説明

コンクリートセグメントの成形方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば鉄道用トンネルや地下タンクなどを構築する際に用いられるコンクリートセグメントの成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】コンクリートセグメントの中には、円形のトンネルの内周面に対応して円弧状に形成されるものがあり、この種円弧状のコンクリートセグメントは、従来所定箇所に固定された円弧状の型枠内にコンクリートを流し込んで成形していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した成形方法では、ひとつひとつの型枠に対してコンクリートを流し込み、養生し、脱型するという一連の作業を個々に行わなければならず、非常に手間がかかり、製造コストが割高になる欠点があった。
【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは省力化が図れかつコストダウンが図れ、しかも所定形状に容易に仕上げることができるコンクリートセグメントの成形方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明では、 内周面に仕切板により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠が形成されてなる円筒体をその軸線を中心として回転させるとともに、該円筒体の内面にコンクリートを供給し、かつ、供給したコンクリートが硬化する前に前記円筒体を所定時間おきに正・逆回転操作し、コンクリートが硬化した後、脱型してコンクリートセグメントを得ることを特徴としている。
【0006】請求項2記載の発明では、内周面に仕切板により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠が形成されてなる円筒体をその軸線を中心として回転させるとともに、該円筒体の内面にコンクリートを供給し、該供給したコンクリートが半硬化したところで、該コンクリートの内面に回転押さえローラを押し付けることにより、コンクリートセグメントの内面形状を整えて所定形状とするコンクリートセグメントの成形方法であって、前記円筒体の内面にコンクリートを供給するコンクリート供給管を支持するコンクリート供給機に、前記回転押さえローラを支持させて前記コンクリートセグメントの内面形状を整えることを特徴としている。
【0007】
【作用】請求項1記載の発明では、円筒体を回転させながらその内面にコンクリートを供給すると、供給直後においては各型枠内のコンクリートの表面には多少の凹凸が生じるが、円筒体の強制回転に伴い該コンクリートに遠心力が作用して、凸部のコンクリートは凹部に流れ込む。この結果、型枠内のコンクリートの内周面は円弧状に沿って平坦化される。また、上記のようにコンクリートに半径方向外方の遠心力が作用するので、コンクリートの内部に空洞が生じにくくかつ密に固着されることとなり、強度的に強いコンクリートが得られる。このようにして得られるコンクリートセグメントは、両端部に比べて中央部が厚く全体として均等な厚さになりにくい傾向にあるが、この発明では、さらに、供給したコンクリートが硬化する前に円筒体を所定時間おきに正・逆回転操作し、慣性力を利用することによって両端部にもコンクリートを行き渡らすようにしてコンクリートセグメントの外形を整えており、したがって、所定形状のコンクリートセグメントとすることができる。
【0008】請求項2記載の発明では、円筒体を正・逆転操作する代わりに、コンクリートが半硬化したところで、コンクリートの内面に回転押さえローラを押し付けているが、これによっても、コンクリートセグメントを所定形状とすることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0010】第1実施例図1は本発明にかかるコンクリートセグメントの成形方法の一工程を示す図である。図中符号1は上記成形方法を実施するのに用いられるコンクリートセグメントの成形装置を示す。この成形装置1は、内周面に仕切板2により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠3…が形成されてなる円筒体4と、該円筒体4の下部に所定間隔をあけて配設され、該円筒体4をその軸線を中心として強制的に回転させる一対の駆動ローラ5,5と、前記円筒体4の略中央に配設されて円筒体4の内面の前記型枠3…にノズル6aを介してコンクリートを供給するコンクリート供給機構6とを備えている。なお、コンクリート供給機構6は基端側をホース7を介して図示しないコンクリート供給源に接続されている。
【0011】図で示す円筒体4では、コンクリートセグメント用型枠3…が周方向に複数形成されてなる型枠リング9が軸方向に2列並んで形成されているが、これに限られることなく型枠リング9は1列あるいは3列以上設けても良く、その場合には、該型枠リング9の列数に合わせてコンクリート供給機構6を増設あるいは一部のノズル6aを休止させるようにすればよい。また、駆動ローラ5,5も同様に長くしたり短くしたり調整すればよい。
【0012】上記した成形装置1を用いてコンクリートセグメントCを成形するには、まず円筒体4の各型枠3…内に図示しない所定形状の鉄筋かごを組み込む。この場合、鉄筋かごは別箇所で製作しあらかじめ用意しておくのがよい。
【0013】次いで、駆動ローラ5,5を駆動させることにより円筒体4を強制的に回転させながら、コンクリート供給機構6により円筒体の内面にコンクリートを供給し、上記鉄筋かごが組み込まれた各型枠3内にコンクリートを流し込む。そして、コンクリートを流し込んだ後においても円筒体4の強制回転を続ける。
【0014】上記各型枠3内のコンクリートの内周面は、供給された直後においてはその表面に多少の凹凸が生じているが、円筒体4の強制回転に伴い該コンクリートに遠心力が作用するので、凸部のコンクリートは凹部に流れ込む。この結果型枠3内のコンクリートの内周面は円弧状に沿って平坦化される。また、上記のようにコンクリートに半径方向外方の遠心力が作用するので、コンクリートの内部に空洞が生じにくくかつ密に固着されることとなり、強度的に強いコンクリートセグメントが得られる。
【0015】上記のように円筒体4を回転させながら養生し、型枠3内のコンクリートが所定硬さまで固まると、円筒体4の回転を止めた後、脱型することで所定形状のコンクリートセグメントを得ることができる。
【0016】また、上記方法で得られるコンクリートセグメントは、図2に示すように周方向の両端部に比べて中央部分の厚さが厚くなりがちである。これを修正するには、図4に示すようにコンクリートセグメントの外周面を基準として内周面中央を削り取ったり(図において削り取る部分を斜線Zで示す)、あるいは図5に示すようにコンクリートセグメントの内周面を基準として外周面中央部分を削り取ったりすればよい。
【0017】なお、上記の方法によって得られるコンクリートセグメントCにおいて、周方向両端の厚さにバラツキが出る場合には、コンクリートが硬化する前に、円筒体4を一方向の回転に止どまらず適宜時間おきに正転および逆転操作するようにすればよい。
【0018】また、上記方法によって得られるコンクリートセグメントCは、型枠3をはずしてリング状に組み込むときに、軸方向に延びる仕切板2の厚さ(t)分だけ周方向に隙間があくことになるが、この隙間を小さくするには、該仕切板2の板厚をできるだけ薄くすればよい。また、各コンクリートセグメントの間に充填材やシール材を介装させて隙間を埋めてもよい。
【0019】なお、上記実施例では、円筒体4を強制回転するのに、外側に配置した駆動ローラ5で行なっているが、これに限られることなく、歯車であるいはチエーンを掛けて円筒体4を強制に回転すさせるように構成してもよい。
【0020】また、上記のように円筒体4をその軸線を中心に強制的に回転させるにとどまらず、回転させながら該円筒体4を軸線方向に沿って往復動させるようにしても良く、さらにコンクート供給を下地用と仕上用とに2段に分けて行なってもよく、その場合円筒体4の回転速度を変えて供給するようにしてもよい。
【0021】第2実施例図6は本発明にかかる第2実施例のコンクリートセグメントの成形方法の一工程を示す図である。図中符号11は上記成形方法を実施するのに用いられるコンクリートセグメントの成形装置を示す。この成形装置11は、内周面に仕切板12により仕切られて複数のコンクリートセグメントを形成するための円筒体13と、該円筒体13の下部に所定間隔をあけて配設され、該円筒体13をその軸線を中心として強制的に回転させる一対の駆動タイヤ14,14と、前記円筒体13の中央下部に配設されて円筒体13の内面にスクリューコンベアー15aを介してコンクリートを供給するコンクリート供給機15とを備えている。なお、コンクリート供給機15は配給車16を介して図示しないコンクリート供給源に移動接続されている。
【0022】図で示す円筒体13では、周方向に延びて形成されてなる型枠仕切リング17が軸方向に間隔を明けて装着固定されているが、これに限られることなく、型枠仕切リング7を取り外すか、あるいは2個以上設けてもよく、この場合該型枠仕切リング7の列数に合わせてコンクリート供給機15を増減設すればよい。また、駆動タイヤ14,14のシャフト14aも同様に長くしたり短くすればよい。
【0023】上記した成形装置11を用いてコンクリートセグメントCを成形するには、まず円筒体13の各仕切板12…内に図示しない所定形状の鉄筋かごを組み込む。この場合、鉄筋かごは別箇所で製作しあらかじめ用意しておくのがよい。
【0024】次いで、駆動タイヤ14,14を駆動させることにより円筒体13を強制的に回転させながら、コンクリート供給機15により円筒体の内面にコンクリートを供給し、上記鉄筋かごが組み込まれた各仕切板12内にコンクリートを流し込む。そして、コンクリートを流し込んだ後においても円筒体13の強制回転を続ける。
【0025】上記各仕切板12内のコンクリートの内周面は、供給された直後においてはその表面に多少の凹凸が生じるが、円筒体13の強制回転に伴い該コンクリートに遠心力が作用するので、凸部のコンクリートは凹部に流れ込む。この結果型枠仕切板内のコンクリートの内周面は円弧状に沿って平坦化される。また、上記のようにコンクリートに半径方向外方の遠心力が作用するので、コンクリートの内部に空洞が生じにくくかつ密に固着されることとなり、強度的に強いコンクリートセグメントが得られる。
【0026】また、上記方法で得られるコンクリートセグメントは、図7に示すようにコンクリート投入内面、両端部に比べて中央部の厚さが均等になりにくく、規定厚さの確保が難しいため、コンクリートが半硬化したところで、図8に示すコンクリート投入内面均等仕上用回転押さえローラ18aを、前記円筒体の内面にコンクリートを供給するスクリューコンベアー(コンクリート供給管)15aを支持するコンクリート供給機と兼用するコンクリート内面仕上機構18を介して上下・前後動させて位置調整し、コンクリートの内面に押し付けることで、コンクリートを規定厚に仕上げる。
【0027】なお、上記のように円筒体13を回転させて、投入したコンクリートが回転を止めても離脱しなくなるまで一定時間回転させて図示しない養生室または養生槽にて養生してコンクリートが硬化した段階で円筒体(型枠)3を外し脱型する。また、各コンクリートセグメントの間に充填材やシール材を介装させたりしてもよい。なお、上記実施例では、円筒体13を強制回転するのに、外側に配置した駆動タイヤで行なっているが、これに限られることなく、歯車であるいはチエーンを掛けて円筒体13を強制に回転すさせるように構成してもよい。
【0028】第3実施例図9は本発明の第3実施例を示す要部断面図である。この実施例では、円筒体20の内周面に仕切板21が配置されることにより、周方向に連続する3つのコンクリートセグメント用型枠22,22,22が形成されている。また、上記コンクリートセグメント用型枠22の内周側には、例えば鋼材等から作られる円弧状の内型枠23が取り付けられている。なお、24はそれらコンクリートセグメント用型枠22の間に介装される寸法調整用のブロックであり、仕切板21の各厚さ分を考慮してその長さが設定されている(例えば、この実施例のように、共に等しい4つのコンクリートセグメントCを突き合わせてトンネルを作る場合には、コンクリートセグメントCの長さmから仕切板21の厚さtを2倍したものを引いた値:mー2tが、このブロック24の長さとなる)。なお、この実施例でも、円筒体20をその軸線を中心に回転させながら、その内部の型枠22にコンクリートを供給して、コンクリートセグメントCを作るのは前記各実施例と同様である。
【0029】図10はこの実施例の方法によって制作された4つのコンクリートセグメントCを組み合わせて作られるトンネルの断面図である。このように、あらかじめ仕切板21の厚さ分を考慮し、寸法調整用のブロック23を介装させてコンクリートセグメントを作っているので、コンクリートセグメントCどうしを突き合わせる際にそれらの間に隙間は生じることがなく、隙間を埋めるために充填材やシール材を用いる必要はない。
【0030】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、内周面に仕切板により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠が形成されてなる円筒体をその軸線を中心として回転させるとともに、該円筒体の内面にコンクリートを供給し、該コンクリートが硬化した後、脱型してコンクリートセグメントを得る方法であり、一つの工程で一度に多数のコンクリートセグメントが得られることから、成形効率の向上が図れて省力化およびコストダウンが図れ、かつ各コンクリートセグメントに対して共通の条件設定が行ないやすくなり品質の均一化が図れる。加えて、このようにして得られるコンクリートセグメントは、両端部に比べて中央部が厚く全体として均等な厚さになりにくい傾向にあるが、この発明では、さらに供給したコンクリートが硬化する前に円筒体を所定時間おきに正・逆回転操作し、慣性力を利用することによって両端部にもコンクリートを行き渡らすようにしてコンクリートセグメントの外形を整えており、したがって、中央部と両端部の厚さが均一な所定形状のコンクリートセグメントを容易に得ることができる。
【0031】また、請求項2記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明における、円筒体を正・逆転操作する代わりに、コンクリートが半硬化したところで、コンクリートの内面に回転押さえローラを押し付けており、こうすることによっても、所定形状のコンクリートセグメントを得ることができる。加えて、回転押さえローラを、円筒体の内面にコンクリートを供給するコンクリート供給管を支持するコンクリート供給機に支持させており、回転押さえローラを別途設ける場合に比べて、部品点数を削減並びに省スペース化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のコンクリートセグメントの成形方法の一工程を示す斜視図である。
【図2】内面に複数の型枠を有する円筒体の拡大斜視図である。
【図3】上記円筒体の内面に形成されるコンクリートセグメントの成形状態を示す断面図である。
【図4】コンクリートセグメントの修正方法の例を示す断面図である。
【図5】コンクリートセグメントの修正方法の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す斜視図である。
【図7】同第2実施例で用いる円筒体の断面図である。
【図8】同第2実施例の他の要部工程を示す斜視図である。
【図9】第3実施例を示す円筒体の断面図である。
【図10】本実施例で制作したコンクリートセグメントを用いて得られるトンネルの断面図である。
【符号の説明】
1 コンクロートセグメントの成形装置
2 仕切板
3 コンクリートセグメント用型枠
4 円筒体
6 コンクリート供給機構
11 コンクロートセグメントの成形装置
12 仕切板
13 円筒体
14 駆動タイヤ
15 コンクリート供給機
20 円筒体
21 仕切板
22 コンクリートセグメント用型枠
23 内型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周面に仕切板により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠が形成されてなる円筒体をその軸線を中心として回転させるとともに、該円筒体の内面にコンクリートを供給し、かつ、供給したコンクリートが硬化する前に前記円筒体を所定時間おきに正・逆回転操作し、コンクリートが硬化した後、脱型してコンクリートセグメントを得ることを特徴とするコンクリートセグメントの成形方法。
【請求項2】 内周面に仕切板により仕切られて複数のコンクリートセグメント用型枠が形成されてなる円筒体をその軸線を中心として回転させるとともに、該円筒体の内面にコンクリートを供給し、該供給したコンクリートが半硬化したところで、該コンクリートの内面に回転押さえローラを押し付けることにより、コンクリートセグメントの内面形状を整えて所定形状とするコンクリートセグメントの成形方法であって、前記円筒体の内面にコンクリートを供給するコンクリート供給管を支持するコンクリート供給機に、前記回転押さえローラを支持させて前記コンクリートセグメントの内面形状を整えることを特徴とするコンクリートセグメントの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】第2994483号
【登録日】平成11年(1999)10月22日
【発行日】平成11年(1999)12月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−108764
【出願日】平成3年(1991)4月12日
【公開番号】特開平5−92411
【公開日】平成5年(1993)4月16日
【審査請求日】平成9年(1997)10月23日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(591099429)山上高圧コンクリート株式会社 (2)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−236705(JP,A)
【文献】実開 昭58−192008(JP,U)
【文献】実開 昭51−1568(JP,U)
【文献】実開 昭51−143762(JP,U)
【文献】実開 昭51−15158(JP,U)