説明

コンクリートの乾燥収縮低減方法及び製造方法

【課題】コンクリートの乾燥収縮を容易に低減することが可能な乾燥収縮低減方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、として吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmの粗骨材と、遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%の細骨材とを選定する選定工程と、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、を有するコンクリートの乾燥収縮低減方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの乾燥収縮低減方法及びコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの乾燥収縮は、構造物の耐久性、長寿命化、高品質化などの観点から小さいほうが望ましい。例えば非特許文献1には、乾燥収縮が鉄筋コンクリート構造物の収縮ひび割れの主要な原因であること、骨材自体の静弾性係数や乾燥収縮がコンクリートの乾燥収縮に影響を及ぼすことなどが記載されている。また、コンクリートの乾燥収縮の測定には、通常、6ヶ月もの期間を要することから、所定の配合のコンクリートの乾燥収縮を予測する式が提案されており、例えば非特許文献2には、骨材自体の静弾性係数や配合条件から収縮ひずみを予測する式が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「建築材料の乾燥収縮機構」、セメント・コンクリート、No.346、30〜40頁、1975
【非特許文献2】「各種骨材を用いたコンクリートの乾燥収縮特性と骨材比表面積の影響」、日本建築学会構造系論文集、第606号、9〜14頁、2006
【非特許文献3】「コンクリートの乾燥収縮に及ぼす配合条件及び粗骨材の影響について」、第15回生コン技術大会研究発表論文集、235〜240頁、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の非特許文献1によれば、静弾性係数が高く、乾燥収縮の小さい粗骨材を選定することがコンクリートの乾燥収縮を低減する方法のひとつと考えられる。また、非特許文献2によれば、細骨材の比表面積(内部比表面積)が大きいほど乾燥収縮は大きくなると報告されている。しかしながら、粗骨材の静弾性係数の測定には原石からコア供試体を採取する必要があること、砂利についてはコア供試体が採取不可能であること、骨材自体の乾燥収縮の測定には規格がないこと、細骨材のBET比表面積については、測定が困難であることなどから、これらの指標を得ることは容易でない。非特許文献3によれば、単位水量、単位セメント量および粗骨材の静弾性係数と単位量の積を説明変数とする重回帰分析により収縮ひずみを説明できる可能性があるとされているが、上記のとおり静弾性係数の測定は難しく、細骨材の影響を考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、コンクリートの乾燥収縮を容易に低減することが可能な乾燥収縮低減方法を提供することを目的とする。また、本発明は、乾燥収縮が小さいコンクリートを容易に得ることができるコンクリートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため、種々の検討を行った。その結果、特定の性状を有する細骨材および粗骨材を用いることが乾燥収縮低減に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmの粗骨材と、遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%の細骨材とを選定する選定工程と、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、を有するコンクリートの乾燥収縮低減方法を提供する。
【0008】
上記本発明の乾燥収縮低減方法によれば、上記特定範囲の粗骨材および細骨材を選定する選定工程を有することによって、容易にコンクリートの乾燥収縮を低くすることができる。
【0009】
また、本発明者らは、上記目的を達成するため、コンクリートの所定の乾燥期間における乾燥収縮の実測値と種々のパラメータの関係についてデータ解析を行った。その結果、コンクリートの乾燥収縮を高い精度で予測できる下記予測式を見出した。
【0010】
すなわち、本発明では、単位水量(kg/m)をW、単位セメント量(kg/m)をC、細骨材率(容積%)をS、単位粗骨材量(kg/m)をGとし、粗骨材の吸水率(質量%)をQ及び最大沈下量(mm)をα、細骨材の遠心分離後の含水率(質量%)をβとした場合に、W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数とし、上記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とする重回帰分析によって求めた下記式(1)を用い、上記コンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程を更に有することができる。
ε=aW+bC+c(S−46)+dlogQ+eβ+f(α/G)+g・・・(1)
[式(1)中、εは上記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮(×10−6)の予測値であり、係数aは4.30〜4.50、係数bは−0.10〜−0.30、係数cは5.00〜7.50、係数dは220〜300、係数eは100〜180、係数fは2400〜2480、係数gは−200〜−350である。]
【0011】
上記本発明の乾燥収縮低減方法は、上記式(1)を用いたコンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程をさらに有することによって、実際にコンクリートを長期間乾燥しなくても、コンクリートの乾燥収縮を予測することが可能となる。
【0012】
上記硬化工程において、コンクリートを1m得るに当り、混練物が、水セメント比(W/C)が40〜65質量%、細骨材率(S)が40〜55容積%であり、セメントを250〜450kg、細骨材を530〜1180kg、粗骨材を800〜1150kg含有することが好ましい。
【0013】
水セメント比、細骨材率、セメントの含有量及び粗骨材の含有量を上記の範囲にすることによって、コンクリートの乾燥収縮を一層低減することができる。
【0014】
また、本発明は、吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmの粗骨材と、遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%の細骨材とを選定する選定工程と、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、を有するコンクリートの製造方法を提供する。このような製造方法によれば、乾燥収縮が小さいコンクリートを容易に得ることができる。
【0015】
上記製造方法においては、単位水量(kg/m)をW、単位セメント量(kg/m)をC、細骨材率(容積%)をS、単位粗骨材量(kg/m)をGとし、粗骨材の吸水率(質量%)をQ、最大沈下量(mm)をα、細骨材の遠心分離後の含水率(質量%)をβとした場合に、W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数とし、コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とする重回帰分析によって求めた下記式(1)を用い、コンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程を更に有することが好ましい。
ε=aW+bC+c(S−46)+dlogQ+eβ+f(α/G)+g・・・(1)
[式(1)中、εはコンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮(×10−6)の予測値であり、係数aは4.30〜4.50、係数bは−0.10〜−0.30、係数cは5.00〜7.50、係数dは220〜300、係数eは100〜180、係数fは2400〜2480、係数gは−200〜−350である。]
【0016】
上記本発明の製造方法は、上記式(1)を用いたコンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程をさらに有することによって、実際にコンクリートを長期間乾燥しなくても、コンクリートの乾燥収縮を予測することが可能となり、乾燥収縮が小さいコンクリートを得ることがより可能となる。
【0017】
上記硬化工程において、コンクリートを1m得るに当り、混練物が、水セメント比(W/C)が40〜65質量%、細骨材率(S)が40〜55容積%であり、セメントを250〜450kg、細骨材を530〜1180kg、粗骨材を800〜1150kg含有するが好ましい。水セメント比、細骨材率、セメントの含有量及び粗骨材の含有量を上記の範囲にすることによって、より乾燥収縮が小さいコンクリートを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリートの乾燥収縮を容易に低減することが可能な乾燥収縮低減方法を提供することができる。また、乾燥収縮が小さいコンクリートを容易に得ることができるコンクリートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る予測式(2)を用いた乾燥収縮ひずみの予測値と実績値との関係を表すグラフである。
【図2】本発明に係る予測式(3)を用いた乾燥収縮ひずみの予測値と実績値との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態について説明する。本発明のコンクリートの乾燥収縮低減方法は、選定工程、混合工程及び硬化工程を有する。
【0021】
選定工程では、粗骨材として吸水率(Q)が0〜3.5質量%(3.5質量%以下)及び最大沈下量(α)が13〜30mmのものを、細骨材として遠心分離後の含水率(β)が0〜3.5質量%のものを選定する。
【0022】
粗骨材としては、コンクリートの製造に使用される一般的なものを用いることができる。粗骨材の最大粒径は、約20mm又は約25mmであることが好ましい。より具体的には、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」附属書A及びJIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の粗骨材などを用いることができる。
【0023】
粗骨材の吸水率(Q)は、JIS A 1109「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準拠して測定される値である。粗骨材の吸水率は、好ましくは0.1〜3.4質量%であり、より好ましくは0.2〜3.3質量%であり、さらに好ましくは0.3〜3.3質量%である。このような粗骨材を用いることにより、コンクリートの乾燥収縮を小さくすることができる。一方、粗骨材の吸水率が3.5質量%を超える場合は、コンクリートの乾燥収縮を小さくすることができない場合がある。
【0024】
粗骨材の最大沈下量(α)は、次のようにして測定する。まず、コンクリートに使用する粗骨材を採取し、British Standard 812 「Sampling and testing of mineral aggregates、 sands and fillers」に準じて破砕試験を行なう。
【0025】
次に、15mmふるいを通り10mmふるいに留まる絶乾状態の粗骨材を選別する。ここで、絶乾状態とは、JIS A 0203「コンクリート用語」に規定の骨材の乾燥状態を表す用語であり、骨材を100〜110℃の温度で乾燥し、骨材内部に含まれる自由水が取り去られた状態で「絶対乾燥状態」ともいう。選別した上記粗骨材を計量器(内径115mm、内高178mmの鋼製円筒容器)に詰め、突き棒で25回突いて表面をならす。これを1層目とする。続いて1層目と同様に上記粗骨材を詰めて突き棒で25回突いて表面をならす。これを2層目とする。続いて1層目及び2層目と同様に上記粗骨材を詰めて突き棒で25回突いて表面をならす。これを3層目とし、計量を完了する。
【0026】
計量器に詰めた当該粗骨材を計量器から取り出す。最初に用いた計量器とはサイズの異なる試験容器(内径154mm、内高140mm、厚さ16mmの鋼製容器)に、計量器から取り出した粗骨材を上記と同様に3回に分けて詰め、各回毎に突き棒で25回突いて1〜3層を形成する。ここで、計量の行程が必要な理由は、試験容器には、プランジャーをはめ込んで載荷するため、試験容器の高さは、プランジャーをはめ込めるだけの高さほど、容器の高さが高く設計されていることから、試験容器では粗骨材のかさ容積を一定に採取することが困難なためである。続いて試験容器を圧縮試験機に据え、プランジャー(直径152mm)により、試料を毎分40kNの昇圧速度で載荷する。荷重が400kNとなったときのプランジャーの沈下深さを変位計により測定し、最大沈下量とする。
【0027】
粗骨材の最大沈下量(α)は、好ましくは14〜29mm、より好ましくは15〜28mmであり、さらに好ましくは16〜28mmである。一方、粗骨材の最大沈下量が30mmを超える場合は、コンクリートの乾燥収縮を小さくすることができない場合がある。
【0028】
細骨材の遠心分離後の含水率(β)は、JIS A 1802「コンクリート生産工程管理用試験方法―遠心力
による細骨材の表面水率試験方法」に記載の遠心分離試験方法を応用して測定した値である。試料は、絶乾状態にさせた細骨材100gを24時間吸水させたものとする。まず、ろ紙(5種C)を遠心容器内で吸水させた後、所定の遠心力を2分間加えて、脱水する。次に、試料を遠心容器内の試料容器に入れ質量を量りとる(遠心容器及び試料容器の質量はあらかじめ測定しておく)。次に、遠心容器を遠心機に設置し、所定の遠心力で10分間の遠心脱水を加える。その後、遠心容器から試料容器を取り出し質量を量る。試料の入った試料容器を乾燥機(105±5℃)で一定質量になるまで乾燥させる。乾燥後、試料は室温まで冷却させた後に質量を量りとり、含水率を計算する。
【0029】
細骨材の遠心分離後の含水率(β)は、好ましくは0.1〜3.4質量%であり、より好ましくは0.2〜3.2質量%であり、さらに好ましくは0.3〜3.3質量%である。遠心分離試験の遠心力は、好ましくは600〜5000Gであり、より好ましくは900〜4000Gであり、さらに好ましくは1000〜3600Gである。JISの方法(1000〜2000G)より遠心力を高くしている理由として、微粒分が多い細骨材の場合も表面水を確実に除去できる為である。
【0030】
混合工程では、セメント、細骨材、上記粗骨材及び水を混合して混練物を得る。
【0031】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントを用いることができる。これらのうち、ポルトランドセメントを用いることが好ましい。セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4000cm/gであり、より好ましくは3100〜3400cm/gである。ブレーン比表面積とは、セメント1g当たりの表面積であり、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して測定される値である。
【0032】
細骨材としては、コンクリートに使用される一般的なものを用いることができる。より具体的には、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」附属書A及びJIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の細骨材などを用いることができる。
【0033】
水としては、上水道水や地下水などが好適に使用できる。水には化学混和剤を添加してもよい。化学混和剤としては、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、急結剤、硬化促進剤、遅延剤、防錆剤、起泡剤、発泡剤、空気量調整剤などが使用できる。
【0034】
混合工程は、例えば水平二軸形強制練りミキサなどのミキサ内で行うことができる。例えば30L程度のコンクリートを製造する場合には、セメントと、細骨材と、粗骨材とをミキサに投入し約30秒間撹拌し、続いて、場合により化学混和剤を含む水をミキサに投入して約90秒間撹拌するとよい。
【0035】
硬化工程では、上記混合工程で得た混練物を硬化させてコンクリートを得る。
【0036】
硬化工程においては、コンクリートを1m得るに当り、水セメント比(W/C)が40〜65質量%、細骨材率(S)が40〜55容積%であり、セメントを250〜450kg、細骨材を530〜1180kg、粗骨材を800〜1150kg含有する混練物を用いることが好ましい。水セメント比、細骨材率、セメントの含有量、細骨材及び粗骨材の含有量を上記特定の範囲にすることによって、コンクリートの乾燥収縮を一層低減することができる。
【0037】
水セメント比(W/C)とは、コンクリート中の水とセメントの質量比を意味する。混練物の水セメント比は、より好ましくは42〜65質量%であり、さらに好ましくは43〜65質量%であり、特に好ましくは45〜65質量%である。水セメント比が、40質量%未満、もしくは65質量%を超える場合は、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0038】
細骨材率(S)とは、全細骨材及び全粗骨材を合計した全骨材の絶対容積に対する全細骨材の絶対容積比率を意味する。ここで、絶対容積とは、骨材中の空隙を含み、骨材粒間の空隙を含まない容積を意味する。混練物の細骨材率は、より好ましくは41〜54容積%であり、さらに好ましくは42〜52容積%であり、特に好ましくは43〜51容積%である。細骨材率が、40容積%未満、もしくは55容積%を超える場合は、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0039】
混練物におけるセメントの含有量は、より好ましくは250〜430kgであり、さらに好ましくは251〜400kgであり、特に好ましくは251〜395kgである。セメントの含有量が、250kg未満又は450kgを超える場合は、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0040】
混練物における細骨材の含有量は、好ましくは550〜1150kgであり、より好ましくは600〜1100kgであり、さらに好ましくは650〜1050kgであり、特に好ましくは700〜1000kgである。細骨材の含有量が、530kg未満又は1180kgを超える場合は、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0041】
また、混練物における粗骨材の含有量は、より好ましくは840〜1130kgであり、さらに好ましくは880〜1110kgであり、特に好ましくは920〜1090kgである。粗骨材の含有量が、800kg未満又は1150kgを超える場合は、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0042】
さらに、混練物における水の含有量は、好ましくは135〜195kgであり、より好ましくは140〜190kgであり、さらに好ましくは145〜190kgであり、特に好ましくは150〜190kgである。水の含有量135kg未満又は195kgを超える場合には、所要のスランプが得られずコンクリートの成形が困難となる場合や、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合がある。
【0043】
硬化工程では、上記の混練物を硬化させてコンクリートを得る。上記の混練物を目的に応じて所定の形にし、水和反応を進行させて硬化させる。この間、必要な強度が得られる期間まで、養生することが好ましい。養生とは、乾燥や凍結などの有害な外的影響から保護することをいう。養生方法としては、コンクリートを水中に浸漬したり、散水したり、濡れたマットなどで覆うなどの方法が有効である。硬化促進のため、蒸気養生や高温高圧で養生するオートクレーブ養生などを行ってもよい。
【0044】
また、本発明のコンクリートの乾燥収縮低減方法は、下記式(1)を用い、上記コンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程をさらに有することが好ましい。
ε=aW+bC+c(S−46)+dlogQ+eβ+f(α/G)+g・・・(1)
【0045】
上記式(1)において、εは上記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮(×10−6)の予測値を示す。また、Wは単位水量(kg/m)、Cは単位セメント量(kg/m)、Sは細骨材率(容積%)、Gは単位粗骨材量(kg/m)を示し、上述のとおり、Qは吸水率(質量%)、αは最大沈下量(mm)、βは遠心分離後の含水率(質量%)を示す。
【0046】
上記式(1)は、W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数とし、コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とする重回帰分析によって求めたものであり、係数aは4.30〜4.50、係数bは−0.10〜−0.30、係数cは5.00〜7.50、係数dは220〜300、係数eは100〜180、係数fは2400〜2480、係数gは−200〜−350である。
【0047】
本発明の乾燥収縮低減方法は、上記式(1)を用いたコンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程をさらに有することによって、実際にコンクリートを長期間乾燥しなくても、コンクリートの乾燥収縮を予測することが可能となり、コンクリートの乾燥収縮を低くすることができる。上記式(1)を用いた場合、予測値と実測値との差は±155×10−6程度とすることができる。
【0048】
上記重回帰分析においては、コンクリートの乾燥期間150〜220日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とすることが好ましく、160〜200日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とすることがより好ましく、170〜190日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とすることがさらに好ましく、180〜184日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とすることが特に好ましい。コンクリートの乾燥期間を上記好ましい範囲とした場合、より精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0049】
上記式(1)において、係数a〜gは、好ましくは、係数aは4.32〜4.48、係数bは−0.12〜−0.28、係数cは5.10〜7.30、係数dは230〜290、係数eは110〜170、係数fは2410〜2470、係数gは−220〜−330である。より好ましくは、係数aは4.36〜4.46、係数bは−0.13〜−0.24、係数cは5.400〜7.00、係数dは240〜280、係数eは120〜160、係数fは2420〜2460、係数gは−230〜−310である。特に好ましくは、係数aは4.37〜4.42、係数bは−0.14〜−0.18、係数cは6.60〜6.80、係数dは250〜270、係数eは130〜150、係数fは2430〜2450、係数gは−240〜−260である。
係数a〜gを上記好ましい範囲とした場合、予測値と実測値との差は±125×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0050】
上記予測工程は、上記選択工程の前に設けられてもよく、選択工程と混合工程の間に設けられてもよい。好ましくは、選択工程の前である。
【0051】
以上の工程によって得られたコンクリートは、乾燥収縮を十分に低減することができる。これによって乾燥収縮が十分に低減されたコンクリートを製造することができる。すなわち、本発明のコンクリートの製造方法は、上述の乾燥収縮低減方法と同様に、選定工程、混合工程及び硬化工程を有し、予測工程を同様に有することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0053】
[実施例1〜34]
以下の手順で実施例1〜34のコンクリート供試体を作製した。
【0054】
(選定工程)
各実施例に用いる粗骨材として、吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmのものを選定した。細骨材として、遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%のものを選定した。粗骨材の吸水率の測定はJIS A 1110「コンクリートのスランプ試験方法」に従って行った。粗骨材の最大沈下量及び細骨材の遠心分離後の含水率の測定は上述の方法で測定した。
【0055】
(混合工程)
以下の材料を用いて混合を行った。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(ブレーン比表面積 3330cm/g)
(2)骨材
(i)細骨材:一般的な細骨材を使用した。
(ii)粗骨材:表1に示す粗骨材を使用した。最大粒径は20mmとした。
(3)化学混和剤:一般的なAE減水剤を使用した。
【0056】
混合工程は、生コンクリート工場のバッチングプラントにて行った。まず、実施例1〜34のコンクリート供試体の材料を、表1に示す単位量で配合した。
【0057】
各材料の配合を表1に示す。各材料を、水平二軸形強制練りミキサに投入し、混合した。具体的には、粗骨材、細骨材、セメントをミキサに投入後、30秒間攪拌した。続いて予め化学混和剤を溶かした水をミキサに投入後、90秒間混合して混練物を得た。
【0058】
(硬化工程)
上記の混練物を型枠に入れて硬化させて、実施例1〜34のコンクリート供試体を得た。コンクリート供試体の寸法は、10×10×40cmとした。コンクリート供試体を材齢1日で脱型した後、材齢7日まで標準養生した。標準養生とは、コンクリートやモルタルの供試体を約20℃の水中で養生することをいう。
【0059】
(コンクリートの乾燥収縮の測定)
上記の標準養生の後、実施例1〜34のコンクリート供試体の基長を測定した。続いて、温度20℃、相対湿度60%の環境下にて26週まで乾燥させ、各コンクリート供試体の乾燥収縮を測定した。コンクリートの乾燥収縮は、JIS A 1129−2 「コンタクトゲージ法」に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(コンクリートの乾燥収縮の予測工程)
上述の乾燥期間182日でのコンクリートの乾燥収縮ひずみの実績値を従属変数とし、W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数として、重回帰分析し、乾燥収縮ひずみの予測式における係数を下記予測式(2)のとおり設定した。下記予測式(2)で得られた乾燥収縮ひずみの予測値を表1に示す。
ε=4.43W−0.20C+5.50(S−46)+247logQ+155β+2469(α/G)−301・・・(2)
【0061】
また、乾燥収縮ひずみの予測式における係数を好ましい範囲に設定した下記予測式(3)で得られた乾燥収縮ひずみの予測値を表1に示す。
ε=4.39W−0.16C+6.73(S−46)+262logQ+142β+2436(α/G)−248・・・(3)
【0062】
【表1】

【0063】
図1に、上記式(2)を用いた場合のコンクリートの乾燥収縮の実測値及び予測値の相関関係を、図2に、上記式(3)を用いた場合のコンクリートの乾燥収縮の実測値及び予測値の相関関係を示す。図1より、予測式(2)を用いた場合、相関係数(R)=0.80であり、図2より、予測式(3)を用いた場合、相関係数(R)=0.84であり、コンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測できることが確認された。なお、図2には比較のため、日本建築学会が公表している収縮ひずみの予測式(「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」、54頁、日本建築学会、2006を参照)を用いた場合のコンクリートの乾燥収縮の実測値及び予測値の相関関係を示した。相関係数(R)=0.12であり、予測式(2)及び(3)に比べると、かなり精度が劣った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmの粗骨材と、遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%の細骨材とを選定する選定工程と、
セメント、前記細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、
前記混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、
を有するコンクリートの乾燥収縮低減方法。
【請求項2】
単位水量(kg/m)をW、単位セメント量(kg/m)をC、細骨材率(容積%)をS、単位粗骨材量(kg/m)をGとし、前記粗骨材の吸水率(質量%)をQ、最大沈下量(mm)をα、細骨材の遠心分離後の含水率(質量%)をβとした場合に、
W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数とし、前記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とする重回帰分析によって求めた下記式(1)を用い、前記コンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程を更に有する、請求項1に記載のコンクリートの乾燥収縮低減方法。
ε=aW+bC+c(S−46)+dlogQ+eβ+f(α/G)+g・・・(1)
[式(1)中、εは前記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮(×10−6)の予測値であり、係数aは4.30〜4.50、係数bは−0.10〜−0.30、係数cは5.00〜7.50、係数dは220〜300、係数eは100〜180、係数fは2400〜2480、係数gは−200〜−350である。]
【請求項3】
前記硬化工程において、前記コンクリートを1m得るに当り、
前記混練物が、水セメント比(W/C)が40〜65質量%、前記細骨材率(S)が40〜55容積%であり、前記セメントを250〜450kg、前記細骨材を530〜1180kg、前記粗骨材を800〜1150kg含有する、請求項1又は2に記載のコンクリートの乾燥収縮低減方法。
【請求項4】
粗骨材として吸水率が0〜3.5質量%及び最大沈下量が13〜30mmのもの、細骨材として遠心分離後の含水率が0〜3.5質量%のものを選定する選定工程と、
セメント、前記細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、
前記混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、
を有するコンクリートの製造方法。
【請求項5】
単位水量(kg/m)をW、単位セメント量(kg/m)をC、細骨材率(容積%)をS、単位粗骨材量(kg/m)をGとし、前記粗骨材の吸水率(質量%)をQ、最大沈下量(mm)をα、前記細骨材の遠心分離後の含水率(質量%)をβとした場合に、
W、C、S、G、Q、α及びβを独立変数とし、前記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮の実測値を従属変数とする重回帰分析によって求めた下記式(1)を用い、前記コンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程を更に有する、請求項4に記載のコンクリートの製造方法。
ε=aW+bC+c(S−46)+dlogQ+eβ+f(α/G)+g・・・(1)
[式(1)中、εは前記コンクリートの乾燥期間130〜250日目の乾燥収縮(×10−6)の予測値であり、係数aは4.30〜4.50、係数bは−0.10〜−0.30、係数cは5.00〜7.50、係数dは220〜300、係数eは100〜180、係数fは2400〜2480、係数gは−200〜−350である。]
【請求項6】
前記硬化工程において、前記コンクリートを1m得るにあたり、
前記混練物が、水セメント比(W/C)が40〜65質量%、前記細骨材率(S)が40〜55容積%であり、前記セメントを250〜450kg、前記細骨材を530〜1180kg、前記粗骨材を800〜1150kg含有する、請求項4又は5に記載のコンクリートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−166964(P2012−166964A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26927(P2011−26927)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】