説明

コンクリートフリューム

【課題】 水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護するコンクリートフリュームの提供を図る。
【解決手段】 用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護する略U字型のコンクリートフリューム10であって、底面11から略垂直に立設されている対向する側壁12のうちいずれか一方若しくは両方における長手方向20所定中間位置に、底面11から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部13が形成されている構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートフリュームに関し、用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護するコンクリートフリュームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の用水路や側溝に使用されるコンクリートフリューム製品は、側面壁が滑面で垂直である構造から、用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物が用水路や側溝に落下した場合に、自力で脱出することができない構造であったり、用水路周辺の田畑との自然環境を共生するための生息移動を阻止する構造であるなど、小動物の生態系を保護することができるコンクリートフリューム製品ではなかった。
【0003】
上記の問題点を解決しようとする小動物の生態系を保護する側溝や水路用コンクリートフリュームに関する提案としては、例えば、登録実用新案第3032306号公報(特許文献1)に記載の水路用コンクリート内に昇降スベリ止斜面スロープを合設固定した「自然にやさしい水路用コンクリート製品」などが提案され、公知技術となっている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の提案においては、水路用コンクリート内に昇降スベリ止斜面スロープを合設固定した水路用側溝の断面形状は、一般的に使用されるU字形側溝と大幅に形状が異なるため、敷設連結手段に問題を残すとともに、昇降スベリ止斜面スロープにゴミや枯葉などの漂流物が溜まってしまい、水路としての機能が損なわれたり、また、見た目にも自然な光景が維持されないものである。さらに昇降スベリ止斜面スロープを設けた構造は、従来のU字形側溝と比較して、本体の製造並びに施工費用のコスト高を招くものであった。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3032306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護するコンクリートフリュームを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、略U字型のコンクリートフリュームにおいて、底面から略垂直に立設されている対向する側壁のうちいずれか一方における長手方向所定中間位置に、底面から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部が形成されている構成となっている。
【0008】
また、本発明は、略U字型のコンクリートフリュームにおいて、底面から略垂直に立設されている対向する側壁の両方における長手方向所定中間位置に、底面から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部が形成されている構成を採用することもできる。
【0009】
さらに、本発明は、前記コンクリートフリュームにおいて、前記斜面部と該斜面部の長手方向両側に位置する底面から略垂直に立設された側壁端部との中間に形成される中間壁部が、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されている構成を採用し得る。
【0010】
またさらに、本発明は、前記コンクリートフリュームにおいて、前記斜面部に長手方向に延設される複数の水平段部及び斜面壁部が連続的に成型されることで、昇降段差部が形成されている構成も採用し得る。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記コンクリートフリュームにおいて、前記昇降段差部における斜面壁部が、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されている構成を採ることもできる。
【0012】
そしてまた、本発明は、前記コンクリートフリュームにおいて、長手方向両端に備えられる連結継手の構造が、両端ともスピゴットタイプまたは両端ともソケットタイプあるいは一端がスピゴットタイプで他端がソケットタイプである構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるコンクリートフリュームによれば、本発明におけるコンクリートフリュームによれば、側壁面の一方または両方における長手方向所定中間位置に、底面から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部が形成されていることで、用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物が用水路や側溝に落下した場合であっても、該斜面部を使って自力で脱出することが可能となり、かかる小動物の生態系を有効に保護することが可能となる。
【0014】
また、本発明にかかるコンクリートフリュームによれば、前記斜面部と該斜面部の長手方向両側に位置する底面から略垂直に立設された側壁端部との中間に形成される中間壁部が上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されている構成を採用することで、水流の圧力を正面で受け止めてしまうことなく側溝の地盤に対しての保持力を維持することができるとともに、その領域にゴミや枯葉などの漂流物が溜まることなく、水路としての機能をそのままに見た目にも自然な光景が維持され、両側壁が水流を減速させる澱み域となる領域を形成しているため、落下した小動物が容易に漂着することができる優れた効果を奏する。
【0015】
さらに、本発明にかかるコンクリートフリュームによれば、長手方向両端に備えられる連結継手の構造として、両端ともスピゴットタイプまたは両端ともソケットタイプあるいは一端がスピゴットタイプで他端がソケットタイプである構成を採ることによって、一般的に使用されるU字形側溝と容易に連結できる構造であるため、本発明品への更新を容易にするとともに、農道の左右両方のどちら側にも敷設することができる優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるコンクリートフリュームを示す全体斜視図である。
【図2】本発明にかかるコンクリートフリュームを示す断面説明図である。
【図3】本発明にかかるコンクリートフリュームの第一の実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明にかかるコンクリートフリュームの第二の実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明にかかるコンクリートフリュームの使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、略U字型のコンクリートフリューム10において、側壁12の一方または両方における長手方向20所定中間位置に、底面11から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部13を形成することで、用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物が用水路や側溝に落下した場合であっても、該斜面部13を使って自力で脱出することを可能ならしめたことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかるコンクリートフリューム10の実施形態を、図面に基づき説明する。
【0018】
なお、本発明にかかるコンクリートフリューム10は、以下に述べる実施例や図示した構造に限定されるものではなく、本発明の趣旨・構成に逸脱しない範囲で適宜変更することができるものである。
【0019】
図1は、本発明にかかるコンクリートフリュームを示す全体斜視図であり、図1(a)は一方側の側壁に斜面部を設けた場合の実施形態(第一の実施形態)、図1(b)は両側の側壁に斜面部を設けた場合の実施形態(第二の実施形態)を示している。
【実施例1】
【0020】
図1(a)に示すように、第一の実施形態にかかるコンクリートフリューム10は、底面11と、該底面11から略垂直に立設されている対向する側壁12とで構成され、該側壁12のうちいずれか一方における長手方向20所定中間位置に、底面11から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部13が形成されている。
なお、該傾斜部13の傾斜角度については、特に限定するものではなく、また、該傾斜部13の幅についても、特に限定するものではない。
【0021】
また、前記斜面部13と該斜面部13の長手方向20両側に位置する底面11から略垂直に立設された側壁端部12aとの中間には、平面状の中間壁部17が形成されている。
【0022】
かかる中間壁部17については、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されることが望ましく、かかる構造を採ることにより、水流の圧力を正面で受け止めてしまうことなく側溝の地盤に対しての保持力を維持することができるとともに、その領域にゴミや枯葉などの漂流物が溜まることなく、水路としての機能もそのままに見た目にも自然な光景が維持され、また、水流を減速させる澱み域21となる領域を形成し、落下した小動物が容易に漂着可能であるとともに、該小動物の這い上がりを助ける役目を果たすことが可能となる。
【0023】
前記斜面部13には、長手方向20に延設される複数の水平段部15及び斜面壁部16が連続的に成型されることで、昇降段差部14が形成されている。図2は、該昇降段差部14の構造を示す断面説明図であり、図2(a)は全体断面図、図2(b)は要部拡大断面図である。かかる構造により、斜面部13が滑面状である場合に比して、落下した小動物が這い上がる途中で一時休息する場所を提供しつつ、該小動物の脱出を容易にすることが可能である。
【0024】
このとき、図2に示すように、前記昇降段差部14における斜面壁部16について、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成することが望ましい。すなわち、かかる構造を採用することにより、該斜面壁部16が略垂直である場合に比して、落下した小動物がより這い上がり易くすることを可能にする。
【0025】
そして、コンクリートフリューム10の長手方向20両端には、連結継手が備えられている。かかる連結継手の構造については、特に限定するものではないが、例えばスピゴットタイプの連結継手18やソケットタイプの連結継手19が考えられる。このとき、図3(a)に示すように、コンクリートフリューム10の両端ともスピゴットタイプの連結継手18とすることが考えられ、または図3(b)に示すように、両端ともソケットタイプの連結継手19とすることも考え得る。かかる構造を採用することにより、本実施形態のように片側に斜面部13が設けられたコンクリートフリューム10を敷設する場合に、連結継手の構造によって適宜選択することで、その敷設方向を現場の状況に合わせて変えることができ、したがって農道の左右両側のどちら側にも敷設すること可能となる。
なお、図面には示していないが、コンクリートフリューム10における一端がスピゴットタイプの連結継手18で他端がソケットタイプの連結継手19とする構造を採用することも可能である。
【0026】
以上の通り構成される第一の実施形態にかかるコンクリートフリューム10の敷設状態について、その実施例を図5(a)に示している。
本実施形態にかかるコンクリートフリューム10について、両端ともスピゴットタイプの連結継手18を採用したコンクリートフリューム10と、両端ともソケットタイプの連結継手19を採用したコンクリートフリューム10とを用いることで、該コンクリートフリューム10同士を連結するとともに、既存の用水路や側溝22と容易に連結することができる。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の第二の実施形態にかかるコンクリートフリューム10について説明する。
すなわち、第二の実施形態にかかるコンクリートフリューム10は、図1(b)に示すように、底面11と、該底面11から略垂直に立設されている対向する側壁12とで構成され、該側壁12の両方における長手方向20所定中間位置に、底面11から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部13が形成されている。
なお、該傾斜部13の傾斜角度については、特に限定するものではなく、また、該傾斜部13の幅についても、特に限定するものではない。
【0028】
また、前記斜面部13と該斜面部13の長手方向20両側に位置する底面11から略垂直に立設された側壁端部12aとの中間には、平面状の中間壁部17が形成されている。
【0029】
かかる中間壁部17については、上記第一の実施形態と同様、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されることが望ましく、かかる構造を採ることにより、水流の圧力を正面で受け止めてしまうことなく側溝の地盤に対しての保持力を維持することができるとともに、その領域にゴミや枯葉などの漂流物が溜まることなく、水路としての機能もそのままに見た目にも自然な光景が維持され、また、水流を減速させる澱み域21となる領域を形成し、落下した小動物が容易に漂着可能であるとともに、該小動物の這い上がりを助ける役目を果たすことが可能となる。
【0030】
さらに、前記斜面部13には、上記第一の実施形態と同様、長手方向20に延設される複数の水平段部15及び斜面壁部16が連続的に成型されることで、昇降段差部14が形成されており、該斜面壁部16については、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成することが望ましい。
【0031】
そしてまた、コンクリートフリューム10の長手方向20両端には、上記第一の実施形態と同様、連結継手が備えられている。かかる連結継手の構造については、特に限定するものではないが、例えばスピゴットタイプの連結継手18やソケットタイプの連結継手19が考えられ、図4(a)に示すように、コンクリートフリューム10の両端ともスピゴットタイプの連結継手18としたり、あるいは図4(b)に示すように、両端ともソケットタイプの連結継手19とすることが考えられ、図示していないが、コンクリートフリューム10における一端がスピゴットタイプの連結継手18で他端がソケットタイプの連結継手19とする構造を採用することも可能である。
【0032】
以上の通り構成される第二の実施形態にかかるコンクリートフリューム10の敷設状態について、その実施例を図5(b)に示している。
本実施形態にかかるコンクリートフリューム10について、両端ともスピゴットタイプの連結継手18を採用したコンクリートフリューム10と、両端ともソケットタイプの連結継手19を採用したコンクリートフリューム10とを用いることで、該コンクリートフリューム10同士を連結するとともに、既存の用水路や側溝22と容易に連結することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によるコンクリートフリューム10は、農地用水は元より側溝や消防用水路など幅広い分野で利用できるものであって、本発明に関するコンクリートフリューム10の産業上の利用可能性は極めて高いものと思料する。
【符号の説明】
【0034】
10 コンクリートフリューム
11 底面
12 側壁
12a 側壁端部
13 斜面部
14 昇降段差部
15 水平段部
16 斜面壁部
17 中間壁部
18 スピゴットタイプの連結継手
19 ソケットタイプの連結継手
20 長手方向
21 澱み域
22 既存の用水路や側溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護する略U字型のコンクリートフリュームであって、
底面から略垂直に立設されている対向する側壁のうちいずれか一方における長手方向所定中間位置に、底面から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部が形成されていることを特徴とするコンクリートフリューム。
【請求項2】
用水路周辺に生息する水生昆虫や両性類などの小動物の生態系を保護する略U字型のコンクリートフリュームであって、
底面から略垂直に立設されている対向する側壁の両方における長手方向所定中間位置に、底面から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部が形成されていることを特徴とするコンクリートフリューム。
【請求項3】
前記コンクリートフリュームにおいて、前記斜面部と該斜面部の長手方向両側に位置する底面から略垂直に立設された側壁端部との中間に形成される中間壁部が、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリートフリューム。
【請求項4】
前記コンクリートフリュームにおいて、前記斜面部に長手方向に延設される複数の水平段部及び斜面壁部が連続的に成型されることで、昇降段差部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリートフリューム。
【請求項5】
前記コンクリートフリュームにおいて、前記昇降段差部における斜面壁部が、上方へいくにしたがって外側へ傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコンクリートフリューム。
【請求項6】
前記コンクリートフリュームにおいて、長手方向両端に備えられる連結継手の構造が、両端ともスピゴットタイプまたは両端ともソケットタイプあるいは一端がスピゴットタイプで他端がソケットタイプであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のコンクリートフリューム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157744(P2011−157744A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20996(P2010−20996)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(599080199)栃木県コンクリート製品協同組合 (4)
【Fターム(参考)】