説明

コラーゲン入り豆腐

【課題】従来の豆腐に較べてにがりによる風味の低減を抑え、しかも型くずれの生じない
豆腐を得ることができ、食感がまろやかで、舌触りの滑らかさに加えて、コラーゲンによ
り栄養価が高くなるというきわめて相乗効果の高い豆腐を実現する。
【解決手段】糖度がBrix12%以上の豆乳に、コラーゲン入り豆腐3の全体量に対して、にがりを0.03重量%以下、寒天を1.5重量%以下、及びコラーゲンをコラーゲン入り豆腐の最終製品濃度1000mg/100g〜5000mg/100gを加えて固めてコラーゲン入り豆腐3を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、豆腐食品に関し、特に、豆乳の凝固のために使用するにがりの量を少なくして、寒天などの増粘多糖類とコラーゲンを添加したコラーゲン入り豆腐に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐は、日本の伝統的な食品であり、しかも健康食品として注目されているが、一方で
はその味がある程度決まっており多様性がないということで、その消費量も限界がある。
そこで、栄養成分を加えたり、嗜好性の食感、食味を多様化する等のいろいろな工夫がな
された豆腐の開発が行われている。
【0003】
例えば、表面が加熱硬化した豆腐類素材がさらに飴膜に被包されてなる豆腐類食品が提
案されている(特許文献1参照)。又、常法により調整した豆乳に真珠の粉末を調整した
ものを混合することにより、カルシウム成分を良好に摂取することのできる健康に好まし
い豆腐なども提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平4−20227号公報
【特許文献2】特開2003−189814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように豆腐について、栄養成分を加えたり、嗜好性の食感、食味を多様化する等
いろいろな工夫がなされているが、いずれにしろ、豆腐の固有の問題として、大豆由来の
豆乳に、にがりを加えて凝固させるので、にがりに起因する風味がどうしても残り、また
、なめらかさが不足する等、食感上の問題もある。
【0005】
そこで、にがりに起因する風味を抑えるために、豆乳の凝固に使用するにがりの量を低
減化すると、豆腐の型くずれという問題が生じてしまう。
【0006】
この発明は、上記従来の豆腐に固有の基本的な問題を解決することを目的とするものであり、その具体的な課題は、豆腐固有のにがりに起因する風味をより少なくし、型くずれの生じない、しかも、まろやかで、舌触りがなめらかで、栄養価の高い豆腐を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を解決するために、豆乳の凝固に使用するにがりの量を低減化し、凝固力を補うために前記豆乳に増粘多糖類とコラーゲンを加えて成るものであることを特徴とするコラーゲン入り豆腐としたのである。
【0008】
前記増粘多糖類としては、寒天、アルギン酸ナトリウム、ウェランガム、ペクチン、グ
アガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン、ジェラ
ンガム、及びカラギナンからなる群より選ばれた1又は2以上のものが使用されるが、こ
れらに限定されるものではない。
【0009】
さらに、この発明は上記課題を解決するために、豆乳に、コラーゲン入り豆腐の全体量に対して、にがりを0.03重量%以下、寒天を1.5重量%以下、及びコラーゲンをコラーゲン入り豆腐の最終製品濃度1000mg/100g〜5000mg/100gを加えて固めて成るものであることを特徴とするコラーゲン入り豆腐としたのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、従来の豆腐に較べてにがりによる風味の低減を抑えることができ、しかも型くずれの生じない豆腐を得ることができる。
【0011】
さらに、この発明によれば、にがりを少なくし、凝固力を補うために寒天などの増粘多糖類を加えるとともに、コラーゲンを加えたので、寒天の粒状の固まりを防止することができ、寒天によるまろやかさ、舌触りの滑らかさに加えて、コラーゲンにより栄養価が高くなるというきわめて相乗効果の高い豆腐を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係るコラーゲン入り豆腐を実施するための最良の形態及びその実施例を以下に説明する。
【0013】
上記のとおり、従来、豆腐の嗜好的な風味を増し、又栄養価を高めるために、いろいろ
な添加物を加えることが行われている。しかし、基本的には、豆腐につきもののにがりに
起因する風味は消失しない。
【0014】
そこで、豆腐のにがりによる風味をより少なくするためには、豆乳の凝固に使用するに
がりの量を少なくすることが考えられる。しかし、にがりの量を少なくすると、凝固力が
低減し、豆腐の型くずれが生じるという問題が生じる。
【0015】
このような問題を解決するために、本発明者は、豆乳に加えるにがりの量を少なくして寒天の粉末を加えて混合し凝固させてみた。このようにして得られた寒天入り豆腐を図1(a)に示す。この寒天のみ加えられた豆腐1は、若干、凝固の効果があるが、寒天自体が、図1(a)に示すように粒状の固まり2として固まってしまい、豆腐としての食感、舌触り、風味などが低下するという問題が生じる。
【0016】
本発明者は、にがりの風味を抑えるために、にがりの量を少なくし、寒天を使用して凝
固力を補強することで型くずれをなくし、しかも寒天が粒状に固まることがない食感にす
ぐれた豆腐の開発に鋭意取り組んできたところ、次のような画期的な知見を得た。
【0017】
即ち、豆乳に加えるにがりの量を少なくし、その代わりに豆乳に寒天を混合しても、寒天が粒状に固まってしまうが、寒天とともにコラーゲンを加えると、このような粒状の固まりの発生を抑えることができ、豆乳が豆腐として凝固して、型くずれが生じることがなくなるという知見を得た。
【0018】
要するに、豆乳の凝固力を補強するために、寒天とともにコラーゲンが添加されている
という知見であり、この知見は、従来、開発されている豆腐食品のいずれにも見当たらな
い、きわめてユニークかつ新規な点である。
【0019】
なお、ここでの「発明を実施するための最良の形態」としては、寒天とともにコラーゲ
ンが添加されて成る豆腐を説明するが、寒天については、寒天に限らず、増粘多糖類であ
れば良く、たとえば、寒天以外の増粘多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、ウェラン
ガム、カンキツ類やリンゴなどに由来するペクチン、マメ科の植物の実から抽出したグア
ガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、微生物が生成するキサンタンガム、カー
ドラン、ジェランガム、寒天同様に海草由来のカラギナンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら寒天以外の増粘多糖類でも、豆乳にコラーゲンとともに加えると同様の効果が生じる。
【0020】
そして、豆乳にコラーゲンとともに加える場合は、寒天、アルギン酸ナトリウム、ウェ
ランガム、ペクチン、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガ
ム、カードラン、ジェランガム、及びカラギナンからなる群より選ばれた1つでもよいが
、2以上を組み合わせて加えてもよい。
【0021】
この発明に係るコラーゲン入り豆腐は、このような知見に基づいて想到したものであり、豆乳の凝固に使用するにがりの量を少なくし、これにより低下する凝固力を補うために、寒天を使用し、さらに、寒天のみでは粒状の固まりが出来るため、これを無くすために、更に、一定濃度以上(一製品当たり、1000mg/100g〜5000mg/100g)のコラーゲンを、豆乳に混ぜて凝固させたものである。
【0022】
このようにすることで、この発明に係るコラーゲン入り豆腐3は、図1(b)に示すように、寒天が豆腐内において粒状に固まることなく、全体に均一の濃度で分散して溶け、さらに、コラーゲンが含まれる構成となる。
【0023】
この結果、豆腐につきもののにがりの風味をより少なくすることができるだけでなく、
食感がまろやかで、舌触りの滑らかな豆腐となり、大豆タンパク質やイソフラボンなどの
大豆由来成分とともに、コラーゲンを同時に摂取することも可能となり、きわめて栄養価
の高い豆腐食品を実現することが可能となった。
【実施例】
【0024】
この発明に係るコラーゲン入り豆腐の実施例を説明する。この発明に係るコラーゲン入り豆腐は、次のようにして製造される。大豆より豆乳を作り、この豆乳(糖度:Brix12%以上)に、従来の豆腐より少ないにがり(最終製品全体量に対して0.03重量%以下)を加え、そして、寒天粉末(最終製品全体量に対して1.5重量%以下)とコラーゲン(最終製品濃度2000mg/100g)を加えて固めた。
【0025】
(官能試験)
この発明の上記実施例に係るコラーゲン入り豆腐の効果を実証するために、このコラーゲン入り豆腐と、次の比較例1及び比較例2とを対比して官能試験を行った。以下、この官能試験について説明する。
【0026】
比較例1:
実施例1では、従来の豆腐より少ないにがり、寒天及びコラーゲンからなるが、比較例
1の豆腐は、従来の豆腐より少ないにがり、寒天及びコラーゲンからなるものではなく、
実施例1と同じ豆乳に従来量のにがり(最終製品全体量に対して0.3重量%以下)を加
えたものであり、その製造方法は実施例1と全く同様である。
【0027】
比較例2:
比較例2の豆腐は、寒天を添加しない以外は、その組成及び製造方法も実施例1と全く同じ豆腐である。要するに、比較例2の豆腐は、実施例1と同じ豆乳に、従来の豆腐より少ないにがり(最終製品全体量に対して0.03重量%以下)を加え、そして、コラーゲン(最終製品濃度2000mg/100g)を加えて固めたものである。
【0028】
官能試験では、評価者10人が、それぞれ実施例1、比較例1及び比較例2の豆腐商品
を食して、「まろやかさ」(官能試験A)と「なめらかさ」(官能試験B)の観点から官
能検査を行い、各商品に対する評点の平均点で総合評価(官能試験C)した。評価点は、
10点が最高に好ましい評価である。下記の表1は、官能試験結果を示すものである。
【0029】
【表1】

【0030】
この官能試験の評価結果によると、実施例1については、総合評価において、全員が、
満点の10点の評価を与えたが、比較例1では、4点、比較例2では、8点と低い点数と
なった。これにより、実施例1のコラーゲン入りの豆腐の食感は、従来の豆腐や単に寒天
を加えたものに較べてすぐれていることが実証できた。
【0031】
以上、本発明に係るコラーゲン入り豆腐を実施するための最良の形態を実施例に基づい
て説明したが、この発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上の構成である本発明に係るコラーゲン入り豆腐は、豆腐固有のにがりによる風味の
低減をより少なくし、型くずれの生じない、しかも、まろやかで、舌触りの滑らかで、栄
養価の高い豆腐であるから、通常の食事において食する豆腐としての利用はもちろんのこ
と、特に、成人のための健康食品として、また食しやすく栄養価が高いので、高齢者や幼
児用の豆腐食品として、適している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は豆乳に寒天のみを添加した場合に寒天が粒状に固まってしまった豆腐を説明する図であり、(b)はこの発明のコラーゲン入り豆腐を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 寒天のみ加えられた豆腐
2 寒天の粒状の固まり
3 コラーゲン入り豆腐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳の凝固に使用するにがりの量を低減化し、凝固力を補うために前記豆乳に増粘多糖
類とコラーゲンを加えて成るものであることを特徴とするコラーゲン入り豆腐。
【請求項2】
前記増粘多糖類は、寒天、アルギン酸ナトリウム、ウェランガム、ペクチン、グアガム
、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、及びカラギナンからなる群より選ばれた1又は2以上であることを特徴とする請求項1に記載のコラーゲン入り豆腐。
【請求項3】
豆乳に、コラーゲン入り豆腐の全体量に対して、にがりを0.03重量%以下、寒天を
1.5重量%以下、及びコラーゲンをコラーゲン入り豆腐の最終製品濃度1000mg/
100g〜5000mg/100gを加えて固めて成るものであることを特徴とするコラ
ーゲン入り豆腐。

【図1】
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【公開番号】特開2006−217802(P2006−217802A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29536(P2005−29536)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】