説明

コリメートされたガス流及び粒子源を用いる送達機器及び方法

【課題】薬剤粒子を経皮的に生体組織内へ送達するための送達機器、方法及びシステムを提供する。
【解決手段】薬剤送達機器10は、ガスを含む、または選択的にガスを生成することができるガス源と、第1の複数の粒子を含む第1の粒子源と、ガス源と流体接続されかつガス内に取り込まれる第1の複数の粒子のコリメートされた流れを形成するように適合化される第1のコリメータとを含む。またこの機器10は、第1の複数の粒子のコリメートされた流れが組織へ組織の表面に対して略垂直方向に貫入するように、組織の表面と接触しかつ組織に対して第1のコリメータを配向するように適合化される組織接触面も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、薬剤等の物質を生体組織へ投与する分野に属し、かつある実施形態においてより具体的には、薬剤を患者へ経皮送達するための機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮薬剤送達は、特に針注射を介する薬剤送達の代替としての関心分野である。経皮薬剤送達の例には、皮膚内への薬剤拡散を容易にするための経皮パッチの使用が含まれる。
【0003】
角質層は、患者の体内へ局所的に投入される薬剤の拡散に対して最も重大な障壁となる。角質層は皮膚の最上層であり、身体領域に依存して約10〜数百マイクロメートルまで厚さが変わる。これは、一緒になって穿刺が困難なブリックアンドモルタル系として作用する、脂質マトリックスに囲まれた、活性を失った扁平なケラチン生成細胞層から成る。
【0004】
大部分の経皮薬剤送達アプリケーションは、薬剤がそれらによって皮膚を横切り、体循環に至ることができる2つの主経路のうちの少なくとも一方を利用する。「細胞透過経路」を用いれば、薬剤は、角質層を構成する死んだケラチン生成細胞のリン脂質膜及び細胞質の双方を直に通過することにより皮膚を横切る。これは最短距離の経路ではあるが、薬剤は著しい透過抵抗に遭遇する。「細胞間経路」を用いれば、薬剤は皮膚細胞間の小間隙を通過し、ルートはさらに曲がりくねったものになる。角質層の厚さは約20μmでしかないが、皮膚を横切る大部分の分子の実際の拡散経路は約400μmである。実際の透過分子経路のこの20倍の増加は、薬剤の浸透率を大幅に下げる。
【0005】
経皮薬剤送達の別のアプローチは、高速ジェットを利用して、剤形に角質層を破らせるに足る運動量を与える。最も一般的な高速ジェット式注射器は、液体ベースである。液体ベースの高速ジェット式注射器は、患者に薬剤を送達するために、薬剤高分子の液体溶液またはコロイド懸濁液から成る液体ジェットを生成する。液体ジェットの速度は、100m/秒〜150m/秒の範囲内であり得る。液体ベースの高速注射器の使用は、汚染の危険性がありかつ薬剤を無駄にすることになる液飛び、液浸透性が管理されていないことによる痛み及びあざ、高いエネルギー要件、遅い送達速度、薬剤送達機器に要求される高い再現精度を妨げる有用性に関する課題及び操作スキル要件、及び粘度及び表面張力等の噴射制約に起因する配合上の課題を含む様々な課題に起因して、いまだ広く受け入れられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、患者に薬剤を送達するための新しい方法、機器及びシステムを提供することが望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様では、粒子を生体組織内へ送達するための送達機器が提供される。この機器は、ガスを含む、または選択的にガスを生成することができるガス源と、第1の複数の粒子を含む第1の粒子源と、ガス源と流体接続されかつガス内に取り込まれる第1の複数の粒子のコリメートされた流れを形成するように適合化される第1のコリメータとを含む。またこの機器は、第1の複数の粒子のコリメートされた流れが組織へ組織の表面に対して略垂直方向に貫入するように、組織の表面と接触しかつ組織に対して第1のコリメータを配向するように適合化される組織接触面も含む。
【0008】
別の態様では、生体組織内へ粒子を送達するための方法が提供される。この方法は、ガス流を生成するために加圧ガスをコリメータ内へ送達することと、次に、ガス内に取り込まれる第1の複数の粒子のコリメートされた流れを生成するために第1の複数の粒子をガス流内へ放出することを含む。この方法はさらに、第1の複数の粒子を組織の表面を介して組織の表面に対して略垂直方向へ送達することも含む。
【0009】
さらに別の態様では、生体組織内へ薬剤を送達するための薬物送達システムが提供される。このシステムは、組織内へ粒子を送達するための粒子送達機器を含み、前記粒子送達機器は、ガスを含むガス源と、第1の複数の粒子を含む第1の粒子源と、ガス源と流体接続されかつガス内に取り込まれる第1の複数の粒子のコリメートされた流れを形成するように適合化される第1のコリメータと、第1の複数の粒子のコリメートされた流れが組織へ組織の表面に対して略垂直方向に貫入するように、組織の表面と接触しかつ組織に対して第1のコリメータを配向すべく適合化される組織接触面とを含む。またこのシステムは、薬剤透過性の組織接触面と、薬剤不透過性のバッキング層と、組織接触面とバッキング層との間に包含される薬剤とを含む薬剤送達パッチも含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器を示す斜視図である。
【図2】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器を示す分解斜視図である。
【図3】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器を示す断面図である。
【図4】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器のためのカートリッジを示す詳細図である。
【図5】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器を示す分解斜視図である。
【図6】本開示の1つ以上の実施形態による薬剤送達機器及び粒子放出テープのためのカートリッジを示す詳細図である。
【図7】本開示の1つ以上の実施形態による、粒子放出テープを含む薬剤送達機器を示す断面図である。
【図8】本開示の1つ以上の実施形態による、コリメートされたガス流内の粒子の組織内への送達を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
薬剤及び他のタイプの粒子を組織内へ送達するための新しい機器、方法及びシステムを提供する。実施形態によっては、薬剤または粒子の送達は、局所的または全身的な薬剤送達等の薬剤または他の粒子の通過を見込んで組織内に細孔を形成すべく複数のコリメートされたガス流をある組織へと方向づけることによって達成される。薬剤粒子の視準は、効果的には、物質のx,y及びz分布/浸透の優れた制御を有効化し、これにより効果的に、無痛/最低限の痛み、及び調整可能かつ一様な薬剤粒子運動量が与えられる。ある実施形態では、細孔は、組織に当たるコリメートされたガス流におけるガス分子の運動量によって形成される。組織の細孔形成は、組織に対する薬剤または他の粒子の衝突によって強化されてもよく、これにより、薬剤または他の粒子は組織の表面または外層に浸透することができる。
【0012】
さらに、約100μm未満または約50μm未満のビーム直径を約1cm以上の長さに渡って保持するコリメートされた超音速粒子流を生成するための機器、方法及びシステムを提供する。効果的には、実施形態によって、このような機器及び方法は、他の無針注入技術に伴う反跳/液飛び、痛み及びあざを減らし、またはなくする。実施形態によっては、このような機器、方法及びシステムは、薬剤送達の増大された制御及び信頼性も提供し、かつ無針薬剤注入の実行に要求される操作スキルを低減する。次に、このことは、効果的により精確かつ精密な薬剤投与を促進することができる。
【0013】
本明細書に記述される機器、システム及び方法は、治療的、診断的または他の物質を、皮膚またはその一部、粘膜組織、血管組織、リンパ組織及びこれらに類似するものを含む、適切な細胞、組織または器官を含む様々なタイプの組織または生体バリア内へ、またはこれらを介して標的送達するために用いられてもよい。他の実施形態では、標的細胞または組織は、様々な動物、植物、昆虫または他の有機体に属するものであってもよい。組織は、人間または他の哺乳動物に属するものであってもよい。例えば、薬剤または他の物質は、角質層を介してその下の真皮組織へと送達されてもよい。組織は、薬剤を必要とする患者の生体組織であってもよい。患者は、例えば人、牛、羊、馬、豚、犬、猫または他の哺乳動物であってもよい。
【0014】
経皮薬剤送達等のための薬剤送達機器を開示する。ある態様において、薬剤送達機器は、加圧ガスを包含する、または生成するガス源を含む。薬剤送達機器は、ガス源と流体接続される1つ以上のコリメータも含む。各コリメータは、ガスを含む複数のコリメートされたガス流を形成するように適合化されてもよい。この機器はさらに、複数のコリメートされたガス流が皮膚に対して略垂直方向で皮膚に貫入するように皮膚(または他の組織表面)と結合しかつコリメータを皮膚と位置合わせすべく適合化される皮膚接触面を含んでもよい。
【0015】
別の態様においては、固体粒子または液体形式の薬剤を含む薬剤リザーバと、加圧ガスを貯蔵または生成するためのガス源と、複数の導管を備えるコリメータとを含む薬剤送達機器を提供する。複数の導管の各々は、入口と、出口と、入口と出口との間の薬剤ポートとを含んでもよい。各薬剤ポートは薬剤リザーバと流体接続され(または流体接続状態になるように動作可能であり)、かつ複数の導管の各々の入口端はガス源と流体接続される(または流体接続状態になるように動作可能である)。
【0016】
ある実施形態において、薬剤送達機器は、人の角質層に貫入するに足る速度を有するコリメートされたガス流を生成するように構成される。例えば、薬剤送達機器は、約100m/秒〜約1500m/秒までの速度を有するコリメートされたガス流を生成するように構成されてもよい。ある実施形態において、コリメートされたガス流の各々は、コリメータの出口から約0.5mm〜10mmの距離で約5μmから約500μmまでの直径を有する。
【0017】
有効な視準は、推進剤を導管内へ送達し、かつ推進剤が粒子をバリア内へ推進するように粒子をチャネルへ制御可能式に導入または計量することによって達成されてもよい。チャネルまたは導管の形状は、推進剤及び粒子のバリアへのコリメートされた(即ち、収束された)飛翔を生み出すものであってもよい。次に、粒子は、1つ以上の材料入口ポートから推進剤の流れへと導入されてもよい。推進剤は、チャネルへ高速で進入してもよい。或いは、推進剤はチャネル内へ高圧で導入されてもよく、かつチャネルは推進剤の高圧を高速へ変換するためのくびれ(例えば、ドラバル型または他の先細/末広型ノズル)を含んでもよい。このような事例では、推進剤はチャネルの近位端(即ち、先細領域の近く)に位置決めされるポートに導入され、かつ材料ポートがチャネルの遠位端の近くに(末広領域として画定される領域に、またはそのさらなる下流に)設けられ、推進剤の流れへの材料の導入が可能にされる。推進剤及び材料のフローパターンは、10ミリメートルまでの距離に渡って相対的にコリメートされたままであり得ることが実証されている。例えば、流れは出口の幅の少なくとも4倍の距離に渡って出口の幅から約20パーセントを超えて偏向せず、かつ好適には約10パーセントを超えて偏向しない。
【0018】
ある実施形態において、コリメータは複数の導管を含んでもよい。各導管は、入口と出口とを有してもよい。導管は各々、入口と出口との間に位置決めされるベンチュリを有してもよい。ある実施形態において、各導管は、入口下流でガス流を拡張する拡張ネック領域を有する。例えば、拡張ネック領域はベンチュリの出口に設けられてもよい。
【0019】
実施形態によっては、薬剤送達機器は、薬剤が各ガス流に取り込まれた状態になりかつ皮膚内へ皮膚に対して略垂直方向に移送されるように、薬剤源からコリメートされたガス流内へと薬剤を放出する。例えば、導管は各々、導管の入口と出口との間に薬剤ポート(即ち、開口)を有してもよく、かつ薬剤ポートは薬剤源と流体接続されてもよい。ある実施形態では、薬剤ポートはベンチュリの下流に存在する。実施形態によっては、薬剤送達機器は、薬剤源とコリメータとの間に破壊可能膜を含む。例えば、破壊可能膜は、膜が破壊されるまで薬剤ポートを密封してもよい。破壊可能膜の破壊は、機器のオペレータによって制御されてもよい。
【0020】
材料ポートがベンチュリの下流または高速ガス流が確立されるロケーションの下流に配置されると、粒子は、圧力差(例えば、ベルヌーイの力)によって高速ガス流へと押し入れられてもよい。例えば、ベルヌーイの式を基礎として、粒子が750m/秒の高速ガス流に隣接する開放型リザーバ内に包含されていれば、約2.2atmの圧力差が発生されて粒子をガス流内へ押し入れる。
【0021】
薬剤送達機器は、皮膚接触面が皮膚に当てて置かれるとコリメータ出口と皮膚との間に間隙が生じるように、コリメータと皮膚接触面との間にスタンドオフを含んでもよい。例えば、スタンドオフは約0.5mm〜約10mmの間隙を生成してもよい。
【0022】
実施形態によっては、コリメータ及び薬剤源は取外し可能なカートリッジの形式で準備されてもよい。薬剤送達機器は、1つ以上の取外し可能なカートリッジを受け入れるための1つ以上のカートリッジレシーバを含んでもよい。カートリッジは、カートリッジに含まれる薬剤を患者の皮膚内へ送達するためにレシーバへ挿入されてもよい。この後、薬剤枯渇状態であり得るカートリッジは取り外され、かつ交換されてもよい。実施形態によっては、薬剤送達機器は、複数のカートリッジを受け入れるための複数のカートリッジレシーバを含む。ある実施形態において、各カートリッジは、個々の投与量に適合する薬剤量を含んでもよい。
【0023】
図1〜図3には、薬剤送達機器10の例示的な実施形態が示されている。薬剤送達機器10は、ガス源ハウジング12とカートリッジハウジング14とを含む。ガス源ハウジング12は、ガス源ハウジング12の円筒側壁を指で握り込むと手に心地よく収まるような大きさにされてもよい。カートリッジハウジング14は、薬剤送達機器10の一方の端に位置決めされる。図2に示されているように、カートリッジハウジング14は、薬剤送達機器10の押しスイッチ16とは反対側の端に位置決めされてもよい。押しスイッチ16は薬剤送達機器10の一方の端に示されているが、押しスイッチ16は、ガス源ハウジング12の円筒側壁上等の機器上の他の場所に位置決めされることも可能である。カートリッジハウジング14は、一方の端に組織接触面22を含む。組織接触面22は、ガス源を組織接触面22と結合する組織表面に対して略垂直方向に位置合わせするように適合化される概して平坦な表面であってもよい。
【0024】
図3に示されているように、ガス源ハウジング12は、加圧ガスを含む、または発生するガス源18も包囲する。図3の実施形態において、加圧ガスは、3つのカートリッジ34の1つへ、対応するガス送達導管20を介して選択的に送達される。ガスの送達は、押しスイッチ16を押すことによって作動されてもよい。次に、電源32及びコントローラ33は、ガス源18から所望されるガス送達導管20を介する加圧ガスの流れを制御するためにバルブを選択的に作動してもよい。例えば、コントローラ33は、押しスイッチ16を毎回押して3つの制御バルブのうちの1つを連続的に作動してもよい。ガスが機器上で発生される実施形態では、薬剤送達機器10及びコントローラ33もガス発生プロセスを作動してもよい。
【0025】
カートリッジハウジング14は、3つのカートリッジ34を受け入れるために3つのカートリッジレシーバを含む。カートリッジ34は取外し可能かつ交換可能式であってもよく、よって、もとのカートリッジ34が使い果たされると、新しいカートリッジをカートリッジレシーバに挿入することができる。この目的に沿って、カートリッジハウジング14は、使い果たされたカートリッジのカートリッジハウジング14からの取外しを容易にするために、例えばばね式の押し棒であるカートリッジ取外し機器を備えてもよい。この実施形態には3つのカートリッジ34用のスロットが示されているが、この機器が1つ、2つ、4つまたは任意数のカートリッジ34を収容するように設計される可能性もあることは留意されるべきである。カートリッジハウジング14は、カートリッジ34の端と組織接触面22との間に距離xの間隙を与えるスタンドオフ36を含む。実施形態によっては、間隙の距離xは約0.1mm〜約5mmの間であってもよい。
【0026】
この機器は、加圧ガスを包含する、または生成するガス源を含んでもよい。例えば、約0.5MPa以上のガス圧であれば、薬剤送達機器からコリメートされたガス/薬剤を取り込んで駆動するためには十分である。加圧ガスは、空気、二酸化炭素、窒素または酸素を含む、但しこれらに限定されない様々なガスであってもよい。実施形態によっては、圧力は機器上で発生される。例えば、ガスは、機器上で化学反応または電気化学反応によって発生されてもよい。このようなシステムの一例は、水を水素ガス(H)と酸素ガス(O)とに分解する電気化学セルを含む。水源は液体形状である可能性もあり、または機器上にヒドロゲル形式で貯蔵される可能性もある。別の例は、水を沸騰させて蒸気を発生させる等の相転移に依存するシステムである。さらに他の例には、化学反応または化学分解、例えばアジ化ナトリウムのナトリウムと窒素ガス(N)への分解、または二酸化炭素ガス(CO)を生み出す炭酸カルシウムと酸との反応を利用するシステムが含まれる。実施形態によっては、ガスは加圧容器内で供給され、かつ必要なときにバルブ等を介してコリメータへ送達される。例えば、バルブは、薬剤送達機器上の押しスイッチを押すことによって作動されてもよい。実施形態によっては、圧力は、ポンプ等の機械的機器によって発生されてもよい。
【0027】
この機器は、複数の離散的なコリメートされたガス流を生成するためのコリメータを含んでもよい。本明細書において、「コリメートされた」という言い回しは、側壁構造体による拘束を受けない状態を含んで所望される有用な距離に渡り明確かつ略一定の直径を保持する、固体粒子または液体が取り込まれて包含され得るガスの流れを指す。例えば、コリメータは、約0.5mm〜約10mmの距離に渡って約5μm〜約500μmの直径を保持してもよい。コリメータ及び薬剤送達機器は、約100m/秒〜約1500m/秒の速度を有するガス流を生成するように構成されかつ配置されてもよい。
【0028】
図4には、例示的なコリメータ40が示されている。コリメータ40は、プレートの表面をエッチングされても、カットまたは圧延されてもよい複数の導管を含む。図4において、導管は開放型チャネルとして示されているが、使用時にはチャネルが最上層によって境界を付けられることを理解されたい。最上層はカートリッジ34と一体式である場合もあれば、カートリッジ34がカートリッジレシーバ内に受容されるとコリメータ40と結合するカートリッジレシーバの表面である場合もある。各導管は、カートリッジ34の一方の端に入口44を有し、かつカートリッジ34の他端に出口46を有する。各導管内には、入口44と出口46との間にベンチュリ48が設けられる。拡張ネック領域50は、各ベンチュリ48のすぐ下流に設けられる。コリメートされたガス流は、加圧ガスがベンチュリ48を通過し、拡張ネック領域50へと拡大しかつ明確な出口46から出るにつれて形成される。ベンチュリは、約1大気圧の出口圧力を生成するように、即ち、フリージェット内部の圧力が大気圧に略等しく、よって拡張ジェットまたは収縮ジェットを生成しないように設計される。薬剤ポート52は、薬剤源42から薬剤を放出しかつガス流に薬剤を取り込むためにベンチュリ48の下流に設けられる。
【0029】
コリメータ40を薬剤送達に関連して記述してきたが、続いてさらに詳しく説明するように、コリメータが他の液体または粒子を組織内へ送達するために使用される場合もあることは留意されるべきである。
【0030】
薬剤または他の粒子は、薬剤送達機器上で薬剤または粒子源内に供給されてもよい。実施形態によっては、薬剤または粒子はリザーバ内に包含される。先に述べたように、薬剤源とコリメータとの間には、薬剤を通して放出させるための薬剤ポートが設けられてもよい。
【0031】
薬剤の放出は、薬剤ポートを密封する破壊可能膜によって制御されてもよい。破壊可能膜は、コリメータを介して供給される加圧ガスに起因して生じる圧力変化によって破壊されてもよい。或いは、破壊可能膜は、別のエレメントの作動によって破壊されてもよい。例えば、破壊可能膜は、電熱アブレーション、機械的穿刺(例えば、セプタを用いる)、加熱(例えば、膜を溶融する)、化学反応またはリザーバ内容物の容量拡大によって破壊されてもよい。
【0032】
放出機器としては、薬剤リザーバからの薬剤放出を制御するための他の機器が設けられてもよい。例えば、後に放出が望まれて放出機器が作動されるようなときまで薬剤ポートを介する薬剤の放出を防止するために、電荷または可動カバーが用いられてもよい。
【0033】
他の実施形態では、薬剤は放出活性化テープから放出されてもよい。例えば、放出活性化テープは、テープ上に配置される薬剤を有してもよい。実施形態によっては、放出活性化テープは、他のタイプの固体粒子または液体を放出するために用いられてもよい。放出活性化テープは、紫外線感受性、感熱性または電気感受性材料を含んでもよい。また本機器は、放出活性化テープからの薬剤または他の粒子の放出を作動するように適合化されるコントローラも含んでもよい。実施形態によっては、コントローラは、加圧ガスがコリメータを通過し始めた後に放出活性化テープからの薬剤の放出を作動するように適合化される。
【0034】
実施形態によっては、放出活性化テープは第1のコリメータ内に、またはこれに隣接して位置合わせされる。例えば、図6に示されているように、カートリッジ60は、プレートの表面をエッチングされても、カットまたは圧延されてもよい複数の導管またはチャネルを有するコリメータ62を含んでもよい。図6において、導管は開放型チャネルとして示されているが、使用時にはチャネルが最上層によって境界を付けられることを理解されたい。最上層は、カートリッジ60と一体式であってもよい。各導管は、カートリッジ60の一方の端に入口66を有し、かつカートリッジ60の他端に出口72を有する。各導管内には、入口66と出口72との間にベンチュリ64が設けられる。拡張ネック領域68は、各ベンチュリ64のすぐ下流に設けられる。コリメートされたガス流は、加圧ガスがベンチュリ64を通過し、拡張ネック領域68へと拡大しかつ明確な出口72から出るにつれて形成される。ベンチュリは、約1大気圧の出口圧力を生成するように、即ち、フリージェット内部の圧力が大気圧に略等しく、よって拡張ジェットまたは収縮ジェットを生成しないように設計される。粒子放出テープ74は、薬剤または他の粒子を放出しかつ薬剤または他の粒子をガス流に取り込むために、チャネルに隣接してベンチュリ64の下流に設けられる。コントローラ65は、粒子放出テープ74からの粒子の放出を選択的に作動してもよい。
【0035】
図7に示されているように、粒子放出テープ74は、コリメータ62のチャネル78内に、またはこれに隣接して位置合わせされてもよい。図示されている実施形態では、粒子放出テープ74は、コリメータの上板76の表面にエッチングされ、カットされ、または圧延されるリリーフ内に位置づけられる。従って、粒子放出テープ74は、ベンチュリと出口72との間でチャネル78に面する。粒子放出テープ74が、(例えば、テープへの熱、紫外線または電気エネルギーの印加によって)粒子放出テープ74に包含される粒子を放出するように作動されると、粒子はチャネル78内へ放出され、ここでチャネル78を介して流れるガスに取り込まれる。
【0036】
この機器は、様々なタイプの固体粒子及び液体を送達してもよい。例えば、この機器は、薬剤、組織擦過粒子、粒子化粧品、栄養または栄養豊富な粒子または組織マーキング粒子を生体組織内へ送達してもよい。
【0037】
本明細書において、「薬剤」という用語は、技術上既知である方法による、かつ/または本開示において教示される方法による投与に適する、所望される生物学的または薬理学的効果を誘導する任意の化学的または生物学的物質または化合物を指し、前記所望される生物学的または薬理学的効果は、(1)有機体に対して予防効果を有しかつ感染防止等望ましくない生物学的効果を防止すること、(2)疾患により生じる状態を緩和する、例えば疾患の結果として生じる痛みまたは炎症を緩和すること、かつ/または(3)疾患を緩和する、減らす、または有機体から完全になくすこと、を含み得るがこれらに限定されない。この効果は、局所麻酔効果を与えること等、局所的である場合もあれば、全身的である場合もある。薬剤は、治療剤であっても、予防剤であってもよい。例えば、薬剤はワクチンであってもよい。薬剤は、略純粋形態で、または1つ以上の技術上既知の賦形剤と共に配合されてもよい。賦形剤材料は、薬剤と均質的に混合されても、薬剤と不均一に結合されてもよい。例えば、薬剤は、技術上既知である賦形剤(基質)材料内に分散されても、コアまたはコーティング層内に賦形剤材料との多層構造で包含されてもよい。実施形態によっては、賦形剤材料は、薬剤のインビボ放出を制御するように、例えば薬剤の徐放性(例えば、制御された、または持続された放出)をもたらすように機能してもよい。
【0038】
また、この機器は、組織擦過粒子を包含しかつ送達してもよい。組織擦過粒子は、生体組織の表面に少なくとも一時的に微小導管を形成するために、機器から送達されかつ生体組織へ当たった後に生体組織の表面を擦過する、または表面に貫入することに適する任意の粒子であってもよい。本発明の一実施形態では、適切な微小導管を形成するために、衝突後も組織内で溶解しない、「アルミナ」とも称される酸化アルミニウムから成る粒子等の持続的中実粒子が使用される。ある実施形態において、使用に適する粒子は、正常な生理学的組織の温度において、例えば正常な人の体温において液体状態で存在する生体適合性物質から成る固相粒子を含む。ある実施形態において、粒子は約33゜C未満の融点を有する。例えば、組織擦過粒子は凍結水を含んでもよい。このような固相粒子は、組織表面の局所領域上に当たり、かつ組織内に進入して微小導管を生成する。このような固相粒子は組織内で溶融してもよく、結果的に生じる液体は組織間質液となってもよい。
【0039】
この機器は、栄養豊富な、または栄養粒子を包含しかつ送達してもよい。栄養豊富な、または栄養粒子は、生体組織細胞の生存可能性を促進または保持することに適する任意の粒子であってもよい。このような粒子には、ビタミン、ミネラル及び他の栄養素を含む非薬剤粒子が含まれてもよい。
【0040】
また、この機器は、粒子化粧品を包含しかつ送達してもよい。粒子化粧品は、組織へ送達されると生体組織へ美容効果をもたらすことに適する任意の粒子であってもよい。例えば、これらの粒子は、皺を目立たなくする粒子、生体組織の色を提供する、またはその着色を変える粒子、または局所的な腫れを生成または減らす粒子であってもよい。
【0041】
また、この機器は、組織マーキング粒子を包含しかつ送達してもよい。組織マーキング粒子は、視覚的に行われるそのような識別が技術支援(例えば、画像技術)によるものであるか否かに関わらず、識別のために組織をマーキングすることに適する任意の粒子であってもよい。例えば、これらの粒子はインクまたは染料を含んでもよく、またはこれらの粒子は、可視である、またはX線、IR、MRI、CTまたは超音波等の画像技術によって画像化できる作用物質を含んでもよい。
【0042】
ある実施形態において、固体粒子は、約0.1ミクロン〜約250ミクロンの容積平均直径を有する。ある好適な実施形態において、固体粒子は、導管またはチャネルの幅の1/5以下、かつさらに好適には、導管またはチャネルの幅の1/10以下の容積平均直径を有する。
【0043】
ガス流及び薬剤または他の粒子を人または動物の組織内へ無針注入するための方法を提供する。本明細書では、多くの例を皮膚への薬剤送達のコンテキストで説明しているが、本明細書に開示される薬剤送達機器は、薬剤及び/または他の粒子を他の組織表面内へ送達するために用いられてもよい。例えば、薬剤送達機器及び方法は、薬剤を眼または粘膜組織へ送達するために用いられてもよい。眼科用途では、コリメートされた流れの速度は、薬剤を硝子体液まで送達するに足る深さで送達するように制御されてもよい。
【0044】
一態様では、人または動物の組織内へ物質を送達するための方法が提供される。この方法は、加圧ガスをコリメータへ送達して複数のコリメートされたガス流を生成することと、複数のコリメートされたガス流によって組織に貫入し、組織内に複数の細孔を生成することと、複数の細孔を介して組織内へ物質を送達することを含む。例えば、この方法は、薬剤を組織内へ送達するために用いられてもよい。薬剤または他の物質は、約0.1ミクロン〜約250ミクロンの容積平均直径を有する固体粒子の形態であってもよい。ある好適な実施形態において、固体粒子は、導管またはチャネルの幅の1/5以下、かつさらに好適には、導管またはチャネルの幅の1/10以下の容積平均直径を有する。
【0045】
コリメータは複数の導管を備えてもよく、かつコリメートされたガス流は、加圧ガスを複数の導管の各々におけるベンチュリを介して拡張させることにより生成されてもよい。複数のコリメートされたガス流は各々、導管出口において約5μm〜約500μmの直径を有してもよい。複数のコリメートされたガス流は各々、約100m/秒〜約1500m/秒の速度を有してもよい。加圧ガスは、機器上のガス源から供給されてもよい。実施形態によっては、ガスは機器上で発生されてもよい。
【0046】
実施形態によっては、この方法は、薬剤等の物質を複数のコリメートされたガス流の各々に取り込むことを含む。ある実施形態において、複数のコリメートされたガス流は、物質が複数のコリメートされたガス流に取り込まれる前に確立される。物質は、膜を破壊して複数のコリメートされたガス流の各々に物質を放出することにより、コリメートされた流れに取り込まれてもよい。コリメートされたガス流への物質の取り込みは、コリメートされたガス流の発生の略直後に発生する場合もあれば、例えば流れの安定化を見込んでそれから少し後に発生する場合もある。
【0047】
使用に際して、機器の組織接触面は所望される組織表面に当てて置かれてもよく、次に、ガス源は加圧ガスをコリメータへ送達するように作動されてもよい。例えば、組織接触面は、皮膚または粘膜表面へ当てて置かれてもよい。或いは、眼科用途では、組織接触面は強膜に当てて置かれてもよい。ガス源は、コリメータへの加圧ガス送達を開始するために、押しスイッチ(例えば図3に示される)または別のエレメントを押すことによって作動されてもよい。ある実施形態において、押しスイッチを押すことは、薬剤ポートを密封する破壊可能膜の破裂も作動してもよい。
【0048】
図8に示されているように、薬剤または他の粒子の組織内への送達は、キャリアガス88に取り込まれる明確なコリメートされた粒子流を形成することによって達成されてもよい。明確なコリメートされた流れ内に存在する粒子は、組織に当たった時点で組織92内に微小導管94を(少なくとも一時的に)形成し、かつ形成された微小導管94を介して組織92内へ入る。
【0049】
図示されている実施形態において、機器の皮膚接触面90は、コリメータ84のチャネル82が組織92に対して略垂直方向に位置合わせされるように組織92(例えば、皮膚)に当てて置かれる。コリメータ84は、好適には、コリメータ84の出口86を出る各粒子流が出口86と組織92との間で約5μm〜約500μmの幅を有する明確なコリメートされた経路を辿るように構成される。コリメートされたガス流(及びその中に取り込まれた粒子)は各々、約100m/秒〜約1500m/秒の速度を有してもよい。コリメータ84の出口86と組織92との距離xは、好適には約0.5mm〜約10mmの間である。
【0050】
この機器は、他の物質を組織内へ送達するためにも用いられてもよい。例えば、前述の機器は、細孔形成増強剤、粒子化粧品、栄養/栄養豊富な粒子及び/またはマーキング粒子を含みかつこれらを組織内へ送達するために用いられてもよい。
【0051】
実施形態によっては、この機器は、組織内への薬剤送達を容易にするために、組織の細孔形成を増強する物質を送達してもよい。例えば、これまでに述べた方法のうちの何れかにおいて、この機器は、組織内に少なくとも一時的に微小導管または細孔を形成するために、組織内へ擦過粒子を送達すべく用いられてもよい。この後、薬剤または他の物質は、微小細管を介して組織内へ送達されてもよい。ある例示的な実施形態では、この機器は、角質層内に微小細管を形成するために擦過粒子を皮膚内へ送達すべく用いられてもよい。薬剤を包含するパッチ等の送達システムは、次に組織部位へ貼付されてもよく、かつ薬剤は微小細管を介して組織部位へ送達されてもよい。或いは、この機器は、組織へ擦過粒子を、次いで薬剤等の別の物質を順次送達するように構成されてもよい。このような実施形態では、擦過粒子は、第1の時間期間に渡ってコリメータ内へ放出されてもよく、次に、例えば薬剤である他の物質が後の第2の時間期間に渡ってコリメータ内へ放出されかつ擦過粒子により形成された微小細管または細孔を介して組織内へ侵入してもよい。
【0052】
また、薬剤及び他の粒子を送達するためのシステムも開示する。ある態様において、このシステムは、ガス源と1つ以上のカートリッジレシーバとを備える薬剤送達機器を含む。またこのシステムは、カートリッジレシーバの各々へ差し込まれるように適合化される1つ以上のカートリッジも含む。各カートリッジは、コリメータと薬剤源とを含む。薬剤源は、薬剤を固体粒子または液体形式で包含してもよい。コリメータは、ガスがガス源からコリメータへ供給される際に、ガスに取り込まれた薬剤を含む複数のコリメートされたガス流を形成するように適合化されてもよい。
【0053】
実施形態によっては、各カートリッジレシーバまたはカートリッジは、ガス源からコリメータへガスを送達するためのマニホールドをさらに含む。各コリメータは、複数の導管を含んでもよい。各導管は、入口と、出口と、入口と出口との間のベンチュリとを有してもよい。導管は各々、入口と出口との間のベンチュリの下流に拡張ネック領域及び薬剤ポートも有してもよい。薬剤ポートは、薬剤源と流体連通している。薬剤源は、薬剤を含む薬剤リザーバであってもよい。実施形態によっては、各カートリッジはさらに、コリメータと薬剤源との間に破壊可能膜を含んでもよい。破壊可能膜は、薬剤ポートの各々を密封する。
【0054】
実施形態によっては、薬剤送達機器はさらに、カートリッジがカートリッジレシーバ内に位置づけられると導管が組織に対して略垂直方向へ位置合わせされるように、所望される組織表面と結合しかつ第1のコリメータを組織と位置合わせすべく適合化される組織接触面を含む。薬剤送達機器はさらに、組織接触面が組織表面に当てて置かれると第1のコリメータと組織表面との間に間隙が設けられるように、第1のカートリッジが第1のカートリッジレシーバ内に位置づけられた場合の第1のコリメータと組織接触面との間にスタンドオフを含んでもよい。例えば、スタンドオフは約0.5mm〜約10mmまでの間隙を生成してもよい。薬剤送達機器は、第1のコリメータから約0.5mm〜10mmの距離で約5μm〜約500μmの直径を有する複数のコリメートされたガス流を生成するように適合化されてもよい。実施形態によっては、薬剤送達機器は、人の角質層に貫入するに足る速度を有するコリメートされたガス流を生成するように構成される。
【0055】
図5には、ある例示的な薬物送達システムが示されている。このシステムは、カートリッジハウジング14を有する薬剤送達機器10を含む。カートリッジハウジング14は、3つの交換可能なカートリッジ34を受け入れるために3つのカートリッジレシーバを含む。交換可能なカートリッジ34は、カートリッジハウジングのカートリッジレシーバへ挿入されてもよく、次に、使い果たされた後にカートリッジハウジングから取り出されてもよい。3つの交換可能なカートリッジ34及びカートリッジレシーバが図示されているが、カートリッジハウジング14は任意数のカートリッジ34を収容するように製造されてもよい。
【0056】
先に述べたように、薬剤送達機器は、薬剤または他の粒子を包含する取外し可能かつ/または交換可能なカートリッジを含んでもよい。各カートリッジは、個々の投与量に足りる薬剤量を含んでもよい。各カートリッジは、各カートリッジに一体式に関連づけられるコリメータも含んでもよい。
【0057】
図4には、ある例示的なカートリッジ34が示されている。図示されている実施形態では、コリメータ40は内部に形成された複数の導管を有するプレートの形式である。図示されていないが、コリメータの頂部上には、プレート内に形成される導管の開放された頂部を密封するために上板または他のエレメントが置かれてもよい。コリメータ40は、薬剤源42へ付着される。薬剤源42は、固体粒子または液体形式の薬剤を包含するリザーバであってもよい。コリメータ40の導管は、ベンチュリ48の下流で導管内に設けられる薬剤ポート52を介して薬剤源42と流体接続される。
【0058】
図6〜図7には、別のカートリッジ60が示されている。図示されている実施形態では、コリメータ62は内部に形成された複数の導管またはチャネルを有するプレートの形式である。図7に示されているように、コリメータ62の頂部上には、プレート内に形成される導管の開放された頂部を密封するために、かつコリメータの上板76のリリーフ内に配置される粒子放出テープ74を支持するためにコリメータの上板76が置かれてもよい。従って、粒子放出テープ74はコリメータ62のチャネル78に対面する。
【0059】
実施形態によっては、カートリッジは少なくとも2つの異なる物質を包含してもよい。各物質は、リザーバまたは放出活性化テープ等のソースからコリメータ内へ送達されてもよい。例えば、カートリッジは、各々が異なる物質を包含する2つ以上のリザーバを含んでもよい。或いは、カートリッジは、第1の物質を含む放出活性化テープと、第2の物質を包含するリザーバとを含んでもよい。カートリッジは、これらの物質が異なる時間に、例えば連続して送達され得るように各物質を独立して放出すべく適合化されてもよい。
【0060】
実施形態によっては、2つ以上の物質は各々薬剤であってもよい。例えば、併用療法において有益な2つ以上の薬剤が組織へ送達されてもよい。他の実施形態では、カートリッジは、擦過粒子及び薬剤を含んでもよい。カートリッジは、擦過粒子が薬剤送達より前にコリメータから放出され得るように、擦過粒子及び薬剤のコリメータへの独立した送達を見込むべく適合化されてもよい。
【0061】
実施形態によっては、この機器により組織内に形成される微小細管を介して組織内へ薬剤を送達するために、この機器に組み合わせて薬剤送達パッチが用いられてもよい。パッチは、薬剤透過性の組織接触面と、薬剤不透過性のバッキング層と、組織接触面とバッキング層との間に包含される薬剤とを含んでもよい。パッチは、パッチを皮膚へ接着することに適する接着剤を含んでもよい。薬剤送達パッチは、パッチに包含される薬剤がパッチの薬剤透過性組織接触面を介して組織内へ拡散するように、この機器により処置される組織部位へ貼付されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を生体組織内へ送達するための送達機器であって、
ガスを含む、または選択的にガスを生成することができるガス源と、
第1の複数の粒子を含む第1の粒子源と、
前記ガス源と流体接続されかつ前記ガス内に取り込まれる前記第1の複数の粒子のコリメートされた流れを形成するように適合化される第1のコリメータと、
前記第1の複数の粒子の前記コリメートされた流れが前記組織へ前記組織の表面に対して略垂直方向に貫入するように、前記組織の表面と接触しかつ前記組織に対して前記第1のコリメータを配向するように適合化される組織接触面とを備える送達機器。
【請求項2】
前記第1の複数の粒子は、組織擦過粒子、組織マーキング粒子、栄養豊富な粒子、栄養粒子または粒子化粧品または薬剤粒子を含む、請求項1に記載の送達機器。
【請求項3】
第2の複数の粒子を含む第2の粒子源をさらに備え、前記第1のコリメータは、前記ガスに取り込まれる前記第2の複数の粒子の第2のコリメートされた流れを形成するように適合化される、請求項1に記載の送達機器。
【請求項4】
前記送達機器は、前記第2のコリメートされた粒子流を、前記第1のコリメートされた粒子流の形成後に形成するように適合化される、請求項3に記載の送達機器。
【請求項5】
前記第1のコリメータは、前記ガスに取り込まれる前記第1の複数の粒子の複数のコリメートされた流れを形成するように適合化される、請求項1に記載の送達機器。
【請求項6】
前記第1のコリメータ及び前記第1の粒子源は取外し可能なカートリッジ内に設けられる、請求項1に記載の送達機器。
【請求項7】
前記第1のコリメータ、前記第1の粒子源及び前記第2の粒子源は取外し可能なカートリッジ内に設けられる、請求項5に記載の送達機器。
【請求項8】
前記第1のコリメータは入口端と出口端とを有し、前記第1の粒子源は、前記第1のコリメータの前記入口端と前記出口端との間で前記第1の複数の粒子を前記ガス内へ放出するように位置合わせされかつ構成される、請求項1に記載の送達機器。
【請求項9】
薬剤を生体組織内へ送達するための薬物送達システムであって、
粒子を組織内へ送達するための粒子送達機器であって、
ガスを含むガス源と、
第1の複数の粒子を含む第1の粒子源と、
前記ガス源と流体接続されかつ前記ガス内に取り込まれる前記第1の複数の粒子のコリメートされた流れを形成するように適合化される第1のコリメータと、
前記第1の複数の粒子の前記コリメートされた流れが前記組織へ前記組織の表面に対して略垂直方向に貫入するように、前記組織の前記表面と接触しかつ前記組織に対して前記第1のコリメータを配向すべく適合化される組織接触面とを備える粒子送達機器と、
薬剤透過性組織接触面、薬剤不透過性バッキング層及び前記組織接触面と前記バッキング層との間に包含される薬剤を備える薬剤送達パッチとを備える薬物送達システム。
【請求項10】
前記第1の複数の粒子は組織擦過粒子を含む、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223562(P2012−223562A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77750(P2012−77750)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】