説明

コンクリート型枠用根止め金具

【課題】径の異なる多種類の鉄筋の固定に対応でき、型枠のセパレーターに限らず他の各種金属部材の固定及び連結にも対応可能なコンクリート型枠用根止め金具を提供することを目的とする。
【解決手段】金具本体と、金具本体の基部に載置した鉄筋を固定する楔部材とを備え、金具本体は、基部となる受け凹部と、受け凹部の両側から対向立設した一対の支持片部を有し、一対の支持片部は受け凹部を横切る方向に対向して一対の楔ガイド孔を有するとともに、基部に載置する複数の異径鉄筋に対応して、それぞれ高さが異なる複数対の楔ガイド孔を有し、楔部材は、鉄筋押さえ込み部を挿入方向に沿って複数有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠用の根止め金具に関し、特に複数の径の異なる鉄筋に対して一つの金具で対応するのに効果的である。
【背景技術】
【0002】
コンクリート壁やコンクリート柱等の各種コンクリート構造物を構築する際には、まず鋳型となるコンクリート型枠を組み立てておき、その型枠内にコンクリートを打設してコンクリートの養生後に型枠を解体、取り外している。
通常、既設のコンクリートスラブから突出している鉄筋を利用し、根止め金具を用いてコンクリート型枠を固定したり、他の鉄筋を固定したりしている。
従って、根止め金具を固定する鉄筋は様々な径のものがあるため、施工業者はそれぞれの径の鉄筋に対応した根止め金具を在庫として備える必要があり、その種類別の在庫管理が大変であるのみならず、一部の種類の金具が欠けても施工が中断してしまう問題があった。
特開平10−280683号公報には、U型鋼板の金具を開示するが鉄筋の固定が不安定であり、同公報の図8、図9にはクサビ孔が2組開示するものの、具体的な使用方法の開示がない。
従って、その使用方法を推定すると鉄筋の太さや固定ボルトの挿入量によってクサビ孔を選定するものと思われるが、多くの種類の径の異なる鉄筋に対応できるものではない。
また、図14を用いてU字状断面金具の問題を説明する。
図14(a)に示すように、複数の径の異なる鉄筋に対応しようとすると、金具110の開口幅は、径の最も大きい鉄筋1aに合わせた円弧状の凹面123になる。
すると、図14(b)に示すように径の小さい鉄筋1dでは鉄筋1dの両側に隙間ができるが、金具の底部が緩やかな曲面になっているために、楔部材130の打ち込みによって、鉄筋1dが移動することになり、図14(c)に示すように鉄筋1dが安定せず、不十分な挟持状態となりやすい。
また、図14(d)に凹面123の開口側から見た状態を示すように、凹面123内で鉄筋1dが傾いた不安定な鉄筋の挟持状態となりやすく、楔部材130が緩んで金具110が鉄筋1dから外れる恐れもあった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−280683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、径の異なる多種類の鉄筋の固定に1つの金具で対応でき、型枠のセパレーターに限らず他の各種金属部材の固定及び連結にも対応可能なコンクリート型枠用根止め金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリート型枠用根止め金具は、金具本体と、金具本体の基部に載置した鉄筋を固定する楔部材とを備え、金具本体は、基部となる受け凹部と、受け凹部の両側から対向立設した一対の支持片部を有し、一対の支持片部は受け凹部を横切る方向に対向して一対の楔ガイド孔を有するとともに、基部に載置する複数の異径鉄筋に対応して、それぞれ高さが異なる複数対の楔ガイド孔を有し、楔部材は、鉄筋押さえ込み部を挿入方向に沿って複数有していることを特徴とする。
【0006】
楔部材は、鉄筋に押し付ける鉄筋押さえ込み部を挿入方向に沿って複数有することで鉄筋の長手方向に沿って少なくとも2点で固定することになり、鉄筋の挟持姿勢が安定し、鉄筋固定力が高い。
よって楔部材は、鉄筋押さえ込み部を2箇所以上設けてあれば、形状に限定がなく、例えば、鉄筋押さえ込み部を一対設けた断面略コ字形状、断面略M字形状あるいは断面略H字形状等の各種形状が考えられるが、プレス成形にて製作しやすい観点からは、コ字形状、M字形状であり、M字形状はコ字形状より強度の確保がしやすい。
鉄筋としては、一般的に表面に所定ピッチで凸部が形成されている異形鉄筋が使用されていることから、鉄筋押さえ込み部が長さ方向の異なる位置で鉄筋を押圧することで、鉄筋軸方向の外力に対して鉄筋押さえ込み部が凸部に係りやすくなり、挟持固定性が高くなる。
金具本体は径の異なる複数の種類の鉄筋に対応して、複数対の楔ガイド孔を有しているので一本の楔部材の差し込む楔ガイド孔を選ぶだけで、鉄筋を固定できる。
また、1つの楔ガイド孔に楔部材を上下逆に挿入することで異形鉄筋の太さをを選択することも可能であり、そのような場合には、楔ガイド孔は、楔部材の挿入高さを調整する高さ調整凸部を有し、楔部材は、断面略コ字形状又は断面略M字形状になっているとともに、コ字形状又はM字形状の両側のテーパ片部からなる2カ所の鉄筋押さえ込み部及び、当該両側のテーパ片部を繋いだ背面部に挿入方向に沿って複数の鉄筋押さえ込み部を有しているとよい。
ここで、楔ガイド孔に高さ調整凸部を設ける趣旨は、この高さ調整凸部に楔部材の背面部が接するように楔部材を挿入する場合と、楔部材を上下逆にして、高さ調整凸部の両側に形成される凹部に楔部材の両側のテーパ片部が入り込むように挿入する場合とを選択使用する趣旨である。
【0007】
請求項3記載に係るコンクリート型枠用根止め金具は、受け凹部は、略V字形状に形成してあることを特徴とする。
鉄筋を受ける受け面を、略直線状の傾斜面を対称に繋げた略V字形状に形成してあることで、楔部材に押圧された鉄筋を略V字形状の最深部方向に誘導する作用が生じ、小さな径の鉄筋も安定して固定できる。
【0008】
請求項4記載に係るコンクリート型枠用根止め金具は、支持片部の一部を切り欠いて折り曲げにより溶接用片部を形成してあることを特徴とする。
【0009】
このように、金具本体の支持片部に、切り込みや切り欠きを入れて折曲げで形成した溶接用片部を設けると、鉄筋が直接的に当接する金具本体の基部から離れたこの溶接用片部で他の金属部材を溶接連結できる。
従って、溶接時に発生する熱で鉄筋がなまされるのを防止できる。
金属部材の溶接用片部への溶接は、金具本体を鉄筋に挟持固定した状態で金属部材を望ましい方向に向けて行えばよい。
溶接用片部は、一方の支持片部のみに設けても両方の支持片部に設けてもよく、両方の支持片部に設けると金属部材の取付け向きをほぼ全周に亘って自由に選択可能になる。
また、ここで溶接用片部は溶接しやすいように、支持片部から折り曲げたものであり、主に溶接片部で他の金属部材を溶接する趣旨であって、支持片部の上部や端面にも溶接することは可能であり、その方が溶接強度の確保がしやすい。
また、金具本体の受け凹部の裏面に溶接用エンボス凸部を形成することで鉄筋と溶接部の間に隙間を形成し、鉄筋に溶接熱の影響が及ばないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコンクリート型枠用根止め金具においては、楔部材に複数の鉄筋押さえ込み部を設けたので、鉄筋を長手方向の少なくとも2ヶ所で挟持固定するため、鉄筋の固定強度が高い。
特に、所定ピッチで凸部が形成してある異形鉄筋に用いると、鉄筋押さえ込み部が凸部に係りやすいので、鉄筋軸方向の外力に対する挟持固定強度が高い。
また、1つの金具本体に基部から高さの異なる複数の楔ガイド孔を有しているので、1つの楔部材と1つの金具本体の組み合せからなる1つの金具で、複数の異なる径の鉄筋の固定に対応できる。
さらには、楔部材の形状を断面略コ字形状又は断面略M字形状にし、楔ガイド孔に高さ調整用凸部を形成すると、楔部材の挿入方法を両側のテーパ片部を繋いだ背面部の位置が上面となる場合と下面になる場合に切り換えることで1つの楔ガイド孔で少なくとも2種の異なる径の鉄筋を、楔部材の全長を長くしなくても固定できる。
【0011】
請求項3記載に係るコンクリート型枠用根止め金具においては、金具の開口幅より径が小さい鉄筋であっても略V字形状の最深部に誘導するように落とし込むために安定して位置決め固定できる。
よって、従来のように特に鉄筋の径が小さい場合に鉄筋がズレてしまうことが防止でき、径の異なる鉄筋を確実に取付けできる。
以上により、一種類の根止め金具で径が異なる複数の鉄筋に対応できるようになり、根止め金具の製造から保管管理、搬送、現場の使用に亘ってコスト低減を図ることができる。
【0012】
請求項4記載に係るコンクリート型枠用根止め金具においては、溶接用片部を支持片部に設けたので、セパレーター等の任意の金属部材を選択可能に取り付けることができる。
そして、金属部材の取付け向きは溶接可能な範囲内において自由に設定できるため、現場合わせしやすい。
溶接用片部は、金具本体の成型の際に切り込みや切り欠きを入れることによって設けることができるため、セパレーター等の金属部材の固定専用部としての新たな設計や製造工程をほとんど必要とせず容易に成型することができ、金具本体の大型化や部品点数の増加を生じることなく簡便な構成であると共に低コストで製造できる。
主に溶接用片部を用いて、溶接可能なものであれば様々な金属部品あるいは部品取付け用ナット部材等を金具本体に溶接固定することができるため、本発明の根止め金具は、セパレーターはもちろんコンクリート型枠の組立てにおいて必要とされる各種部品の取付けに対応することができる。
また、金具本体の受け凹部の裏面に溶接用エンボス凸部を形成すると鉄筋の近くであっても鉄筋に与える溶接熱影響を抑えつつ、高強度に溶接止めが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に関するコンクリート型枠用根止め金具10の説明図で、図1(a)は根止め金具10の斜視図を示す。
根止め金具10は、金具本体20と楔部材30とを備えている。
金具本体20は金属板材を曲げて折り返した一体構造で、断面略V字形状の受け凹部21と受け凹部21の両側から互いに平行に対向立設するように延出した一対の支持片部24とを有している。
受け凹部21の内側には断面略V字形状の溝状にした受け面23が設けてある。
この受け面23には後述するように溝状の長手方向に固定対象の鉄筋の長手方向を合わせて鉄筋を載置し、楔部材30を打ち込み挟持固定する。
それぞれの支持片部24には、受け凹部21を横切る方向に対向して、第1楔ガイド孔25a、第2楔ガイド孔25b、第3楔ガイド孔25c、第4楔ガイド孔25d、及び溶接用片部26とが設けてある。
第1楔ガイド孔25a、第2楔ガイド孔25b、第3楔ガイド孔25c、第4楔ガイド孔25dは、それぞれ両方の支持片部24に対向して設けたものが対となっていて、受け面23に載置した状態の鉄筋の長手方向に相互の間を隔てて配置してある。
なお、図1に示した実施例は4種類の径の異なる鉄筋に対応できる金具の例を示したもので、楔ガイド孔の数は4つに限定されない。
溶接用片部26は支持片部24の上部を切り欠いた金属片部を外向きに折り曲げて形成してある。
楔部材30は、楔ベース部31の両側から互いに平行に一対の鉄筋押さえ込み部32を下垂させた下向き開口の断面略コ字状に形成してある。
鉄筋押さえ込み部32の下縁は楔部材30の長手方向の先端30aから後端30bにかけて鉄筋押さえ込み部32の高さ方向幅を大きくするように傾斜したテーパ片部33としてある。
図2(a)は支持片部24同士が重なる方向に金具本体20と、楔部材30を見た状態を示す。
第1楔ガイド孔25a、第2楔ガイド孔25b、第3楔ガイド孔25c、第4楔ガイド孔25dは、それぞれ楔部材30を先端30aからガイドして通すように楔部材30の外形に対応させた矩形状で両方の支持片部24を連通している。
図1(b)は、取付け対象の鉄筋の長さ方向における溶接用片部26側から金具本体20を見た状態を示す。
受け凹部21は、支持片部24と反対側に膨らむ断面略V字形状で、中央に外向き山形の折曲げ部22を設けて内側には、対向する略直線状傾斜面23bの間に最深部23aを有する断面略V字形状とした受け面23を形成してある。
受け面23は金属板材を断面V字形状に曲げ加工する上で必要な曲面を有していてもよい。
図1(c)は根止め金具10を異形鉄筋1aに挟持固定して取り付けた状態を示す。
異形鉄筋(以下、鉄筋と称する)1aは表面長さ方向に所定ピッチで凸部1eを形成してある。
根止め金具10の鉄筋1aへの取付けは、先ず、鉄筋1aの長さ方向と受け面23の溝状の長さ方向とを揃えて、鉄筋1aを支持片部24同士の間から受け凹部21の受け面23に挿入載置する。
そして鉄筋1aの径の大きさに対応して設けてある楔ガイド孔25aに一方の支持片部24側から他方の支持片部24側に、受け凹部21を横切って渡るように楔部材30を先端30aから挿入し、後端30bを打ち込んで、楔部材30のテーパ片部33と受け面23との間に楔作用で鉄筋1aを挟持固定する。
図1(d)は、根止め金具10を鉄筋1aへ取り付けた状態の斜視図を示す。
楔部材30は、挿入方向に沿って固定対象の鉄筋側に突出している一対の鉄筋押さえ込み部32のそれぞれのテーパ片部33で、鉄筋1aを押圧して鉄筋1aを受け面23との間に挟持固定する。
テーパ片部33の楔ベース部31に対する角度θは例えば約3〜7°の範囲に設定するのがよく、好ましくは5〜6°の範囲内にすると良い。
角度θを大きくすると楔が緩みやすく、角度θが小さいと楔部材の全長が長くなるからである。
楔部材30は、一対の鉄筋抑え込み部32で鉄筋1aの長さ方向において離れた位置を押圧することで、鉄筋1aを安定して挟持しつつ、鉄筋長さ方向の外力を受けた時に鉄筋1aに所定ピッチで設けてある凸部1dに鉄筋押さえ込み部32が係りやすくなり、鉄筋長さ方向の外力に対しての挟持固定強度が高い。
両方の支持片部24は同形状で対向立設してあるので、楔部材30はいずれの支持片部24の側から挿入して打ち込んでもよい。
径が異なる多種類の鉄筋に根止め金具を固定する構造については、後述する。
【0014】
図1(e)は鉄筋1aに取り付けた根止め金具10の溶接用片部26に、セパレーター2を溶接で取り付けた状態を示す。
溶接用片部26には、セパレーター2に限らずコンクリート型枠の組立てにおいて必要とされる各種の金属部材を溶接で取り付ければよい。
溶接用片部26は、溶接しやすくするとともに溶接時の熱が鉄筋に伝わって鉄筋強度を低下させないようにするのが目的であり、鉄筋を載置する基部である受け凹部21とは支持片24において反対側の支持片24の上部に設けてある。
セパレーター等の金属部材の溶接用片部26への取付けは、例えば図5(a)、(b)、(c)に示すように、溶接ができる範囲内において必要な方向に自由に設定して端部などを溶接すればよく、また、一方の支持片部24に設けた溶接用片部26のみに溶接するものでも、両方の溶接用片部26に跨るように溶接するものでもよい。
そして、一方の支持片部にのみ金属部材を取り付ける場合には、金属部材を取り付けない側の支持片部を、図5(c)に示すように溶接用片部を設けない支持片部24aとしてもよい。
また、溶接片部26を主に用いる趣旨であり、例えば図5(a)に示すように支持片部24の切り欠き端部24eや図4(a)に示すように支持片部24の上部24uにも溶接片部と合せて溶接すると強度が得やすい。
セパレーター2のボルト2aを設けてある側の端部は、例えばコーン(図示省略)をボルト2aに螺合して、このボルト2aをコンクリート型枠(図示省略)の貫通孔に通し、コーン位置を所定の型枠位置になるように調整した上で、締付金具(図示省略)を貫通孔の外側からボルト2aにねじ込み固定して、鉄筋と型枠とを根止め金具を介して固定する。
金具本体における楔ガイド孔の配置は限定されず、例えば図6(a)に示す金具本体20aのように第1楔ガイド孔25a、第2楔ガイド孔25b、第3楔ガイド孔25c、第4楔ガイド孔25dの、それぞれの受け凹部21からの距離を、鉄筋の長さ方向に沿って徐変させる配置でもよい。
図6(b)は金具本体20aに挿入載置した鉄筋1aを楔部材30で挟持固定して、セパレーター2を金具本体20aに溶接して取り付けた状態を示す。
また、楔部材は挿入方向に沿った複数の鉄筋押さえ込み部32を有していれば、金属板材を折り曲げた断面略コ字形状に限定されず、例えば図7に示す楔部材30cように楔ベース部31に長さ方向の谷形の折れ部31aを設けて断面略M字形状として強度を高めたり、あるいは断面略H字形状としてもよい。
【0015】
図2(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ径がφa、φb、φc、φd(φa>φb>φc>φd)と異なる鉄筋1a、1b、1c、1dを受け凹部21の受け面23上に載置した状態を支持片部24同士が重なる方向に見た説明図を示す。
鉄筋1a、1b、1c、1dはそれぞれ例えば呼び径が、22mm、19mm、16mm、13mmと異なっている。
第1楔ガイド孔25aの矩形状の上縁25gにおける受け面23の最深部23aからの高さhaは、鉄筋1aを受け凹部21に載置した状態で楔部材30を挿入して打ち込む際に楔ベース部31をガイドすることで楔部材30のテーパ片部33が鉄筋1aの側面に押圧する高さに設定してある。
そして、第1楔ガイド孔25aの矩形状の下縁25hにおける受け面最深部23aからの高さhaは挿入して打ち込む楔部材30と干渉しない高さに設定してある。
同様に、第2楔ガイド孔25bは鉄筋1bに対応して矩形状の上縁高さをhbとして、矩形状の下縁高さをhbとし、第3楔ガイド孔25cは鉄筋1cに対応して矩形状の上縁高さをhcとして、矩形状の下縁高さをhcとし、第4楔ガイド孔25dは鉄筋1dに対応して矩形状の上縁高さをhdとして、矩形状の下縁高さをhdとして、それぞれ楔部材30を挿入して打ち込むことで対応する鉄筋を挟持固定できるように設定してある。
【0016】
図3(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ径が異なる鉄筋1a、1b、1c、1dを受け凹部21に載置した状態を鉄筋長さ方向に見た説明図を示す。
分かりやすくするため、鉄筋は表面に設けてある凸部部分の最大外径部の断面を描いてある。
受け凹部21の内側の受け面23は略V字形状に形成してあるので、楔部材30を楔ガイド孔に挿入して打ち込むと、楔部材30のテーパ片部33はそれぞれの鉄筋を受け面23方向に押し付け、受け面23は略V字形状の最深部23a方向へ鉄筋を誘導する。
受け面23の略V字形状の開き角度は、楔部材に押圧された鉄筋の側面を受けて、鉄筋が挟持固定状態となるまで最深部23a方向に誘導できるものであれば限定されないが、例えば最深部23aの両側の略直線状傾斜面23b同士の内角を約120°程度にするとよい。
支持片部24同士の間隔は、径が異なる他種類の鉄筋に対応する都合上、最も径が大きい種類の鉄筋の凸部を含めた最大外径に合わせてある。
受け面23は、略V字形状における略直線状の傾斜面23bで鉄筋をガイドするため、鉄筋のガイド方向は、径の大きい鉄筋1aから径の小さい鉄筋1dまで鉄筋の径に依らない略直線状傾斜面23bに沿った方向となる。
よって、鉄筋の径の違いによる楔部材の挿入と打ち込みに伴った鉄筋のズレ易さの差を小さくして、従来のように特に径の小さい鉄筋が位置ズレすることを防止してある。
テーパ片部33により受け面23の最深部23aへ向けて押し付けられた鉄筋は、受け面の略V字形状で受けた状態で位置決めされて、テーパ片部33と受け面23との間で挟持固定状態となる。
受け面23は、中央の最深部23aを挟んで対称に形成してあるので、支持片部24のいずれ側から楔部材30をを挿入して打ち込んでも同様に鉄筋を挟持固定できる。
図4(a)、(b)、(c)は、根止め金具10でそれぞれ径が異なる鉄筋1b、1c、1dを挟持固定した状態の斜視図を示す。
【0017】
図8は、径が異なる鉄筋を1対の楔ガイド孔で対応する別の根止め金具10aの実施例の説明図を示す。
図8(a)は根止め金具10aの斜視図を示す。
金具本体20bには2対の楔ガイド孔25e、25fが設けてある。
図8(b)、図8(c)は金具本体20bにそれぞれ鉄筋1c、1dを挿入載置し、楔ガイド孔25fに楔部材30を挿入して打ち込んだ状態を示す。
根止め金具10aは、楔ガイド孔25eに挿入して打ち込んだ楔部材30のテーパー部33の先端側から後端側にかけての異なる位置で押圧することで、径の異なる鉄筋を挟持固定できる。
図9(a)、(b)、(c)、(d)は、根止め金具10aで径がそれぞれ異なる鉄筋を挟持固定した状態を示す。
【0018】
図10は、断面形状略コ字形状の楔部材32の両側のテーパ片部33を繋いだベース部(背面部)31に楔部材挿入方向の背面凹部34をプレス加工等で形成し、この背面部に挿入方向に沿って2本の鉄筋押さえ込み部32a,32aを形成した例を示す。
このような楔部材に対応するガイド孔25a,25bにはそれぞれ鉄筋固定高さ調整用の高さ調整用凸部27a,27bを設けてある。
なお、高さ調整凸部27a,27bの両側には凹部28a,28bが形成される。
このタイプの楔部材の鉄筋挿入方向正面図を図11(a)に示し、その側面図を図11(b),底面図を図11(c)にそれぞれ示す。
このタイプの根止め金具を用いて鉄筋を固定する例を図12に示す。
例えば図12(a)には、楔部材30の背面部31を楔ガイド孔25bの高さ調整凸部27bに当てるようにこの楔部材30を打ち込み、例えば呼び径13mmの鉄筋1dと金具本体20を連結する例を示し、同じ楔ガイド孔25bを用いて楔部材30の背面部31を上下逆にし、テーパ状の鉄筋押さえ込み部のテーパ片部33を高さ調整凸部の両側に設けた逃げ部となる凹部28a,28bに呑み込ませるように打ち込み、例えば呼び径16mmの鉄筋1cと金具本体とを固定した例を図12(b)に示す。
これにより、1つの同じ楔ガイド孔を用いて、楔部材30の全長を図8,図9のように長くしなくても、異なる径の鉄筋と連結できる。
本実施例では、楔ガイド孔25aで、呼び径21mmと19mmの鉄筋にも対応できる例を示したが、さらに径の大きい鉄筋にも対応できるのはいうまでもない。
また、逃げ部となる凹部28a,28bの深さを調整することで、本実施例とは異なる径の組み合わせも可能である。
図10〜図12に示した実施例では、金具本体20の受け面23にプレス加工等にて係止凸部23cを形成した例を示す。
係止凸部23cは、略V字形状に形成した受け凹部の23の両側の傾斜面23bにそれぞれ載置する鉄筋とは直交する方向に、内側が突出した断面V字形状になっている。
また、この傾斜面23bの両側に設けた係止凸部23cの頂面と頂面とは最深部23aに向けてV字状になっている。
これにより、鉄筋の長手方向の滑りを防止する。
本実施例では、図11に示すように左右一対の係止凸部23cを金具本体20に3箇所に設けた例を示し、数に限定はないが複数設けると鉄筋の滑止効果が向上するだけでなく、エンボス加工により金具本体の強度も向上する。
【0019】
図13に、金具本体20の受け凹部21の裏面(外側)に溶接用エンボス凸部を形成することで鉄筋と溶接部の間に隙間を形成し、鉄筋に溶接熱の影響が及ばないようにしたタイプの金具本体20を用いてセパレーター2を溶接する例を示す。
溶接用エンボス凸部29a,29b,29c,29dは、図11に示すようにプレス加工等で形成し、本実施例では、4つのエンボス凸部の間に形成された十字状の凹部を用いて鉄筋と平行又は直交方向に溶接ができるようになっている。
このように、受け凹部21にエンボス加工で凸部を形成すると、エンボス加工の内側と外側に空間ができ、凸部と凸部の間にセパレータ2を配置し基部から浮くように溶接することができ鉄筋が焼きなまされるのを効果的に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に関するコンクリート型枠用根止め金具の説明図を示す。
【図2】(a)は支持片部同士が重なる方向に金具本体と楔部材を見た状態を示し、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ径の異なる鉄筋を受け凹部に載置して支持片部同士が重なる方向に見た状態を示す。
【図3】径が異なる鉄筋を受け凹部に載置した状態を鉄筋長さ方向に見た説明図を示す。
【図4】根止め金具で径が異なる鉄筋を挟持固定した状態の斜視図を示す。
【図5】セパレーターの溶接片部への取付けの向きを異ならせた状態を示す。
【図6】楔ガイド孔の配置を異ならせた根止め金具の実施例を示す。
【図7】断面略M字状とした楔部材を示す。
【図8】径が異なる鉄筋を一対の楔ガイド孔で対応する根止め金具の説明図を示す。
【図9】根止め金具で径が異なる鉄筋を挟持固定した状態の斜視図を示す。
【図10】1つの楔ガイド孔に上下逆に楔部材を挿入する例を示す。
【図11】楔ガイド孔に高さ調整凸部を形成した例を示す。
【図12】楔部材にて鉄筋と金具本体を固定する例を示す。
【図13】金具本体の受け凹部裏面に溶接用エンボス凸部を形成した例を示す。
【図14】従来の根止め金具を示す。
【符号の説明】
【0021】
1a、1b、1c、1d 固定対象の鉄筋
1e 凸部
2 セパレーター(他の金属部材)
2a ボルト
10、10a コンクリート型枠用根止め金具
20、20a、20b 金具本体
21 受け凹部
22 折曲げ部
23 受け面
23a 最深部
24、24a 支持片部
25a 第1楔ガイド孔
25b 第2楔ガイド孔
25c 第3楔ガイド孔
25d 第4楔ガイド孔
25e、25f 楔ガイド孔
25g 楔ガイド孔の上縁
25h 楔ガイド孔の下縁
26 溶接用片部
29a、29b、29c、29d 溶接用エンボス凸部
30、30c 楔部材
30a 楔部材先端
30b 楔部材後端
31 楔のベース部(背面部)
31a 谷形の折れ部
32 鉄筋押さえ込み部
32a 背面部の鉄筋押さえ込み部
33 テーパ片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金具本体と、金具本体の基部に載置した鉄筋を固定する楔部材とを備え、
金具本体は、基部となる受け凹部と、受け凹部の両側から対向立設した一対の支持片部を有し、
一対の支持片部は受け凹部を横切る方向に対向して一対の楔ガイド孔を有するとともに、基部に載置する複数の異径鉄筋に対応して、それぞれ高さが異なる複数対の楔ガイド孔を有し、
楔部材は、鉄筋押さえ込み部を挿入方向に沿って複数有していることを特徴とするコンクリート型枠用根止め金具。
【請求項2】
楔ガイド孔は、楔部材の挿入高さを調整する高さ調整凸部を有し、
楔部材は、断面略コ字形状又は断面略M字形状になっているとともに背面部に、挿入方向に沿って複数の鉄筋押さえ込み部を有していることを特徴とする請求項1記載のコンクリート型枠用根止め金具。
【請求項3】
受け凹部は、略V字形状に形成してあることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート型枠用根止め金具。
【請求項4】
支持片部の一部を切り欠いて折り曲げにより溶接用片部を形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート型枠用根止め金具。
【請求項5】
金具本体は、受け凹部の裏面に溶接用エンボス凸部を形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート型枠用根止め金具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate