説明

コンクリート組成物の製造方法とその装置

【課題】2種類の水溶性低分子化合物を組み合わせて成る増粘性混和剤とコンクリート用化学混和剤とが配合されたコンクリート組成物を確実に製造する。
【解決手段】水計量器27の槽を第1及び第2の計量槽27a,27bに仕切り、第1の計量槽27aにカチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水を投入してその水量を計量した後、第1の計量槽27aに予め計量した第1の水溶性低分子化合物を投入し、第2の計量槽27bに予め計量したアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを投入して水計量器27に投入された単位水量を計量し、しかる後に、セメントと細骨材の混合物に、第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを添加して混練し、この混練物に第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを投入して混練するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物の製造方法とその装置に関するもので、特に、増粘性混和剤として2種類の水溶性低分子化合物を組み合わせて成る増粘性混和剤を用いたコンクリート組成物の製造方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高流動コンクリートや水中不分離性コンクリート(水中コンクリート)に好適に使用される、流動性や早強性に優れるとともに、耐水性にも優れた早強性耐水コンクリート組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このコンクリート組成物は、セメント、水、粗骨材、細骨材に、コンクリート用化学混和剤を配合するとともに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る2液性の増粘性混和剤を用いて作製される。
前記第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とがコンクリート中にある一定の割合で混入されると、第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とが電気的に配列して擬似ポリマーを形成することより、増粘性混和剤は増粘剤として機能する。これにより、例えば、シールド直打ち工法に好適に用いられる、流動性や早強性に優れるとともに、優れた耐水性を有するコンクリート組成物を得ることができる。
【0003】
前記コンクリート組成物を製造する際には、まず、コンクリートプラントのミキサーにて、セメント、水、細骨材に、コンクリート用化学混和剤と第2の水溶性低分子化合物とを添加して練り混ぜ、しかる後、この混練物に第1の水溶性低分子化合物を添加して再度混練し、最後に粗骨材を加えて混練する。
これは、第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とを同時に添加すると、第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とが不均質な状態で擬似ポリマーを形成してしまうので、擬似ポリマーを均質な状態で形成させて所望の特性を得るためには長時間の混練が必要となるためである。また、第1の水溶性低分子化合物を先に加えると、混練の際に泡が発生してコンクリート組成物中の空気量が多くなり、強度の低下や比重の減少等が起こる場合があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリート組成物に優れた流動性、早強性、耐水性を付与するためには、第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とは、単位水量に対して、それぞれ、0.5〜5重量%配合され、かつ、第1の水溶性低分子化合物の配合量と第2の水溶性低分子化合物の配合量とは、ある一定の割合(例えば、2:5〜5:2)で配合される必要がある。
しかしながら、第1の水溶性低分子化合物は粘性が高く、計量器内に残存し易いため、現状では、必ずしも、正確な計量ができているとはいえなかった。そのため、従来のように、第1の水溶性低分子化合物を計量する計量器から直接に混練機に第1の水溶性低分子化合物を供給する方法では、第1の水溶性低分子化合物の配合量と第2の水溶性低分子化合物の配合比が異なってしまったり、単位水量が予定よりも足りなくなったりして、所望の特性が得られない場合があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、2種類の水溶性低分子化合物を組み合わせて成る増粘性混和剤とコンクリート用化学混和剤とが配合されたコンクリート組成物を確実に製造する方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、セメント、水、細骨材、粗骨材に、コンクリート用化学混和剤と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る増粘性混和剤とを添加して混練するコンクリート組成物の製造方法であって、前記第1の水溶性低分子化合物とこの第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水とを収納する第1の計量槽と、この第1の計量槽から前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを排出する第1の排出弁と、前記第2の水溶性低分子化合物と前記コンクリート用化学混和剤と混練水とを収納する第2の計量槽と、この第2の計量槽から前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを排出する第2の排出弁とを備えた水計量器を使用し、予め計量した希釈水を第1の計量槽に投入して計量する第1の工程と、この希釈水が投入された第1の計量槽に予め計量した第1の水溶性低分子化合物を投入する第2の工程と、予め計量した第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤とを第2の計量槽に投入する第3の工程と、前記第1〜第3の工程の全ての工程が終了した後に、前記第2の計量槽に混練水を投入して、単位水量である、前記混練水と希釈水と第1及び第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤との総量を計量する第4の工程と、前記第4の工程の後に設けられて、混練機に予め投入されて混合されたセメントと細骨材とに、前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを添加して混練する第5の工程と、前記第5の工程の後に設けられて、前記混練機に前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを投入して混練する第6の工程とを備えたことを特徴とする。これにより、第1及び第2の水溶性低分子化合物の添加量と単位水量とを精度よく計量することができるとともに、セメントと細骨材と第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤との混練物に所定量の第1の水溶性低分子化合物を投入できるので、所望の特性のコンクリート組成物を確実に製造することができる。
【0008】
また、本願発明は、前記第5の工程と前記第6の工程との間に、前記混練機に、粗骨材を投入して混練する工程を設けたので、第6の工程の後に粗骨材を投入して混練する工程を設ける場合に比較して混練時間を短縮できる。したがって、コンクリート組成物の製造効率を向上させることができる。
また、本願発明は、前記希釈水の量を前記第1の水溶性低分子化合物の添加量の1.5倍〜3倍としたので、混練水の量を不要に減らすことなく、第1の水溶性低分子化合物の粘度を適度に低下させることができる。したがって、混練機に投入される第1の水溶性低分子化合物の添加量が減少するのを防ぐことができるとともに、セメントと細骨材と第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤とに適度な混練水を混合して混練することができる。
また、本願発明は、前記コンクリート用化学混和剤として、前記増粘性添加剤との相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を用いたので、優れた流動性や早強性を確実に発揮させることができる。
【0009】
また、本願発明は、セメント、水、細骨材、粗骨材に、コンクリート用化学混和剤と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る増粘性混和剤とを添加して混練する混練機を備えたコンクリート組成物の製造装置であって、前記第1の水溶性低分子化合物の添加量を計量する第1の計量器と、前記第2の水溶性低分子化合物の添加量を計量する第2の計量器と、前記コンクリート用化学混和剤の添加量を計量する第3の計量器と、水計量器と、前記水計量器に混練水と希釈水とを供給する水タンクと、材料供給制御手段とを備え、前記水計量器は、前記第1の計量器で計量された第1の水溶性低分子化合物とこの第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水とを収納する第1の計量槽と、この第1の計量槽から前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを排出する第1の排出弁と、前記第2の計量器で計量された第2の水溶性低分子化合物と前記第3の計量器で計量されたコンクリート用化学混和剤と混練水とを収納する第2の計量槽と、この第2の計量槽から前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを排出する第2の排出弁とを備え、材料供給制御手段は、セメントと細骨材の混練後に、前記第2の排出弁を開放して、前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを前記混練機に排出し、前記セメントと細骨材と第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水との混練後に、前記第1の排出弁を開放して、前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを前記混練機に排出する制御を行うことを特徴とする。
このような構成のコンクリート組成物の製造装置を用いることにより、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法を確実に実現できるので、例えば、シールド直打ち工法に好適に用いられる、流動性や早強性に優れるとともに、優れた耐水性を有するコンクリート組成物を確実に製造することができる。
【0010】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るコンクリート組成物の製造装置を示す図である。
【図2】添加剤の計量手順を示すフローチャートである。
【図3】コンクリート組成物の配合量を示す表である。
【図4】本発明の製造方法により作製したコンクリート組成物と、従来の高流動コンクリート及び水中コンクリートの高流動性、早強性、耐水性とを比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
本例では、セメント系混合物として、シールド工法の直打ちコンクリートライニング材などに使用されるコンクリート組成物の製造方法を例にとって説明する。
図1は、本実施の形態に係るコンクリート組成物の製造装置1を示す図で、同図において、10はセメント・骨材供給部、20は水・添加剤供給部、30は混練部、40は材料供給制御手段である。
セメント・骨材供給部10はセメントサイロ11と、セメント計量器12と、砂ホッパー13と、砂計量器14と、砂利ホッパー15と、砂利計量器16とを備える。
水・添加剤供給部20は水槽21と、水タンク22と、第1及び第2の増粘剤タンク23A,23Bと、第1及び第2の計量器24A,24Bと、化学混和剤タンク25と、第3の計量器26と、水計量器27とを備える。
混練部30は混練機としてのコンクリートミキサー31を備える。
【0014】
セメントサイロ11にはセメントが貯蔵される。セメントとしては、特に限定されるものではなく、石灰石・粘土・酸化鉄などを原料とした普通ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントや、高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントなどの混合セメントを用いることができる。本例では、早強ポルトランドセメントを用いた。
セメント計量器12は、セメントサイロ11から図示しないポンプにより搬送された早強ポルトランドセメントを予め設定した重量だけ計量するもので、この計量された早強ポルトランドセメント(以下、セメントという)は、セメント計量器12の下部に設けられた排出弁12mから排出されて、コンクリートミキサー31に投入される。
【0015】
砂ホッパー13と砂利ホッパー15には、細骨材である砂と粗骨材である砂利とがそれぞれ貯蔵される。細骨材は、10mm網ふるいを全て通過し、5mm網ふるいを85重量%以上通過する骨材であり、粗骨材は、5mm網ふるいを85重量%以上通過しない骨材であって、いずれも、川砂から得られたものや、海砂,山砂,砕石などから得られたものが用いられる。
砂計量器14と砂利計量器16は、それぞれ、砂ホッパー13と砂利ホッパー15とから、図示しない計量コンベヤにより搬送された、砂(細骨材)と砂利(粗骨材)を予め設定した重量だけ計量するもので、この計量された砂(細骨材)と砂利(粗骨材)は、それぞれ、各計量器14,16の下部に設けられた排出弁14m,16mから排出されて、コンクリートミキサー31に投入される。
【0016】
水槽21には、セメントや骨材に混合したり、第1の水溶性低分子化合物を希釈したりするための水が貯留される。この水は、水槽21に設けられたポンプ21Pにより、水計量器27近傍に配置された水タンク22に供給される。水タンク22には、水槽21から供給された水が貯蔵される。水タンク22の水は、水タンク22の下部に設けられた第1及び第2の排出弁22m,22nから排出されて、水計量器27に投入される。
本発明の増粘性混和剤は、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る2液性の増粘性混和剤であるので、これら第1及び第2の水溶性低分子化合物は、それぞれ、別個に貯蔵しておく必要がある。
【0017】
第1の増粘剤タンク23Aには前記第1の水溶性低分子化合物が貯蔵される。この第1の水溶性低分子化合物は、第1の増粘剤タンク23Aに設けられたポンプ23Pにより、第1の計量器24Aに供給される。前記第1の水溶性低分子化合物としては、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤が好ましい。
第2の増粘剤タンク23Bには前記第2の水溶性低分子化合物が貯蔵される。この第2の水溶性低分子化合物は、第2の増粘剤タンク23Bに設けられたポンプ23pにより、第2の計量器24Bに供給される。前記第2の水溶性低分子化合物としては、芳香環を有するスルフォン酸塩が好ましく、特に、アルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする添加剤が好ましい。
【0018】
化学混和剤タンク25にはコンクリート用化学混和剤が貯蔵される。このコンクリート用化学混和剤は、化学混和剤タンク25に設けられたポンプ25Pにより、第3の計量器26に供給される。前記コンクリート用化学混和剤としては、リグニン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、ナフタリン系、あるいは、アミノスルホン酸系などのポリエーテル系減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などの、コンクリート用化学混和剤の中から適宜選択することができる。本例では、コンクリート用化学混和剤として、前記増粘性混和剤との相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を用いている。
【0019】
第1及び第2の計量器24A,24Bは、それぞれ、第1及び第2の増粘剤タンク23A,23Bから供給される第1及び第2の水溶性低分子化合物を予め設定した重量だけそれぞれ計量するもので、この計量された第1及び第2の水溶性低分子化合物は、それぞれ、第1及び第2の計量器24A,24Bの下部に設けられた排出弁24m,24nからそれぞれ排出されて、水計量器27に投入される。
第3の計量器26は、化学混和剤タンク25から供給されるコンクリート用化学混和剤を予め設定した重量だけ計量するもので、この計量されたコンクリート用化学混和剤は、第3の計量器26の下部に設けられた排出弁26mから排出されて、水計量器27に投入される。
【0020】
水計量器27は、1つの槽を、仕切板27kにより仕切られた第1及び第2の計量槽27a,27bを備える。これら第1及び第2の計量槽27a,27bは、仕切板27kにより、互いに連通する箇所がないように仕切られており、第1の計量槽27aの下部と第2の計量槽27bの下部とには、それぞれ、第1及び第2の排出弁27m,27nが設けられている。これにより、第1の計量槽27aに投入された材料と第2の計量槽27bに投入された材料とは、混合されることなく、それぞれ、第1及び第2の排出弁27m,27nから水計量器27の外部に排出される。なお、水計量器27は、槽が第1の計量槽27aと第2の計量槽27bとの2つに分かれているが、計量器(計測器)は1個である。
【0021】
第1の計量槽27aには、第1の計量器24Aで計量された第1の水溶性低分子化合物と、水タンク22から供給されて第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水とが投入される。これら第1の水溶性低分子化合物と希釈水とは、後述する単位水量の計量後に、第1の排出弁27mから排出されて、コンクリートミキサー31に投入される。
ここで、単位水量は、混練水と希釈水と第1及び第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤との総量をいう。なお、この単位水量の値は、細骨材及び粗骨材が乾燥状態にあるとしたときの理論値で、実際に使用する水の量は、細骨材及び粗骨材の表面に付着している水の量を別途測定し、この水の量を前記単位水量から差し引いた値となる。
一方、第2の計量槽27bには、第2の計量器24Bで計量された第2の水溶性低分子化合物と、第3の計量器26で計量されたコンクリート用化学混和剤と、水タンク22から供給される混練水とが投入される。混練水は、セメントと骨材とを混練するために用いる水のうち、前記希釈水を除く水を指す。これら第2の水溶性低分子化合物、コンクリート用化学混和剤、及び、混練水とは、単位水量の計量後に、第2の排出弁27nから排出されて、コンクリートミキサー31に投入される。
【0022】
コンクリートミキサー31は、材料供給制御手段40により制御された順序に従って投入される、早強ポルトランドセメント、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、混練水、希釈水、第1及び第2の水溶性低分子化合物、及び、コンクリート用化学混和剤を混練してコンクリート組成物を製造するもので、本例では、コンクリートミキサー31として、2軸ミキサーを用いている。なお、混練の手順については後述する。
材料供給制御手段40はセメント計量器12、砂計量器14、及び、砂利計量器16の各排出弁12m,14m,16mと、第1〜第3の計量器24A,24B,26の各排出弁24m,24n,26mと、水タンク22の排出弁22m,22nと、水計量器27の排出弁27m,27nとの開閉のタイミングを制御して、セメント、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、希釈水で希釈された第1の水溶性低分子化合物、及び、混練水とこの混練水に添加された第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤とを、予め設定した所定の順序で、コンクリートミキサー31に投入する制御を行う。コンクリートミキサー31への投入は、(1)セメントと細骨材、(2)第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水、(3)粗骨材、(4)第1の水溶性低分子化合物と希釈水の順に行う。なお、投入は、先に投入した材料を所定時間混練した後に行う。
【0023】
次に、コンクリート組成物の製造装置1を用いて、シールド工法の直打ちコンクリートライニング材などに使用されるコンクリート組成物を製造する方法について説明する。
セメント・骨材供給部10は、セメント計量器12、砂計量器14、及び、砂利計量器16を用いて、予め設定された配合量のセメント、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)を計量する。そして、計量されたセメントと砂とをコンクリートミキサー31に投入する。
一方、水・添加剤供給部20では、第1の計量器24Aで第1の水溶性低分子化合物を計量し、第2の計量器24Bで第2の水溶性低分子化合物を計量し、第3の計量器26でコンクリート用化学混和剤を計量した後、水計量器27で、希釈水量と単位水量とを計量する。
【0024】
水計量器27における希釈水量と単位水量との計量方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、図2において、W1〜W4は各ステップにおける水計量器27への投入物の積算量で、最終ステップにおける積算量W4が単位水量Wとなる。
始めに、水タンク22の第1の排出弁22mを開いて、水タンク22から第1の計量槽27aに、希釈水となる水を投入しながら水計量器27の槽内(ここでは、第1の計量槽27aのみ)の水量を計量し、計量された水量が予め設定された希釈水の水量がw1になった時点で、水タンク22の第1の排出弁22mを閉じて、水タンク22からの水の投入を停止する(ステップS1)。これにより、希釈水の水量を計量できる。
この希釈水の量としては、第1の水溶性低分子化合物の添加量waの1.5倍〜3倍とすることが好ましい。これにより、混練水の量を不要に減らすことなく、第1の水溶性低分子化合物の粘度を適度に低下させることができる。
次に、この第1の計量槽27aに、第1の計量器24Aで計量した添加量waの第1の水溶性低分子化合物を投入する(ステップS2)。
【0025】
次に、第2の計量槽27bに、第2の計量器24Bで計量した添加量wbの第2の水溶性低分子化合物と第3の計量器26で計量した添加量wcのコンクリート用化学混和剤を投入する(ステップS3)。
最後に、水タンク22の第2の排出弁22nを開いて、水タンク22から第2の計量槽27bに、混練水となる水を投入しながら水計量器27の槽内(今度は、第1の計量槽27aと第2の計量槽27bの両方)の水量を計量し、計量された水量が予め設定された単位水量Wになった時点で、水タンク22の第2の排出弁22nを閉じて、水タンク22からの水の投入を停止する(ステップS4)。これにより、混練水の水量w2と単位水量Wとを計量できる。
混練水の水量w2は、w2=W−(w1+wa+wb+wc)により求めることができる。
なお、ステップS1は必ずステップS2の前に行うことが好ましいが、ステップS2とステップS3では計量を行わないので、ステップS3を、ステップS1とステップS2との間に行ったり、最初にステップS3を行い、次に、ステップS1とステップS2とを行うようにしても何ら問題ない。
【0026】
セメント・骨材供給部10で計量されたセメントと砂(細骨材)とは、コンクリートミキサー31に投入され、所定時間(ここでは、約10秒)空練りされる。
空練りの終了後には、第2の計量槽27bから、第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とが、コンクリートミキサー31に投入され、所定時間(ここでは、約20秒)混練される。
次に、セメント・骨材供給部10で計量された砂利(粗骨材)がコンクリートミキサー31に投入され、所定時間(ここでは、約30秒)混練される。
最後に、第1の計量槽27aから、希釈水で希釈された第1の水溶性低分子化合物がコンクリートミキサー31に投入され、所定時間(ここでは、約30秒)混練される。
【0027】
第1の水溶性低分子化合物は、希釈水で希釈され粘度が低下しているので、希釈しない状態で投入した場合に比較して、コンクリートミキサー31中で均一に分散する。したがって、増粘性混和剤の増粘機能を早期にかつ均質に発揮させることができるので、所望の配合比のコンクリート組成物を効率よく製造することができる。また、第1の計量槽27aからコンクリートミキサー31までの配管の内壁に付着することがないので、投入された第1の水溶性低分子化合物の配合量の減少を確実に防止することができる。
コンクリートミキサー31で混練されたコンクリート組成物は、コンクリートシュート32からミキサー車33に搭載され、打設現場まで搬送される。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、水計量器27の槽を互いに連通する箇所がない第1及び第2の計量槽27a,27bに仕切り、第1の計量槽27aに、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水を所定量投入してこの希釈水の水量を計量した後、第1の計量槽27aに第1の計量器24Aで計量した第1の水溶性低分子化合物を投入し、第2の計量槽27bに、第2の計量器24Bで計量したアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物、第3の計量器26で計量したコンクリート用化学混和剤、及び、混練水を投入して水計量器27に投入された単位水量を計量し、しかる後に、コンクリートミキサー31で混合されたセメントと細骨材の混合物に、第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを添加して混練し、この混練物に第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを投入して混練してコンクリート組成物を製造するようにしたので、第1及び第2の水溶性低分子化合物の添加量と単位水量とを精度よく計量することができるとともに、セメント、水、砂、砂利、第2の水溶性低分子化合物、及び、コンクリート用化学混和剤との混練物に、所定量の第1の水溶性低分子化合物を確実に投入することができる。
また、第1の水溶性低分子化合物は、希釈水で希釈され粘度が低下しており、コンクリートミキサー31中で均一に分散し易いので、増粘性混和剤の増粘機能を早期にかつ均質に発揮させることができる。したがって、所望の配合比のコンクリート組成物を効率よく製造することができるとともに、第1の計量槽27aからコンクリートミキサー31までの配管内への第1の水溶性低分子化合物の付着を防止できるので、所望の配合比のコンクリート組成物を確実に製造することができる。
【0029】
なお、前記実施の形態では、シールド工法の直打ちコンクリートライニング材などに使用されるコンクリート組成物の製造方法について説明したが、高流動コンクリートや水中コンクリートなどの他の用途に使用されるコンクリート組成物についても適用可能であることはいうまでもない。
また、本発明のコンクリート組成物の製造装置1は、シールド工法の直打ち工法用だけでなく、通常のコンクリートとして使用する場合や、ダムや橋脚、湾岸用のコンクリートを製造する場合にも適用可能である。
また、希釈した第1の水溶性低分子化合物をコンクリートミキサー31に投入する方法として、別途第1の水溶性低分子化合物を希釈して第1の増粘剤タンク23Aに貯蔵し、第1の計量器24Aにて第1の水溶性低分子化合物の希釈液を計量する方法も考えられるが、第1の増粘剤タンク23Aに希釈液を補充する方法では、補充の方法が難しいだけでなく、希釈の度合いが安定しないので、本例のように、水計量器27の第1の計量槽27aにて第1の水溶性低分子化合物を希釈することが好ましい。
【0030】
また、前記例では、セメント、砂(細骨材)、混練水とこの混練水に添加された第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤とを混練した混練物に、砂利(粗骨材)を投入して混練した後に、希釈水で希釈された第1の水溶性低分子化合物を投入して混練したが、先に希釈水で希釈された第1の水溶性低分子化合物を投入して混練し、しかる後に、砂利(粗骨材)を投入して混練してもよい。この場合、第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とが形成する擬似ポリマーの均質度が若干高くなるものの、粗骨材投入前の混練物の粘度が高くなるので、実施の形態よりも混練時間がかかるので、本例のように、最後に希釈水で希釈された第1の水溶性低分子化合物を投入して混練する方が好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
図3は、本発明による製造装置を用いて製造されるコンクリート組成物の配合量を示す表である。なお、表において、増粘剤Aは第2の水溶性低分子化合物で、増粘剤Bは第1の水溶性低分子化合物である。
セメントCとしては、早強ポルトランドセメント(密度;3.14g/cm3)を用い、この早強ポルトランドセメント543kg/m3に、川砂から得られた細骨材S(密度;2.63g/cm3)584kg/m3を加え、10秒間空練りした後、コンクリート用化学混和剤AD(花王株式会社製、カルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤、商品名「マイティ4000FA」)17.4kg/m3と、第2の水溶性低分子化合物であるアルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする増粘剤A(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FA」)7.6kg/m3とに、単位水量Wが190kg/m3になるように計量した混練水142.4kg/m3を加えたものを配合して20秒間練り混ぜる。
混練後、この混練物に、川砂から得られた粒径が13mm以下の粗骨材G(密度;2.56g/cm3)931kg/m3を加えて30秒間混練し、最後に、第1の水溶性低分子化合物であるアルキルアンモニウム塩を主成分とする増粘剤B(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FB」)7.6kg/m3を希釈水15kg/m3で希釈したものを添加して再度混練し、コンクリート組成物を作製した。
なお、単位水量Wは190kg/m3であり、水セメント比(W/C)は35%である。
作製されたコンクリート組成物につき、高流動性、早強性、耐水性を調べたところ、図4の表に示すように、流動性については、従来の高流動コンクリートや水中コンクリートと同等の特性を持ちながら、水中コンクリートよりも早強性に優れ、高流動コンクリートよりも耐水性に優れたコンクリート組成物を得ることができた。
【0032】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、シールド直打ち工法等に好適に用いられる、流動性や早強性に優れるとともに、優れた耐水性を有するコンクリート組成物を確実に製造することができるので、コンクリート製造プラントの運営をスムースに行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 コンクリート組成物の製造装置、
10 セメント・骨材供給部、11 セメントサイロ、12 セメント計量器、
13 砂ホッパー、14 砂計量器、15 砂利ホッパー、16 砂利計量器、
20 水・添加剤供給部、21 水槽、22 水タンク、23A 第1の増粘剤タンク、23B 第2の増粘剤タンク、24A 第1の計量器、24B 第2の計量器、
25 化学混和剤タンク、26 第3の計量器、27 水計量器、
30 混練部、31 コンクリートミキサー、32 コンクリートシュート、
33 ミキサー車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、水、細骨材、粗骨材に、コンクリート用化学混和剤と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る増粘性混和剤とを添加して混練するコンクリート組成物の製造方法であって、
前記第1の水溶性低分子化合物とこの第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水とを収納する第1の計量槽と、この第1の計量槽から前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを排出する第1の排出弁と、
前記第2の水溶性低分子化合物と前記コンクリート用化学混和剤と混練水とを収納する第2の計量槽と、この第2の計量槽から前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを排出する第2の排出弁とを備えた水計量器を使用し、
予め計量した希釈水を第1の計量槽に投入して計量する第1の工程と、
この希釈水が投入された第1の計量槽に予め計量した第1の水溶性低分子化合物を投入する第2の工程と、
予め計量した第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤とを第2の計量槽に投入する第3の工程と、
前記第1〜第3の工程の全ての工程が終了した後に、前記第2の計量槽に混練水を投入して、単位水量である、前記混練水と希釈水と第1及び第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤との総量を計量する第4の工程と、
前記第4の工程の後に設けられて、混練機に予め投入されて混合されたセメントと細骨材とに、前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを添加して混練する第5の工程と、
前記第5の工程の後に設けられて、前記混練機に前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを投入して混練する第6の工程とを備えたことを特徴とするコンクリート組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第5の工程と前記第6の工程との間に、前記混練機に、粗骨材を投入して混練する工程を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項3】
前記希釈水の量を前記第1の水溶性低分子化合物の添加量の1.5倍〜3倍としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項4】
前記コンクリート用化学混和剤を、カルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項5】
セメント、水、細骨材、粗骨材に、コンクリート用化学混和剤と、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組み合わせて成る増粘性混和剤とを添加して混練する混練機を備えたコンクリート組成物の製造装置であって、
前記第1の水溶性低分子化合物の添加量を計量する第1の計量器と、
前記第2の水溶性低分子化合物の添加量を計量する第2の計量器と、
前記コンクリート用化学混和剤の添加量を計量する第3の計量器と、
水計量器と、
前記水計量器に混練水と希釈水とを供給する水タンクと、
材料供給制御手段とを備え、
前記水計量器は、
前記第1の計量器で計量された第1の水溶性低分子化合物とこの第1の水溶性低分子化合物を希釈する希釈水とを収納する第1の計量槽と、この第1の計量槽から前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを排出する第1の排出弁と、
前記第2の計量器で計量された第2の水溶性低分子化合物と前記第3の計量器で計量されたコンクリート用化学混和剤と混練水とを収納する第2の計量槽と、この第2の計量槽から前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを排出する第2の排出弁とを備え、
材料供給制御手段は、
セメントと細骨材の混練後に、前記第2の排出弁を開放して、前記第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水とを前記混練機に排出し、
前記セメントと細骨材と第2の水溶性低分子化合物とコンクリート用化学混和剤と混練水との混練後に、前記第1の排出弁を開放して、前記第1の水溶性低分子化合物と希釈水とを前記混練機に排出する制御を行うことを特徴とするコンクリート組成物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−11469(P2011−11469A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158039(P2009−158039)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】