説明

コンクリート打設工法

【課題】1次コンクリートを打設してから2次コンクリートを打継ぐまでの可使時間を確保し、1次コンクリートと2次コンクリートとの打継ぎ面の付着強度が優れたコンクリート打設工法を提供する。
【解決手段】1次コンクリートに2次コンクリートを打継ぐコンクリート打設工法であって、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐことを特徴とするコンクリート打設工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設工法に関する。特に、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる打継ぎ処理剤を用いるコンクリート打設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
1次コンクリートに2次コンクリートを打継いで構造物を構築する際には、打継ぎ部が脆弱点となる場合が多く、したがって、打設された1次コンクリートの表面にエポキシ系樹脂などの接着剤を塗布し、その後2次コンクリートを打継ぐ工法が知られている。しかしながら、エポキシ系樹脂接着剤を用いる場合には、1次コンクリートにエポキシ系樹脂接着剤を塗布してから、2次コンクリートを打継ぐまでの可使時間が短く、施工タイミングを考慮しなければならず、作業上問題がある場合が多かった。
【0003】
一方、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面に凝結遅延剤を添加して、表面が硬化する前に2次コンクリートを打継ぐ工法が知られている。例えば、特開2001−140468号公報(特許文献1)には、1層目のコンクリートを打設した後、この表面に凝結遅延剤を添加し、この表面が硬化する前に急結剤を添加した後、更に2層目のコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート打設工法について記載されている。このコンクリート打設工法によれば、1層目のコンクリートの表面部分に凝結遅延剤が浸透し、2層目のコンクリートが打継がれるまでその部分の硬化を遅らせることができるとされている。また、2層目のコンクリートを打継ぐ前に、1層目の表面に急結剤を添加するため、1層目の表面が急速に硬化し始めることとなり、1層目と2層目がほとんど一緒に凝結を開始し、両者の界面が融合して早期に付着強度が確保できるとされている。
【0004】
しかしながら、急結剤を添加してから2層目のコンクリートを打継ぐまでの可使時間が短いため、必ずしも作業性が良好ではなく改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−140468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、1次コンクリートを打設してから2次コンクリートを打継ぐまでの可使時間が確保され、かつ1次コンクリートと2次コンクリートとの打継ぎ面の付着強度が優れたコンクリート打設工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、1次コンクリートに2次コンクリートを打継ぐコンクリート打設工法であって、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐことを特徴とするコンクリート打設工法を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、前記打継ぎ処理剤がカルボン酸を含有することが好適であり、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面を洗浄することが好適である。また、1次コンクリートを打設してから打継ぎ処理剤を塗布するまでの時間が12時間〜30日の範囲にあることが好適であり、打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐまでの時間が0.5時間以上であることが好適である。また、前記打継ぎ処理剤を1回の塗布操作につき0.1〜0.6kg/m塗布することが好適であり、前記打継ぎ処理剤を固形分換算で10〜200g/m塗布することも好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート打設工法によれば、1次コンクリートを打設してから2次コンクリートを打継ぐまでの可使時間を確保することができるため、作業性が良好であるとともに1次コンクリートと2次コンクリートとの打継ぎ面の付着強度が優れている。したがって、打継ぎ面が安定した構造物を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のコンクリート打設工法は、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐことを特徴とするものである。
【0011】
本発明で用いられる打継ぎ処理剤は、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなるものである。アルカリ金属ケイ酸塩のカチオン種としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが例示されるが、入手の容易さやコストの面などからナトリウムイオンであることが好ましい。また、アルカリ金属ケイ酸塩のアニオン種も特に限定されず、オルトケイ酸アニオン[SiO4−]やメタケイ酸アニオン[SiO2−]などのアニオン種のみならず、ケイ酸[SiO]単位が複数個連結してアニオン種を形成したものであっても良い。
【0012】
具体的な化合物としては、オルトケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カリウム、オルトケイ酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸リチウム、水ガラスなどが例示される。
【0013】
中でも本発明で好適に使用されるのは水ガラスである。水ガラスはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液であって、ケイ酸[SiO]単位が複数個連結してアニオン種を形成したものである。ここで使用されるアルカリ金属はカリウムの場合もあるが、ナトリウムであることが好ましい。ケイ酸ナトリウムの場合の固形分の一般式はNaO・nSiOで示される。
【0014】
ケイ酸塩中の金属原子数とケイ素原子数の比[金属/ケイ素]は0.1〜2の範囲であることが好ましい。前記比[金属/ケイ素]が0.1未満の場合には、水溶性が低下するおそれがあり、より好適には0.2以上であり、更に好適には0.3以上である。一方、前記比[金属/ケイ素]が2を超える場合には、硬化のために大量のカルシウム分が必要となり、硬化性が低下するおそれがあり、より好適には1.5以下であり、更に好適には1以下である。
【0015】
本発明で用いられる打継ぎ処理剤の比重は、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が高いほど大きくなる。打継ぎ処理剤の好適な比重は1.05〜1.4である。このような濃度とすることによって、1次コンクリートの表面に十分な量のアルカリ金属ケイ酸塩を浸透させることができる。比重はより好適には1.1以上であり、更に好適には1.15以上である。一方、より好適には1.35以下であり、更に好適には1.3以下である。
【0016】
本発明で用いられる打継ぎ処理剤は、カルボン酸を含有することが好ましい。このことにより前記アルカリ金属ケイ酸塩の一部が中和され、打継ぎ処理剤のpHが高くなりすぎない。このような打継ぎ処理剤を1次コンクリートの表面に塗布した場合には、2次コンクリートを打継ぐまでの作業時間を十分に確保することができるとともに、1次コンクリートと2次コンクリートとの接着性が優れている。
【0017】
用いられるカルボン酸は特に限定されず、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸;グリコール酸、乳酸、グルコン酸などのオキシモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸などの多価カルボン酸;リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシ多価カルボン酸;アクリル酸重合体、無水マレイン酸重合体などの多価カルボン酸重合体などを使用することができる。これらの中でも揮発性が低く、水溶性の良好なオキシカルボン酸や多価カルボン酸が好適であり、多価カルボン酸がより好適である。マレイン酸、フマル酸のような不飽和多価カルボン酸も好適である。
【0018】
本発明で用いられる打継ぎ処理剤にカルボン酸を配合する場合、ケイ酸塩中の金属原子数とカルボン酸中のカルボキシル基の数との比[金属/カルボキシル基]は1〜200であることが好適である。前記比[金属/カルボキシル基]が1未満の場合には、ケイ酸成分が水に溶解しにくくなり、ケイ酸塩とカルボン酸を水の存在下で混合する際に、不溶物が発生して均一に混合できないおそれがあり、より好適には2以上であり、更に好適には5以上であり、最適には10以上である。一方、前記比[金属/カルボキシル基]が200を超えると、硬化のために大量のカルシウム分が必要となり、硬化性が低下するおそれがあり、より好適には100以下であり、更に好適には50以下である。
【0019】
本発明で用いられる打継ぎ処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の成分を含有しても構わない。しかしながら、不溶成分を実質的に含有しない均一な水溶液であることが好ましい。
【0020】
以上、本発明で用いられる打継ぎ処理剤について説明した。以下、この打継ぎ処理剤を用いてコンクリートを打設する方法について説明する。
【0021】
本発明のコンクリート打設工法では、1次コンクリートを打設してから打継ぎ処理剤を塗布するまでの時間が12時間〜30日の範囲にあることが好ましい。前記時間が12時間未満の場合、打設された1次コンクリートが硬化していないおそれがあり、より好適には15時間以上である。一方、前記時間が30日を超える場合、2次コンクリートを打継いだ際に1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがあり、より好適には14日以下であり、更に好適には7日以下である。本発明者らは、1次コンクリートを打設してから長期間打継ぎ処理剤を塗布しない場合には、1次コンクリートの表面の硬化が進行してしまい、打継ぎ処理剤による効果が小さいことを確認している。
【0022】
本発明のコンクリート打設工法では、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面に前記打継ぎ処理剤を塗布するが、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面を洗浄することが好ましい。このことにより、1次コンクリートの表面にあるレイタンスやゴミ等を除去することができ、2次コンクリートとの良好な接合状態を確保することができる。洗浄する方法は特に限定されず、高圧洗浄機やワイヤーブラシ等を用いることができる。本発明では、1次コンクリートを打設してから、該1次コンクリートの表面を洗浄するまでの時間は、6時間〜3日であることが好ましい。前記時間が6時間未満の場合、コンクリートの洗浄面が将来的に強度不足となるおそれがあり、より好適には10時間以上である。一方、前記時間が3日を超える場合、コンクリートの表面にあるレイタンス等を除去するためのエネルギーが多く必要とされるおそれがあり、より好適には1日以下である。
【0023】
上記打継ぎ処理剤を塗布する方法は特に限定されず、スプレーやブラシ等で塗布してもよいし、そのまま流し込んでもよいが、1次コンクリートの表面に打継ぎ処理剤の溜まりが生じると1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがある。1次コンクリートの表面に対して打継ぎ処理剤が均一に塗布されていることが重要であり、このことにより、2次コンクリートを打継いだ際の1次コンクリートと2次コンクリートとの接着性が良好となる。また、上記打継ぎ処理剤を塗布する回数は特に限定されず、1回で塗布してもよいし、複数回で塗布してもよい。
【0024】
上記打継ぎ処理剤の塗布量は、1次コンクリートの表面に十分に浸透する量であれば特に限定されず、上記打継ぎ処理剤を1回の塗布操作につき0.1〜0.6kg/m塗布することが好ましい。塗布量が0.1kg/m未満の場合、1次コンクリートの表面に均一に塗布する操作が困難となるとともに、1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがあり、より好適には0.15kg/m以上である。一方、塗布量が0.6kg/mを超える場合、1次コンクリートの表面に打継ぎ処理剤の溜まりが生じて1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがあり、より好適には0.5kg/m以下である。上記打継ぎ処理剤を塗布する回数は特に限定されず、1回で塗布してもよいし、複数回で塗布してもよい。本発明者らは、1次コンクリートの表面に打継ぎ処理剤の溜まりが生じた際に、該1次コンクリートに2次コンクリートを打継ぐことにより得られる供試体に対して垂直打継ぎ面に対する曲げ強度試験を行った場合、打継ぎ面で破断してしまうことを確認している。
【0025】
また、本発明のコンクリート打設工法では、上記打継ぎ処理剤を固形分換算で10〜200g/m塗布することが好適である。塗布量が10g/m未満の場合、1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがあり、より好適には30g/m以上である。一方、塗布量が200g/mを超える場合、1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が低下するおそれがあり、より好適には150g/m以下である。
【0026】
本発明のコンクリート打設工法では、打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐ工法を採用しているが、打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐまでの時間が0.5時間以上であることが好ましい。このことにより、打継ぎ処理剤を塗布した直後に2次コンクリートを打継ぐ必要がなく、任意のタイミングで2次コンクリートを打継ぐことができるため、作業性が良好なコンクリート打設工法を提供することができる。前記時間は、3時間以上であることがより好ましく、24時間以上であることが更に好ましく、3日以上であることが特に好ましい。このことにより数日かけて配筋作業を行うことも可能となる。また、通常、打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐまでの時間は、90日以下であり、好適には30日以下である。
【0027】
本発明のコンクリート打継ぎ工法は、様々な建造物を構築する際に適用することができる。特に、新設建造物の構築等に好適に用いられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0029】
[打継ぎ処理剤の調製]
水温60℃の水15kgを入れた容器に、フマル酸120gを投入し、撹拌して溶解させた。引き続き、撹拌を継続しながら、東曹産業株式会社製水ガラス「JIS3号珪酸ソーダ」25kgを加えた。このとき、水ガラスを加えた部分では一時的に粘度が大きく上昇するが、撹拌することによって全体が均質化された。この操作を繰り返して水ガラスの全量を加えて、全体として均一な不溶物のない水溶液を調製した。なお、ここで使用した水ガラスは、酸化ナトリウム(NaO:MW=61.98)成分を9〜10重量%、二酸化ケイ素(SiO:MW=60.09)成分を28〜30重量%含有するものである。中央値を採用して、酸化ナトリウム成分を9.5重量%、二酸化ケイ素成分を29重量%含有するとした場合、比[金属/ケイ素]の値は0.64である。ナトリウム原子数と、2価の酸であるフマル酸(C:MW=116.07)中のカルボキシル基の数との比[金属/カルボキシル基]の値は、37であった。また、水溶液の比重は1.24であった。
【0030】
[コンクリートの配合]
本実施例及び比較例で用いられるコンクリートの各成分の配合を表1に示す。表中、セメントは、普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm)を、細骨材は、川砂(密度:2.58g/cm、吸水率:2.27%)を、粗骨材は、砕石(密度:2.74g/cm、吸水率:0.58%)を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
[1次コンクリートの打設]
縦150mm×横530mm×高さ150mmの角柱供試体型枠内に、縦150mm×横530mm×高さ75mmの上記コンクリートを打設した。1次コンクリートを打設してから18時間後に1次コンクリートの表面を高圧洗浄機(先端圧力:14.7MPa)で水洗した。
【0033】
[2次コンクリートの打継ぎ]
(実施例1)
高圧洗浄機で水洗してから40分後に、1次コンクリートの表面に対して上記打継ぎ処理剤を0.2kg/m塗布した後、1次コンクリートの打設から7日後に2次コンクリートの打継ぎを行い、水平方向に打継ぎ面を有する縦150mm×横530mm×高さ150mmの供試体を作製した。このようにして得られた水平方向に打継ぎ面を有する前記供試体に対して、3等分点載荷(スパン:450mm)により曲げ強度試験を行った。曲げ強度試験は、作製された前記供試体3本に対してそれぞれ試験を行い、測定値の平均値を水平打継ぎ面に対する曲げ強度とした。水平打継ぎ面に対する曲げ強度は、3.95N/mmであった。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同様にして1次コンクリートを打設し、該1次コンクリートの打設から28日後に2次コンクリートの打継ぎを行い、水平方向に打継ぎ面を有する縦150mm×横530mm×高さ150mmの供試体を作製した。このようにして得られた水平方向に打継ぎ面を有する前記供試体に対して、3等分点載荷(スパン:450mm)により曲げ強度試験を行った。曲げ強度試験は、作製された前記供試体3本に対してそれぞれ1回ずつ試験を行い、測定値の平均値を水平打継ぎ面に対する曲げ強度とした。また、曲げ強度試験後の供試体3本から、打継ぎ面がスパン中央垂直になるように縦50mm×横150mm×高さ50mmの角柱供試体をそれぞれ1本ずつ切り出した。切り出された前記供試体3本に対して3等分点載荷(スパン:300mm)によりそれぞれ曲げ強度試験を行い、測定値の平均値を垂直打継ぎ面に対する曲げ強度とした。水平打継ぎ面に対する曲げ強度は、4.12N/mmであり、垂直打継ぎ面に対する曲げ強度は、5.64N/mmであった。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、1次コンクリートの打設から7日後に2次コンクリートの打継ぎを行う代わりに、1次コンクリートの打設から91日後に2次コンクリートの打継ぎを行った以外は実施例1と同様にして水平打継ぎ面に対する曲げ強度及び垂直打継ぎ面に対する曲げ強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0036】
(実施例4)
実施例2において、打継ぎ処理剤を0.2kg/m塗布する代わりに、打継ぎ処理剤を0.4kg/m塗布した以外は実施例2と同様にして水平打継ぎ面に対する曲げ強度及び垂直打継ぎ面に対する曲げ強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0037】
(比較例1)
実施例2において、1次コンクリートの打設後に打継ぎ処理剤を塗布せずに2次コンクリートの打継ぎを行った以外は実施例2と同様にして水平打継ぎ面に対する曲げ強度及び垂直打継ぎ面に対する曲げ強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0038】
【表2】

【0039】
表2により、1次コンクリート表面に打継ぎ処理剤の溜まりを生じさせることなく打継ぎ処理剤を0.2〜0.4kg/m塗布して2次コンクリートの打継ぎを行った実施例1〜4では、垂直打継ぎ面に対する曲げ強度試験において、供試体4本中、2本又は3本が打継ぎ面以外で破断し、1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が良好であることが分かる。これに対し、打継ぎ処理剤を塗布しなかった比較例1では、垂直打継ぎ面に対する曲げ強度試験において、供試体4本中、1本のみが打継ぎ面以外で破断し、1次コンクリートと2次コンクリートとの付着強度が劣っていた。
【0040】
表2により、打継ぎ処理剤の塗布量が0.4kg/mである実施例4では、垂直打継ぎ面に対する曲げ強度は、4.71N/mmであったが、打継ぎ処理剤の塗布量が0.2kg/mである実施例2では、垂直打継ぎ面に対する曲げ強度は、5.64N/mmと良好な強度を示した。また、2次コンクリートの打継ぎからの養生期間が7日である実施例1では水平打継ぎ面に対する曲げ強度が3.95N/mmであったが、前記養生期間が91日である実施例3では、水平打継ぎ面に対する曲げ強度が4.74N/mmと良好な強度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コンクリートに2次コンクリートを打継ぐコンクリート打設工法であって、1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面にアルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐことを特徴とするコンクリート打設工法。
【請求項2】
前記打継ぎ処理剤がカルボン酸を含有する請求項1記載のコンクリート打設工法。
【請求項3】
1次コンクリートを打設した後に、該1次コンクリートの表面を洗浄する請求項1又は2記載のコンクリート打設工法。
【請求項4】
1次コンクリートを打設してから打継ぎ処理剤を塗布するまでの時間が12時間〜30日の範囲にある請求項1〜3のいずれか記載のコンクリート打設工法。
【請求項5】
打継ぎ処理剤を塗布してから2次コンクリートを打継ぐまでの時間が0.5時間以上である請求項1〜4のいずれか記載のコンクリート打設工法。
【請求項6】
前記打継ぎ処理剤を1回の塗布操作につき0.1〜0.6kg/m塗布する請求項1〜5のいずれか記載のコンクリート打設工法。
【請求項7】
前記打継ぎ処理剤を固形分換算で10〜200g/m塗布する請求項1〜5のいずれか記載のコンクリート打設工法。

【公開番号】特開2008−106458(P2008−106458A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288114(P2006−288114)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年5月12日 社団法人セメント協会発行の「第60回セメント技術大会 講演要旨2006」に発表
【出願人】(592199102)株式会社アストン (9)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】