説明

コンクリート充填鋼管柱

【課題】鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、施工性が向上されたコンクリート充填鋼管柱を得ることを目的とする。
【解決手段】鋼管12の各側壁12Aは、鋼管12の内部に配置された縦補強リブ20によって補強されている。縦補強リブ20は板状の鋼板で構成され、長手方向を鋼管12の軸方向にして鋼管12の内部に配置されている。この縦補強リブ20は、その幅方向の一端部20A(の端面)を鋼管12の側壁12A(の内面)の幅方向の中央部に略垂直に突き当てると共に、その幅方向の他端部20Bを鋼管12の内側へ向け、鋼管12の側壁12Aから突出した状態で配置されている。縦補強リブ20の一端部20A(接合端部)は、当該縦補強リブ20の長手方向に沿って鋼管12の側壁12Aに連続溶接されている。これにより、鋼管12の側壁12Aに面外剛性が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填鋼管柱に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管内にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管(CFT(Concrete Filled Steel Tube))柱が知られている(例えば、特許文献1)。CFT柱では、一般に、中空の鋼管柱と比較して負担可能な軸力(負担軸力)が大きく、またコンクリートが充填されている分、熱容量が増加するため、耐火性能に優れている。そのため、設計条件(例えば、柱の負担軸力が比較的小さく火災継続時間が短い場合など)によっては、CFT柱の耐火被覆を省略することが可能である。
【0003】
ここで、特許文献1に開示された技術では、鋼管の内周面に、当該鋼管の軸方向へ延びるリブ(フラットバー)が点溶接で取り付けられている。そして、火災時に、鋼管とコンクリートとの熱膨張差によってコンクリートに発生する軸方向の引張り力にリブが抵抗することにより、コンクリートに発生する水平方向のひび割れを抑制し、CFT柱の座屈を防止している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように鋼管の内周面にリブを点溶接する構成では、火災時におけるコンクリートのひび割れが抑制されるものの、加熱されて耐力、剛性が低下した鋼管の変形を十分に規制することができず、当該内壁に局部座屈が発生する可能性がある。
【0005】
一方、断面十字形に組み合わされた2枚の鉄板を鋼管の内部に配置し、溶接で固定したコンクリート充填鋼管柱が知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2に開示された技術では、2枚の鉄板によって鋼管の内部が4つの区画に仕切られる。従って、各区画にコンクリートを充填しなければならず、コンクリートの充填作業が煩雑化すると共に、各区画へのコンクリートの充填効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−204993号公報
【特許文献2】特開平9−88238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、施工性が向上されたコンクリート充填鋼管柱を得ることを目的とする。
【0008】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱は、鋼管と、前記鋼管の内部に、長手方向を前記鋼管の軸方向又は周方向にして配置されると共に、長手方向に沿って該鋼管の側壁に接合され、該側壁から突出する補強部材と、前記鋼管に充填される充填コンクリートと、を備えている。
【0009】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、鋼管の内部に配置された補強部材を、その長手方向に沿って鋼管の側壁に接合したことにより、従来技術(例えば、特許文献1)のように、鋼管の側壁にリブを点溶接する構成と比較して、鋼管の側壁の面外剛性が大きくなる。従って、鋼管の側壁の局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【0010】
また、本発明では、鋼管の側壁から補強部材が突出する構成であり、従来技術(例えば、特許文献2)のように、鋼管の内部を鉄板で仕切る構成ではない。従って、鋼管への充填コンクリートの充填作業の手間が低減されると共に、コンクリートの充填効率が向上する。従って、鋼管に対するコンクリート充填鋼管柱の施工性が向上する。
【0011】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記補強部材が、板状の補強リブであり、前記補強リブの先端部にフランジ部が設けられている。
【0012】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、補強リブの先端部にフランジ部を設けたことにより、フランジ部を有しない補強リブと比較して、鋼管の側壁の面外剛性が飛躍的に増加する。従って、鋼管の側壁の局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【0013】
請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1又は請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記補強部材が、前記鋼管の側壁に連続溶接又は断続溶接で接合されている。
【0014】
請求項3に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、鋼管の側壁に補強部材を連続溶接又は断続溶接で接合したことにより、従来技術(例えば、特許文献1)のように、鋼管の側壁にリブを点溶接する構成と比較して、鋼管の側壁の面外剛性が大きくなる。従って、鋼管の側壁の局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記の構成としたので、鋼管の側壁の局部座屈を抑制しつつ、施工性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す図1の平断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱を示す図1の縦断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図6】(A)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す図2に相当する平断面図であり、(B)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す斜視図である。
【図7】(A)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す図7(B)の7−7線断面図であり、(B)は、本発明の一実施形態における補強部材の変形例を示す図3に相当する平断面図である。
【図8】本発明の一実施形態における鋼管の変形例を示す図2に相当する平断面図である。
【図9】耐火試験の試験結果であり、加熱時間と鋼管の軸方向の変形量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Zは鋼管の軸方向を示している。
【0018】
図1及び図2には、一実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10の一部が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、例えば、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められる柱として好適に用いられるものである。
【0019】
コンクリート充填鋼管柱10は、鋼管12と、補強部材(補強リブ)としての縦補強リブ20と、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14を備えている。鋼管12は角形鋼管からなり、軸方向(矢印Z方向)を上下方向として、図示しない基礎等の上に立てられている。なお、鋼管12の外周部には耐火被覆が施されておらず、コンクリート充填鋼管柱10は、無耐火被覆のコンクリート充填鋼管柱(無耐火被覆CFT柱)とされている。
【0020】
鋼管12の各側壁12Aは、鋼管12の内部に配置された縦補強リブ20によって補強されている。縦補強リブ20は板状の鋼板で構成され、長手方向を鋼管12の軸方向にして鋼管12の内部に配置され、鋼管12の下端部から上端部に渡って設けられている。縦補強リブ20は、図2に示されるように、その幅方向の一端部20A(の端面)を鋼管12の側壁12A(の内面)の幅方向の中央部に略垂直に突き当てると共に、その幅方向の他端部20Bを鋼管12の内側へ向け、鋼管12の側壁12Aから突出した状態で配置されている。縦補強リブ20の一端部20A(接合端部)は、当該縦補強リブ20の長手方向に沿って鋼管12の側壁12Aに連続溶接されている。この連続溶接は、縦補強リブ20の長手方向の全長に渡っている。この縦補強リブ20によって、鋼管12の側壁12Aに面外剛性が付与されている。
【0021】
なお、縦補強リブ20は、対向する鋼管12の側壁12A間にまたがっておらず、対向する一方の側壁12Aに接合された状態で、対向する他の側壁12Aとの間に間隔が空けられている。つまり、縦補強リブ20の他端部20Bと対向する他の側壁12Aとは接触していない。
【0022】
充填コンクリート14は、鋼管12の内部に充填されたコンクリートが硬化したものであり、当該充填コンクリート14の外周部に縦補強リブ20が埋設されている。
【0023】
次に、本実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
【0024】
例えば、図3に示されるように、火災によってコンクリート充填鋼管柱10が矢印A方向から加熱されると、先ず、温度上昇に伴って鋼管12が熱膨張し、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)へ伸張すると共に、徐々に軟化して剛性が低下する。また、鋼管12の側壁12Aを介して、当該側壁12Aを内部から支持する充填コンクリート14の外周部に熱が伝達され、当該外周部の温度が上昇する。そして、充填コンクリート14の外周部の温度が所定温度(熱劣化温度)以上になると、充填コンクリート14の外周部が熱劣化する。これにより、充填コンクリート14の外周部が脆く、脆性的に破壊され易くなり、鋼管12の側壁12Aの支持強度が低下する。この結果、図中の二点鎖線で示されるように、温度上昇により剛性が低下した鋼管12の側壁12Aが面外方向へ凸状に湾曲し、局部座屈する。そして、鋼管12の側壁12Aが局部座屈すると、矢印Qで示されるように、内側へ凸状に湾曲した鋼管12の側壁12Aによって充填コンクリート14の外周部が押圧され、当該外周部が圧壊する。また、鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)に縮むため、鋼管12が負担していた軸力Fの一部が充填コンクリート14に導入され、充填コンクリート14の負担軸力が増加する。これにより、充填コンクリート14の外周部の圧壊が促進され、コンクリート充填鋼管柱10の耐力(軸耐力)が急激に低下し、最終的に破壊に至る。
【0025】
このように鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、充填コンクリート14が所定の耐力(火災時耐力)を発揮する前に、コンクリート充填鋼管柱10は、脆性的に崩壊してしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では、鋼管12の各側壁12Aの幅方向の中央部に、鋼管12の軸方向へ延びる縦補強リブ20を接合し、当該側壁12Aを補強している。これにより、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が増加するため、当該側壁12Aの局部座屈が抑制される。また、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を抑制することで、充填コンクリート14の外周部の圧壊も抑制される。
【0027】
このように本実施形態では、鋼管12の各側壁12Aを縦補強リブ20で補強することにより、火災時における鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱10が所定の耐力(軸耐力)を発揮可能になるため、コンクリート充填鋼管柱10の耐火性能が向上する。
【0028】
また、本実施形態では、縦補強リブ20の幅方向の一端部20Aが、当該縦補強リブ20の長手方向に沿って鋼管12の側壁12Aに連続溶接で接合されている。従って、従来技術(例えば、特許文献1)のように、鋼管の側壁にリブを点溶接する構成と比較して、鋼管12の側壁12Aと縦補強リブ20との一体性が向上するため、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が大きくなる。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈に対する抑制効果が向上する。
【0029】
更に、本実施形態は、鋼管12の側壁12Aから縦補強リブ20を突出させる構成であり、従来技術(例えば、特許文献2)のように、鋼管の内部を鉄板で仕切る構成ではない。従って、鋼管12への充填コンクリート14の充填作業の手間が低減されると共に、鋼管12に対する充填コンクリート14の充填効率が向上する。また、従来技術(例えば、特許文献2)のように、平面視にて十字形に組み合わされた2枚の鉄板を鋼管の内部に配置し、当該鋼管の内部を2枚の鉄板で仕切る構成では、鋼管の側壁に2枚の鉄板を溶接するための作業スペースが狭くなり、溶接作業に手間がかかる。これに対して本実施形態では、鋼管12の側壁12Aから縦補強リブ20が突出する構成であるため、溶接のための作用スペースを広く確保することができる。従って、コンクリート充填鋼管柱10の施工性が向上する。
【0030】
また、縦補強リブ20は、面外剛性が最も低い鋼管12の側壁12Aの中央部に設けられている。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を効率的に抑制することができる。更に、縦補強リブ20は、鋼管12の下端部から上端部に渡って設けられている。従って、鋼管12の軸方向の全域に渡って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を抑制することができる。
【0031】
次に、本実施系形態に係るコンクリート充填鋼管柱の変形例について説明する。
【0032】
上記実施形態では、補強部材として、板状の縦補強リブ20を用いたがこれに限らない。補強部材としては、例えば、図4(A)に示されるように、断面T字形状の縦補強部材24を用いても良い。縦補強部材24はT形鋼で構成され、補強リブとしてのウェブ部24Wとフランジ部24Fを備えている。ウェブ部24Wの幅方向の一端部は、鋼管12の側壁12Aの幅方向の中央部に略垂直に突き当てられ、当該縦補強部材24の長手方向に沿って鋼管12の側壁12Aに連続溶接で接合されている。また、鋼管12の側壁12Aから突出するウェブ部24Wの幅方向の他端部には、鋼管12の側壁12Aと対向するフランジ部24Fが設けられている。
【0033】
このように、縦補強部材24のフランジ部24Fを鋼管12の側壁12Aに対向させることにより、側壁12A及びフランジ部24Fの断面2次モーメントが、側壁12Aとフランジ部24Fとの中心線間の距離Lの二乗に比例して増加する。この結果、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が飛躍的に増加する。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈に対する抑制効果が向上する。
【0034】
また、図4(B)に示されるように、補強部材として、断面C字形状の縦補強部材26を用いても良い。縦補強部材26はC形鋼で構成され、補強リブとしてのウェブ部26Wと一対のフランジ部26F1,26F2を備えている。ウェブ部26Wの幅方向の一端部に設けられたフランジ部26F1は、鋼管12の側壁12Aの幅方向の中央部に重ねられ、当該縦補強部材26の長手方向に沿って鋼管12の側壁12Aに連続溶接で接合されている。また、ウェブ部26Wの幅方向の他端部(先端部)に設けられたフランジ部26F2は、鋼管12の側壁12Aと対向している。これにより、前述したように、側壁12A及びフランジ部26F2の断面2次モーメントが、側壁12Aとフランジ部26F2の中心線間の距離Lの二乗に比例して増加する。この結果、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が飛躍的に増加する。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈に対する抑制効果が向上する。
なお、図示を省略するが、フランジ部を備える補強部材として、L形鋼、H形鋼、I形鋼等を用いても良い。
【0035】
また、上記実施形態では、鋼管12の各側壁12Aの幅方向の中央部に縦補強リブ20を設けたが、縦補強リブ20を設ける位置は適宜変更可能である。また、上記実施形態では、鋼管12の各側壁12Aに対し、1つの縦補強リブ20を設けたが、鋼管12の各側壁12Aに対し、複数の縦補強リブ20を当該側壁12Aの幅方向に間隔を空けて設けても良い。更に、上記実施形態では、鋼管12の下端部から上端部に渡って縦補強リブ20を設けたが、長手方向の長さが短くされた複数の縦補強リブ20を、鋼管12の軸方向に間隔を空けて設けても良い。
【0036】
また、図5(A)に示されるように、縦補強リブ20の幅方向の他端部20B(先端部)に沿って鉄筋、PC鋼棒等の棒状部材28を設け、補強効果を向上させても良いし、図5(B)に示されるように、補強部材として鉄筋、PC鋼棒等の棒状部材30を用いても良い。また、図6(A)及び図6(B)に示されるように、鋼管12の各側壁12Aに対し、複数の棒状部材30を側壁12Aの幅方向に間隔を空けて配置し、これらの棒状部材30を連結部材32で連結しても良い。連結部材32は鉄筋、PC鋼棒等で構成され、棒状部材30と交差する方向に延びると共に、鋼管12の軸方向に間隔を空けて複数設けられている。これらの棒状部材30と連結部材32とは、各々の交差部において溶接等で接合されている。即ち、棒状部材30と連結部材32とは、格子状(網目状)に連結され、いわゆるメッシュ筋を構成している。
【0037】
このように、鋼管12の各側壁12Aに対し、複数の棒状部材30を接合すると共に、これらの棒状部材30を連結部材32で連結することにより、各側壁12Aに対する補強効果が向上する。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈に対する抑制効果が向上する。
【0038】
更に、上記実施形態では、縦補強リブ20を鋼管12の軸方向に沿って配置したが、例えば、鋼管12の軸方向に対して傾斜する方向に沿って縦補強リブ20を配置しても良い。また、図7(A)及び図7(B)に示されるように、鋼管12の周方向に沿って、補強部材としての横補強リブ22を配置しても良い。具体的には、横補強リブ22は板状の鋼板で構成され、長手方向を鋼管12の周方向(側壁12Aの幅方向)にして配置されている。また、横補強リブ22は、鋼管12の側壁12Aの幅方向の略全長に渡って設けられている。更に、横補強リブ22は、図7(B)に示されるように、各側壁12Aに対し、鋼管12の軸方向に間隔を空けて複数設けられている。この横補強リブ22によって鋼管12の側壁12Aに面外剛性を付与することにより、当該側壁12Aの局部座屈が抑制される。従って、上記と同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、ここでいう鋼管の周方向とは、角形鋼管のように複数の側壁を備える鋼管の場合は、横補強リブ22が接合される鋼管12の側壁12Aの幅方向に沿った方向を意味し、後述する丸形鋼管42(図8参照)のように断面円形形状の側壁を備える鋼管の場合は、側壁42Aに沿った円周方向を意味する。
【0040】
また、本変形例では、横補強リブ22を鋼管12の側壁12Aの幅方向の略全長に渡って設けたが、長手方向の長さが短くされた複数の横補強リブ22を、鋼管12の側壁12Aの幅方向の中央部や他の部位に設けても良い。また、鋼管12の各側壁12Aに接触される4枚の横補強リブ22を枠状に連結しても良い。更に、前述した縦補強リブと同様に、フランジ部を備えるT形鋼、C形鋼等で横補強リブ22を構成しても良い。
【0041】
更にまた、横補強リブ22は、鋼管12の仕口部(鉄骨梁との接合部)にも設けることができる。ここで、鋼管12の仕口部における側壁12Aには、内ダイアフラムが設けられることが多い。この内ダイアフラムは、鉄骨梁のフランジと連続するように設けられる。これに対して横補強リブ22は、鉄骨梁のフランジと連続させても良いし、連続させなくても良い。なお、横補強リブ22を鉄骨梁のフランジと連続させた場合は、横補強リブ22が内ダイアフラムとしても機能する。一方、鋼管12の仕口部は、前述した内ダイアフラム等によって一般に強固に補強されるため、他の部位と比較して側壁12Aが局部座屈し難い。従って、鋼管12の仕口部に横補強リブ22を設けずに、鋼管12の上下の仕口部間にのみ横補強リブ22を設けることで、コスト削減を図りつつ、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を効率的に抑制することができる。
【0042】
また、鋼管12の内部には、長手方向を鋼管12の軸方向にした縦補強リブ20と、長手方向を鋼管12の周方向にした横補強リブ22とを、適宜組み合わせて配置しても良い。
【0043】
更に、上記実施形態では、鋼管12として角形鋼管を用いたが、断面多角形の鋼管を用いても良い。更に、図8に示されるように、断面円形形状の丸形鋼管42を用いても良い。なお、図8に示す構成では、4つの縦補強リブ20が、その長手方向を鋼管12の軸方向にして鋼管12の内部に配置されている。また、鋼管として丸形鋼管を用いた場合は、丸形鋼管の側壁(の内面)に沿って、丸形鋼管の軸方向、丸形鋼管の周方向、又は丸形鋼管の中心軸を中心として螺旋状に延びる鉄筋等を設けても良い。更には、鋼管として、帯鋼を螺旋状に巻いて形成したスパイラル鋼管を用いた場合は、隣接する帯鋼の継目端部を溶接する溶接ビードをスパイラル鋼管の内面側に設けると共に、溶接ビードの厚みを増して、スパイラル鋼管と充填コンクリートの一体性を高めても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、補強部材としての縦補強リブ20の幅方向の一端部20Aを鋼管12の側壁12Aに、縦補強リブ20の全長に渡って連続溶接で接合したが、縦補強リブ20の全長に渡って溶接部と非溶接部とが交互に存在する断続溶接で接合しても良い。なお、この断続溶接には、縦補強リブ20と鋼管12の側壁12Aとの一部を溶接する点溶接は含まれない。前述した各種の変形例についても同様である。
【0045】
また、上記実施形態におけるコンクリート充填鋼管柱10には、必要に応じて耐火被覆を施しても良い。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、上記実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0047】
次に、耐火試験について説明する。
【0048】
本耐火試験では、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められるコンクリート充填鋼管柱において、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14の骨材が、耐火性能に与える影響を検証した。充填コンクリート14の骨材としては、従来から一般的に用いられている硬質砂岩骨材と、近年、広く用いられるようになってきた石灰岩骨材を用いた。
【0049】
耐火試験では、2つの試験体1,2に鉛直荷重(軸力比=0.4)を載荷しながら、試験体1,2をバーナーで加熱し、各試験体1,2の軸方向の変形量をそれぞれ測定した。試験体1は、石灰岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱であり、試験体2では、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱である。また、試験体1,2における角形鋼管の水平断面積は同一であり、これらの角形鋼管に充填されるコンクリートのコンクリート強度も略同一(呼び強度55N/mm、試験時強度70N/mm程度)である。
【0050】
図9には、耐火試験の試験結果が示されている。図中に実線で示す曲線は試験体1の試験結果であり、点線で示す曲線は試験体2の試験結果である。なお、図9における横軸は加熱時間(分)であり、縦軸は試験体1,2の軸方向の変形量(mm)である。この変形量(mm)は、各試験体1,2に鉛直荷重を載荷した状態をゼロとし、軸方向に伸びる方向を正、軸方向に縮む方向を負としている。
【0051】
図9に示される試験結果から、石灰岩骨材を用いた試験体1は、硬質砂岩骨材を用いた試験体2よりも早期に軸方向の変形量(縮み量)が大きくなり、急激に耐力が低下したことが分かる。これは、石灰岩骨材を用いた試験体1では、充填コンクリートの外周部が早期に熱劣化し、鋼管の側壁に局部座屈が発生したためと考えられる。石灰岩骨材を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートに比べ耐火性能が劣ることが知られている。試験体1は加熱によって熱劣化し、脆くなった鋼管周辺のコンクリートが、図3に示す鋼管の面外への変形を抑えることができなくなり、局部座屈によって脆性的に崩壊したものと思われる。このように負担軸力が大きいCFT柱(例えば軸力比0.3以上)に石灰岩のように脆い骨材を用いる場合は、充填コンクリートが十分な耐力を残している場合でも、鋼管の局部座屈によって早期に破壊が生じる。なお、骨材として安山岩、流紋岩を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートと同等以上の耐火性能を有することが知られている。従って、石灰岩骨材を用いたコンクリートは、安山岩、流紋岩を用いたコンクリートよりも早期に熱劣化するが分かる。
【0052】
一方、石灰岩は、硬質砂岩、安山岩、流紋岩等と比較して安価で、かつコンクリート強度の高強度化(設計基準強度で80N/mm程度まで)が可能であり、近年、広く用いられるようになっている。従って、上記実施形態及び各種の変形例は、前述した高い強度が求められ、かつ、充填コンクリートの骨材として石灰岩が用いられたコンクリート充填鋼管柱に特に有効であり、このようなコンクリート充填鋼管柱に上記実施形態及び各種の変形例を適用することで、コスト削減を図りつつ、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能を飛躍的に向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態及び各種の変形例は、充填コンクリートの骨材として硬質砂岩、安山岩、流紋岩等を用いたコンクリート充填鋼管柱や、一般的な強度のコンクリート充填鋼管柱にも、当然ながら適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 コンクリート充填鋼管柱
12 鋼管
12A 側壁
14 充填コンクリート
20 縦補強リブ(補強部材、補強リブ)
22 横補強リブ(補強部材、補強リブ)
24 縦補強部材(補強部材)
24W ウェブ部(補強リブ)
24F フランジ部
26 縦補強部材(補強部材)
26W ウェブ部(補強リブ)
26F2 フランジ部
28 棒状部材(補強部材)
30 棒状部材(補強部材)
42 丸形鋼管(鋼管)
42A 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、
前記鋼管の内部に、長手方向を前記鋼管の軸方向又は周方向にして配置されると共に、長手方向に沿って該鋼管の側壁に接合され、該側壁から突出する補強部材と、
前記鋼管に充填される充填コンクリートと、
を備えるコンクリート充填鋼管柱。
【請求項2】
前記補強部材が、板状の補強リブであり、
前記補強リブの先端部にフランジ部が設けられている請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱。
【請求項3】
前記補強部材が、前記鋼管の側壁に連続溶接又は断続溶接で接合されている請求項1又は請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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