説明

コリンエステラーゼ部分とポリマーとのコンジュゲート

コリンエステラーゼ部分と1つ又は複数の非ペプチド性水溶性ポリマーとのコンジュゲートが提供される。典型的には、非ペプチド性水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)又はその誘導体である。また、特に、コンジュゲートを含む組成物、コンジュゲートの作製方法、及び組成物の患者への投与方法も提供される。本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、このコリンエステラーゼ部分の残基は、コリンエステラーゼ部分の残基中のシステイン残基を介して水溶性ポリマーと共有結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2008年5月16日に出願された米国仮特許出願第61/127,928号明細書の利益を主張し、その開示は全体として参照により本明細書に援用されるものとする。
【0002】
特に、本発明の1つ又は複数の実施形態は、概してコリンエステラーゼ部分(すなわち、ヒトコリンエステラーゼと同様の少なくともいくらかの活性を有する部分)とポリマーとを含むコンジュゲートに関する。加えて、本発明は、(特に)コンジュゲートを含む組成物、コンジュゲートの合成方法、及び組成物の投与方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト神経系は、特殊な神経細胞を介して電気信号を伝達することにより生体機能を制御する。しかしながら、神経細胞間の(又は神経細胞とエフェクター細胞との間の)間隙に関しては、典型的には化学的な手段によって信号の連続が実現される。神経間隙すなわち「シナプス」を通じた化学的伝達は、「神経伝達物質」として知られる(或いは「神経メディエーター」として知られる)物質の放出により行われる。神経伝達物質は、放出されると拡散してシナプスを越え、シナプス後細胞に位置する受容体と結合することによりシナプス後細胞を活性化させる(又は系によっては阻害する)。このように信号がシナプス後細胞に渡ると、シナプス中の酵素が神経伝達物質を分解するため、シナプス後細胞に信号が繰り返し送られることが防止される。このようにして、神経系内の信号伝達が正常に行われる。
【0004】
神経伝達物質としてアセチルコリンを放出する神経細胞はコリン作動性神経と称され、ヒトにおいては末梢及び中枢の双方の神経系に位置する。アセチルコリンは、特殊な運動神経から骨格筋への信号伝達に関わるとともに、平滑筋、並びに、(例えば)呼吸、循環、消化、発汗及び代謝に関連する腺を制御する自律神経系の大部分にも関わる。体内では、アセチルコリンの分解−従ってその作用の制御−は、シナプス間隙に位置するアセチルコリンエステラーゼによって行われる。中枢神経系におけるアセチルコリン/アセチルコリンエステラーゼ系の遍在性を考慮すれば、この系が適切に平衡を保って機能することは、正常な機能及び健康にとって極めて重要である。
【0005】
中枢神経系におけるアセチルコリン/アセチルコリンエステラーゼ系の平衡は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬に曝露され、その結果シナプス間隙にアセチルコリンが蓄積することによって崩れ得る。この蓄積により、ひいては(典型的には持続的な脱分極による)連続的な信号伝播が生じ、それに伴い有効な神経伝達が分断される。かかる分断が続くことを許せば、それにより何らかの有害な病態が引き起こされ、−重篤な場合には−死亡に至ることさえあり得る。
【0006】
O−イソプロピルメチルホスホノフルオリデート(「サリン」としても知られる)及びそのクラスの他の有機リン剤は、不可逆的なコリンエステラーゼ阻害薬である。こうした有機リン剤は、アセチルコリンが通常加水分解を受ける部位をなす酵素中のセリン残基と共有結合することにより、コリンエステラーゼの活性を阻害する。サリンは、非常に強力で有効性の高いコリンエステラーゼ酵素阻害薬であるため、軍事関連においてその開発及び利用がなされている。他のコリンエステラーゼ阻害薬は、農業関連で殺虫剤及び農薬として用いられている。
【0007】
コリンエステラーゼ阻害薬への曝露は、コリンエステラーゼそれ自体を投与することにより治癒し得る。生体系にコリンエステラーゼを有効に「飽和」させることで、全体としては正常なコリンエステラーゼ機能が実質的に影響を受けない状態に維持される。これは、ある程度のコリンエステラーゼ活性がコリンエステラーゼ阻害薬により阻害されたとしても、コリンエステラーゼ活性が過剰に存在するため、コリンエステラーゼ阻害薬への曝露効果が最小限に抑えられることによる。かかる手法は、有機リン剤への偶発的な曝露並びにサリン又は同様の化学剤が用いられる軍事攻撃の防御に有利となり得る。天然に存在するタンパク質であるヒトブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の組換え種が、戦場での負傷者又は神経ガス攻撃の民間被害者に対する曝露前及び曝露後の治療としてPROTEXIA(登録商標)の名称で開発されている。
【0008】
コリンエステラーゼ活性を有する分子の過剰投与に伴う問題の一つは、そうしたタンパク質ベースの酵素それ自体が生体内で比較的急速に分解することである。ペグ化、すなわちタンパク質に対するポリ(エチレングリコール)誘導体の結合が、タンパク質のインビボ半減期を延長させるための手段として記載されており、それによってより長い薬理活性が得られる。例えば、特許文献1は、有機リン化合物を解毒するための化学修飾されたコリンエステラーゼの使用について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0147002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、そうしたコンジュゲートにもかかわらず、依然としてコリンエステラーゼの別のコンジュゲートが必要とされている。そのため、特に、本発明の1つ又は複数の実施形態は、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート並びにコンジュゲートを含む組成物及び関連する方法に関し、それらは新規で、且つ当該技術分野において提案されたことが全くないものと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供される。
【0012】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、このコリンエステラーゼ部分の残基は、コリンエステラーゼ部分の残基中のシステイン残基を介して水溶性ポリマーと共有結合する。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、この水溶性ポリマーは、共有結合する前は、マレイミド基を有するポリマー試薬である。
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと直接、又は1個若しくは複数の原子を含むスペーサー部分を介して共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、このコリンエステラーゼ部分は、ジスルフィド連結によって水溶性ポリマー又はスペーサー部分と結合する。
【0015】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、このコリンエステラーゼ部分は、前駆コリンエステラーゼ部分である。
【0016】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供され、このコリンエステラーゼ部分は、成熟コリンエステラーゼ部分である。
【0017】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートの送達方法であって、コリンエステラーゼの残基と水溶性ポリマーとのコンジュゲートを含む組成物を患者に皮下投与するステップを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例4、5及び6に従い調製した、これらの実施例の各々にさらに詳しく説明されるrBChEのコンジュゲート溶液のSDS−PAGE分析を示す。Cと付されたレーンは、rBChEタンパク質対照(ペグ化されていない)である。rBChEは、レーンの上に指示されるとおりの種々の活性化PEG試薬でペグ化した。3種のモル当量濃度(10、25及び50)のPEGについて、記載される方法を用いて試験した。各試薬について、10mol当量のPEG試薬では低度〜中程度のペグ化レベルとなり、25mol当量のPEG試薬では中程度〜高度のペグ化レベルとなり、及び50mol当量のPEG試薬では極めて高度なペグ化レベルとなった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1つ又は複数の実施形態を詳細に説明する前に、この発明は、特定のポリマー、合成方法、コリンエステラーゼ部分などに限定されず、従って異なり得ることが理解されるべきである。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」が、文脈上特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことは注記されるべきである。従って、例えば、「ポリマー(a polymer)」と言うとき、それは単一のポリマー並びに2つ以上の同じ、又は異なるポリマーを含み、「任意選択の賦形剤(an optional excipient)」と言うとき、それは単一の任意選択の賦形剤並びに2つ以上の同じ、又は異なる任意選択の賦形剤を指すなどする。
【0021】
本発明の1つ又は複数の実施形態の説明及び特許請求においては、以下の専門用語を下記の定義に従い用いるものとする。
【0022】
「PEG」、「ポリエチレングリコール」、及び「ポリ(エチレングリコール)」は、本明細書で使用されるとき同義であり、任意の非ペプチド性水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含する。典型的には、本発明に従い使用されるPEGは、以下の構造「−(OCHCH−」(式中、(n)は2〜4000である)を含む。本明細書で使用されるとき、PEGはまた、末端酸素が例えば合成変換中に置換されたかどうかに応じて、「−CHCH−O(CHCHO)−CHCH−」、及び「−(OCHCHO−」も含む。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて、用語「PEG」には、様々な末端基又は「エンドキャップ」基などを有する構造が含まれることに留意しなければならない。用語「PEG」はまた、過半数の、すなわち50%を超える−OCHCH−の反復サブユニットを含むポリマーも意味する。具体的な形態に関して、PEGは、様々な分子量、並びに「分枝鎖状」、「直鎖状」、「フォーク型」、「多官能性」などの構造又は幾何形状のうちのいずれをとってもよく、これについては以下にさらに詳細に記載される。
【0023】
用語「エンドキャップされた」及び「末端がキャップされた」は、本明細書では同義的に用いられ、ポリマーの末端又は終点がエンドキャップ部分を有することを指す。典型的には、必須ではないが、エンドキャップ部分はヒドロキシ基又はC1〜20アルコキシ基、より好ましくはC1〜10アルコキシ基、さらにより好ましくはC1〜5アルコキシ基を含む。従って、エンドキャップ部分の例としては、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ及びベンジルオキシ)、並びに、アリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどが挙げられる。エンドキャップ部分には、ポリマー中の末端単量体の1個又は複数の原子が含まれ得ることに留意しなければならない[例えば、CHO(CHCHO)−及びCH(OCHCH−におけるエンドキャップ部分「メトキシ」]。加えて、前述の各々の飽和型、不飽和型、置換型、及び非置換型が想定される。さらに、エンドキャップ基はシランであってもよい。エンドキャップ基はまた、有利には検出可能標識も含み得る。ポリマーが検出可能標識を含むエンドキャップ基を有する場合、ポリマー及び/又はそのポリマーが結合している部分(例えば、活性薬剤)の量又は位置を、好適な検出器を用いて決定することができる。かかる標識としては、限定なしに、蛍光剤、化学発光剤、酵素標識に用いられる部分、比色(例えば、色素)、金属イオン、放射性部分などが挙げられる。好適な検出器としては、光度計、フィルム、分光計などが挙げられる。エンドキャップ基はまた、有利にはリン脂質も含み得る。ポリマーがリン脂質を含むエンドキャップ基を有する場合、ポリマー及び得られるコンジュゲートに固有の特性が付与される。例示的なリン脂質としては、限定なしに、ホスファチジルコリンと称されるクラスのリン脂質から選択されるものが挙げられる。具体的なリン脂質としては、限定なしに、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、及びレシチンからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0024】
本明細書に記載されるとおりのポリマーに関して「天然に存在しない」とは、そのままの状態としては自然界に見ることのできないポリマーを意味する。しかしながら、天然に存在しないポリマーは、全体としてのポリマー構造が自然界に見られない限りにおいて、1つ又は複数の天然に存在する単量体又は単量体セグメントを含み得る。
【0025】
「水溶性ポリマー」にあるような用語「水溶性の」ポリマーは、室温で水に対して可溶性の任意のポリマーである。典型的には、水溶性ポリマーは、ろ過後の同じ溶液により伝達される光の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を伝達する。水溶性ポリマーは、重量基準で、好ましくは水に対して少なくとも約35%(重量)溶解することができ、より好ましくは水に対して少なくとも約50%(重量)溶解することができ、さらにより好ましくは水に対して約70%(重量)溶解することができ、さらにより好ましくは水に対して約85%(重量)溶解することができる。しかしながら、最も好ましくは、水溶性ポリマーは水に対して約95%(重量)溶解することができ、又は水に対して完全に溶解することができる。
【0026】
水溶性ポリマー、例えばPEGに関連した分子量は、数平均分子量又は重量平均分子量のいずれとしても表すことができる。特に指示されない限り、本明細書で分子量と言うときは全て、重量平均分子量を指す。数平均及び重量平均のいずれの分子量の測定も、ゲル浸透クロマトグラフィー法又は他の液体クロマトグラフィー法を用いて計測することができる。また、分子量の値を計測するための他の方法を用いて、例えば、末端基分析を用いるか、若しくは束一的性質(例えば、凝固点降下、沸点上昇、若しくは浸透圧)を計測することにより数平均分子量を決定してもよく、又は、光散乱法、超遠心法若しくは粘度測定法を用いることにより重量平均分子量を決定してもよい。本発明のポリマーは、典型的には多分散系であり(すなわち、ポリマーの数平均分子量と重量平均分子量とが等しくない)、好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.15未満、さらにより好ましくは約1.10未満、なおさらにより好ましくは約1.05未満、及び最も好ましくは約1.03未満の低い多分散性値を有する。
【0027】
用語「活性の」、「反応性の」、又は「活性化された」は、特定の官能基と併せて使用されるとき、別の分子上の求電子剤又は求核剤と容易に反応する反応性官能基を指す。これは、反応させるために強力な触媒又は極めて非現実的な反応条件が必要な基(すなわち、「非反応性の」、又は「不活性の」基)と対比される。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「官能基」又はその任意の同義語は、その保護型並びに無保護型を包含することが意図される。
【0029】
用語「スペーサー部分」、「連結」、及び「リンカー」は、本明細書では、例えばポリマーセグメントの末端とコリンエステラーゼ部分又はコリンエステラーゼ部分の求電子剤若しくは求核剤との相互接続部分を場合により連結するために用いられる結合又は原子若しくは原子集合を指して用いられる。スペーサー部分は、加水分解に対して安定であってもよく、又は生理的に加水分解可能か、若しくは酵素分解可能な連結を含んでもよい。文脈上特に明確に指示されない限り、スペーサー部分は化合物の任意の2つの要素間に場合により存在する(例えば、コリンエステラーゼ部分の残基と水溶性ポリマーとを含む提供のコンジュゲートは、直接的にも、又はスペーサー部分を介して間接的にも結合することができる)。
【0030】
「アルキル」は炭化水素鎖を指し、典型的には約1〜15個の範囲の原子長さである。かかる炭化水素鎖は、必須ではないが好ましくは飽和しており、分枝鎖状であっても、又は直鎖状であってもよく、但し典型的には直鎖状が好ましい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。本明細書で使用されるとき、「アルキル」には、シクロアルキル並びにシクロアルキレン含有アルキルが含まれる。
【0031】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を指し、直鎖状であっても、又は分枝鎖状であってもよく、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、及びt−ブチルにより例示されるとおりである。
【0032】
「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の環状炭化水素鎖を指し、架橋、縮合、又はスピロ環化された化合物を含み、好ましくは3〜約12個の炭素原子、より好ましくは3〜約8個の炭素原子で構成される。「シクロアルキレン」は、環式環系における任意の2個の炭素で鎖を結合させることによりアルキル鎖に挿入されたシクロアルキル基を指す。
【0033】
「アルコキシ」は、−OR基であって、式中、Rがアルキルか、又は置換アルキル、好ましくはC1〜6アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)である−OR基を指す。
【0034】
例えば「置換アルキル」にあるような用語「置換された」は、限定はされないが、アルキル、C3〜8シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチルなど;ハロ、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード;シアノ;アルコキシ、低級フェニル;置換フェニル;などの1つ又は複数の干渉しない置換基で置換された部分(例えば、アルキル基)を指す。「置換アリール」は、1つ又は複数の干渉しない基を置換基として有するアリールである。フェニル環に対する置換について、置換基はいかなる配向(すなわち、オルト、メタ、又はパラ)であってもよい。
【0035】
「干渉しない置換基」は、分子中に存在するとき、典型的にはその分子中に含まれる他の官能基との反応性を有しない基である。
【0036】
「アリール」とは、1つ又は複数の芳香環であって、各々が5個又は6個の中心炭素原子であるものを意味する。アリールは、ナフチルにおけるように縮合していることも、又はビフェニルにおけるように縮合していないこともある複数のアリール環を含む。アリール環はまた、1つ又は複数の環状炭化水素、ヘテロアリール、又は複素環式環と縮合していても、又は縮合していなくともよい。本明細書で使用されるとき、「アリール」にはヘテロアリールが含まれる。
【0037】
「ヘテロアリール」は、1〜4個のヘテロ原子、好ましくは硫黄、酸素、若しくは窒素、又はそれらの組み合わせを含むアリール基である。ヘテロアリール環はまた、1つ又は複数の環状炭化水素、複素環式環、アリール環、又はヘテロアリール環と縮合していてもよい。
【0038】
「複素環」又は「複素環式」とは、5〜12個の原子、好ましくは5〜7個の原子の1つ又は複数の環であって、不飽和特性又は芳香族特性を伴うことも、又は伴わないこともあり、且つ炭素以外の少なくとも1個の環原子を有する環を意味する。好ましいヘテロ原子としては、硫黄、酸素、及び窒素が挙げられる。
【0039】
「置換ヘテロアリール」は、1つ又は複数の干渉しない基を置換基として有するヘテロアリールである。
【0040】
「置換複素環」は、干渉しない置換基から形成された1つ又は複数の側鎖を有する複素環である。
【0041】
「有機ラジカル」は、本明細書で使用されるとき、アキル(akyl)、置換アルキル、アリール、及び置換アリールを含む。
【0042】
「求電子剤」及び「求電子基」は、求電子中心、すなわち電子を求引する中心を有し、求核剤と反応することが可能なイオン又はイオン化し得る原子若しくは原子集合を指す。
【0043】
「求核剤」及び「求核基」は、求核中心、すなわち求電子中心を求引する中心を有するか、又は求電子剤を伴う、イオン又はイオン化し得る原子若しくは原子集合を指す。
【0044】
「生理学的に切断可能な」又は「加水分解可能な」又は「分解可能な」結合とは、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。結合が水中で加水分解し易いかどうかは、2個の中心原子をつなぐ連結の一般的なタイプのみならず、そうした中心原子と結合する置換基にも依存し得る。加水分解に対して不安定な、又は加水分解を受け易い適切な連結としては、限定はされないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0045】
「酵素分解可能な連結」とは、1つ又は複数の酵素により分解を受ける連結を意味する。
【0046】
「加水分解に対して安定な」連結又は結合とは、水中で実質的に安定な、すなわち生理学的条件下で長期間にわたってもいかなる認め得る程度の加水分解も受けない化学結合、典型的には共有結合を指す。加水分解に対して安定な連結の例としては、限定はされないが、以下のもの:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖中)、エーテル、アミド、ウレタンなどが挙げられる。概して、加水分解に対して安定な連結とは、生理学的条件下で1日約1〜2%未満の加水分解率を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解率については、多くの標準的な化学テキストを参照することができる。
【0047】
「薬学的に許容可能な賦形剤又は担体」とは、場合により本発明の組成物中に含めることができ、患者に対して何ら有意な毒性の有害作用を引き起こすことのない賦形剤を指す。「薬理学的な有効量」、「生理学的な有効量」、及び「治療上の有効量」は、本明細書では同義的に用いられ、血流中又は標的組織中に所望のレベルのコンジュゲート(又はそれに対応する非コンジュゲート化コリンエステラーゼ部分)をもたらすのに必要なポリマー−(コリンエステラーゼ)部分コンジュゲートの量を意味する。正確な量は、例えば、特定のコリンエステラーゼ部分、治療組成物の成分及び物理的特性、目的とする患者集団、個々の患者の考慮事項など数多くの要因に依存し、当業者は、本明細書に提供される情報に基づきそれを容易に決定することができる。
【0048】
「多官能性の」とは、3個以上の官能基を中に含むポリマーを意味し、ここで官能基は、同じであっても、又は異なってもよい。本発明の多官能性ポリマー試薬は、典型的にはポリマー骨格内に約3〜100個の官能基、若しくは3〜50個の官能基、若しくは3〜25個の官能基、若しくは3〜15個の官能基、若しくは3〜10個の官能基を含み、又は3、4、5、6、7、8、9若しくは10個の官能基を含む。
【0049】
用語「コリンエステラーゼ部分」とは、本明細書で使用されるとき、ヒトコリンエステラーゼ活性を有する部分を指す。コリンエステラーゼ部分はまた、ポリマー試薬との反応に好適な少なくとも1個の求電子基又は求核基も有する。加えて、用語「コリンエステラーゼ部分」は、コンジュゲート形成前のコリンエステラーゼ部分並びにコンジュゲート形成後のコリンエステラーゼ部分残基の双方を包含する。以下にさらに詳細に説明されるとおり、当業者は、任意の所与の部分がコリンエステラーゼ活性を有するかどうかを判断することができる。コリンエステラーゼ阻害薬の基質として働くことのできる、配列番号1〜2のいずれか一方に相当するアミノ酸配列を含むタンパク質、並びにそれと実質的に相同な任意のタンパク質又はポリペプチドが、コリンエステラーゼ部分である。本明細書で使用されるとき、用語「コリンエステラーゼ部分」には、例えば部位特異的突然変異誘発によって意図的に、又は突然変異によって偶発的に修飾されたかかるタンパク質が含まれる。これらの用語にはまた、1〜6個のさらなるグリコシル化部位を有する類似体、タンパク質のカルボキシ末端側の終端部に、少なくとも1個のさらなるアミノ酸であって、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む1個以上のさらなるアミノ酸を有する類似体、及び少なくとも1つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類似体も含まれる。この用語には、天然の部分及び組換え産生された部分の双方が含まれる。
【0050】
用語「実質的に相同な」とは、特定の対象配列、例えば突然変異配列が、1つ又は複数の置換、欠失、又は付加について基準配列と異なり、しかしその正味の効果としては、基準配列と対象配列との間に機能上の不都合な相違は生じないことを意味する。本発明の目的上、95パーセントより高い相同性、等価な生物学的特性、及び等価な発現特性を有する配列は、実質的に相同であると見なされる。相同性を判断する目的では、成熟配列のトランケートは無視するものとする。同一性、同等の生物活性、及び等価な発現特性の程度がより低い配列は、実質的に等価であると見なされる。本明細書で用いられる例示的なコリンエステラーゼ部分としては、配列番号1と実質的に相同な配列が挙げられる。
【0051】
用語「断片」とは、コリンエステラーゼ部分の一部又は断片のアミノ酸配列を有する任意のタンパク質又はポリペプチドを意味し、これはβ−コリンエステラーゼの生物学的活性を有する。断片には、コリンエステラーゼ部分のタンパク質分解によって産生されたタンパク質又はポリペプチド、並びに当該技術分野においてルーチンに行われている方法による化学合成によって産生されたタンパク質又はポリペプチドが含まれる。酵素活性は、典型的には培養細胞系又は組織培養ベースの方法を用いて、例えば酵素活性又は阻害活性により計測される。
【0052】
用語「患者」とは、活性薬剤(例えば、コンジュゲート)を投与することにより予防又は治療することのできる病態を患っている、又はそうした病態に罹りやすい生物体を指し、ヒト及び動物の双方を含む。
【0053】
「任意選択の」、又は「場合により」とは、続いて記載される状況が起こることも、又は起こらないこともあり、従ってその記載は、その状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0054】
「実質的に」とは、ほぼ全面的又は完全に、という意味であり、例えば、以下のうちの1つ又は複数を満足する:条件の50%超、51%以上、75%以上、80%以上、90%以上、及び95%以上。
【0055】
ペプチド中のアミノ酸残基は、以下のとおり略記される:フェニルアラニンはPhe又はFであり;ロイシンはLeu又はLであり;イソロイシンはIle又はIであり;メチオニンはMet又はMであり;バリンはVal又はVであり;セリンはSer又はSであり;プロリンはPro又はPであり;スレオニンはThr又はTであり;アラニンはAla又はAであり;チロシンはTyr又はYであり;ヒスチジンはHis又はHであり;グルタミンはGln又はQであり;アスパラギンはAsn又はNであり;リジンはLys又はKであり;アスパラギン酸はAsp又はDであり;グルタミン酸はGlu又はEであり;システインはCys又はCであり;トリプトファンはTrp又はWであり;アルギニンはArg又はRであり;及びグリシンはGly又はGである。
【0056】
本発明の1つ又は複数の実施形態について見ると、コンジュゲートであって、水溶性ポリマーと(直接、又はスペーサー部分を介して)共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートが提供される。本発明のコンジュゲートは、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有する。
【0057】
コリンエステラーゼ部分
先述のとおり、一般的にこのコンジュゲートは、水溶性ポリマーと直接、又はスペーサー部分を介して共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含む。本明細書で使用されるとき、用語「コリンエステラーゼ部分」は、コンジュゲート形成前のコリンエステラーゼ部分、並びに非ペプチド性水溶性ポリマーと結合した後のコリンエステラーゼ部分を指すものとする。しかしながら、本来のコリンエステラーゼ部分が非ペプチド性水溶性ポリマーと結合すると、ポリマーとの連結に伴い1つ又は複数の共有結合が存在するため、コリンエステラーゼ部分は僅かに変化することが理解されるであろう。多くの場合に、この別の分子と結合して僅かに変化した形態のコリンエステラーゼ部分は、コリンエステラーゼ部分の「残基」と称される。
【0058】
コリンエステラーゼ部分は、非組換え方法からも、及び組換え方法からも得ることができ、本発明はこの点について限定されない。加えて、コリンエステラーゼ部分は、ヒト供給源にも、動物供給源にも、及び植物供給源にも由来し得る。
【0059】
コリンエステラーゼ部分は、組換えによらず得ることができる。例えば、生物系からブチリルコリンエステラーゼを単離することが可能である。米国特許第5,272,080号明細書に説明されるとおり、例えば、ブチリルコリンエステラーゼは、血漿画分IV−4を単独で、又は画分IV−1と混和して、陰イオン交換クロマトグラフィーとアフィニティークロマトグラフィーとの双方に供することにより、少なくとも90%の純度で産生することができる。
【0060】
コリンエステラーゼ部分は、組換え方法から得ることもできる。例えば、米国特許第5,248,604号明細書及び米国特許第5,595,903号明細書は、酵素活性を有するヒトコリンエステラーゼを産生するための組換えに基づく方法について記載している。これらの参考文献に記載される手法により得られたコリンエステラーゼ部分は、本明細書に記載されるコンジュゲートの調製においてコリンエステラーゼ部分として使用することができる。
【0061】
コリンエステラーゼ部分は、細菌[例えば、大腸菌(E.coli)、例えば、Fischerら(1995年)Biotechnol.Appl.Biochem.21(3):295−311頁を参照]、哺乳動物[例えば、Kronmanら(1992年)Gene 121:295−304頁を参照]、酵母[例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、例えば、Morelら(1997年)Biochem.J.328(1):121−129頁を参照]、及び植物[例えば、Morら(2001年)Biotechnol.Bioeng.75(3):259−266頁を参照]の発現系で発現させることができる。発現は、外因性発現によっても(宿主細胞が天然で所望の遺伝暗号を含む場合)、又は内因性発現によっても起こり得る。トランスジェニック哺乳動物におけるブチリルコリンエステラーゼの産生について記載がなされている。例えば、米国特許出願公開第2004/0016005号明細書を参照のこと。
【0062】
組換えに基づくタンパク質の調製方法には違いがあり得るが、典型的には、組換え方法には、所望のポリペプチド又は断片をコードする核酸の構築、核酸の発現ベクターへのクローニング、宿主細胞(例えば、植物、細菌、酵母、トランスジェニック動物細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞若しくはベビーハムスター腎臓細胞などの哺乳動物細胞)の形質転換、及び核酸の発現による所望のポリペプチド又は断片の産生が関わる。組換えポリペプチドをインビトロで原核生物及び真核生物の宿主細胞において産生し、発現させる方法は、当業者に公知である。
【0063】
組換えポリペプチドの同定及び精製を促進するため、エピトープタグ又は他の親和性結合配列をコードする核酸配列を、コード配列とインフレームで挿入又は付加し、それにより所望のポリペプチドと、結合に適したポリペプチドとを含む融合タンパク質を産生することができる。融合タンパク質の同定及び精製は、初めに融合タンパク質を含む混合物を、融合タンパク質中のエピトープタグ又は他の結合配列に対する結合部分(例えば、抗体)を有するアフィニティーカラムに通過させ、それによって融合タンパク質をカラム内に結合させることにより行うことができる。その後、カラムを適切な溶液(例えば、酸)で洗浄して結合した融合タンパク質を遊離させることにより、融合タンパク質を回収することができる。組換えポリペプチドの同定及び精製はまた、宿主細胞を溶解し、例えばサイズ排除クロマトグラフィーによりポリペプチドを分離してポリペプチドを収集することにより行うこともできる。組換えポリペプチドを同定及び精製するためのこれらの、及び他の方法は、当業者に公知である。しかしながら、本発明の1つ又は複数の実施形態において、コリンエステラーゼ部分は融合タンパク質の形態ではないことが好ましい。
【0064】
コリンエステラーゼ活性を有するタンパク質を発現させるために用いられる系に応じて、コリンエステラーゼ部分はグリコシル化されないことも、又はグリコシル化されることもあり、いずれも使用することができる。すなわち、コリンエステラーゼ部分はグリコシル化されていなくてもよく、又はコリンエステラーゼ部分はグリコシル化されていてもよい。本発明の1つ又は複数の実施形態において、コリンエステラーゼ部分は、好ましくは4つのグリコシル化部位においてグリコシル化されていることが好ましい。例えば、マンノース糖の各グリコシル化部位末端にオリゴ糖鎖を有することも好ましい。
【0065】
コリンエステラーゼ部分は、有利には、1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば、リジン、システイン及び/又はアルギニンを含み、及び/又はそれを置換するように修飾することができ、それによりポリマーがアミノ酸の側鎖にある原子と容易に結合するようになる。コリンエステラーゼ部分の置換の例は、Fischerら(1995)Biotechnol.Appl.Biochem.21(3):295−311に記載されている。加えて、コリンエステラーゼ部分は、天然に存在しないアミノ酸残基を含むように修飾することができる。アミノ酸残基及び天然に存在しないアミノ酸残基を付加する方法は、当業者に周知である。J.March、「Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure」、第4版(New York:Wiley Interscience、1992年)を参照されたい。
【0066】
加えて、コリンエステラーゼ部分は、有利には、官能基の結合(官能基を含むアミノ酸残基の付加によるものは除く)を含むように修飾することができる。例えば、コリンエステラーゼ部分は、チオール基を含むように修飾することができる。加えて、コリンエステラーゼ部分は、N末端のα炭素を含むように修飾することができる。加えて、コリンエステラーゼ部分は、1つ又は複数の炭水化物部分を含むように修飾することができる。本発明のいくつかの実施形態において、コリンエステラーゼ部分は、チオール基及び/又はN末端のα炭素を含むようには修飾されないことが好ましい。
【0067】
例示的なコリンエステラーゼ部分は、文献中、並びに、例えば米国特許出願公開第2002/0119489号明細書、米国特許出願公開第2006/0263345号明細書及び米国特許出願公開第2008/0213281号明細書に記載されている。好ましいコリンエステラーゼ部分としては、配列番号1〜2からなる群から選択される配列を含むアミノ酸配列を有するもの、及びそれと実質的に相同な配列が挙げられる。好ましいコリンエステラーゼ部分は、ヒトアセチルコリンエステラーゼに対応するアミノ酸配列を有する。別の好ましいコリンエステラーゼは、ヒトブチリルコリンエステラーゼ、例えば、PROTEXIA(登録商標)の名称で開発された組換え型のヒトブチリルコリンエステラーゼ(PharmAthene Inc.、Annapolis,MD)に対応するアミノ酸配列を有する。アセチルコリンエステラーゼ及びブチリルコリンエステラーゼの双方とも、異なる数の触媒及び非触媒サブユニットからなる複数の分子型で存在することが認められている。しかしながら、ヒトでは、双方の酵素とも各約600アミノ酸のサブユニットからなり、双方ともグリコシル化されている。アセチルコリンエステラーゼは、近い関係にあるブチリルコリンエステラーゼとは、そのアセチルコリン基質に対する高い特異性と、選択的阻害薬に対する感受性とによって区別され得る。アセチルコリンエステラーゼは体内では主にアセチルコリンの加水分解に使用されるが、ブチリルコリンエステラーゼの具体的な機能はそれほど明らかにはなっていない。いずれにしても、用語「アセチルコリンエステラーゼ」及び「ブチリルコリンエステラーゼ」は、各酵素におけるあらゆる分子型を包含する。ある場合には、コリンエステラーゼ部分は、対応するペプチドの単一の発現が個別のユニットとして体系付けられる「単量体」の形態である。別の場合には、コリンエステラーゼ部分は、2つの単量体型のタンパク質が(例えば、ジスルフィド結合により)互いに結合されている「二量体」の形態(例えば、組換えヒトブチリルコリンエステラーゼの二量体)である。例えば、組換えヒトブチリルコリンエステラーゼの二量体の場合には、二量体は、各単量体のCys571残基から形成されるジスルフィド結合によって互いに結合した2つの単量体の形態であり得る。
【0068】
加えて、コリンエステラーゼ活性を有するタンパク質の前駆体形態を用いることができる。
【0069】
前述の配列のいずれかのトランケート型、ハイブリッド変異体、及びペプチド模倣物もまた、コリンエステラーゼ部分として機能することができる。少なくともある程度のコリンエステラーゼ活性を維持している前述のいずれかの生物学的に活性な断片、欠失変異体、置換変異体又は付加変異体もまた、コリンエステラーゼ部分として機能することができる。
【0070】
任意の所与のペプチド又はタンパク質部分について、当該の部分がコリンエステラーゼ活性を有するかどうかを判断することが可能である。当該技術分野においては、インビトロでのコリンエステラーゼ酵素活性アッセイの様々な方法が記載されている。例えば、Lockridgeら(1978年)J.Biol.Chem.253:361−366頁、Lockridgeら(1997年)Biochemistry 36:786−795頁、Plattborzeら(2000年)Biotechnol.Appl.Biochem.31:226−229頁、及びBlongら(1997年)Biochem.J.327:747−757頁を参照のこと。試料は、酵素活性を有するコリンエステラーゼ活性の存在について、Ellmanの活性アッセイ[Ellmanら(1961年)Biochem.Pharmacol.7:88頁]を用いて試験することができる。コリンエステラーゼ活性のレベルは、非変性4〜30%ポリアクリルアミド勾配ゲルを、基質としての2mMのヨウ化エコチオパートで染色することにより推定することができ(上記Lockridgeらに記載されるとおり)、この方法は、2mMのブチリルチオコリンを基質として使用する同じアッセイ[Karnovskyら(1964年)J.Histochem.Cytochem.12:219頁による]を修正したものである。これらの方法を用いることにより、ブチリルチオコリン又はアセチルチオコリンを基質として使用して、Km値、Vmax値、及びkcat値を含めた対象部分の触媒特性を決定することができる。また、電位測定法、分光光度測定法、クロマトグラフィー法、及び放射測定法を含め、当該技術分野において公知の他の方法を用いてコリンエステラーゼ機能を評価することもできる。
【0071】
水溶性ポリマー
先に考察したとおり、各コンジュゲートは水溶性ポリマーと結合したコリンエステラーゼ部分を含む。水溶性ポリマーに関して、水溶性ポリマーは非ペプチド性で、非毒性であり、天然には存在せず、且つ生体適合性である。生体適合性に関して、物質は、生体組織に関連して物質を単独で、又は別の物質(例えば、コリンエステラーゼ部分などの活性薬剤)と共に使用すること(例えば、患者への投与)に伴う有益な作用が、臨床医、例えば医師が評価するとき、いかなる有害な作用にも勝る場合に、生体適合性であると見なされる。非免疫原性に関して、物質は、生体内での物質の意図される使用によって望ましくない免疫反応(例えば、抗体の形成)が生じることがない場合か、又は、免疫反応が生じる場合にも、かかる反応が、臨床医の評価で臨床的に有意、又は重要とは見なされない場合に、非免疫原性であると見なされる。非ペプチド性水溶性ポリマーは、生体適合性且つ非免疫原性であることが特に好ましい。
【0072】
さらに、このポリマーは、典型的には2〜約300個の末端を有するものとして特徴付けられる。かかるポリマーの例としては、限定はされないが、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などのポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチレン化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)(これについては、国際公開第2008/106186号パンフレットに記載されている)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、及び前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0073】
水溶性ポリマーは特定の構造に限定されず、直鎖状(例えば、エンドキャップされた、例えばアルコキシPEG又は二官能性PEG)、分枝鎖状又は多腕状(例えば、フォーク型PEG又はポリオール核と結合したPEG)、樹木状(又は星型)の構造であってもよく、各々は、1つ又は複数の分解可能な連結を有することも、又は有しないこともある。さらに、水溶性ポリマーの内部構造は、種々の反復パターンのいずれとして体系付けられてもよく、ホモポリマー、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互トリコポリマー、ランダムトリコポリマー、及びブロックトリコポリマーからなる群から選択することができる。
【0074】
典型的には、活性化PEG及び他の活性化水溶性ポリマー(すなわち、ポリマー試薬)は、コリンエステラーゼ部分上の所望の部位とのカップリングに適した好適な活性化基により活性化される。従って、ポリマー試薬は、コリンエステラーゼ部分と反応するための反応基を有する。代表的なポリマー試薬及びこうしたポリマーを活性部分とコンジュゲート化するための方法は、当該技術分野において公知であり、Zalipsky,S.ら、“Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols)for Modification of Polypeptides”、「Polyethylene Glycol Chemistry:Biotechnical and Biomedical Applications」所収、J.M.Harris、Plenus Press、New York(1992年)、及びZalipsky(1995年)Advanced Drug Reviews 16:157−182頁にさらに記載されている。コリンエステラーゼ部分のカップリングに好適な例示的活性化基としては、特に、ヒドロキシル、マレイミド、エステル、アセタール、ケタール、アミン、カルボキシル、アルデヒド、アルデヒド水和物、ケトン、ビニルケトン、チオン、チオール、ビニルスルホン、ヒドラジンが挙げられる。
【0075】
典型的には、コンジュゲート中の水溶性ポリマーの重量平均分子量は、約100ダルトン〜約150,000ダルトンである。しかしながら、例示的範囲としては、5,000ダルトン超〜約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトン〜約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトン超〜約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトン〜約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲、及び約40,000ダルトン〜約120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量が挙げられる。任意の所与の水溶性ポリマーについて、これらの範囲のうちの1つ又は複数の分子量を有するPEGが好ましい。
【0076】
水溶性ポリマーについての例示的な重量平均分子量としては、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、及び約75,000ダルトンが挙げられる。前述のいずれかの総分子量を有する分枝鎖型の水溶性ポリマー(例えば、2つの20,000ダルトンのポリマーを含む40,000ダルトンの分枝鎖状水溶性ポリマー)もまた、使用することができる。1つ又は複数の実施形態において、コンジュゲートは、直接的にも、又は間接的にも、約6,000ダルトン未満の重量平均分子量を有するPEGと結合したPEG部分は有しない。
【0077】
ポリマーとして用いられるとき、PEGは、典型的には複数の(OCHCH)単量体[又は(CHCHO)単量体、PEGがどのように定義されるかによる]を含む。この説明全体を通じた使用について、反復単位の数は、「(OCHCH」の添え字「n」によって特定される。従って、(n)の値は、典型的には以下の範囲の1つ又は複数のなかに含まれる:2〜約3400、約100〜約2300、約100〜約2270、約136〜約2050、約225〜約1930、約450〜約1930、約1200〜約1930、約568〜約2727、約660〜約2730、約795〜約2730、約795〜約2730、約909〜約2730、及び約1,200〜約1,900。分子量が既知の任意の所与のポリマーについては、ポリマーの総重量平均分子量を反復単量体の分子量で除算することにより、反復単位の数(すなわち、「n」)を決定することが可能である。
【0078】
本発明での使用に特に好ましいポリマーの一つは、エンドキャップされたポリマー、すなわち、少なくとも1つの末端が下級C1〜6アルコキシ基などの比較的不活性な基で(但し、ヒドロキシル基も用いることができる)キャッピングされたポリマーである。例えば、ポリマーがPEGであるとき、メトキシPEG(一般にmPEGと称される)を使用することが好ましく、このメトキシPEGは、ポリマーの一方の末端がメトキシ(−OCH)基で、それに対し他の末端が、場合により化学修飾されていてもよいヒドロキシル又は他の官能基である直鎖型のPEGである。
【0079】
本発明の1つ又は複数の実施形態で有用な一形態において、遊離PEG又は非結合PEGは、各末端がヒドロキシル基で終端している直鎖状ポリマー:
HO−CHCHO−(CHCHO)−CHCH−OH
であり、式中、(n)は典型的には0〜約4,000の範囲である。
【0080】
上記のポリマー、α−、ω−ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)は、簡略な形ではHO−PEG−OHと表すことができ、ここでは−PEG−記号が、以下の構造単位を表し得ることが理解される:
−CHCHO−(CHCHO)−CHCH
式中、(n)は上記に定義されるとおりである。
【0081】
本発明の1つ又は複数の実施形態で有用な別のタイプのPEGは、メトキシPEG−OH、又は簡略にはmPEGであり、これは一方の末端が比較的不活性なメトキシ基で、それに対し他方の末端がヒドロキシル基である。mPEGの構造は、以下に示すとおりである。
CHO−CHCHO−(CHCHO)−CHCH−OH
式中、(n)は上記のとおりである。
【0082】
米国特許第5,932,462号明細書に記載されるような多腕状又は分枝鎖状PEG分子もまた、PEGポリマーとして使用することができる。例えば、PEGは以下の構造を有し得る:
【化1】

式中:
poly及びpolyは、メトキシポリ(エチレングリコール)などのPEG骨格であり(いずれも同じか、又は異なる);
R”は、H、メチル又はPEG骨格などの非反応性部分であり;及び
P及びQは、非反応性の連結である。好ましい実施形態において、分枝鎖状PEGポリマーはメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リジンである。使用される具体的なコリンエステラーゼ部分によっては、二置換リジンの反応性エステル官能基がさらに修飾され、コリンエステラーゼ部分内の標的基との反応に好適な官能基を形成してもよい。
【0083】
加えて、PEGはフォーク型PEGを含むことができる。フォーク型PEGの例は、以下の構造によって表される:
【化2】

式中:Xは、1個又は複数の原子のスペーサー部分であり、各Zは、一定長の原子鎖によってCHと連結された活性化末端基である。国際公開第99/45964号パンフレットは、本発明の1つ又は複数の実施形態に用いることが可能な様々なフォーク型PEG構造を開示している。Z官能基を分枝鎖状炭素原子と連結する原子鎖はテザー基として働き、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0084】
PEGポリマーは、カルボキシルなどの反応基が、PEG鎖の末端ではなく、PEGの長さに沿って共有結合するペンダント型PEG分子を含み得る。ペンダント型の反応基はPEGと直接、又はアルキレン基などのスペーサー部分を介して結合することができる。
【0085】
上述した形態のPEGに加え、ポリマーはまた、上述のポリマーのいずれかを含め、ポリマー中に1つ又は複数の弱い、又は分解可能な連結を含むように調製することもできる。例えば、PEGは、加水分解を受けやすいエステル連結をポリマー中に含むように調製することができる。以下に示されるとおり、この加水分解の結果として、ポリマーがより低い分子量の断片に切断される:
−PEG−CO−PEG−+HO→−PEG−COH+HO−PEG−
【0086】
ポリマー骨格内の分解可能な連結として、及び/又はコリンエステラーゼ部分との分解可能な連結として有用な、加水分解により分解可能な他の連結としては、カーボネート連結;例えばアミンとアルデヒドとの反応から得られるイミン連結(例えば、Ouchiら(1997年)Polymer Preprints 38(1):582−3頁を参照);例えばアルコールをリン酸基と反応させることによって形成されるリン酸エステル連結;典型的にはヒドラジドとアルデヒドとの反応によって形成されるヒドラゾン連結;典型的にはアルデヒドとアルコールとの間の反応によって形成されるアセタール連結;例えばギ酸塩とアルコールとの間の反応によって形成されるオルトエステル連結;例えばPEGなどのポリマーの末端にあるアミン基と別のPEG鎖のカルボキシル基とによって形成されるアミド連結;例えば末端イソシアネート基を有するPEGとPEGアルコールとの反応から形成されるウレタン連結;PEGなどのポリマーの末端にあるアミン基とペプチドのカルボキシル基とによって形成されるペプチド連結;及び、例えば、例えばポリマーの末端にあるホスホラミダイト基とオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基とによって形成されるオリゴヌクレオチド連結が挙げられる。
【0087】
コンジュゲートのかかる任意選択の特徴、すなわち、1つ又は複数の分解可能な連結を高分子鎖の中に、又はコリンエステラーゼ部分に対して導入することは、コンジュゲートを投与したときの、その最終的な所望の薬理学的特性に対してさらなる制御をもたらし得る。例えば、大型で比較的不活性なコンジュゲート(すなわち、1つ又は複数の高分子量のPEG鎖、例えば約10,000より大きい分子量を有する1つ又は複数のPEG鎖がそこに結合しているもの、この場合、コンジュゲートは本質的に生物活性を有しない)が投与されてもよく、これは加水分解されて、元のPEG鎖の一部を有する生物活性コンジュゲートを生じる。このようにして、時間の経過に伴うコンジュゲートの生物活性が平衡するように、コンジュゲートの特性をより効果的に調整することができる。
【0088】
コンジュゲートに関連する水溶性ポリマーはまた、「切断可能」であってもよい。すなわち、水溶性ポリマーは(加水分解、酵素過程、又はその他の方法によって)切断し、それによりコンジュゲート化されないコリンエステラーゼ部分が生じる。ある場合には、切断可能なポリマーは、生体内で、水溶性ポリマーのいかなる断片も残すことなくコリンエステラーゼ部分と分離する。他の場合には、切断可能なポリマーは、生体内で、水溶性ポリマーの比較的小さい断片(例えば、コハク酸のタグ)を残してコリンエステラーゼ部分と分離する。例示的な切断可能ポリマーとしては、カーボネート連結を介してコリンエステラーゼ部分と結合するものが挙げられる。
【0089】
当業者は、前述の非ペプチド性水溶性ポリマーに関する考察が、何ら網羅的なものではなく、単に例示に過ぎず、上記の質を有するあらゆるポリマー材料が企図されることを認識するであろう。本明細書で使用されるとき、用語「ポリマー試薬」は、概して、水溶性ポリマーセグメントと官能基とを含み得る分子全体を指す。
【0090】
上記のとおり、本発明のコンジュゲートは、コリンエステラーゼ部分と共有結合した水溶性ポリマーを含む。典型的には、任意の所与のコンジュゲートについて、1〜3個の水溶性ポリマーが、コリンエステラーゼ活性を有する1つ又は複数の部分と共有結合している。しかしながら、ある場合には、コンジュゲートは、コリンエステラーゼ部分と個々に結合した1、2、3、4、5、6、7、8個又はそれ以上の水溶性ポリマーを有し得る。任意の所与の水溶性ポリマーは、コリンエステラーゼ部分のアミノ酸か、又はコリンエステラーゼ部分が(例えば)糖タンパク質である場合には、コリンエステラーゼ部分の炭水化物と共有結合し得る。炭水化物との結合は、例えば、シアル酸−アジド化学反応を用いる代謝的官能化(metabolic functionalization)[Luchanskyら(2004年)Biochemistry 43(38):12358−12366頁]、又はグリシドールの使用によりアルデヒド基の導入を促進する[Heldtら(2007年)European Journal of Organic Chemistry 32:5429−5433頁]などの他の好適な手法を利用して行ってもよい。
【0091】
コリンエステラーゼ活性を有する部分とポリマーとの内部の特定の連結は、様々な要因に依存する。かかる要因としては、例えば、用いられる特定の連結の化学的特性、特定のコリンエステラーゼ部分、コリンエステラーゼ部分内の利用可能な官能基(ポリマーと結合するためのものか、又は好適な結合部位に変換されるためのもの)、コリンエステラーゼ部分内における別の反応性官能基の存在などが挙げられる。
【0092】
本発明のコンジュゲートは、必須ではないが、プロドラッグであってもよく、これはつまり、ポリマーとコリンエステラーゼ部分との間の連結が加水分解により分解可能で、それにより親部分を放出できることを意味する。例示的な分解可能連結としては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。かかる連結は、コリンエステラーゼ部分(例えば、タンパク質のカルボキシル基C末端、又はタンパク質中に含まれるセリン若しくはスレオニンなどのアミノ酸の側鎖ヒドロキシル基、又は炭水化物中の同様の官能性)及び/又はポリマー試薬のいずれかを、当該技術分野で一般的に用いられているカップリング方法を利用して適切に修飾することにより、容易に調製することができる。しかしながら、最も好ましくは、好適に活性化されたポリマーを、コリンエステラーゼ活性を有する部分中に含まれる修飾されていない官能基と反応させることによって容易に形成される加水分解可能な連結である。
【0093】
或いは、加水分解に対して安定な連結、例えば、アミド、ウレタン(カルバメートとしても知られる)、アミン、チオエーテル(スルフィドとしても知られる)、又は尿素(カルバミドとしても知られる)連結もまた、コリンエステラーゼ部分のカップリング用連結として用いることができる。さらに、加水分解に対して安定な連結としては、アミドが好ましい。一手法では、活性化エステルを有する水溶性ポリマーを、コリンエステラーゼ部分のアミン基と反応させて、それによりアミド連結を生じさせることができる。
【0094】
コンジュゲートは(コンジュゲートされていないコリンエステラーゼ部分と対比されるものとして)、測定可能な程度のコリンエステラーゼ活性を有することも、又は有しないこともある。すなわち、本発明に係るポリマー−コリンエステラーゼ部分コンジュゲートは、修飾されていない親コリンエステラーゼ部分の約0.1%〜約100%の範囲の生物活性を有し得る。ある場合には、ポリマー−コリンエステラーゼ部分コンジュゲートは、修飾されていない親コリンエステラーゼ部分の100%より大きい生物活性を有し得る。好ましくは、コリンエステラーゼ活性をほとんど又は全く有しないコンジュゲートは、ポリマーを部分とつなぐ加水分解可能な連結を含み、そのためコンジュゲート中に活性が欠如している(又は比較的欠如している)こととは関係なしに、加水分解可能な連結が水により誘発されて切断されると、活性な親分子(又はその誘導体)が放出される。かかる活性は、用いられるコリンエステラーゼ活性を有する特定の部分についての既知の活性に応じて、好適なインビボ又はインビトロモデルを用いて測定し得る。
【0095】
加水分解に対して安定な連結を有し、それがコリンエステラーゼ活性を有する部分をポリマーとカップリングするコンジュゲートについて、このコンジュゲートは、典型的には測定可能な程度の生物活性を有する。例えば、かかるコンジュゲートは、典型的には、コンジュゲートされないコリンエステラーゼ部分の生物活性と比べた以下の割合のうちの1つ又は複数を満足する生物活性を有するものとして特徴付けられる:少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約100%、及び105%超(当該技術分野において周知のものなど、好適なモデルでの測定時)。好ましくは、加水分解に対して安定な連結(例えば、アミド連結)を有するコンジュゲートは、修飾されていない親のコリンエステラーゼ活性を有する部分の生物活性の少なくともある程度を有する。
【0096】
ここで、本発明に係る例示的なコンジュゲートを説明し、ここでコリンエステラーゼ部分はタンパク質である。典型的には、かかるタンパク質は、配列番号1又は配列番号2に提供される配列と同様のアミノ酸配列を(少なくともある部分は)共有しているものと予想される。従って、配列番号1又は2のなかの特定の位置又は原子について参照されるが、かかる参照は便宜上に過ぎず、当業者は、他のコリンエステラーゼ活性を有する部分における対応する位置又は原子を容易に特定することができるであろう。特に、天然のヒトコリンエステラーゼについて本明細書に提供される説明は、多くの場合に前述のいずれかの断片、欠失変異体、置換変異体又は付加変異体に適用することができる。
【0097】
コリンエステラーゼ部分のアミノ基は、コリンエステラーゼ部分と水溶性ポリマーとの間の結合点を提供する。配列番号1〜2に提供されるアミノ酸配列を使用すると、コンジュゲートに利用し得るε−アミノ酸を有する数個のリジン残基が各々にあることは明らかである。さらに、いずれのタンパク質のN末端アミンもまた、結合点として機能することができる。
【0098】
コリンエステラーゼ部分の利用可能なアミンとの共有結合性の連結を形成するのに有用な好適なポリマー試薬の例は、数多くある。具体例について、対応するコンジュゲートと共に以下の表1に提供する。表中、変数(n)は反復単量体単位の数を表し、「−NH−(ChE)」は、ポリマー試薬とのコンジュゲート形成後のコリンエステラーゼ部分の残基を表す。表1に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCH又は(CHCHO)]は末端が「CH」基であるが、これは他の基(H及びベンジルなど)に置換されてもよい。
【0099】
【表1−1】

【0100】
【表1−2】

【0101】
【表1−3】

【0102】
【表1−4】

【0103】
【表1−5】

【0104】
【表1−6】

【0105】
コリンエステラーゼ部分のアミノ基とのポリマー試薬のコンジュゲート形成は、様々な方法で達成することができる。一手法では、コリンエステラーゼ部分が、スクシンイミジル誘導体(又は他の活性化エステル基、この場合、そうした代替的な活性化エステル基を含有するポリマー試薬について記載されるものと同様の手法を用いることができる)により官能化されたポリマー試薬とコンジュゲート化され得る。この手法では、スクシンイミジル誘導体を有するポリマーは、pH7〜9.0の水性媒体中でコリンエステラーゼ部分と結合し得るが、異なる反応条件を用いると(例えば、6〜7などのより低いpH、又は異なる温度及び/又は15℃未満)、結果としてポリマーは、コリンエステラーゼ部分の異なる位置に結合し得る。加えて、アミン末端を有する非ペプチド性水溶性ポリマーを、活性なカルボン酸基を有するコリンエステラーゼ部分と反応させることにより、アミド連結を形成することができる。
【0106】
例示的コンジュゲートは、以下の構造を含む。
【化3】

式中:
(n)は、2〜4000の値を有する整数であり;
Xは、スペーサー部分であり;
は、有機ラジカルであり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0107】
本発明の別の例示的コンジュゲートは、以下の構造を含む:
【化4】

式中、(n)は、2〜4000の値を有する整数であり、ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0108】
コリンエステラーゼ部分のポリマー試薬とのコンジュゲート化に有用な別の手法としては、還元的アミノ化を用いることによるコリンエステラーゼ部分の第一級アミンの、ケトン、アルデヒド又はその水和物形態(例えば、ケトン水和物、アルデヒド水和物)で官能化されたポリマー試薬とのコンジュゲート化が典型的である。この手法では、コリンエステラーゼ部分の第一級アミンがアルデヒド又はケトンのカルボニル基(又はそれに対応する水和アルデヒド又はケトンのヒドロキシル含有基)と反応し、それによりシッフ塩基が形成される。ひいては、次にシッフ塩基が、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用することにより安定なコンジュゲートに還元的に変換され得る。特に、ケトン又はα−メチル分枝鎖アルデヒドで官能化されたポリマーを用いると、及び/又は特定の反応条件下(例えば、低いpH)では、選択的な反応(例えば、N末端における)が可能である。
【0109】
水溶性ポリマーが分枝鎖型である本発明の例示的コンジュゲートとしては、水溶性ポリマーが以下の構造を含むものが挙げられる:
【化5】

式中、各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数である。
【0110】
本発明の例示的コンジュゲートは以下の構造を含む:
【化6】

式中:
各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;
Xは、スペーサー部分であり;
(b)は、値2〜6を有する整数であり;
(c)は、値2〜6を有する整数であり;
は、存在するごとに、独立してH又は低級アルキルであり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0111】
本発明の例示的コンジュゲートは以下の構造を含む:
【化7】

式中:
各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0112】
本発明の別の例示的コンジュゲートは以下の構造を含む:
【化8】

式中:
各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;
(a)は、0又は1のいずれかであり;
Xは、存在するとき、1個又は複数の原子を含むスペーサー部分であり;
(b’)は、0又は1〜10の値を有する整数であり;
(c)は、1〜10の値を有する整数であり;
は、存在するごとに、独立してH又は有機ラジカルであり;
は、存在するごとに、独立してH又は有機ラジカルであり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0113】
本発明の例示的コンジュゲートは以下の構造を含む:
【化9】

式中:
各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0114】
カルボキシル基は、コリンエステラーゼ部分における結合点として機能し得る別の官能基を表す。構造上、コンジュゲートは以下を含み得る:
【化10】

式中、(ChE)及び隣接するカルボニル基は、カルボキシル含有コリンエステラーゼ部分に対応し、Xは連結鎖、好ましくはO、N(H)、及びSから選択されるヘテロ原子であり、POLYは、場合により末端にエンドキャップ部分を有する、PEGなどの水溶性ポリマーである。
【0115】
C(O)−X連結は、末端官能基を有するポリマー誘導体とカルボキシル含有コリンエステラーゼ部分との間の反応から得られる。上記に考察されるとおり、具体的な連結は、利用される官能基のタイプに依存し得る。ポリマーがヒドロキシル基で末端官能化又は「活性化」される場合、結果として得られる連結はカルボン酸エステルとなり、XはOとなる。ポリマー骨格がチオール基で官能化される場合、結果として得られる連結はチオエステルとなり、XはSとなる。特定の多腕状、分枝鎖状又はフォーク型ポリマーが用いられると、C(O)X部分、特にX部分は比較的複雑となり得るとともに、より長い連結構造を含み得る。
【0116】
ヒドラジド部分を含む水溶性誘導体もまた、カルボニル及びカルボン酸におけるコンジュゲート形成に有用である。コリンエステラーゼ部分がカルボニル部分又はカルボン酸を含まない限りでは、当業者に公知の手法を用いて付加することができる。例えば、カルボニル部分は、カルボン酸(例えば、C末端カルボン酸)を還元することにより、及び/又はグリコシル化若しくは糖化された(この場合、付加される糖がカルボニル部分を有する)形のコリンエステラーゼ部分を提供することにより、導入することができる。カルボン酸を含有するコリンエステラーゼ部分に関して、PEG−ヒドラジン試薬は、カップリング剤(例えば、DCC)の存在下に、コリンエステラーゼ部分と共有結合させることができる[例えば、mPEG−OCHC(O)NHNH+HOC(O)−(ChE)の結果、mPEG−OCHC(O)NHNHC(O)−ChEが得られる]。ヒドラジド部分を含有する水溶性誘導体の具体例について、対応するコンジュゲートと共に以下の表2に提供する。加えて、活性化エステルを含有する水溶性ポリマー誘導体をヒドラジン(NH−NH)又はtert−カルバジン酸ブチル[NHNHCOC(CH]と反応させることにより、活性化エステル(例えば、スクシンイミジル基)を含有する任意の水溶性誘導体を、ヒドラジド部分を含むように変換することができる。表中、変数(n)は反復単量体単位の数を表し、「=C−(ChE)」は、ポリマー試薬とのコンジュゲート形成後のコリンエステラーゼ部分の残基を表す。場合により、ヒドラゾン連結は、好適な還元剤を用いて還元してもよい。表2に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCH又は(CHCHO)]は末端が「CH」基であるが、これは他の基(H及びベンジルなど)に置換されてもよい。
【0117】
【表2】

【0118】
コリンエステラーゼ部分中に含まれるチオール基は、水溶性ポリマーが結合する有効な部位として機能することができる。特に、システイン残基は、コリンエステラーゼ部分がタンパク質であるとき、チオール基を提供する。次に、かかるシステイン残基のチオール基が、チオール基との反応に特異的な活性化PEG、例えば、N−マレイミジルポリマー又は米国特許第5,739,208号明細書及び国際公開第01/62827号パンフレットに記載されるとおりの他の誘導体と反応し得る。加えて、保護基を有するチオールを活性化糖タンパク質のオリゴ糖側鎖に導入し、続いてチオール反応性水溶性ポリマーで脱保護してもよい。
【0119】
試薬の具体例について、対応するコンジュゲートと共に以下の表3に提供する。表中、変数(n)は反復単量体単位の数を表し、「−S−(ChE)」は、水溶性ポリマーとのコンジュゲート形成後のコリンエステラーゼ部分残基を表す。表3に示される各ポリマー部分[例えば、(OCHCH又は(CHCHO)]は末端が「CH」基であるが、これは他の基(H及びベンジルなど)に置換されてもよい。
【0120】
例示的コリンエステラーゼ部分に対応する配列番号1〜2に関して、チオール含有システイン残基が多くあることが分かる。従って、好ましいチオール結合部位は、これらの7つのシステイン残基のうちの1つに関係する。いかなるジスルフィド結合も破壊しないことが好ましいが、これらのシステイン残基のうちの1つ又は複数の側鎖中のポリマーを結合し、ある程度の活性を維持することが可能であり得る。水溶性ポリマーの結合に好ましい位置は、配列番号2のCys66に対応するチオール含有システイン残基である。加えて、従来の合成法を用いてコリンエステラーゼ部分にシステイン残基を付加することが可能である。例えば、国際公開第90/12874号パンフレットに記載されるシステイン残基の付加手順を参照されたく、かかる手順をコリンエステラーゼ部分に適合させることができる。加えて、従来の遺伝子工学的方法を用いることにより、システイン残基をコリンエステラーゼ部分に導入することもできる。しかしながら、いくつかの実施形態では、追加的なシステイン残基及び/又はチオール基は導入しないことが好ましい。
【0121】
【表3−1】

【0122】
【表3−2】

【0123】
【表3−3】

【0124】
1つ又は複数のマレイミド官能基を有する水溶性ポリマーから形成されたコンジュゲートに関して(マレイミドがコリンエステラーゼ部分のアミン基と反応するか、又はチオール基と反応するかにかかわらず)、対応する1つ又は複数のマレアミド酸型の水溶性ポリマーもまたコリンエステラーゼ部分と反応することができる。一定の条件下(例えば、pH約7〜9且つ水の存在下)では、マレイミド環が「開環」することにより対応するマレアミド酸が形成される。ひいては、マレアミド酸が、コリンエステラーゼ部分のアミン基又はチオール基と反応し得る。例示的なマレアミド酸ベースの反応が、以下に概略的に示される。POLYは水溶性ポリマーを表し、(ChE)はコリンエステラーゼ部分を表す。
【化11】

【0125】
本発明に係る代表的なコンジュゲートは、以下の構造を有し得る:
POLY−L0,1−C(O)Z−Y−S−S−(ChE)
式中、POLYは水溶性ポリマーであり、Lは任意選択のリンカーであり、Zは、O、NH、及びSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、Yは、C2〜10アルキル、C2〜10置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され、(ChE)はコリンエステラーゼ部分である。コリンエステラーゼ部分と反応することができ、結果としてこのタイプのコンジュゲートをもたらすポリマー試薬は、米国特許出願公開第2005/0014903号明細書に記載されている。
【0126】
先に指摘したとおり、水溶性ポリマーが分枝鎖型である本発明の例示的コンジュゲートは、以下の構造を含む分枝鎖型の水溶性ポリマーを有し得る:
【化12】

式中、各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数である。
【0127】
分枝鎖型の水溶性ポリマーを有する例示的コンジュゲートは、以下の試薬を用いて調製することができ:
【化13】

これにより、以下の構造を有するコンジュゲートが形成される:
【化14】

式中:
(各構造について)各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0128】
さらなる例示的コンジュゲートは、以下の試薬を用いて形成することができ:
【化15】

これにより、以下の構造を有するコンジュゲートが形成される:
【化16】

式中:
(各構造について)(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である。
【0129】
コンジュゲートは、チオール選択的ポリマー試薬を使用して様々な方法で形成することができ、本発明はこの点について限定されない。例えば、コリンエステラーゼ部分−場合により好適な緩衝液(必要であれば、アミンを含有する緩衝液を含む)中にあるもの−がpH約7〜8の水性媒体に入れられ、チオール選択的ポリマー試薬がモル過剰で添加される。そのまま反応を約0.5〜2時間にわたり進め、但し、ペグ化の収率が比較的低いと判断される場合、2時間より長い(例えば、5時間、10時間、12時間、及び24時間の)反応時間が有用であり得る。この手法で使用することのできる例示的なポリマー試薬は、マレイミド、スルホン(例えば、ビニルスルホン)、及びチオール(例えば、オルトピリジニル又は「OPSS」などの官能性チオール)からなる群から選択される反応基を有するポリマー試薬である。
【0130】
先に指摘したとおり、チオール選択的ポリマー試薬(例えば、マレイミド官能基を有するポリマー試薬)を使用してコリンエステラーゼ部分とのコンジュゲートを形成することができる。例えば、コンジュゲート形成条件下で、チオール選択的ポリマー試薬を二量体型のコリンエステラーゼ部分(例えば、二量体型の組換えヒトBChE)と反応させることが可能である。コリンエステラーゼ部分においてCys66に対応する位置が選択的にコンジュゲート化されると仮定すれば、二量体を構成する単量体サブユニットの一方のCys66に結合を有するモノコンジュゲート化二量体と、二量体を構成する2個の単量体サブユニットの各々のCys66に結合を有するジコンジュゲート化二量体とを含む混合物(例えば、二量体を構成するサブユニットの一方のCys66に結合を有するモノペグ化二量体と、二量体を構成する2個のサブユニットの各々についてCys66に結合を有するジペグ化二量体との混合物)が形成される。
【0131】
別の例示的な手法では、コンジュゲートの調製方法において還元ステップを行うことが可能である。還元ステップは、当業者に公知の手法を用いて行うことができる。例えば、還元ステップは、例えば、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、又はトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンなどの還元剤を添加するなど、タンパク質を還元条件に供することにより行うことができる。
【0132】
還元ステップが行われるこれらの例において、その還元ステップは、最初のコンジュゲート化反応の前にも、又は最初のコンジュゲート形成反応の後にも行うことができる(例えば、続く精製、及び/又は続くコンジュゲート形成を伴う)。
【0133】
例えば、最初のコンジュゲート形成反応後に還元ステップが行われる一手法では、還元ステップは、上記の混合物、すなわち、二量体を構成する単量体サブユニットの一方のCys66に結合を有するモノコンジュゲート化二量体と、二量体を構成する2個の単量体サブユニットの各々のCys66に結合を有するジコンジュゲート化二量体とを含む混合物(例えば、二量体を構成するサブユニットの一方のCys66に結合を有するモノペグ化二量体と、二量体を構成する2個のサブユニットの各々についてCys66に結合を有するジペグ化二量体とを含む混合物)を用いて行うことができる。前述の混合物が還元される結果、非コンジュゲート化単量体とモノコンジュゲート化単量体とを含む還元混合物が得られる。その後、その還元混合物は、当該技術分野で公知の手法(イオン交換クロマトグラフィーなど)を用いて精製することにより、非コンジュゲート化単量体とモノコンジュゲート化単量体とを実質的に分離し、実質的にコンジュゲート化されていない単量体を含む組成物とモノコンジュゲート化単量体を含む組成物とを形成することができる。その後、実質的にモノコンジュゲート化された単量体を含む組成物から還元条件を取り除くと(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーションなどを利用することにより、例えば還元剤を除去又は隔離すると)、その結果ジスルフィド結合が再び生じ、それにより、例えばジコンジュゲート化二量体(例えば、ジペグ化二量体)を含む組成物を形成することが可能である。場合により、ジコンジュゲート化二量体の形成率を高めるため、還元条件を取り除いた後にタンジェンシャルフローろ過(「TFF」)ステップを実施して、モノコンジュゲート化単量体を含む組成物を濃縮してもよい。前述の手法は、例えば、ジコンジュゲート化二量体(例えば、ジペグ化二量体)の50%を上回る比較的高い収率が得られ、生成物の特性決定が簡略化され、且つ必要なポリマー試薬が比較的少量となるという利点がある。
【0134】
ポリマー試薬に関して、本明細書及びその他に記載されるものは、商業的な供給業者から購入するか、又は市販の出発物質から調製することができる。加えて、ポリマー試薬の調製方法は、文献中に記載がある。
【0135】
コリンエステラーゼ部分と非ペプチド性水溶性ポリマーとの結合は直接であってもよく、この場合、コリンエステラーゼ部分とポリマーとの間に介在する原子は存在せず、又は結合は間接的であってもよく、この場合、コリンエステラーゼ部分とポリマーとの間に1個又は複数の原子が位置する。間接的な結合に関して、「スペーサー部分」が、コリンエステラーゼ部分の残基と水溶性ポリマーとの間のリンカーとして機能する。スペーサー部分を構成する1個又は複数の原子としては、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を挙げることができる。スペーサー部分は、アミド、第二級アミン、カルバメート、チオエーテル、及び/又はジスルフィド基を含むことができる。具体的なスペーサー部分の非限定的な例としては、−O−、−S−、−S−S−、−C(O)−、−C(O)−NH−、−NH−C(O)−NH−、−O−C(O)−NH−、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−O−CH−、−CH−C(O)−O−CH−、−CH−CH−C(O)−O−CH−、−C(O)−O−CH−CH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−C(O)−CH−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH−、−O−C(O)−NH−[CH−(OCHCH−、二価シクロアルキル基、−O−、−S−、アミノ酸、−N(R)−、及び前述のいずれかの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられ、式中、Rは、Hか、又は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール及び置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルであり、(h)は0〜6であり、(j)は0〜20である。他の具体的なスペーサー部分は以下の構造を有する:−C(O)−NH−(CH1〜6−NH−C(O)−、−NH−C(O)−NH−(CH1〜6−NH−C(O)−、及び−O−C(O)−NH−(CH1〜6−NH−C(O)−、式中、各メチレンの後ろの添え字の値は構造中に含まれるメチレンの数を示し、例えば、(CH1〜6は、その構造が、1、2、3、4、5又は6個のメチレンを含み得ることを意味する。加えて、上記のスペーサー部分のいずれも、1〜20個のエチレンオキシド単量体単位[すなわち、−(CHCHO)1〜20]を含むエチレンオキシドオリゴマー鎖をさらに含み得る。すなわち、エチレンオキシドオリゴマー鎖は、スペーサー部分の前にも、又は後ろにも、及び場合によっては2個以上の原子を含むスペーサー部分の任意の2個の原子間に、存在することができる。また、オリゴマー鎖は、オリゴマーがポリマーセグメントに隣接し、単にポリマーセグメントの延長部に相当するに過ぎないならば、スペーサー部分の一部とは見なされない。
【0136】
組成物
コンジュゲートは、典型的には組成物の一部である。概して、組成物は複数のコンジュゲートを含み、必須ではないが、好ましくは各コンジュゲートは同じコリンエステラーゼ部分を含む(すなわち、組成物全体のなかに、ただ1つのタイプのコリンエステラーゼ部分が存在する)。加えて、組成物は、任意の所与のコンジュゲートが2つ以上の異なるコリンエステラーゼ部分からなる群から選択されるある部分を含む複数のコンジュゲートを含み得る(すなわち、組成物全体のなかに、2つ以上の異なるコリンエステラーゼ部分が存在する)。しかしながら、最適には、組成物中の実質的に全てのコンジュゲート(例えば、組成物中の複数のコンジュゲートのうちの85%以上)が、各々、同じコリンエステラーゼ部分を含む。
【0137】
組成物は、単一のコンジュゲート種(例えば、単一のポリマーが、組成物中の実質的に全てのコンジュゲートについて同じ位置で結合するモノペグ化コンジュゲート)か、又はコンジュゲート種の混合物(例えば、ポリマーの結合が異なる部位で起こるモノペグ化コンジュゲートの混合物、及び/又は、モノペグ化、ジペグ化及びトリペグ化コンジュゲートの混合物)を含み得る。組成物はまた、4、5、6、7、8個又はそれ以上のポリマーが、コリンエステラーゼ活性を有する任意の所与の部分と結合している他のコンジュゲートも含み得る。加えて、本発明は、組成物が複数のコンジュゲートを含み、各コンジュゲートが、1個のコリンエステラーゼ部分と共有結合した1個の水溶性ポリマーを含む場合、並びに1個のコリンエステラーゼ部分と共有結合した2、3、4、5、6、7、8個、又はそれ以上の水溶性ポリマーを含む組成物も含む。
【0138】
組成物中のコンジュゲートに関して、組成物は、以下の特性のうちの1つ又は複数を満足し、すなわち、組成物中のコンジュゲートの少なくとも約85%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜4個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約85%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜3個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約85%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜2個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約85%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜5個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜4個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜3個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜2個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約95%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約99%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜5個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約99%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜4個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約99%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜3個のポリマーを有する;組成物中のコンジュゲートの少なくとも約99%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1〜2個のポリマーを有する;及び組成物中のコンジュゲートの少なくとも約99%が、コリンエステラーゼ部分と結合した1個のポリマーを有する。例えば「x〜y個のポリマー」としてポリマーの範囲を参照するときは、ポリマーの数が、端点を含めてx〜yであることを意図している(すなわち、例えば「1〜3個のポリマー」は、1個のポリマー、2個のポリマー及び3個のポリマーを意図し、「1〜2個のポリマー」は1個のポリマー及び2個のポリマーを意図する等)ことが理解される。
【0139】
1つ又は複数の実施形態では、コンジュゲートを含む組成物は、アルブミンを含まないか、又は実質的に含まないことが好ましい。また、組成物は、コリンエステラーゼ活性を有しないタンパク質を含まないか、又は実質的に含まないことも好ましい。従って、組成物は、85%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%がアルブミンを含まないことが好ましい。加えて、組成物は、85%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%が、コリンエステラーゼ活性を有しないいかなるタンパク質も含まないことが好ましい。組成物中にアルブミンが存在する限りにおいて、本発明の例示的組成物は、コリンエステラーゼ部分の残基をアルブミンと連結するポリ(エチレングリコール)ポリマーを含むコンジュゲートを実質的に含まない。
【0140】
任意の所与の部分に対するポリマーの所望の数の制御は、適切なポリマー試薬、ポリマー試薬のコリンエステラーゼ部分に対する比、温度、pH条件、及びコンジュゲート形成反応の他の側面を選択することにより実現することができる。加えて、精製手段により、望ましくないコンジュゲート(例えば、4個以上のポリマーが結合したコンジュゲート)の低減又は除去を実現することができる。
【0141】
例えば、ポリマー−コリンエステラーゼ部分コンジュゲートを精製して、異なるコンジュゲート化種を得る/単離することができる。具体的には、生成混合物を精製して、各コリンエステラーゼ部分につき平均1、2、3、4、5個又はそれ以上の範囲のPEG、典型的には、各コリンエステラーゼ部分につき1、2又は3個のPEGを得ることができる。最終的なコンジュゲート反応混合物の精製方針は、例えば、用いられるポリマー試薬の分子量、特定のコリンエステラーゼ部分、所望の投薬レジメン、1つ又は複数のコンジュゲートの個々の残基活性及びインビボ特性を含め、様々な要因に依存し得る。
【0142】
必要であれば、ゲルろ過クロマトグラフィー及び/又はイオン交換クロマトグラフィーを用いて分子量が異なるコンジュゲートを単離することができる。すなわち、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いると、その分子量の違いに基づき(この違いは、本質的に水溶性ポリマー分の平均分子量に対応する)、ポリマー−対−コリンエステラーゼ部分の比の大きさが異なるもの(例えば、1mer、2mer、3merなど、ここで「1mer」は、1ポリマー対コリンエステラーゼ部分を示し、「2mer」は、2ポリマー対コリンエステラーゼ部分を示す等)が分画される。例えば、35,000ダルトンのタンパク質が、約20,000ダルトンの分子量のポリマー試薬に対してランダムにコンジュゲート化される例示的反応では、結果として得られる反応混合物は、非修飾タンパク質(分子量約35,000ダルトン)、モノペグ化タンパク質(分子量約55,000ダルトン)、ジペグ化タンパク質(分子量約75,000ダルトン)などを含み得る。
【0143】
この手法を用いることで、異なる分子量を有するPEGと他のポリマー−コリンエステラーゼ部分コンジュゲートとを分離することはできるが、概してこの手法は、コリンエステラーゼ部分中のポリマー結合部位が異なる位置アイソフォームの分離には役立たない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いると、PEG 1mer、2mer、3merなどの混合物を互いに分離することはできるが、回収したコンジュゲート組成物の各々は、コリンエステラーゼ部分中の異なる反応基(例えば、リジン残基)に結合した1つ又は複数のPEGを含み得る。
【0144】
このタイプの分離を行うのに好適なゲルろ過カラムとしては、Amersham Biosciences(Piscataway,NJ)から入手可能なSuperdex(商標)カラム及びSephadex(商標)カラムが挙げられる。特定のカラムの選択は、望ましい所望の分画範囲に依存し得る。溶出は、概して、リン酸、酢酸などの好適な緩衝液を使用して行われる。収集された画分は、例えば、(i)タンパク質含量についての280nmの吸光度、(ii)ウシ血清アルブミン(BSA)を標準として使用する色素ベースのタンパク質分析、(iii)PEG含量についてのヨウ素試験(Simsら(1980年)Anal.Biochem、107:60−63頁)、(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)と、続くヨウ化バリウムによる染色、及び(v)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など、様々な異なる方法により分析され得る。
【0145】
位置アイソフォームの分離は、好適なカラム(例えば、Amersham Biosciences又はVydacなどの企業から市販されているC18カラム又はC3カラム)を使用した逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いる逆相クロマトグラフィーによるか、又はイオン交換カラム、例えば、Amersham Biosciencesから入手可能なSepharose(商標)イオン交換カラムを用いるイオン交換クロマトグラフィーにより行われる。いずれの手法を用いても、同じ分子量を有するポリマー−活性薬剤の異性体(すなわち、位置アイソフォーム)を分離することができる。
【0146】
組成物は、好ましくはコリンエステラーゼ活性を有しないタンパク質を実質的に含まない。加えて、組成物は、好ましくは他のいかなる非共有結合性の水溶性ポリマーも実質的に含まない。しかしながら、ある状況下では、組成物は、ポリマー−コリンエステラーゼ部分コンジュゲートと非コンジュゲート化コリンエステラーゼ部分との混合物を含み得る。
【0147】
場合により、本発明の組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。必要であれば、薬学的に許容可能な賦形剤はコンジュゲートに添加され、組成物を形成することができる。
【0148】
例示的な賦形剤としては、限定なしに、炭水化物、無機塩類、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0149】
糖、誘導体化された糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化された糖、及び/又は糖ポリマーなどの炭水化物が、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤としては、例えば:フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類;及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。
【0150】
賦形剤としてはまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせなどの無機塩又は緩衝剤も挙げることができる。
【0151】
組成物はまた、微生物の繁殖を防止又は抑止するための抗菌剤も含むことができる。本発明の1つ又は複数の実施形態に好適な抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール(thimersol)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0152】
抗酸化剤も同様に組成物中に存在し得る。抗酸化剤を使用すると酸化が防止され、それによりコンジュゲート又は調製物の他の構成成分の劣化が防止される。本発明の1つ又は複数の実施形態での使用に好適な抗酸化剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0153】
賦形剤として界面活性剤が存在してもよい。例示的な界面活性剤としては、「Tween 20」及び「Tween 80」などのポリソルベート、並びにF68及びF88(双方とも、BASF、Mount Olive,New Jerseyから入手可能)などのプルロニック;ソルビタンエステル;レシチン及び他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(但し、リポソーム形態ではないことが好ましい)、脂肪酸、並びに脂肪酸エステルなどの脂質;コレステロールなどのステロイド;並びにEDTA、亜鉛及び他のかかる好適な陽イオンなどのキレート剤が挙げられる。
【0154】
酸又は塩基が組成物中に賦形剤として存在してもよい。使用することのできる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。好適な塩基の例としては、限定なしに、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0155】
組成物中のコンジュゲート(すなわち、活性薬剤とポリマー試薬との間で形成されるコンジュゲート)の量は、様々な要因によって異なり得るが、最適には、組成物が単位用量容器(例えば、バイアル)に保存されるとき、治療上有効な用量であり得る。加えて、医薬調製物はシリンジに収容されてもよい。治療上有効な用量は、どの量が臨床的に望ましいエンドポイントを生じるかを判断するために、コンジュゲートの量を漸増させながら反復投与することにより実験的に決定することができる。
【0156】
組成物中の任意の個別の賦形剤の量は、賦形剤の活性及び組成物の特定の必要性によって異なり得る。典型的には、任意の個別の賦形剤についての最適量の決定は、ルーチンの実験を通じて、すなわち、様々な量の賦形剤(低量から高量までの範囲にわたる)を含む組成物を調製して安定性及び他のパラメータを調べ、次にどの時点で有意な副作用なしに最適な効果が得られるかを決定することにより行われる。
【0157】
しかしながら、概して賦形剤は組成物中に約1%〜約99重量%、好ましくは約5%〜約98重量%、より好ましくは約15〜約95重量%の賦形剤の量で存在し、濃度は30重量%未満が最も好ましい。
【0158】
これらの前述の医薬賦形剤は、他の賦形剤と共に、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、第19版、Williams & Williams、(1995年)、「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics、Montvale,NJ(1998年)、及びKibbe,A.H.、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、American Pharmaceutical Association、Washington,D.C.、2000年に記載されている。
【0159】
組成物は、あらゆるタイプの製剤、特に注射に適したもの、例えば、再構成することのできる粉末又は親液体並びに液体を包含する。固形組成物の注射前の再構成に好適な希釈剤の例としては、注射用静菌水、水中のデキストロース5%、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、及びそれらの組み合わせが挙げられる。液状の医薬組成物に関しては、溶液及び懸濁液が想定される。
【0160】
本発明の1つ又は複数の実施形態の組成物は、必須ではないが、典型的には注射により投与され、従って投与直前には概して液状の溶液又は懸濁液である。医薬調製物はまた、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、粉末などの他の形態をとることもできる。他の投与方法、例えば、肺内、直腸、経皮、経粘膜、経口、鞘内、皮下、動脈内なども含まれる。
【0161】
本発明はまた、本明細書に提供されるとおりのコンジュゲートを、コンジュゲートによる治療に反応性を有する病態を患う患者に対して投与する方法も提供する。この方法は、患者に対し、概して注射により、治療上有効量のコンジュゲート(好ましくは医薬組成物の一部として提供されるもの)を投与することを含む。先述のとおり、コンジュゲートは、注射(例えば、筋肉内、皮下及び非経口)することができる。非経口投与に好適な製剤タイプとしては、特に、即時注射用溶液、使用前に溶媒と混和する乾燥粉末、即時注射用懸濁液、使用前に媒剤と混和する不溶性の乾燥組成物、並びに投与前に希釈する乳剤及び液状濃縮物が挙げられる。
【0162】
こうした投与方法を用いて、コンジュゲートの投与により治癒又は予防することのできる任意の病態が治療され得る。当業者は、具体的なコンジュゲートがどの病態を効果的に治療することができるかを理解する。例えば、コンジュゲートを単独で、又は他の薬物療法と組み合わせて使用して、有機リン剤への曝露を被った患者を治療することができる。有利には、コンジュゲートの患者への投与は、別の活性薬剤の投与より前であっても、それと同時であっても、又はその後であってもよい。
【0163】
実際の投与用量は、被験体の年齢、体重、及び全般的な状態、並びに治療対象となる病態の重症度、医療従事者の判断、及び投与されるコンジュゲートによって異なり得る。治療上の有効量は当業者には公知であり、及び/又は関連する参照テキスト及び文献に記載されている。概して、治療上の有効量は約0.001mg〜100mgの範囲、好ましくは0.01mg/日〜75mg/日の用量、より好ましくは0.10mg/日〜50mg/日の用量であり得る。所与の用量は、例えば、有機リン剤中毒の症状が軽減され、及び/又は完全になくなるまで定期的に投与され得る。
【0164】
単位投薬量の任意の所与のコンジュゲート(ここでも、好ましくは医薬調製物の一部として提供されるもの)は、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて様々な投薬スケジュールで投与することができる。具体的な投薬スケジュールは、当業者には周知であるか、又はルーチンの方法を用いて実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールとしては、限定なしに、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、及びそれらの任意の組み合わせの投与が挙げられる。臨床的なエンドポイントが達成されると、組成物の投薬は中止される。
【0165】
本明細書に記載される特定のコンジュゲートを投与する利点の一つは、コリンエステラーゼ部分の残基と水溶性ポリマーとの間に加水分解により分解可能な連結が含まれる場合、個々の水溶性ポリマー部分を切断できることである。ポリマーの大きさに起因して体からのクリアランスが潜在的に問題である場合には、このような結果は有利である。最適には、各水溶性ポリマー部分の切断は、アミド、カーボネート又はエステル含有連結などの、生理学的に切断可能な、及び/又は酵素分解可能な連結を使用することにより促進される。このように、コンジュゲートの(個々の水溶性ポリマー部分の切断を介した)クリアランスは、所望のクリアランス特性をもたらし得るポリマー分子サイズ及び官能基タイプを選択することにより調節することができる。当業者は、ポリマーの適正な分子サイズ並びに切断可能な官能基を決定することができる。例えば、当業者は、ルーチンの実験を用いて、初めに種々のポリマー重量と切断可能な官能基とを有する様々なポリマー誘導体を調製し、次にそのポリマー誘導体を患者に投与して定期的に採血及び/又は採尿を行うことによりクリアランスプロファイルを得ることで(例えば、定期的な採血又は採尿を通じて)、適正な分子サイズ及び切断可能な官能基を決定することができる。試験した各コンジュゲートについて一連のクリアランスプロファイルが得られると、好適なコンジュゲートを同定することができる。
【0166】
本発明は、その好ましい具体的な実施形態に関連して説明されているが、前述の説明並びに以下の実施例は例示を目的としており、本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。本発明の範囲内における他の態様、利点及び変更は、本発明の係る当該技術分野の当業者には明らかであろう。
【0167】
本明細書で参照される論文、著作、特許及び他の刊行物は全て、全体として参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0168】
本発明の実施には、特に指示されない限り、有機合成、生化学、タンパク質精製などの従来技術が用いられ、それらは当該技術分野の範囲内である。かかる方法は文献中に詳しく説明されている。例えば、J.March、「Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure」、第4版(New York:Wiley−Interscience、1992年)、上記を参照のこと。
【0169】
以下の予見的な実施例では、使用される数(例えば、量、温度等)に関する正確性を確保するように努めたが、いくらかの実験誤差及び偏差は考慮しなければならない。特に指示がない限り、温度は摂氏温度であり、圧力は海上気圧又はその近傍におけるものである。以下の例の各々は、当業者が本明細書に記載される実施形態の1つ又は複数を実行するための教示と見なされる。
【0170】
本実施例で使用するため、成熟タンパク質配列である配列番号2のアミノ酸配列に対応するコリンエステラーゼ部分を含む水溶液(「原液」)を得た。原液の濃度は、1〜100mg/mLの間で様々であった。
【0171】
SDS−PAGE分析
試料は、Invitrogen NuPAGEシステム及びNovex3〜8%トリス酢酸プレキャストゲル(Invitrogen、Carlsbad,CA)を使用するドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析した。試料は製造者によって記載されるとおり調製し、ゲルに負荷して電気泳動法を実施した。
【0172】
陰イオン交換クロマトグラフィー
総容積が約100mlのQ−FF Sepharose(GE Healthcare)陰イオン交換カラムを、標準的な方法を用いて調製した。このカラムをGE Healthcare(Chalfont St.Giles,英国)のAKTAベーシック又はより高度なシステムに接続し、調製したPEG−rChEコンジュゲートを精製した。精製過程の詳細は以下に記載される。
【0173】
RP−HPLC分析
Agilent(Santa Clara,CA)の1100 HPLCシステムで逆相クロマトグラフィー(RP−HPLC)分析を実施した。試料は、Agilent Zorbax 300SB−C8(P/N 863973−906、4.6×150mm、粒度3.5μm、孔径300Å)カラムを使用して分析した。カラムの流量は0.5ml/分であった。移動相は、水(溶媒A)中の0.1%TFA及びアセトニトリル(溶媒B)中の0.1%TFAであった。
【0174】
実施例1A〜1D
システイン側鎖を介したコンジュゲート形成
先述のとおり、チオール含有システイン側鎖を介したコリンエステラーゼ部分のコンジュゲート形成は、理想的には存在するジスルフィド結合を維持する。成熟型のブチリルコリンエステラーゼに関しては、ジスルフィド結合の作用を受けないシステインである単一のシステイン残基(Cys66)が存在する。Lockridgeら(1987年)J.Biol.Chem.262(27):12945−12952頁。Lockridgeらはまた、このシステインがアルキル化によっては修飾されなかったことも報告しており、その理由については、このシステインがタンパク質の二次構造及び三次構造内に「埋め込まれている」ためであると推定される。従って、この位置にコンジュゲート形成能があれば、それは予想外のことである。
【0175】
以下に概要を述べる一般的な手法を用いて実施例1A〜1Dを行った。
【化17】

【0176】
組換え型のタンパク質は、2つの同一のサブユニットが各サブユニットのCys571間で単一のジスルフィド結合によって連結されたホモ二量体として存在する。この方法は、タンパク質が二量体として維持される条件下で各単量体タンパク質単位につき1個の試薬を添加することにより、比較的高いレベルのペグ化を実現する条件を示す。このようにすることで、同一の各サブユニットが、Cys571位ではなく、実質的にCys66位でペグ化される。
【0177】
実施例1A
マレイミド基を有する20kDaの直鎖状PEGによるrBChEのペグ化
【化18】

マレイミド基を有する20kDaのPEG
(nは、約20kDaのPEGをもたらすように定義される)
【化19】

実施例1Aのコンジュゲ−ト
(各nは、約20kDaのPEGをもたらすように定義される)
ブチルコリンエステラーゼタンパク質原液の出発濃度は±90mg/mLであり、タンパク質は、10mMのNaPO(pH7.4)、1mMのEDTA及び35mMのNaClを含む緩衝液中に溶解した。1gのタンパク質(11mLの上記原液)を8.1mLの希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA(pH7.4))で希釈し、最終的なタンパク質濃度を52〜53mg/mLとした。
【0178】
このタンパク質溶液を撹拌しながら、0.74mLのトリス緩衝液(1Mのトリス、pH8.2)を添加した。それに続き、0.238mLのトリス塩基(1Mのトリス塩基)を添加した。結果として得られた溶液のpHは、pH8.30であった。
【0179】
別個の容器において、6mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA、pH6.1)中に溶解し、16.7%(w/v)溶液とした。希釈したタンパク質溶液に、そのタンパク質溶液を撹拌しながらPEG試薬溶液を添加した。この混合液は、これ以降ペグ化反応液と称する。ペグ化反応液を室温(22℃)で6時間にわたり撹拌させておいた。
【0180】
その後、4mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液中に溶解することにより、第2のPEG試薬溶液を作成した。ペグ化反応液を撹拌し続けながら、このさらなるPEG試薬溶液をペグ化反応液に添加した。ペグ化反応液を室温(22℃)でさらに6〜18時間にわたり撹拌させておいた。その後、ペグ化生成物を精製するまで(但し、通常は48時間以内)、ペグ化反応液は4℃で保存した。
【0181】
実施例1B
マレイミド基を有する30kDaの直鎖状PEGによるrBChEのペグ化
【化20】

マレイミド基を有する30kDaのPEG
(nは、約30kDaのPEGをもたらすように定義される)
【化21】

実施例1Bのコンジュゲ−ト
(nは、約30kDaのPEGをもたらすように定義される)
ブチルコリンエステラーゼタンパク質原液の出発濃度は±90mg/mLであり、タンパク質は、10mMのNaPO(pH7.4)、1mMのEDTA及び35mMのNaClを含む緩衝液中に溶解した。1gのタンパク質(11mLの上記原液)を8.1mLの希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA(pH7.4))で希釈し、最終的なタンパク質濃度を52〜53mg/mLとした。
【0182】
このタンパク質溶液を撹拌しながら、0.74mLのトリス緩衝液(1Mのトリス、pH8.2)を添加した。それに続き、0.238mLのトリス塩基(1Mのトリス塩基)を添加した。結果として得られた溶液のpHは、pH8.30であった。
【0183】
別個の容器において、6mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA、pH6.1)中に溶解し、16.7%(w/v)溶液とした。希釈したタンパク質溶液に、そのタンパク質溶液を撹拌しながらPEG試薬溶液を添加した。この混合液は、これ以降ペグ化反応液と称する。ペグ化反応液を室温(22℃)で6時間にわたり撹拌させておいた。
【0184】
その後、4mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液中に溶解することにより、第2のPEG試薬溶液を作成した。ペグ化反応液を撹拌し続けながら、このさらなるPEG試薬溶液をペグ化反応液に添加した。ペグ化反応液を室温(22℃)でさらに6〜18時間にわたり撹拌させておいた。その後、ペグ化生成物を精製するまで(但し、通常は48時間以内)、ペグ化反応液は4℃で保存した。
【0185】
実施例1C
マレイミド基を有する40kDaの分枝鎖状PEGによるrBChEのペグ化
【化22】

マレイミド基を有する40kDaの分枝鎖状PEG
(各nは、約20kDaのPEGをもたらすように定義される)
【化23】

実施例1Cのコンジュゲ−ト
(各nは、約20kDaのPEGをもたらすように定義される)
ブチルコリンエステラーゼタンパク質原液の出発濃度は±90mg/mLであり、タンパク質は、10mMのNaPO(pH7.4)、1mMのEDTA及び35mMのNaClを含む緩衝液中に溶解した。1gのタンパク質(11mLの上記溶液)を8.1mLの希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA(pH7.4))で希釈し、最終的なタンパク質濃度を52〜53mg/mLとした。
【0186】
このタンパク質溶液を撹拌しながら、0.74mLのトリス緩衝液(1Mのトリス、pH8.2)を添加した。それに続き、0.238mLのトリス塩基(1Mのトリス塩基)を添加した。結果として得られた溶液のpHは、pH8.30であった。
【0187】
別個の容器において、6mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA、pH6.1)中に溶解し、16.7%(w/v)溶液とした。希釈したタンパク質溶液に、そのタンパク質溶液を撹拌しながらPEG試薬溶液を添加した。この混合液は、これ以降ペグ化反応液と称する。ペグ化反応液を室温(22℃)で6時間にわたり撹拌させておいた。
【0188】
その後、4mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液中に溶解することにより、第2のPEG試薬溶液を作成した。ペグ化反応液を撹拌し続けながら、このさらなるPEG試薬溶液をペグ化反応液に添加した。ペグ化反応液を室温(22℃)でさらに6〜18時間にわたり撹拌させておいた。その後、ペグ化生成物を精製するまで(但し、通常は48時間以内)、ペグ化反応液は4℃で保存した。
【0189】
実施例1D
マレイミド基を有する60kDaの分枝鎖状PEGによるrBChEのペグ化
【化24】

マレイミド基を有する60kDaの分枝鎖状PEG
(各nは、約30kDaのPEGをもたらすように定義される)
【化25】

実施例1Dのコンジュゲ−ト
(各nは、約30kDaのPEGをもたらすように定義される)
ブチルコリンエステラーゼタンパク質原液の出発濃度は±90mg/mLであり、タンパク質は、10mMのNaPO(pH7.4)、1mMのEDTA及び35mMのNaClを含む緩衝液中に溶解した。1gのタンパク質(11mLの上記原液)を8.1mLの希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA(pH7.4))で希釈し、最終的なタンパク質濃度を52〜53mg/mLとした。
【0190】
このタンパク質溶液を撹拌しながら、0.74mLのトリス緩衝液(1Mのトリス、pH8.2)を添加した。それに続き、0.238mLのトリス塩基(1Mのトリス塩基)を添加した。結果として得られた溶液のpHは、pH8.30であった。
【0191】
別個の容器において、6mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液(2mMのNaPO、1mMのEDTA、pH6.1)中に溶解し、16.7%(w/v)溶液とした。希釈したタンパク質溶液に、そのタンパク質溶液を撹拌しながらPEG試薬溶液を添加した。この混合液は、これ以降ペグ化反応液と称する。ペグ化反応液を室温(22℃)で6時間にわたり撹拌させておいた。
【0192】
その後、4mol当量のタンパク質分量に等しい一定量のPEG試薬をPEG希釈緩衝液中に溶解することにより、第2のPEG試薬溶液を作成した。ペグ化反応液を撹拌し続けながら、このさらなるPEG試薬溶液をペグ化反応液に添加した。ペグ化反応液を室温(22℃)でさらに6〜18時間にわたり撹拌させておいた。その後、ペグ化生成物を精製するまで(但し、通常は48時間以内)、ペグ化反応液は4℃で保存した。
【0193】
実施例2
mPEG−40k−マレイミドを使用して65〜70%のペグ化収率を実現する代替的なペグ化条件
このペグ化反応液の反応時間は、電磁撹拌棒及びプレートを使用した撹拌を伴い10℃で6日間であった。
【0194】
原液に対し、PEG試薬をバッチ方式で撹拌しながら添加し、これは、以下の表4に示すとおり1mol当量の乾燥PEG試薬を毎日添加した。
【0195】
高レベルのペグ化(すなわち、単量体に関して>65%のペグ化)を実現するため、タンパク質の濃度を可能な限り高いレベルに維持した。こうした条件下では、可逆的なタンパク質凝集体の形成により、反応混合物は「乳濁/混濁」していた。しかしながら、ペグ化反応液を最小限にも希釈することなしに1mol当量より多いPEGを添加した場合、凝集体が大き過ぎ(実験的に測定した)、ペグ化効率は低下した。従って、乾燥PEGの添加前に、ペグ化反応液を以下の表4に示されるとおりに緩衝液で希釈した。
【0196】
反応希釈緩衝液も同じく添加する場合のPEG試薬の添加について、PEG試薬は、混合液をペグ化反応液に添加する前に緩衝液中に溶解させることもできた。
【0197】
10mMのNaPO(pH7.3)、1mMのEDTA及び35mMのNaClを含む緩衝液(反応希釈緩衝液)中に83mg/mLの出発濃度でタンパク質を溶解した。以下の反応液の分量は、241mLの出発容量における20グラムのrhBChEタンパク質のペグ化を示す。
【0198】
表4に掲載される詳細に従い、緩衝液及びPEG試薬の添加を室温で行った。
【0199】
【表4】

【0200】
この反応後、実施例3に記載のとおりペグ化タンパク質を精製した。
【0201】
実施例3
ジペグ化二量体の精製
実施例1A〜1D及び実施例2に記載されるペグ化方法により、単量体型のタンパク質に関してタンパク質の65〜70%がペグ化されたタンパク質溶液が生じる。タンパク質を単量体に還元した後、RP−HPLCによりペグ化反応液を分析した。しかしながら、この反応による望ましい生物学的形態はジペグ化二量体であり、このペグ化反応液はペグ化二量体を十分には生成しなかった。ペグ化のレベルはPEG試薬をさらに添加することにより僅かに上昇し得るが、最終的にはこのペグ化の中程度の増加は、PEG試薬のコスト上昇によって打ち消され得る。反応混合液を分析すると、反応混合物の約50%がモノペグ化二量体の形態で、及び45%がジペグ化二量体の形態であることが示された。さらに、精製後には、わずか30〜35%のジペグ化二量体しか回収することができなかった。この回収レベルは、経済的に実行可能な方法としては低過ぎるであろう。
【0202】
従って、モノペグ化二量体の画分中に存在した実質的に全てのモノペグ化単量体型のタンパク質を回収し、ジペグ化二量体に変換することができた方法について記載する。この方法により、少なくとも55〜60%のプロセス全収率が可能となる。
【0203】
1グラムのペグ化反応液の精製に対し、直径22mmの陰イオン交換カラム(Q−sepharose fast flow)を、結果として総容積が5mg/mLのタンパク質負荷となるように充填した(当業者に公知の方法を用いた)。カラムをクロマトグラフィー緩衝液A(10mMのNaPO(pH7.8)、1mMのEDTA、5mMのシステイン)に平衡化した。
【0204】
ペグ化反応液容量の1倍量の還元緩衝液(10mMのNaPO(pH7.8)、1mMのEDTA、20mMのシステイン)を添加し、室温で1時間インキュベートすることにより、ペグ化反応液中のタンパク質を単量体型に還元した。
【0205】
その後、ペグ化反応液容量の7倍量のクロマトグラフィー緩衝液Aと、ペグ化反応液容量の1倍量の水とを添加すると、結果として元のペグ化反応液の10倍希釈液が得られた。
【0206】
適切なクロマトグラフィー機器を、希釈したペグ化反応液の全てがカラムに負荷されるようにプログラムし、カラム総容積の2倍量のクロマトグラフィー緩衝液Aで洗浄することにより、結合しなかったタンパク質を除去した。その後、いくつかの勾配段階を用いてBChEのペグ化単量体を溶離した。
【0207】
勾配段階1は、総容積の2.5倍量に対する0〜25%クロマトグラフィー緩衝液B(緩衝液Aと等しいが、0.5MのNaClもさらに含む)の連続勾配であった。画分を収集した。
【0208】
勾配段階2は、総容積の2.5倍量についての25%緩衝液Bでの維持段階(hold step)であった。画分を収集した。
【0209】
勾配段階3は、総容積の2倍量についての100%Bまでの上昇段階(direct step)と、続く100%のBでの維持段階(hold step)(勾配段階4)であった。画分を収集した。
【0210】
モノペグ化単量体は、勾配段階1及び2の間に広いピークにわたって溶離した。ペグ化されなかった単量体が、勾配段階4の間に溶離した。
【0211】
カラムは標準的な方法を用いて再生した。
【0212】
適切な画分をプールし、タンジェンシャルフローろ過(TFF)及び標準的な方法を用いて、ろ過ユニットの製造者により記載されるとおり緩衝液を交換/濃縮した。
【0213】
モノペグ化単量体溶液は、タンパク質濃度が25mg/mLになるまでTFFにより濃縮し、TFF緩衝液(10mMのNaPO(pH7.5)、1mMのEDTA、35mMのNaCl)の7回の緩衝液容量交換を適用した。0.22μmろ過ユニットを用いて溶液をろ過滅菌した。
【0214】
この時点で、タンパク質を単量体に還元するために用いたシステインがタンパク質溶液から(TFFプロセスにより)除去されており、室温で48時間インキュベートし、続いて4℃で保存して二量体型のタンパク質を再び生じさせた。従って、最終産物はジペグ化二量体型のタンパク質であった。
【0215】
実施例4
40kDaの分枝鎖状mPEG−N−ヒドロキシスクシンイミド誘導体によるrChEのペグ化
【化26】

全ての反応成分及び緩衝液を添加した後、rChE最終濃度が2.5mg/mlとなるようにペグ化反応液を設計する。アルゴン下に−20℃で保存した40kDaのPEG2−NHSを、周囲温度に加温する。ペグ化するrChEの10〜50mol当量に等しいPEG試薬の分量を秤量し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)及び1mMのEDTA中に溶解して12%試薬溶液を形成する。12%PEG試薬溶液をrChE原液のアリコートに速やかに添加し、室温で3〜18時間にわたり撹拌してmPEG2−NHSのrChEとのアミド連結によるカップリングを生じさせると、結果としてコンジュゲート溶液が得られる。最終リジンモル濃度がPEG試薬モル濃度の10〜100倍となるように、コンジュゲート溶液をリジン溶液(pH7.5)でクエンチする。
【0216】
mPEG2−NHSは、リジン及び末端アミンと選択的に反応する比較的大きいモル体積の活性N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルをもたらすことが認められる。
【0217】
これと同じ手法を用いることにより、他の重量平均分子量を有するmPEG2−NHSを使用して他のコンジュゲートが調製される。
【0218】
40kDaのPEG2−NHSを使用したコンジュゲートを、実質的に本実施例に記載される手順に従い調製し、ここではmol当量が10、25及び50の40kDaのPEG2−NHSを、3つの別個の試行において使用した。結果として得られたコンジュゲート溶液のSDS−PAGE分析を図1に提供する。
【0219】
実施例5
30kDaの直鎖状mPEG−ブチルアルデヒド誘導体によるrChEのペグ化
【化27】

直鎖状mPEG−ブチルアルデヒド誘導体、30kDa(「mPEG−ButyrALD」)
全ての反応成分及び緩衝液を添加した後、rChE最終濃度が2.5mg/mlとなるようにペグ化反応液を設計する。アルゴン下に−20℃で保存した30kDaのmPEG−ButyrALDを、周囲温度に加温する。ペグ化するrChEの10〜50mol当量に等しいPEG試薬の分量を秤量し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)及び1mMのEDTA中に溶解して12%試薬溶液を形成する。12%PEG試薬溶液をrChE原液のアリコートに添加し、15〜30分間にわたり撹拌する。次に、還元剤のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)を、PEG試薬に対して10〜100モル過剰で添加し、反応液を室温で5〜18時間にわたり撹拌して第二級アミン連結によるカップリングを確実に行うと、それによりコンジュゲート溶液が形成される。
【0220】
mPEG−ButyrALDのアルデヒド基は、rChEに関連する第一級アミンと反応し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元試薬により還元すると、第二級アミンを介して第一級アミンと共有結合することが認められる。
【0221】
これと同じ手法を用いることにより、他の重量平均分子量を有するmPEG−BuryrALDを使用して他のコンジュゲートが調製される。
【0222】
30kDaのmPEG−ButyrALDを使用したコンジュゲートを、実質的に本実施例に記載される手順に従い調製し、ここではmol当量が10、25及び50の30kDaのmPEG−ButyrALDを、3つの別個の試行において使用した。結果として得られたコンジュゲート溶液のSDS−PAGE分析を図1に提供する。
【0223】
実施例6
40kDaの分枝鎖状mPEG−ブチルアルデヒド誘導体によるrChEのペグ化
【化28】

分枝鎖状mPEG−ブチルアルデヒド誘導体、40kDa(「mPEG2−ButyrALD」)
全ての反応成分及び緩衝液を添加した後、rChE最終濃度が2.5mg/mlとなるようにペグ化反応液を設計する。アルゴン下に−20℃で保存した40kDaのmPEG2−ButyrALDを、周囲温度に加温する。ペグ化するrChEの10〜50mol当量に等しいPEG試薬の分量を秤量し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)及び1mMのEDTA中に溶解して12%試薬溶液を形成する。12%PEG試薬溶液をrChE原液のアリコートに添加し、15〜30分間にわたり撹拌する。次に、還元剤のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)を、PEG試薬に対して10〜100モル過剰で添加し、反応液を室温で5〜18時間にわたり撹拌して第二級アミン連結によるカップリングを確実に行うと、それによりコンジュゲート溶液が形成される。
【0224】
mPEG2−ButyrALDのアルデヒド基は、rChEに関連する第一級アミンと反応し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元試薬により還元すると、第二級アミンを介して第一級アミンと共有結合することが認められる。
【0225】
これと同じ手法を用いることにより、他の重量平均分子量を有するmPEG2−BuryrALDを使用して他のコンジュゲートが調製される。
【0226】
40kDaのmPEG2−ButyrALDを使用したコンジュゲートを、実質的に本実施例に記載される手順に従い調製し、ここではmol当量が10、25及び50の40kDaのmPEG2−ButyrALDを、3つの別個の試行において使用した。結果として得られたコンジュゲート溶液のSDS−PAGE分析を図1に提供する。
【0227】
実施例7
30kDaの直鎖状mPEG−スクシンイミジルα−メチルブタノエート誘導体によるrChEのペグ化
【化29】

直鎖状mPEG−スクシニミジルα−メチルブタノエ−ト誘導体、30kDa(「mPEG−SMB」)
全ての反応成分及び緩衝液を添加した後、rChE最終濃度が2.5mg/mlとなるようにペグ化反応液を設計する。アルゴン下に−20℃で保存した30kDaのmPEG−SMBを、周囲温度に加温する。ペグ化するrChEの10〜50mol当量に等しいPEG試薬の分量を秤量し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)及び1mMのEDTA中に溶解して12%試薬溶液を形成する。12%PEG試薬溶液をrChE原液のアリコートに添加し、室温で5〜18時間にわたり撹拌すると、それにより結果としてコンジュゲート溶液が得られる。最終リジンモル濃度がPEG試薬モル濃度の10〜100倍となるように、コンジュゲート溶液をリジン溶液(pH7.5)でクエンチする。
【0228】
mPEG−SMB誘導体は、リジン及び末端アミンと選択的に反応する立体障害性の活性NHSエステルをもたらすことが認められる。
【0229】
これと同じ手法を用いることにより、他の重量平均分子量を有するmPEG−SMBを使用して他のコンジュゲートが調製される。
【0230】
実施例8
20kDaのmPEG−PIPによるrChEのペグ化
ポリマー試薬の基本構造を以下に提供する:
【化30】

【0231】
全ての反応成分及び緩衝液を添加した後、rChE最終濃度が2.5mg/mlとなるようにペグ化反応液を設計する。アルゴン下に−20℃で保存した20kDaのmPEG−PIPを、周囲温度に加温する。ペグ化するrChEの10〜50mol当量に等しいPEG試薬の分量を秤量し、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)及び1mMのEDTA中に溶解して12%試薬溶液を形成する。12%PEG試薬溶液をrChE原液のアリコートに添加し、15〜30分間にわたり撹拌する。次に、還元剤のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)を、PEG試薬に対して10〜100モル過剰で添加し、反応液を室温で5〜18時間にわたり撹拌して第二級アミン連結による(第二級炭素との)カップリングを確実に行うと、それによりコンジュゲート溶液が形成される。最終リジンモル濃度がPEG試薬モル濃度の10〜100倍となるように、コンジュゲート溶液をリジン溶液(pH7.5)でクエンチする。
【0232】
mPEG−PIPのケトン基は、rChEに関連する第一級アミンと反応し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの還元試薬により還元すると、第二級アミンを介して第一級アミンと共有結合することが認められる。
【0233】
これと同じ手法を用いることにより、他の重量平均分子量を有するmPEG−PIPを使用して他のコンジュゲートが調製される。
【0234】
実施例9
例示的(rChE)−PEGコンジュゲートの活性
上記の実施例に記載される(rChE)−PEGコンジュゲートの活性を測定する。いずれのrChEコンジュゲートも薬理活性を有すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、前記コリンエステラーゼ部分の残基が、前記コリンエステラーゼ部分の残基中のシステイン残基を介して水溶性ポリマーと共有結合する、コンジュゲート。
【請求項2】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、前記水溶性ポリマーが、共有結合する前は、マレイミド基を有するポリマー試薬である、コンジュゲート。
【請求項3】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、前記水溶性ポリマーが分枝鎖状水溶性ポリマーである、コンジュゲート。
【請求項4】
前記コリンエステラーゼ部分がアセチルコリンエステラーゼである、請求項1、2及び3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記コリンエステラーゼ部分がブチリルコリンエステラーゼである、請求項1、2及び3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記コリンエステラーゼ部分が組換えにより調製される、請求項1、2及び3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、及びポリ(アクリロイルモルホリン)からなる群から選択されるポリマーである、請求項1、2、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーがポリ(アルキレンオキシド)である、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記ポリ(アルキレンオキシド)がポリ(エチレングリコール)である、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記ポリ(エチレングリコール)の末端が、ヒドロキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アルキノキシ、置換アルキノキシ、アリールオキシ及び置換アリールオキシからなる群から選択されるエンドキャップ部分でキャップされている、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記水溶性ポリマーのポリ(エチレングリコール)が、約500ダルトン〜約100,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1、2、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記コリンエステラーゼ部分の残基中のシステイン残基が、ブチリルコリンエステラーゼのCys66に対応する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記マレイミド基を有するポリマー試薬が、以下の構造:
【化31】

を有し、式中:
Xは、1個又は複数の原子を含むスペーサー部分であり;及び
各(n)は、独立して約2〜約4000の値を有する整数である、
請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記マレイミド基を有するポリマー試薬が、以下の構造:
【化32】

を有し、式中、各(n)は、独立して約225〜約1930の値を有する整数である、
請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
各(n)が、約20kDaの分子量を有するものとして−(OCHCH)−を提供するように定義される、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記分枝鎖状水溶性ポリマーが、以下の構造:
【化33】

を含み、式中、各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数である、
請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
以下の構造:
【化34】

を有し、式中:
各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数であり;
Xは、1個又は複数の原子を含むスペーサー部分であり;及び
ChEは、コリンエステラーゼ部分の残基である、
請求項1、2又は3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
以下の構造:
【化35】

を有し、式中、各(n)は、独立して2〜4000の値を有する整数である、
請求項17に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記コリンエステラーゼ部分の残基と結合した1〜2個の水溶性ポリマーを有する、請求項1、2、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記コリンエステラーゼ部分の残基と結合した2個の水溶性ポリマーを有する、請求項19に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
前記コリンエステラーゼ部分の残基が、2個の別個のコリンエステラーゼ部分から生じた二量体の形態である、請求項1、2、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
前記コンジュゲートが、前記コリンエステラーゼ部分の残基と結合した2個の水溶性ポリマーを有し、1個の水溶性ポリマーが、前記二量体を形成するコリンエステラーゼの各々と結合する、請求項21に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
前記マレイミド基を有するポリマー試薬が、単一のマレイミド基を有する、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
前記コリンエステラーゼ部分がグリコシル化されている、請求項1、2、3、4、5、6及び7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、単離され、且つモノペグ化された形態であるコンジュゲート。
【請求項26】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、前記水溶性ポリマーが、共有結合する前は、マレイミド基を有するポリマー試薬である、コンジュゲート。
【請求項27】
水溶性ポリマーと共有結合したコリンエステラーゼ部分の残基を含むコンジュゲートであって、前記コリンエステラーゼ部分が前駆コリンエステラーゼ部分である、コンジュゲート。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のコンジュゲートと薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項29】
コンジュゲート形成条件下で、コリンエステラーゼ部分を、チオール反応性官能基を有するポリマー試薬と接触させるステップを含む、コンジュゲートの作製方法。
【請求項30】
前記接触させるステップが、8.0より高いpHで行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
コンジュゲートの作製方法であって、
(a)コンジュゲート形成条件下で、複数のチオール選択的ポリマー試薬分子を含む試薬組成物を、複数のコリンエステラーゼ部分分子であって、各々が二量体の形態である分子を含むコリンエステラーゼ部分組成物と組み合わせるステップであって、それによりモノコンジュゲート化二量体とジコンジュゲート化二量体とを含むコンジュゲート混合物を形成するステップと、
(b)前記コンジュゲート混合物を還元条件に供するステップであって、それにより還元非コンジュゲート化単量体と還元モノコンジュゲート化単量体とを含む還元混合物を形成するステップと、
(c)還元モノコンジュゲート化単量体を還元混合物と分離するステップであって、それにより還元モノコンジュゲート化単量体を含む組成物を形成するステップと、
(d)還元モノコンジュゲート化単量体を含む前記組成物から前記還元条件を取り除くステップであって、それによりジコンジュゲート化二量体の組成物を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項32】
還元モノコンジュゲート化単量体を含む前記組成物が、還元非コンジュゲート化単量体を実質的に含まない、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−520447(P2011−520447A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509493(P2011−509493)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/003035
【国際公開番号】WO2009/139905
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】