説明

コンクリート護岸構造

【課題】護岸形状や河川の断面形状を大きく変えることなく、水辺の生物にとって好適な生息場所を作り出すと共に景観の向上を図った。
【解決手段】コンクリート護岸構造1は、河川などの護岸に埋設される護岸本体部11と、護岸本体部11に一体に設けられて護岸本体部11の河川側壁面11aから河川側に張り出してなる植栽収納部12からなるコンクリートブロック10と、植栽収納部12に収納される植栽基盤材20とを備えている。植栽収納部12の底部12dには網目が形成された網目下敷材30を設け、植栽収納部12の上面の開口部12aには、貫通穴41を有する蓋体40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川などに設置されるコンクリート護岸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川など護岸では、魚類などの水生生物は、護岸からオーバーハングした岩の下や水面に覆いかぶさった植物の下などの物陰を隠れ場として利用したり、繁殖にあたっては水中の水草に産卵する種類も多いとされる。さらに、都市型の河川護岸などでは、コンクリート張りにしたり、コンクリートブロックを積み上げて施工され、そのコンクリートのみが露出した状態となることから景観的にも自然に乏しい人工的な空間となっているのが一般的である。このようなコンクリートで構築された河川にも放流魚などが生息しているが、産卵場所や稚魚の成育に適する場所が少なく、自然繁殖がなされないといった現状がある。
そこで、近年では都市河川の環境再生事業が推進されており、環境に配慮した護岸構造が例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、穴の開いた筒状物を護岸用のコンクリートブロックに埋設した構造物であって、筒状物が河川の水中部分に位置するようにコンクリートブロックを設置することで魚類の棲家を提供するものである。
【特許文献1】特開2005−256377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1は、コンクリートブロックに埋設されている筒状物を魚類の棲家にする構成であり、そのコンクリートブロックを水中に沈める必要があることから、川幅や河川断面が例えば都市河川と比べて十分に大きいことが要求される。そのため、都市などにおける河川護岸に特許文献1のブロックを採用する場合には、自然に形成されるような緩やかな勾配の土護岸に改変しなければならないという問題があった。つまり、都市河川の護岸は、そのほとんどが垂直に近い護岸をもつ3面コンクリート張りとなっており、さらにその都市河川の周囲には例えば住宅や道路などの多くの既設建造物が建ち並んだ状態となっているうえ、洪水対策といった観点からも上述したような緩やかな勾配の土護岸に改変して施工することが困難となっている。そのため、都市河川のように川幅が狭く、河川断面の小さな河川に好適で、しかも景観はもちろん水生生物に対して環境に配慮した護岸構造が求められている。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、護岸形状や河川の断面形状を大きく変えることなく、水辺の生物にとって好適な生息場所を作り出すと共に景観の向上を図ったコンクリート護岸構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート護岸構造では、河川などの護岸に設けられるコンクリート護岸構造であって、護岸に埋設される護岸本体部、及び護岸本体部に一体に設けられて護岸本体部の河川側壁面から河川側に張り出して上下面に開口を有する植栽収納部からなるコンクリート構造体と、植栽収納部に収納される植栽基盤材とを備えていることを特徴としている。
本発明では、護岸の形状に合わせたコンクリート構造体を形成し、コンクリート構造物の護岸本体部を護岸に埋設して設置できることから、略垂直に切り立つ護岸にも適用することができる。そして、植栽収納部は、護岸本体部の河川側壁面から河川側に張り出した状態で設置され、この植栽収納部に植栽基盤材を収納し、その植栽基盤材に植物を植栽する。植栽された植物は、植栽収納部の上面の開口から葉を生育させて護岸の緑化を促進することができ、植栽収納部の下面の開口から根を水中に伸ばして生育することができる。
【0006】
また、本発明に係るコンクリート護岸構造では、植栽収納部の底部には、網目が形成された網目下敷材が設けられていることが好ましい。
本発明では、植栽基盤材に植えられた植物の根を下方(河川の水中)に突出させて生やすことができる。そして、植栽基盤材には、網目下敷材を介して水分を補給することができる。さらに、植栽基盤材を下方より支持して押さえる作用を有することから、植栽基盤材の流出を防ぐことができる。
【0007】
また、本発明に係るコンクリート護岸構造では、植栽収納部の上面には、貫通穴を有する蓋体が設けられていることが好ましい。
本発明では、植栽収納部に植栽基盤材を収納して蓋体によって蓋をすることで、植栽基盤材が植栽収納部の上面の開口から流出することを防止することができる。そして、蓋体の貫通穴から植栽収納部に植栽した植物の茎葉の部分を上方に出して生育させることができ、景観を良好とすることができる。
【0008】
また、本発明に係るコンクリート護岸構造では、コンクリート構造体は、収納される植栽基盤材の下面が河川の水位より低くなるように設置されていることが好ましい。
本発明では、植栽基盤材は、その下面より河川の水を吸収することができ、植物に水分を供給させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート護岸構造によれば、コンクリート構造体の護岸本体部を護岸に埋め込んで護岸面に植栽収納部を配置させ、その植栽収納部に植栽する構成であることから、護岸の形状に合わせたコンクリート構造体を形成することで、護岸形状や河川の断面形状をほとんど変えることなく、スペースの限られた都市域の河川に適用することができる。
さらに、植栽収納部は自然にオーバーハングした岩や水面に覆いかぶさった植物と同様の役割を果たすことになり、植栽収納部の下方に多くの水生植物の棲家を形成できるなど水辺の生物の生息場所を作り出すことができる。さらに、植栽した植物は河川上方の陸上から眺めることができ、景観の向上を図った護岸構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るコンクリート護岸構造の実施の形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるコンクリート護岸構造を示す図、図2は護岸構造体を示す平面図、図3は図2に示すA−A線断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態によるコンクリート護岸構造1は、例えば都市河川で左右両岸部が略垂直に切り立つような形状(図1では一方の岸部を示している)をなすコンクリート張りの護岸Gに適用される。このコンクリート護岸構造1は、護岸Gの一部を構成すると共に河川側に植栽収納部12(後述)を設けてなるコンクリートブロック10(コンクリート構造体)と、植栽収納部12に収納される植栽基盤材20とからなる。コンクリートブロック10は、プレキャストコンクリート製とされ、例えば予め工場などで製作して施工箇所に運搬することができる。
【0012】
図2及び図3に示すように、コンクリートブロック10は、護岸Gに一部を埋設させて設置される護岸本体部11と、護岸本体部11の河川側壁面11aに一体に設けられた植栽収納部12とからなる。
護岸本体部11は、縦壁11Aと横壁11Bとからなる断面視略L字形状をなしている。横壁11Bの両側部(図2の上下方向の端部)には、補強体11C、11Cが固定されている。そして、コンクリートブロック10の設置時には、護岸Gの水面付近(設置箇所は後述する)において横壁11B及び補強体11C、11Cが護岸Gに埋設されることになる(図1参照)。
【0013】
図3に示すように、植栽収納部12は、箱型状をなし、護岸本体部11の縦壁11Aの河川側壁面11aから河川側に張り出した状態で設けられ、その上面に開口部12aが形成されている。また、植栽収納部12の下面は、所定の大きさの開口穴12bが形成されている。また、植栽収納部12の内周面上部には段差係止部12cが形成され、後述する蓋体40を係合させるようになっている。このように構成される植栽収納部12には、植栽基盤材20が収容されるようになっている。
【0014】
さらに、図3に示すように、植栽収納部12には、その底部12dに網目下敷材30が設けられ、その上面に蓋体40が設けられている。
網目下敷材30は、例えば5mmの目開き寸法を形成させたものであり、植栽基盤材20に植えられた植物Pの根を下方(河川の水中)に突出させて生やすことができる。そして、植栽基盤材20には、網目下敷材30を介して水分を補給することができる。さらに、植栽基盤材20を下方より支持して押さえる作用を有することから、植栽基盤材20の流出を防ぐことができる。
【0015】
図2に示すように、蓋体40は、略平板形状をなし、コンクリートブロック10の植栽収納部12の段差係止部12cに係合し、植栽収納部12の開口部12aに蓋をするものである。このように蓋体40を設置することで、開口部12aから植栽基盤材20が流出することを防止できる。
さらに、蓋体40には、所定の大きさの貫通穴41、41、…(ここでは円形穴とされる)が複数設けられている。これにより、蓋体40の貫通穴41、41、…から植栽収納部12に植栽した植物P(図3参照)の茎葉の部分を上方に出して生育させることができ、景観を良好とすることができる。
【0016】
植栽収納部12に収納される植栽基盤材20は、植栽収納部12に収容される外形寸法をなし、ヤシ殻繊維などの繊維質材料又は土、砂、砂利、軽量骨材など、あるいはこれらを混合した材料などが使用される。
【0017】
このように、本コンクリートブロック10では、護岸本体部11の横壁11B及び補強体11C、11Cを護岸Gに埋設して設置できることから、本実施の形態のように略垂直に切り立つ護岸Gに適用することができる。植栽された植物Pは、植栽収納部12の上面の開口部12a(蓋体40の貫通穴41)から茎葉を伸ばして河川の緑化を促進することができ、下面の開口穴12b(網目下敷材30)から根を水中に伸ばして成長することができる。
また、図1に示すように、護岸Gに設置されるコンクリートブロック10の位置は、植栽収納部12内の植栽基盤材20の下面20aが通常水位範囲(図1の符号W)の最低水面より低くなるようにする。そうすると、植栽基盤材20は、その下面20aより河川の水を吸収することができ、植物Pに水分を供給させることができる。
【0018】
上述のように実施の形態によるコンクリート護岸構造では、コンクリートブロック10の護岸本体部11を護岸Gに埋め込んで護岸面に植栽収納部12を配置させ、その植栽収納部12に植栽する構成であることから、護岸の形状に合わせたコンクリートブロック10を形成することで、護岸形状や河川の断面形状をほとんど変えることなく、スペースの限られた都市域の河川に適用することができる。
さらに、植栽収納部12は自然にオーバーハングした岩や水面に覆いかぶさった植物と同様の役割を果たすことになり、植栽収納部12の下方に多くの水生植物の棲家を形成できるなど水辺の生物の生息場所を作り出すことができる。さらに、植栽した植物Pは河川上方の陸上から眺めることができ、景観の向上を図った護岸構造を実現することができる。
【0019】
以上、本発明によるコンクリート護岸構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではコンクリートブロック10としているが、施工現場の所定位置でコンクリートブロック10と同様の形状にコンクリートを打設して構築してもかまわない。また、本コンクリート護岸構造1の設置工事は、新設は勿論、既設の河川護岸をリニューアルする工事であっても勿論かまわない。
さらに、本実施の形態では都市河川で略垂直をなす護岸Gに対応しているが、都市河川であることに限定されるものではなく、また川幅あり緩やかに形成することができる護岸形状の護岸に用いることも可能である。
そして、コンクリートブロック10の護岸本体部11、植栽収納部12、補強体11Cの具体的な形状、寸法に関する制限はなく、設置対象となる河川の護岸形状、河川断面などの条件に応じて適宜設定すればよいとされる。また、網目下敷材30の網目寸法の大きさや、蓋体40に形成される貫通穴41の形状、大きさ、数量についてもとくに実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態によるコンクリート護岸構造を示す図である。
【図2】護岸構造体を示す平面図である。
【図3】図2に示すA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コンクリート護岸構造
10 コンクリートブロック(コンクリート構造体)
11 護岸本体部
12 植栽収納部
20 植栽基盤材
30 網目下敷材
40 蓋体
G 護岸
P 植物
W 通常水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川などの護岸に設けられるコンクリート護岸構造であって、
前記護岸に埋設される護岸本体部、及び前記護岸本体部に一体に設けられて前記護岸本体部の河川側壁面から河川側に張り出して上下面に開口を有する植栽収納部からなるコンクリート構造体と、
前記植栽収納部に収納される植栽基盤材と、
を備えていることを特徴とするコンクリート護岸構造。
【請求項2】
前記植栽収納部の底部には、網目が形成された網目下敷材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート護岸構造。
【請求項3】
前記植栽収納部の上面には、貫通穴を有する蓋体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート護岸構造。
【請求項4】
前記コンクリート構造体は、前記収納される前記植栽基盤材の下面が前記河川の水位より低くなるように設置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリート護岸構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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