説明

コリオリ質量流量計

【課題】微小流量の流体の計測を対象にしたコリオリ質量流量計を軽量且つ小型化する。
【解決手段】加振器12、第1、第2の検出器22A、22Bを支持するサブフレーム108は外周壁108bと切欠き108cと内周壁108dを有している。切欠き108cの部分には、メインフレーム106に支持された回路基板112が位置決めされている。回路基板112はメインフレームを106を貫通する基板ケース110に収容され、一対の振動チューブ2の給排部分に隣接した回路基板112の部分に液晶モニタが搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコリオリ質量流量計に関し、より詳しくは、微小流量の計測に好適に適用可能な小型の流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ質量流量計は、質量流量を直接的に且つ精度良く計測できる利点を備えているため、歴史的に、その適用が大流量の計測から始まり、今日では、微小流量の計測まで拡大している。
【0003】
コリオリ質量流量計の原理は次の通りである。流体が流れている振動チューブの軸線方向中央部分を加振すると、振動チューブの入口側部分と出口側部分とに逆方向のコリオリ力が作用し、この逆方向のコリオリ力によって振動チューブに捻れが発生する。この捻れは質量流量に比例する。この振動チューブの捻れを、加振器を挟んで流体の流れ方向上流側と下流側の振動の変位や速度の位相差等として検出して、この位相差から質量流量を求める。
【0004】
コリオリ質量流量計の振動チューブは様々な形状が既に提案されている。振動チューブは、その形状によって真っ直ぐな直管タイプと、湾曲した部分を備えた湾曲管タイプとに大別することができる。湾曲管タイプは、典型的には、振動チューブの入口と出口とが同じ側に位置するタイプと、入口と出口とが反対側に位置するタイプに分類することができ、前者つまり入口と出口とが同じ側に位置するタイプでは、平面視U字状、入口と出口との間隔を狭めた形状、ループ状等が知られている。また、コリオリ質量流量計は、振動チューブの本数によって、単一チューブ式と、2本の振動チューブを備えたデュアルチューブ式とに分類される。
【0005】
コリオリ質量流量計は、伝統的に金属材料(典型的にはステンレス鋼)を使った振動チューブが採用されている。特許文献1は、酸、アルカリなどの薬品にもコリオリ質量流量計を適用する途を開くために、金属管の内周側に、耐蝕性に優れた材料であるフッ素樹脂などの合成樹脂管を配置した振動チューブを提案している。
【0006】
また、特許文献2は、耐蝕性に優れたプラスチック材料で振動チューブを構成することを開示しており、その例示として、ポリテトラフルオロエチレン(PAFE)、四フッ化アルコキシ重合体(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を挙げている。
【0007】
上記の特許文献2はデュアルチューブ式コリオリ質量流量計を開示している。この特許文献2に開示のコリオリ質量流量計は、各振動チューブの振動状態を検出するための検出器として、電磁駆動用コイルと永久磁石との組み合わせを採用し、一方の振動チューブにコイルを配設し、他方の振動チューブに永久磁石を配設することを開示している。
【0008】
また、特許文献2は、加振器、検出器のコイルに対する配線を2本の振動チューブに分散配置させて、この配線を外部に延出させることを提案している。言うまでもないことであるが、この特許文献2の提案は、検出器や加振器に対するコントローラ(回路基板)を外部に配設することを前提としている。
【0009】
特許文献3は、微小流量の流体に適用することを目的として、音叉振動する2本の湾曲管タイプの振動チューブを採用したデュアルチューブ式コリオリ質量流量計を開示しており、この2本の湾曲管タイプの振動チューブを採用した理由として、単一チューブ式では駆動効率が悪く、振動させるとアンバランスのため、振動漏洩が生じる問題点を指摘し、また、単一チューブ式では、検出器の支持剛性つまり振動に対する剛性を高めたフレーム構造が必要となると指摘している。また、特許文献3は、ケイ素鋼などの磁性体を振動チューブにロー付けし、この磁性体を磁化させる永久磁石をフレームに固定し、また、このフレームにコイルを配設することを提案している。また、特許文献3は、一対の振動チューブの基端部を絶縁プレート(ブレースバー)で互いに連結することで、振動チューブの振動の節を作ることを開示している。
【0010】
ちなみに、振動漏洩について説明すると、一対の振動チューブは理想的にはミラー対称に振動するため、自励振動による振動はフレーム上では相殺される。しかし、これは理想論であり、実際は、材質、形状、組み付けなどの非均質、非均一、非対称性によって完全なミラー対称ではないため、フレームや外部配管に関連付けられる振動チューブは、その組み付け状態によって、微小振動での振動状態が変化する。このことは、測定値のゼロ点がオフセットすることに通じる。この現象が振動漏洩である。この振動漏洩は、外乱要素となる外部からの振動とは別に発生する。
【0011】
特許文献4は、一側から流体を受け入れ、他側に流体を排出するループ式のデュアルチューブ式コリオリ質量流量計を開示している。この特許文献4のコリオリ質量流量計では、加振器及び検出器が共に、永久磁石とコイルとの組み合わせで構成されており、そして、永久磁石を振動チューブに設置し、コイルをフレームに設置することを開示している。この特許文献4に開示の、コイルを設置する部材であるフレームは、一対の振動チューブの間に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭64−15921号公報(実願昭62−107307号)
【特許文献2】特表平11−510608号公報
【特許文献3】特開2003−207380号公報
【特許文献4】USP4,756,198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
引用文献3の磁性体も永久磁石と同様に検出器における被検出素子と呼ぶことができる。磁性体と永久磁石などの被検出素子は、特許文献3、4に開示のように、振動チューブに配設され、そして、コイルがフレームに配設される。
【0014】
振動チューブ、検出器、加振器を支持するフレームが頑丈な構造であれば、振動チューブの振動によってフレームが振動してしまう虞はない。しかし、フレームの一部を一対の振動チューブの間に配設して、この一対の振動チューブの間に位置するフレームの部分に検出器や加振器を設置する場合には、このフレームの部分を肉厚の頑丈な構造にすればする程、一対の振動チューブの間の間隔を大きく設定せざるを得なくなる。
【0015】
しかし、特許文献3に見られる微小流量の流体に適用するコリオリ質量流量計に関して、肉厚の頑丈な構造のフレームを採用するのは、小型及び軽量化の要請に応じられなくなる。更に、微小流量の流体に適用するコリオリ質量流量計では、一つの振動チューブの間隔が大きくなり過ぎると、外乱要素である外部から侵入する振動に対して一方の振動チューブと他方の振動チューブとが異なった影響を受けることになるため、外乱振動に伴う計測誤差が大きくなってしまう可能性がある。
【0016】
更に、微小流量の流体を計測対象に設計したコリオリ質量流量計では、特許文献3に開示の絶縁プレート(ブレースバー)が振動の節を作るという重要な役割を担っているが、一対の振動チューブの間隔が大きく成りすぎると、この絶縁プレートの役割が希薄化して、外部からの振動を遮断する効果が薄れてしまうという問題がある。
【0017】
本発明は、微小流量の流体の計測を対象にしたコリオリ質量流量計の軽量且つ小型化を目的とする。
本発明の更なる目的は、フレームの軽量化と共に剛性を確保すると共に、大型化を招くことなく回路基板を内蔵したコリオリ質量流量計を提供することにある。
本発明の更なる目的は、内蔵した回路基板と検出器及び/又は加振源とを連結する配線を短くすることのできるコリオリ質量流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
湾曲管タイプの入口、出口が同じ側に位置する一対の振動チューブを片持ち状態で支持するメインフレームと、
前記一対の振動チューブの間の空間で広がっており且つ端が前記メインフレームに連結されたサブフレームと、
該サブフレームに配設され、前記振動チューブを加振する加振器と、
前記サブフレームに配設され、前記加振器を挟んで前記振動チューブの上流側と下流側に位置する第1、第2の検出器と、
前記メインフレームに支持された回路基板とを有し、
前記サブフレームには、前記湾曲管タイプの振動チューブの内周側であって且つ前記メインフレームに向けて開放した切欠きが形成され、
前記サブフレームには、また、該サブフレームの外周縁に沿って延びる外周壁と、前記切欠きに沿って延びる内周壁とが形成され、
前記メインフレームに支持された前記回路基板が前記切欠きの部分に配設されていることを特徴とするコリオリ質量流量計を提供することにより達成される。
【0019】
すなわち、本発明によれば、湾曲管タイプの入口、出口が同じ側に位置する振動チューブをメインフレームに支持させ、このメインフレームから一対の振動チューブの間の空間に延びるサブフレームに加振器や検出器を配置することで、例えばメインフレームとサブフレームとを別体構造として、メインフレームをプラスチック材料で作ると共にサブフレームを軽量金属で作ることでフレーム構造を軽量化することができる。また、サブフレームに切欠きを設け、この切欠きの部分に回路基板を配設することで、コリオリ質量流量計を大型化することなく回路基板を内蔵させることができる。
また、切欠きの部分に回路基板を配設することで、サブフレームに配設した加振器や検出器と回路基板とを接続する配線が短くて済み、これにより、コリオリ質量流量計の内部での配線による検出精度の低下を低減することができる。また、サブフレームの外周縁及び切欠きを規定する内周縁に外周壁及び内周壁を設けることで、サブフレームの剛性を高めることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態では、
前記メインフレームが開口を有し、該開口に嵌入して該開口を貫通して位置する基板ケースを更に有し、
前記回路基板が、前記基板ケースに収容されて、該回路基板が前記メインフレームを貫通して延びている。
【0021】
この好ましい実施の形態によれば、メインフレームを貫通する形式で回路基板を内蔵させることで、振動チューブの振動に影響を及ぼすことのない状態で回路基板を使って、外部機器や電源との間を接続するケーブルを接続することができる。
【0022】
また、本発明の好ましい実施の形態では、
前記メインフレームを挟んで、前記加振器、前記第1、第2の検出器が配設された前記振動チューブの計測部分とは反対側の給排部分に位置する前記回路基板の部分にモニタ駆動回路が設けられ、該モニタ駆動回路に表示器が接続され、該表示器が前記回路基板に搭載されている。
【0023】
この実施の形態の表示器を備えたコリオリ質量流量計にあっては、コリオリ質量流量計の大型化を招くことなく、表示器を具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のコリオリ質量流量計の動作に関連した構成要素を説明するための図である。
【図2】互いに平行に配置された一対の振動チューブと、これを加振する加振器及び振動チューブの振動状態を検出する検出器を説明するための図である。
【図3】実施例のデュアルチューブ式コリオリ質量流量計の斜視図である。
【図4】図3のデュアルチューブ式コリオリ質量流量計の分解斜視図である。
【図5】メインフレームの開口を通じて挿入される基板ケースを説明するための図である。
【図6】実施例のデュアルチューブ式コリオリ質量流量計に内蔵した回路基板と加振器とを短い配線で接続可能であることを説明するための図である。
【図7】一対の振動チューブが連絡チューブによって互いに連結されたループ式振動チューブを示し、このループ式振動チューブが本発明に適用可能であることを説明するための図である。
【図8】一対の振動チューブが個々独立してマニホールドに連結された振動チューブを示し、この独立した2本の振動チューブが本発明に適用可能であることを説明するための図である。
【図9】フレームとこれを包囲したアウターチューブ(第1アウター)の平面図である。
【図10】図9のX10−X10線に沿った断面図である。
【図11】図9のX11−X11線に沿った断面図である。
【図12】防振材であるゴム片が合計4枚配置されることを説明するための図であり、アウターケースのうち第1アウターを、その開口の側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
図1、図2は、コリオリ質量流量計の構造および原理を説明するための図である。振動チューブ2は、入口2aと出口2bとが同じ側に位置する湾曲管で構成され、その典型例が平面視U字状のU字管である。参照符号4はフレームである。
【0026】
フレーム4はメインフレーム6を有し、このメインフレーム6つまり支持台は振動チューブ2の基端部を横断して配置され、このメインフレーム6によってU字状の振動チューブ2が片持ち状態で支持される。振動チューブ2は、メインフレーム(支持台)6を挟んで、図1の左側が「計測部分」であり、右側が「給排部分」である。図2は、振動チューブ2の計測部分を示す図である。振動チューブ2は互いに平行に配置された一対の振動チューブ2A、2Bで構成され、サブフレーム18は、これら一対の振動チューブ2A、2Bで挟まれた空間に延びている。第1、第2の振動チューブ2A、2Bは、その基端部つまりメインフレーム6に隣接した部分が絶縁プレート(ブレースバー)10で互いに連結され、この絶縁プレート10で第1、第2の振動チューブ2A、2Bの振動の節が形成される。
【0027】
U字形の計測部分の軸線方向中央部分に加振器12が配設されている。この加振器12は、永久磁石14と電磁駆動用コイル16とからなり(図2)、永久磁石14は第1、第2の振動チューブ2A、2Bに配設されている。他方、電磁駆動用コイル16はフレーム2、より詳しくはサブフレーム18に配設されており、加振回路20を通じて電磁駆動用コイル16に交番する電流を流すことで振動チューブ2を振動させることができる。最も好ましくは一対の振動チューブ2A、2Bが固有振動数で振動するように加振される。
【0028】
サブフレーム18について説明すると、サブフレーム18は第1、第2の振動チューブ2A、2Bの間の空間で広がっており、その端が上述したメインフレーム6に連結されている。
【0029】
振動チューブ2の計測部分には、図1、図2から分かるように、加振器12を挟んで上流部分と下流部分に、夫々、検出器22が配設される。以下の説明において、必要に応じて、上流部分に配設された検出器22を第1の検出器22Aと呼び、下流部分に配設された検出器22を第2の検出器22Bと呼ぶことにする。
【0030】
各検出器22は、周知の電磁ピックアップからなり、永久磁石からなる被検出素子28とコイル30とで構成されており(図2)、被検出素子28が第1、第2の振動チューブ2A、2Bに配設され、他方、コイル30はフレーム2、より詳しくはサブフレーム18に配設されている。振動チューブ2A、2Bの振動に伴って被検出素子28がコイル30内を往復動することにより各振動チューブ2A、2Bの振動状態、具体的には振動速度が、検出器22によって検出される。上記被検出素子28として永久磁石を例示したが、この被検出素子28は、前記の引用文献3に開示のケイ素鋼などの磁性体で構成してもよい。
【0031】
上記の説明から当業者であれば理解できるように、サブフレーム18には、加振器12、第1、第2の検出器22A、22Bが配設される箇所に、サブフレーム18を貫通した開口(作図上の理由から図面には現れていない)が設けられており、この開口にコイル16、30が配設されている。
【0032】
振動チューブ2を流体が流れると、その質量、速度および励振する角速度に比例したコリオリ力が発生し、このコリオリ力の方向は流体の運動方向(速度ベクトル)と、振動チューブ2を励振する角速度のベクトル積の方向に一致する。また、振動チューブ2における流体の入口側と出口側とでは流体の流れ方向が反対となる。そのため、コリオリ力によって振動チューブ2に捻りトルクが発生する。このトルクは励振周波数と同一の周波数で変化し、その振幅値と流体の質量流量とは所定の関係になる。
【0033】
加振器12による振動チューブ2の振動による撓みと、前記コリオリの力による振動チューブ2の捻れは重畳されるのであるが、マイコンからなる算出手段32は、捻りの振幅の位相つまり各検出器22A、22Bおよび検出回路34で検出した各振動状態つまり各位置における振動の速度信号の位相差に基づいて振動チューブ2を通る測定流体の質量を算出する。
【0034】
実施例(図3〜図12)
図3は実施例のデュアルチューブ式のコリオリ質量流量計100の斜視図であり、図4は、その組立分解図である。コリオリ質量流量計100は、フレーム102と、これを包囲するアウターケース104とで概略構成されている。
【0035】
図4を参照して、振動チューブ2は、前述したように互いに平行に配置された2本の振動チューブ2A、2Bで構成されているが、図4には作図上の理由から片方の振動チューブ2Bは現れていない。以下の説明では2本の振動チューブ2A、2Bを総称した参照符号「2」を付して説明する。フレーム102は振動チューブ2を片持ち状態で支持する支持台つまりメインフレーム106と、加振器12及び第1、第2の検出器22A、22Bを支持するサブフレーム108とで構成されている。メインフレーム106とサブフレーム108は別体構造である。メインフレーム106はプラスチック成型品で構成され、サブフレーム108は軽量金属、具体的にはアルミニウム合金からなる鋳造品で構成され、このサブフレーム108はメインフレーム106に対してボルト締結される。
【0036】
サブフレーム108は、平面視U字形の振動チューブ2の計測部分とほぼ相似形の外形輪郭を有する比較的薄肉のサブフレーム本体108aと、このサブフレーム本体108aの外周に形成された外周壁108bとを有し、外周壁108bはメインフレーム106の高さ寸法と同じ高さ寸法を有している。サブフレーム108は、U字状の振動チューブ2の計測部分の内側に、該振動チューブ2の計測部分とほぼ相似形の切欠き108cを有している(図5)。切欠き108cはメインフレーム106に向けて開放しており、そして、この切欠き108cを規定するサブフレーム本体108aのU字形の内周縁には内周壁108dが形成されている。内周壁108dは切欠き108cに沿って連続的に延びており、この内周壁108dの高さ寸法は外周壁108bよりも低い。
【0037】
このようにサブフレーム本体108aの外周縁及び内周縁に外周壁108b及び内周壁108dを設けることにより、サブフレーム108を軽量化しつつ剛性を確保することができる。サブフレーム108の本体108aは一対の振動チューブ2の間に位置決めされ、また、サブフレーム108に装着される加振器12及び第1、第2の検出器22A、22Bは外周壁108bと内周壁108dとの間に配設されため、第1、第2の検出器22A、22Bが配設される箇所には、加振器12、検出器22A、22Bの要素を受け入れるための開口(図示せず)が形成され、この開口は、サブフレーム本体108aを貫通している。
【0038】
サブフレーム108の内周壁108dで規定される切欠き108cの部分には、後に説明する基板ケース110が配設され(図5)、この基板ケース110に収容された回路基板112が振動チューブ2の計測部分に隣接して位置決めされる。
【0039】
アウターケース104は、振動チューブ2の計測部分を覆う第1アウター114と、振動チューブ2の給排部分を覆う第2アウター116とで構成され、第1、第2のアウター114、116はボルト及びナットの組み合わせ118によって締結されることにより一体化される。
【0040】
図3から最も良く分かるように、振動チューブ2の給排部分を覆う第2アウター116には、表示モニタを外部から見ることのできるモニタ用窓120が形成されている。
【0041】
前述した基板ケース110は、振動チューブ2を片持ち支持するメインフレーム106を内外に貫通する開口122(図5)に密に嵌入されてビス止め(図示せず)される。基板ケース110に収容される回路基板112はメインフレーム106の開口122を貫通して連続的に延びており、この回路基板112には、振動チューブ2の計測部分に対応する部分に、前述した加振回路20、算出回路32、検出回路34の少なくとも一つの回路が形成されている。最も好ましくは、この実施例のように、加振回路20、算出回路32、検出回路34の全てが回路基板112に形成されている。他方、振動チューブ2の給排部分に対応する部分に、表示器である液晶モニタ(図示せず)が搭載され、またこの液晶モニタを駆動するモニタ駆動回路が回路基板112に形成されている。
【0042】
当業者であれば直ちに理解できるように、メインフレーム106を貫通して延びる一枚の回路基板112を設けることで、加振器12及び第1、第2の検出器22A、22Bと回路基板112とを電気的に連結する配線を短縮することができ、また、液晶モニタと回路基板112とを電気的に接続する配線を短縮することができる。
【0043】
図6は、例示的に、加振器12と回路基板112とを配線Wrで接続した状態を示してあるが、第1、第2の検出器22A、22Bと回路基板112とを接続する配線についても図示を省略したが短い配線で接続可能であるのは、当業者であれば容易に認識できるであろう。ちなみに、図示を省略したが、モニタ用窓120を臨んで位置決めされる液晶表示モニタは、回路基板112に搭載されている。勿論、振動チューブ2の給排部分の端にケーブルCbが接続され(図6)、このケーブルCbを通じて外部機器や電源に連絡される。
【0044】
図7は、フレーム102に、振動チューブ2や基板ケース110を組み込んだ組立体を示す。この図7から分かるように、一対の振動チューブ2は給排部分が一本の連絡チューブ124で互いに連結され、これにより一対の振動チューブ2によってループ式の振動チューブが構成されている。図8は変形例を示すものであり、図8から分かるように、2本の振動チューブ2が個々に独立してマニホールド126に連結されている。
【0045】
一対の振動チューブ2は金属製のチューブであってもよく、また、前述した耐蝕性プラスチック製のチューブであってもよい。また、この耐蝕性プラスチック製チューブにおいて、その計測部分を補強したチューブであってもよい。図4を参照して、第2アウターケース116には、振動チューブ2に外部配管128を連結する一対のコネクタ130が装着可能であり、このコネクタ130と振動チューブ2との間に弾性チューブ132が介装されている。
【0046】
外部からの振動には、壁面からの振動に限らず、振動チューブ2の入口2a、出口2bに連結される外部配管128から振動チューブ2に伝わる振動が含まれる。外部配管128の振動は、振動チューブ2の給排部分に配置した弾性チューブ132(典型的にはフッ素樹脂チューブ)で遮断することができる。外部配管128を通じた外部からの振動を弾性チューブ132によって遮断する効果は、振動チューブ2がステンレス鋼のような金属製のチューブで構成されているとき効果的であるが、振動チューブ2を耐蝕性に優れた例えばフッ素樹脂系の材料で構成した場合や、この耐蝕性合成樹脂材料からなる振動チューブ2の外周を補強したチューブで構成した場合や、金属製チューブの内周面を耐蝕性合成樹脂(典型的にはフッ素樹脂)材料で構成したチューブ等に対しても効果的である。なお、図8の例のようにマニホールド126を備えている場合には、このマニホールド126と振動チューブ2との間に弾性チューブ132を配設してもよい。
【0047】
特に、合成樹脂材料からなる振動チューブ2は炭素繊維などで、フレーム102に固定する部分から加振器の部分に亘って振動チューブ2が振動する部分つまり計測部分を補強することで、この補強部分によって振動チューブ2として十分な剛性が得られる。これに加えて、フレーム102に固定する部分から外部配管128との接続部分に亘って、上述した補強を行わないで非補強部分とすることで、当該非補強部分によって外部配管128からの振動が補強部分つまり振動チューブ2の計測部分に伝わるのを遮断することができる。勿論、振動チューブ2の材料の主体を合成樹脂材料で構成することでコリオリ質量流量計の軽量化に寄与することができる。更に、合成樹脂材料としてフッ素樹脂系の材料を選択し、その外周側に繊維強化層を形成することで、フレーム、加振器、検出器との接合が容易となるため、コリオリ質量流量計の小型化及び軽量化を容易に実現することができる。
【0048】
フレーム102には、支持台つまりメインフレーム106からサブフレーム108の深部に向けて延びる左右一対のアーム140を有している。このアーム140は、サブフレーム108の内周壁108dに沿って延びており、この内周壁108dと実質的に一体である。図4などでは、図面を見てサブフレーム108の上側に左右一対のアーム140、140が図示されているが、サブフレーム108の下側にも左右一対のアームが設けられており、作図上の理由から、この下側の左右一対のアームは図面に現れていない。サブフレーム108には、深部つまり加振器12及び第1、第2の検出器22A、22Bのような相対的に重量物が配設されている深部に向けて延びる合計4つのアーム140が形成されている。
【0049】
各アーム140の先端部つまりメインフレーム106とは反対側の端部に水平面の第1の矩形座140aが形成され、この矩形座140aの三方が縦壁140bで規定されている。より詳しくは、アーム140の先端から前方に向けた部分を除いた三方に縦壁140bが形成されている。換言すると、第1の矩形座140aは、アーム140の前方つまりサブフレーム108の深部に向けて開放している。
【0050】
サブフレーム108つまり振動チューブ2の計測部分を包囲する第1アウター114には、その上下の面に、上記フレーム102の各アーム140の第1の矩形座140aに対応する部分に窓142が形成され、この窓142を通じてアーム140の第1の矩形座140aにアクセス可能である。
【0051】
第1アウター114には、窓142に連なる第2の矩形座142aが形成されている。この第2の矩形座142aは水平面で構成され、この第2矩形座142aには上記第1の矩形座140aとは反対側とその両側に縦壁142Bで規定されている。換言すると、第1アウター114の第2の矩形座142aは、上記第1の矩形座140aに向けて開放されている。
【0052】
第1アウター114の第2の矩形座142aの高さレベルは、第1アウター114の上下の面よりも低位に位置決めされ、この第2の矩形座142aは上記アーム140の第1の矩形座140aの高さレベルと同じである。また、この第2の矩形座142aと第1の矩形座140aとの間にはクリアランスCが設けられている。第1、第2の矩形座140a、142aは、各矩形座140a、142aの縦壁140b、142bによって規定される平面視長方形の収容空間に、これと相補的な平面視矩形の平たいゴム片146からなる防振材が配設され、この防振材146は、その端部が第1、第2の矩形座140a、142aに着座した状態でボルト148(図3、図10)によって固定される。
【0053】
フレーム102は、第1、第2のアウター114、116によって包囲されるが、フレーム102と第1、第2のアウター114、116との間にはクリアランスCが設けられており、したがって、第1、第2のアウター114、116は、唯一、ゴム片つまり防振材146を介してフレーム102に連結されている。
【0054】
コリオリ質量流量計100は、第1アウター114の頂部の1つの第1のボルト挿通孔150、第2アウター116の基部の左右一対の2つの第2のボルト挿通孔152に挿入可能なボルト及びこれに螺着されるナットによって壁面(図示せず)に固定される。
【0055】
このように実施例のコリオリ質量流量計100は、壁面に固定されるアウターケース104と、このアウターケース104に収容されるフレーム102との間にクリアランスCが設けられ、そして、アウターケース104とフレーム102とが防振材(平面視矩形の平たいゴム片)146によって連結されており、これによりフレーム102がアウターケース104にフローティング支持されていることから、壁面からのアウターケース104に伝わった振動が防振材146によってフレーム102に伝達する遮断することができ、また、その逆にコリオリ質量流量計100から壁面への振動伝達も防振材146によって遮断することができる。
【0056】
また、防振材146がアウターケース104の窓142を通じて外部に露出し、外部からアクセスすることによって防振材146の交換作業を行うことができるため、防振材146の損傷を外部から目で確認できるだけでなく、防振材146の交換作業も容易である。すなわち、アウターケース104からフレーム102を抜き取って防振材146の損傷を確認する必要も無く、また、アウターケース104とフレーム102とを分解することなく、傷んだ防振材146を新しい防振材146に交換することができる。
【0057】
また、フレーム102(メインフレーム106)から延びるアーム140で防振材146の取付部位をサブフレーム108の深部に設定してあることから、コリオリ質量流量計100の重心G(図3、図9)に接近した位置に防振材146を配設することができる。また、壁面に3点支持でコリオリ質量流量計100を設置する際に用いられる一つの第1のボルト挿通孔150と、二つの第2のボルト挿通孔152、152とを結ぶ直線L1、L2(図3)の近傍に防振材146を配設することで、図12にも示すように、アウターケース104(第1アウター114)の一対の面に対して夫々一対の防振材146を配置して合計4つの防振材146でアウターケース104とフレーム102との間の振動伝達を遮断できるだけでなく、防振材146としてゴム片146という簡単な形状及び構造の防振材を採用しても十分に防振効果を発揮することができる。この防振効果としては、外部振動による影響だけでなく、振動漏洩によるゼロ点調整が含まれる。
【0058】
また、実施例のデュアルチューブ式のコリオリ質量流量計100にあっては、一対のU字状振動チューブ2A、2Bの間に位置するサブフレーム108が、このU字状振動チューブ2A、2Bの計測部で囲まれた部分に切欠き108cを有し(図5)、この切欠き108cの部分に回路基板112が配設され、この回路基板112は基板ケース110を介してメインフレーム106に支持されている。勿論、基板ケース110と、サブフレーム本体108aの内周壁108dとの間には、これらが互いに干渉しないようにクリアランスが設けられている。そして、この回路基板112には、加振器12、第1、第2の検出器22A、22Bに関連した加振回路20、検出回路34が形成されているため、加振器12、第1、第2の検出器22A、22Bと回路基板112とを電気的に接続する配線Wrが短くて済み、振動チューブ2A、2Bに何らの影響を及ぼすことなく配線Wrを配置することができる。また、回路基板112はメインフレーム6を貫通して振動チューブ2A、2Bの給排部分まで延びているため、外部機器に接続するケーブルCbを振動チューブ2A、2Bに影響を及ぼすことなく配置することができる。また、液晶表示モニタをコリオリ質量流量計100に設けたとしても、回路基板112における振動チューブ2A、2Bの給排部分の基板部分を使って液晶モニタを搭載することができる。
【0059】
このように加振回路20、検出回路34を備えた回路基板112を内蔵したコリオリ質量流量計100であったとしても、湾曲管からなる振動チューブ2の形状に沿った輪郭の切欠き108cをサブフレーム108に形成することで、コリオリ質量流量計100の大きさに影響を及ぼすことなく、回路基板112をコリオリ質量流量計100に内蔵させることができる。また、この切欠き108cに沿って延びる内周壁108dをサブフレーム108に形成することで、サブフレーム108の外周壁108bと協働してサブフレーム108の剛性を高めることができる。したがって、一対の振動チューブ2A、2Bの間の間隔を、振動チューブ2の振動にとって最適な間隔に設定するために、この一対の振動チューブ2A、2Bの間に位置するサブフレーム108の本体108aを薄肉にしたとしても、サブフレーム108が備えるべき剛性を内外の壁108b、108dによって確保することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 コリオリ質量流量計
2 振動チューブ
12 加振器
14 加振器の永久磁石
16 加振器のコイル
18 サブフレーム
20 加振回路
22 検出器
28 被検出素子(永久磁石)
30 検出器のコイル
32 算出手段(マイコン)
34 検出回路
102 フレーム
106 メインフレーム
108 サブフレーム
108a サブフレーム本体
108b サブフレームの外周壁
108c サブフレームの切欠き
108d サブフレームの内周壁
110 基板ケース
112 回路基板
Wr 加振器などと回路基板とを結ぶ配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲管タイプの入口、出口が同じ側に位置する一対の振動チューブを片持ち状態で支持するメインフレームと、
前記一対の振動チューブの間の空間で広がっており且つ端が前記メインフレームに連結されたサブフレームと、
該サブフレームに配設され、前記振動チューブを加振する加振器と、
前記サブフレームに配設され、前記加振器を挟んで前記振動チューブの上流側と下流側に位置する第1、第2の検出器と、
前記メインフレームに支持された回路基板とを有し、
前記サブフレームには、前記湾曲管タイプの振動チューブの内周側であって且つ前記メインフレームに向けて開放した切欠きが形成され、
前記サブフレームには、また、該サブフレームの外周縁に沿って延びる外周壁と、前記切欠きに沿って延びる内周壁とが形成され、
前記メインフレームに支持された前記回路基板が前記切欠きの部分に配設されていることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【請求項2】
前記回路基板に、前記加振器に関連した加振回路と、前記第1、第2の検出器のうち、少なくとも何れか一方の回路が形成されている、請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項3】
前記加振器、前記第1、第2の検出器の各々が配線を介して前記回路基板に接続されている、請求項1又は2に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項4】
前記メインフレームが開口を有し、該開口に嵌入して該開口を貫通して位置する基板ケースを更に有し、
前記回路基板が、前記基板ケースに収容されて、該回路基板が前記メインフレームを貫通して延びている、請求項3に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項5】
前記メインフレームを挟んで、前記加振器、前記第1、第2の検出器が配設された前記振動チューブの計測部分とは反対側の給排部分に位置する前記回路基板の部分にモニタ駆動回路が設けられ、該モニタ駆動回路に表示器が接続され、該表示器が前記回路基板に搭載されている、請求項4に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項6】
前記振動チューブが平面視U字形の形状を有し、
前記サブフレーム及び前記切欠きが前記振動チューブのU字形と相似形の輪郭を有している、請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項7】
前記一対の振動チューブの基端部が絶縁プレートで互いに連結されている、請求項6に記載のコリオリ質量流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−13198(P2011−13198A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160229(P2009−160229)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】