説明

コリメータ光源およびそれを用いた表面プラズモン共鳴センサー

【課題】光センサー用の小径な光束径の偏光を出射し、簡易な構成の実装容易な小型コリメータ光源を実現する。
【解決手段】フェルール内に少なくとも融着接続した屈折率分布型ファイバとコアレスファイバを有し、屈折率分布型ファイバ側に接続した光源からレンズを介して光を入射、コアレスファイバ側から光を出射するように構成し、フェルール内のコアレスファイバ傾斜端上のフェルールにスリットを形成、コアレスファイバ端上に光学素子を設置する。コアレスファイバ傾斜端の傾斜角度は、ファイバ光軸の垂直面に対しブリュースター角Θb1傾斜させ、傾斜端面で伝搬光を反射、その傾斜端面上にファイバ光軸に対し傾斜角αの出射面をもつ光学素子を設置、コアレスファイバ傾斜端からの反射光がファイバ光軸に対しほぼ垂直に出射するように構成、それにより小型で、小径の消光比の高い出射光を出射するコリメータ光源を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴センサー等の光センサーに使用する小光束径の偏光を出射するコリメータ光源及びそれを用いた表面プラズモン共鳴センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
金属のような自由電荷を有する物質表面では、光等の電磁波により自由電子が集団的に振動するプラズマ波という粗密波が生じる。金属表面に生じる粗密波が量子化したものを表面プラズモンという。この現象を利用して、金属表面に付着させた試料中の物質を定量分析する表面プラズモン共鳴センサーというものが知られている。表面プラズモン共鳴センサーは、試料内に含まれる特定物質の濃度の測定等に用いられる。図7は、表面プラズモンセンサーの代表例を示す該略側面図である。LED(発光ダイオード)乃至LD(レーザーダイオード)等の光源108からの発散光をレンズ107によりコリメータ光(又は集束光)に変換し、ピンホール(または絞り)116を介して偏光子115に入射させる。偏光子の角度が固定されている場合、1/2波長板18を追加して、回転させてもよい。そして、偏光子115から出射したP偏光を全反射ミラー105の表面で反射させ、上面に金属薄膜114が形成されたプリズム112に入射させて、金属薄膜114の裏面側から照射する。プラズマ表面波が存在できるのは、磁場が横波であるTMモードの場合だけであるので、P偏光(金属薄膜114の入射面に対し電場が平行)がプラズマ波励起に用いられる。金属薄膜114に対し全反射ミラー105の反射角度を調整し、入射波を入射角Θiで金属薄膜114に入射させ、全反射条件Θi>Θc(Θc:臨界角)の範囲内で入射角Θiを微動させると、その入射波によるエバネセント波により、金属薄膜114の表面プラズモン波の位相速度が一致、即ち波数が一致した時に表面プラズモン共鳴条件が成立するプラズモン共鳴角Θpのところにおいて、入射光のエネルギーにより表面プラズモンが励起され、反射光のエネルギーが急激に減衰する。
【0003】
そのときのプラズモン共鳴角Θpから、表面プラズモンの波数がわかり、金属薄膜114の誘電率等から、試料19の誘電率を知ることができる。このプラズモン共鳴角Θpから所定の校正曲線や予め作成されたデータ表等を用いて、試料19内の特定物質の濃度等を定量分析することができる。
【0004】
測定感度向上の為、光源108として求められる事項は、出射される光が単一波長であり、光束径が十分絞られており、センサー部113への入射角度Θiが大きい場合も、共鳴角Θpを容易に設定することができ、センサー部113の金属薄膜114に対し入射されるP偏光が得られることである。また、プリズム112を介してセンサー部113に光を入射させ、表面プラズモン共鳴が生じさせるには、通常、使用するプリズム12の屈折率が1.5の場合は、入射角度を70°以上に大きくとる必要性があることから、センサー部113の金属薄膜114面に対し、より小さな光束径の光を入射させるのがよく、その為、絞り(またはピンホール板)116を用い、入射光を絞って用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−250960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に述べたように従来の表面プラズモン共鳴センサー用光源の光学系は、その構成部品として光源108、レンズ107、絞り116、偏光子115、波長板118、反射体105,プリズム120,センサー部113から成っており、部品点数が多い。そして反射体105等の回転部と、光源108,偏光子115,絞り116等が固定された固定部との、それぞれ個別部品を光軸上に順番にアッセンブリする構成の為、光源部に要する長さが長くなり、各使用する部品を光軸に合わせて位置合わせしていく為、組み立てに手間がかかった。また、光源部の形状が大きくなってしまうことから、光学系全体が大型化してしまう為、小型で簡素な構造、実装容易な構成の光学系の実現は困難であった。プラズモン入射角Θpを得るには、消光比が大きく開口数の小さな平行光に近い出射光を細径化して使用する為、絞り116により入射光を微小光束径に絞る為、入射光強度が減衰しまい、測定感度上好ましくなかった。
【0007】
したがって、本発明は上記の如き従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、消光比の高い、微小光束径を出射する小型コリメータ光源の実現にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るコリメータ光源は、光ファイバの先端に屈折率分布型ファイバが融着され、この屈折率分布型ファイバの先端側に、法線が光軸に対して成す角度がブリュースター角Θbである先端面を有するコアレスファイバが融着された光ファイバ体と、前記コアレスファイバの外周面に設置され、前記先端面で反射されて偏光となった反射光が入射する入射面および前記反射光を前記光軸に対して垂直方向に出射する出射面を有した光学素子と、この光学素子の前記出射面を露出させた状態で前記光ファイバ体および前記光学素子が挿入された孔を有するフェルールとを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記コリメータ光源において、前記光学素子は、前記出射面に位相格子を備えているのが好ましい。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーは、内部の光路上の一平面に金属薄膜が形成されたプリズムと、光軸を中心に回転可能に設置された、前記金属薄膜の前記プリズム側の面に向けて前記反射光を出射する請求項1または2記載のコリメータ光源と、前記金属薄膜で反射されて前記プリズムから出射する光の強度を計測する計測装置とを備え、前記コリメータ光源を前記光軸を中心に回転させることによって、前記金属薄膜に対する前記反射光の入射角を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係るコリメータ光源によれば、内部に光ファイバ体および光学素子が挿入されたフェルールに反射体、レンズ、絞り、偏光子等の機能が集約でき、個別にレンズ、偏光子,反射体,絞りをアッセンブルする必要がなく、これら各部品のアライメント処理も不要になる。そのため、表面プラズモン共鳴センサーの光源部を小型化することができるとともに、アッセンブル作業が容易になる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーによれば、光源部全体をモジュール形状に構成でき、上記本発明の一実施形態に係るコリメータ光源を備えており、屈折率分布型ファイバにより出射光を100〜500μm程度に絞って細径化でき、光学素子で光軸に対し垂直方向に出射できる為、入射角Θiは、光軸中心に回転させることによって変化させることができ、従来の表面プラズモン共鳴センサーに比較して光源部が小型化できる。
【0013】
光源部がモジュール形状に小型一体化される為、センサー部を含めた光学系全体の小型化が図れる。更に光源部にフィルター機能、光アイソレータ機能を容易に付加でき、出射光の不要スペクトラム光の除去、光源への不要戻り光の除去により、測定感度及び光源の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るコリメータ光源を示した正面図、(b)はその側断面図である。
【図2】図1(b)に示したコリメータ光源のA部を拡大した拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコリメータ光源において、光学素子に位相格子を用いた場合の実施の形態の一例を示す要部拡大断面図である。
【図4】(a)は、異なる屈折率を有する媒質界面において、ブリュースター角Θbで入射する光の進路を示す模式図。(b)はブリュースター角Θb1と媒体の屈折率n1との関係を示す線図である。
【図5】図2に示す角度α,βとコアレスファイバの屈折率n1の関係を示す線図である。
【図6】(a)は本発明の一実施形態に係る表面プラズモン共鳴センサーを示す側面図、(b)はその正面図である。
【図7】従来の表面プラズモンセンサーの実施の形態例を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の各実施形態の例について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るコリメータ光源を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)の中心線を含む断面を示す側断面図である。図2は、図1の要部を拡大して示す側断面図である。
【0017】
光ファイバ体Fは、シングルモード光ファイバ等の光ファイバ4の先端に、屈折率分布型ファイバ3が融着され、更に屈折率分布型ファイバ3の先端側にコアレスファイバ2が融着されている。図2に示すように、コアレスファイバ2の先端面2aは、その法線2bが光軸に対して成す角度がブリュースター角Θb1とされている。ブリュースター角Θb1とは、屈折率の異なる物質の界面で反射される光が完全に偏光になる入射角度のことで、この場合、Θb1=tan―1(n2/n1)で示され、空気中の場合、n2=1である。
【0018】
光ファイバ体F内を進行してきた光は、コアレスファイバ2内部と外部との境界面であり屈折率が変化する先端面2aにおいて、反射される。先端面2aがブリュースター角Θb1とされているので、反射される光にはP偏光はほとんど含まれない。
【0019】
また、コアレスファイバ2の先端部外周面には光学素子10が設置されている。光学素子10は、コアレスファイバ2の先端面2aにおいて反射され、コアレスファイバ2の外周面から出射された光が入射する入射面10aと、これと対向し、入射された光が外部へ出射される出射面10bとを有している。光学素子10から出射される光は、出射面10bで屈折する。出射面10bは、光ファイバ体F内を進行する光の方向と垂直な方向に光が出射される角度αに傾斜されている。
【0020】
このような光ファイバ体Fと光学素子10とは、フェルール1内に挿入されている。フェルール1は、円筒形状であり、中心軸方向に光ファイバ体Fを収納する貫通孔と、貫通孔からフェルール1の外周面に向けてスリット状に切り欠かれ、光学素子10を収納する空間とが形成されている。そして、少なくとも光ファイバ体Fの光ファイバ4側の端面と、光学素子10の出射面10aとはフェルール1の外部空間に露出されるようにされている。光ファイバ体Fの先端(コアレスファイバ2の先端面2a)は、露出されていてもいなくてもよい。
【0021】
光ファイバ体Fと光学素子10とを収納したフェルール1は、例えば、光源8に集光用のレンズ7を収納した筒状のケース7aを介して固定される。光源8としては、LD(半導体レーザ)またはLED(発光ダイオード)等を筒状のケース8a内に固定して収納したものが用いられる。
【0022】
光源8に内蔵された半導体素子から円錐状に出射される発散出射光は、レンズ7により集光され、フェルール1の端面に露出されたシングルモード光ファイバ等の光ファイバ4に入射される。集光用のレンズ7としては、球面状レンズの他、非球面レンズを用いることができる。レンズ7には、光ファイバ4への入射効率を向上させる為、光源8側には開口数0.3程度と大きく、光ファイバ4側では開口数が0.2以下と小さい有限共役型のものを使うのが好ましい。また、光ファイバ4の入射端面は、端面での光源8からの反射光が光源8に反射されるのを防止するため、光軸に対して10°以下の角度を持たせるように形成しておく方がよい。
【0023】
これらフェルール1、レンズ7を収納した筒状のケース7b、光源8は、光結合するようにアライメントした後、YAG溶接等により接合され、一体型のモジュール型のコリメータ光源17として構成される。
【0024】
図2は、図1に示したモジュール17のA部を拡大したもので、出射端の詳細を説明するために、フェルール1内に納められた光ファイバ体Fと光学素子10とを拡大して模式的に示すものである。
【0025】
光ファイバ4は、シングルモード光ファイバを用いた例を示しているが、シングルモード光ファイバではなく、例えば、シングルモード光ファイバを省略して、屈折率分布型ファイバ3に直接入射してもよいし、比屈折率差(光ファイバのコア中心部の屈折率とクラッド部の屈折率の差の異なる他の屈折率分布型光ファイバ3を融着したものを用いてもよい。比屈折率差がより大きな屈折率分布ファイバを用いた場合、光源8側の光ファイバ4は、出射側の屈折率分布型ファイバ3より開口数が大きなものとすることにより、レンズ7を介して光源8との結合効率を向上させることができる。
【0026】
屈折率分布型光ファイバ3は、コア径が100μm〜110μm程度あるものを使用され、比屈折率差が0.07〜0.2の範囲のものが使用できる。屈折率分布型ファイバ3のファイバ長を調整することによってピッチ長を調整することができ、これによってレンズのように焦点距離、開口数を調整することができる。なお、ピッチ長とは、屈折率分布型光ファイバの蛇行周期を意味し、0.5ピッチ長で収束し、0.25ピッチ長の場合、ほぼ平行光になる。比屈折率差が小さな屈折率分布型光ファイバ3を用いた場合、同じピッチ長で、出射光の焦点距離(又は作動距離)が長くなる。ピッチ長が0.25の場合、光のスポット径が最大で、光軸に対しほぼ平行な光を出射することができるが、若干の発散光(スポット径が拡大する方向に進行する光)も生じる為、通常出射光はやや絞り気味とするのがよく、ピッチ長は0.26〜0.3程度にして用いるのが好ましい。屈折率分布型ファイバ3のコア径自体が100μm程度であると、屈折率分布型光ファイバ3からコアレスファイバ2に出射される出射光の光束径も、GIファイバ3の出射端からの距離によるが100〜500μm程度のものとして得ることができ、絞り16等を用いなくても微小径の出射光を得ることができる。
【0027】
コアレスファイバ2は、コアの無い石英系の光ファイバで、屈折率n1は、ドープするGe、GeO、F等の屈折率増加添加物質により屈折率n1を調整することができる。または、石英系材料と屈折率の異なるガラス材料を用いたコアレスファイバ2でもよい。コアレスファイバ2の先端面2aは、コアレスファイバ2の光軸に対して垂直な面と角度Θb1傾斜している傾斜面を成している。それにより先端面2aにおけるP波成分が、反射率が0%で、ほぼ全て透過、S波成分が、約80%透過、20%反射するブリュースター角として設定することができ、分離型偏光子として機能する。コアレスファイバ2の先端面2aの外側が空気である場合のブリュースター角Θb1は次式で示される。
【0028】
Θb1=tan―1(1/n1)
但し、n1はコアレスファイバ2の屈折率である。コアレスファイバ2の先端面2aがブリュースター角Θb1とされていることにより、先端面2aの入射面と同方向の電界成分を有するP波成分は、屈折角Θで先端面2aを透過して先端側に出射されるが、先端面2aでの反射率はゼロとなって、反射光にはほとんど含まれなくなる。一方、入射面に対して垂直方向の電界成分を有するS波は、先端面2aにおける入射光のうち約20%が反射角Θb1で反射される。このようにして、先端面2aがブリュースター角Θb1とされたコアレスファイバ2は分離型偏光子として機能する。
【0029】
コアレスファイバ2の先端面2aで反射した反射光は、光軸に対し2Θb1の角度で反射し、コアレスファイバ2の外周面に設置された光学素子10に入射する。コアレスファイバ2は円柱形であり、外周面から空間に光を出射させると、外周面がシリンドリカルレンズとして作用し、非点収差が生じる。このため、光学素子10の入射面10aをコアレスファイバ2の外周面と同じ形状にして光学素子10をコアレスファイバ2に接合するか、設置した光学素子10との間に生じる隙間に屈折率がn1のコアレスファイバ2の屈折率とほぼ等しい透光性の接着剤5を充填し、固定する。また、光学素子10も屈折率がコアレスファイバ2の屈折率とほぼ等しい透光性の材料で形成される。それにより、コアレスファイバ2から光学素子10の出射面10bまで屈折率がほぼ等しい媒体となり、非点収差を抑えることができる。
【0030】
先端面2aで反射された反射光が光学素子10の出射面10bに入射する入射角度をβとすると、β=2Θb1+α―90°で表わされ、ブリュースター角Θb1とほぼ等しくなる。その際S偏光成分の約20%は反射、光軸に平行な方向に出射する。出射面10bを透過したS偏光は、光学素子10上面の出射面10bから屈折角Θで出射する。屈折角Θで屈折した出射光は、光ファイバ体Fの光軸に垂直方向に進行する。例えば、光源8に半導体レーザを用い、コアレスファイバ2端にほぼS波で入射するよう、回転によりその方向を設定すれば、光軸垂直方向の出射光の場合には、1回分離型偏光子(2a)を通る出射光になり、光軸水平方向の出射光の場合には、分離型偏光子(2a、10a‘)を2回通過することになる。光源8からの出射光を、より高い消光比の偏光として得ることができる。また、コアレスファイバ2の傾斜端を誘電体多層膜蒸着により全反射面とし、光学素子10の傾斜角αの上面のみをブリュースター条件の傾斜端としてもよく、その場合は、より出射光9の出力パワーを得ることができる。又、迷光発生防止の為、不要な出射光は、出射面をカバー等により覆い出射を防止する。
【0031】
光学素子10は、その出射面10bに誘電体多層膜によるフィルター機能を付加してよい。それにより光学素子10を出射光のスペクトラム特性を補正し、不要光を除去する波長フィルターとして機能させることもできる。また、光学素子10内に周期的な屈折率分布をもつ位相格子を形成してもよい。光学素子10の内部に僅かに屈折率の異なる一定の間隔Λの周期構造をもつ位相格子を形成することにより、波長λbの光の不要なスペクトラム成分の光を分離除去することができる。また、光源8に半導体レーザを使用した場合、位相格子面に垂直入射させることにより外部共振器として作用させることもでき、光学素子10をガーネット等のファラデー回転子材料で構成すれば、コアレスファイバ2の傾斜端面2aの分離型偏光子と光学素子10とで光アイソレータとして構成することができる。その場合、光学素子からの出射面は、光軸に平行な出射面10a‘及び垂直方向からの出射面10aから出射することができるが、光学素子1内で回転角が45°になるよう光路長を設定する為、光学素子10に使うファラデー回転子の高さ方向の厚さTの調整が必要である。又、上出射面10aからの反射光は、光軸に平行な方向に出射され、その傾斜角αの傾斜面がブリュースター条件の分離型偏光子として機能する。
【0032】
図3は、光学素子10内部に位相格子20を構成した場合の実施例で、傾斜面2aで反射した反射光が等間隔Λの屈折率分布を有する位相格子20の面に対し、垂直入射する。この場合は位相格子20内で生じる回折により反射戻り光21により、光源8内の半導体レーザに対し、外部共振器として機能する。位相格子20は、位相格子間隔をΛとすると、それによる回折光の中心波長λbは、
λb=2×n1×Λ
n1:光学素子の屈折率
で示されるもので、屈折率変化量が、10―2程度の等間隔の屈折率分布を有するものである。使用する材料にはGeを添加した石英ガラス、PTRガラス等があり、UV光等の紫外線照射と位相マスクを用い、ガラス基板内に光誘起屈折率変化により転写形成することができる。こうして製作された位相格子基板を切断することで位相格子20を装着した光学素子10を得ることができる。尚、光学素子10の位相格子に対して図3に示したように入射光が垂直入射する場合、戻り光21がそのまま元の光源8内の半導体レーザに戻り、位相格子との間でファブリペロ共振することにより安定したスペクトラム特性の出力を得ることができるが、又、位相格子20面に斜めに入射した場合は、特定波長光λbを分離するフィルターとして機能することができ、用途により位相格子への入射角度と格子間隔Λを設定して用いればよい。
【0033】
図4は、異なる屈折率を有する媒体の境界面にブリュースター角で入射する光に生じる現象を説明する図で、図4(a)は、異なる屈折率を有する境界面にブリュースター角Θbで入射する光の進路を示す模式図、図4(b)は、屈折率n1の物質(例えば、コアレスファイバ2)から屈折率n2の媒体(ここでは媒体は空気であって、n2=1とする)場合の屈折率n1に対するブリュースター角Θb1の値をプロットしたグラフである。屈折率n1が大きい程、ブリュースター角Θb1は、小さくなる。即ち、使用するコアレスファイバ2の屈折率n1により傾斜角Θb1が異なる。例えば、n1=1.4の場合、Θb=36°程度である。光源8に半導体レーザを用いた場合、コアレスファイバ2の傾斜端面にS波で入射するように光源8を回転調整、コアレスファイバ2端の傾斜角Θb1による偏光分離機能により、出射光の消光比が増し、表面プラズモンセンサー用光源の場合、金属薄膜14にモジュール方向を変えることでP波として入射、プラズマ波励起に寄与しないS波成分が殆どなくなり励起効率が向上、プラズモン共鳴時の反射光の強度減衰が、プラズマ波励起により急峻で大きくなり、プラズモン共鳴角Θpの測定が精度良くできる。
【0034】
図5は、光学素子10の上面傾斜角αと、その傾斜面への入射角βと、光学素子10及びコアレスファイバ2の屈折率n1に対応したグラフを示したものである。
【0035】
ここで、光学素子10の上面の傾斜面から光軸に垂直に出射するには、傾斜角αが出射光の屈折角Θと等しくなければならない。又、傾斜面への入射角βは、
β=sin―1{(sinΘ)/n1}
で示される。ブリュースター条件で、光学素子10の傾斜面に入射させるにはβ=Θb1で入射すればよく、それにより傾斜面での反射光は光軸に平行に出射され、透過光は光軸に垂直に出射する。又上面傾斜角αと傾斜面への入射角βは、α+β=90°の関係にあり、傾斜面での反射光は、光軸に平行な方向に出射される。
【0036】
光学素子10上面の傾斜角αは、屈折率n1が大きいほど大きくとる必要性があり、屈折率n1=1.5の場合は、α=56°、n1=1.7の場合は、α=60°である。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係るコリメータ光源を用いた表面プラズモン共鳴センサーの実施の形態の一例を模式的に示し、図6(a)はその側面模式図、図6(b)はその正面模式図である。図6は、図1に示すコリメータ光源17を用いた例を示している。
【0038】
表面プラズモン共鳴センサーは、本発明の一実施形態に係るコリメータ光源17が光軸を中心に回転可能に設置されている。そして、コリメータ光源17から出射された光は、シリンドリカルレンズ状のプリズム12に向けて照射される。プリズム12の一平面、すなわち図6(b)に示すプリズム12の上面にはAu(金)等から成る金属薄膜14が形成されている。プリズム12の金属薄膜14が形成された一平面に対向する下面側から入射したコリメータ光源の光は、金属薄膜14のプリズム側の面から金属薄膜14に入射し、金属薄膜14によって全反射されてプリズム12から出射される。次に、プリズム12から出射された光の光路上には、光の強度を計測する受光素子11を備えた計測装置が配置されている。
【0039】
コリメータ光源17から出射される光は、光軸に対して直角な面内に電界成分を有するS偏光なのであるが、この直角な面と金属薄膜14の入射面とが平行な位置関係になるようにコリメータ光源17が配置されているので、コリメータ光源17からの光は金属薄膜14に対してはP偏光として入射する。
【0040】
そして、コリメータ光源17を軸の周りに回転させながら、金属薄膜14への入射角Θを変化させていくと、プラズモン条件を満たす入射角Θのところでプリズム12からの出射光のエネルギーが急減する。したがって、この出射光の強度変化を受光素子11によって捉えることによって、金属薄膜14上に載置した試料の特性が計測できるようになっている。
【0041】
次に、図6に示した表面プラズモン共鳴センサーの動作について説明する。測定する試料(例えば、濃度:30%以下のショ糖溶液)は、センサー部13の基板22上に形成した厚さ40nmの金を蒸着した金属薄膜14上に所定の分量載せる。センサー部13はシリンドリカルレンズ状のプリズム12上面に設置する。センサー部13及びプリズム12は、LaK系ガラス材料(屈折率:ng=1.5)から製作できる。尚、センサー部13とプリズム12は別体に構成しているが、一体化してもよい。
【0042】
コリメータ光源17は、図6(b)に示すように、コリメータ光源17自身の軸がシリンドリカルプリズム12の軸方向と平行(図6(b)において紙面と垂直方向)になるように設置される。そして、コリメータ光源17は、プリズム12の円形を成す外周面の中心軸上のP点を中心に回転するとともに、コリメータ光源17自身の軸を中心に自転可能に設置されている。プリズム12がシリンドリカル形状とされているのは、コリメータ光源17をP点を中心に移動させるとき、コリメータ光源17からプリズム12に入射する光が常にプリズム12の外周面に垂直に入射するようにするためである。
【0043】
コリメータ光源17には、例えば、中心波長635nmの半導体レーザを備えた光源8が用いられている。そして、光源8から出射された光は、光源8とフェルール1間の開口数0.15,作動距離5mmのレンズ7により集束され、フェルール1内に実装されたシングルモード光ファイバ4に入射する。その後、光ファイバ4に融着接続されたピッチ長0.27の屈折率分布型ファイバ3を経由して、先端面2aが傾斜角Θb1=34°で研磨加工されたコアレスファイバ2に入射する。先端面2aで反射してS偏光となった光は、コアレスファイバ2の上面に装着され、コアレスファイバ2と同じ屈折率(n1=1.5)の材料を使った光学素子10の光軸に対して角度α=34°に傾斜させた出射面10bから光軸に垂直に出射する。
【0044】
コリメータ光源17から出射された光は、プリズム12に入射し、プリズム12上に載置されたセンサー部13の基板22の上面に形成された厚さ40nmの金から成る金属薄膜14の下面に入射角Θi=55±5°で入射する。そして、金属薄膜14上に載置された試料の屈折率に応じたプラズモン共鳴条件の入射角Θpで入射したときに、反射光の強度が急激に減衰する。この反射光の強度を計測することにより、プラズモン共鳴角Θpが決定される。反射光の強度は、プリズム12を介して出射される反射光の経路上に設置されたフォトデテクターアレイからなる受光素子11で光電変換して計測される。フォトデテクターアレイは、複数のフォトダイオードが並べられた長さ12mm程度の細長いアレイ状の受光器である。試料の濃度に応じて試料の屈折率が変化し、プラズモン共鳴角Θpが変動しても、12mm程度の長さとすることにより、フォトダイオード上で受光できるようになっている。このようにして表面プラズマ波の波数を決定し、試料の誘電率εsを決定し、試料中の特定物質の濃度が測定できる。
【0045】
以上、述べたように本発明の一実施形態のコリメータ光源17を表面プラズモン共鳴センサー等に使用することにより、従来必要であった偏光子115、反射体105等の部品が不要になり、実装する部品点数が減る。また、フェルール1内のファイバ体Fに光学系の機能を集約した事から光学系が大幅に小型化・集積化でき、表面プラズモン共鳴センサーを小型化することができる。さらに、ファイバ体Fの光軸に対し垂直に出射できる為、光軸の周りに回転させることができ、回転部を含めた光学系のスペースを削減でき、表面プラズモン共鳴センサーを小型化できる。さらに、測定感度の向上、光源の安定化を図るために、コリメータ光源17の光学系にフィルター機能や光アイソレータ機能などの機能を付加するのも容易であり、高機能な表面プラズモン共鳴センサーを提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1.フェルール
2.コアレスファイバ
3.GIファイバ
4.光ファイバ
5.接着剤
6.スリーブ
7.レンズ
8.光源
9.出射光
10.光学素子
11.受光素子
12.プリズム
13.センサー部
14.金属薄膜
15.偏光子
16.絞り
17.コリメータ光源
18.1/2波長板
19.試料
20.位相格子
21.戻り光
22.基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの先端に屈折率分布型ファイバが融着され、該屈折率分布型ファイバの先端側に、法線が光軸に対して成す角度がブリュースター角Θbである先端面を有するコアレスファイバが融着された光ファイバ体と、
前記コアレスファイバの外周面に設置され、前記先端面で反射されて偏光となった反射光が入射する入射面および前記反射光を前記光軸に対して垂直方向に出射する出射面を有した光学素子と、
該光学素子の前記出射面を露出させた状態で前記光ファイバ体および前記光学素子が挿入された孔を有するフェルールと
を備えたことを特徴とするコリメータ光源。
【請求項2】
前記光学素子は、前記出射面に位相格子を備えていることを特徴とする請求項1記載のコリメータ光源。
【請求項3】
内部の光路上の一平面に金属薄膜が形成されたプリズムと、
光軸を中心に回転可能に設置された、前記金属薄膜の前記プリズム側の面に向けて前記反射光を出射する請求項1または2記載のコリメータ光源と、
前記金属薄膜で反射されて前記プリズムから出射する光の強度を計測する計測装置とを備え、
前記コリメータ光源を前記光軸を中心に回転させることによって、前記金属薄膜に対する前記反射光の入射角を変化させることを特徴とする表面プラズモン共鳴センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−78110(P2012−78110A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220932(P2010−220932)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】