説明

コンクリートポールの応急補修構造

【課題】損傷を受けたコンクリートポールを特殊な技術や材料を必要とすることなく短時間で補修することができ、ローコストで復旧させることを課題とする。
【解決手段】コンクリートポール1に外嵌し得る少くとも一対の分割バンド3A、3Aで構成される補強バンド3を備え、各分割バンドの下端には外方へ突出しボルト挿通孔7が穿設された座板4を有し、各分割バンドの接合縁はネジ12により綴じ合わせるよう構成し、前記分割バンドをポールの損傷部分を包含するよう外嵌してポールの基礎2に植立するアンカーボルト6を座板のボルト挿通孔に挿通してナット13で締結するとともに分割バンド相互をネジ12により綴着し、ポールと補強バンドとの間に形成される空間内に砂14と水を充填して水締めするようにしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひび割れ、欠損、折損等の損傷を生じたコンクリートポールを応急的に補修するための応急補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路などにおいて使用される各種コンクリートポールは、地震や台風等の自然災害、交通事故、除雪作業などにより倒壊や破損などの損傷を受けることがある。
【0003】
このようにコンクリートポールが損壊した場合、後々新規のポールに立て替えることになるが、新規のポールを立て替えるには多大な費用と時間、労力を必要とするばかりでなく、場合によってはそのポールが担っている機能を代替するためのポールを仮設しなければならず、一層コスト高になるという問題がある。
【0004】
前記ポストの損傷箇所が地表から離間した中間位置であれば特許文献1に見られるような補強手段を用いることができるが、上記特許文献1に開示の技術は、ポールの外周に巻き付ける構造であるから、ポールの表面が傷付いた程度の損傷であれば差支えはないとしてもポールの強度に関わるような損傷を受けている場合には十分に対処することが難しい。
【0005】
またカバーの綴じ合わせ部を固定するネジの頭部が外周に突出しているので、通行人や車両等が接触すると怪我や痕を付けるおそれがあり、またポールに付帯設備を付設する際に障害になるなどの問題点があって使用対象の凡用性に欠ける難点がある。
【特許文献1】特開2002−152995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、損傷を受けたコンクリートポールを特殊な技術や材料を必要とすることなく迅速に補修することができ、ローコスト、短時間でコンクリートポールの仮復旧を行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段として本発明は、コンクリートポールに外嵌し得る少くとも一対の分割バンドで構成される補強バンドを備え、各分割バンドの下端には外方へ突出しボルト挿通孔が穿設された座板を有し、各分割バンドの接合縁はネジにより綴じ合わせるよう構成し、前記分割バンドをコンクリートポールの損傷箇所を包含するよう外嵌してコンクリートポールの基礎に植立したアンカーボルトを前記座板のボルト挿通孔に挿通してナットで締結するとともに、分割バンド相互をネジにより締着し、前記コンクリートポールと補強バンドとの間に形成される空間内に砂と水とを充填して水締めするようにしたことにある。
【0008】
前記座板と分割バンドの外側面とをリブにより結合することが強度を増すうえで好ましい。
【0009】
また前記分割バンドの上端および下端にコンクリートポールの外周面に当接して求心するフランジを突設し、上端のフランジ部分に砂および水を充填し得る開口を設けることができる。
【0010】
さらに前記分割バンドの側部の接合縁は少くとも内側に位置する接合縁のネジ止め部が凹陥されており、この凹陥部にネジを位置させてその頭部が補強バンドの外周面から大きく突出しないようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、損傷を受けたコンクリートポール自体の基礎を利用し、ポールの外周面に分割バンドを添わせて分割バンド相互をネジで締結するとともに下端の座板を前記基礎に植設したアンカーボルトとナットとで締結することで一体的に固定するようにしたので、損傷したポールを撤去せずとも応急的に補修することができ、また補強バンドとポールとの間の空間に砂を水締めした状態に充填する構成としたので、特別な充填材を用いる必要がなく、安価に得ることができ、これらによりポールをローコストでかつ迅速に補修することができる効果を奏する。
【0012】
一方、分割バンドの接合縁を綴じるためのネジの頭部が位置する部位を凹陥させることにより補強バンドの外周面からネジの頭部が突出せず、通行人や車両等が接触してもこれらを傷付けることが防がれる。
【0013】
またポールに付帯機器や付属部材を取り付けるとき補強バンドを利用してこれらを強固に取り付けることができる利点も生まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図3は本発明によるコンクリートポールの応急補修構造の一実施形態をコンクリートポール1の損傷箇所1aを包含するよう装着した状態として示し、図2は同断面図として示している。
【0015】
コンクリートポール1(以下単にポールという)は一般に中空筒状のもので、その下端は地中に構築されるコンクリート製の基礎2と一体化して立設されている。
【0016】
本発明の応急補修構造における補強バンド3は、図示の実施形態では円筒を2つ割りした形態の一対の分割バンド3A、3Aで構成され、この分割バンド3A、3Aは鋼板等の強靱な材料により構成されている。
【0017】
上記分割バンド3A、3Aの下端外周には図4に拡大示するように座板4が外方へ向け水平方向に突設されており、この座板4と分割バンド3Aの外側面との間に補強用リブ5が所要数箇所に溶接により一体に設けられている。
【0018】
上記座板4には、ポール1の基礎2に固定するため該基礎2に植立されるアンカーボルト6の挿通孔7が穿設されている。
【0019】
前記分割バンド3A、3Aの上端および下端の内周面にはフランジ8、9が突設され、その内周縁はポール1の外周面に可及的密に当接するよう半円形状に形成されており、これらフランジ8、9がポール1に当接したとき分割バンド3とポール1との間に一定間隔の空間10が形成されるようになっている。
【0020】
前記上端のフランジ8には、図4に示すように砂、水を注入するための開口11が形成されている。
【0021】
前記分割バンド3A、3Aの接合縁はネジ12、12・・・によって締着されるもので、図5に例示するように少くとも一方の分割バンド3Aの接合縁をプレス加工により凹陥させ、この凹陥部3a内にネジ12の頭部12aを位置させてその頭部12aが分割バンド3A、3Aの外周面より大きく突出しないようになされている。
【0022】
この凹陥部3aは、分割バンド3A、3Aの長手方向に連続(図6(A)示)またはネジ締め部分のみ(図6(B)示)に形成することができる。
【0023】
前記補強バンド3をポール1の基部に施工して応急的に補修するには、図1、図2に示すようにポール1の損傷箇所1aのある部位を包含するように分割バンド3A、3Aを外嵌し、その下端の座板4のボルト挿通孔7、7・・・をポール1の基礎2に植設したアンカーボルト6、6・・・に通し、ナット13、13・・・で締結するとともに、分割バンド3A、3Aの接合縁を重ね、ネジ12、12・・・により締着する。
【0024】
このとき各分割バンド3A、3Aのフランジ8、9がポール1の外周面に当接することで補強バンド3とポール1との間に空間10が形成され、この空間10に上端のフランジ8の開口11から砂14を充填し、水を加えて水締めされる。
【0025】
したがって損傷を受けたポール1に補強バンド3を外嵌してアンカーボルト6、6・・・とナット13、13・・・とで締着するとともに補強バンド3を構成する分割バンド3A、3Aをネジ12、12・・・で締結し、この補強バンド3とポール1との間に砂を水締めの状態に充填することにより損傷したポール1を迅速に補修することができる。
【0026】
図7(A)〜(C)は、補強バンド3による補修が完了したあと、必要な機器や機材の支持体として利用する場合の形態を示しており、(A)は架線用支柱15の支持体として、(B)は交通用反射板16の兼用として、さらに(C)は電線管17の支持体として利用する形態例を示している。
【0027】
図7(A)の場合は、上下2本のバンド18、18を補強バンド3に巻回してボルト締めし、これらバンド18、18に取り付けた架台19およびこれを支えるアーム20により架線用支柱15を支持させた構造である。
【0028】
図7(B)の場合は、薄板に光が反射する反射塗料の塗布、または光を反射する光輝性のある金属板などで構成される反射板16を補強バンド3の適当な高さ位置に巻装した構成である。
【0029】
図7(C)の場合は、補強バンド3の一側に電線を通す電線管17を添わせ、この電線管17を上下2本のバンド21、21により補強バンド3に固定するようにした構成である。
【0030】
このようにポール1の補修に供した補強バンド3を他の目的のために用いることができ、ポール1の補強に留らず用途の拡大を図ることができ、有効利用上極めて有益な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるコンクリートポールの補修構造の一実施形態を示す正面図。
【図2】同、断面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】図1における分割バンドの一部切欠断面図。
【図5】分割バンドの接合縁部分を示す図3の一部の拡大図。
【図6】(A)、(B)は図5のB−B相当の2列を示す拡大断面図。
【図7】(A)〜(C)は本発明の応用例を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 コンクリートポール
2 コンクリートポールの基礎
3 補強バンド
3A 分割バンド
4 座板
5 補強用リブ
6 アンカーボルト
7 ボルト挿通孔
8、9 フランジ
10 空間
11 開口
12 ネジ
13 ナット
14 砂
15 架線用支柱
16 反射板
17 電線管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポールに外嵌し得る少くとも一対の分割バンドで構成される補強バンドを備え、各分割バンドの下端には外方へ突出しボルト挿通孔が穿設された座板を有し、各分割バンドの接合縁はネジにより綴じ合わせるよう構成されており、前記分割バンドをコンクリートポールの損傷部分を包含するよう外嵌してコンクリートポールの基礎に植立するアンカーボルトを前記座板のボルト挿通孔に挿通してナットで締結するとともに分割バンド相互をネジにより綴着し、前記コンクリートポールと補強バンドとの間に形成される空間内に砂と水を充填して水締めしたことを特徴とするコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項2】
前記座板と分割バンドの外側面とを結合するリブを備えている請求項1記載のコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項3】
前記分割バンドの上端および下端にコンクリートポールの外周面に当接して求心するフランジが突設され、上端のフランジ部分には砂および水を充填し得る開口を有している請求項1または2記載のコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項4】
前記分割バンドの側部の接合縁は少くとも内側に位置する接合縁のネジ止め部が凹陥されており、この凹陥部にネジを位置させてその頭部が補強バンドの外周面から大きく突出しないように構成されている請求項1〜3のいずれか1項記載のコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項5】
前記凹陥部は、分割バンドの接合縁の長手方向に連続して形成されている請求項4記載のコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項6】
前記凹陥部は、ネジの頭部が位置する部位に各別に形成されている請求項4記載のコンクリートポールの応急補修構造。
【請求項7】
前記補強バンドは一対の分割バンドで構成され、その一側縁を蝶番により開閉自在に枢着されている請求項1〜3のいずれか1項記載のコンクリートポールの応急補修構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−133183(P2010−133183A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311897(P2008−311897)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000230526)日本ヴィクトリック株式会社 (39)
【出願人】(591146893)九州旅客鉄道株式会社 (18)
【Fターム(参考)】