説明

コンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法

【課題】 コンクリート製下水管路施設の内壁面の露出を確実に防ぐことにより下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質による内壁面の侵食を防止して下水管路施設の耐久性の向上が図れるようにしたコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を得る。
【解決手段】 コンクリート製下水管路施設1の内壁面2の劣化部分3を切削除去し、劣化部分3を切削除去した後の内壁面2にアンカー挿入孔4を設け、アンカー挿入孔4に繊維アンカー5の一部5aを挿入し接着剤6で固定し、アンカー挿入孔4に一部5aを挿入し固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂いて内壁面2に放射状に広げ、繊維アンカー5を広げた内壁面2に、繊維アンカー5の上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内壁面が劣化したコンクリート製下水管路施設の内壁面を補修するコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人孔や埋設管等のコンクリート製下水管路施設は、長期間の使用により内部を流れる下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質によって内壁面が侵食され劣化し、この劣化を放置すると下水管路施設の強度が低下し損壊に至る。このため、予め内壁面に防食処理を施した下水管路施設が提案され、使用されている。しかし、既設の下水管路施設には防食処理が施されていない施設が多く存在しており、これらの下水管路施設に対して、劣化した内壁面を補修することが必要となっている。
【0003】
従来、かかる防食処理が施されていない下水管路施設の補修方法の1つとして、コンクリート管の内壁面を、劣化部分が完全に除去される深さ範囲まで内壁面全体にわたって切削除去して未劣化のコンクリート面を現出させ、この未劣化のコンクリート面にセラミックパネル片を順次敷き詰めて覆い、アンカーボルト或いは接着剤で固定するといった補修方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−190814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたコンクリート管の内壁面補修方法では、もし、劣化部分の除去が不完全でコンクリート管の内壁に劣化部分が残っていた場合、次のような問題があった。
【0006】
コンクリート面にセラミックパネル片をアンカーボルトで固定している場合、当該部分の侵食が進むことにより当該部分のアンカーボルトが効かなくなり、このアンカーボルトで固定されているセラッミクパネル片が脱落するおそれがあり、また、コンクリート面にセラミックパネル片を接着剤で固定している場合、当該部分の侵食が進むことにより、コンクリート管の内壁から劣化部分のコンクリートが剥がれ、該劣化部分のコンクリートに接着剤で接着されて固定されているセラッミクパネル片が剥がれたコンクリートとともに脱落してしまうおそれがあり、セラッミクパネル片が脱落してしまうと、露出したコンクリート管の内壁が下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質によって侵食されることになり、コンクリート管の強度の低下が急速に進んでしまうといった問題があった。
また、特許文献1に記載されたコンクリート管の内壁面補修方法は、作業が面倒で手間がかかるといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、コンクリート製下水管路施設の内壁面の露出を確実に防ぐことにより下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質による内壁面の侵食を防止して下水管路施設の耐久性の向上が図れるようにしたコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、補修作業を容易に行えるようにしたコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内壁面が劣化したコンクリート製下水管路施設の内壁面を補修する方法であって、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、内壁面が劣化したコンクリート製下水管路施設の内壁面を補修する方法であって、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から接着剤を塗布し、この接着剤を介して内壁面にメッシュを貼り付ける工程と、該メッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の、前記接着剤及び耐薬品性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の、前記防食被覆層を形成するエポキシ樹脂にはフィラーとして汚泥焼却灰が混合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むので、耐薬品性樹脂の塗布により形成された防食被覆層の固化により、内壁面に放射状に広げられた繊維アンカーの他部が防食被覆層のアンカーとなり、防食被覆層は放射状の広い面をもって繊維アンカーにより内壁面にしっかりと支持されることになり、劣化部分の除去が不完全で内壁面に劣化部分が残っていたとしても、防食被覆層が内壁面から剥落することを確実に防止することができる。
また、上記の作業は、特許文献1に記載されたコンクリート管の内壁面補修方法に比べ、作業が容易であり、作業時間の短縮化とコストの低減化を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から接着剤を塗布し、この接着剤を介して内壁面にメッシュを貼り付ける工程と、該メッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むので、接着剤の塗布により形成された接着剤層の固化により、内壁面に放射状に広げられた繊維アンカーの他部が接着剤層のアンカーとなり、接着剤層は放射状の広い面をもって繊維アンカーにより支持され、そして、前記の接着剤を介して内壁面に貼り付けられたメッシュは、前記の接着剤の塗布により形成された接着剤層の固化により接着剤層と一体となって固着し、このメッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して形成された防食被覆層は、メッシュがアンカーとなって接着剤層に一体となって固着することになるから、防食被覆層は繊維アンカーにより内壁面にしっかりと支持されることになり、劣化部分の除去が不完全で内壁面に劣化部分が残っていたとしても、防食被覆層が内壁面から剥落することを確実に防止することができる。
また、上記の作業は、特許文献1に記載されたコンクリート管の内壁面補修方法に比べ、作業が容易であり、作業時間の短縮化とコストの低減化を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、請求項1または2に記載の、前記接着剤及び耐薬品性樹脂は、エポキシ樹脂であるので、接着性に優れており繊維アンカー、メッシュ、防食被覆層をしっかりと固着することができ、また耐薬品性に優れておりエポキシ樹脂で形成された防食被覆層により内壁面を下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質による侵食からより確実に防御することができる。
【0015】
請求項4に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、請求項3に記載の、前記防食被覆層を形成するエポキシ樹脂にはフィラーとして汚泥焼却灰が混合されているので、汚泥焼却灰はその粒子に角があり、結合性に優れ粘性を向上させることから、塗装の際のダレが起き難く、防食被覆層の施工性に優れたものとなる。また、フィラーとして汚泥焼却灰を使用するので、廃棄物の再利用となり省資源に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を実施する第1例の工程で、内壁面の劣化部分を切削除去した状態を示す断面図である。
【図2】第1例の工程で、劣化部分を切削除去した内壁面にアンカー挿入孔を設けた工程を示す断面図である。
【図3】第1例の工程で、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定した工程をす断面図である。
【図4】第1例の工程で、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げた工程をす断面図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】第1例の工程で、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成した工程を示す断面図である。
【図7】本発明に係るコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を実施する第2例の工程で、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から接着剤を塗布し、この接着剤を介して内壁面にメッシュを貼り付けた工程を示す断面図である。
【図8】第2例の工程で、メッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成した工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図6は、本発明に係るコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を実施する第1例を示すものであり、図1は本例にて内壁面の劣化部分を切削除去した工程を示す断面図、図2は劣化部分を切削除去した内壁面にアンカー挿入孔を設けた工程を示す断面図、図3はアンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定した工程をす断面図、図4はアンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げた工程を示す断面図、図5は図4の平面図、図6は繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成した工程を示す断面図である。
【0018】
本例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法は、先ず、人孔や埋設管等の下水管路施設1の内壁面2における劣化部分3を切削切除し、未劣化の面2aを現出させ、同時に内壁面2の付着物などを除去する(図1)。
そして、必要に応じて、内壁面2における劣化部分3を切削切除した部分に、モルタル(図示せず)を詰め、内壁面2を平滑にする。
【0019】
次ぎに、劣化部分3を切削除去した内壁面2に所定の間隔でアンカー挿入孔4を設ける。このアンカー挿入孔4は、内壁面2における劣化部分3を切削除去した部分だけではなく、下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質の影響を受けるおそれのある面全域に設ける(図2)。
【0020】
次ぎに、内壁面2に設けたアンカー挿入孔4に繊維アンカー5の一部5aを挿入し接着剤6で固定する(図3)。繊維アンカー5は前記アンカー挿入孔4に挿入可能な太さであり、且つ縦方向に細かく引き裂き可能な構造となっている。繊維アンカー5として、複数の糸状繊維物が束ねられて構成されたものであってもよい。また、繊維アンカー5の繊維の種類にあっては、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維など、引っ張り強度、曲げ強度が高い繊維が使用される。
アンカー挿入孔4に繊維アンカー5を固定する接着剤6としては特に限定されないが、本例ではエポキシ樹脂が使用される。
【0021】
次ぎに、前記のようにしてアンカー挿入孔4にその一部5aを挿入して固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂き、繊維アンカー5の他部5bを内壁面5に放射状に均一に広げる(図4、図5)。
【0022】
次ぎに、繊維アンカー4を広げた内壁面2に、繊維アンカー4の上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層7を形成する(図6)。防食被覆層7を形成する耐薬品性樹脂として、本例ではエポキシ樹脂を使用しており、エポキシ樹脂に混合するフィラーとして汚泥焼却灰を使用している。エポキシ樹脂に混合する汚泥焼却灰の割合は、汚泥焼却灰を30〜40重量部の割合で混合している。
このようにして、第1例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法の実施の工程が完了する。
【0023】
上記した第1例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、内壁面2の劣化部分3を切削除去し、劣化部分3を切削除去した後の内壁面2にアンカー挿入孔4を設け、アンカー挿入孔4に繊維アンカー5の一部5aを挿入し接着剤6で固定し、アンカー挿入孔4にその一部5aを挿入して固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂き、引き裂いた繊維アンカー5の他部5bを内壁面2に放射状に広げ、繊維アンカー5の他部5bを広げた内壁面2に、繊維アンカー5の上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層7を形成するので、耐薬品性樹脂の塗布により形成された防食被覆層7の固化により、内壁面2に放射状に広げられた繊維アンカー5の他部5bが防食被覆層7のアンカーとなり、防食被覆層7は放射状の広い面をもって繊維アンカー5により内壁面2にしっかりと支持されることになり、劣化部分3の除去が不完全で内壁面に劣化部分が残っていたとしても、防食被覆層7が内壁面2から剥落することを確実に防止することができる。
【0024】
また、本例では、接着剤6及び防食被覆層7を形成する耐薬品性樹脂は、エポキシ樹脂であるので接着性に優れており、繊維アンカー5を内壁面2に設けたアンカー挿入孔4に接着し固定することができ、内壁面2と繊維アンカー5と防食被覆層7をしっかりと固着することができ、またエポキシ樹脂は耐薬品性に優れており、エポキシ樹脂で形成された防食被覆層7により内壁面2を下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質による侵食からより確実に防御できる。
【0025】
また、本例では、防食被覆層7を形成するエポキシ樹脂にはフィラーとして汚泥焼却灰が混合されているので、汚泥焼却灰はその粒子に角があり、結合性に優れ粘性を向上させることから、塗装の際のダレが起き難く、防食被覆層の施工性に優れたものとなる。また、フィラーとして汚泥焼却灰を使用するので、廃棄物の再利用となり省資源に寄与するものとなる。
【0026】
図7、図8は、本発明に係るコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法を実施する第2例を示すものであり、図7は本例にて繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から接着剤を塗布し、この接着剤を介して内壁面にメッシュを貼り付けた工程を示す断面図、図8はメッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成した工程を示す断面図である。
【0027】
本例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法は、先ず、人孔や埋設管等の下水管路施設1の内壁面2における劣化部分3を切削切除し、未劣化の面2aを現出させ、同時に内壁面2の付着物などを除去し、次ぎに、劣化部分3を切削除去した内壁面2に所定の間隔でアンカー挿入孔4を設け、次ぎに、内壁面2に設けたアンカー挿入孔4に繊維アンカー5の一部5aを挿入し接着剤6で固定し、次ぎに、アンカー挿入孔4に一部5aを挿入し固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂き、引き裂いた繊維アンカー5の他部5bを内壁面2に放射状に均一に広げる。
ここまでの工程は、前記した第1例と同様なので、第1例の説明及び第1例で示した図1乃至図5を援用し、本例での説明を省略する。
本例にあっては、アンカー挿入孔4に一部5aを挿入して固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂き、引き裂いた繊維アンカー5の他部5bを内壁面2に放射状に均一に広げる際に、予め内壁面5に接着剤を塗布しておくとよい。このようにすると、放射状に均一に広げた繊維アンカー5を、広げた状態で内壁面2に保持し易い。この接着剤にあっても特に限定されないが、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
本例では、次ぎに、繊維アンカー5を広げた内壁面2に、繊維アンカー5の上から接着剤8を塗布する。そして、この接着剤8を介して内壁面2にメッシュ9を貼り付ける(図7)。本例では、メッシュ9として繊維シートが使用されている。繊維シートの繊維の種類にあっては、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維などが使用される。また、接着剤8としては特に限定されないが、本例ではエポキシ樹脂が使用される。
【0029】
次ぎに、メッシュ9の上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層7を形成する(図8)。防食被覆層7を形成する耐薬品性樹脂として、本例では、第1例と同様に、エポキシ樹脂を使用しており、エポキシ樹脂に混合するフィラーとして汚泥焼却灰を使用している。エポキシ樹脂に混合する汚泥焼却灰の割合は、汚泥焼却灰を30〜40重量部の割合で混合している。
このようにして、第2例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法の実施の工程が完了する。
【0030】
上記した第2例のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法によれば、内壁面2の劣化部分3を切削除去し、劣化部分3を切削除去した後の内壁面2にアンカー挿入孔4を設け、アンカー挿入孔4に繊維アンカー5の一部5aを挿入し接着剤6で固定し、アンカー挿入孔4に一部5aを挿入し固定した繊維アンカー5の他部5bを引き裂き、引き裂いた繊維アンカー5の他部5bを内壁面2に放射状に広げ、繊維アンカー5を広げた内壁面2に、繊維アンカー5の上から接着剤8を塗布するので、接着剤8の塗布により形成された接着剤層8aの固化により、内壁面2に放射状に広げられた繊維アンカー5の他部5bが接着剤層8aのアンカーとなり、接着剤層8aは放射状の広い面をもって繊維アンカー5により支持される。
【0031】
そして、この接着剤8を介して内壁面2にメッシュ9を貼り付けることにより、接着剤8を介して内壁面2に貼り付けられたメッシュ9は、前記の接着剤8の塗布により形成された接着剤層8aの固化により接着剤層8aと一体となって固着する。
【0032】
そして、該メッシュ9の上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層7を形成するので、メッシュ9の上に耐薬品性樹脂を塗布して形成された防食被覆層7は、メッシュ9がアンカーとなって接着剤層8aに一体となって固着することになるから、防食被覆層7は繊維アンカー5により内壁面2にしっかりと支持されることになり、内壁面2における劣化部分3の除去が不完全で、内壁面2に劣化部分3が残っていたとしても、防食被覆層7が内壁面2から剥落することが防止される。
【0033】
また、本例では、前記接着剤6,8及び防食被覆層7を形成する耐薬品性樹脂は、エポキシ樹脂であるので、接着性に優れており繊維アンカー5、メッシュ9、防食被覆層7をしっかりと固着することができ、また耐薬品性に優れておりエポキシ樹脂で形成された防食被覆層7により内壁面2を下水中に混入された硫化塩から生成される硫化物やその他の腐食物質による侵食からより確実に防御できる。
【0034】
また、本例では、第1例と同様に、防食被覆層7を形成するエポキシ樹脂にはフィラーとして汚泥焼却灰が混合されているので、汚泥焼却灰はその粒子に角があり、結合性に優れ粘性を向上させることから、塗装の際のダレが起き難く、防食被覆層の施工性に優れたものとなる。また、フィラーとして汚泥焼却灰を使用するので、廃棄物の再利用となり省資源に寄与するものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 下水管路施設
2 内壁面
2a 未劣化の面
3 劣化部分
4 アンカー挿入孔
5 繊維アンカー
5a 繊維アンカーの一部
5b 繊維アンカーの他部
6 接着剤
7 防食被覆層
8 接着剤
8a 接着剤層
9 メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面が劣化したコンクリート製下水管路施設の内壁面を補修する方法であって、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とするコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法。
【請求項2】
内壁面が劣化したコンクリート製下水管路施設の内壁面を補修する方法であって、内壁面の劣化部分を切削除去する工程と、劣化部分を切削除去した後の内壁面にアンカー挿入孔を設ける工程と、アンカー挿入孔に繊維アンカーの一部を挿入し接着剤で固定する工程と、アンカー挿入孔に一部を挿入し固定した繊維アンカーの他部を引き裂いて内壁面に放射状に広げる工程と、繊維アンカーを広げた内壁面に、繊維アンカーの上から接着剤を塗布し、この接着剤を介して内壁面にメッシュを貼り付ける工程と、該メッシュの上に耐薬品性樹脂を塗布して防食被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とするコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法。
【請求項3】
前記接着剤及び耐薬品性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法。
【請求項4】
前記防食被覆層を形成するエポキシ樹脂にはフィラーとして汚泥焼却灰が混合されていることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート製下水管路施設の内壁面補修方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−246901(P2011−246901A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118975(P2010−118975)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(302059953)株式会社メーシック (24)
【出願人】(391048016)アルファ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】