説明

コンクリート用混和剤

【課題】長時間にわたってコンクリート中の空気量を安定的に維持することができる非イオン系界面活性剤を有効成分として含有してなるコンクリート用混和剤および混和剤組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアルケニルフェノールの1種または2種以上にアルキレンオキサイドを付加した化合物を含有することを特徴とするコンクリート混和剤。


(式中、Rは炭素数13〜17のアルケニル基を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは1〜100の整数であって、n個のAOは同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なセメント、コンクリート系材料用の混和剤に関する。更に詳しくは、生コンクリートに優れた気泡安定性を付与するコンクリート用混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
起泡性を有するコンクリート用混和剤、すなわちAE剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸塩、樹脂酸塩(ロジン石鹸、マレイン化ロジン石鹸)などのアニオン界面活性剤が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、前記のアニオン界面活性剤は起泡性が高く、気泡径を細かくできる優位性はあるものの、気泡安定性に問題があった。特に、昨今は生コンクリートの運搬時間がより長くなってきており、空気量を長時間にわたり一定に維持する薬剤が望まれていた。
【0004】
一方、AE剤は気泡径、安定性、起泡力などが要求されるため、非イオン界面活性剤の使用実績は少ない。非イオン界面活性剤がコンクリート用混和剤用組成物として使用される例として下記の特許文献が開示されているが上記課題を解決するには十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平11−209153号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、長時間にわたって生コンクリート中の空気量を安定的に維持することができる非イオン界面活性剤を有効成分として含有してなるコンクリート用混和剤および混和剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、上記課題の解決に適したコンクリート混和剤を見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される、アルケニルフェノールの1種または2種以上にアルキレンオキサイドを付加した化合物を含有することを特徴とするコンクリート混和剤である。
【0007】
【化2】

(式中、Rは炭素数13〜17のアルケニル基を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは1〜100の整数であって、n個のAOは同一であっても異なっていてもよい。)
【0008】
本発明の好ましい態様として、前記アルケニルフェノールの1種または2種以上がカルダノールであるコンクリート混和剤がある。
【0009】
本発明の別の好ましい態様として、前記化合物に加え、さらにアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、樹脂酸塩(ロジン石鹸、マレイン化ロジン石鹸)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなるコンクリート用混和剤がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記一般式(1)において、Rは炭素数13〜17のアルケニル基を表す。Rの構造には特に限定はないが、不飽和結合数は1以上であればよく、直鎖構造であってもまた分岐構造であってもよい。
【0011】
前記一般式(1)で表される化合物はどのような方法で製造されたものであってもよい。通常は、アルケニルフェノールの1種又は2種以上に塩基性触媒下アルキレンオキサイドを付加する方法で得ることができる。
【0012】
前記アルケニルフェノールには、工業的に製造された純品又は複数種の混合物のほか、植物等の天然物から抽出・精製された純品又は複数種の混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツ殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3−[8(Z),11(Z),14−ペンタデカトリエニル]フェノール、3−[8(Z),11(Z)−ペンタデカジエニル]フェノール、3−[8(Z)−ペンタデセニル]フェノール、3−[11(Z)−ペンタデセニル]フェノールや、いちょうの種子および葉、ヌルデの葉等から抽出される3−[8(Z),11(Z),14(Z)−ヘプタデカトリエニル]フェノール、3−[8(Z),11(Z)−ヘプタデカジエニル]フェノール、3−[12(Z)−ヘプタデセニル]フェノール、3−[10(Z)−ヘプタデセニル]フェノール等が挙げられる。これらの中で、分解性が良好であるカルダノールが好適に使用できる。
※出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)ホームページ
【0013】
前記一般式(1)において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表すが、具体的にはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。nは1〜100の整数であって、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。本願に係る所望の性能を得る点でnは3〜50であれば好ましく、5〜30であればより好ましい。n個のAOは同一であっても異なっていてもよく、異なる場合はブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよい。
【0014】
本発明のコンクリート用混和剤は、前記一般式(1)で表される化合物に加え、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ガムロジン、ディプロジン、マレイン化ロジン等の樹脂酸塩を含有するものであってもよい。ここで、塩を形成するアルカリとしては、アンモニア、アルカノールアミン類、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0015】
本発明のコンクリート用混和剤の添加量は、コンクリートの配合設計などにより異なるが、対セメント重量比で1×10−6〜1×10−2重量%を添加することで効果が得られる。但しコンクリートの材料、配合条件により異なるものであるので、本発明のコンクリート用混和剤の添加量はこれに限定されるものではない。
【0016】
本発明のコンクリート用混和剤には、前記一般式(1)で表される化合物のみから構成される態様の他、他の混和剤と配合された状態での態様をも包含する。配合され得る混和剤としては、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、AE剤、起泡剤、消泡剤、収縮低減剤、増粘剤、離型剤、養生剤等が挙げられる。特に、本発明のコンクリート用混和剤の気泡安定性が優れる機能から、各種減水剤、AE剤に配合され得る。
【0017】
使用されるコンクリート製品の形態は特に限定されるものではないが、コンクリート製品、生コンクリート、軽量コンクリートなどが挙げられる。
【実施例】
【0018】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明する。
製造例1
カルダノール(3−[8(Z),11(Z),14−ペンタデカトリエニル]フェノール 31重量%、3−[8(Z),11(Z)−ペンタデカジエニル]フェノール 20重量%、3−[8(Z)−ペンタデセニル]フェノール 45重量%の混合物。商品名;Distilled Cashew Nut Shell Liquid(インド、SATYA CASHEW CHEMICALS社製。以下同様)を1000mlオートクレーブに263g及び水酸化カリウム0.6gを仕込み、系内を窒素置換した後120℃に昇温し、次いで系内を50mmHgの減圧にして1時間減圧脱水した。減圧脱水終了後、系内を窒素により常圧に戻し、150℃に昇温した後、この温度を保ちながらエチレンオキサイド385gをゲージ圧力0.2〜0.4MPaの加圧下で2時間かけて反応系内に導入しカルダノールのエトキシ化反応を行った。エチレンオキサイド送入終了後、さらに同温度で1時間熟成を行い、冷却後酢酸0.38gで中和してカルダノールエチレンオキサイド付加物636gを得た。得られたカルダノールエチレンオキサイド付加物の、カルダノールに対するエチレンオキサイドの平均の付加モル数(以下、単にエチレンオキサイド付加モル数と略称する)は10.0である。
【0019】
製造例2
カルダノール164g、エチレンオキサイド480gを反応させた以外は製造例1と同様に反応を行いカルダノールエチレンオキサイド付加物645gを得た。エチレンオキサイド付加モル数は20.0である。
【0020】
製造例3
エチレンオキサイドの代わりにエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(1/1モル比)混合物357gを反応させた以外は製造例1と同様に反応を行いカルダノールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物610gを得た。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加モル数はともに4.0であり、2種類のアルキレンオキサイドの付加の形態はランダム付加であった。
【0021】
実施例(モルタル試験)
本発明のコンクリート用混和剤を用いて、JIS R 5201に規定されている要領にてモルタルを調製し、そのフロー値と空気量を測定した。尚、空気量については経時変化量も測定した。実施例及び比較例の混和剤を、練り水と共に表3に記載の添加量を添加して試験を行った。モルタルの練り混ぜにはホバートミキサーを使用し、はじめに水とセメントを低速で30秒間練り混ぜたのち、砂を投入し低速で30秒練り混ぜる。その後高速で30秒練り混ぜたのちに撹拌を停止し、90秒間静置する。尚、静置開始から15秒間で容器の壁に付着したモルタルを掻き落とす。静置後、高速で60秒練り混ぜを行い、各項目の測定を実施した。ここで、フローの測定にはJISコーンを使用し、空気量の測定には、全重量方式を採用し、メスシリンダーを用いて測定した。空気量の算出式を以下に示す。

【0022】
試験に使用したモルタルの配合を以下に示す。
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
以上の結果より、本発明のコンクリート用混和剤を用いた実施例1から3は、比較例1と比べてモルタル調製直後から60分後に至るまでの間の空気量の変化を少なくすることができており、適正な空気量が維持されている結果となった。これは、生コンクリートの運搬時間が長くかかるような場面においても、空気量を長時間にわたり一定量に維持できることを意味する。また、公知の空気連行剤である化合物B−1と配合して用いた実施例4及び5は、それ単独で用いた比較例2よりも空気量の減少を抑制する効果が見出され、経時での気泡安定性に優れるコンクリート用混和剤および混和剤組成物が提供されるものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、アルケニルフェノールの1種又は2種以上にアルキレンオキサイドを付加した化合物を含有することを特徴とするコンクリート用混和剤。

(式中、Rは炭素数13〜17のアルケニル基を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。nは1〜100の整数であって、n個のAOは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記アルケニルフェノールの1種または2種以上がカルダノールである請求項1に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項3】
さらにアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、樹脂酸塩(ロジン石鹸、マレイン化ロジン石鹸)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項1又は2に記載のコンクリート用混和剤。

【公開番号】特開2010−1172(P2010−1172A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159679(P2008−159679)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】