説明

コロイドナノ結晶の低温合成

狭い粒度分布と調節可能なサイズ及び形状依存性の電子的及び光学的性質を有する半導体及び金属コロイドナノ結晶を製作するための低温有機金属核形成及び結晶化をベースにした合成法。該方法は、(1)不活性雰囲気下、約50℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌しながら、少なくとも一つの溶媒とカチオン性前駆体とアニオン性前駆体と少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含む反応混合物を反応容器中に形成し、そして(2)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながらしばらくの間、反応混合物中でナノ結晶を成長させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2009年1月16日出願の米国仮特許出願第61/145,477号「狭い粒度分布を有するコロイドナノ結晶の低温合成のための方法(METHOD FOR THE LOW-TEMPERATURE SYNTHESIS OF COLLOIDAL NANOCRYSTALS WITH NARROW SIZE DISTRIBUTION)」(Bartlら)に基づく優先権を主張し、前記出願の全内容を引用によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、ナノ結晶及びそれらの合成法に関する。特に、本発明は、狭い粒度分布を有するコロイドナノ結晶の低温合成のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ナノ結晶は、様々な形状(ドット、ロッド、ファイバー、テトラポッド及びその他の幾何学的形状)及び1〜100nmの範囲のサイズを有する半導体又は金属の小結晶子である。例えば、いわゆる量子ドットは、その励起子が全三つの空間次元に閉じ込められている半導体である。半導体及び金属ナノ結晶の最も目を引く特徴は、バルク材料とは対照的に、それらの電子的及び光学的性質が粒子のサイズ及び形状に依存するがゆえに、それらの性質を広範囲にわたって連続的に制御できることである。
【0004】
[0004]こうした独自の特徴は、ナノ結晶を、ナノエレクトロニクス、ナノフォトニクス(nano-photonics)、ソリッドステートライトニング(solid-state lightning)、エネルギー変換と貯蔵、及び健康科学といった多様な分野における先進的応用のための有力な候補にしている。例えば、ナノ結晶は、次世代の単一光子発生及び検出、暗号化、マイクロレージング(micro-lasing)及び太陽エネルギー変換のための重要なコンポーネントと見なされている。さらに、ナノ結晶は、生体標識及びイメージングや標的薬物送達でも集中的に研究されている。例えば、ナノ結晶は、従来の分子色素と比較した場合、ナノ結晶色素は明るく、一般的に光退色を受けないため、生体標識及びイメージングにおける色素として使用するのに優れていると考えられている。
【0005】
[0005]この広範囲の用途の可能性は、調整可能なサイズ及び形状を有するナノ結晶を製作するための頑強かつ普遍的 (ロバストかつユニバーサル) な合成ルートの開発に向けた研究に火を付けた。こうした努力の中で卓越していたのは、1993年のMurray、Norris及びBawendiの業績で、彼らは、ほぼ単分散の半導体カルコゲン化カドミウム(CdS、CdSe及びCdTe)半導体ナノ結晶量子ドットを製造するための比較的単純で頑強(ロバスト)な溶液ベースの合成ルートを報告した。彼らの技術は、長アルキル鎖界面活性剤/溶媒系の存在下、約200℃〜約350℃の範囲の温度で、コロイド結晶−核形成及び成長化学を使用している。溶媒の例は、長鎖アルキルホスフィン、長鎖アルキルホスフィン酸化物、及び長鎖アルケンなどである。高温合成法で使用される溶媒/界面活性剤系は一般的に極めて高価であり、また該溶媒/界面活性剤系は一般的に反応から反応へと再利用できない。
【0006】
[0006]Bawendiグループの発見を受けて、広範な研究が様々なタイプのナノ結晶材料の合成に捧げられてきた。有機金属前駆体種及び反応と結晶化の条件(反応成分の濃度、溶媒、成長時間など)に関して元のBawendi法を少し修正することにより、異なる組成、サイズ及び形状を有する豊富なナノ結晶の開発がもたらされたが、興味深いことに、典型的な合成条件はいずれも元の高温(例えばカルコゲン化カドミウムナノ結晶の場合200〜350℃)の結晶子核形成及び成長ルートに基づいていることに注意する。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本開示は、狭い粒度分布と調節可能なサイズ及び形状依存性の電子的及び光学的性質を有する高品質の半導体及び金属コロイドナノ結晶(数個〜数千個の原子からなる半導体又は金属の小結晶子)を製作するための低温有機金属核形成及び結晶化をベースにした合成法を記載する。本明細書中に記載の方法は、低温(例えば約15℃〜約130℃)でのコロイドナノ結晶の合成を可能にする。ナノ結晶は、それらの特有のサイズ及び形状関連の調節可能な電子的及び光学的性質のために、広く新エネルギー、情報、及び生物学的技術の基礎と見なされている。低温合成法は、より高い製品品質を提供するほか、工学的な要件/制約を少なくしたハイスループットな製作のためにスケールアップすることもできる。さらに、低温での合成は、従来の溶媒、共溶媒、反応容器、及びその他のコンポーネントの使用(及び再使用)も可能にする。
【0008】
[0008]一態様において、本発明はナノ結晶の合成法を含む。該方法は、(1)不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌しながら反応混合物を反応容器中に形成し、そして(2)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら、約1分〜約96時間の間、反応混合物中でナノ結晶を成長させることを含む。一態様において、反応混合物は、少なくとも一つの溶媒と、カチオン性前駆体と、アニオン性前駆体と、少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含む。
【0009】
[0009]第二の態様において、ナノ結晶の別の合成法を開示する。該方法は、不活性雰囲気下で反応混合物を形成する第一のステップを含む。反応混合物は、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも一つの溶媒と、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の少なくとも一つの有機金属化合物を含むカチオン性前駆体と、少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含むアニオン性前駆体と、そしてアルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、アルキル硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含む。
【0010】
[0010]該方法はさらに、反応混合物を、不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌し、前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら反応混合物中でナノ結晶を成長させ、そしてナノ結晶を反応混合物から精製することを含む。
【0011】
[0011]第三の態様において、ナノ結晶のコロイド合成のためのさらに別の方法を開示する。該方法は、(1)カチオン性前駆体混合物を用意し、(2)アニオン性前駆体混合物を用意し、(3)反応溶液を用意し、(4)カチオン性前駆体混合物、アニオン性前駆体混合物、及び反応溶液のそれぞれを撹拌しながら不活性ガス雰囲気下で約50℃〜約130℃の範囲の温度に加熱し、(5)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら一定量のカチオン性前駆体混合物と一定量のアニオン性前駆体混合物を反応溶液に注入して反応混合物を形成させ、そして(6)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら約1分〜約96時間の間、反応混合物中のカチオン性前駆体混合物とアニオン性前駆体混合物を反応させてナノ結晶を形成させることを含む。
【0012】
[0012]一つの側面において、カチオン性前駆体混合物は、少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と、少なくとも第一の表面安定化リガンドと、そして少なくとも一つの溶媒とを含みうる。
【0013】
[0013]別の側面において、アニオン性前駆体混合物は、少なくとも一つのアニオン性前駆体材料と、少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと、そして少なくとも一つの溶媒とを含みうる。
【0014】
[0014]さらに別の側面において、反応溶液は、少なくとも第二の表面安定化リガンドと少なくとも一つの溶媒とを含みうる。ここで、第二の表面安定化リガンドは、カチオン性前駆体混合物に含まれる第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい。
【0015】
[0015]本発明のこれら及びその他の目的及び特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からさらに十分に明らかになるであろう。あるいは、以下に示す本発明の実施によって分かるであろう。
【0016】
[0016]本発明の上記及びその他の利点及び特徴をさらに明確にするために、本発明のさらに詳細な説明を、添付の図面に例示されたその特定の態様に言及することによって提供する。当然のことながら、これらの図面は本発明の例示的態様のみを描いているのであり、その範囲の制限と見なされるべきものではない。本発明を、添付の図面を使用することによってさらに具体的かつ詳細に記載し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[0017]図1は、100℃での低温成長プロセスの様々な段階におけるCdSeナノ結晶のUV可視吸収スペクトルを示す。
【図2】[0018]図2は、100℃で合成されたCdSeナノ結晶の透過型電子顕微鏡像を示す。明確な形状と格子縞(lattice fringes)が示されている。
【図3A】[0019]図3Aは、100℃で合成された異なるサイズを有するCdSeナノ結晶の一連のUV可視吸収スペクトルを示す。ナノ結晶サイズに応じてナノ結晶の異なる光吸収特性が示されている。
【図3B】[0020]図3Bは、100℃で合成された異なるサイズを有するCdSeナノ結晶の一連のフォトルミネセンス発光スペクトルを示す。ナノ結晶サイズに応じてナノ結晶の異なる光子放出(photoemission)特性が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.序説
[0021]本開示は、狭い粒度分布と調節可能なサイズ及び形状依存性の電子的及び光学的性質を有する高品質の半導体及び金属コロイドナノ結晶を製作するための低温有機金属核形成及び結晶化をベースにした合成法を記載する。本明細書中に記載の方法は、低温(例えば約15℃〜約130℃)でのコロイドナノ結晶の合成を可能にする。本明細書中に記載の方法は、少なくとも一部は、表面安定化リガンド(すなわち界面活性剤)対反応前駆体種の濃度比、全体的な反応種の濃度、及び反応温度の操作を基にして、反応の動力学的及び/又は熱力学的制御を達成するためのものである。これらの条件下で、ナノ結晶の核形成は、表面安定化リガンド濃度を選択することにより、従来法と比べてかなり低い温度で動力学的に誘導され、これらのナノ結晶の低温成長は、反応種の濃度を選択することにより、熱力学的にも動力学的にも推進される。
【0019】
[0022]成長プロセス中の温度は、ナノ結晶成長の条件を決定する一つの重要な因子である。反応温度は、合成プロセス中、原子の再配列(rearrangement)及びアニールを可能にするほどの高さでありながら、結晶成長を促進するほど低くなければならない。温度は反応の動力学(速度論)にも影響を及ぼす。本明細書中に記載の方法で使用される温度は約15℃〜約130℃の範囲でありうる。しかしながら、ナノ結晶形成プロセスは15℃もの低さの温度では極めてゆっくり進行することは理解されるであろう。検出可能なナノ結晶成長が起こるのに数日かかりうる。好ましくは、反応温度範囲の反応限界は、感知できる速度で反応を進行させるために、少なくとも約35℃、約45℃、又は少なくとも約50℃であるべきである。
【0020】
[0023]ナノ結晶成長における別の重要な因子はモノマー濃度である。モノマー濃度は、反応混合物中で成長する結晶子のサイズ、形状、及び数に影響を及ぼしうる。例えば、ナノ結晶の成長プロセスは、二つの異なるレジームで起こりうる。“集束(focusing)”と“分散(defocusing)”である。高モノマー濃度では、臨界サイズ(ナノ結晶が成長も収縮もしないサイズ)は比較的小さく、ほとんどすべての粒子の成長をもたらす。このレジームでは小粒子は大粒子より速く成長するので(大結晶は成長のために小結晶より多くの原子を必要とするため)、粒度分布の“集束”をもたらし、ほぼ単分散の粒子が得られる。サイズの集束は、モノマー濃度が、存在する平均ナノ結晶サイズが臨界サイズより常にわずかに大きくなるように維持されている場合に最適となる。成長中にモノマー濃度が枯渇すると、臨界サイズは存在する平均サイズより大きくなり、オストワルド熟成の結果として分布は“分散”する。
【0021】
[0024]ナノ結晶成長における別の重要な因子は表面安定化リガンドの濃度及び/又は組成である。表面安定化リガンドは、ナノ結晶成長プロセスに二つの可能な役割を演じている。一つの役割では、表面安定化リガンドは、溶液中のイオン性前駆体材料に結合し、イオンの溶液状態を安定化する。従って結晶成長には不利である。別の役割では、表面安定化リガンドは、成長中のナノ結晶の表面に結合し、ナノ結晶を安定化し、結晶の有効表面積を削減することによってそれらの成長速度に影響を及ぼす。さらに、ナノ結晶の異なる面は異なる表面エネルギーを有し、従って表面安定化リガンドに対する結合エネルギーも異なるので、ある種のナノ結晶の形状(例えばスフェロイド対ロッド対テトラポッド)に有利に働くように表面安定化リガンドの濃度を利用することができる。例えば、ロッドの形成は、a及びbの座標軸によって規定される面はリガンドで飽和されているが、c座標軸によって規定される面がオープンであれば、c方向に有利となりうる。
【0022】
[0025]一例において、この低温合成ルート経由で半導体セレン化カドミウムのコロイドナノ結晶を製作するためには、カドミウム前駆体とセレン前駆体を、表面安定化リガンドの存在下、約50℃〜約130℃の温度で、反応混合物の激しい撹拌下及び不活性ガス雰囲気下で溶媒に注入する。
【0023】
[0026]前駆体溶液を反応混合物に注入して数分後、セレン化カドミウムのコロイド結晶核の形成と結晶子への成長が、当初無色の反応混合物がわずかに黄色に着色することによって示される。微結晶の成長は分光学的にもモニターできる。例えば、図1は、CdSeナノ結晶が時間とともに成長していく様子を示す一連のUV可視吸収トレース図100である。図1は、100℃におけるCdSeナノ結晶成長の5分後(102)、60分後(104)、21時間後(106)、96時間後(108)、及び141時間後(110)に取ったサンプルのUV可視吸収を示す。
【0024】
[0027]セレン化カドミウムのコロイド結晶核の形成と結晶子への成長は、トレース104及び106のUV可視吸収スペクトルに明白な鋭いピーク112が出現していることによって示されている。その後、形成された結晶子の安定成長と初期クラスターから大結晶子への変換は、高波長側に第二の吸収ピーク114の出現と初期吸収ピーク112の減少によって明らかである。
【0025】
[0028]規定されたクラスターサイズを有するこれらの初期セレン化カドミウム小結晶子の大ナノ結晶への変換は、結晶子のUV可視吸収スペクトルにおけるショルダーピーク116の出現と、トレース108及び110に見られる時間経過に伴う長波長側への一定した赤方偏移(red-shifting)によって示されている。赤方偏移は、光照射で、増大していくサイズを有するナノ結晶に励起子の強い閉じ込めが生じたことの直接的な結果である。
【0026】
[0029]本明細書中に開示された低温合成法によるセレン化カドミウムナノ結晶の形成とその後の成長は、透過型電子顕微鏡研究によっても証明される。図2を参照すると、代表的な透過型電子顕微鏡写真によって、所定の反応時間における単分散的粒度分布、明確な(well-defined)面、及び明確な結晶格子線を有する100℃で成長したCdSe結晶ナノ粒子の存在が示されている。
【0027】
[0030]従来の高温合成ルートと比較すると低温のため、本明細書中に開示された方法におけるナノ結晶の成長速度は遅くなる。このことが最終ナノ結晶のサイズの容易な制御を可能にする。図3Aに、100℃で合成された異なるサイズを有するCdSeナノ結晶の一連のUV可視吸収スペクトルを示すが、ナノ結晶サイズに応じてナノ結晶の異なる光吸収特性が示されている。分光学的にモニターすることにより又は反応時間の関数としてナノ結晶が所望サイズに到達したら、成長反応は単に反応混合物を室温に冷却することによって停止させることができる。合成されたナノ結晶は、抽出、沈殿、遠心分離及び新鮮溶媒中への再溶解によって、成長溶液から分離される。
【0028】
[0031]コロイドナノ結晶の結晶及び表面品質の重要な尺度は、光照射したときのそれらの発光である(フォトルミネセンス)。ナノ結晶から放出される光(励起発光又はフォトルミネセンス)の波長はナノ結晶のサイズの関数で、サイズが増大すると長発光波長側に一定したシフトが見られる(すなわち赤方偏移)。高品質単分散コロイドナノ結晶の集団はシャープな発光ピークを示すが、多分散コロイドナノ結晶はブロード化した発光スペクトルを示す。
【0029】
[0032]図3Bに、本明細書中に記載の合成法によって製作され、365nmのUV光で励起(照射)されたセレン化カドミウムナノ結晶のフォトルミネセンススペクトルを示す。これらの研究は、合成されたナノ結晶の優れたフォトルミネセンス強度を証明しているだけでなく、所望のシャープな発光スペクトル及びナノ結晶サイズに応じて異なるフォトルミネセンス発光色が生み出される(合成された個々の単分散ナノ結晶サンプルの直径が約1nmから約6nmに増大すると青から赤に)ことによって示される量子サイズ効果も明らかにしている。
【0030】
2.合成法
[0033]本開示は、ナノ結晶(すなわちナノ粒子)の合成法に関する。特に、本開示は、狭い粒度分布と調節可能な(すなわちサイズ依存性の)電子的及び光学的性質を有する高品質のコロイドナノ結晶を製作するための有機金属核形成及び結晶化をベースにした合成ルートを記載する。本開示に記載の方法は、アニオン性及びカチオン性前駆体材料を不活性溶媒及び表面安定化リガンドの存在下で反応させてナノ結晶を形成させる低温核形成と結晶成長ルートを基にしている(例えば約15℃〜約130℃)。反応条件(例えば、温度、反応物の濃度、又は表面安定化リガンドの濃度)を調節すれば、合成されるナノ結晶のサイズ及び形状を制御することができる。
【0031】
[0034]一態様において、ナノ結晶のコロイド合成のための方法は、(1)不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌しながら反応混合物を反応容器中に形成し、そして(2)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら、約1分〜約96時間の間、反応混合物中でナノ結晶を成長させることを含む。一態様において、ナノ結晶を成長させるのに使用される反応混合物は、少なくとも一つの不活性溶媒と、カチオン性前駆体と、アニオン性前駆体と、少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含む。
【0032】
[0035]本明細書中に記載の方法で使用される反応温度は、約15℃〜約130℃、約35℃〜約130℃、約50℃〜約130℃の範囲、又はそれらの間の温度でありうる。しかしながら、ナノ結晶形成プロセスは15℃もの低さの温度では極めてゆっくり進行することは理解されるであろう。例えば、15℃では、検出可能なナノ結晶成長が起こるのに数日かかりうる。好ましくは、反応温度範囲の反応限界は、感知できる速度で反応を進行させるために、少なくとも約35℃、約45℃、又は少なくとも約50℃であるべきである。
【0033】
[0036]適切な溶媒の例は、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンなどであるが、これらに限定されない。好適な態様において、不活性溶媒はオクタデセンである。好ましくは、溶媒は不活性溶媒である。
【0034】
[0037]溶媒の選択は反応温度の選択にも影響を与えうる。一態様において、例えば、選択溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有しうる。好ましくは、溶媒は約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する。さらに好ましくは、溶媒は約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する。例えば、これらの引用範囲の下限の沸点を有する溶媒を選択した場合、80℃、100℃、又は110℃より高い温度で反応を実施することは不可能になろう。代替においては、溶媒の蒸発を防止するために還流ヘッド又は別の手段を反応容器に含めることによって、沸騰溶媒中で合成反応を実施することが可能になりうる。
【0035】
[0038]反応混合物に含めることができる適切な表面安定化リガンドの例は、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物、及びそれらの組合せなどである。好ましくは、表面安定化リガンドは、少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する。
【0036】
[0039]一態様において、カチオン性前駆体は、少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と、第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい少なくとも第二の表面安定化リガンドと、そして少なくとも一つの不活性溶媒とを含む。
【0037】
[0040]適切なカチオン性前駆体材料の例は、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の有機金属化合物を含む。一態様において、有機金属化合物は、金属C〜C20カルボン酸塩、及びそれらの誘導体を含む。
【0038】
[0041]一態様において、アニオン性前駆体は、少なくとも一つのアニオン性前駆体材料と、少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと、そして少なくとも一つの不活性溶媒とを含む。
【0039】
[0042]一態様において、アニオン性前駆体材料は、少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含みうる。当然のことながら、硫化物又はセレン化物などの用語は、硫黄及びセレンの酸化状態のことを言い、従って硫化物又はセレン化物種は対イオン又はリガンドを含むことは理解されるであろう。本開示によれば、アニオン性前駆体材料は、そのリガンドに既に結合された反応混合物に加えることができる、又は硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物種は、アニオン性前駆体リガンドとの反応によって現場形成することもできる。
【0040】
[0043]従って、適切なアニオン性前駆体リガンドの例は、トリアルキルホスフィンを含む。一態様において、トリアルキルホスフィンは、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p−アニシル)ホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(2−シアノエチル)ホスフィン、トリ−イソブチルホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、tert−ブチルジメチルホスフィン、n−ブチルジシクロヘキシルホスフィン、又は(2−ビフェニリル)ジ−tert−ブチルホスフィン、及びそれらの組合せからなる群から選ぶことができる。好適な態様において、トリアルキルホスフィンはトリオクチルホスフィンである。
【0041】
[0044]不活性ガス雰囲気(すなわち非反応性の無水雰囲気)を提供するのに使用できる適切な不活性ガスの例は、アルゴン、窒素、ヘリウムなどであるが、これらに限定されない。
【0042】
[0045]一態様において、本明細書中に開示された方法はさらに、UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を用いてナノ結晶の成長をモニターすることも含む。UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を使用すれば、成長するナノ結晶のサイズ、形状、及び単分散性をモニターすることができる。例えば、フォトルミネセンス発光分光法は、結晶が大きくなるにつれて発光スペクトルが時間とともに赤方偏移するので、成長するナノ結晶のサイズをモニターするのに使用することができる。フォトルミネセンス発光分光法は、成長するナノ結晶の単分散の程度をモニターするのにも日常的に使用することができる。それは、区別されたサイズ(discrete size)を有するナノ結晶の集団はシャープな発光ピークを示すが、多分散ナノ結晶はブロード化した発光スペクトルを示すという事実のためである。
【0043】
[0046]二つ以上の分子の結晶クラスター(例えば二つ以上のCdSe分子の結晶子)は、興味深く有用な電子的及び光学的性質を有することができる。従って、本明細書中に開示された方法を用いて成長させることができる結晶ナノ粒子の下方のサイズ範囲は、分子のサイズによってのみ制限される。例えば、数個のCdSe分子の結晶クラスターは、およそ10分の数ナノメートルのサイズを有しうる。本明細書中に記載の方法を用いて成長させることができるナノ結晶粒子の上方のサイズは約100nmである。好ましくは、本明細書中に記載の方法を用いて成長したナノ粒子は、一つ又は複数の次元に(例えば、a、b、及びc座標軸に沿って)約100nm未満、一つ又は複数の次元に約80nm未満、一つ又は複数の次元に約50nm未満、一つ又は複数の次元に約40nm未満、一つ又は複数の次元に約30nm未満、一つ又は複数の次元に約20nm未満、一つ又は複数の次元に約15nm未満、一つ又は複数の次元に約10nm未満、一つ又は複数の次元に約5nm未満のサイズを有する。好ましくは、本明細書中に記載の方法に従って合成されるナノ結晶は、約30〜40nm未満のサイズを有する。
【0044】
[0047]ナノ結晶がそれらの所望サイズに到達したら(反応時間又は一つもしくは複数のモニター技術による判定)、ナノ結晶の成長は、反応混合物を周囲温度に冷却することによって著しく緩徐化又は停止させることができる。
【0045】
[0048]冷却によって反応が緩徐化又は停止したら、ナノ結晶を反応混合物から精製することができる。例示的精製法は、(1)反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し、(2)抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し、(3)ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む。適切な新鮮溶媒は、ヘキサン、トルエン、及び/又はクロロホルムなどであるが、これらに限定されない。精製及び再懸濁されたナノ結晶は、特徴付け及び/又は各種の実験又は技術に使用することができる。
【0046】
[0049]一態様において、ナノ結晶の別の合成法を開示する。該方法は、不活性雰囲気下で反応混合物を形成する第一のステップを含む。反応混合物は、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも一つの溶媒と、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の少なくとも一つの有機金属化合物を含むカチオン性前駆体と、少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含むアニオン性前駆体と、そしてアルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、アルキル硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含む。
【0047】
[0050]該方法はさらに、反応混合物を、不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌し、前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら反応混合物中でナノ結晶を成長させ、そしてナノ結晶を反応混合物から精製することを含む。
【0048】
[0051]一態様において、本発明は、ナノ結晶のコロイド合成のための方法を含む。該方法は、(1)少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と、少なくとも一つの第一の表面安定化リガンドと、少なくとも一つの不活性溶媒とを含むカチオン性前駆体混合物を用意し;(2)少なくとも一つのアニオン性前駆体材料と、少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと、そして少なくとも一つの不活性溶媒とを含むアニオン性前駆体混合物を用意し;(3)第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい少なくとも第二の表面安定化リガンドと、少なくとも一つの不活性溶媒とを含む反応溶液を用意し;(4)カチオン性前駆体混合物、アニオン性前駆体混合物、及び反応溶液のそれぞれを撹拌しながら不活性ガス雰囲気下で約50℃〜約130℃の範囲の温度に加熱し;(5)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら一定量のカチオン性前駆体混合物と一定量のアニオン性前駆体混合物を反応溶液に注入して反応混合物を形成させ;そして(6)前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら約1分〜約96時間の間、反応混合物中のカチオン性前駆体混合物とアニオン性前駆体混合物を反応させてナノ結晶を形成させることを含む。
【0049】
[0052]序説で記載したように、前駆体材料の濃度及び表面安定化リガンドの濃度は、ナノ結晶の成長速度、ナノ結晶のサイズ及び形状、及びそれらの単分散の程度を決定するのに重要な因子である。
【0050】
[0053]従って、一態様において、反応混合物を形成するために反応溶液に添加されるアニオン性及びカチオン性前駆体材料の量は、形成されるナノ結晶の数に対してアニオン性及びカチオン性前駆体材料ともにモル過剰の量を含みうる。別の態様において、アニオン性及びカチオン性前駆体材料の量は限定的でありうる。関連の態様において、反応混合物を形成するために添加されるアニオン性及びカチオン性前駆体材料のモル比は約100:1〜約1:100の範囲であり得、好適なモル比は約5:1〜約1:5、最も好適な比は約1:1である。
【0051】
[0054]同様に、一態様において、表面安定化リガンドはモル過剰で添加されても、又はそれらの濃度は限定的であってもよい。一態様において、ナノ結晶対表面安定化リガンドのモル比は約1:1〜約1:1・10の範囲でありうる。
【実施例】
【0052】
3.実施例
[0055]本明細書中に記載の方法は、低温(50〜130℃)での有機金属核形成及び結晶化ルートによって実質的に単分散のコロイドナノ結晶を合成するのに使用することができる。合成は、典型的には、カチオン性及びアニオン性分子前駆体溶液を調製することから出発する。次に、これらの溶液を、表面安定化リガンドと不活性溶媒の入った反応フラスコに不活性ガス雰囲気(空気及び水分除去条件)下、50〜130℃の範囲の温度で注入する。反応混合物を、ナノ結晶の所望の最終サイズ及び選択反応温度に応じて、所定温度で数秒〜数日間撹拌する。
【0053】
[0056]所望サイズのナノ結晶に到達したら(例えば、時間、分光学的性質、又は透過型電子顕微鏡で観察されたサイズなどによりモニター)、反応混合物を室温に冷却することによって反応を停止し、合成されたナノ結晶を成長混合物(溶媒、未反応リガンド及び前駆体)から分離する。例示的精製法は、(1)反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し、(2)抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し、(3)ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む。適切な新鮮溶媒は、ヘキサン、トルエン、及び/又はクロロホルムなどであるが、これらに限定されない。精製及び再溶解されたナノ結晶は、構造的(透過型電子顕微鏡法)及び光学的(UV可視吸収及びフォトルミネセンス分光法)特性分析研究のために使用される。
【0054】
実施例1:セレン化カドミウムナノ結晶の低温合成
[0057]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酢酸カドミウム(0.1276g)、オレイン酸(1.2mL)、及びオクタデセン(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら130℃の温度に加熱する。加熱温度は、酢酸カドミウムが完全に溶解するまで130℃に維持される。
【0055】
[0058]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.315g)、トリオクチルホスフィン(17mL)及び1.8mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0056】
[0059]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクタデシルアミン(0.5g)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0057】
[0060]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。例えば、この反応条件で注入に5mLの溶液AとBを使用した場合、直径3.2nmを有するナノ結晶の合成時間は120分である。
【0058】
[0061]CdSeナノ結晶の合成は、反応混合物を室温に冷却することによって停止される。CdSeナノ結晶は、最初に10mLのヘキサンと20mLのメタノールを反応混合物に加えることによって反応混合物から分離される。この結果、二つの液層が形成され、ナノ結晶は上(ヘキサン)層に溶解しているので、これを抽出する。この後、抽出されたナノ結晶溶液に15mLのアセトンを加える。この条件下でナノ結晶は成長溶液から沈殿するので、遠心分離によってそれから分離できる。次に、分離及び精製されたナノ結晶を適切な量の溶媒(ヘキサン、トルエン、又はクロロホルムなど)に再溶解し、特徴付けする。
【0059】
実施例2:セレン化カドミウムナノ結晶の低温合成
[0062]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酸化カドミウム(0.0615g)、オレイン酸(1.2mL)、及びオクタデセン(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら200℃の温度に加熱する。加熱温度は、酸化カドミウムが完全に溶解するまで200℃に維持される。溶液が無色に変わったら、所望注入温度、例えば130℃に冷ます。
【0060】
[0063]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.315g)、トリオクチルホスフィン(17mL)及び1.8mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0061】
[0064]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクタデシルアミン(0.5g)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0062】
[0065]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、ナノ結晶が所望のサイズ及び/又は性質を有するようになるまで所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。CdSeナノ結晶の合成を、反応混合物を室温に冷却することによって停止する。CdSeナノ結晶を、本明細書中に記載の手順を用いて反応混合物から分離する。
【0063】
実施例3:セレン化カドミウムナノ結晶の低温合成
[0066]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酢酸カドミウム二水和物(0.1276g)、オレイン酸(0.6mL)、及びオクタデセン(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら130℃の温度に加熱する。加熱温度は、酢酸カドミウムが完全に溶解するまで130℃に維持される。
【0064】
[0067]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.315g)、トリオクチルホスフィン(17mL)及び1.8mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0065】
[0068]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクタデシルアミン(0.5g)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0066】
[0069]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、ナノ結晶が所望のサイズ及び/又は性質を有するようになるまで所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。CdSeナノ結晶の合成を、反応混合物を室温に冷却することによって停止する。CdSeナノ結晶を、本明細書中に記載の手順を用いて反応混合物から分離する。
【0067】
実施例4:セレン化カドミウムナノ結晶の低温合成
[0070]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酢酸カドミウム二水和物(0.1276g)、オレイン酸(1.2mL)、及びオクタデセン(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら130℃の温度に加熱する。加熱温度は、酢酸カドミウムが完全に溶解するまで130℃に維持される。
【0068】
[0071]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.2266g)、トリオクチルホスフィン(2.4mL)及び10.4mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0069】
[0072]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクタデシルアミン(0.5g)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0070】
[0073]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、ナノ結晶が所望のサイズ及び/又は性質を有するようになるまで所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。CdSeナノ結晶の合成を、反応混合物を室温に冷却することによって停止する。CdSeナノ結晶を、本明細書中に記載の手順を用いて反応混合物から分離する。
【0071】
実施例5:セレン化カドミウムナノ結晶の低温合成
[0074]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酢酸カドミウム二水和物(0.1276g)、オレイン酸(1.2mL)、及びオクタデセン(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら130℃の温度に加熱する。加熱温度は、酢酸カドミウムが完全に溶解するまで130℃に維持される。
【0072】
[0075]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.315g)、トリオクチルホスフィン(17mL)及び1.8mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0073】
[0076]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクチルアミン(0.31mL)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0074】
[0077]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、ナノ結晶が所望のサイズ及び/又は性質を有するようになるまで所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。CdSeナノ結晶の合成を、反応混合物を室温に冷却することによって停止する。CdSeナノ結晶を、本明細書中に記載の手順を用いて反応混合物から分離する。
【0075】
実施例6:セレン化鉛ナノ結晶の低温合成
[0078]カチオン性前駆体溶液(溶液A):酢酸鉛(II)三水和物(0.36g)、オレイン酸(2.4mL)、及びジフェニルエーテル(11mL)を丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス雰囲気下で撹拌しながら130℃の温度に加熱する。温度は、酢酸鉛(II)三水和物が完全に溶解するまで130℃に維持される。
【0076】
[0079]アニオン性前駆体溶液(溶液B):金属セレン(0.315g)、トリオクチルホスフィン(17mL)及び1.8mLのトルエンを丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴンガス下室温でセレンが完全に溶解するまで撹拌する。
【0077】
[0080]反応溶液(溶液C):選択されたリガンドと溶媒、例えばオクタデシルアミン(0.5g)とオクタデセン(10mL)を丸底フラスコに入れる。アルゴンガス雰囲気及び撹拌下でこの混合物を所望の注入温度に加熱する。
【0078】
[0081]溶液Cが所望の注入温度、例えば130℃に達したら、同量(0.5〜10mL)の溶液Aと溶液Bを、反応温度を注入温度に維持しながらアルゴンガス雰囲気及び一定の撹拌下で溶液Cに同時に注入する。次いで、ナノ結晶が所望のサイズ及び/又は性質を有するようになるまで所定時間の間、ナノ結晶を核形成及び成長させる。PbSeナノ結晶の合成を、反応混合物を室温に冷却することによって停止する。PbSeナノ結晶を、本明細書中に記載の手順を用いて反応混合物から分離する。
【0079】
実施例7:その他のナノ結晶の低温合成
[0082]本明細書中に記載の方法は、セレン化カドミウム及びセレン化鉛以外のナノ結晶の低温成長にも使用することができる。例えば、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、及びカルコゲン化水銀のナノ結晶;酸化物、リン化物、窒化物、及びヒ化物のような他のタイプのナノ結晶;金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、及び銅のような金属などであるが、これらに限定されない。
【0080】
[0083]発明の低温成長プロセスには他のタイプの表面安定化リガンドも使用できる。例えば、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、及びアルキル硫化物などであるが、これらに限定されない。
【0081】
[0084]反応溶媒も限定されない。他の溶媒も使用できる(選択された反応温度に応じて)。例えば、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、トルエン、スクアラン、並びにクロロ及びフルオロアルカンなどであるが、これらに限定されない。
【0082】
[0085]本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の態様で具体化することもできる。記載された態様は、あらゆる点において、単に説明であって制限でないと見なされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく添付のクレームによって示される。クレームと等価の意味及び範囲内に入るすべての変形は、それらの範囲内に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0083】
100 UV可視吸収トレース図
102 CdSeナノ結晶成長の5分後に取ったサンプルのUV可視吸収
104 CdSeナノ結晶成長の60分後に取ったサンプルのUV可視吸収
106 CdSeナノ結晶成長の21時間後に取ったサンプルのUV可視吸収
108 CdSeナノ結晶成長の96時間後に取ったサンプルのUV可視吸収
110 CdSeナノ結晶成長の141時間後に取ったサンプルのUV可視吸収
112 初期吸収ピーク(鋭いピーク)
114 第二の吸収ピーク
116 ショルダーピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶の合成法であって、
不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌しながら反応混合物を反応容器中に形成し、前記反応混合物は、
少なくとも一つの不活性溶媒と、カチオン性前駆体と、アニオン性前駆体と、少なくとも第一の表面安定化リガンドとを含み;そして
前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら、約1分〜約96時間の間、反応混合物中でナノ結晶を成長させることを含む方法。
【請求項2】
温度が約35℃〜約130℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
温度が約50℃〜約130℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの溶媒が、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンの少なくとも一つを含み、前記少なくとも一つの溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの溶媒が約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの溶媒が約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
表面安定化リガンドが、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物の少なくとも一つを含み、前記表面安定化リガンドは少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カチオン性前駆体が、
少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と;
第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい少なくとも第二の表面安定化リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カチオン性前駆体材料が、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の少なくとも一つの有機金属化合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
有機金属化合物が、金属C〜C20カルボン酸塩、及びそれらの誘導体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アニオン性前駆体が、
少なくとも一つのアニオン性前駆体材料と;
少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アニオン性前駆体材料が、少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アニオン性前駆体リガンドがトリアルキルホスフィンである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
トリアルキルホスフィンが、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p−アニシル)ホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(2−シアノエチル)ホスフィン、トリ−イソブチルホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、ジ−tert−ブチルメチルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、tert−ブチルジメチルホスフィン、n−ブチルジシクロヘキシルホスフィン、又は(2−ビフェニリル)ジ−tert−ブチルホスフィン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トリアルキルホスフィンがトリオクチルホスフィンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
不活性ガスが、アルゴン、窒素、又はヘリウム、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
反応混合物からサンプルを定期的に抽出し;そして
反応混合物中のナノ結晶の成長を、UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を用いてモニターすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の成長を停止させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
反応混合物からナノ結晶を精製することをさらに含み、前記精製は、
反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し;
抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し;そして
前記ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させる
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ナノ結晶のコロイド合成法であって、
不活性雰囲気下で反応混合物を形成し、前記反応混合物は、
アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも一つの溶媒と;
カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の少なくとも一つの有機金属化合物を含むカチオン性前駆体と;
少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含むアニオン性前駆体と;そして
アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、アルキル硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する少なくとも第一の表面安定化リガンドと
を含み;
反応混合物を、不活性ガス雰囲気下、約15℃〜約130℃の範囲の温度で撹拌し;
前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら反応混合物中でナノ結晶を成長させ;そして
ナノ結晶を反応混合物から精製する
ことを含む方法。
【請求項21】
少なくとも一つの溶媒が約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一つの溶媒が約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つの溶媒が約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
カチオン性前駆体が、
前記少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と;
第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい少なくとも第二の表面安定化リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アニオン性前駆体が、
前記少なくとも一つのアニオン性前駆体と;
少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
アニオン性前駆体リガンドがトリアルキルホスフィンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
反応混合物中のナノ結晶の成長を、UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を用いてモニターし;そして
ナノ結晶が選択サイズに到達したら反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の成長を停止させる
ことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
ナノ結晶の選択サイズが一つ又は複数の次元に約100nm未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ナノ結晶の選択サイズが一つ又は複数の次元に約50nm未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ナノ結晶の選択サイズが一つ又は複数の次元に約30nm未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ナノ結晶の選択サイズが一つ又は複数の次元に約10nm未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
反応混合物中でナノ結晶を約1分〜約96時間の範囲の間成長させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
反応混合物中でナノ結晶を約5分〜約48時間の範囲の間成長させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
反応混合物中でナノ結晶を約1時間〜約24時間の範囲の間成長させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
ナノ結晶のコロイド合成法であって、
少なくとも一つのカチオン性前駆体材料と;
少なくとも第一の表面安定化リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
を含むカチオン性前駆体混合物を用意し;
少なくとも一つのアニオン性前駆体材料と;
少なくとも一つのアニオン性前駆体リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
を含むアニオン性前駆体混合物を用意し;
第一の表面安定化リガンドと同じでも異なっていてもよい少なくとも第二の表面安定化リガンドと;そして
少なくとも一つの溶媒と
を含む反応溶液を用意し;
カチオン性前駆体混合物、アニオン性前駆体混合物、及び反応溶液のそれぞれを撹拌しながら不活性ガス雰囲気下で約50℃〜約130℃の範囲の温度に加熱し;
前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら、一定量のカチオン性前駆体混合物と一定量のアニオン性前駆体混合物を反応溶液に注入して反応混合物を形成させ;そして
前記温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を維持しながら、約1分〜約96時間の間、反応混合物中のカチオン性前駆体混合物とアニオン性前駆体混合物を反応させてナノ結晶を形成させる
ことを含む方法。
【請求項36】
少なくとも一つの溶媒が、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンの少なくとも一つを含み、前記少なくとも一つの溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一つの溶媒が約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも一つの溶媒が約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
カチオン性前駆体材料が、カドミウム、鉛、亜鉛、水銀、金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の少なくとも一つの有機金属化合物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
有機金属化合物が、金属C〜C20カルボン酸塩、及びそれらの誘導体を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第一及び第二の表面安定化リガンドが、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物、及びそれらの組合せからなる群から選ばれ、前記表面安定化リガンドは少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
アニオン性前駆体材料が、少なくとも一つの硫化物、セレン化物、テルル化物、酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
アニオン性前駆体リガンドがトリアルキルホスフィンである、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
不活性ガスが、アルゴン、窒素、又はヘリウム、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
ナノ結晶の成長を、UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を用いてモニターすることをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の成長を停止させることをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
反応混合物からナノ結晶を精製することをさらに含み、前記精製は、
反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し;
抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し;そして
前記ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させる
ことを含む、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2012−515138(P2012−515138A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546394(P2011−546394)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/021226
【国際公開番号】WO2010/083431
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504260058)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデイション (19)
【Fターム(参考)】