
B:コラーゲン臭が若干感じられる。
C:コラーゲン臭が感じられる。
D:コラーゲン臭がかなり感じられる。
E:コラーゲン臭及びそれ以外の不快臭がかなり感じられる。
【0074】
【表2】

【0075】
表2の結果から、ゼリー中に酵母エキスを付加することによってマスキング効果が認められたが、1.0%以上の酵母エキスを添加してしまうとマスキング効果は顕著であるが、ゼリーの風味が損なってしまう。従って、C評価以上をマスキング効果のボーダーラインとすると0.01%〜1.0%の酵母エキスの添加量が、コラーゲンペプチドのマスキングに適していることを示唆している。しかし、ゼリーの風味の評価としては最高でもB評価であるため、さらなるマスキング効果を追求することが重要であることも明らかである。
【0076】
(乳酸発酵寒天分解物の製造方法)
あらかじめ塩酸溶液(0.5% 塩化水素)を85℃から95℃までの温度帯で恒温にした。攪拌しながら3%溶液になるように粉末寒天(伊奈寒天(株);S−6)を前記塩酸溶液に加えた。全て加えた後に1時間恒温で攪拌しながら放置した。1時間後、寒天水溶液が液化していることを確認した後に温度を50℃以下に下げた。さらにクエン酸ナトリウムを加えてpH7.0に中和した。その後、乳酸菌Lactobacillus acidophilusを1x108個/mlの濃度になるように添加し、38℃で8時間静置培養した。培養完了後に85℃で15分間の加熱によって酵素反応を停止させた。最終的に乳酸菌の密度は5x108〜5x1010個/mlになった。以後このようにして得られた組成物を乳酸発酵寒天分解物と呼ぶ。6糖以下の成分の含有量は、陽イオン交換カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)によって測定したところ、95%(w/w)であった。
【0077】
〔実施例1〕
比較例1〜4と同様に、10mM以下のクエン酸バッファー溶液に豚由来コラーゲンペプチドを溶解し、その後、酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加してから完全に溶解した。さらに、茶カテキンを前記コラーゲンペプチド溶液に添加した(組成を表3に示す)。このコラーゲンペプチド溶液に前記乳酸発酵寒天分解物を添加し、ゲル化剤としてカラギーナンの水溶液を添加し、さらに香料・クエン酸(酸味料)、水飴、果汁を添加し、冷却してコラーゲンペプチド含有ゼリーを作製した。コラーゲンペプチド含有ゼリーの組成を表3に示す。また、酵母エキスの含有量も比較例1〜4と同様に4段階に調整した。
【0078】
【表3】

【0079】
次いで、酵母エキスの添加量を変化させた各コラーゲンペプチド含有ゼリーの官能評価を行った。その結果を表4に示す。官能評価基準は前述の評価基準に従い、本発明では、コラーゲンペプチド含有ゼリーの風味及びコラーゲン臭の評価がいずれも「A」であるか、「A」及び「B」であるものを合格品とした。
【0080】
【表4】

【0081】
表2、4の結果から、コラーゲンペプチド含有ゼリー中に酵母エキスと茶カテキンと乳酸発酵寒天分解物とを併用することによって、酵母エキス単独の場合に比べて、顕著なマスキング効果が認められた。特に、表2の結果と比較すると、マスキングの評価がおよそ一段階向上しており、茶カテキンだけではマスキング作用はあまり効果的でないことから、酵母エキスと茶カテキンと乳酸発酵寒天分解物との相乗効果によってマスキング作用が向上していることが明らかになった。また、ゼリーの風味についても、実施例1では、比較例1のものに比べて、前記のようなマスキング作用により、一段階向上していることがわかる。
【0082】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、10mM以下のクエン酸バッファー溶液にコラーゲンペプチドを溶解し、その後、0.1%の酵母エキス(SK酵母エキスHU;日本製紙ケミカル社製)を添加してから完全に溶解した。さらに、茶カテキン、ゆずポリフェノール、ブドウ種子抽出物(タンニン含有)をそれぞれ0.01〜100ppmの濃度になるように前記コラーゲンペプチド溶液に添加した。このコラーゲンペプチド溶液を用いて、実施例1と同様にしてコラーゲンペプチド含有ゼリーを作製した。
得られたコラーゲンペプチド含有ゼリーについて、コラーゲン臭に対するマスキング効果及びゼリーの風味を実施例1と同様に調べた。その結果を表5〜7に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
表5〜7の結果より、カテキンやタンニンあるいはゆずポリフェノールの何れを添加した場合でも、0.1〜100ppmの範囲であれば、コラーゲンペプチド含有ゼリーの風味とコラーゲン臭のマスキングの評価のいずれか又は両方が「A」を含むものとなり、その結果、顕著なマスキング効果が奏されていることがわかる。
【0087】
(乳酸発酵コンニャク分解物の製造方法)
あらかじめアスペルギルス・ニガー由来の粗酵素であるヘミセルラーゼ「アマノ90」(天野エンザイム社製)0.6gを10mMクエン酸バッファー溶液(pH4.5)1L中に溶解した。酵素溶解後に40℃から50℃までの温度帯で恒温にした。その後、コンニャク粉100gを三等分(40g・30g・30g)にして8分おきに攪拌しながら前記酵素水溶液に加えた。全て加えた後に1時間恒温で攪拌しながら放置した。1時間後、コンニャク粉(コンニャクマンナン)が膨潤・液化していることを確認した後に温度を38℃に下げた。さらにクエン酸ナトリウムを加えてpH6.5に引き上げた。その後、乳酸菌Lactobacillus acidophilusを1x108個/mlの濃度になるように添加し、38℃で8時間静置培養した。培養完了後に85℃で15分間の加熱によって酵素反応を停止させた。最終的に乳酸菌の密度は5x108〜5x1010個/mlになった。以後このようにして得られた組成物を乳酸発酵コンニャク分解物と呼ぶ。6糖以下の成分の含有量は、陽イオン交換カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)によって測定したところ、85%(w/w)であった。
【0088】
〔実施例3〕
前記乳酸発酵コンニャク分解物を用いて、コラーゲンペプチド及び発酵コンニャクを含有するゼリーを実施例1と同じように作製した。その組成を表8で示す。実施例1との違いは乳酸菌で発酵させた寒天分解物ではなく、その代わりに乳酸発酵コンニャク分解物を使用していることである。
実施例3で得られたコラーゲンペプチド含有ゼリーの官能評価したところ、ゼリーの風味及びコラーゲン臭の評価がいずれも「A」であった。
【0089】
【表8】

【0090】
実施例1、2で製造したコラーゲンペプチド含有ゼリーはマカロン等の焼き菓子全般で、はさみこんでも良い。例えば、マカロンとしては、卵白、グラニュー糖、水を攪拌・混合してメレンゲを作り、該メレンゲに粉砂糖、アーモンドパウダー、ココアパウダーを併せて混ぜ合わせ、さらに、混合物を規定サイズに絞り、200℃、10分間焼成することで得られたものを用いた(マカロンの組成は表9に示す)。さらにゼリー及びマカロンを約100x20cmにカットし、マカロンの間に同サイズのゼリーを挟み込むことによってゼリー複合菓子を作製した。
【0091】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のように予めコラーゲンペプチドに酵母エキスを添加し、続いて植物由来カテキン、タンニン、ゆずポリフェノールの内1種類以上、乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又はコンニャク分解物を添加することによるマスキング処理を行うことによってコラーゲン臭がほとんどなく、特有な不快な臭いが低減されているとともに、風味に優れたコラーゲンペプチド含有ゼリーを開発することが可能となった。本発明により、コラーゲン臭の嫌いな人々にも美味しく感じられるコラーゲンペプチドを配合したゼリーを提供することができるようになる。さらに、焼き菓子等にもゼリーを組み合わせることも可能であり、ゼリーをその他の菓子と複合化させてコラーゲン臭をより感じさせずにコラーゲンを摂取することが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンペプチド、
酵母エキス、
植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上、
乳酸菌で発酵させた寒天分解物及び/又は乳酸菌で発酵させたコンニャク分解物、ならびに
ゲル化剤
を含有することを特徴とするゼリー。
【請求項2】
前記ゼリー中に含まれるコラーゲンペプチドに分子量2,700以下のコラーゲンペプチドが50%(w/w)以上含まれる請求項1に記載のゼリー。
【請求項3】
前記ゼリー中に含まれる寒天分解物及び/又はコンニャク分解物に6糖以下の分解物を80%(w/w)以上含有した乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物が含まれる請求項1又は2に記載のゼリー。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のゼリーを焼き菓子ではさみこむことを特徴とするゼリー複合菓子。
【請求項5】
水又は緩衝液にコラーゲンペプチド及び酵母エキスを添加し、その後植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を添加してコラーゲンペプチド溶液を調製する工程、
寒天及び/又はコンニャクを加水分解した後に乳酸菌によって発酵させた乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物を調製する工程、
ゲル化剤を溶解後に上記の二種の工程で調製されたコラーゲンペプチド溶液と、乳酸発酵寒天分解物及び/又は乳酸発酵コンニャク分解物とゲル化剤とを混合する工程、
を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のゼリーの製造方法。

【公開番号】特開2011−30486(P2011−30486A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179080(P2009−179080)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】