説明

コンクリートブロックおよびその製造方法

【課題】廃棄物に起因する有害物質の漏洩を防止した安全に有効利用できるコンクリートブロック及びその製造方法を提供する。
【解決手段】廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートブロックが防水性シートで包み込まれ、さらに防水性シートの表面にモルタル又はコンクリートが被覆されているコンクリートブロック。コンクリートブロックの製造方法は、廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリート7を防水性シート製の袋8に投入・固化する工程、型枠10内のモルタル又はコンクリート11が流動性を保持している間に廃棄物含有コンクリートブロック9入り袋を型枠10内の流動性のあるモルタル又はコンクリート11の上に載せ、廃棄物含有コンクリートブロック9を上からプレスによりモルタル又はコンクリート11に押し込んで埋没させてモルタル11を被覆する工程、モルタル11を固化した後、型枠10を外してモルタル11で被覆したコンクリートブロック12を取り出す工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をセメントで固化した廃棄物含有コンクリートブロックをモルタル又は生コンで包み込んだコンクリートブロックおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物などの廃棄物は、加工処理することにより再利用されるものと、廃棄物処分場に廃棄処分されるものとに分けることができる。例えば、古瓦、建築廃材、焼却灰、注射等の医療具等の廃棄物の処分については、大部分が廃棄物処分場に運搬して廃棄処分しているのが現状である。
【0003】
廃棄物の処分方法には、廃棄物を焼却処理により発生した焼却灰を固化し廃棄物処分場に運搬して廃棄処分したり、廃棄物を溶融処理して溶融物を水砕してコンクリートの骨材や錘に利用したりする方法が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、成形した産業廃棄物をコンクリート を流し込んで固化してコンクリート ブロックとすることが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、廃棄物とセメントを混練して塊状に成形し、成形済廃棄物を型枠内に浮き上がり状態に挿入し、型枠と成形済廃棄物との間にコンクリートを充填して固化させて、有害物質の漏洩のないブロックとすることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−38322号公報
【特許文献2】特開平5−285466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、廃棄物の中には古瓦のように釉薬に有害な鉛を含有しているものもあり、また、そのほかに鉛や亜鉛などの有害な重金属を含有する廃棄物もある。これらの有害物質を含む廃棄物を廃棄物処分場に運搬して廃棄処分しても、雨水により溶出して地下水や河川などを汚染するなどして環境に悪影響を与える。そこで、廃棄物処分場ではそのための対策を講じる必要があるため、廃棄物処分場の建設費が高価になるという問題があるだけでなく、環境問題などから廃棄物処分場の建設場所も容易には入手できないという問題もある。
【0007】
また、廃棄物をコンクリートで固化しても水がしみ込むので、有害物質の溶出のおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、有害物質を含有する廃棄物を防水性シート及び又はモルタルで封じ込めて廃棄物に起因する有害物質の漏洩を防止した安全に有効利用できるコンクリートブロックおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンクリートブロックは、廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートブロックが防水性シートで包み込まれ、さらに防水性シートの回りにモルタルが被覆されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のコンクリートブロックの製造方法は、廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートを防水性シート製の袋に投入し、固化する工程、型枠内に投入されたモルタルが流動性を保持している間に廃棄物含有コンクリートブロック入り袋を型枠内の流動性のあるモルタルの上に載せ、廃棄物含有コンクリートブロックを上からプレスによりモルタルに押し込んで埋没させてモルタルを被覆する工程、モルタルを固化した後、型枠を外してモルタルで被覆したコンクリートブロックを取り出す工程からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンクリートブロックは、廃棄物含有コンクリートブロック内の廃棄物がセメントで被覆され、さらに防水性シート及び/又はモルタルでさらにモルタル又は生コンで被覆される構造で廃棄物の有害物質が封じ込められているので、有害物質の漏洩を抑えることができる。その結果、コンクリートブロックを安全に有効利用することができ、また、廃棄物処分処理場への廃棄物の投棄量を減らすことができる。
【0012】
また、本発明によるコンクリートブロックの製造方法により、防水性シートの袋内で固化した廃棄物含有コンクリートブロックを袋ごとモルタル内に押し込んで埋没させてモルタルを防水性シートの回りに被覆することができるので、簡単な工程により手間を掛けずにコンクリートブロックを製造することができる。
【0013】
また、廃棄物含有コンクリートの周囲を鉄筋で囲うことにより、コンクリートブロックの強度が大きくなるので、多くの廃棄物を含有させた大型のコンクリートブロックを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明においては、有害物質を含有する廃棄物が適しており、古瓦、建築廃材、焼却灰、汚泥、アスベスト含有物などを処理することができる。固体廃棄物は粉砕してセメントと混練し、汚泥などは水分含有量を考慮してコンクリートの添加水分を調整して混練する。
【0015】
廃棄物含有コンクリートブロックを包み込む防水性シートとしては、耐久性を有する樹脂製シート、例えば塩化ビニールシートが適している。 なお、重金属を含まないものは防水性シートを用いることなく、型枠で廃棄物含有コンクリートをモルタルで封じ込めてもよい。また、廃棄物含有コンクリートブロックあるいは廃棄物含有コンクリートの封じ込めはモルタルに限られず、生コンでもよい。
【0016】
以下、廃棄物として古瓦に適用した例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は廃棄物として古瓦を含有したコンクリートブロックの製造工程を示す図で、図1において、古瓦1を粉砕機2に投入して粉砕して古瓦粉3にする。古瓦粉3の粒度や配合割合は、通常のコンクリート製造と特に変わるところはない。
【0018】
古瓦粉3とセメント4と水5をミキサー6に投入して混練して古瓦粉含有コンクリート7を製造する。
【0019】
古瓦粉含有コンクリート7を塩化ビニールシート製の袋8に投入して固化して古瓦粉含有コンクリートブロック9にする。このとき、袋8の外側を分解可能な枠で保持して所望の形に成形する。
【0020】
分解可能な型枠10にモルタル11を投入した後、モルタル11が流動性を保持している間に古瓦粉含有コンクリートブロック9入り袋8を型枠内のモルタルの上に載せる。型枠10に投入するモルタル11の量は、古瓦粉含有コンクリートブロック9入り袋8を包み込む厚みに形成するのに必要な量とする。なお、モルタルに変えて生コンを使用してもよい。
【0021】
次いで古瓦粉含有コンクリートブロック9を上からプレスして型枠10内の流動性のあるモルタル11に押し込んでいくと、モルタルは型枠と袋との間に形成されている隙間を上昇していく。型枠と袋8との隙間は、モルタル11を被覆する厚みとなるように設定する。
【0022】
プレスにより隙間を上昇したモルタル11は、古瓦粉含有コンクリートブロック9の上面を袋8の上部が閉じるように流れていき、古瓦粉含有コンクリートブロック9入り袋8はモルタル11に埋没する。
【0023】
次いで、古瓦粉含有コンクリートブロック9のプレスを解除し、さらにモルタル11を投入して袋8の上部を完全に塞いで仕上げる。
【0024】
モルタル11が固化した後、型枠10を外してコンクリートブロック12を取り出す。
【0025】
図2(a)は本実施例で製造したモルタルで被覆したコンクリートブロックの一部断面図、(b)はブロックを重ねた例を示す図である。
【0026】
モルタル11で被覆したコンクリートブロック12は、古瓦粉含有コンクリートブロック9が防水性シートの袋8内に包み込まれ、更にモルタルが被覆されているので、有害物質の溶出を確実に防止することができ、その結果、図2(b)に示すようにモルタルで被覆したコンクリートブロックを積み重ねて家屋の土台や塀などに有効に利用することができる。
【0027】
図3(a)は表面に係合用の凹凸を形成したコンクリートブロックの斜視図、(b)は係合状態を示す断面図である。
【0028】
コンクリートブロックの表面及び裏面に対向して、積み重ねた際に、互いに係合する係合凸部12aあるいは係合凹部12bを形成する。表面に係合凸部12aを形成すると裏面には係合凹部12bを形成し、表面に係合凹部12bを形成すると裏面には係合凸部12aを形成して積み重ねた際に上下のコンクリートブロックが係合するようにする。コンクリートブロック12に係合凸部12aと係合凹部12bとを形成することにより、コンクリートブロック12を積み重ねる際に、簡単に位置決めすることができる。
【実施例2】
【0029】
本実施例はモルタルに鉄筋を配置したコンクリートブロックの例である。コンクリートブロックの大型化にともなって、コンクリートブロックの強度を上げるために、モルタル中に鉄筋を配置する。
【0030】
図4(a)は鉄筋の配置の一例を示す断面図、(b)は同平面図、図5は本発明によるコンクリートブロックの別実施例の製造工程を示す図である。
【0031】
図4において、分解可能な型枠10に、モルタルが投入されて固化する箇所に鉄筋13を配置する。鉄筋13は、例えば型枠10の底面及び側面に設けたコマ14により支持する。鉄筋の径、組み方はブロックの大きさに応じて決める。
【0032】
鉄筋の配置が完了した後、図5に示すように、実施例1と同様にして、モルタル又は生コン11を投入した後、モルタル又は生コン11が流動性を保持している間に古瓦粉含有コンクリートブロック9入り袋8を型枠内のモルタルの上に載せる。次いで古瓦粉含有コンクリートブロック9を上からプレスして型枠10内の流動性のあるモルタル又は生コン11に押し込んでいくと、モルタル又は生コンは型枠10と袋8との間に形成されている隙間を上昇していく。プレスにより隙間を上昇したモルタル又は生コン11は、古瓦粉含有コンクリートブロック9の上面を袋8の上部が閉じるように流れていき、古瓦粉含有コンクリートブロック9入り袋8はモルタル又は生コン11に埋没する。次いで、古瓦粉含有コンクリートブロック9のプレスを解除し、さらに鉄筋を敷設してモルタル又は生コン11を投入して袋8の上部を完全に塞いで仕上げる。本実施例では、古瓦粉含有コンクリートブロック9の周囲を鉄筋で囲うことにより、コンクリートブロック9の強度が大きくなるので、多くの古瓦粉を含有させた大型のコンクリートブロックを製造することが可能となる。
【実施例3】
【0033】
本実施例は、古瓦粉含有コンクリートブロック9を袋に詰めることなく、その周囲を鉄筋及びモルタル又は生コンで包み込むものである。
【0034】
鉄筋の配置が完了した後、図6に示すように、実施例2と同様にして、モルタル又は生コン11を投入した後、モルタル又は生コン11が流動性を保持している間に上下が開放されている中枠15を配置し、中枠15内に、古瓦粉3とセメント4と水5をミキサー6に投入して混練した古瓦粉含有コンクリート7を流し込み、次いで型枠10と中枠15の間にモルタル又は生コン11を流し込み、古瓦粉含有コンクリート7の上面を閉じるまで流し込んだ後、中枠15を引き抜き、さらに鉄筋を敷設してモルタル又は生コン11を流し込んで中枠15の抜き後及び上部を完全に塞いで仕上げる。本実施例においても、古瓦粉含有コンクリートブロック9の周囲を鉄筋で囲うことにより、コンクリートブロック9の強度が大きくなるので、多くの古瓦粉を含有させた大型のコンクリートブロックを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による古瓦を処理したコンクリートブロックの製造工程を示す図である。
【図2】(a)は本実施例で製造したモルタルで被覆したコンクリートブロックの一部断面図、(b)はブロックを重ねた例を示す図である。
【図3】(a)は表面に係合用の凹凸を形成したコンクリートブロックの斜視図、(b)は係合状態を示す断面図である。
【図4】(a)は鉄筋の配置の一例を示す断面図、(b)は同平面図である。
【図5】本発明によるコンクリートブロックの別実施例の製造工程を示す図である。
【図6】本発明によるコンクリートブロックのさらに別の実施例の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1:古瓦
2:粉砕機
3:古瓦粉
4:セメント
5:水
6:ミキサー
7:古瓦粉含有コンクリート
8:袋
9:古瓦粉含有コンクリートブロック
10:型枠
11:モルタル
12:コンクリートブロック
13:鉄筋
14:コマ
15:中枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートブロックの回りにモルタル又はコンクリートが被覆されていることを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートブロックが防水性シートで包み込まれ、さらに防水性シートの回りにモルタル又はコンクリートが被覆されていることを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項3】
廃棄物が古瓦粉であることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロック。
【請求項4】
固化したモルタル又はコンクリート内に鉄筋が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリートブロック。
【請求項5】
コンクリートブロックの表面及び裏面に積み重ねた際に互いに係合する係合凹部あるいは係合凸部が対向して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリートブロック。
【請求項6】
型枠内に投入されたモルタル又はコンクリートが流動性を保持している間に型枠内に配置された中枠内に廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートを中枠内に流し込む工程、
次いで型枠と中枠の間にモルタル又は生コンを中枠内の古瓦粉含有コンクリートの上面を閉じるまで流し込む工程、
次いで中枠を引き抜き、さらにモルタル又は生コンを流し込んで上部を被覆する工程、
モルタル又は生コンが固化した後、型枠を外してモルタル又は生コンで被覆したコンクリートブロックを取り出す工程からなることを特徴とするコンクリートブロックの製造方法。
【請求項7】
廃棄物とセメントと水を混練して得られた廃棄物含有コンクリートを防水性シート製の袋に投入し、固化する工程、
型枠内に投入されたモルタル又はコンクリートが流動性を保持している間に廃棄物含有コンクリートブロック入り袋を型枠内の流動性のあるモルタル又はコンクリートの上に載せ、廃棄物含有コンクリートブロックを上からプレスによりモルタル又はコンクリートに押し込んで埋没させてモルタルを被覆する工程、
モルタル又は生コンが固化した後、型枠を外してモルタル又は生コンで被覆したコンクリートブロックを取り出す工程からなることを特徴とするコンクリートブロックの製造方法。
【請求項8】
廃棄物が古瓦を粉砕して得られた古瓦粉であることを特徴とする請求項6又は7記載のコンクリートブロックの製造方法。
【請求項9】
モルタル又はコンクリート内に鉄筋が配置されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のコンクリートブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−256305(P2006−256305A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377729(P2005−377729)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(592106236)
【出願人】(597175846)
【出願人】(505057325)
【Fターム(参考)】